JP2004225807A - 転がり軸受の潤滑装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エアの消費がなく、エアオイル潤滑方式の場合と同等な軸受の運転性能を確保できる転がり軸受の潤滑装置を提供する。
【解決手段】ノズル6および流量調整装置15を有する間座31を、外輪3に隣接して設け、内輪2に隣接する環状の油受け部材7を設ける。この油受け部材7は、上記内輪2と反対側の幅面に突出する環状鍔8を外径部に有し、この環状鍔8の内径面に油溜凹部9を有する。油受け部材7には、油溜凹部9から内輪2の転走面2aへ潤滑油を供給する給油路13を設ける。ノズル6は、その先端を上記環状鍔8の内径側に位置させる。内輪2に、転走面2aに隣合って斜面部2bを設け、この斜面部2bの外周に位置して油貯留空間11を形成する内向き鍔10を油受け部材7に設ける。上記給油路13と斜面部2b等により、潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49を構成する。
【選択図】 図2
【解決手段】ノズル6および流量調整装置15を有する間座31を、外輪3に隣接して設け、内輪2に隣接する環状の油受け部材7を設ける。この油受け部材7は、上記内輪2と反対側の幅面に突出する環状鍔8を外径部に有し、この環状鍔8の内径面に油溜凹部9を有する。油受け部材7には、油溜凹部9から内輪2の転走面2aへ潤滑油を供給する給油路13を設ける。ノズル6は、その先端を上記環状鍔8の内径側に位置させる。内輪2に、転走面2aに隣合って斜面部2bを設け、この斜面部2bの外周に位置して油貯留空間11を形成する内向き鍔10を油受け部材7に設ける。上記給油路13と斜面部2b等により、潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49を構成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械主軸用の転がり軸受等に適用される潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸装置は、加工能率を上げるために、ますます高速化の傾向にある。このような主軸装置の高速化に伴い、主軸軸受の潤滑方式として、搬送エアに潤滑用オイルを混合したものを、ノズルから軸受内に噴射することで軸受の潤滑を行うエアオイル潤滑方式が多く用いられている。
【0003】
しかし、このエアオイル潤滑方式は多量の高圧エアを必要とするので、騒音,省エネ,省資源の観点から問題が有る。そこで、エア消費量を削減して上記問題を解決する種々の新しい潤滑方式が提案されている(例えば特許文献1〜3)。図5,図6はそのうちの一つの潤滑方式(特許文献1)を示している。この潤滑方式では、内輪間座62に潤滑油を溜めるタンク63を設け、主軸55の回転に伴って生じる潤滑油への遠心力を利用して軸受51内へ潤滑油を供給するものである。すなわち、主軸55が回転すると、図6(A)に拡大して示すように、タンク63内の潤滑油は遠心力によりタンク63に連通する油連通孔64を経て、軸受内輪52に対向する内輪間座62の幅面に形成された吐出溝部65に圧送される。図6(B)に示す上記吐出溝部66の溝深さδ1は0.001mm程度の極浅いものとされ(溝幅Bは1mm程度)、この吐出溝部65で潤滑油の吐出量が調整される。量調整された潤滑油は、まず内輪端面に付着し、潤滑油の持つ表面張力と遠心力により、内輪52表面に付着しながら軸受51内に流入する。
【0004】
この潤滑方式はエアを必要としないが、タンク63の容量により運転時間が制限されるのと、吐出溝部65における溝深さδ1の管理が容易でないという問題点が有った。
【0005】
図7は他の潤滑方式(特許文献2,3等)を示している。この潤滑方式では、軸受内輪52の反負荷側(軸受背面側)の外径面に端面側を小径とする斜面部52bを設け、この斜面部52bよりも外径側に、運転中でも斜面部52bと接触しない程度の微小隙間δ2を介してエアオイル給油用ノズル53を配置し、かつそのノズル53の端部は軸受保持器55の内径側に来るようにしたものである。搬送エアに潤滑油を混合してなるエアオイルをノズル53の給油口53aから内輪52の上記斜面部52bに噴射することで、斜面部52bとノズル53の間に形成される隙間δ2でのポンピング作用と、斜面部52bに付着した潤滑油の表面張力および遠心力による内輪転走面52a方向への分力とを利用して、潤滑油を保持器55の内径面あるいは内輪転走面52aに導く。
【0006】
この潤滑方式は、それまでのエアオイル潤滑方式に比べて、軸受転動体54の公転に伴う風圧の影響を受けることなく潤滑油を軸受51内に供給できるので、騒音およびエア消費量を低減できる特徴が有る。しかし、エアの消費を完全に無くすものではなく、例えば高速運転時(dn200万)において、エア等の油供給媒体を使用せずに、軸受内に潤滑油を必要量だけ確実に供給しようとする場合には適用できない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−184705号公報
【特許文献2】
特開2002−54643号公報
【特許文献3】
特開2002−61657号公報
【0008】
この発明の目的は、エアの消費がなく、エアオイル潤滑方式の場合と同等な軸受の運転性能を確保できる転がり軸受の潤滑装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明における基本の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪、またはこの内輪に隣接して設けられた部材に、内径側に向く油溜凹部を設け、上記油溜凹部に溜まった潤滑油を上記内輪または上記内輪に隣接した部材の回転による遠心力で軸受内に導く油導き手段を設けたことを特徴とする。
この構成によると、ノズルから吐出された潤滑油が、上記油溜凹部の形成された部材の回転に伴い、内径側を向く上記油溜凹部に溜められる。この溜められた潤滑油が、上記油導き手段により、内輪等の回転による遠心力により回転数に応じて軸受内に供給される。このため、エアオイル潤滑のような間欠給油でなく、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。また、潤滑油はノズルへ圧送するだけで良いため、エア等で加圧する場合にもエアの消費が生じない。潤滑油の供給源も、エアオイル潤滑の場合に比べて、エアと潤滑油の混合手段が不要になるため、簡単な構造のもので済み、低コスト化が期待できる。
上記油導き手段は、遠心力の利用により潤滑油を軸受内に導けるものであれば良く、種々の構成のものが採用できる。この基本の転がり軸受の潤滑装置は、具体的には、例えば、次の第1,第2の転がり軸受の潤滑装置とされる。
【0010】
この発明における第1の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪に隣接する環状の油受け部材を設ける。この油受け部材は、上記内輪と反対側の幅面に突出する環状鍔を外径部に有し、かつこの環状鍔の内径面に油溜凹部を有するものとする。上記油受け部材に上記油溜凹部から内輪の転走面へ潤滑油を供給する給油路を設ける。
この構成によると、ノズルから吐出された潤滑油が油受け部材の回転により、油受け部材における環状鍔の内周側の油溜凹部に溜まる。溜まった潤滑油は、油溜凹部に連通する給油路を経て、内輪の回転による遠心力で転がり軸受内に流入する。このため、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。上記給油路が、上記基本の潤滑装置における油導き手段を構成する。
【0011】
第1の転がり軸受の潤滑装置において、上記内輪の転走面よりも上記油受け部材側の外径面を転走面側が大径となる斜面部とし、この斜面部の外周に位置して上記斜面部との間に油貯留空間を形成する環状の内向き鍔を上記油受け部材に設けても良い。この内向き鍔の先端を保持器の内径側に位置させ、かつ先端の内径面を上記斜面部に微小隙間が生じる程度に近接させ、上記油留空間に油吸収部材を充填しても良い。
この構成の場合、油受け部材から流出した潤滑油が転がり軸受における内輪斜面部に流入し、その潤滑油が斜面部と油受け部材の内向き鍔との間に形成される油貯留空間に充填した油吸収材で蓄えられる。この蓄えられ潤滑油は、内輪斜面部に付着し、この斜面部と油受け部材の内向き鍔先端との間に形成される微小隙間を通り、表面張力と内輪の回転による遠心力とで斜面部を伝わって転走面へ供給される。上記内輪斜面部は、上記給油路と共に上記油導き手段を構成する。
【0012】
この発明の第2の転がり軸受の潤滑装置は、上記第1の潤滑装置において、内輪の上記油受け部材側の幅面を転動体の幅内に位置させ、上記油受け部材の内輪に接する幅面の外周部に、上記内輪の幅面とで円周方向に延びる給油溝を形成する切欠部を設け、上記油溜凹部から上記切欠部に貫通して上記給油路の一部を構成する油通過孔を設けたものである。
この構成の場合、油受け部材における環状鍔の内周面の油溜凹部に溜まった潤滑油が、油通過孔から切欠部に流入し、この切欠部とで給油溝を形成する内輪幅面に付着する。この内輪幅面は、転動体のほぼ直下位置にあることから、この内輪幅面に付着した潤滑油は遠心力により内輪幅面に沿って軸受内に供給される。上記給油溝は、上記給油路と共に上記油導き手段を構成する。
【0013】
この発明の第3の他の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪の外径面に転走面側が大径となる斜面部を形成し、この斜面部の形成側の内輪幅面の内径部を環状に切り欠いてこの幅面の外周部に環状鍔を形成し、この環状鍔の内径面に油溜凹部を設けたことを特徴とする。
この構成によると、ノズルから吐出される潤滑油が、内輪の回転により、内輪の環状鍔の内径面の油溜凹部に溜まる。この溜まった潤滑油は、油溜凹部が内輪の幅面に隣接していることから、内輪の回転による遠心力で内輪幅面に流出し、さらに内輪幅面から斜面部へと付着しながら流れて軸受内に流入する。そのため、この場合も回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。この構成の場合は、上記油溜凹部の位置を、内輪の幅面に形成した環状鍔の内径面とした構成、および上記内輪の斜面部により、上記油導き手段が構成される。
【0014】
この発明の上記各構成の場合に、上記転がり軸受の外輪に隣接する間座に上記ノズルを設け、このノズル付きの間座の上記ノズルに通じる間座内油流路に、上記ノズルから吐出する潤滑油の流量を調整可能な流量調整装置を設けても良い。このように流量調整装置を設けた場合、潤滑油の供給源から送られる循環油が流量調整されてノズルに供給される。そのため、軸受内に供給する潤滑油の流量を容易に目標値に調整できる。ノズルを設けた間座内に流量調整装置が配置されることから、ノズルの直ぐ近傍で流量調整できて、安定して微量供給が行え、また流量調整装置の配置場所を他に求めることが不要となる。
また、この発明の上記各構成の場合に、上記ノズルは先端を上記油溜凹部または環状鍔の内径側へ位置させてもよい。ノズルをこの位置に設けることで、潤滑油を確実に送り込むことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1および図2と共に説明する。図1はこの実施形態の転がり軸受の潤滑装置を備えたスピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置24は、工作機械に応用されるものであり、主軸25の端部に工具またはワークのチャックが取付けられる。主軸25は、軸方向に離れた複数(ここでは2つ)の転がり軸受1により支持されている。各転がり軸受1の内輪2は主軸25の外径面に嵌合し、外輪3はハウジング26の内径面に嵌合している。これら内外輪2,3は、内輪押さえ27および外輪押さえ28により、ハウジング26内に固定されている。ハウジング26は、内周ハウジング26Aと外周ハウジング26Bの二重構造とされ、内外のハウジング26A,26B間に冷却媒体流路29が形成されている。両転がり軸受1の外輪3間には外輪間座30およびノズル付き外輪間座31が、また内輪2間には内輪間座32がそれぞれ設けられている。主軸25の一端部には、内輪押さえ27に押し当てて転がり軸受1を固定する軸受固定ナット33が螺着されている。
【0016】
転がり軸受1の潤滑装置は、スピンドル装置24の外部の油供給部34から潤滑油を供給し、これをノズル6から微量ずつ吐出して転がり軸受1内に供給するものである。この潤滑装置は、図2に拡大断面図で示すように、上記油供給部34およびノズル6の他に、転がり軸受1の内輪2に隣接して設けられた環状の油受け部材7を有する。油受け部材7は、転がり軸受1の内輪2と内輪間座32とで挟まれて軸方向の位置決めがなされる。転がり軸受1は、内輪2と外輪3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させたものである。転動体4は例えばボールからなり、保持器5のポケット5a内に保持される。この転がり軸受1における内輪2の転走面2aよりも上記油受け部材7側の外径面は、転走面2a側が大径となる斜面部2bとされている。
【0017】
油受け部材7には、内輪2と反対側の幅面に突出する環状鍔8が外径部に形成されており、この環状鍔8の内径面に油溜凹部9を有する。油溜凹部9は、全周にわたる溝で構成してもよいし、円周方向に複数個を等間隔に隔てて分散配置したものでもよい。また、この油受け部材7には、上記環状鍔8と反対側に延びる環状の内向き鍔10が設けられている。この内向き鍔10は、転がり軸受1における内輪2の斜面部2bの外周に位置してこの斜面部2bとの間に油貯留空間11を形成する。内向き鍔10の先端は保持器5の幅内の内径側に位置させてあり、かつ先端の内径面を、上記斜面部2bとの間に微小隙間δが生じる程度に斜面部2bに接近させてある。上記油貯留空間11にはフェルト等の油吸収部材12が充填されている。油受け部材7には、上記油溜凹部9から内輪2の転走面2aへ潤滑油を供給する給油路13が貫通して設けられている。給油路13は、円周上に複数個設けられるか、または各油溜凹部9ごとに複数個設けられる。これら給油路9と内輪2の斜面部2bにより、油溜凹部9の潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49が構成される。
【0018】
ノズル6は、転がり軸受1の外輪3に隣接するノズル付き外輪間座31に一体に設けられる。ノズル付き外輪間座31内には、ノズル6に通じる間座内油流路14が設けられている。この間座内油流路14には、ノズル6から吐出する潤滑油の流量を調整可能な流量調整装置15が設けられている。この流量調整装置15は流量調整弁からなる。流量調整装置15は、上記間座内油流路14の入口付近に形成されたテーパ孔14aにテーパニードル16をテーパ孔14aの軸方向に進退調整可能に設置して構成される。テーパニードル16の進退調整は、テーパ孔14a内に回動不能に配置されてテーパニードル16に螺合するロックナット17に対して、テーパニードル16を回すことにより行われる。この進退調整により、テーパ孔14aとテーパニードル16の間の隙間が調整され、その調整で上記間座内油流路14を流れる潤滑油の流量が調整される。間座内油流路14の入口付近におけるロックナット17を挟んだ上流側と下流側の各位置にはOリング18が設けられ、これによりロックナット17の位置決めとシールとが図られている。
【0019】
間座内油流路14の入口は、内周ハウジング26Aに設けられた油供給路19に連通している。油供給路19は、図1のように、内周ハウジング26Aに供給口19aを有し、内周ハウンジグ26Aの内面にハウジング部出口19bを有している。供給口19aは、配管20を介してスピンドル装置24の外部の油供給部34に接続されている。油供給部34は、上記配管20を介してスピンドル装置24内に潤滑油を圧送するものであって、潤滑油を貯留する密封油タンク21と、この油タンク21にエア圧力源から送られてくる圧力エアの圧力調整を行う圧力調整弁22と、その圧力エアによりスピンドル装置24に圧送される潤滑油を途中でろ過する油ろ過装置23とを備える。
【0020】
上記構成の転がり軸受の潤滑装置の作用を説明する。スピンドル装置24の外部にある油供給部34において、エア圧力源から密封型の油タンク21内に圧力エアを供給することにより、油タンク21内の潤滑油が油ろ過装置23を通過し、配管20、内周ハウジング26Aの油供給路19、およびノズル付き内輪間座31の間座内油流路14を経てノズル6に圧送される。ノズル6での潤滑油の吐出量は、間座内油流路14の入口付近に設けられた流量調整装置15により量調整される。具体的には、ロックナット17に対しテーパニードル16を相対回転させることで、テーパニードル16をテーパ孔14aの軸方向に進退させて、テーパ孔14aとテーパニードル16の間の隙間を調整し、目標とする潤滑油の流量に対応した位置にテーパニードル16を固定する。
【0021】
このようにして流量調整されノズル6より吐出された潤滑油は、油受け部材7の回転により、油受け部材7における環状鍔8の内周側の油溜凹部9に溜まる。各油溜凹部9に溜まった潤滑油は、これら油溜凹部9に連通する給油路13を経て、転がり軸受1における内輪2の斜面部2bに流入する。斜面部2bに流入した潤滑油は、斜面部2bと油受け部材7の内向き鍔10との間に形成される油貯留空間11に充填した油吸収部材12に蓄えられる。この油吸収部材12は、潤滑油の貯留と、潤滑油を斜面部2bに付着させる機能を持つ。斜面部2bに付着した潤滑油は、潤滑油に作用する遠心力と潤滑油の表面張力とにより、上記微小隙間δを通り、斜面部2bに沿って転がり軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。なお、内輪斜面部2bのテーパ角度は、d=φ100軸受を20000rpmで運転したとき、斜面上での油飛散がなく、軸受内に確実に潤滑油を流入させることができる角度(例えば13°)以上とする必要がある。
【0022】
この転がり軸受の潤滑装置によると、エアオイル潤滑のような間欠給油とせずに、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。また潤滑油はノズル6へ圧送するだけで良いため、エアの消費が生じない。油供給部34も、エアオイル潤滑の場合に比べて、エアと潤滑油の混合手段が不要になるため、簡単な構造のもので済み、低コスト化が期待できる。
【0023】
図3は、この発明における第2の実施形態を示す。この実施形態の転がり軸受の潤滑装置は、図1および図2に示した第1の実施形態において、内輪2の油受け部材7側の幅面を転動体4の幅内に位置させ、油受け部材7の内輪2に接する幅面の外周部に、内輪2の幅面とで図3(B)のように径方向に延びる給油溝37を形成する切欠部7aを設ける。また、油溜凹部9から上記切欠部7aに貫通する油通過孔38を、給油路13の一部として設ける。この場合、油受け部材7の給油路13は、切欠部7aと油通過孔38とで構成される。この給油路13と給油溝37とで、油溜凹部9の潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49が構成される。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0024】
この実施形態の場合、流量調整されてノズル6から吐出される潤滑油は、油受け部材7の回転により、油受け部材7の環状鍔8の内周面の油溜凹部9に溜まる。油溜凹部9に溜まった潤滑油は、油通過孔38から切欠部7aに流入し、この切欠部7aとで給油溝37を形成する内輪2の幅面に付着する。油受け部材7に対向する内輪2の幅面は、転動体4のほぼ直下位置にあることから、この内輪2の幅面に付着した潤滑油は、遠心力により内輪2の幅面に沿って軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。
【0025】
図4は、この発明の第3の実施形態を示す。この実施形態の転がり軸受の潤滑装置では、図1および図2に示した第1の実施形態において、内輪斜面部2bの形成側の内輪端面の内径部を環状に切り欠いて、すなわち切り欠いた形状として、この端面の外周部に環状鍔40を形成する。この環状鍔40の内径面に油溜凹部41を設けると共に、ノズル6の先端を上記環状鍔40の内径側に位置させる。第1の実施形態における油受け部材7は省略している。油溜凹部41には、内輪2の端面に連通する複数の切欠溝42が円周方向に分散して形成されている。油導き手段49は、油溜凹部41の位置を内輪幅面に形成した環状鍔40の内径面とした構成、および内輪2の斜面部2bによって構成される。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0026】
この実施形態の場合、流量調整されてノズル6から吐出される潤滑油は、内輪2の回転により、内輪2の環状鍔40の内径面の油溜凹部41に溜まる。油溜凹部41に溜まった潤滑油は、切欠溝42を経て内輪2の端面に流出し、さらに内輪2の端面から斜面部2bへと付着しながら流れて軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。なお、内輪2の端面と斜面部2bとの繋ぎ部2cはR面とするのが好ましく、これにより内輪端面から斜面部2bへの潤滑油の移動を円滑にできる。
なお、上記第3の実施形態において、油溜凹部41にノズル6より油が付着することが重要であり、切欠溝42や、その溝が形成されている内径側の突出部がなくてもよい。また、油溜凹部41は、繋ぎ部2cが形成された幅面側へテーパ角を有しててよい。
【0027】
【発明の効果】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪、またはこの内輪に隣接して設けられた部材に、内径側に向く油溜凹部を設け、上記ノズルは先端を上記油溜凹部の内径側に位置させ、上記油溜凹部に溜まった潤滑油を上記内輪または上記内輪に隣接した部材の回転による遠心力で軸受内に導く油導き手段を設けたものであるため、回転数に対応した微量の連続給油が可能であって、安定した潤滑性能が得られ、エアオイル潤滑方式の場合と同等な軸受の運転性能を確保できる。また、エアの消費がなく、騒音の低減と大幅な省エネが期待でき、また潤滑油の供給装置も、エアオイル潤滑の場合に比べて構造が簡単なものとでき、安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置を備えたスピンドル装置の構成図である。
【図2】同潤滑装置の要部を示す断面図である。
【図3】(A)は第2の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置の要部を示す断面図、(B)は同潤滑装置における油受け部材の切欠部を示す平面図である。
【図4】(A)は第3の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置を示す断面図、(B)は同潤滑装置における内輪環状鍔の切欠溝を(A)の矢印Aの方向から見た図である。
【図5】従来例の断面図である。
【図6】(A)は従来例における要部拡大断面図、(B)は同従来例における切欠溝の平面図である。
【図7】他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受
2…内輪
2a…転走面
2b…斜面部
5…保持器
6…ノズル
7…油受け部材
7a…切欠部
8…環状鍔
9…油溜凹部
10…内向き鍔
11…油貯留空間
12…油吸収部材
13…給油路
14…間座内油流路
37…給油溝
38…油通過孔
40…環状鍔
41…油溜凹部
42…切欠溝
49…油導き手段
δ…微小隙間
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械主軸用の転がり軸受等に適用される潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸装置は、加工能率を上げるために、ますます高速化の傾向にある。このような主軸装置の高速化に伴い、主軸軸受の潤滑方式として、搬送エアに潤滑用オイルを混合したものを、ノズルから軸受内に噴射することで軸受の潤滑を行うエアオイル潤滑方式が多く用いられている。
【0003】
しかし、このエアオイル潤滑方式は多量の高圧エアを必要とするので、騒音,省エネ,省資源の観点から問題が有る。そこで、エア消費量を削減して上記問題を解決する種々の新しい潤滑方式が提案されている(例えば特許文献1〜3)。図5,図6はそのうちの一つの潤滑方式(特許文献1)を示している。この潤滑方式では、内輪間座62に潤滑油を溜めるタンク63を設け、主軸55の回転に伴って生じる潤滑油への遠心力を利用して軸受51内へ潤滑油を供給するものである。すなわち、主軸55が回転すると、図6(A)に拡大して示すように、タンク63内の潤滑油は遠心力によりタンク63に連通する油連通孔64を経て、軸受内輪52に対向する内輪間座62の幅面に形成された吐出溝部65に圧送される。図6(B)に示す上記吐出溝部66の溝深さδ1は0.001mm程度の極浅いものとされ(溝幅Bは1mm程度)、この吐出溝部65で潤滑油の吐出量が調整される。量調整された潤滑油は、まず内輪端面に付着し、潤滑油の持つ表面張力と遠心力により、内輪52表面に付着しながら軸受51内に流入する。
【0004】
この潤滑方式はエアを必要としないが、タンク63の容量により運転時間が制限されるのと、吐出溝部65における溝深さδ1の管理が容易でないという問題点が有った。
【0005】
図7は他の潤滑方式(特許文献2,3等)を示している。この潤滑方式では、軸受内輪52の反負荷側(軸受背面側)の外径面に端面側を小径とする斜面部52bを設け、この斜面部52bよりも外径側に、運転中でも斜面部52bと接触しない程度の微小隙間δ2を介してエアオイル給油用ノズル53を配置し、かつそのノズル53の端部は軸受保持器55の内径側に来るようにしたものである。搬送エアに潤滑油を混合してなるエアオイルをノズル53の給油口53aから内輪52の上記斜面部52bに噴射することで、斜面部52bとノズル53の間に形成される隙間δ2でのポンピング作用と、斜面部52bに付着した潤滑油の表面張力および遠心力による内輪転走面52a方向への分力とを利用して、潤滑油を保持器55の内径面あるいは内輪転走面52aに導く。
【0006】
この潤滑方式は、それまでのエアオイル潤滑方式に比べて、軸受転動体54の公転に伴う風圧の影響を受けることなく潤滑油を軸受51内に供給できるので、騒音およびエア消費量を低減できる特徴が有る。しかし、エアの消費を完全に無くすものではなく、例えば高速運転時(dn200万)において、エア等の油供給媒体を使用せずに、軸受内に潤滑油を必要量だけ確実に供給しようとする場合には適用できない。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−184705号公報
【特許文献2】
特開2002−54643号公報
【特許文献3】
特開2002−61657号公報
【0008】
この発明の目的は、エアの消費がなく、エアオイル潤滑方式の場合と同等な軸受の運転性能を確保できる転がり軸受の潤滑装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明における基本の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪、またはこの内輪に隣接して設けられた部材に、内径側に向く油溜凹部を設け、上記油溜凹部に溜まった潤滑油を上記内輪または上記内輪に隣接した部材の回転による遠心力で軸受内に導く油導き手段を設けたことを特徴とする。
この構成によると、ノズルから吐出された潤滑油が、上記油溜凹部の形成された部材の回転に伴い、内径側を向く上記油溜凹部に溜められる。この溜められた潤滑油が、上記油導き手段により、内輪等の回転による遠心力により回転数に応じて軸受内に供給される。このため、エアオイル潤滑のような間欠給油でなく、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。また、潤滑油はノズルへ圧送するだけで良いため、エア等で加圧する場合にもエアの消費が生じない。潤滑油の供給源も、エアオイル潤滑の場合に比べて、エアと潤滑油の混合手段が不要になるため、簡単な構造のもので済み、低コスト化が期待できる。
上記油導き手段は、遠心力の利用により潤滑油を軸受内に導けるものであれば良く、種々の構成のものが採用できる。この基本の転がり軸受の潤滑装置は、具体的には、例えば、次の第1,第2の転がり軸受の潤滑装置とされる。
【0010】
この発明における第1の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪に隣接する環状の油受け部材を設ける。この油受け部材は、上記内輪と反対側の幅面に突出する環状鍔を外径部に有し、かつこの環状鍔の内径面に油溜凹部を有するものとする。上記油受け部材に上記油溜凹部から内輪の転走面へ潤滑油を供給する給油路を設ける。
この構成によると、ノズルから吐出された潤滑油が油受け部材の回転により、油受け部材における環状鍔の内周側の油溜凹部に溜まる。溜まった潤滑油は、油溜凹部に連通する給油路を経て、内輪の回転による遠心力で転がり軸受内に流入する。このため、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。上記給油路が、上記基本の潤滑装置における油導き手段を構成する。
【0011】
第1の転がり軸受の潤滑装置において、上記内輪の転走面よりも上記油受け部材側の外径面を転走面側が大径となる斜面部とし、この斜面部の外周に位置して上記斜面部との間に油貯留空間を形成する環状の内向き鍔を上記油受け部材に設けても良い。この内向き鍔の先端を保持器の内径側に位置させ、かつ先端の内径面を上記斜面部に微小隙間が生じる程度に近接させ、上記油留空間に油吸収部材を充填しても良い。
この構成の場合、油受け部材から流出した潤滑油が転がり軸受における内輪斜面部に流入し、その潤滑油が斜面部と油受け部材の内向き鍔との間に形成される油貯留空間に充填した油吸収材で蓄えられる。この蓄えられ潤滑油は、内輪斜面部に付着し、この斜面部と油受け部材の内向き鍔先端との間に形成される微小隙間を通り、表面張力と内輪の回転による遠心力とで斜面部を伝わって転走面へ供給される。上記内輪斜面部は、上記給油路と共に上記油導き手段を構成する。
【0012】
この発明の第2の転がり軸受の潤滑装置は、上記第1の潤滑装置において、内輪の上記油受け部材側の幅面を転動体の幅内に位置させ、上記油受け部材の内輪に接する幅面の外周部に、上記内輪の幅面とで円周方向に延びる給油溝を形成する切欠部を設け、上記油溜凹部から上記切欠部に貫通して上記給油路の一部を構成する油通過孔を設けたものである。
この構成の場合、油受け部材における環状鍔の内周面の油溜凹部に溜まった潤滑油が、油通過孔から切欠部に流入し、この切欠部とで給油溝を形成する内輪幅面に付着する。この内輪幅面は、転動体のほぼ直下位置にあることから、この内輪幅面に付着した潤滑油は遠心力により内輪幅面に沿って軸受内に供給される。上記給油溝は、上記給油路と共に上記油導き手段を構成する。
【0013】
この発明の第3の他の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪の外径面に転走面側が大径となる斜面部を形成し、この斜面部の形成側の内輪幅面の内径部を環状に切り欠いてこの幅面の外周部に環状鍔を形成し、この環状鍔の内径面に油溜凹部を設けたことを特徴とする。
この構成によると、ノズルから吐出される潤滑油が、内輪の回転により、内輪の環状鍔の内径面の油溜凹部に溜まる。この溜まった潤滑油は、油溜凹部が内輪の幅面に隣接していることから、内輪の回転による遠心力で内輪幅面に流出し、さらに内輪幅面から斜面部へと付着しながら流れて軸受内に流入する。そのため、この場合も回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。この構成の場合は、上記油溜凹部の位置を、内輪の幅面に形成した環状鍔の内径面とした構成、および上記内輪の斜面部により、上記油導き手段が構成される。
【0014】
この発明の上記各構成の場合に、上記転がり軸受の外輪に隣接する間座に上記ノズルを設け、このノズル付きの間座の上記ノズルに通じる間座内油流路に、上記ノズルから吐出する潤滑油の流量を調整可能な流量調整装置を設けても良い。このように流量調整装置を設けた場合、潤滑油の供給源から送られる循環油が流量調整されてノズルに供給される。そのため、軸受内に供給する潤滑油の流量を容易に目標値に調整できる。ノズルを設けた間座内に流量調整装置が配置されることから、ノズルの直ぐ近傍で流量調整できて、安定して微量供給が行え、また流量調整装置の配置場所を他に求めることが不要となる。
また、この発明の上記各構成の場合に、上記ノズルは先端を上記油溜凹部または環状鍔の内径側へ位置させてもよい。ノズルをこの位置に設けることで、潤滑油を確実に送り込むことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1および図2と共に説明する。図1はこの実施形態の転がり軸受の潤滑装置を備えたスピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置24は、工作機械に応用されるものであり、主軸25の端部に工具またはワークのチャックが取付けられる。主軸25は、軸方向に離れた複数(ここでは2つ)の転がり軸受1により支持されている。各転がり軸受1の内輪2は主軸25の外径面に嵌合し、外輪3はハウジング26の内径面に嵌合している。これら内外輪2,3は、内輪押さえ27および外輪押さえ28により、ハウジング26内に固定されている。ハウジング26は、内周ハウジング26Aと外周ハウジング26Bの二重構造とされ、内外のハウジング26A,26B間に冷却媒体流路29が形成されている。両転がり軸受1の外輪3間には外輪間座30およびノズル付き外輪間座31が、また内輪2間には内輪間座32がそれぞれ設けられている。主軸25の一端部には、内輪押さえ27に押し当てて転がり軸受1を固定する軸受固定ナット33が螺着されている。
【0016】
転がり軸受1の潤滑装置は、スピンドル装置24の外部の油供給部34から潤滑油を供給し、これをノズル6から微量ずつ吐出して転がり軸受1内に供給するものである。この潤滑装置は、図2に拡大断面図で示すように、上記油供給部34およびノズル6の他に、転がり軸受1の内輪2に隣接して設けられた環状の油受け部材7を有する。油受け部材7は、転がり軸受1の内輪2と内輪間座32とで挟まれて軸方向の位置決めがなされる。転がり軸受1は、内輪2と外輪3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させたものである。転動体4は例えばボールからなり、保持器5のポケット5a内に保持される。この転がり軸受1における内輪2の転走面2aよりも上記油受け部材7側の外径面は、転走面2a側が大径となる斜面部2bとされている。
【0017】
油受け部材7には、内輪2と反対側の幅面に突出する環状鍔8が外径部に形成されており、この環状鍔8の内径面に油溜凹部9を有する。油溜凹部9は、全周にわたる溝で構成してもよいし、円周方向に複数個を等間隔に隔てて分散配置したものでもよい。また、この油受け部材7には、上記環状鍔8と反対側に延びる環状の内向き鍔10が設けられている。この内向き鍔10は、転がり軸受1における内輪2の斜面部2bの外周に位置してこの斜面部2bとの間に油貯留空間11を形成する。内向き鍔10の先端は保持器5の幅内の内径側に位置させてあり、かつ先端の内径面を、上記斜面部2bとの間に微小隙間δが生じる程度に斜面部2bに接近させてある。上記油貯留空間11にはフェルト等の油吸収部材12が充填されている。油受け部材7には、上記油溜凹部9から内輪2の転走面2aへ潤滑油を供給する給油路13が貫通して設けられている。給油路13は、円周上に複数個設けられるか、または各油溜凹部9ごとに複数個設けられる。これら給油路9と内輪2の斜面部2bにより、油溜凹部9の潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49が構成される。
【0018】
ノズル6は、転がり軸受1の外輪3に隣接するノズル付き外輪間座31に一体に設けられる。ノズル付き外輪間座31内には、ノズル6に通じる間座内油流路14が設けられている。この間座内油流路14には、ノズル6から吐出する潤滑油の流量を調整可能な流量調整装置15が設けられている。この流量調整装置15は流量調整弁からなる。流量調整装置15は、上記間座内油流路14の入口付近に形成されたテーパ孔14aにテーパニードル16をテーパ孔14aの軸方向に進退調整可能に設置して構成される。テーパニードル16の進退調整は、テーパ孔14a内に回動不能に配置されてテーパニードル16に螺合するロックナット17に対して、テーパニードル16を回すことにより行われる。この進退調整により、テーパ孔14aとテーパニードル16の間の隙間が調整され、その調整で上記間座内油流路14を流れる潤滑油の流量が調整される。間座内油流路14の入口付近におけるロックナット17を挟んだ上流側と下流側の各位置にはOリング18が設けられ、これによりロックナット17の位置決めとシールとが図られている。
【0019】
間座内油流路14の入口は、内周ハウジング26Aに設けられた油供給路19に連通している。油供給路19は、図1のように、内周ハウジング26Aに供給口19aを有し、内周ハウンジグ26Aの内面にハウジング部出口19bを有している。供給口19aは、配管20を介してスピンドル装置24の外部の油供給部34に接続されている。油供給部34は、上記配管20を介してスピンドル装置24内に潤滑油を圧送するものであって、潤滑油を貯留する密封油タンク21と、この油タンク21にエア圧力源から送られてくる圧力エアの圧力調整を行う圧力調整弁22と、その圧力エアによりスピンドル装置24に圧送される潤滑油を途中でろ過する油ろ過装置23とを備える。
【0020】
上記構成の転がり軸受の潤滑装置の作用を説明する。スピンドル装置24の外部にある油供給部34において、エア圧力源から密封型の油タンク21内に圧力エアを供給することにより、油タンク21内の潤滑油が油ろ過装置23を通過し、配管20、内周ハウジング26Aの油供給路19、およびノズル付き内輪間座31の間座内油流路14を経てノズル6に圧送される。ノズル6での潤滑油の吐出量は、間座内油流路14の入口付近に設けられた流量調整装置15により量調整される。具体的には、ロックナット17に対しテーパニードル16を相対回転させることで、テーパニードル16をテーパ孔14aの軸方向に進退させて、テーパ孔14aとテーパニードル16の間の隙間を調整し、目標とする潤滑油の流量に対応した位置にテーパニードル16を固定する。
【0021】
このようにして流量調整されノズル6より吐出された潤滑油は、油受け部材7の回転により、油受け部材7における環状鍔8の内周側の油溜凹部9に溜まる。各油溜凹部9に溜まった潤滑油は、これら油溜凹部9に連通する給油路13を経て、転がり軸受1における内輪2の斜面部2bに流入する。斜面部2bに流入した潤滑油は、斜面部2bと油受け部材7の内向き鍔10との間に形成される油貯留空間11に充填した油吸収部材12に蓄えられる。この油吸収部材12は、潤滑油の貯留と、潤滑油を斜面部2bに付着させる機能を持つ。斜面部2bに付着した潤滑油は、潤滑油に作用する遠心力と潤滑油の表面張力とにより、上記微小隙間δを通り、斜面部2bに沿って転がり軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。なお、内輪斜面部2bのテーパ角度は、d=φ100軸受を20000rpmで運転したとき、斜面上での油飛散がなく、軸受内に確実に潤滑油を流入させることができる角度(例えば13°)以上とする必要がある。
【0022】
この転がり軸受の潤滑装置によると、エアオイル潤滑のような間欠給油とせずに、回転数に対応した微量の連続給油が可能であり、安定した潤滑性能が得られる。また潤滑油はノズル6へ圧送するだけで良いため、エアの消費が生じない。油供給部34も、エアオイル潤滑の場合に比べて、エアと潤滑油の混合手段が不要になるため、簡単な構造のもので済み、低コスト化が期待できる。
【0023】
図3は、この発明における第2の実施形態を示す。この実施形態の転がり軸受の潤滑装置は、図1および図2に示した第1の実施形態において、内輪2の油受け部材7側の幅面を転動体4の幅内に位置させ、油受け部材7の内輪2に接する幅面の外周部に、内輪2の幅面とで図3(B)のように径方向に延びる給油溝37を形成する切欠部7aを設ける。また、油溜凹部9から上記切欠部7aに貫通する油通過孔38を、給油路13の一部として設ける。この場合、油受け部材7の給油路13は、切欠部7aと油通過孔38とで構成される。この給油路13と給油溝37とで、油溜凹部9の潤滑油を遠心力で軸受内に導く油導き手段49が構成される。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0024】
この実施形態の場合、流量調整されてノズル6から吐出される潤滑油は、油受け部材7の回転により、油受け部材7の環状鍔8の内周面の油溜凹部9に溜まる。油溜凹部9に溜まった潤滑油は、油通過孔38から切欠部7aに流入し、この切欠部7aとで給油溝37を形成する内輪2の幅面に付着する。油受け部材7に対向する内輪2の幅面は、転動体4のほぼ直下位置にあることから、この内輪2の幅面に付着した潤滑油は、遠心力により内輪2の幅面に沿って軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。
【0025】
図4は、この発明の第3の実施形態を示す。この実施形態の転がり軸受の潤滑装置では、図1および図2に示した第1の実施形態において、内輪斜面部2bの形成側の内輪端面の内径部を環状に切り欠いて、すなわち切り欠いた形状として、この端面の外周部に環状鍔40を形成する。この環状鍔40の内径面に油溜凹部41を設けると共に、ノズル6の先端を上記環状鍔40の内径側に位置させる。第1の実施形態における油受け部材7は省略している。油溜凹部41には、内輪2の端面に連通する複数の切欠溝42が円周方向に分散して形成されている。油導き手段49は、油溜凹部41の位置を内輪幅面に形成した環状鍔40の内径面とした構成、および内輪2の斜面部2bによって構成される。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0026】
この実施形態の場合、流量調整されてノズル6から吐出される潤滑油は、内輪2の回転により、内輪2の環状鍔40の内径面の油溜凹部41に溜まる。油溜凹部41に溜まった潤滑油は、切欠溝42を経て内輪2の端面に流出し、さらに内輪2の端面から斜面部2bへと付着しながら流れて軸受1内に流入し、軸受1の潤滑に供される。なお、内輪2の端面と斜面部2bとの繋ぎ部2cはR面とするのが好ましく、これにより内輪端面から斜面部2bへの潤滑油の移動を円滑にできる。
なお、上記第3の実施形態において、油溜凹部41にノズル6より油が付着することが重要であり、切欠溝42や、その溝が形成されている内径側の突出部がなくてもよい。また、油溜凹部41は、繋ぎ部2cが形成された幅面側へテーパ角を有しててよい。
【0027】
【発明の効果】
この発明の転がり軸受の潤滑装置は、外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪、またはこの内輪に隣接して設けられた部材に、内径側に向く油溜凹部を設け、上記ノズルは先端を上記油溜凹部の内径側に位置させ、上記油溜凹部に溜まった潤滑油を上記内輪または上記内輪に隣接した部材の回転による遠心力で軸受内に導く油導き手段を設けたものであるため、回転数に対応した微量の連続給油が可能であって、安定した潤滑性能が得られ、エアオイル潤滑方式の場合と同等な軸受の運転性能を確保できる。また、エアの消費がなく、騒音の低減と大幅な省エネが期待でき、また潤滑油の供給装置も、エアオイル潤滑の場合に比べて構造が簡単なものとでき、安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置を備えたスピンドル装置の構成図である。
【図2】同潤滑装置の要部を示す断面図である。
【図3】(A)は第2の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置の要部を示す断面図、(B)は同潤滑装置における油受け部材の切欠部を示す平面図である。
【図4】(A)は第3の実施形態にかかる転がり軸受の潤滑装置を示す断面図、(B)は同潤滑装置における内輪環状鍔の切欠溝を(A)の矢印Aの方向から見た図である。
【図5】従来例の断面図である。
【図6】(A)は従来例における要部拡大断面図、(B)は同従来例における切欠溝の平面図である。
【図7】他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受
2…内輪
2a…転走面
2b…斜面部
5…保持器
6…ノズル
7…油受け部材
7a…切欠部
8…環状鍔
9…油溜凹部
10…内向き鍔
11…油貯留空間
12…油吸収部材
13…給油路
14…間座内油流路
37…給油溝
38…油通過孔
40…環状鍔
41…油溜凹部
42…切欠溝
49…油導き手段
δ…微小隙間
Claims (7)
- 外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪、またはこの内輪に隣接して設けられた部材に、内径側に向く油溜凹部を設け、上記油溜凹部に溜まった潤滑油を上記内輪または上記内輪に隣接した部材の回転による遠心力で軸受内に導く油導き手段を設けたことを特徴とする転がり軸受の潤滑装置。
- 外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪に隣接する環状の油受け部材を設け、この油受け部材は、上記内輪と反対側の幅面に突出する環状鍔を外径部に有し、かつこの環状鍔の内径面に油溜凹部を有するものとし、上記油受け部材に上記油溜凹部から内輪の転走面へ潤滑油を供給する給油路を設けたことを特徴とする転がり軸受の潤滑装置。
- 請求項2において、上記内輪の転走面よりも上記油受け部材側の外径面を転走面側が大径となる斜面部とし、この斜面部の外周に位置して上記斜面部との間に油貯留空間を形成する環状の内向き鍔を上記油受け部材に設け、この内向き鍔の先端を保持器の内径側に位置させ、かつ先端の内径面を上記斜面部に微小隙間が生じる程度に近接させ、上記油留空間に油吸収部材を充填した転がり軸受の潤滑装置。
- 請求項2において、内輪の上記油受け部材側の幅面を転動体の幅内に位置させ、上記油受け部材の内輪に接する幅面の外周部に、上記内輪の幅面とで円周方向に延びる給油溝を形成する切欠部を設け、上記油溜凹部から上記切欠部に貫通して上記給油路の一部を構成する油通過孔を設けた転がり軸受の潤滑装置。
- 外部から供給される潤滑油をノズルから微量ずつ吐出して転がり軸受内に供給する転がり軸受の潤滑装置において、上記転がり軸受の内輪の外径面に転走面側が大径となる斜面部を形成し、この斜面部の形成側の内輪幅面の内径部を環状に切り欠いてこの幅面の外周部に環状鍔を形成し、この環状鍔の内径面に油溜凹部を設けたことを特徴とする転がり軸受の潤滑装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、上記転がり軸受の外輪に隣接する間座に上記ノズルを設け、このノズル付きの間座の上記ノズルに通じる間座内油流路に、上記ノズルから吐出する潤滑油の流量を調整可能な流量調整装置を設けた転がり軸受の潤滑装置。
- 請求項1または請求項2または請求項5において、上記ノズルは先端を上記油溜凹部または環状鍔の内径側に位置させた転がり軸受の潤滑装置。
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