JP2004231827A - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないポリアセタール樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなり、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、さらに射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、代表的なエンジニアリングプラスチックとして機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品等のみならず、外装、外観部品においても用途が拡大している。しかしながら、ポリアセタール樹脂は多くのプラスチックと同様に表面固有抵抗が高いため、帯電による種々の弊害が発生する。例えば、ゴミや塵の付着や表面汚染、静電気によるノイズ等の障害がある。プラスチックに帯電防止性を付与する方法としては、界面活性剤を配合することが一般的である。例えば、特許文献1には、水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルとポリエチレングリコールをポリアセタール樹脂に配合する方法がある。また、特許文献2にはアミン化合物のエチレンオキサイド付加体を帯電防止剤として添加する方法がある。また、特許文献3には、塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体にポリアルキレンポリオール類等を包接させた帯電防止剤を添加する方法がある。特許文献4には、脂肪族ポリエーテルおよび水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルを添加する方法がある。さらに、特許文献5には脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物を添加する方法がある。ところが、これらの従来知られている帯電防止技術は、長時間にわたり成形を行う場合、成形機のシリンダー内で熱や酸素の作用を受けホルムアルデヒドが発生し、そのホルムアルデヒドが帯電防止剤と反応して、帯電防止性能が低下する等の問題があり、改善が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−107901号公報(第2頁)
【0004】
【特許文献2】
特開平6−215519号公報(第2,3頁)
【0005】
【特許文献3】
特開平7−118496号公報(第2頁)
【0006】
【特許文献4】
特開平7−11101号公報(第2頁)
【0007】
【特許文献5】
特開平11−323075号公報(第2頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、さらに射出成形機等のシリンダー内で滞留しても帯電防止性能が低下しないポリアセタール樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を必須成分として含有せしめることにより、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないことを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明はポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなるポリアセタール樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーでありホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーであってもよい。また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわちブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーの何れであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。コモノマー量が0.3モル%未満では熱安定性が不足する傾向となり、また10モル%を超えると機械強度が低下する傾向となり、いずれも好ましくない。特に好ましいコモノマー量は1.0〜3.0モル%である。
【0013】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法等が挙げられる。
【0014】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキサイドや1,3−ジオキソラン等の共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法等が挙げられる。
【0015】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTMD1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、MFRが0.1〜100g/10分の範囲のものが好ましく、1.0〜50g/10分のものであることが特に好ましい。
【0016】
また、ポリアセタール樹脂としては、予め熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましい。
【0017】
なお、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂の合計量100重量部に対してポリアセタール樹脂を40重量部以上用いる場合には、ポリアセタールの分解が促進されることにより組成物の耐久性を損なう等、組成物自体の特性に強い影響を与える可能性が高いので、ホルムアルデヒドは配合しないことが好ましい。ポリアセタール樹脂自体に含まれるホルムアルデヒドを考慮して、ポリアセタール樹脂に対して多くとも500ppm未満にとどめておくのが好ましく、250ppm未満とするのがさらに好ましく、100ppm未満とするのが特に好ましい。上記樹脂組成物中のホルムアルデヒド含有量は、樹脂組成物を粉砕して得られる粉体1gを、水100ml中、50℃で6時間攪拌して、ホルムアルデヒドを抽出し、アセチルアセトン法で定量することにより測定することができる。
【0018】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール等のグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等のジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オン等のラクトン類を挙げることができる。これら共重合成分は全モノマーに対し30モル%以下、特に10モル%以下とすることが好ましい。30モル%を超えると耐熱性が低下するため好ましくない。
【0019】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体またはD体の含有率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法等を挙げることができる。
【0021】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、分子量が大きいほど靭性が向上するため、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0022】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、耐熱性向上の観点から、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。融点の高いポリ乳酸樹脂は、例えば光学純度を高くすることにより得ることができる。
【0023】
本発明に用いられる帯電防止剤としては、(1)脂肪族ポリエーテル(但し、末端が脂肪酸エステルとなった化合物を除く)、(2)末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル、(3)脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステル、(4)グリセリンモノ脂肪酸エステルのホウ酸エステル、(5)アミン化合物のエチレンオキサイド付加体、(6)塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体を基体として、これにポリアルキレンポリオール類或いはアルカリ金属塩溶解ポリアルキレンポリオール類を包接させた帯電防止剤等が挙げられる。
【0024】
(1)脂肪族ポリエーテルとしては、炭素数2〜4個よりなる脂肪族エーテル基を主たる繰り返し単位とするポリエーテルが挙げられ、単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、側鎖の有無を問わず、末端基の種類も後述する脂肪酸エステルを除き特に限定するものではないが、−OH末端であることが好ましく、アルコキシ基(脂肪族エーテル)が−OH末端に準じて好ましい。脂肪族エーテルの例としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が挙げられる。脂肪族ポリエーテルの例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クロロヒドリンラバー、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールジラウリルエーテル、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
(2)末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル化合物としては、下記一般式(I)および(II)で表される、炭素数10〜35の飽和もしくは不飽和の脂肪酸および1つの水酸基で置換されている脂肪酸と、炭素数2〜6のアルキレングリコールから得られる脂肪酸ジエステル化合物と脂肪酸モノエステル化合物である。
【0026】
一般式(I)
R1−COO(R3O)n−COR2
ここでR1、R2は炭素数10〜36のアルキル基もしくはアルケニル基および1つの水酸基で置換されている該アルキル基もしくはアルケニル基で、R1とR2は同一であっても異なっていても良く、R3Oは炭素数2〜6のアルキレングリコールユニットを表す。また、nは1〜70を表す。
【0027】
一般式(II)
R4−COO(R5O)m−H
ここでR4は、炭素数10〜36のアルキル基もしくはアルケニル基および1つの水酸基で置換されている該アルキル基もしくはアルケニル基で、R5Oは炭素数2〜6のアルキレングリコールユニットを表す。また、mは1〜70を表す。
【0028】
脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物は、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸等の脂肪酸と付加モル数は1〜70のアルキレングリコールとの反応により得られるエステル化合物である。
【0029】
中でも好ましくは、脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であり、アルキレングリコールが、(ポリ)エチレングリコールである脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物であって、エチレングリコールの付加モル数は1〜10である。更に好ましいエチレングリコールの付加モル数は1〜5である。末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル化合物の例としては、ポリエチレングリコールジラウリレート、ポリエチレングリコールモノステアリレート、ポリプロピレングリコールジステアリレート、ポリテトラメチレンモノステアリレートなどが挙げられる。
【0030】
(3)脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸、クエン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸と、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール等の多価アルコールとの反応により得られる少なくとも一個の遊離水酸基と少なくとも一個のエステル基とを有する脂肪酸エステルアルコールである。脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルの例としては、グリセリンモノステアリレート、グリセリンジステアリレート、ペンタエリスリトールモノステアリレート、ペンタエリスリトールジラウリレート、ジペンタエリスリトールジステアリレートなどが挙げられる。
【0031】
(4)グリセリンモノ脂肪酸エステルのホウ酸エステルとしては、グリセリンとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸、クエン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸の反応により得られるジオールエステルのホウ酸エステルが挙げられる。
【0032】
(5)アミン化合物のエチレンオキサイド付加体としては、一般式(III)で表されるアミン化合物のエチレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
式中R6は、炭素数10〜22のアルキルまたはアルケニル基であり、nおよびmはいずれも1〜10の整数を示す。
若しくは、一般式(IV)で表されるアミド化合物が挙げられる。
【0035】
【化2】
【0036】
式中、R7はカルボン酸残基、x、yはそれぞれ0又は1以上の整数を示す。
【0037】
(6)塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体を基体として、これにポリアルキレンポリオール類或いはアルカリ金属塩溶解ポリアルキレンポリオール類を包接させた帯電防止剤としては、アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩やアルミニウム・ナトリウム・ヒドロキシ炭酸塩などにポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールまたはその誘導体を包接させたものが挙げられる。
【0038】
帯電防止剤の配合量としては、添加する帯電防止剤の種類や要求される帯電防止性能により変わり、一概に決定されるものではないが、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。帯電防止剤の配合量が、0.01重量部未満では十分な帯電防止性能が得られず、また10重量部を超えて添加すると機械的性質が大きく損なわれるため、何れも好ましくない。
【0039】
本発明の樹脂組成物はポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化している。そのため、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、また、射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても、帯電防止性能が低下しないという効果が得られる。帯電防止性能が低下しない理由は不明であるが、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂が相溶化しているためと推測している。ここでいう「相溶化」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を形成することを説明するために用いられる。つまり、配合物の一方または両方が結晶相および非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0040】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、および動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0041】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合の相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。すなわち、ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合には、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下するからである。したがって、この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
【0042】
本発明の組成物にさらに用途に応じて適当な添加剤を配合することにより、一層優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、および離型(潤滑)剤、顔料等を本発明のポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して0〜5重量部含有させることができる。
【0043】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N、N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、ポリアセタール100重量部に対して、0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0044】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体、または化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げられる。またアクリルアミドおよびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体やアミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物を挙げることができる。アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体の例としては、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。また、アミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物の例としては、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’、N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン等のトリアジン誘導体が挙げられる。これらホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部配合される。
【0045】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩である。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本発明においては、これらをポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合することが特に有効である。
【0046】
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系物質、蓚酸アニリド系物質、およびヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
【0047】
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
ヒンダードアミン系物質の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
中でも好ましい耐候剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらの耐候(光)安定剤は、ポリアセタール100重量部に対して0.1〜1重量部配合されることが好ましい。
【0049】
離型剤としては、アルコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本発明においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合することが特に有効である。
【0050】
本発明のポリアセタール樹脂組成物にさらに硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー等に代表される無機顔料、縮合アゾ系、ペリノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系等に代表される有機顔料等を配合することができる。
【0051】
顔料はポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計量100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲で使用される。5重量部を超えると熱安定性が低下し、好ましくない。
【0052】
さらに本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリアセタール樹脂組成物に無機フィラー、ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維等に代表される補強剤、導電性カーボンブラック、金属粉末、繊維等に代表される導電材、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂、またはこれらの変性物等に代表される熱可塑性樹脂、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等に代表される熱可塑性エラストマーを配合することができる。
【0053】
なお、本発明の樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂の合計量を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂の配合量が99〜1重量部であることが好ましく、より好ましくは99〜60重量部、より一層好ましくは99〜75重量部、さらに好ましくは99〜80重量部、最も好ましくは99〜90重量部である。このような範囲のものとすることによって、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内で滞留しても帯電防止性能が低下しないことについて、一層優れた効果を発現させることが期待できる。
【0054】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、帯電防止剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が好ましく用いられる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しない特性を持つ組成物であり、射出成形や押出成形、ブロー成形等の方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がより一層好ましく、一方試験片の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がより一層好ましい。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品等が挙げられる。また、これらの成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、および日用品等各種用途に利用することができる。
【0057】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0058】
また、樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
【0059】
(1)帯電防止性能
射出成形機東芝機械製IS80EPN(型締圧力:80トン)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクルを滞留性評価条件(射出時間15秒、冷却時間30分)で成形を実施し、縦80mm、横80mm、厚さ3mmの角板を作成した。得られた成形品を23℃、50%RHの環境下に72時間放置後、表面固有抵抗と帯電圧半減期を評価した。
【0060】
〔表面固有抵抗〕
測定機器:極超絶縁計SM−10E型(東亜電波工業製)
試験片形状:縦80mm、横80mm、厚さ3mm
印加電圧:500V。
【0061】
〔帯電圧半減期〕
測定機器:スタティックオネストメーター(宍戸商会製)
試験片形状:縦40mm、横40mm、厚さ3mm(切り出し)
印加電圧:6kV。
【0062】
(2)機械的性質
射出成形機東芝機械製IS80EPN(型締圧力:80トン)を使用し、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件で、通常の成形サイクル(射出時間10秒、冷却時間10秒)で射出成形を実施した。得られた試験片について、ASTM D638に準じて引張試験を、ASTM D790に準じて曲げ試験を、ASTM D256に準じてアイゾッド衝撃試験を実施した。
【0063】
実施例1〜9
ポリアセタールコポリマー〔特開平2−283709号公報実施例4に従って製造、ホルムアルデヒド含有量75ppm〕とD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂および以下に示す帯電防止剤を表1の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。なお、本発明で使用した帯電防止剤は下記のものである。
(1)ポリエチレングリコール(分子量6000)
(2)ポリエチレングリコールジラウリルエーテル
(3)ポリエチレングリコールモノステアリレート
(4)グリセリンモノステアリレート
(5)ジペンタエリスリトールジステアリレート
(6)グリセリンモノステアリレートのホウ酸エステル
(7)日本油脂 ナイミーン L202
C12H25−N[(CH2CH2O)nH]2
(8)アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物。
【0064】
なお、アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物は、次の手順で作成した。
【0065】
水酸化ナトリウム50.0gと炭酸ナトリウム14.9gとを撹拌下に水4.0リットルに加え、40℃に加温した。次いでCO3/Liのモル比が2.0 、Al/Liのモル比が1.5となるように炭酸リチウム18.66gと塩化アルミニウム99.56gとを、0.8リットルの水に溶解させたものを徐々に注下し、pH=10.7のスラリーを得た。次いで撹拌下に80乃至100℃の温度で約10乃至18時間熟成を行い、その後ステアリン酸1.1gを加え、撹拌下に表面処理を行い、濾過、水洗、70℃で乾燥させた後、小型のサンプルミルで粉砕して、アニオン交換体を得た。
【0066】
次ぎに、このアニオン交換体100重量部を基準として、2重量部のLiClO4を溶解させた分子量2000のポリエチレングリコール80重量部を沸水浴で融解させ、ミキサーで混合・冷却してアルミニウム・リチウム・ヒロドキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物を得た。
【0067】
得られた樹脂組成物を射出成形にて、シリンダー温度220℃で30分間滞留させて、試験片を作成し、評価を行った。これらの結果を併せて表1に示す。
【0068】
比較例1〜5
比較のため、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸をそれぞれ単独で使用し、さらに帯電防止剤を表2に示す割合で配合した。2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にてシリンダー温度220℃で30分間滞留させて、試験片を作成し、評価を行った。これらの結果を併せて表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】
以上の説明および実施例、比較例から明らかなように、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂をそれぞれ単独で使用した場合は、滞留により表面固有抵抗、帯電圧半減期で代表される帯電防止性能が大きく低下することが判る。一方、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂を併用した場合は、帯電防止剤による機械物性の低下および滞留による帯電防止性能が低下しないことが判る。
【0072】
本発明の樹脂組成物は帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないことが判る。この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品、建築部材、外装、外観部品および日用品等、各種用途に利用することができる。特に静電気が発生しやすい搬送機器や静電気によるゴミの付着等が問題となるシート、フィルム等の部品に好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなり、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、さらに射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないポリアセタール樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、代表的なエンジニアリングプラスチックとして機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品等のみならず、外装、外観部品においても用途が拡大している。しかしながら、ポリアセタール樹脂は多くのプラスチックと同様に表面固有抵抗が高いため、帯電による種々の弊害が発生する。例えば、ゴミや塵の付着や表面汚染、静電気によるノイズ等の障害がある。プラスチックに帯電防止性を付与する方法としては、界面活性剤を配合することが一般的である。例えば、特許文献1には、水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルとポリエチレングリコールをポリアセタール樹脂に配合する方法がある。また、特許文献2にはアミン化合物のエチレンオキサイド付加体を帯電防止剤として添加する方法がある。また、特許文献3には、塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体にポリアルキレンポリオール類等を包接させた帯電防止剤を添加する方法がある。特許文献4には、脂肪族ポリエーテルおよび水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルを添加する方法がある。さらに、特許文献5には脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物を添加する方法がある。ところが、これらの従来知られている帯電防止技術は、長時間にわたり成形を行う場合、成形機のシリンダー内で熱や酸素の作用を受けホルムアルデヒドが発生し、そのホルムアルデヒドが帯電防止剤と反応して、帯電防止性能が低下する等の問題があり、改善が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−107901号公報(第2頁)
【0004】
【特許文献2】
特開平6−215519号公報(第2,3頁)
【0005】
【特許文献3】
特開平7−118496号公報(第2頁)
【0006】
【特許文献4】
特開平7−11101号公報(第2頁)
【0007】
【特許文献5】
特開平11−323075号公報(第2頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、さらに射出成形機等のシリンダー内で滞留しても帯電防止性能が低下しないポリアセタール樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を必須成分として含有せしめることにより、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないことを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明はポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなるポリアセタール樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーでありホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーであってもよい。また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわちブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーの何れであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。コモノマー量が0.3モル%未満では熱安定性が不足する傾向となり、また10モル%を超えると機械強度が低下する傾向となり、いずれも好ましくない。特に好ましいコモノマー量は1.0〜3.0モル%である。
【0013】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法等が挙げられる。
【0014】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキサイドや1,3−ジオキソラン等の共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法等が挙げられる。
【0015】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTMD1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、MFRが0.1〜100g/10分の範囲のものが好ましく、1.0〜50g/10分のものであることが特に好ましい。
【0016】
また、ポリアセタール樹脂としては、予め熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましい。
【0017】
なお、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂の合計量100重量部に対してポリアセタール樹脂を40重量部以上用いる場合には、ポリアセタールの分解が促進されることにより組成物の耐久性を損なう等、組成物自体の特性に強い影響を与える可能性が高いので、ホルムアルデヒドは配合しないことが好ましい。ポリアセタール樹脂自体に含まれるホルムアルデヒドを考慮して、ポリアセタール樹脂に対して多くとも500ppm未満にとどめておくのが好ましく、250ppm未満とするのがさらに好ましく、100ppm未満とするのが特に好ましい。上記樹脂組成物中のホルムアルデヒド含有量は、樹脂組成物を粉砕して得られる粉体1gを、水100ml中、50℃で6時間攪拌して、ホルムアルデヒドを抽出し、アセチルアセトン法で定量することにより測定することができる。
【0018】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール等のグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等のジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オン等のラクトン類を挙げることができる。これら共重合成分は全モノマーに対し30モル%以下、特に10モル%以下とすることが好ましい。30モル%を超えると耐熱性が低下するため好ましくない。
【0019】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体またはD体の含有率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法等を挙げることができる。
【0021】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、分子量が大きいほど靭性が向上するため、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0022】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、耐熱性向上の観点から、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。融点の高いポリ乳酸樹脂は、例えば光学純度を高くすることにより得ることができる。
【0023】
本発明に用いられる帯電防止剤としては、(1)脂肪族ポリエーテル(但し、末端が脂肪酸エステルとなった化合物を除く)、(2)末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル、(3)脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステル、(4)グリセリンモノ脂肪酸エステルのホウ酸エステル、(5)アミン化合物のエチレンオキサイド付加体、(6)塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体を基体として、これにポリアルキレンポリオール類或いはアルカリ金属塩溶解ポリアルキレンポリオール類を包接させた帯電防止剤等が挙げられる。
【0024】
(1)脂肪族ポリエーテルとしては、炭素数2〜4個よりなる脂肪族エーテル基を主たる繰り返し単位とするポリエーテルが挙げられ、単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、側鎖の有無を問わず、末端基の種類も後述する脂肪酸エステルを除き特に限定するものではないが、−OH末端であることが好ましく、アルコキシ基(脂肪族エーテル)が−OH末端に準じて好ましい。脂肪族エーテルの例としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が挙げられる。脂肪族ポリエーテルの例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、クロロヒドリンラバー、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールジラウリルエーテル、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
(2)末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル化合物としては、下記一般式(I)および(II)で表される、炭素数10〜35の飽和もしくは不飽和の脂肪酸および1つの水酸基で置換されている脂肪酸と、炭素数2〜6のアルキレングリコールから得られる脂肪酸ジエステル化合物と脂肪酸モノエステル化合物である。
【0026】
一般式(I)
R1−COO(R3O)n−COR2
ここでR1、R2は炭素数10〜36のアルキル基もしくはアルケニル基および1つの水酸基で置換されている該アルキル基もしくはアルケニル基で、R1とR2は同一であっても異なっていても良く、R3Oは炭素数2〜6のアルキレングリコールユニットを表す。また、nは1〜70を表す。
【0027】
一般式(II)
R4−COO(R5O)m−H
ここでR4は、炭素数10〜36のアルキル基もしくはアルケニル基および1つの水酸基で置換されている該アルキル基もしくはアルケニル基で、R5Oは炭素数2〜6のアルキレングリコールユニットを表す。また、mは1〜70を表す。
【0028】
脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物は、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸等の脂肪酸と付加モル数は1〜70のアルキレングリコールとの反応により得られるエステル化合物である。
【0029】
中でも好ましくは、脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸であり、アルキレングリコールが、(ポリ)エチレングリコールである脂肪酸ジエステル化合物および脂肪酸モノエステル化合物であって、エチレングリコールの付加モル数は1〜10である。更に好ましいエチレングリコールの付加モル数は1〜5である。末端が脂肪酸エステルとなった脂肪族ポリエーテル化合物の例としては、ポリエチレングリコールジラウリレート、ポリエチレングリコールモノステアリレート、ポリプロピレングリコールジステアリレート、ポリテトラメチレンモノステアリレートなどが挙げられる。
【0030】
(3)脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸、クエン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸と、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール等の多価アルコールとの反応により得られる少なくとも一個の遊離水酸基と少なくとも一個のエステル基とを有する脂肪酸エステルアルコールである。脂肪酸と多価アルコールから得られる遊離水酸基を有する多価アルコールの脂肪酸エステルの例としては、グリセリンモノステアリレート、グリセリンジステアリレート、ペンタエリスリトールモノステアリレート、ペンタエリスリトールジラウリレート、ジペンタエリスリトールジステアリレートなどが挙げられる。
【0031】
(4)グリセリンモノ脂肪酸エステルのホウ酸エステルとしては、グリセリンとラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸、クエン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸の反応により得られるジオールエステルのホウ酸エステルが挙げられる。
【0032】
(5)アミン化合物のエチレンオキサイド付加体としては、一般式(III)で表されるアミン化合物のエチレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
式中R6は、炭素数10〜22のアルキルまたはアルケニル基であり、nおよびmはいずれも1〜10の整数を示す。
若しくは、一般式(IV)で表されるアミド化合物が挙げられる。
【0035】
【化2】
【0036】
式中、R7はカルボン酸残基、x、yはそれぞれ0又は1以上の整数を示す。
【0037】
(6)塩基性炭酸塩またはそのアニオン交換体を基体として、これにポリアルキレンポリオール類或いはアルカリ金属塩溶解ポリアルキレンポリオール類を包接させた帯電防止剤としては、アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩やアルミニウム・ナトリウム・ヒドロキシ炭酸塩などにポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールまたはその誘導体を包接させたものが挙げられる。
【0038】
帯電防止剤の配合量としては、添加する帯電防止剤の種類や要求される帯電防止性能により変わり、一概に決定されるものではないが、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。帯電防止剤の配合量が、0.01重量部未満では十分な帯電防止性能が得られず、また10重量部を超えて添加すると機械的性質が大きく損なわれるため、何れも好ましくない。
【0039】
本発明の樹脂組成物はポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化している。そのため、帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、また、射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても、帯電防止性能が低下しないという効果が得られる。帯電防止性能が低下しない理由は不明であるが、ポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂が相溶化しているためと推測している。ここでいう「相溶化」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を形成することを説明するために用いられる。つまり、配合物の一方または両方が結晶相および非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0040】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、および動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0041】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合の相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。すなわち、ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合には、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下するからである。したがって、この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
【0042】
本発明の組成物にさらに用途に応じて適当な添加剤を配合することにより、一層優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、および離型(潤滑)剤、顔料等を本発明のポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して0〜5重量部含有させることができる。
【0043】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N、N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、ポリアセタール100重量部に対して、0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0044】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体、または化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げられる。またアクリルアミドおよびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体やアミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物を挙げることができる。アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体の例としては、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。また、アミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物の例としては、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’、N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン等のトリアジン誘導体が挙げられる。これらホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部配合される。
【0045】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩である。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本発明においては、これらをポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合することが特に有効である。
【0046】
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系物質、蓚酸アニリド系物質、およびヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
【0047】
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
ヒンダードアミン系物質の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
中でも好ましい耐候剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらの耐候(光)安定剤は、ポリアセタール100重量部に対して0.1〜1重量部配合されることが好ましい。
【0049】
離型剤としては、アルコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本発明においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合することが特に有効である。
【0050】
本発明のポリアセタール樹脂組成物にさらに硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー等に代表される無機顔料、縮合アゾ系、ペリノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系等に代表される有機顔料等を配合することができる。
【0051】
顔料はポリアセタール樹脂とポリ乳酸樹脂の合計量100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲で使用される。5重量部を超えると熱安定性が低下し、好ましくない。
【0052】
さらに本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリアセタール樹脂組成物に無機フィラー、ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維等に代表される補強剤、導電性カーボンブラック、金属粉末、繊維等に代表される導電材、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂、またはこれらの変性物等に代表される熱可塑性樹脂、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等に代表される熱可塑性エラストマーを配合することができる。
【0053】
なお、本発明の樹脂組成物においては、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂の合計量を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂の配合量が99〜1重量部であることが好ましく、より好ましくは99〜60重量部、より一層好ましくは99〜75重量部、さらに好ましくは99〜80重量部、最も好ましくは99〜90重量部である。このような範囲のものとすることによって、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内で滞留しても帯電防止性能が低下しないことについて、一層優れた効果を発現させることが期待できる。
【0054】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂、帯電防止剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が好ましく用いられる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、機械的性質の低下や射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しない特性を持つ組成物であり、射出成形や押出成形、ブロー成形等の方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がより一層好ましく、一方試験片の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がより一層好ましい。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品等が挙げられる。また、これらの成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、および日用品等各種用途に利用することができる。
【0057】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0058】
また、樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
【0059】
(1)帯電防止性能
射出成形機東芝機械製IS80EPN(型締圧力:80トン)を使用し、シリンダー温度220℃、金型温度80℃の条件で、成形サイクルを滞留性評価条件(射出時間15秒、冷却時間30分)で成形を実施し、縦80mm、横80mm、厚さ3mmの角板を作成した。得られた成形品を23℃、50%RHの環境下に72時間放置後、表面固有抵抗と帯電圧半減期を評価した。
【0060】
〔表面固有抵抗〕
測定機器:極超絶縁計SM−10E型(東亜電波工業製)
試験片形状:縦80mm、横80mm、厚さ3mm
印加電圧:500V。
【0061】
〔帯電圧半減期〕
測定機器:スタティックオネストメーター(宍戸商会製)
試験片形状:縦40mm、横40mm、厚さ3mm(切り出し)
印加電圧:6kV。
【0062】
(2)機械的性質
射出成形機東芝機械製IS80EPN(型締圧力:80トン)を使用し、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件で、通常の成形サイクル(射出時間10秒、冷却時間10秒)で射出成形を実施した。得られた試験片について、ASTM D638に準じて引張試験を、ASTM D790に準じて曲げ試験を、ASTM D256に準じてアイゾッド衝撃試験を実施した。
【0063】
実施例1〜9
ポリアセタールコポリマー〔特開平2−283709号公報実施例4に従って製造、ホルムアルデヒド含有量75ppm〕とD体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂および以下に示す帯電防止剤を表1の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。なお、本発明で使用した帯電防止剤は下記のものである。
(1)ポリエチレングリコール(分子量6000)
(2)ポリエチレングリコールジラウリルエーテル
(3)ポリエチレングリコールモノステアリレート
(4)グリセリンモノステアリレート
(5)ジペンタエリスリトールジステアリレート
(6)グリセリンモノステアリレートのホウ酸エステル
(7)日本油脂 ナイミーン L202
C12H25−N[(CH2CH2O)nH]2
(8)アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物。
【0064】
なお、アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物は、次の手順で作成した。
【0065】
水酸化ナトリウム50.0gと炭酸ナトリウム14.9gとを撹拌下に水4.0リットルに加え、40℃に加温した。次いでCO3/Liのモル比が2.0 、Al/Liのモル比が1.5となるように炭酸リチウム18.66gと塩化アルミニウム99.56gとを、0.8リットルの水に溶解させたものを徐々に注下し、pH=10.7のスラリーを得た。次いで撹拌下に80乃至100℃の温度で約10乃至18時間熟成を行い、その後ステアリン酸1.1gを加え、撹拌下に表面処理を行い、濾過、水洗、70℃で乾燥させた後、小型のサンプルミルで粉砕して、アニオン交換体を得た。
【0066】
次ぎに、このアニオン交換体100重量部を基準として、2重量部のLiClO4を溶解させた分子量2000のポリエチレングリコール80重量部を沸水浴で融解させ、ミキサーで混合・冷却してアルミニウム・リチウム・ヒロドキシ炭酸塩のポリエチレングリコール付加物を得た。
【0067】
得られた樹脂組成物を射出成形にて、シリンダー温度220℃で30分間滞留させて、試験片を作成し、評価を行った。これらの結果を併せて表1に示す。
【0068】
比較例1〜5
比較のため、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸をそれぞれ単独で使用し、さらに帯電防止剤を表2に示す割合で配合した。2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にてシリンダー温度220℃で30分間滞留させて、試験片を作成し、評価を行った。これらの結果を併せて表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】
以上の説明および実施例、比較例から明らかなように、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂をそれぞれ単独で使用した場合は、滞留により表面固有抵抗、帯電圧半減期で代表される帯電防止性能が大きく低下することが判る。一方、ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂を併用した場合は、帯電防止剤による機械物性の低下および滞留による帯電防止性能が低下しないことが判る。
【0072】
本発明の樹脂組成物は帯電防止剤を添加しても機械的性質の低下が小さく、射出成形機等のシリンダー内等で溶融状態で滞留しても帯電防止性能が低下しないことが判る。この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品、建築部材、外装、外観部品および日用品等、各種用途に利用することができる。特に静電気が発生しやすい搬送機器や静電気によるゴミの付着等が問題となるシート、フィルム等の部品に好適である。
Claims (2)
- ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸樹脂および帯電防止剤を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂およびポリ乳酸樹脂の合計量を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂の配合量が99〜1重量部であり、且つ帯電防止剤が0.01〜10重量部である請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
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-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023271A patent/JP2004231827A/ja active Pending
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