JP2004223736A - ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物およびポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの製造方法およびポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】PEN樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のPEN樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のPEN樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmであり、かつ該PEN樹脂よりも融点が10〜60℃低い共重合ポリエステル樹脂微粉末を不活性粒子と同時に添加するPEN樹脂組成物の製造方法およびその樹脂組成物を用いたフィルム。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物およびポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの製造方法ならびにそれらの製造方法によって得られたポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに関する。さらに詳しくは、ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂に不活性粒子を均一に混錬するポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法、不活性粒子を均一に混錬されたポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物を用いたポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムならびにおよびボイドや凝集粒子の少ないポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下、PENと略記することがある)樹脂は優れた物理的および化学的性質を有することから、繊維、樹脂、フィルムなどに大量に使用されている。PEN樹脂をフィルムにする場合、フィルムを得る工程や得られたフィルムを取り扱う工程における取り扱い性の向上およびしわなどの品質トラブルの発生防止を目的として、PEN樹脂は不活性粒子が添加される。この不活性粒子の存在によって、フィルム表面に適度な凹凸が付与され、結果としてフィルムの滑り性が向上し、前述の問題を解消できる。このような不活性粒子としては、例えばシリカ、カオリン、二酸化チタンなどに代表される無機粒子やシリコーン、ポリスチレンなどに代表される有機粒子が挙げられる。
【0003】
ところで、これらの不活性粒子には、粗大粒子が混在していたり、PEN樹脂に分散させる際に凝集による粗大粒子が発生したりすることがある。このような粗大粒子がフィルム中にあると、フィルム製品のうちでも特に平坦性が求められる用途、例えば磁気記録用テープなどにそのフィルムを用いると、得られる磁気記録テープの電磁変換特性が低下したり、ドロップアウトなどの欠点が発生するなど品質を損なう問題があった。
【0004】
そこで、このような粗大粒子の混入を抑制するために、種々の方法が採用されている。例えば、分散スラリー化、分級、濾過などの操作を行い粗大粒子を予め除去した不活性粒子を、PEN樹脂を製造する溶融重縮合の反応系へ添加して、粒子の分散性を向上する方法がある。しかし、この方法では、各工程の単位操作に多大な時間と労力が必要であること、また溶融重縮合反応系に添加された後、不活性粒子が再凝集を起こすといった問題があった。
【0005】
一方、溶融重縮合反応系へ添加する以外の方法としては、例えば特開平1−157806号公報(特許文献1)に、単軸や二軸の混練押出機を用いて、重縮合して得られたポリエステル樹脂に、直接不活性粒子を混練分散させる方法が、また、特開平6−91635号公報(特許文献2)に押出機を用いた混練分散方法で不活性粒子の分散性を向上させるために、添加する粒子を媒体に分散させたスラリー状態で添加する方法が提案されている。しかしながら、このようなスラリーを混練押出機を用いて混練させる方法を、溶融加工温度が250℃を越える比較的高融点のポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートなどに代表されるポリエステル樹脂に採用すると、スラリー化した不活性粒子を添加する際に、ヒートショックによる粒子の再凝集が発生し、凝集粗大粒子が増加する問題が潜在していた。
【0006】
また、上述の粗大粒子は、PEN樹脂をフィルムとした際、PEN樹脂との界面にボイドと呼ばれる空隙を生じ易く、フィルムの透明性を損なわせたり、あるいは磁気記録テープとしてビデオデッキで走行させた時に、ボイドが原因となって不活性粒子の脱落が起こり、削れ性を悪化させるといった問題も潜在していた。なお、特開平9−272793号公報(特許文献3)で、ポリマーのチップを粉チップにして不活性粒子と二軸混錬押し出し機で混錬する方法が提案されているが、それでも依然として上記のような問題は解消されていなかった。
【0007】
そのため、PENフィルム中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させ、かつ不活性粒子とPEN樹脂との界面にボイドなどが生じ難い親和性を有するPEN樹脂組成物の製造方法を確立すること、およびそれらの製造方法を用いて表面平滑性に優れたPENフィルムを得ることが強く望まれていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平1−157806号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平6−91635号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平9−272793号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の従来技術の有する問題を解消し、多大な労力をかけなくても、PEN樹脂組成物中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させ、しかも不活性粒子とPEN樹脂との界面にボイドなどの空隙が生じにくいPEN樹脂組成物の製造方法を提供し、これらの製造方法を用いて表面平滑性に優れたPENフィルムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、本発明の目的は、PEN樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のPEN樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のPEN樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmであり、かつ該PEN樹脂よりも融点が10〜70℃低い共重合ポリエステル樹脂微粉末を不活性粒子と同時に添加するPEN樹脂組成物の製造方法によって達成される。
【0013】
また、本発明のPEN樹脂組成物の製造方法は、その好ましい態様として、(1)共重合ポリエステル樹脂微粉末が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂微粉末、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂からなり、かつ、テレフタル酸成分と2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とのモル比が80/20〜97/3であること、(2)不活性粒子の添加量が、PEN樹脂組成物の重量を基準として、0.01〜20重量%であること、(3)共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量がPEN樹脂組成物の重量を基準として、0.001〜40重量%であること、(4)共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が、不活性粒子の重量を基準として、10重量%以上であること、(5)不活性粒子が無機粒子であること、(6)不活性粒子が有機粒子であること、(7)不活性粒子の平均粒径が、0.03〜10μmであること、および(8)溶融状態での混練が、ベント付二軸混練押出機にて行われることのいずれかを具備するPEN樹脂組成物の製造方法を包含するものである。
【0014】
また、本発明の他の課題は、上述の本発明のPEN樹脂組成物の製造方法によって得られたPEN樹脂組成物を、溶融状態でシート状に押出し、少なくとも一軸方向に延伸するPENフィルムの製造方法によって達成される。なお、本発明のPENフィルムの製造方法は、その好ましい態様として、延伸処理後に、共重合ポリエステル樹脂微粉末の融点よりも10℃低い温度から50℃高い温度の範囲で熱固定処理を行うPENフィルムの製造方法も包含するものである。
【0015】
さらにまた、本発明の他の課題は、上述の本発明のPENフィルムの製造方法によって得られた2個以上の不活性粒子が凝集した凝集粒子がフィルム面1.2mm2あたりに10個以下で、かつ下記式(I)で表されるボイド比が3以下であるPENフィルムによって達成される。
【0016】
【数2】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成をさらに詳細に説明する。
[ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂]
本発明のPEN樹脂組成物を構成するPEN樹脂は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールからなる。好ましくは全ジカルボン酸成分の85モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸、全グリコール成分の85モル%以上がエチレングリコールからなり、さらに好ましくは全ジカルボン酸成分の90モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸、全グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなる。そのため、本発明におけるPEN樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の第3成分が共重合されていても良い。
【0018】
上記の共重合成分としては、ジカルボン酸成分として例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ナトリウムジカルボン酸、またグリコール成分として例えば、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。なお、これらの共重合成分は1種のみでなく2種以上を併用してもよい。これら共重合成分は全ジカルボン酸成分の20モル%未満、および/または全ジオール成分の20モル%未満の範囲で使用される。
【0019】
本発明におけるPEN樹脂の固有粘度は、オルトクロロフェノール溶媒下、35℃で0.4dl/g〜0.8dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5dl/g〜0.7dl/gである。固有粘度が下限未満の場合は、フィルムに製膜後、各製品に使用する際に要求される機械強度が不足することがある。他方、固有粘度が上限を超える場合は、溶融重合工程およびフィルム製膜工程における溶融混練時の生産性が損なわれることがある。
【0020】
[不活性粒子]
本発明のPEN樹脂組成物は、製膜性やしわ等の品質トラブルの発生防止を目的に不活性粒子を含有する。かかる不活性粒子としては、PEN樹脂の溶融状態の温度に対して、十分な耐熱性を有するものであれば特に限定されず、溶融縮重合の反応系へスラリーとして添加すると凝集しやすい不活性粒子、または、溶融混練押出機にて添加・混練した際に、ヒートショックを受けて再凝集を起こしやすい不活性粒子も好適に用いることができる。
【0021】
本発明で用いられる不活性粒子として、耐熱性に優れる点から無機粒子が挙げられ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、本発明で用いられる不活性粒子として、凝集粒子を抑制する効果が出やすい点から、有機粒子が挙げられ、シリコーンおよび/または架橋ポリスチレンであることが好ましい。なお、本発明で使用する不活性粒子は、無機粒子と有機粒子の組み合わせであってもよく、さらに溶融した時の耐熱性に問題が生じなければ、PENとの親和性を向上させるような表面処理方法、例えばシランカップリング剤で表面処理した不活性粒子であっても良い。
【0022】
本発明で用いられる不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.03〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。不活性粒子の平均粒径が下限未満の場合は、フィルムにした時の滑り性が不十分であり、不活性粒子の平均粒径が上限を超える場合は、フィルム表面粗さが過度に粗くなる。
【0023】
本発明における不活性粒子の添加量は、フィルムに製膜後、各製品に使用する際の使用目的により適宜調整すれば良い。好ましくはフィルム製膜性を安定に維持しやすいことから、PEN樹脂組成物の重量を基準として、高々20重量%である。上限を超えた場合、製膜性が困難になることがある。本発明における不活性粒子の添加量は、製膜時における不活性粒子の分散性を高度に維持しやすいことから、PEN樹脂組成物の重量を基準として、10重量%以下、さらに5重量%以下、特に1重量%以下であることが好ましい。なお、不活性粒子の添加量の下限は、特に制限されないが、得られるフィルムの取扱性を維持しやすいことから、少なくとも0.01重量%であることが好ましい。
【0024】
本発明における不活性粒子は、PENフィルム中の凝集粒子数が1.2mm2あたり10個以下であることが、フィルムの表面平滑性の点から好ましい。更に好ましい凝集粒子数は1.2mm2あたり5個以下、特に好ましくは1個以下である。ここで、「凝集粒子」とは、不活性粒子が2個以上凝集して形成される凝集粒子を指す。具体的には、フィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクター−PR−31型)を施して不活性粒子をフィルム表面に露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を測定して、その値をもって「凝集粒子数」とする。凝集粒子数が10個を超えた場合、フィルム表面粗さが過度に粗くなる。なお、凝集粒子数の下限は、少ないほど好ましいことから特に制限されないが、通常120mm2の面積において1個以上である。
【0025】
本発明における不活性粒子は、下記式(I)で表されるPENフィルム中のボイド比が3以下であることが、フィルムの表面平滑性の点から好ましい。
【0026】
【数3】
【0027】
ここで「ボイド」とは、不活性粒子とPEN樹脂との界面に形成されるボイドと呼ばれる空隙を指す。具体的には、フィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクター−PR−31型)を施し、フィルム表面に不活性粒子を露出させた後、走査型電子顕微鏡を用いて、不活性粒子の粒径に応じて5000倍〜20000倍の倍率にて不活性粒子および不活性粒子の周囲のボイド(空隙)を観察する。その観察像を画像解析装置を用いて、不活性粒子面積と、不活性粒子とボイドとを合わせた面積をそれぞれ測定し、(不活性粒子を含むボイド面積)/(不活性粒子面積)の比をもって「ボイド比」とする。なお、「不活性粒子を含むボイド面積」とは、不活性粒子部分の面積とボイド部分の面積とを合わせた面積を指す。ボイド比が3を超えた場合、フィルム表面粗さが粗くなったり、フィルムの透明性が低下したり、あるいは磁気記録テープとしてビデオデッキで走行させた時にボイドが原因となって不活性粒子の脱落が生じ、削れ性が低下したりする。なお、ボイド比の下限は、特に制限されないが、通常1.001以上である。
【0028】
[共重合ポリエステル樹脂微粉末]
本発明の製造方法における最大の特徴は、不活性粒子を添加する際に共重合ポリエステル樹脂の微粉末を同時に添加することにあり、以下に詳述する。
【0029】
本発明における共重合ポリエステル樹脂微粉末は、その平均粒径が10〜1000μmであることが必要である。共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径は、10〜500μmであることがより好ましく、更には10〜300μmであることが好ましい。共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径が下限未満であると、該微粉末が嵩高くなるため、二軸混練押出機に投入させるフィーダー内での流動性が悪くなり、溶融状態のPEN樹脂に連続添加する際、均一に添加することが困難となる。一方、共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径が上限を超えると、不活性粒子との混合状態が不均一となり、共重合ポリエステル樹脂微粉末を添加する効果が半減する。
【0030】
このような平均粒径を有する共重合ポリエステル樹脂微粉末は、例えば、共重合ポリエステル樹脂ペレットをガラス転移点以上、融点以下の温度で加熱して結晶化させたあと、液体窒素などを加えた冷却状態で粉砕する方法で得られる。
また、本発明における共重合ポリエステル樹脂微粉末はその融点が、微粉末が添加されるPET樹脂の融点よりも10℃〜70℃低い、好ましくは20℃〜65℃低い、さらに好ましくは30℃〜60℃低いことが必要である。共重合ポリエステル樹脂微粉末の融点が微粉末が添加されるPET樹脂の融点よりも過度に低いと、耐熱性に劣るため、溶融時に熱劣化を起こしたり、フィルムとした際、共重合ポリエステルの部分が熱劣化により欠点となったりする。一方、共重合ポリエステル樹脂微粉末の融点が微粉末が添加されるPET樹脂の融点に対して過度に高いと、フィルムとした際のボイド抑制効果が半減する。
【0031】
本発明における共重合ポリエステル樹脂微粉末を構成する共重合ポリエステルとしては、全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸で、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETと称することがある。)樹脂が好ましい。また、共重合成分は、ジカルボン酸成分として、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムジカルボン酸などが好ましく挙げられ、グリコール成分として、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが好ましく挙げられる。
【0032】
本発明において、共重合ポリエステル樹脂微粉末を構成する共重合ポリエステルは、上記の構成の中でも、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸を主体とし、モル比(テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸)が80/20〜97/3である酸成分と、エチレングリコールを主体とするグリコール成分とから構成される共重合PET樹脂が、融点を本発明の範囲とするのに適しており、また、微粉末が添加されるPEN樹脂との親和性やボイド抑制効果の観点から最も好ましい。
【0033】
また、本発明において、共重合ポリエステル樹脂微粉末のうち70重量%以上は、該微粉末の平均粒径に対して0.2〜2倍の範囲内の粒径を有していることが好ましい。共重合ポリエステル樹脂微粉末の70重量%以上がこの範囲を満たすことによって、不活性粒子と混合する際の均一混合性、該微粉末を二軸混練押出機に投入させるフィーダー内での流動性、PEN樹脂中での不活性粒子の分散性等の点で、より優れた効果が得られる。
【0034】
本発明における共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量は、PEN樹脂組成物全体の重量を基準として、0.001〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜20重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%である。共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が下限より少ない場合、不活性粒子の分散性が悪くなったり、不活性粒子の周囲にボイドが発生しやすくなる。一方、共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が上限を超える場合、PEN樹脂の有する優れた透明性や機械的特性を損なうことがある。一方、本発明のPENフィルムにおける共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量は、フィルム重量を基準として、0.001〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%である。共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が下限より少ない場合、不活性粒子の分散性が悪くなったり、不活性粒子の周囲にボイドが発生しやすくなる。一方、共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が上限を超える場合、フィルムにしたときに透明性や機械的特性を損なうことがある。
【0035】
また、本発明における共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量は、不活性粒子の重量を基準として、10重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が10重量%より少ないと、不活性粒子の分散性が低下したり、不活性粒子の周囲にボイドが発生しやすくなる。なお、共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量の上限は、不活性粒子の重量を基準として、高々500重量%であることがPEN樹脂の有する優れた透明性や機械的特性を維持しやすい点から好ましい。
【0036】
[製造方法]
本発明のPEN樹脂組成物の製造方法は、PEN樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のPEN樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のPEN樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程とからなり、これらの工程は、通常同じ混練押出機内にて行われる。
【0037】
本発明で使用する混練押出機としては、1軸混練押出機、2軸混練押出機のいずれでも良いが、均一な混練状態を形成しやすいことから2軸混練押出機が好ましく用いられる。
【0038】
かかる2軸混練押出機としては、例えば、ニーディングディスクおよび逆ねじといった混練を高めるエレメントを配したスクリュー構成を有するベント式2軸混練押出機やロータ型2軸連続混練機(例えば「合成樹脂」Vol.41(7)P.9.7(1995)に記載)が挙げられる。
【0039】
以下、図面を用いて本発明で使用する混練押出機を説明する。図1は、本発明で使用するベント付二軸混練押出機を例示した側面図である。図1において、1は押出機本体、2は加熱シリンダー、3はスクリュー、4はポリマーの吐出口、5は定量フィーダーをそれぞれ示す。なお、該押出機には、上流側からポリマーの吐出口4に向かって、ポリマー投入口6、不活性粒子および微粉末ポリマーの投入口7、ベント口8、9が、この順で設けられている。
【0040】
以上のようなベント付二軸混練押出機1において、PEN樹脂は、チップとしてポリマー投入口6から押出機のシリンダー2中へ投入され、吐出口4へ向けてスクリュー3によって移送される。投入されたチップは、その後加熱軟化される。
【0041】
この際、不活性粒子および微粉末ポリマーの投入口7は、PEN樹脂の70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは全てが軟化する位置よりも下流側に設けられる。この位置よりも上流側に投入口7を設けた場合、PEN樹脂が未溶融状態であるため、PEN樹脂中で、不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末とが分離し、不活性粒子が混練押出機内で凝集し、フィルムに延伸する際、凝集粒子によるボイドが発生したりする。ここで、PEN樹脂の70重量%以上が軟化する位置とは、押出機内のPEN樹脂の断面を見たときに、チップの形状を維持している樹脂の割合が重量比で30重量%未満になる位置を意味する。PEN樹脂の70重量%以上が軟化する位置よりも下流側であれば、投入口7の位置は特に制限されないが、不活性粒子および微粉末ポリマーを均一に混練しやすいという観点から、不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末の分離が起こらない範囲で、より上流側に設置されることが好ましく、具体的には、不活性粒子を添加した後、40秒以上、さらには60秒以上溶融混練し得る位置であることが好ましい。
【0042】
本発明における不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末との添加方法は、混練押出機に供給する前に予め混合してから添加する方法が複雑な装置を要しない点から好ましい。不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加速度を一定に保つことができ、同じ投入位置から添加することができる装置であれば、予め混合することなく別々に供給してもよい。
【0043】
なお、溶融混練温度は270℃〜330℃であることが好ましい。溶融混練温度が270℃より低い場合は、溶融樹脂粘度が高く、混練押出機に過度な負荷がかかり好ましくない。また溶融混練温度が330℃より高い場合は、熱劣化によって得られるフィルムの機械強度が低下しやすくなる。
【0044】
つぎに、本発明のPENフィルムおよびその製造方法について説明する。
本発明のPENフィルムは、上述の本発明のPEN樹脂組成物の製造方法によって得られたPEN樹脂組成物を溶融状態でシート状に押出し、これを少なくとも一軸方向に延伸することで製造できる。このようにして得られた本発明のPENフィルムは、前述のフィルム中の凝集粒子数が1.2mm2あたり10個以下であることが、フィルムの表面平滑性の点から好ましい。更に好ましい凝集粒子数は1.2mm2あたり5個以下、特に好ましくは1個以下である。また、同様にフィルムの表面平滑性の点から、下記式(I)で表されるフィルム中のボイド比は3以下にあることが好ましい。
【0045】
【数4】
【0046】
本発明のPETフィルムの製造方法をさらに詳述する。フィルムの製膜方法は、少なくとも1軸に延伸するだけでも良いが、より実用に適したフィルムを得られることから、直交する2軸方向に延伸することが好ましい。具体的な2軸方向への延伸としては、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法などのそれ自体公知の方法を好適に用いることができる。延伸倍率は、使用される用途の要求特性にもよるが、通常縦方向ならびに横方向それぞれ2.0倍以上4.5倍以下の範囲で延伸処理が施され、その後必要に応じて熱固定処理が行われる。具体的には、不活性粒子を含有させたPEN樹脂組成物を高精度ろ過したのち、口金よりPEN樹脂の融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸フィルムを得る。その後、上記未延伸フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:PEN樹脂のガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0047】
さらに、上記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、180〜250℃で熱固定結晶化すること(以下、熱固定処理と称することがある。)によって、優れた寸法安定性が付与できる。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。この熱固定処理の温度は、共重合ポリエステル樹脂微粉末の融点に対して、−10〜+50℃の範囲にあることが、さらにボイドを縮小できることから好ましい。
【0048】
本発明のPENフィルムはその少なくとも片面に皮膜層を設けてもよく、その場合、皮膜層は水性塗液を塗布する方法で形成するのが好ましい。塗布は最終延伸処理を施す以前のPENフィルムの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で塗膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸フィルムまたは縦(一軸)延伸フィルム、特に縦(一軸)延伸フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。なお、得られたフィルムの厚みは、0.5μm〜250μmであることが好ましい。
【0049】
このようにして本発明の方法を用いて製造されたPEN樹脂組成物は、従来のような多大な労力をかけて不活性粒子の分散性を向上させた、溶融重縮合の反応系へ添加する方法と同等、もしくはそれ以上に均一な不活性粒子の分散性を、混練押出機を用い、より簡便な工程による混練で達成することができる。
【0050】
その結果、本発明により製造されたPEN樹脂組成物を単層または積層形態のフィルムにした場合、表面に均一な凹凸が得られ、粗大突起の少ない、耐摩耗性、すべり性に優れるPENフィルムを得ることができ、磁気記録用テープなどに好適に用いることができる。
【0051】
本発明における不活性粒子の分散性向上のメカニズムについては、共重合ポリエステル樹脂の融点がPEN樹脂より低く、かつ微粉末状であることから溶融速度が早く、不活性粒子は押出機内の混練過程で、溶融する微粉末に運ばれる形で分散すること、さらに溶融した直後のベースのPEN樹脂に対し、共重合ポリエステル樹脂が高度の親和性を有することから混練効果を受けやすく、分散性が向上すると推定される。すなわち共重合ポリエステル樹脂微粉末は、不活性粒子の分散剤的役割を果たしていると推定される。
【0052】
また、本発明における不活性粒子の周囲のボイド抑制については、PEN樹脂に不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂とが同時に添加されるため、不活性粒子の周囲に共重合ポリエステル樹脂が優先的に存在し、共重合ポリエステル樹脂の融点がPEN樹脂より低いことから、延伸工程において、PEN樹脂と不活性粒子の間で共重合ポリエステル樹脂が緩衝剤として機能し、ボイドの発生が抑制されるのではないかと考えられる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例における各特性値は、以下の方法にて測定または評価した。
(1)不活性粒子の平均粒子径
島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置、SALD−2000にて、エチレングリコールに不活性粒子を分散させた状態で不活性粒子の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布の50体積%時点の粒子径を平均粒子径とした。
【0054】
(2)共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径および粒径分布
セイシン企業(株)製音波振動式全自動フルイ分け測定器、RPS−85Pを使用し、共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径および粒径分布を測定した。まず前記測定器を用い粒径の重量累積分布を測定し、得られた重量累積分布より50重量%時点の粒径を平均粒径とした。
【0055】
(3)PEN樹脂および共重合ポリエステル樹脂の固有粘度
それぞれ、O−クロロフェノール溶媒下、35℃の雰囲気下で測定した。
【0056】
(4)PEN樹脂および共重合ポリエステル樹脂の融点
DuPont社製示差走査熱量計(DSC MODEL2200)を用い測定した。試料10mgを装置にセットし、300℃で5分間溶融した後、液体窒素中で冷却する。冷却した試料を昇温速度5℃/min.で昇温し、ガラス転移点、結晶化発熱ピークを検知した後、更に昇温を続け結晶融解ピークを検知した温度をもって融点とする。
【0057】
(5)PEN樹脂組成物中の不活性粒子の分散性
溶融混練後、冷却して得られたPEN樹脂組成物の表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、該表面に不活性粒子を露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。なお、本測定における凝集粒子とは、4個以上の不活性粒子が凝集したものである。
◎:凝集粒子が観察されない。
○:凝集粒子が3個未満である。
△:凝集粒子が3個以上9個以下である。
×:凝集粒子が10個以上である。
【0058】
(6)PENフィルム中の不活性粒子の分散性
得られたPENフィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、フィルム表面に露出した不活性粒子を、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。
なお、本測定における凝集粒子とは、2個以上の不活性粒子が凝集したものである。
◎:凝集粒子が5個以下である。
○:凝集粒子が5個を超え、10個以下である。
△:凝集粒子が10個を超え、50個以下である。
×:凝集粒子が50個以上を超える。
【0059】
(7)PENフィルムのボイド比
得られたPENフィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、該フィルム表面に不活性粒子を露出させた後、走査型電子顕微鏡を用い、不活性粒子の粒径に応じて5000倍〜20000倍の倍率にて不活性粒子および不活性粒子の周囲のボイド(空隙)を観察する。その観察像を画像解析装置を用いて、不活性粒子面積と、不活性粒子とボイドとを合わせた面積をそれぞれ測定し、(不活性粒子を含むボイド面積)/(不活性粒子面積)の比をもってボイド比とする。この際、凝集している不活性粒子はそれを一つの粒子として見なす。この測定を無作為に不活性粒子100個について実施し、その平均値をPENフィルムのボイド比とした。
【0060】
(8)PENフィルムの静摩擦係数(μs)
ASTM−D−1894−63に従い、スリップテスターを用いて測定した。
【0061】
(9)フィルム中の粒子の含有量
(9−1)総含有量
PENフィルムからポリマーを100g程度削り取ってサンプリングし、PENは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択して、サンプルを溶解した後、粒子をポリエステルから遠心分離し、サンプル重量に対する粒子の比率(重量%)をもって粒子総含有量とする。
(9−2)無機粒子の総含有量
フィルムから100g程度削り取ってサンプリングし、これを白金ルツボ中にて1,000℃の炉の中で3時間以上燃焼させ、次いでルツボ中の燃焼物をテレフタル酸(粉体)と混合し、50gの錠型のプレートを作成する。このプレートを波長分散型蛍光X線を用いて各元素のカウント値をあらかじめ作成してある元素毎の検量線より換算し各層中の無機粒子の総含有量を決定する。蛍光X線を測定する際のX線管はCr管が好ましくRh管で測定しても良い。X線出力は4KWと設定し分光結晶は測定する元素ごとに変更する。材質の異なる無機粒子が複数種類存在する場合は、この測定により各材質の無機粒子の含有量を決定する。(9−3)有機粒子の総含有量
前記(9−1)で求めた粒子の総含有量から前記(9−2)で求めた無機粒子の総含有量を差し引いて有機粒子の含有量を求める。
【0062】
[実施例1]
固有粘度0.65のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)樹脂チップ(融点268℃)を水分率0.4%以下になるように乾燥した状態で、ポリマー投入口6より、振動式定量フィーダー5を用いて20Kg/hの吐出速度で、ニーディングディスクバドルをスクリュー構成要素として有する、同方向回転噛合せ型の図1に示すベント付き2軸混練押出機に供給した。この押出機は、ポリマー投入口6とポリマーの吐出口4との距離が1200mmで、ポリマーの投入口6から下流側300mmの位置に不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末の投入口7を有し、ポリマーの投入口6から下流側500mmおよび900mmの位置にベン口8およびベント口9を有する。
【0063】
つぎに、表1に示す共重合ポリエステル樹脂(固有粘度0.70、融点228℃)を粉砕して平均粒径295μm、および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が72重量%の微粉末状にした共重合ポリエステル樹脂微粉末50部およびシリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名「トスパール120」、平均粒子径2μm)50部とを予め均一に混合させた混合物を、前述の押出機の共重合ポリエステル樹脂微粉末の投入口7から振動式定量フィーダーを用いて添加した。なお、該混合物の吐出速度は、得られるPEN樹脂組成物を基準としてシリコーン樹脂微粒子の濃度が0.4重量%となるように調整した。この際、ベント口の真空度は100Pa、シリンダー温度は280℃、PEN樹脂は全て軟化(チップ形状を保持したポリマーはなし)、PEN樹脂の押出機内の滞留時間は2分であった。投入口7でシリコーン樹脂微粒子および共重合ポリエステル樹脂微粉末を添加した後、PEN樹脂、シリコーン樹脂微粒子および共重合ポリエステル樹脂微粉末は混練され、溶融状態でポリマー吐出口4から押出され、ペレット化されてPEN樹脂組成物が得られた。
得られたPEN樹脂組成物の特性を表1に示す。
【0064】
また、得られたシリコーン樹脂微粒子含有PEN樹脂組成物(固有粘度0.58)と、シリコーン樹脂微粒子を含まないPEN樹脂(固有粘度0.65)とを、シリコーン樹脂微粒子の濃度が0.02重量%になるように混合し、170℃で6時間乾燥後、溶融押出機にて溶融温度295℃で溶融し、ダイから押出して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを120℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より900℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱して製膜方向に3.5倍に延伸後急冷し、続いてステンターに供給し、140℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸配向延伸フィルムを225℃の熱固定温度で5秒間熱固定処理し、厚み14μmの2軸配向延伸フィルムを得た。
得られたPENフィルムの特性を表1に示す。
【0065】
[実施例2]
共重合ポリエステル樹脂微粉末と混合する不活性粒子を球状シリカ粒子(日本触媒(株)製、商品名「シーホスター」、平均粒径1.5μm)とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
実施例1と同様の共重合ポリエステル樹脂を粉砕して平均粒径285μm、および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が80重量%の微粉末状とし、不活性粒子をシリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名「トスパール105」:平均粒径0.5μm)とし、また、共重合ポリエステル樹脂微粉末とシリコーン樹脂微粒子の混合比やシリコーン樹脂微粒子の濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
[実施例4]
実施例1と同様の共重合ポリエステル樹脂を粉砕して平均粒径800μm、および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が75重量%の微粉末状とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0068】
[実施例5]
共重合ポリエステル樹脂微粉末とシリコーン樹脂微粒子の混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
[実施例6および7]
共重合ポリエステル樹脂微粉末とシリコーン樹脂微粒子の添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0070】
[実施例8]
熱固定処理の温度を235℃に変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
[実施例9および10]
共重合ポリエステル樹脂微粉末のテレフタル酸成分と2,6−ナフタレン時カルボン酸成分との割合を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
なお、実施例9の樹脂微粉末の融点は210℃で、実施例10の樹脂微粉末の融点は236℃であった。
【0072】
[比較例1]
実施例1と同様の共重合ポリエステル樹脂を粉砕して平均粒径1150μm、および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が60重量%の微粉末状とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0073】
[比較例2]
粉砕した共重合ポリエステル樹脂微粉末を添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
[比較例3]
粉砕した共重合ポリエステル樹脂微粉末を添加しなかった以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0075】
[比較例4]
不活性粒子および樹脂微粉末を、二軸混連押し出し機のポリマー投入口6から投入した以外は、実施例7と同様な操作を繰り返した。得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0076】
[比較例5]
共重合ポリエステル樹脂微粉末を構成する共重合ポリエステル樹脂を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。この共重合ポリエステル樹脂の融点は262℃であった。得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0077】
[比較例6]
共重合ポリエステル樹脂微粉末の変わりに表1に示すPEN樹脂微粉末を使用した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。このPEN樹脂の融点は268℃であった。得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
ここで、表1に記載の「微粉末割合」は、平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する共重合ポリエステル樹脂微粉末の全微粉末に占める重量割合、粒子とは不活性粒子、微粉末とは共重合ポリエステル樹脂微粉末、TAはテレフタル酸成分、NDCは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分およびEGはエチレングリコール成分を示す。
【0080】
表1に示すように、実施例1〜10のPEN樹脂組成物およびPENフィルムはいずれも、共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径、融点および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が適切であり、かつ不活性粒子と共重合ポリエステル樹脂微粉末とが同時添加された結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中の不活性粒子の凝集が抑制され、分散性が良好であった。また、適切なボイド比が得られ、ボイドが抑制された結果、表面平滑性に優れ、静摩擦係数が小さいPENフィルムが得られた。
【0081】
一方、比較例1は共重合ポリエステル樹脂微粉末の平均粒径および共重合ポリエステル樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が不適切であった結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中、不活性粒子の凝集が生じ、十分な分散性が得られず、PENフィルムの静摩擦係数は、磁気記録テープなどとして使用するのに十分とはいえないレベルであった。また、比較例2および比較例3は、共重合ポリエステル樹脂微粉末を添加しなかった結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中、不活性粒子の凝集が大量に生じ、十分な分散性が得られなかった。また、ボイドの抑制も十分ではなく、得られたPENフィルムの静摩擦係数は、磁気記録テープなどとして使用するのに十分とはいえないレベルであった。さらにまた、比較例4は、共重合ポリエステル樹脂微粉末と不活性粒子を混錬前に添加した結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中、不活性粒子の凝集が生じ、十分な分散性が得られなかった。また、ボイドの抑制も十分ではなかった。比較例5は、共重合ポリエステル樹脂微粉末を構成する共重合ポリエステルの成分が不適切であったため、その融点が高すぎた結果、ボイドの抑制が十分ではなかった。比較例6は共重合ポリエステル樹脂微粉末ではなくPEN樹脂微粉末を添加したため、ボイドの抑制が十分ではなかった。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融混練工程において不活性粒子を添加する際に、共重合ポリエステル樹脂微粉末を同時に添加することによって、PEN樹脂組成物中に不活性粒子が凝集して形成される粗大粒子を存在させることなく、極めて均一に分散させることができ、さらにPEN樹脂と不活性粒子との界面に、ボイドの発生が少ないPEN樹脂組成物を極めて簡便に製造することができる。そして、本発明の製造方法によって得られたPEN樹脂組成物をフィルムにした場合、不活性粒子が均一にかつボイドの少ない状態で分散していることから、表面が平滑でありながらすべり性に優れ、しかも透明性や耐削れ性にも優れるPENフィルムとして好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用するベント付二軸混錬押出機を例示した側断面図である。
【符号の説明】
1 押出機本体
2 加熱シリンダー
3 スクリュー
4 ポリマーの吐出口
5 定量フィーダー
6 ポリマー投入口
7 不活性粒子および共重合ポリエステル樹脂微粉末の投入口
8、9 ベント口
Claims (10)
- ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmであり、かつ該ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂よりも融点が10〜70℃低い共重合ポリエステル樹脂微粉末を不活性粒子と同時に添加することを特徴とするポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 共重合ポリエステル樹脂微粉末が共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂微粉末である請求項1に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂微粉末が2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂からなり、かつテレフタル酸成分と2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とのモル比が80/20〜97/3である請求項2に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子の添加量が、ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の重量を基準として、0.01〜20重量%である請求項1に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 共重合ポリエステル樹脂微粉末の添加量が、ポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の重量を基準として、0.001〜40重量%である請求項1に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子の平均粒径が、0.03〜10μmである請求項1に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 溶融状態での混練が、ベント付二軸混練押出機にて行われる請求項1に記載のポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を、溶融状態でシート状に押出し、少なくとも一軸方向に延伸することを特徴とするポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの製造方法。
- 延伸処理後に、共重合ポリエステル樹脂微粉末の融点よりも10℃低い温度から50℃高い温度の範囲で熱固定処理を行う請求項8記載のポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの製造方法。
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