JP2004100890A - 転がり軸受のエアオイル潤滑構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受1の内輪2の外径面に、この内輪2の転走面2aに続く斜面部2bを設ける。この内輪斜面部2bに隙間δを介して沿うノズル部材6を設ける。このノズル部材6に上記隙間δに開口するエアオイルの吐出孔8を設ける。上記隙間δにおける内輪2とノズル部材6間の距離を0.15〜0.65mmの範囲とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械主軸用の転がり軸受等に適用されるエアオイル給油による潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸装置は、加工能率を上げるためますます高速化の傾向にある。このため、軸受の潤滑も、搬送エアに潤滑用オイルを混合して、内輪転走面に直接に噴きつけるエアオイル給油が増加しつつある。
このようなエアオイル潤滑構造として、図13に示すように、外輪間座53に設けたエアオイル噴射孔54から内輪55の転走面55aに向けてエアオイルを噴射するものが提案されている。
【0003】
しかし、上記の構造では、転動体56が公転することで生じる風圧に打ち勝って転走面55aに潤滑油を到達させる必要があり、確実な到達のためには噴射孔54の出口でのエア速度をかなり高速にする必要がある。この速度は、軸受の回転が高速になるに従い、速くすることが必要となる。噴射孔54からのエア速度を増すことは、エア量の増加によるエネルギ消費の増加と共に、転動体56の公転が及ぼすエア流の遮断・貫通の繰り返しによる騒音(風切り音)の問題が生じる。
【0004】
このような騒音の抑制と、潤滑油のより確実な供給を目的として、図14に示すエアオイル潤滑構造が提案されている(例えば、特許文献1)。このエアオイル潤滑構造は、転がり軸受61の内輪62の外径面に、この内輪62の転走面62aに続く斜面部62bを設け、この斜面部62bに隙間を持って沿うノズル部材66を設けたのである。斜面部62bには円周方向に延びる円周溝67を設け、ノズル部材66には、上記円周溝67に対面して開口するエアオイルの吐出孔68を設ける。
【0005】
このエアオイル潤滑構造によると、搬送エアに混合された潤滑油であるエアオイルは、ノズル部材66の吐出孔68から内輪62の円周溝67に吐出され、内輪62の斜面部62bとノズル部材66間の隙間から、軸受運転時に生じる負圧吸引作用によって軸受内部に導かれる。また斜面部62bに付着した潤滑油の表面張力と、遠心力の斜面部大径側への分力により、軸受内部の転走面62aあるいは保持器65の内径面へ導かれる。
【0006】
このように、内輪62の斜面部62bにエアオイルを供給し、転動体64の転走経路へは直接にエアオイルを噴出させないため、転動体64の公転による風切り音の発生がなく、騒音が低下する。また、エアの噴射によるオイル供給ではなく、内輪62の斜面部62bに供給されたエアオイルを内輪62の回転で軸受内に導くようにしたため、使用するエアは、内輪62の斜面部62bまでオイルを搬送する役目で良く、使用量を減らせる。そのため、エア量削減による省エネ効果も期待できる。
【0007】
しかし、図14のエアオイル潤滑構造において、内輪62の斜面部62bとノズル部材66間の隙間が小さい場合には、内輪62とノズル部材66が接触する懸念がある。また、上記隙間が大きいと、エアオイルが拡散し、潤滑油の供給が不安定になる。潤滑油の供給不安定は、軸受温度の不安定を招く。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−61657号公報
【0009】
この発明の目的は、エアオイル潤滑を使用した転がり軸受において、運転中に生じる騒音の低減と、搬送エア量の削減が可能で、かつノズル部材の接触の懸念や潤滑油供給の不安定が生じず、軸受を安定して運転することのできる潤滑構造を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明のエアオイル潤滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、上記隙間における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとしたものである。
この構成によると、搬送エアに混合された潤滑油であるエアオイルは、ノズル部材の吐出孔から内輪の斜面部に吐出され、内輪の斜面部とノズル部材間の隙間から、軸受運転時に生じる負圧吸引作用によって軸受内部へ導かれる。また斜面部に付着した潤滑油の表面張力と、遠心力の斜面部大径側への分力により、軸受内部の転走面あるいは保持器の内径面へ導かれる。このように、転動体の転走経路に直接にエアオイルを噴射させないため、風切り音による騒音を低下させると共に、搬送エア量の削減が可能となる。
内輪とノズル部材間の隙間は、0.15mm未満であると、運転中の温度上昇や遠心力による膨張、あるいは組立時における内輪と軸との締まり嵌め等により、熱内輪とノズル部材の接触の懸念が生じる。0.65mmを超えると、エアオイルが拡散し、転走面における潤滑油の供給が不安定になる。この発明は、上記隙間の距離を0.15〜0.65mmと設定したため、運転中に内輪とノズル部材とが接触せず、かつ潤滑油供給の不安定が生じず、軸受を安定して運転することができる。
【0011】
この発明において、上記内輪の斜面部に円周溝を設け、上記ノズル部材のエアオイルの吐出孔を上記円周溝に対面する位置とし、上記円周溝から外れた位置における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとしても良い。
このように、内輪の斜面部に、ノズル部材の吐出孔に対面する円周溝を設けた場合、この円周溝によって吐出口の出口と内輪表面との距離が長くなった箇所にエアオイルが衝突することになる。そのため、吐出孔から噴射されたエアオイルが内輪に衝突するときの速度が遅くなり、衝突による騒音が低下する。したがって、より一層、静音化される。また、円周溝により、吐出孔から吐出されるエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部に作用する遠心力のため、潤滑油の滞留がなく、安定して軸受内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。
【0012】
この発明において、上記ノズル部材に、上記斜面部に対面して開口するエアオイルの吐出溝を円周方向に延びて設け、エアオイルの吐出孔を上記吐出溝内に開口させ、上記吐出溝から外れた位置における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとしても良い。
このように、ノズル部材に円周方向に延びる吐出溝を設け、この吐出溝内に吐出孔を開口させた場合も、吐出口の出口と内輪表面との距離が長くなった箇所でエアオイルが衝突することになる。そのため、吐出孔から噴射されたエアオイルが内輪に衝突するときの速度が遅くなり、衝突による騒音が低下する。また、円周方向に延びた吐出溝により、吐出孔から吐出されたエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部に作用する遠心力のため、油の滞留がなく、安定して軸受内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。
【0013】
この発明の上記各構成のものにおいて、上記内輪を、上記転走面を有する内輪本体と、上記斜面部を有する内輪間座とに分割しても良い。この場合に、分割箇所は転走面の近傍位置としても良い。
このように内輪を分割構造とした場合、例えば、上記斜面部を有する内輪間座およびノズル部材の組と、内輪本体、外輪、および転動体を有する転がり軸受とを、別個の設計のものとして種々組み合わせることができる。このため、転がり軸受を共通のものとし、使用条件に応じて潤滑設計の異なる内輪間座およびノズル部材の組を製造するなど、設計の自由度が増し、部品の共通化も図れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1〜図5と共に説明する。転がり軸受1は、内輪2と外輪3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させたものである。転動体4は、例えばボールからなり、保持器5のポケット(図示せず)内に保持される。この転がり軸受1の内輪2の外径面に、転走面2aに続く斜面部2bを設け、この斜面部2bに隙間δを介して沿うノズル部材6を設ける。斜面部2bは、内輪2の幅面から転走面2aに続いて設け、また内輪2の反負荷側(軸受背面側)の外径面に設ける。転がり軸受1がアンギュラ玉軸受である場合、内輪2のステップ面を設ける部分の外径面が上記斜面部2bとされる。
【0015】
ノズル部材6は、その先端部6aaを保持器5の内径面と内輪2の外径面の間における転動体4の近傍に位置させる。ノズル部材6は、リング状の部材であって、転がり軸受1に軸方向に隣接して設けられ、側面の内径部から軸方向に伸びる鍔状部6aを有している。この鍔状部6aは、平坦な内径面が内輪2の斜面部2bと同一角度の傾斜面に形成されて、保持器5の直下まで伸び、その先端がノズル部材6の上記先端部6aaとなる。したがって、ノズル部材6の鍔状部6aと内輪2の斜面部2bとの間の隙間δは、一定距離を保つ平行な隙間となっている。
【0016】
この隙間δの距離は、0.15〜0.65mmに設定されている。この距離の範囲は、運転中における内輪2とノズル部材6との接触の懸念がなく、かつエアオイル供給の不安定の生じない範囲の距離として設定したものである。なお、上記隙間δの距離は、後述する円周溝7を設けた場合、その円周溝7から外れた位置における距離とする。
【0017】
内輪2の斜面部2bには、円周溝7が設けられている。円周溝7は円周方向に延びて環状に形成されており、断面がV字状に形成されている。ノズル部材6は、内輪斜面部2bの円周溝7に対面して吐出口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐出孔8は、ノズル部材6の円周方向の1か所または複数箇所に設けられている。吐出孔8は、吐出したエアオイルが内輪斜面部2bの円周溝7に直接に吹き付け可能なように、吐出口8aの吐出方向を円周溝7に向け、かつ斜面部2bに対して吐出方向が傾斜角度βを持つように設けられている。断面V字状の円周溝7の転走面2a寄りの側壁斜面7aの軸心に対する傾斜角度は、内輪2の斜面部2bの傾斜角度よりも大きくなる。
【0018】
ノズル部材6は、軸受1の外輪3を取付けたハウジング9に取付けられる。ノズル部材6のハウジング9への取付けは、外輪間座10を介して行っても、直接に行っても良い。図1の例は、外輪間座10を介して取付けた例であり、外輪間座10の一側面の内径部に形成した環状の切欠凹部10aに、ノズル部材6を嵌合状態に設けてある。ノズル部材6の軸受外の部分の内径面は、内輪間座11に対して接触しない程度に近接している。
【0019】
ノズル部材6の吐出孔8は、その吐出口8aの近傍部8bが一般部よりも小径の絞り孔に形成されている。吐出孔8の入口は、ハウジング9からノズル部材6にわたって設けられたエアオイル供給路13に連通している。エアオイル供給路13は、ハウジング9にエアオイル供給口13aを有し、ハウジング9の内面にハウジング部出口13bを有している。ハウジング部出口13bは、外輪間座10の外径面に設けられた環状の連通溝13cに連通し、連通溝13cから、径方向に貫通した個別経路13dを介して、ノズル部材6の各吐出孔8に連通している。エアオイル供給口13aは、圧縮した搬送エアに潤滑油を混合させたエアオイルの供給源(図示せず)に接続されている。
【0020】
図2は、図1の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造を応用したスピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置は、工作機械に応用されるものであり、主軸15の端部に工具またはワークのチャックが取付けられる。主軸15は、軸方向に離れた複数の転がり軸受1により支持されており、これらの転がり軸受1に、図1の例のエアオイル潤滑構造が採用されている。同図では、転がり軸受1は、一対のものが背面を向き合わせて配置されている。各転がり軸受1の内輪2は主軸15の外径面に嵌合し、外輪3はハウジング9の内径面に嵌合している。これら内外輪2,3は、内輪押さえ25および外輪押さえ26により、主軸15およびハウジング9にそれぞれ固定されている。ハウジング9は、内周ハウジング9Aと外周ハウジング9Bの二重構造とされ、内外のハウジング9A,9B間に冷却媒体流路16が形成されている。内周ハウジング9Aは、その一部を図1に示したものであり、上記エアオイル供給路13およびそのエアオイル供給口13aが設けられている。ハウジング9は、支持台17に設置され、ボルト18で固定されている。
スピンドル装置に応用する場合、外輪間座10と内輪間座11間の径方向隙間部が、内輪傾斜部2bの負圧吸引作用で負圧とならないように、大気開放孔をハウジング9に設けることが好ましい。また、ハウジング9には、内径面における軸受1の設置部近傍にエアオイル排気溝22が設けられ、このエアオイル排気溝22から大気に開放されるエアオイル排気路23が設けられる。
【0021】
上記構成のエアオイル潤滑構造の作用を説明する。図1のエアオイル供給口13aより供給されたエアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8を経て内輪斜面部2bの円周溝7の側壁斜面7aに噴射される。
側壁斜面7aの傾斜角度は、内輪2の斜面部2bよりも大きくなるため、側壁斜面7aに付着した油は、遠心力の作用により、確実に内輪斜面部2bに導かれ、軸受内に潤滑油として流入する。また、供給エア量が少量となって円周上で流れが不均一になった場合においても、内輪斜面部2bとノズル部材6との隙間δで生じる負圧吸引力のために、軸受側に流れ、転動体4または保持器5の内径面に付着し、軸受の潤滑油として機能することができる。このため、少量エアにおける油の滞留が防止され、油の滞留による軸受温度の変動を防止することができる。
【0022】
このように、内輪傾斜部2bの円周溝7にエアオイルを供給し、転動体4の転走経路へは直接にエアオイルを噴出させないため、転動体4の公転による風切り音の発生がなく、騒音が低下する。また、エアの噴射によるオイル供給ではなく、内輪斜面部2bの円周溝7に供給されたエアオイルを内輪2の回転で軸受1内に導くようにしたため、使用するエアは、内輪2の円周溝7までオイルを搬送する役目で良く、使用量を減らせる。そのためエア量削減による省エネ効果も期待できる。また、吐出孔8の出口部8aが細径である場合、流速が増し、吐出エア温度が下がる。この低温エアが近距離より内輪2に吹き付けられるため、より一層の内輪温度の低減が期待できる。
【0023】
また、内輪斜面部2bとノズル部材6間の隙間δは、0.15〜0.65mmの範囲とされているので、内輪2とノズル部材6が接触する懸念がなく、またエアオイルの拡散による供給不安定が生じない。すなわち隙間δの寸法が0.15mm未満であると、運転中の温度上昇や遠心力による内輪2の膨張、あるいは組立時における内輪2と軸との締まり嵌め等を考慮すると、内輪2とノズル部材6の接触の懸念がある。また、隙間δの寸法が0.65mmを超えると、図3(B)のように吐出孔8から噴射されるエアオイルQが拡散し、転走面への潤滑油の供給が不安点になり、軸受温度が不安定を招く恐れがある。しかし、0.15〜0.65mmの範囲とすると、これらの懸念が回避できる。また、隙間δの距離を、上記範囲の最低値である0.15mm以上とした場合は、ノズル部材6から噴出されるエアオイルが内輪2に衝突するときの騒音も低下する。
さらに、この実施形態の場合、内輪2の斜面部2bに、ノズル部材6の吐出孔8に対面する円周溝7を設けたため、この円周溝7によって吐出口8の出口と内輪表面との距離が長くなった箇所にエアオイルが衝突することになる。そのため吐出孔8から噴射されたエアオイルが内輪2に衝突するときの速度が遅くなり、衝突による騒音が低下する。したがって、より一層、静音化される。
【0024】
上記隙間δについての試験結果を説明する。図4は、上記軸受1を内径100mmφのアンギュラ玉軸受とした場合に、上記内輪斜面部2bとノズル部材6間の隙間δの距離を変えて、この実施形態による距離設定の場合と比較例の場合の軸受騒音について比較した結果を示すグラフである。同グラクにおいて、横軸は軸受内輪2の回転速度(rpm)、縦軸は騒音値(dBA)とされている。同グラフから明らかなように、上記隙間δの距離を0.15mmおよび0.65mm(この実施形態の設定値の範囲内)とした場合は、いずれも軸受騒音値に急激な変動はない。しかし、上記隙間δの距離を0.1mm(この実施形態の場合の設定値の範囲外)とした場合は、内輪回転速度8000rpmから徐々に騒音値が大きくなり、15000rpmに達すると騒音値は約5dBA大きくなる。これは、吐出孔8から噴射されるエアオイルが内輪2に衝突する速度が速くなることにより、騒音が大きくなるものと考えられる。
【0025】
図5は、上記軸受1を同じ内径100mmφのアンギュラ玉軸受とした場合に、上記内輪斜面部2bとノズル部材6間の隙間δの距離を変えて、この実施形態による距離設定の場合と従来例の場合の軸受温度上昇について比較した結果を示すグラフである。同グラフにおいて、横軸は軸受内輪2の回転速度(rpm)、縦軸は軸受温度上昇(℃)とされている。同グラフから明らかなように、上記隙間δの距離を0.15mmおよび0.65mm(この実施形態の設定値の範囲内)とした場合は、軸受温度上昇の急激な変動はないが、上記隙間δの距離を0.7mm(この実施形態の場合の設定値の範囲外)とした場合は、軸受温度が不安定となっている。これは、吐出孔8から噴射されるエアオイルQが図3(B)のように拡散して円周溝7に捕捉される絶対量が少なくなり、軸受内部への供給が不安定となって、軸受温度を不安定にするものと考えられる。
【0026】
図6は、この発明の他の実施形態(第2の実施形態)を示す。この実施形態は図1に示す第1の実施形態において、転がり軸受1を円筒ころ軸受1Aに代えたものである。円筒ころ軸受1Aは、外輪3Aが両鍔付きで、内輪2Aが鍔無しのものとされ、内外輪2A,3Aの転走面2a,3a間に、円筒ころからなる複数の転動体4Aが介在している。各転動体4Aは、保持器5Aに保持されている。内輪2Aの外径面における転走面2aの両側部分は、転走面2aに続く斜面部2b,2cとされている。ノズル部材6は、図1の例と同じ構成の吐出孔8を有している。内輪2Aの斜面部2bは円周溝7を有しており、吐出孔8の吐出口8aは、吐出したエアオイルが内輪斜面部2bの円周溝7に直接に吹き付け可能なように吐出方向が向けられている。また、吐出口8aは、斜面部2bに対して吐出方向が傾斜角度β(図1)を持つようになされている。
【0027】
内輪2Aの転走面2aの両側における斜面部2b,2cは、内輪鍔無し型の一般の円筒ころ軸受において内輪外径面に設けられるテーパ面と同じである。このテーパ面を、エアオイル供給のための斜面部2bに利用している。そのため、エアオイル供給のために斜面部を特に形成する必要がない。この実施形態におけるその他の構成,効果は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0028】
図7は、この発明のさらに他の実施形態(第3の実施形態)を示す。この実施形態は、図6に示す第2の実施形態において、内輪2Aが両鍔付きで、外輪3Aが鍔無しのものとされている。内輪2Aのノズル部材6との間に隙間を形成する斜面部2bは、鍔の部分に形成されている。保持器には櫛型の保持器5Bが用いられ、案内用側板19で軸方向に抜けないように支持されている。
この実施形態におけるその他の構成,効果は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0029】
図8は、この発明のさらに他の実施形態(第4の実施形態)を示す。この実施形態は、図1に示す第1の実施形態において、内輪斜面部2bの円周溝7に代えて、ノズル部材6に吐出溝7Aを設けている。すなわち、ノズル部材6は、内輪斜面部2bに対面して開口するエアオイルの吐出溝7Aを有し、この吐出溝7Aに吐出口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐出溝7Aは円周方向に延び、環状に形成されている。吐出溝7Aは、吐出孔8から内輪斜面部2bへの直接の吹き付けを阻害しない断面形状とされている。この実施形態におけるその他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0030】
このエアオイル潤滑構造では、円周溝状の吐出溝7Aに滞留するエアオイルが、内輪斜面部2bとノズル部材6間の隙間δで生じる負圧吸引作用により軸受内部側へ流れ、ノズル部材6の先端部6aaから遠心力により転動体4または保持器5の内径面に付着し、軸受各部の潤滑油として寄与する。また、この実施形態の場合、吐出溝7Aを設けたため、吐出口8の出口と内輪表面との距離が長くなった箇所でエアオイルが衝突することになる。そのため、吐出孔8から噴射されたエアオイルが内輪2に衝突するときの速度が遅くなり、衝突による騒音が低下する。その他の作用は第1の実施形態の場合と同様であり、これにより軸受1を安定して運転でき、軸受1の温度上昇および騒音値が急激に変動するのを防止できる。
【0031】
図9は、この発明のさらに他の実施形態(第5の実施形態)を示す。この実施形態は、図6に示す内輪鍔無しの円筒ころ軸受1Aを用いた実施形態(第2の実施形態)において、内輪斜面部2bの円周溝7に代えて、ノズル部材6に吐出溝7Aを設けている。吐出溝7Aの構造は図8に示す第4の実施形態のものと同じである。この実施形態におけるその他の構成,効果は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0032】
図10は、この発明のさらに他の実施形態(第6の実施形態)を示す。この実施形態は、図7に示す内輪鍔付きの円筒ころ軸受1Bを用いた実施形態(第3の実施形態)において、内輪斜面部2bの円周溝7に代えて、ノズル部材6に吐出溝7Aを設けている。吐出溝7Aの構造は図8に示す第4の実施形態のものと同じである。この実施形態におけるその他の構成,効果は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0033】
図11は、この発明のさらに他の実施形態(第7の実施形態)を示す。この実施形態は、図1に示す第1の実施形態において、内輪斜面部2bの円周溝7を省略したものである。この実施形態におけるその他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
【0034】
この実施形態では、内輪斜面部2bに円周溝7がなく、ノズル部材6にも吐出溝7Aがないが、搬送エアに混合された潤滑油であるエアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8から内輪2の斜面部2bに吐出され、内輪2の斜面部2bとノズル部材6間の隙間δから、軸受運転時に生じる負圧吸引作用によって軸受内部へ導かれるのは第1の実施形態の場合と同じであり、内輪斜面部2bに付着した潤滑油の表面張力と、遠心力の斜面部大径側への分力により、軸受内部の転走面あるいは保持器4の内径面へ導かれる。
この実施形態の場合も、内輪2とノズル部材6間の隙間δの距離を0.15〜0.65mmと設定しているため、運転中に内輪2とノズル部材6とが接触せず、かつエアオイルの拡散が回避され、軸受1を安定して運転することができる。
【0035】
図12は、この発明のさらに他の実施形態(第8の実施形態)を示す。この実施形態は、図1に示す第1の実施形態において、転がり軸受1の一体部材の内輪2を、転動体4の転走面2aを有する内輪本体20と、円周溝7を形成した斜面部2bを有する内輪間座21とに分割された内輪2Bに代えたものである。分割面pは、転走面2aの近傍位置としている。この実施形態におけるその他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同じである。
このように内輪2Bを分割構造とした場合、例えば、斜面部2bを有する内輪間座21およびノズル部材6の組と、内輪本体20、外輪3、および転動体4を有する転がり軸受1とを、別個の設計のものとして種々組み合わせることができる。このため、転がり軸受1を共通のものとし、使用条件に応じて潤滑設計の異なる内輪間座およびノズル部材の組を製造するなど、部品の共通化が図れ、設計の自由度が増す。
なお、内輪2を内輪本体20と内輪間座21とに分割する構成は、上記各実施形態において適用することができる。
【0036】
また、上記各実施形態では、内輪と外輪の幅を同じとしたが、内輪と外輪の幅が異なっていても良い。例えば、内輪における斜面部の形成側の部分が外輪の幅面から突出するものとしても良い。その場合に、ノズル部材は、全体が外輪幅よりも外方にあって、内輪斜面部の外輪幅面から突出した部分に沿うものとしても良い。また、内輪における斜面部の形成側の部分が外輪の幅面から突出するものにおいて、その内輪を、転走面を有する内輪本体と、斜面部を有する内輪間座とに分割しても良い。また、その内輪間座の全体が外輪幅から突出したものとしても良い。
【0037】
【発明の効果】
この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造は、内輪の外径面に、この内輪の転走面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、上記隙間における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとしたため、運転中に生じる騒音の低減と、搬送エア量の削減が可能となり、またノズルの接触の懸念や潤滑油供給の不安定が生じず、軸受を安定して運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)はその部分拡大図である。
【図2】同エアオイル潤滑構造を採用したスピンドル装置の断面図である。
【図3】同エアオイル潤滑構造におけるエアオイルの搬送説明図である。
【図4】同エアオイル潤滑構造と、他のエアオイル潤滑構造とによる軸受騒音の比較結果を示すグラフである。
【図5】同エアオイル潤滑構造と、他のエアオイル潤滑構造とによる軸受温度の比較結果を示すグラフである。
【図6】この発明の第2の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図である。
【図8】(A)はこの発明の第4の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)はその部分拡大図である。
【図9】この発明の第5の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図である。
【図10】この発明の第6の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図である。
【図11】(A)はこの発明の第7の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)はその部分拡大図である。
【図12】この発明の第8の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図である。
【図13】従来例の断面図である。
【図14】他の従来例の断面図である。
【符号の説明】
1,1A…転がり軸受
2,2A,2B…内輪
2a…内輪転走面
2b…内輪斜面部
6…ノズル部材
7…円周溝
7A…吐出溝
8…吐出孔
20…内輪本体
21…内輪間座
δ…隙間
Claims (4)
- 転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面に続く斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、上記隙間における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1において、上記内輪の斜面部に円周溝を設け、上記ノズル部材のエアオイルの吐出孔を上記円周溝に対面する位置とし、上記円周溝から外れた位置における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1において、上記ノズル部材に、上記斜面部に対面して開口するエアオイルの吐出溝を円周方向に延びて設け、エアオイルの吐出孔を上記吐出溝内に開口させ、上記吐出溝から外れた位置における内輪とノズル部材間の距離を0.15〜0.65mmとした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1または請求項2または請求項3において、上記内輪を、上記転走面を有する内輪本体と、上記斜面部を有する内輪間座とに分割した転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
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