JP2003278773A - 転がり軸受のエアオイル潤滑構造およびスピンドル装置 - Google Patents

転がり軸受のエアオイル潤滑構造およびスピンドル装置

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JP2003278773A
JP2003278773A JP2002059349A JP2002059349A JP2003278773A JP 2003278773 A JP2003278773 A JP 2003278773A JP 2002059349 A JP2002059349 A JP 2002059349A JP 2002059349 A JP2002059349 A JP 2002059349A JP 2003278773 A JP2003278773 A JP 2003278773A
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oil
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Futoshi Kosugi
太 小杉
Masatsugu Mori
正継 森
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑油を転走面へ効率良く到達させることが
できて、少量の潤滑油で必要な潤滑が行える潤滑構造を
提供する。特に、潤滑油が遠心力により斜面部の途中で
離れることがないようにする。 【解決手段】 転がり軸受1の内輪2の外径面に、この
内輪2の転走面2aに続く斜面部2bを設ける。この斜
面部2bに隙間δを持って沿うノズル部材6を設ける。
ノズル部材6には、斜面部2bに対面して開口するエア
オイルの吐出口8aを設ける。内輪斜面部2bの軸方向
に対する傾斜角度αは、 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333 とする。ただし、dnは軸受内径寸法(mm)と回転速度
(min -1)の積である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、転がり軸受のエ
アオイル潤滑構造およびこれを適用したスピンドル装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】工作機械のスピンドル装置は、加工能率
を上げるためますます高速化の傾向にある。このため、
軸受の潤滑も、搬送エアに潤滑用オイルを混合して、内
輪転走面に直接に噴きつけるエアオイル給油が増加しつ
つある。このようなエアオイル給油の一例として、本発
明者は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走
面に続く斜面部を設けると共に、この斜面部に所定の隙
間を持って沿うノズル部材を設け、ノズル部材の前記斜
面部に対向するエアオイル吐出口からエアオイルを噴き
付けるようにした潤滑構造を試みた。転がり軸受として
は、アンギュラ玉軸受等が用いられる。
【0003】このようなエアオイル潤滑構造によると、
搬送エアに混合された潤滑油であるエアオイルが、ノズ
ル部材のエアオイル吐出口から吐出され、内輪の斜面部
とノズル部材間の隙間に導入される。この隙間に導入さ
れたエアオイルは、軸受運転時に隙間で生じる負圧吸引
作用によって軸受内部へ導かれ、また内輪斜面部に付着
した潤滑油の表面張力と、遠心力の斜面部大径側への分
力により、軸受内部の転走面あるいは保持器の内径面へ
導かれる。このように、内輪の斜面部にエアオイルを供
給し、転動体の転走経路へは直接にエアオイルを噴出さ
せないため、転動体の公転による風切り音の発生がな
く、騒音が低下する。また、エアの噴射によるオイル供
給ではなく、内輪の斜面部に供給されたエアオイルを内
輪の回転で軸受内に導くようにしたため、使用するエア
は、内輪の斜面部までオイルを搬送する役目でよく、使
用量を減らせる。そのため、エア量削減による省エネ効
果も期待できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記提案例で
は、転がり軸受の内輪斜面部の適切な傾斜角度を具体的
に示すには至っていない。このようなエアオイル潤滑構
造においては、内輪斜面部の傾斜角度を考慮せずに設計
した場合、斜面部に付着したエアオイルが遠心力の作用
で斜面部の途中から離れてしまうという問題が生じるこ
とが分かった。斜面部の途中から離れる結果、エアオイ
ルが軸受の転動体に効率良く到達せずに潤滑油不足が生
じる恐れがある。この場合、エアオイルのエア量・油量
を増やせば、潤滑不足を回避できるかも知れないが、油
量を増加させると攪拌抵抗の増大や温度上昇が懸念され
る。このエアオイル潤滑構造とした軸受を、例えばスピ
ンドル装置に適用した場合、軸受の温度上昇が主軸に温
度変化を与え、その精度に影響を与えることになる。し
たがって、できるだけ油量の少ない効率のよい潤滑を行
って、必要以上の温度上昇を避ける必要がある。また、
エア量の増加は、エネルギ消費を増加させるだけでな
く、コンプレッサに負担をかけ、騒音増加にも繋がって
しまう。
【0005】また、前記エアオイル潤滑構造を、図16
に示すような円筒ころ軸受41に適用した場合にも、内
輪42の斜面部42bの傾斜角度が適切でないと、上記
と同様な問題が生じる。すなわち、斜面部42bに噴き
付けられてこの斜面部42bを伝わって転走面42a側
に近づいて行った潤滑油が、同図に矢印Aで示すように
斜面部42bの大径部まで進んだ後に、遠心力により斜
面部42bから離れてしまい、保持器45の内径側に入
り込めないで保持器幅面に遮られる。そのため軸受41
の内部に到達できず、潤滑不足になる恐れがある。
【0006】この発明の目的は、エアオイル潤滑を使用
した転がり軸受において、潤滑油を転走面へ効率良く到
達させることができて、少量の潤滑油で必要な潤滑が行
える潤滑構造を提供することである。この発明の他の目
的は、この転がり軸受のエアオイル潤滑構造の作用が効
果的に得られ、特に、潤滑条件の厳しくなる軸受鍔面と
ころ端面の潤滑が良好に行えるスピンドル装置を提供す
ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明のエアオイル潤
滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転
走面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を持って沿
うノズル部材を設け、上記ノズル部材に、上記斜面部に
対面して開口するエアオイルの吐出口を設け、上記内輪
の斜面部の軸方向に対する傾斜角度αを、 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333 ただし、dn:軸受内径寸法(mm)と回転速度(min
-1)の積、としたものである。このように、内輪斜面
部の傾斜角度αの必要最小値を定めることで、潤滑油が
遠心力により斜面部の途中で離れることなく、内輪転走
面まで確実に到達できることが実験により確認された。
これにより、必要最小限の潤滑油で効率良く潤滑が行え
て、確実な潤滑を行いながら、温度上昇が抑制される。
したがって、耐焼き付性が向上し、より一層高速までの
使用が可能になる。またエア量についても必要最小限で
済んで、エネルギ消費が抑えられると共に、より一層の
騒音低減にも繋がる。
【0008】内輪斜面部の傾斜角度αの好ましい最大値
は、軸受形式によって異なり、内輪鍔付きの円筒ころ軸
受では、α≦35°とすることが好ましく、アンギュラ
玉軸受ではα≦25°とすることが好ましい。また、円
筒ころ軸受では、傾斜角度αの最小値を25°以上とす
ることがより好ましい。つまり、内輪鍔付きの円筒ころ
軸受では、αの値を25〜35°の範囲に設定すること
が好ましい。これは、次の理由による。円筒ころ軸受の
場合、傾斜角度αを25°以上にすると、ノズル部材の
先端を保持器の円環部の直下に設定し易くなる。また、
内輪鍔付きの円筒ころ軸受では、鍔付きとするために大
きな軸方向荷重を受ける必要があるが、傾斜角度αが3
5°を超えると、斜面部を設けた方の内輪端面の径方向
幅が狭くなり、この端面が接する内輪間座やハウジング
等との接触面積が小さくなって、大きな軸方向荷重を受
けられなくなる。アンギュラ玉軸受では、傾斜角度αが
25°を超えると、斜面部を設けた方の内輪端面の径方
向幅が狭くなり、この端面が接する内輪間座やハウジン
グ等との接触面積が小さくなって、大きな軸方向荷重を
受けられなくなる。
【0009】この発明において、上記斜面部の傾斜角度
αと、上記吐出孔のエアオイルの吐出方向が軸方向に対
して成す角度である吐出角度βとの関係を、 α<90°−β としても良い。すなわち、斜面部の傾斜角度αを、エア
オイルの吐出方向と斜面部との成す角度が90°よりも
大きくなるように設定する。このように傾斜角度αと吐
出角度βとの関係を設定することにより、吐出口から噴
射されるエアオイルが内輪の斜面部に衝突しても、遠心
力を受けて抵抗無く流れることができる。
【0010】この発明において、上記ノズル部材に、上
記斜面部に対面して開口するエアオイルの吐出溝を円周
方向に延びて設け、上記ノズル部材の吐出孔を、吐出口
が上記吐出溝内に開口するものとしても良い。このよう
に吐出溝を設けた場合、ノズル部材の吐出孔から吐出さ
れたエアオイルは、円周方向に延びる吐出溝を通って内
輪の斜面部とノズル部材間の隙間に導入される。そのた
め、吐出孔から吐出されたエアオイルは、斜面部とノズ
ル部材間の隙間に比べて広い吐出溝内で周方向に行き渡
り、全周に均等化される。したがって、少量の潤滑油で
より一層効率の良い確実な潤滑が行える。
【0011】また、この発明において、上記内輪の斜面
部に円周溝を設け、上記ノズル部材の上記吐出口を、上
記斜面部における上記円周溝の部分に対面して開口する
ものとしても良い。このように内輪に円周溝を設けた場
合、エアオイルは、ノズル部材の吐出孔から内輪の円周
溝に吐出され、円周溝内から内輪の斜面部とノズル部材
間の隙間に流れる。そのため、吐出孔から吐出されたエ
アオイルは、斜面部とノズル部材間の隙間に比べて広い
円周溝内で周方向に行き渡り、全周に均等化される。し
たがって、この場合も、少量の潤滑油でより一層効率の
良い確実な潤滑が行える。円周溝が設けられていても、
軸受運転時に生じる負圧吸引作用や遠心力等により、エ
アオイルは上記隙間へ円滑に流れ込むことができる。
【0012】この発明において、上記転がり軸受が円筒
ころ軸受である場合に、ころを保持する保持器を有し、
上記内輪の斜面部の大径側端の軸方向位置が、上記保持
器の上記ノズル部材側の幅面よりも上記転走面側に位置
するようにしても良い。なお上記大径側端と内輪転走面
との間に円筒面部が介在しても良い。このように斜面部
の大径側端の軸方向位置を設定することにより、内輪斜
面部を伝わって転走面側に流れる潤滑油が、保持器の幅
面に遮られることなく、軸受内部に円滑に導入される。
【0013】この発明のスピンドル装置は、工作機械の
主軸を支持するスピンドル装置であって、上記主軸をハ
ウジングに対してフロント側およびリア側の転がり軸受
によって支持し、上記リア側の転がり軸受を内輪鍔付き
の円筒ころ軸受とし、このリア側の転がり軸受に対し
て、この発明の上記いずれかの転がり軸受のエアオイル
潤滑構造を適用し、そのノズル部材を、転がり軸受のフ
ロント側に配置したものである。スピンドル装置のリア
側の軸受に鍔付きの円筒ころ軸受を使用した場合、運転
により発熱する軸膨張の影響で、リア側軸受におけるフ
ロント側の鍔面ところ端面の接触部分の面圧が増加する
ことになり、鍔面ところ端面との滑りによる摩耗に対し
て不利な条件となる。そのため、このリア側の軸受に対
して、この発明のエアオイル潤滑構造を適用し、ノズル
部材を、転がり軸受のフロント側に配置することによ
り、リア側軸受は、フロント側の鍔面ところ端面の接触
部に潤滑油が優先して供給されることになる。したがっ
て、この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造の作用
により、鍔面ところ端面との潤滑が効果的に行われる。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明の第1の実施形態を図1
〜図5と共に説明する。転がり軸受1は、内輪2と外輪
3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させた
ものである。内輪2と外輪3の幅は、互いに同じ幅とさ
れている。転動体4は、例えばボールからなり、保持器
5のポケット内に保持される。この転がり軸受1の内輪
2の外径面に、転走面2aに続く斜面部2bを設け、こ
の斜面部2bに隙間δを持って沿うノズル部材6を設け
る。斜面部2bは、内輪2の幅面から転走面2aに続い
て設け、また内輪2の反負荷側(軸受背面側)の外径面
に設ける。斜面部2bは転走面2aに略直接に続いてい
るが、円筒面部が斜面部2bと転走面2aとの間に介在
していても良い。転がり軸受1がアンギュラ玉軸受であ
る場合、内輪2のカウンタボアを設ける部分の外径面が
上記斜面部2bとされる。
【0015】ノズル部材6は、その先端部6aaを保持
器5の内径面と内輪2の外径面の間における転動体4の
近傍に位置させる。ノズル部材6は、リング状の部材で
あって、転がり軸受1に軸方向に隣接して設けられ、側
面の内径部から軸方向に延びる鍔状部6aを有してい
る。この鍔状部6aは、内径面が内輪2の斜面部2bと
同一角度の傾斜面に形成されて、保持器5の直下まで延
び、その先端がノズル部材6の前記先端部6aaとな
る。ノズル部材6の鍔状部6aと内輪2の斜面部2bと
の間の隙間δは、内輪2と軸との嵌合、および内輪2の
温度上昇と遠心力による膨張とを考慮し、運転中に接触
しない範囲で出来るだけ小さな寸法に設定される。
【0016】ノズル部材6は、内輪斜面部2bに対面し
て開口するエアオイルの吐出溝7を有し、この吐出溝7
に吐出口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐
出溝7は円周方向に延び、環状に形成されている。吐出
孔8は、ノズル部材6の円周方向の1か所または複数箇
所に設けられている。吐出孔8は、吐出したエアオイル
が内輪斜面部2bに直接に吹き付け可能なように、吐出
口8aの吐出方向を斜面部2bに向け、かつ斜面部2b
に対して吐出方向が傾斜角度βを持つように設けられて
いる。吐出溝7は、吐出孔8から斜面部2bへの直接の
潤滑油吹き付けを阻害しない断面形状とされている。
【0017】上記ノズル部材6の吐出孔8から内輪斜面
部2bに吹き付けられる潤滑油が、内輪斜面部2bを伝
わって効率良く転がり軸受1の内部に供給されるよう
に、内輪斜面部2bの傾斜角度αの最小値は、次式の値
に設定してある。 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333 ただし、dn:軸受内径寸法(mm)と回転速度(min
-1)の積、である。この式によると、転がり軸受1
が、軸受内径70mmφ、回転速度300000min -1
アンギュラ玉軸受の場合には、内輪斜面部2bの傾斜角
度αは、 α≧12.8° となる。
【0018】内輪斜面部2bの傾斜角度αの最大値は、
アンギュラ玉軸受ではα≦25°とすることが好まし
い。アンギュラ玉軸受の場合、傾斜角度αが25°を超
えると、斜面部2bを設けた方の内輪端面の径方向幅が
狭くなり、この端面が接する内輪間座11あるいはハウ
ジング等との接触面積が小さくなって、大きな軸方向荷
重を受けられなくなるからである。内輪斜面部の傾斜角
度αの好ましい最大値は、軸受形式によって異なり、内
輪鍔付きの円筒ころ軸受では、α≦35°とすることが
好ましい。また、内輪鍔付きの円筒ころ軸受では、傾斜
角度αの最小値を25°以上とすることがより好まし
い。つまり、内輪鍔付きの円筒ころ軸受では、αの値を
25〜35°の範囲に設定することが好ましい。これ
は、次の理由による。円筒ころ軸受の場合、傾斜角度α
を25°以上にすると、ノズル部材の先端を保持器の円
環部の直下に設定し易くなる。また、内輪鍔付きの円筒
ころ軸受では、傾斜角度αが35°を超えると、斜面部
を設けた方の内輪端面の径方向幅が狭くなり、この端面
が接する内輪間座やハウジング等との接触面積が小さく
なって、大きな軸方向荷重を受けられなくなる。後に示
す内輪鍔付きの各円筒ころ軸受の場合は、いずれも傾斜
角度αを25〜35°の範囲に設定している。
【0019】内輪斜面部2bの傾斜角度αと、吐出口8
aからのエアオイルの吐出方向が軸方向に対してなす角
度である吐出角度βとの関係は、図1(B)のように、
α<90°−βとなるように設定してある。すなわち斜
面部2bの傾斜角度αを、エアオイルの吐出方向と斜面
部との成す角度が90°よりも大きくなるように設定し
ている。
【0020】なお、内輪斜面部2bに吹き付けられる潤
滑油が、その斜面部2bを伝わって効率良く転がり軸受
1の内部に供給されるためには、内輪斜面部2bの表面
粗さを研磨やラップ仕上げ等により小さくすることが好
ましい。この例では、その表面粗さはRa1.0以下と
されている。吐出孔8における吐出孔8aの開口直径d
は0.8〜1.2mmφ程度とされ、吐出口近傍部8bの
孔長さLは、エアオイルの噴射速度を低下させないよう
に、上記開口直径dの2倍以上に設定されている。
【0021】ノズル部材6は、軸受1の外輪3を取付け
たハウジング9に取付けられる。ノズル部材6のハウジ
ング9への取付けは、外輪間座10を介して行っても、
直接に行っても良い。図1の例は、外輪間座10を介し
て取付けた例であり、外輪間座10の一側面の内径部に
形成した環状の切欠凹部10aに、ノズル部材6を嵌合
状態に設けてある。ノズル部材6の軸受外の部分の内径
面は、内輪間座11に対して接触しない程度に接近して
いる。ノズル部材6における吐出口8の入口部の周囲に
は、円周溝を設けてOリング等のシール部材36を設
け、外輪間座10とノズル部材6とをボルト等の締め付
け具(図示せず)で締め付け固定することにより、エア
オイル供給路13と吐出孔8との連通部からエアオイル
が漏れることを防止している。
【0022】ノズル部材6の吐出孔8は、その吐出口8
aの近傍部8bが一般部よりも小径の絞り孔に形成され
ている。吐出孔8の入口は、ハウジング9からノズル部
材6にわたって設けられたエアオイル供給路13に連通
している。エアオイル供給路13は、ハウジング9にエ
アオイル供給口13aを有し、ハウジング9の内面にハ
ウジング部出口13bを有している。ハウジング部出口
13bは、外輪間座10の外径面に設けられた環状の連
通溝13cに連通し、連通溝13cから、径方向に貫通
した個別経路13dを介して、ノズル部材6の各吐出孔
8に連通している。エアオイル供給口13aは、圧縮し
た搬送エアに潤滑油を混合させたエアオイルの供給源
(図示せず)に接続されている。
【0023】上記構成のエアオイル潤滑構造の作用を説
明する。図1のエアオイル供給口13aより供給された
エアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8を経て内輪2の
斜面部2bに噴射される。斜面部2bに噴射されたエア
オイルは、次の形態で軸受1の潤滑に寄与する。 内輪斜面部2bとノズル部材6間の隙間を経て、吹き
付け力によって直接に軸受1の内部に流入する。 内輪斜面部2bに付着した潤滑油は、その表面張力と
遠心力によって生じる斜面大径側への分力により、軸受
1の内部へ流入する。 円周溝状の吐出溝7に滞留するエアオイルは、内輪斜
面部2bとノズル部材6間の隙間で生じる負圧吸引作用
により軸受内部側へ流れ、ノズル部材6の先端部6aa
から遠心力により転動体4または保持器7の内径面に付
着し、軸受各部の潤滑油として寄与する。
【0024】このように、内輪2の斜面部2bにエアオ
イルを供給し、転動体4の転走経路へは直接にエアオイ
ルを噴出させないため、転動体4の公転による風切り音
の発生がなく、騒音が低下する。また、エアの噴射によ
るオイル供給ではなく、内輪2の斜面部2bに供給され
たエアオイルを内輪2の回転で軸受1内に導くようにし
たため、使用するエアは、内輪斜面部2bまで潤滑油を
搬送する役目で良く、使用量を減らせる。そのためエア
量削減による省エネ効果も期待できる。また、この実施
形態の場合、エアオイルを内輪斜面部2bに直接に吹き
付けるため、斜面部2bにオイルが付着し易く、また吹
き付け力によってもエアオイルが軸受内部へ流入する。
吐出孔8の吐出方向の傾斜角度βは、吐出孔8から噴射
されたエアが直接に内輪斜面部2bに吹き付けられ、か
つ噴射流による転動体4の風切り音への影響が大きくな
らない範囲で決定する。この構造とすることにより、エ
アオイルは軸受内部へ流入し易くなり、内輪2と転動体
4との接触部への潤滑油供給が良好となる。また吐出孔
8の出口部8aが細径であるため、流速が増し、吐出エ
ア温度が下がる。この低温エアが近距離より内輪2に吹
き付けられるため、内輪温度の低減が期待できる。
【0025】特に、このエアオイル潤滑構造では、斜面
部2bの軸方向に対する傾斜角度αの範囲を上記のよう
に設定したため、次の効果が得られる。傾斜角度αの最
小値については、後述のように実験により効果が確認さ
れた。すなわち、 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333 となるように傾斜角度αの必要最小値を定めたため、潤
滑油が遠心力により斜面部2bの途中で離れることな
く、内輪転走面まで確実に到達できる。これにより、必
要最小限の潤滑油で効率良く潤滑が行えて、確実な潤滑
を行いながら、温度上昇が抑制される。したがって、耐
焼き付性が向上し、より一層高速までの使用が可能にな
る。またエア量についても必要最小限で済んで、エネル
ギ消費が抑えられると共に、より一層の騒音低減にも繋
がる。斜面部2bの傾斜角度αと吐出角度βとの関係
は、エアオイルの吐出方向と傾斜面との成す角度が90
°よりも大きくなるように設定したため、つまり α<90°−β と設定したため、吐出口8aから噴射されるエアオイル
が内輪2の斜面部2bに衝突しても、遠心力を受けて抵
抗無く流れることができる。
【0026】図2は、この実施形態のエアオイル潤滑構
造における内輪斜面部2bの傾斜角度αの適正値につい
ての確認試験例を示す。この確認試験では、試験設備と
して、図2(A)のように前記内輪斜面部2bに代わる
ものとして、外径面に斜面部32bを有する試験軸32
を用い、この斜面部32bに隙間δを持って沿うように
実施形態の場合と同等のノズル部材6を設ける。また、
前記試験軸32の斜面部32bの外径側のハウジング3
9には、前記斜面部32bに対向する円形開口33を設
け、裏面に油付着確認紙34を貼り付けたアクリル板3
5を前記円形開口33の口縁段部33aに配置する。
【0027】この確認試験では、前記試験設備の試験軸
32を回転させながら、ノズル部材6の吐出口8aから
エアオイルを噴射させて、前記油付着確認紙34に付着
した油の飛散分布状態から、斜面部32bに付着した油
の付着流れの有無を判断し、それによって傾斜角度αの
適否を行う。図2(B)は、この確認試験において前記
油付着確認紙34に付着した飛散油の分布の一例を示
す。すなわち、この確認試験では、前記油付着確認紙3
4において、試験軸斜面部32bの最大径位置Xを境に
して、油の飛散が紙面右側(大径側)に集中しておれ
ば、付着流れあり、紙面左側あるいは全体に飛散があっ
た場合には付着流れなしと判断する。この確認試験にお
いて設定した各条件を、表1に示す。また、この確認試
験の結果を図3〜図5のグラフに示す。
【0028】
【表1】
【0029】この試験結果から、内輪斜面部2bとノズ
ル部材6との隙間δや、油動粘度が付着流れに及ぼす影
響は小さいといえる。また、ノズル部材6の吐出口8a
から吐出された油が遠心力により内輪斜面部2bを離れ
ることなく転走面2aまで伝わって行くために必要な斜
面部2bの傾斜角度αは、先述したように、 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333とな
る。 ただし、dnは、軸受内径寸法(mm)と回転速度(min
-1)の積である。このように内輪斜面部2bの傾斜角度
αを設定したこの実施形態では、ノズル部材6の吐出口
8aから吐出された油が遠心力により内輪斜面部2bを
離れることなく転走面2aまで伝わって行くので、潤滑
油を転がり軸受1の内輪2の転走面2aへ効率良く到達
させることができる。
【0030】図6は、この発明の他の実施形態(第2の
実施形態)を示す。この実施形態は図1に示す第1の実
施形態において、転がり軸受1を円筒ころ軸受1Aに代
えたものである。円筒ころ軸受1Aは、外輪3Aが両鍔
付きで、内輪2Aが鍔無しのものとされ、内外輪2A,
3Aの転走面2a,3a間に、円筒ころからなる複数の
転動体4Aが介在している。各転動体4Aは、保持器5
Aに保持されている。保持器5Aは、円筒部材の軸方向
の中間にポケットを形成した形式、いわゆる駕籠形また
は梯子形と呼ばれる形式のものである。内輪2Aの外径
面における転走面2aの両側部分は、転走面2aに続く
斜面部2b,2cとされている。ノズル部材6は、図1
の例と同じ構成の吐出孔8および吐出溝7を有してお
り、吐出孔8の吐出溝7に開口する吐出口8aは、吐出
したエアオイルが内輪斜面部2bに直接に吹き付け可能
なように吐出方向が斜面部2bに向けられ、かつ斜面部
2bに対して吐出方向が傾斜角度β(図1)を持つよう
になされている。
【0031】内輪2Aの転走面2aの両側における斜面
部2b,2cは、内輪鍔無し型の一般の円筒ころ軸受に
おいて内輪外径面に設けられるテーパ面と同じである。
このテーパ面を、エアオイル供給のための斜面部2bに
利用している。そのため、エアオイル供給のために斜面
部を特に形成する必要がない。
【0032】この実施形態では、内輪2Aの斜面部2b
の転走面2a寄りの大径部は、保持器5Aのノズル側幅
面よりも転走面2a寄りに位置させてある。これによ
り、内輪斜面部2bを伝わって転走面2a側に流れる潤
滑油を、保持器5Aの幅面に遮られることなく、軸受1
Aの内部に円滑に導入することができる。この実施形態
におけるその他の構成,効果は、図1に示す第1の実施
形態と同じである。傾斜角度αの範囲についても、第1
の実施形態と同じである。以下の各実施形態において
も、傾斜角度αの範囲は第1の実施形態と同じである。
【0033】図7(A)は、この発明のさらに他の実施
形態(第3の実施形態)を示す。この実施形態も、図1
に示す第1の実施形態において、転がり軸受1を円筒こ
ろ軸受1Aに代えたものである。円筒ころ軸受1Aは、
外輪3Aが鍔無しで、内輪2Aが鍔付きのものとされ、
内外輪2A,3Aの転走面2a,3a間に、円筒ころか
らなる複数の転動体4Aが介在している。各転動体4A
は、保持器5Aに保持されている。内輪2Aの外径面に
おける転走面2aの両側部分、つまり鍔の外径面は、転
走面2aに続く斜面部2b,2cとされている。同図の
斜面部2b,2cは、転走面2aに円筒面部および鍔部
内面を介して続いているが、円筒面部を無くして斜面部
2b,2cから転走面2aの両側における鍔部内面に直
接に続くようにしても良い。ノズル部材6は、図1の例
と同じ構成の吐出孔8および吐出溝7を有しており、吐
出孔8の吐出溝7に開口する吐出口8aは、吐出したエ
アオイルが内輪斜面部2bに直接に吹き付け可能なよう
に吐出方向が斜面部2bに向けられ、かつ斜面部2bに
対して吐出方向が傾斜角度β(図1)を持つようになさ
れている。外輪間座10に設けられるエアオイル供給路
13dは軸方向に延びているが、最終的にはハウジング
9(図1)のエアオイル供給口13aに連通している。
内輪2Aの斜面部2bの転走面2a寄りの大径部を、保
持器5Aのノズル側幅面よりも転走面2a寄りに位置さ
せてあることは、図6の実施形態の場合と同様である。
図7(A)の実施形態において、ノズル部材6の先端
を、図7(B)のように保持器5Aの内径側にもぐり込
ませても良い。このように、保持器5Aの内径側にもぐ
り込ませると、内輪斜面部2bに沿って転走面2a側へ
流れる循環油が、遠心力でノズル部材6の先端で内輪斜
面部2bから離れて外径側へ流れても、保持器5Aの内
径で受けられ、潤滑に寄与することができる。
【0034】図8および図9は、それぞれこの発明のさ
らに他の実施形態(第4の実施形態および第5の実施形
態)を示す。これらの実施形態は、図6に示す第2の実
施形態において、円筒ころ軸受1Aの保持器5Aを、櫛
型の保持器5Bに代えたものである。図6の例の保持器
5Aはかご型であり、円筒ころからなる転動体4Aを包
み込むポケット形状としているが、櫛型の保持器5B
は、円筒ころからなる転動体4Aの3方向を囲み、一方
向は開放されるポケット形状となっている。そのため
に、櫛型の保持器5Bの円環部の側面に接するドーナッ
ツ型の案内用側板19は、内輪2Aおよび外輪3Aのう
ちの鍔付き側の部材に対して、ノズル部材6と反対側の
鍔部において固定されている。具体的には、鍔部先端の
軸受幅方向の外側部分に全周にわたる切欠部を設け、そ
の切欠部に案内用側板19の一部を嵌合させて、その鍔
部に隣接する間座と鍔部とで挟み込む状態に案内用側板
19を固定している。
【0035】図8の例は、図6の例とは逆に内輪2Aを
両鍔付きとして外輪3Aを鍔無しとしてあり、図9の例
は図6の例と同様に内輪2Aを鍔無しとして外輪3Aを
両鍔付きとしてある。なお、図8および図9の実施形態
において、外輪間座10に設けられるエアオイル供給路
13c,13dは、図1の実施形態と同様に、ノズル部
材6の軸方向の横側に配置している。ノズル部材6の吐
出孔8は、入口部だけを軸方向と平行に設け、吐出孔8
の残り部分を斜面部2bに向くように傾斜させてある。
これら第4,第5の実施形態におけるその他の構成は、
図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0036】図10は、この発明のさらに他の実施形態
(第6の実施形態)にかかる転がり軸受のエアオイル潤
滑構造を示す。この例では、ノズル部材6Aに設けられ
た吐出孔8が、吐出溝7内に軸方向に平行にエアオイル
を噴き出すように設けられている。吐出溝7は、吐出孔
8に対面する溝内側面が、噴き出されたエアオイルを内
輪斜面部2b側へ案内できる傾斜面に形成されている。
ノズル部材6Aは、ハウジング9の内径面に直接に取付
けられ、外輪間座を兼用する。ノズル部材6Aは、ハウ
ジング9に直接に取付ける代わりに、図1の例の外輪間
座10に設けた切欠凹部10aに嵌合させて取付けるも
のとしても良い。この実施形態におけるその他の構成
は、特に説明した事項を除き、図1の例と同じである。
この実施形態における構成のノズル部材6Aを設ける場
合も、図6の例と同様に、軸受1が円筒ころ軸受であっ
ても良い。
【0037】図11は、この発明のさらに他の実施形態
(第7の実施形態)にかかる転がり軸受のエアオイル潤
滑構造を示す。この実施形態は、図1に示す第1の実施
形態において、ノズル部材6における吐出溝7を省略し
たものである。この実施形態におけるその他の構成は、
図1の例と同じである。
【0038】図12は、この発明のさらに他の実施形態
(第8の実施形態)にかかる転がり軸受のエアオイル潤
滑構造を示す。この実施形態は、図1に示す第1の実施
形態において、ノズル部材6における吐出溝7を省略
し、代わりに内輪2の斜面部2b側に円周溝17が設け
られている。円周溝17は円周方向に延びて環状に形成
されており、断面がV字状に形成されている。ノズル部
材6には、内輪斜面部2bの円周溝17に対面して吐出
口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐出孔8
は、ノズル部材6の円周方向の1か所または複数箇所に
設けられている。吐出孔8は、吐出したエアオイルが内
輪斜面部2bの円周溝17に直接に吹き付け可能なよう
に、吐出口8aの吐出方向を円周溝17に向け、かつ斜
面部2bに対して吐出方向が傾斜角度βをなすように設
けられている。断面V字状の円周溝17の転走面2a寄
りの側壁斜面17aの軸心に対する傾斜角度は、内輪2
の斜面部2bの傾斜角度αよりも大きくなる。この実施
形態におけるその他の構成は、図1の例と同じである。
【0039】上記構成のエアオイル潤滑構造の作用を説
明する。図12のエアオイル供給口13aより供給され
たエアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8を経て内輪斜
面部2bの円周溝17の側壁斜面17aに噴射される。
側壁斜面17aの傾斜角度は、内輪の斜面部2bよりも
大きくなるため、側壁斜面17aに付着した油は、遠心
力の作用により、確実に内輪斜面部2bに導かれ、軸受
内に潤滑油として流入する。また、供給エア量が少量と
なって円周上で流れが不均一になった場合においても、
内輪斜面部2bとノズル部材6との隙間δで生じる負圧
吸引力のために、潤滑油が軸受側に流れ、転動体4また
は保持器5の内径面に付着し、軸受の潤滑油として機能
することができる。このため、少量エアにおける油の滞
留が防止され、油の滞留による軸受温度の変動を防止す
ることができる。
【0040】このように、内輪斜面部2bの円周溝17
にエアオイルを供給し、転動体4の転走路へは直接にエ
アオイルを噴出させないため、転動体4の公転による風
切り音の発生がなく、騒音が低下する。また、エアの噴
射によるオイル供給ではなく、内輪斜面部2bの円周溝
17に供給されたエアオイルを内輪2の回転で軸受1内
に導くようにしたため、使用するエアは、内輪2の円周
溝17までオイルを搬送する役目で良く、使用量を減ら
せる。そのためエア量削減による省エネ効果も期待でき
る。また、吐出孔8の出口部8aが細径である場合、流
速が増し、吐出エア温度が下がる。この低温エアが近距
離より内輪2に吹き付けられるため、より一層の内輪温
度の低減が期待できる。この実施形態の場合、このよう
に、エア量を減じた場合においても少量エアにおける油
の滞留による軸受温度の変動を防止できて、騒音の低減
効果と共に、エアオイル量のさらなる削減効果が期待で
きる。
【0041】図13(A)は、この発明のさらに他の実
施形態(第9の実施形態)にかかる転がり軸受のエアオ
イル潤滑構造を示す。この実施形態は、図12に示す第
8の実施形態において、転がり軸受1を円筒ころ軸受1
Aに変えたものである。円筒ころ軸受1Aは、外輪3A
が鍔無しで、内輪2Aが両鍔付きのものとされ、内外輪
2A,3Aの転走面2a,3a間に、円筒ころからなる
複数の転動体4Aが介在している。外輪間座10に設け
られるエアオイル供給路13dは軸方向に延びている
が、最終的にはハウジング9(図12)のエアオイル供
給口13aに連通している。この実施形態においても、
同図(B)に示すように、ノズル部材6の先端を保持器
5Aの内径側へもぐり込ませても良い。
【0042】図14は、この発明の一実施形態にかかる
スピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置は、
例えば図1や図7に示す実施形態にかかる転がり軸受の
エアオイル潤滑構造を応用したものである。このスピン
ドル装置は、工作機械に応用されるものであり、主軸1
5の先端に工具またはワークのチャックが取付けられ
る。主軸15を支持する複数の転がり軸受は、主軸先端
寄りの固定側であるフロント側の軸受1と、運転での発
熱による主軸15の熱膨張を逃す自由側である主軸後端
寄りのリア側の軸受1Aとに分けられている。これらの
転がり軸受1,1Aに、図1および図7の実施形態のエ
アオイル潤滑構造がそれぞれ採用されている。ここで
は、フロント側の軸受1として図1の例のアンギュラ玉
軸受が複数用いられ、リア側の軸受1Aとして図7の例
の円筒ころ軸受が1つ用いられている。リア側の軸受1
Aは、図13に示す軸受であっても良い。フロント側の
各転がり軸受1には、ハウジング9からノズル部材6に
わたって設けられたエアオイル供給路13から、ノズル
部材6の吐出孔8を経て、転がり軸受1の内輪斜面部2
bにエアオイルが吹き付けられる。リア側の転がり軸受
1Aにも、ハウジング9からノズル部材6にわたって設
けられたエアオイル供給路13から、ノズル部材6の吐
出孔8を経て、転がり軸受1Aの内輪斜面部2bにエア
オイルが吹き付けられる。リア側の転がり軸受1Aは、
内輪2Aが両鍔付きの円筒ころ軸受であり、ノズル部材
6がフロント側に隣接して配置され、フロント側に向く
内輪2Aの斜面部2bにエアオイルが吹き付けられる。
【0043】このような構造のスピンドル装置では、リ
ア側の軸受1Aとして円筒ころ軸受を用いているので、
運転での発熱による主軸15の熱膨張の影響で、図15
に拡大して示すように、リア側転がり軸受1の内輪2に
おけるフロント側寄りの鍔が円筒ころ4Aの端面を押し
付ける方向にスラスト力が作用する。つまり、リア側の
転がり軸受1Aにおける内輪2Aのフロント側鍔面と円
筒ころ4Aの端面との接触部分の接触面圧が増加するこ
とになる。これに対して、リア側の転がり軸受1Aにお
ける内輪2Aのリア側鍔面と円筒ころ4Aの端面との間
には軸膨張によるスラスト力作用の影響は無い。その結
果、リア側の転がり軸受1Aにおける内輪2Aのフロン
ト側鍔面と円筒ころ4Aの端面との接触部は、同じ内輪
2Aのリア側鍔面に比べて、運転時の滑り摩擦に対して
不利な条件となり、その鍔面と円筒ころ4Aの端面との
接触部が十分潤滑されないと、異常発熱が生じたり、接
触部が摩耗して摩耗粉が軸受内部に入り込む恐れもあ
る。
【0044】しかし、この実施形態のスピンドル装置に
よると、リア側の軸受1Aにおける内輪2Aのフロント
側斜面部2bに、ノズル部材6の吐出孔8からエアオイ
ルが吹き付けられるので、その軸受1Aにおける内輪2
Aのフロント側鍔面と円筒ころ4Aの端面との接触部
に、潤滑油を優先して供給することができ、上記した不
具合を回避できる。
【0045】またリア側軸受1Aに対してフロント側か
ら潤滑を行うことは、主軸15と、フロント側の軸受1
と、リア側の軸受1Aと、ハウジング9とで囲まれた空
間30の内部からエアオイルを供給することであり、し
かも一般にエアオイル潤滑におけるエア供給量は10〜
40NL/min 程度であるため、前記空間30内の圧力
はその外側の圧力に比較して高くなる。その結果、軸受
1,1Aを含む前記空間30内には外部からクーラント
等が浸入し難くなり、軸受1,1Aの内部への異物の侵
入を回避することもできる。
【0046】
【発明の効果】この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑
構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走
面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を持って沿う
ノズル部材を設け、上記ノズル部材に、上記斜面部に対
面して開口するエアオイルの吐出口を設け、上記内輪の
斜面部の軸方向に対する傾斜角度αの最小値を上記の所
定の値に設定したため、潤滑油を転走面へ効率良く到達
させることができて、少量の潤滑油で必要な潤滑を行う
ことができる。上記斜面部の傾斜角度αと、吐出孔の吐
出角度βとの関係を、α<90°−βとした場合は、吐
出口から噴射されるエアオイルが内輪斜面部に衝突して
も、遠心力を受けて抵抗無く流れることができる。この
発明のスピドル装置は、工作機械の主軸を支持するスピ
ンドル装置であって、上記主軸をハウジングに対してフ
ロント側およびリア側の転がり軸受によって支持し、上
記リア側の転がり軸受を円筒ころ軸受とし、このリア側
の転がり軸受に対して、この発明の転がり軸受のエアオ
イル潤滑構造を適用し、上記ノズル部材を、転がり軸受
のフロント側に配置したため、この発明のエアオイル潤
滑構造の作用が効果的に得られ、運転に伴い潤滑条件の
厳しくなるリア側軸受における軸受鍔面ところ端面の滑
り接触の潤滑が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる転
がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)はその
部分拡大図である。
【図2】同エアオイル潤滑構造における内輪斜面部の最
適傾斜角度を得る確認試験のための試験設備を示す断面
図、(B)はその確認試験における油付着確認紙の平面
図である。
【図3】同確認試験による第1の結果を示すグラフであ
る。
【図4】同確認試験による第2の結果を示すグラフであ
る。
【図5】同確認試験による第3の結果を示すグラフであ
る。
【図6】この発明の第2の実施形態にかかるエアオイル
潤滑構造の断面図である。
【図7】(A),(B)はそれぞれこの発明の第3の実
施形態にかかるエアオイル潤滑構造の断面図、およびそ
の変形例の断面図である。
【図8】この発明の第4の実施形態にかかるエアオイル
潤滑構造の断面図である。
【図9】この発明の第5の実施形態にかかるエアオイル
潤滑構造の断面図である。
【図10】この発明の第6の実施形態にかかるエアオイ
ル潤滑構造の断面図である。
【図11】この発明の第7の実施形態にかかるエアオイ
ル潤滑構造の断面図である。
【図12】(A)はこの発明の第8の実施形態にかかる
エアオイル潤滑構造の断面図、(B)はその部分拡大図
である。
【図13】(A),(B)はそれぞれこの発明の第9の
実施形態にかかるエアオイル潤滑構造の断面図、および
その変形例の断面図である。
【図14】この発明の一実施形態にかかるスピンドル装
置を示す断面図である。
【図15】同スピンドル装置における円筒ころ軸受の部
分拡大図である。
【図16】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1,1A…転がり軸受 2,2A…内輪 2a…転走面 2b…斜面部 4,4A…転動体 5,5A,5B…保持器 6,6A…ノズル部材 7…吐出溝 8…吐出孔 8a…吐出口 9…ハウジング 15…主軸 17…円周溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3C011 FF06 3J101 AA02 AA42 AA62 BA53 BA77 CA07 CA08 FA32 GA31

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪
    の転走面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を持っ
    て沿うノズル部材を設け、上記ノズル部材に、上記斜面
    部に対面して開口するエアオイルの吐出口を設け、上記
    内輪の斜面部の軸方向に対する傾斜角度αを、 α≧0.0667×dn×10-4−1.8333 ただし、dn:軸受内径寸法(mm)と回転速度(min
    -1)の積、とした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
  2. 【請求項2】 上記斜面部の傾斜角度αと、上記吐出孔
    のエアオイルの吐出方向が軸方向に対して成す角度であ
    る吐出角度βとの関係を、 α<90°−β とした請求項1に記載の転がり軸受のエアオイル潤滑構
    造。
  3. 【請求項3】 上記ノズル部材に、上記斜面部に対面し
    て開口するエアオイルの吐出溝を円周方向に延びて設
    け、上記ノズル部材の吐出孔を、吐出口が上記吐出溝内
    に開口するものとした請求項1または請求項2に記載の
    転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
  4. 【請求項4】 上記内輪の斜面部に円周溝を設け、上記
    ノズル部材の上記吐出口を、上記斜面部における上記円
    周溝の部分に対面して開口するものとした請求項1また
    は請求項2に記載の転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
  5. 【請求項5】 上記転がり軸受が円筒ころ軸受であっ
    て、ころを保持する保持器を有し、上記内輪の斜面部の
    大径側端の軸方向位置が、上記保持器の上記ノズル部材
    側の幅面よりも上記転走面側に位置するようにした請求
    項1ないし請求項4のいずれかに記載の転がり軸受のエ
    アオイル潤滑構造。
  6. 【請求項6】 工作機械の主軸を支持するスピンドル装
    置であって、上記主軸をハウジングに対してフロント側
    およびリア側の転がり軸受によって支持し、上記リア側
    の転がり軸受を内輪鍔付きの円筒ころ軸受とし、このリ
    ア側の転がり軸受に対して、請求項1ないし請求項5の
    いずれかに記載の転がり軸受のエアオイル潤滑構造を適
    用し、上記ノズル部材を、転がり軸受のフロント側に配
    置したスピンドル装置。
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