JP2004223550A - 2電極アーク溶接方法 - Google Patents

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Toshio Oonawa
登史男 大縄
Toshiro Uesono
敏郎 上園
Tomoyuki Kamiyama
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Abstract

【課題】溶融池を大きく振動させて攪拌させ、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる2電極アーク溶接方法を提供する。
【解決手段】本発明の2電極アーク溶接方法は、先行ワイヤと後行ワイヤとに、ピーク電流又はピーク電流の通電期間が異なるピーク電流を通電する期間からなる2つのパルス電流群をパルス電流群切換信号で切換えて、かつ、先行ワイヤと後行ワイヤとに通電するパルス電流群の切換えを同期させる2電極アーク溶接方法である。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
1つの溶接トーチから送給された互いに電気的に絶縁された2本の溶接ワイヤと被溶接物との間に2つのアークを発生させて溶接する2電極アーク溶接方法において、良好な溶接結果を得るための改善された2電極アーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2電極アーク溶接方法では、1つの溶接トーチに設けた電気的に絶縁された2つのコンタクトチップを通して2本の溶接ワイヤを送給して、これらの溶接ワイヤと被溶接物との間にパルスアークをそれぞれ発生させて溶接を行う。この溶接制御方法は、2本の溶接ワイヤが同時に溶融するので高溶着量を得ることができ、薄板の溶接では4[m/分]を超える高速溶接を行うことができる。また、厚板の多層溶接では層数を減らして溶接を行うことができ、溶接作業の高効率化を図ることができる。さらに、この溶接制御方法は、パルスアークによる溶接制御方法であるので、スパッタの発生が少なく、美しいビード外観を得ることができる。
【0003】
[従来技術1]
本出願人は、過去の出願において、下記の2電極アーク溶接方法を提案した。
即ち、アルゴンガスに炭酸ガスが混合されたシールドガスを噴出して鉄を溶接する場合として、図1に示す溶接電流を通電させて制御する方法である。同図は、従来技術1の軟鋼を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は後行溶接電流BIwの時間変化を示している。
【0004】
同図において、先行ワイヤA1については、先行溶接電流AIwのパルス周波数を変化させて先行溶接電流AIwの平均値を増減させることによって先行ワイヤA1のアーク長を制御する。また、後行ワイヤB1については、後行パルス周期及び後行ピーク電流通電期間BTpを先行溶接電流AIwの先行パルス周期及び先行ピーク電流通電期間ATpとそれぞれ同期させ、後行溶接電流BIwの後行ピーク電流BIpの値を変化させて後行溶接電流BIwの平均値を増減させることによって後行ワイヤB1のアーク長を制御する。さらに、後行溶接電流BIwの後行ピーク電流通電期間BTpを先行溶接電流AIwの先行ピーク電流通電期間ATpよりも短くしている。
【0005】
この結果、下記の効果を有する。
(1)先行ピーク電流通電期間ATpと後行ピーク電流通電期間BTpとのパルスを同時に終了させることによって、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1との溶滴離脱をアークの磁気的干渉の少ないベース電流通電期間で行うことができ、スパッタの発生を減少させることができる。
(2)後行溶接電流BIwの後行ピーク電流通電期間BTpを先行溶接電流AIwの先行ピーク電流通電期間ATpと異なる値に設定することができるので、種々の条件の溶接施工に使用することができる。(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、プライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合、単なる鋼板を溶接する場合と比較してプライマ又は亜鉛が気化するために、溶接金属中にブローホールが発生し、溶接金属にブローホール、ピット又は溶接割れが発生し、溶接欠陥の原因になる。
【0007】
[従来技術2]
上述したアルゴンガスに炭酸ガスが混合されたシールドガスを噴出して鉄を溶接する場合に対して、アルミニウムを溶接する場合は、不活性ガスであるアルゴンガスをシールドガスとして使用し、また、ステンレスを溶接する場合は、アルゴンガスに5[体積%]以下の酸素が混合されたガスをシールドガスとして使用して溶接する。これらの場合,アークに熱的ピンチ効果が発生せず、アークの硬直性が小さい。
従って、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されると、両方のアークが互いに引っ張られるために、一方の溶接ワイヤから溶滴が離脱するとき、溶滴が他方の溶接ワイヤの方向に飛び出し、溶滴が溶融池に落下しないでスパッタに成り、溶接ビード形状が整わなくなる。
【0008】
そのために、本出願人は、図2に示す溶接電流を通電して制御する方法を提案した。同図は、従来技術2のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は後行溶接電流BIwの時間変化を示している。
【0009】
この制御方法は、一方の溶接ワイヤにベース電流を通電する時に他方の溶接ワイヤにピーク電流を通電するために、2本の溶接ワイヤに通電する溶接電流のパルス周期を同じに設定し、{(先行ピーク電流通電期間ATp+後行ピーク電流通電期間BTp)<パルス周期Ts}となるように2本の溶接ワイヤに通電するピーク電流の通電期間をそれぞれ予め設定する。そして、一方の溶接電流のピーク電流通電期間の中心の時刻と他方の溶接電流のベース電流通電期間の中心の時刻とを一致させる。そのために、先行溶接電流AIwの先行ピーク電流AIpの通電開始時刻から後行溶接電流BIwの後行ピーク電流BIpの通電開始時刻までの遅れ時間である遅延時間Tdを下記のように演算して設定する。
遅延時間Tdを、{遅延時間Td=(パルス周期Ts+先行ピーク電流通電期間ATp−後行ピーク電流通電期間BTp)/2}で演算する。
【0010】
この遅延時間Tdを設けることによって、一方の溶接電流のピーク電流通電期間の中心の時刻と他方の溶接電流のベース電流通電期間の中心の時刻とを一致させることができ、2本の溶接ワイヤに通電する溶接電流のピーク電流が重なることがない。
【0011】
また、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのピーク電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電圧制御し、ベース電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電流制御している。
この結果、2本の溶接ワイヤに同時にピーク電流が通電されないために、両方のアークが互いに引っ張られることがなく、安定したアーク長制御を行うことができ、スパッタの発生が少なく、適切な溶接ビードを形成することができる。
【0012】
しかし、シールドガス中の水分が分解して水素と酸素とが発生する等の原因によって、溶接金属にブローホール、ピット又は溶接割れが発生し、溶接欠陥の原因になる。
【0013】
[従来技術3]
一方、本出願人は、溶融池内部に発生するブローホールを溶融池から排出させることを促進するために、図3に示すように、1電極パルスアーク溶接制御方法において、ユニットパルスのピーク電流値を大小2つの電流値に低周波で切り替え、又は、溶接ワイヤの送給速度を大小2つの速度に低周波で切り替えて、アーク長を大小2つの長さに切換える。その結果、アーク力によって低周波の振動を与え、溶融池を振動、攪拌することができるのために、溶融池からの気泡の排出を促進し、溶接金属の結晶粒を微細化することができ、良好な溶接結果を得ることができる方法を提案した。(例えば、特許文献2参照。)。
【0014】
図3は、従来技術3の1電極パルスアーク溶接制御方法で通電する溶接電流Iwの時間変化を示す図である。同図において、高ピーク電流Iphの通電とベース電流Ibの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る高パルス電流群Phと、高ピーク電流Iphよりピーク電流値が小さい低ピーク電流Ipjの通電とベース電流Ibの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る低パルス電流群Pjとを繰返し通電している。
【0015】
しかし、従来技術3は1本の電極で溶接を行うパルスアーク溶接制御方法であり、この方法でプライマ塗布鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金又はステンレスの溶接を行うと溶接速度が遅く効率的ではない。
そこで、従来の方法をそのまま、1つの溶接トーチに設けた電気的に絶縁された2つのコンタクトチップを通して2本の溶接ワイヤを送給して、これらの溶接ワイヤと被溶接物との間にパルスアークをそれぞれ発生させて溶接を行う2電極アーク溶接方法に適用することが考えられる。この場合、先行ワイヤ又は後行ワイヤの片方のみにおいて10〜50[Hz]の周波数でパルスピーク値又はパルス幅を変動させても、2電極溶接によって溶融池が大きくなっているため、十分に溶融金属を攪拌することができず、気泡の放出を十分促進することができない。また、溶接金属の結晶粒微細化の効果も十分に得ることができない。
また、両方のワイにおいて、10〜50[Hz]の周波数でパルスピーク値を変動させても、正確に先行ワイヤと後行ワイヤとで10〜50[Hz]の低周波の同期が取れていなければ、溶融金属の攪拌状態やワイヤ溶融量にむらが生じ、均一なビード外観を得ることができない。
【0016】
【特許文献1】
特開2002−263838号公報
【特許文献2】
特許第2993174号明細書
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術1においては、プライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合、単なる鋼板を溶接する場合と比較してプライマ又は亜鉛が気化するために、溶接金属中にブローホールが発生し、溶接金属にブローホール、ピット又は溶接割れが発生し、溶接欠陥の原因になる。
また、アルミニウム又はステンレスを溶接する場合も、シールドガス中の水分が分解して水素と酸素とが発生する等の原因によって、溶接金属にブローホール、ピット又は溶接割れが発生し、溶接欠陥の原因になる。
【0018】
また、上述した従来技術2においては、1本の電極で溶接を行うパルスアーク溶接制御方法であり、この方法でプライマ塗布鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム合金又はステンレスの溶接を行うと溶接速度が遅く効率的ではない。
また、従来技術2の方法をそのまま2電極アーク溶接方法に適用して、先行ワイヤ又は後行ワイヤの片方のみにおいて10〜50[Hz]の周波数でパルスピーク値又はパルス幅を変動させても、2電極溶接によって溶融池が大きくなっているため、十分に溶融金属を攪拌することができず、気泡の放出を十分促進することができない。また、溶接金属の結晶粒微細化の効果も十分に得ることができない。
また、両方のワイヤにおいて、10〜50[Hz]の周波数でパルスピーク値を変動させても、正確に先行ワイヤと後行ワイヤとで10〜50[Hz]の低周波の同期が取れていなければ、溶融金属の攪拌状態やワイヤ溶融量にむらが生じ、均一なビード外観を得ることができない。
【0019】
本発明は、溶融池を大きく振動させて攪拌させ、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる2電極アーク溶接方法を提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された先行ワイヤ及び後行ワイヤをそれぞれ予め定めた送給速度で送給し、前記先行ワイヤ及び前記後行ワイヤに通電して先行アーク及び後行アークをそれぞれ発生させて溶接する2電極アーク溶接方法において、前記先行アークに対してアーク長が高くなる先行高アーク長期間とアーク長が低くなる先行低アーク長期間とを周期的に切換え、前記後行アークに対してアーク長が高くなる後行高アーク長期間とアーク長が低くなる後行低アーク長期間とを周期的に切換え、前記先行高アーク長期間と前記後行高アーク長期間とを一致させ、前記先行低アーク長期間と前記後行低アーク長期間とを一致させたことを特徴とする2電極アーク溶接方法である。
【0021】
請求項2に記載の発明は、
1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された先行ワイヤ及び後行ワイヤをそれぞれ予め定めた送給速度で送給し、前記先行ワイヤに予め定めた先行ピーク電流の通電と、予め定めた先行ベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返す先行パルス電流群を通電すると共に、前記後行ワイヤに予め定めた後行ピーク電流の通電と予め定めた後行ベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返す後行パルス電流群を通電し、前記先行ワイヤ及び前記後行ワイヤと被溶接物との間にアークをそれぞれ発生させて溶接する2電極アーク溶接方法において、前記先行ワイヤに、予め定めた先行高パルス電流群通電期間中は、前記先行ピーク電流を予め定めた先行高ピーク電流に設定した前記先行パルス電流群を通電し、予め定めた先行低パルス電流群通電期間中は、前記先行ピーク電流を前記先行高ピーク電流よりも小さい予め定めた先行低ピーク電流に設定した前記先行パルス電流群を通電し、前記後行ワイヤに、予め定めた後行高パルス電流群通電期間中は、前記後行ピーク電流を予め定めた後行高ピーク電流に設定した前記後行パルス電流群を通電し、予め定めた後行低パルス電流群通電期間中は、前記後行ピーク電流を前記後行高ピーク電流よりも小さい予め定めた後行低ピーク電流に設定した前記後行パルス電流群を通電し、前記先行高パルス電流群通電期間と前記後行高パルス電流群通電期間とを一致させ、前記先行低パルス電流群通電期間と前記後行低パルス電流群通電期間とを一致させることを特徴とする2電極アーク溶接方法である。
【0022】
請求項3に記載の発明は、
前記先行高パルス電流群通電期間の前記先行高ピーク電流の通電期間を前記先行低パルス電流群通電期間の前記先行低ピーク電流の通電期間より短くし、前記後行高パルス電流群通電期間の前記後行高ピーク電流の通電期間を前記後行低パルス電流群通電期間の前記後行低ピーク電流の通電期間より短くすることを特徴とする請求項2に記載の2電極アーク溶接方法である。
【0023】
請求項4に記載の発明は、
前記先行高パルス電流群通電期間と前記後行低パルス電流群通電期間とを一致させ、前記先行低パルス電流群通電期間と前記後行高パルス電流群通電期間とを一致させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の2電極アーク溶接方法である。
【0024】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図4は、実施の形態1のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する場合の溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
【0025】
同図において、先行ワイヤA1については、先行溶接電流AIwのパルス周波数を変化させて先行溶接電流AIwの平均値を増減させることによって先行ワイヤA1のアーク長を制御する。また、後行ワイヤB1については、後行パルス周期及び後行ピーク電流通電期間BTpを先行溶接電流AIwの先行パルス周期及び先行ピーク電流通電期間ATpとそれぞれ同期させ、後行溶接電流BIwの後行ピーク電流BIpの値を変化させて後行溶接電流BIwの平均値を増減させることによって後行ワイヤB1のアーク長を制御する。
さらに、先行ワイヤA1には、先行高ピーク電流AIphの通電と先行ベース電流AIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る先行高パルス電流群APhと、先行高ピーク電流AIphよりピーク電流値が小さい先行低ピーク電流AIpjの通電と先行ベース電流AIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る先行低パルス電流群APjとを繰返し通電している。
【0026】
また、後行ワイヤには、後行高ピーク電流BIphの通電と後行ベース電流BIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る後行高パルス電流群BPhと、後行高ピーク電流BIphよりピーク電流値が小さい後行低ピーク電流BIpjの通電と後行ベース電流BIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る後行低パルス電流群BPjとを繰返し通電している。
【0027】
さらに、パルス電流群切換信号S1がHighレベルの期間に、先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhを通電し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルの期間に、先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjを通電する。従って、先行高パルス電流群APhと先行低パルス電流群APjとの切換え及び後行高パルス電流群BPhと後行低パルス電流群BPjとの切換えを同期して行うことができる。
【0028】
図5は、図4に示した実施の形態1の溶接電流を通電したときの、溶融池の状態を示す図であって、同図(A)は、先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhを通電している期間の溶融池の状態を示す図であり、同図(B)は、先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjを通電している期間の溶融池の状態を示す図である。
同図において、ノズル10から先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1が突出し、図示しない溶接用電源装置から先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1と被溶接物2との間にそれぞれ電力が供給されて、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1からアークA3及びB3がそれぞれ発生し、溶接ビード9が形成されている。
【0029】
先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が高い先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhをそれぞれ通電したときは、図5(A)に示すように、アーク力が強いために、アークA3、B3の直下の溶融金属はアークA3、B3の直下の外へ押し出される。
次に、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が低い先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjを通電したときは、図5(B)に示すように、アーク力が弱いために、上述したアークA3、B3の直下から外へ押し出された溶融金属は、アークA3、B3の直下へ戻される。
従って、ピーク電流値が高い先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhとピーク電流値が低い先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjとの通電を繰返すことによって、溶融池を大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0030】
図6は、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1に図4に示した溶接電流を通電してプライマ塗布鋼板のT継手の隅肉溶接を行った場合の、パルス電流群切換信号S1[Hz](横軸)を変化させたときの溶接長が500[mm]当りのピットの発生数Np[個](縦軸)を示す図である。
同図に示すように、パルス電流群切換信号S1が、5[Hz]から25[Hz]の期間において、ピットの発生数を抑制することができ、良好な溶接結果を得ることができた。
【0031】
図7は、実施の形態1の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、この溶接装置は、先行溶接電源装置APS、先行ワイヤ送給装置AWF、先行ワイヤ送給速度設定回路AWS、後行溶接電源装置BPS、後行ワイヤ送給装置BWF、後行ワイヤ送給速度設定回路BWS及び溶接トーチ4から構成されている。以下、同図を参照してこれらの構成装置について説明する。
【0032】
溶接トーチ4には、相互に電気的に絶縁された先行コンタクトチップA41及び後行コンタクトチップB41が装着されており、これらのコンタクトチップA41及びB41を通して先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1が送給及び給電されて、被溶接物2との間に先行アークA3及び後行アークB3が発生する。
【0033】
先行溶接電源装置APSは、一点鎖線で囲んだ範囲内の各回路ブロックから構成されており、以下、これらの回路ブロックについて説明する。
出力制御回路INVは、商用電源を入力として出力制御し、アーク負荷に適した出力を供給する。一般的に、この出力制御回路INVとしては、インバータ制御回路、チョッパ制御回路、サイリスタ位相制御回路等が慣用されている。例えば、上記のインバータ制御回路は以下の回路から形成されている。すなわち、商用電源を整流する1次側整流回路と、整流されたリップルのある電圧を平滑する平滑回路と、平滑された直流電圧を高周波交流に変換するインバータ回路と、高周波交流をアーク負荷に適した電圧に降圧する高周波変圧器と、降圧された交流を再び整流する2次側整流回路と、整流されたリップルのある直流を平滑する直流リアクトルとから形成されており、後述する電流誤差増幅信号Eiに従って上記のインバータ回路を形成する複数組のパワートランジスタが制御されて出力制御が行われる。
【0034】
電圧検出回路VDは、先行溶接電圧AVwを検出して平均化した電圧検出信号Vdを出力する。先行電圧設定回路AVSは、電源装置の外部に設けられており、先行電圧設定信号AVsを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、フィードバック信号である上記の電圧検出信号Vdと、目標値である上記の先行電圧設定信号AVsとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。V/F変換回路VFは、上記の電圧誤差増幅信号Evを入力としてV/F変換を行い、V/F変換信号Vfを出力する。ピーク電流通電期間設定回路TPは、予め設定したピーク電流通電期間設定信号Tpを出力する。単安定マルチバイブレータMMは、上記のV/F変換信号VfがLowレベルからHighレベルに変化することをトリガとして、上記のピーク電流通電期間設定信号Tpによって設定した時間Highレベルとなる先行パルス周期信号ATfを出力する。
【0035】
変調回路MCは、上記の電圧誤差増幅回路EV、V/F変換回路VF、ピーク電流通電期間設定回路TP及びモノマルチバイブレータMMから形成される。この変調回路MCは、上記の電圧検出信号Vdと上記の先行電圧設定信号AVsとを入力として、それらの信号間の誤差によるパルス周波数変調制御によって上記の先行パルス周期信号ATfを出力する。
【0036】
パルス電流群切換信号発生回路FGは、パルス電流群切換信号S1を出力する。
先行高ピーク電流設定回路AIPHは、予め設定した先行高ピーク電流設定信号AIphを出力する。先行低ピーク電流設定回路AIPJは、予め設定した先行低ピーク電流設定信号AIpjを出力する。
先行ピーク電流切換回路ASW2は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行高ピーク電流AIphを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行低ピーク電流AIpjを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力する。
【0037】
先行ベース電流設定回路AIBは、予め設定した先行ベース電流設定信号AIbを出力する。
先行電流切換回路ASW1は、上記の先行パルス周期信号ATfを入力して、この信号ATfがHighレベルのときはa側に接続されて、上記の先行ピーク電流制御設定信号AIpcを先行電流制御設定信号AIscとして出力し、先行パルス周期信号ATfがLowレベルのときはb側に接続されて、上記の先行ベース電流設定信号AIbを先行電流制御設定信号AIscとして出力する。
【0038】
電流検出回路IDは、先行溶接電流AIwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、フィードバック信号である上記の電流検出信号Idと、目標値である上記の先行電流制御設定信号AIscとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。この電流誤差増幅信号Eiに従って上記の出力制御回路INVによって上記の先行溶接電流AIwの制御が行われて、先行溶接電圧AVwが印加される。
【0039】
先行ワイヤ送給速度設定回路AWSは、電源装置の外部に設けられており、先行ワイヤ送給速度設定信号AWsを出力する。先行ワイヤ送給制御回路AWCは、上記の先行ワイヤ送給速度設定信号AWsを入力として、先行ワイヤ送給制御信号AWcを出力する。先行ワイヤ送給装置AWFは、上記の先行ワイヤ送給制御信号AWcに従って先行ワイヤA1の送給を制御する。
【0040】
次に、後行溶接電源装置BPSを構成する各回路ブロックについて説明する。
後行ピーク電流切換回路BSW2は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、後行高パルス電流BIphを出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、後行低パルス電流BIpjを出力する。
後行電流切換回路BSW1は、上記の先行パルス周期信号ATfを入力して、この信号ATfがHighレベルのときはa側に接続されて、後行ピーク電流制御設定信号BIpcを後行電流制御設定信号BIscとして出力し、上記の先行パルス周期信号ATfがLowレベルのときはb側に接続されて、後述する後行ベース電流設定信号BIbを後行電流制御設定信号BIscとして出力する。
【0041】
電流誤差増幅回路EIは、フィードバック信号である電流検出信号Idと、目標値である上記の後行電流制御設定信号BIscとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。この電流誤差増幅信号Eiに従って出力制御回路INVによって上記の後行溶接電流BIwの制御が行われて、後行溶接電圧BVwが印加される。
【0042】
その他の符号の説明については、上記の先行溶接電圧AVw及び先行溶接電流AIwを、後行溶接電圧BVw及び後行溶接電流BIwに、先行高ピーク電流設定回路AIPH及び先行高ピーク電流設定信号AIphを、後行高ピーク電流設定回路BIPH及び後行高ピーク電流設定信号BIphに、先行低ピーク電流設定回路AIPJ及び先行低ピーク電流設定信号AIpjを、後行低ピーク電流設定回路BIPJ及び後行低ピーク電流設定信号BIpjに、先行ピーク電流制御設定信号AIpcを後行ピーク電流制御設定信号BIpcに、先行ベース電流設定回路AIB及び先行ベース電流設定信号AIbを後行ベース電流設定回路BIB及び後行ベース電流設定信号BIbに、先行電流切換回路ASW1及び先行電流制御設定信号AIscを後行電流切換回路BSW1及び後行電流制御設定信号BIscに、先行ワイヤ送給速度設定回路AWS及び先行ワイヤ送給速度設定信号AWsを後行ワイヤ送給速度設定回路BWS及び後行ワイヤ送給速度設定信号BWsに、先行ワイヤ送給制御回路AWC及び先行ワイヤ送給制御信号AWcを、後行ワイヤ送給制御回路BWC及び後行ワイヤ送給制御信号BWcに、先行ワイヤ送給装置AWFを後行ワイヤ送給装置BWFにそれぞれ読み替えると同様になるので、説明を省略する。
【0043】
以下、動作を説明する。
先行ピーク電流切換回路ASW2は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行高ピーク電流AIphを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行低ピーク電流AIpjを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力する。
先行電流切換回路ASW1は、上記の先行パルス周期信号ATfがHighレベルのときは、上記の先行ピーク電流制御設定信号AIpcを先行電流制御設定信号AIscとして出力し、先行パルス周期信号ATfがLowレベルのときは、上記の先行ベース電流設定信号AIbを先行電流制御設定信号AIscとして出力する。
【0044】
また、後行ピーク電流切換回路BSW2は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、後行高ピーク電流BIphを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、後行低ピーク電流BIpjを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力する。
後行電流切換回路BSW1は、上記の先行パルス周期信号ATfがHighレベルのときは、上記の後行ピーク電流制御設定信号BIpcを後行電流制御設定信号BIscとして出力し、先行パルス周期信号ATfがLowレベルのときは、上記の後行ベース電流設定信号BIbを後行電流制御設定信号BIscとして出力する。
【0045】
従って、上記の先行溶接電源装置APSによって先行溶接電圧AVwが印加されると共に、上記の先行ワイヤ送給装置AWFによって先行ワイヤA1が送給されて、被溶接物2との間に先行アークA3が発生して、図4(A)に示すように、先行高パルス電流群APh及び先行低パルス電流群APjを切換える先行溶接電流AIwが通電される。
また、上記の後行溶接電源装置BPSによって後行溶接電圧BVwが印加されと共に、上記の後行ワイヤ送給装置BWFによって後行ワイヤB1が送給されて、被溶接物2との間に後行アークB3が発生して、図4(B)に示すように、後行高パルス電流群BPh及び後行低パルス電流群BPjを切換える後行溶接電流BIwが通電される。
【0046】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
同図に示す溶接電流は、上述した図4の溶接電流の波形図において、先行高パルス電流群APhの通電期間に後行低パルス電流群BPjを通電し、先行低パルス電流群APjの通電期間に後行高パルス電流群BPhを通電している。
【0047】
図9は、図8に示した実施の形態2の溶接電流を通電したときの、溶融池の状態を示す図であって、同図(A)は、先行高パルス電流群APh及び後行低パルス電流群BPjを通電している期間の溶融池の状態を示す図であり、同図(B)は、先行低パルス電流群APj及び後行高パルス電流群BPhを通電している期間の溶融池の状態を示す図である。
同図(A)において、先行アークA3の力が強く後行アークB3の力が弱いために、先行アークA3の直下の溶融金属が押出されて後行アークB3の方へ移動している。次に、同図(B)においては、先行アークA3の力が弱く後行アークB3の力が強いために、後行アークB3の直下の溶融金属が押出されて先行アークA3の方へ移動している。この結果、実施の形態1と比較して溶融池をより大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0048】
さらに、先行高パルス電流群APh及び後行低パルス電流群BPjを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が増加して後行ワイヤの溶融速度が低下し、先行低パルス電流群APj及び後行高パルス電流群BPhを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が低下して後行ワイヤの溶融速度が増加する。従って、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1とのそれぞれの又は合計の溶融速度を常に一定にすることができる。
【0049】
実施の形態2の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図7に示した実施の形態1の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、後行ピーク電流切換回路BSW2が、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、後行低ピーク電流BIpjを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、後行高ピーク電流BIphを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力する。その他は、図7の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0050】
[実施の形態3]
図10は、実施の形態3のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
【0051】
同図において、先行ワイヤA1に通電する先行高パルス電流群APhと先行低パルス電流群APjとにおける平均電流を同じにして、ワイヤの溶融速度を一定にするために、先行高短パルス電流群APhnの先行高短ピーク電流通電期間ATphnを短くし、先行低長パルス電流群APjwの先行低長ピーク電流通電期間ATpjwを長くしている。また、後行ワイヤB1に通電する後行高短パルス電流群BPhnと後行低長パルス電流群BPjwとにおいても同様にしている。
【0052】
さらに、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときに、先行ワイヤA1に先行高短パルス電流群APhnを通電して、後行ワイヤB1に後行低長パルス電流群BPjwを通電する。また、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときに、先行ワイヤA1に先行低長パルス電流群APjwを通電して、後行ワイヤB1に後行高短パルス電流群BPhnを通電する。さらに、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのそれぞれのピーク電流の立下りを同期させている。
【0053】
図10に示した溶接電流を通電することによって、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1のそれぞれのワイヤの溶融速度を一定にすることができる。
さらに、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行ワイヤA1に先行高短パルス電流群APhnを通電することによって、先行アークA3のアーク力が強く、後行ワイヤB1に後行低長パルス電流群BPjwを通電することによって、後行アークB3のアーク力は弱い。また、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行ワイヤA1に先行低長パルス電流群APjwを通電することによって、先行アークA3のアーク力が弱く、後行ワイヤB1に後行高短パルス電流群BPhnを通電することによって、後行アークB3のアーク力は強い。従って、図8に示した実施の形態2の溶接電流を通電したときの溶融池の状態ように、溶融池をより大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0054】
図11は、実施の形態3の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
先行溶接電源装置APSの回路ブロックについて説明する。同図において、先行遅延時間設定回路ATODは、後行低長ピーク電流BIpjwの立上がりから先行高短ピーク電流AIphnの立上がりまでの時間を設定する先行遅延時間設定信号ATodを出力する。先行遅延回路AODは、後行溶接電源装置BPSから出力される後行パルス周期信号BTfを入力して、この信号がLowレベルからHighレベルに変化したことをトリガとして、その時点から上記の先行遅延時間設定信号ATodで定まる期間Lowレベルとなる先行遅延信号AOdを出力する。論理積回路ANDは、上記の後行パルス周期信号BTf及び先行遅延信号AOdの論理積(AND)を行い、先行遅延パルス周期信号ATfdを出力する。
【0055】
先行パルス周期信号切換回路ASW3は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行遅延パルス周期信号ATfdを先行パルス周期制御信号ATfcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行パルス周期信号ATfを先行パルス周期制御信号ATfcとして出力する。その他は、図7に示した回路ブロックと同機能に同符号を付して説明を省略する。
【0056】
以下、動作を説明する。
先行パルス周期信号切換回路ASW3は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行遅延パルス周期信号ATfdを先行パルス周期制御信号ATfcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行パルス周期信号ATfを先行パルス周期制御信号ATfcとして出力する。
先行ピーク電流切換回路ASW2は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行高ピーク電流設定信号AIphを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行低ピーク電流設定信号AIpjを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力する。
先行電流切換回路ASW1は、上記の先行パルス周期制御信号ATfcがHighレベルのときは、上記の先行ピーク電流制御設定信号AIpcを先行電流制御設定信号AIscとして出力し、先行パルス周期制御信号ATfcがLowレベルのときは、上記の先行ベース電流設定信号AIbを先行電流制御設定信号AIscとして出力する。
【0057】
従って、上記の先行溶接電源装置APSによって先行溶接電圧AVwが印加されると共に、上記の先行ワイヤ送給装置AWFによって先行ワイヤA1が送給されて、被溶接物2との間に先行アークA3が発生する。
そして、図10(A)に示したように、先行高短ピーク電流AIphnが後行低長ピーク電流BIpjwの立上がりから先行遅延時間設定信号ATodで設定された時間後に立上がる先行高短パルス電流群APhnと、先行高短ピーク電流通電期間ATphnより通電期間が長い先行低長ピーク電流AIpjwを通電する先行低長パルス電流群APjwとを切換える先行溶接電流AIwが通電される。
【0058】
後行溶接電源装置BPSの回路ブロックについては、上記の先行遅延時間設定回路ATOD及び先行遅延時間設定信号ATodを、後行遅延時間設定回路BTOD及び後行遅延時間設定信号BTodに、先行遅延回路AOD及び先行遅延信号AOdを、後行遅延回路BOD及び後行遅延信号BOdに、先行パルス周期信号切換回路ASW3を後行パルス周期信号切換回路BSW3に、先行遅延パルス周期信号ATfdを後行遅延パルス周期信号BTfdにそれぞれ読み替えると同様になるので、説明を省略する。
【0059】
[実施の形態4]
図12は、実施の形態4のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
【0060】
同図において、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwにおいて、高パルス電流群の高パルス電流通電期間Tphを低パルス電流群の低パルス電流通電期間Tpjより長くして、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのそれぞれのピーク電流の立下りを同期させている。そして、先行高長パルス電流群APhwの通電期間に後行低短パルス電流群BPjnを通電し、先行低短パルス電流群APjnの通電期間に後行高長パルス電流群BPhwを通電している。
【0061】
この結果、溶融池をより大きな振幅で振動させることができ、気泡をより排出させることができる。また、先行高長パルス電流群APhwの通電期間は、先行ワイヤA1の溶融速度が増加するが、後行低短パルス電流群BPjnの通電期間の後行ワイヤB1の溶融速度が減少し、先行低短パルス電流群APjnの通電期間は、先行ワイヤA1の溶融速度が減少するが、後行高長パルス電流群BPhwの通電期間の後行ワイヤB1の溶融速度が増加する。従って、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1との合計の溶融速度を一定にすることができる。
【0062】
実施の形態4の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図11に示した実施の形態3の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、先行ピーク電流切換回路ASW2が、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、先行低ピーク電流AIpjを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、先行高ピーク電流AIphを先行ピーク電流制御設定信号AIpcとして出力する。
【0063】
また、後行ピーク電流切換回路BSW2が、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、後行高ピーク電流BIphを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、後行低ピーク電流BIpjを後行ピーク電流制御設定信号BIpcとして出力する。その他は、図11の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0064】
[実施の形態5]
図13は、実施の形態5のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
【0065】
一方の溶接ワイヤにベース電流を通電する時に他方の溶接ワイヤにピーク電流を通電している。また、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのピーク電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電圧制御し、ベース電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電流制御している。
【0066】
さらに、先行ワイヤA1には、先行高ピーク電流AIphの通電と先行ベース電流AIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る先行高パルス電流群APhと、先行高ピーク電流AIphよりピーク電流値が小さい先行低ピーク電流AIpjの通電と先行ベース電流AIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る先行低パルス電流群APjとを繰返し通電している。
また、後行ワイヤには、後行高ピーク電流BIphの通電と後行ベース電流BIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る後行高パルス電流群BPhと、後行高ピーク電流BIphよりピーク電流値が小さい先行低ピーク電流BIpjの通電と先行ベース電流BIbの通電とを1周期とする通電を繰り返す期間から成る後行低パルス電流群BPjとを繰返し通電している。
また,一方の溶接ワイヤにベース電流を通電する時に他方の溶接ワイヤにピーク電流を通電するために、2本の溶接ワイヤに通電する溶接電流のパルス周期を同じに設定し、{(先行ピーク電流通電期間ATp+後行ピーク電流通電期間BTp)<パルス周期Ts}となるように2本の溶接ワイヤに通電するピーク電流の通電期間をそれぞれ予め設定する。そして、一方の溶接電流のピーク電流通電期間の中心の時刻と他方の溶接電流のベース電流通電期間の中心の時刻とを一致させる。そのために、先行溶接電流AIwの先行ピーク電流AIpの通電開始時刻から後行溶接電流BIwの後行ピーク電流BIpの通電開始時刻までの遅れ時間である遅延時間Tdを下記のように演算して設定する。
遅延時間Tdを、{遅延時間Td=(パルス周期Ts+先行ピーク電流通電期間ATp−後行ピーク電流通電期間BTp)/2}で演算する。
【0067】
また、図13(C)に示すパルス電流群切換信号S1がLowレベルからHighレベルに変化したことをトリガとして、その時点から先行高パルス電流群APhの通電を開始し、その開始から遅延時間Td後に後行高パルス電流群BPhの通電を開始する。また、パルス電流群切換信号S1がHighレベルからLowレベルに変化したことをトリガとして、その時点から先行低パルス電流群APjの通電を開始し、その開始から遅延時間Td後に後行低パルス電流群BPjの通電を開始している。
【0068】
図13に示した実施の形態5の溶接電流を通電した結果、溶融池の状態は、図5に示した場合と同様に、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が高い先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhをそれぞれ通電したときは、図5(A)に示すように、アーク力が強いために、アークA3、B3の直下の溶融金属はアークA3、B3の直下の外へ押し出される。
また、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が低い先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjを通電したときは、図5(B)に示すように、アーク力が弱いために、上述したアークA3、B3の直下から外へ押し出された溶融金属は、アークA3、B3の直下へ戻される。
従って、ピーク電流値が高い先行高パルス電流群APh及び後行高パルス電流群BPhとピーク電流値が低い先行低パルス電流群APj及び後行低パルス電流群BPjとの通電を繰返すことによって、溶融池を大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。さらに、美麗な溶接ビードを形成させることができる。
【0069】
図14は、実施の形態5の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
同図において、パルス周期設定回路TSは、予め設定した先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのパルス周期設定信号Tsを出力する。このパルス周期は溶接ワイヤの送給量に対応した周期に設定される。
先行ピーク電流通電期間設定回路ATPは、予め設定した先行ピーク電流通電期間設定信号ATpを出力する。無安定マルチバイブレータAMは、上記のパルス周期設定信号Tsによって設定されたパルス周期で、上記の先行ピーク電流通電期間設定信号ATpによって設定された時間だけHighレベルとなる先行パルス周期信号ATfを出力する。
【0070】
先行高ピーク電圧設定回路AVPHは、予め設定した先行高ピーク電圧設定信号AVphを出力する。先行低ピーク電圧設定回路AVPJは、予め設定した先行低ピーク電圧設定信号AVpjを出力する。
先行ピーク電圧切換回路ASW4は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行高ピーク電圧設定信号AVphを先行ピーク電流制御設定信号AVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行低ピーク電圧設定信号AVpjを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力する。
電圧誤差増幅回路EVは、フィードバック信号である電圧検出信号Vdと、目標値である上記の先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。
【0071】
先行ベース電流設定回路AIBは、予め設定した先行ベース電流設定信号AIbを出力する。電流誤差増幅回路EIは、フィードバック信号である電流検出信号Idと、目標値である上記の先行ベース電流設定信号AIbとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。先行出力切換回路ASW5は、先行パルス周期信号ATfがHighレベルのときはa側に接続されて、上記の電圧誤差増幅信号Evを先行出力制御設定信号AOscとして出力制御回路INVに出力する。また、上記の先行パルス周期信号ATfがLowレベルのときはb側に接続されて、上記の電流誤差増幅信号Eiを先行出力制御設定信号AOscとして出力制御回路INVに出力する。
その他の図7に示す機能と同一機能に同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
次に、後行溶接電源装置BPSを構成する各ブロックについて説明する。後行ピーク電流通電期間設定回路BTPは、予め設定された後行ピーク電流通電期間設定信号BTpを出力する。遅延時間演算回路TDは、上記のパルス周期設定信号Ts、先行ピーク電流通電期間設定信号ATp及び後行ピーク電流通電期間設定信号BTpを入力として、{遅延時間Td=(パルス周期Ts+先行ピーク電流通電期間ATp−後行ピーク電流通電期間BTp)/2}を演算して、遅延時間設定信号Tdを出力する。遅延回路ODは、先行パルス周期信号ATfと遅延時間設定信号Tdとを入力して、先行パルス周期信号ATfを遅延時間Tdだけ遅延させた遅延パルス周期信号Odを出力する。単安定マルチバイブレータMMは、遅延パルス周期信号Odと後行ピーク電流通電期間設定信号BTpとを入力し、遅延パルス周期信号OdがLowレベルからHighレベルに変化することをトリガとして、後行ピーク電流通電期間設定信号BTpによって設定された時間だけHighレベルとなる後行パルス周期信号BTfを出力する。
【0073】
その他の符号の説明については、上記の先行溶接電圧AVw及び先行溶接電流AIwを後行溶接電圧BVw及び後行溶接電流BIwに、先行高ピーク電圧設定回路AVPH及び先行高ピーク電圧設定信号AVphを、後行高ピーク電圧設定回路BVPH及び後行高ピーク電圧設定信号BVphに、先行低ピーク電流設定回路AVPJ及び先行低ピーク電圧設定信号AVpjを、後行低ピーク電流設定回路BVPJ及び後行低ピーク電圧設定信号BVpjに、先行ピーク電圧切換回路ASW4を後行ピーク電圧切換回路BSW4に、先行ベース電流設定回路AIB及び先行ベース電流設定信号AIbを後行ベース電流設定回路BIB及び後行ベース電流設定信号BIbに、先行出力切換回路ASW5及び先行ピーク電圧制御設定信号AVpcを後行出力切換回路BSW5及び後行ピーク電圧制御設定信号BVpcに、先行ワイヤ送給速度設定回路AWS及び先行ワイヤ送給速度設定信号AWsを後行ワイヤ送給速度設定回路BWS及び後行ワイヤ送給速度設定信号BWsに、先行ワイヤ送給装置AWFを後行ワイヤ送給装置BWFに、先行ベース電流設定回路AIB及び先行ベース電流設定信号AIbを後行ベース電流設定回路BIB及び後行ベース電流設定信号BIbに、先行出力制御設定信号AOscを後行出力制御設定信号BOscにそれぞれ読み替えると同様になるので、説明を省略する。
【0074】
以下、動作を説明する。
先行ピーク電圧切換回路ASW4は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行高ピーク電圧設定信号AVphを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行低ピーク電圧設定信号AVpjを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力する。先行溶接電源装置APSによって先行コンタクトチップA41と被溶接物2との間に先行溶接電圧AVwが印加されると共に、先行ワイヤ送給装置AWFによって先行ワイヤA1が送給されて、被溶接物2との間に先行アークA3が発生して先行溶接電流AIwが通電される。また、パルス周期Tsで、先行ピーク電流通電期間ATpにおいては、電圧検出信号Vdが先行ピーク電圧制御設定信号AVpcと等しくなるように先行ピーク電圧を変化させ、先行ベース電流通電期間においては、電流検出信号Idが先行ベース電流設定信号AIbと等しくなるように先行ベース電流を変化させるように先行溶接電流AIwの制御が出力制御回路INVによって行われる。
【0075】
次に、後行ピーク電圧切換回路BSW4は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。後行溶接電源装置BPSによって後行コンタクトチップB41と被溶接物2との間に後行溶接電圧BVwが印加されると共に、後行ワイヤ送給装置BWFによって後行ワイヤB1が送給されて、被溶接物2との間に後行アークB3が発生して後行溶接電流BIwが通電される。また、遅延時間演算回路TDで遅延時間Tdが演算されて、先行ピーク電流AIpの立ち上がりから遅延時間Td後に後行ピーク電流BIpが立ち上がり、パルス周期Tsで、後行ピーク電流通電期間BTpにおいては、電圧検出信号Vdが後行ピーク電圧制御設定信号BVpcと等しくなるように後行ピーク電圧を変化させ、後行ベース電流通電期間においては、電流検出信号Idが後行ベース電流設定信号BIbと等しくなるように後行ベース電流を変化させるように後行溶接電流BIwの制御が出力制御回路INVによって行われる。
【0076】
この結果、図13に示すように、先行溶接電流AIwと後行溶接電流BIwとのパルス周期Tsが同じで、先行ピーク電流AIpの中心時刻と後行ベース電流BIbの中心時刻とが一致するので、先行溶接電流AIwと後行溶接電流BIwとのそれぞれのピーク電流が重なることがない制御を行い、先行高パルス電流群APh及び先行低パルス電流群APjを切換える先行溶接電流AIwが通電され、後行高パルス電流群BPh及び後行低パルス電流群BPjを切換える後行溶接電流BIwが通電される。
また、先行溶接電流AIw及び後行溶接電流BIwのピーク電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電圧制御し、ベース電流通電期間は溶接電源装置の外部特性を定電流制御することができ、より安定したアーク長制御を行うことができる。
【0077】
[実施の形態6]
図15は、実施の形態6のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
同図に示す溶接電流は、上述した図13の溶接電流の波形図において、先行高パルス電流群APhの通電期間に、遅延時間Tdを設けて後行低パルス電流群BPjを通電し、先行低パルス電流群APjの通電期間に、遅延時間Tdを設けて後行高パルス電流群BPhを通電している。
【0078】
図15に示した実施の形態6の溶接電流を通電した結果、図9に示した溶融池の状態と同様に、先行高パルス電流群APh及び後行低パルス電流群BPjを通電している期間は、先行アークA3の力が強く後行アークB3の力が弱いために、先行アークA3の直下の溶融金属が押出されて後行アークB3の方へ移動している。
そして、先行低パルス電流群APj及び後行高パルス電流群BPhを通電している期間は、先行アークA3の力が弱く後行アークB3の力が強いために、後行アークB3の直下の溶融金属が押出されて先行アークA3の方へ移動している。
この結果、実施の形態5と比較して溶融池をより大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0079】
さらに、先行高パルス電流群APh及び後行低パルス電流群BPjを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が増加して後行ワイヤの溶融速度が低下し、先行低パルス電流群APj及び後行高パルス電流群BPhを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が低下して後行ワイヤの溶融速度が増加する。従って、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1との合計の溶融速度を常に一定にすることができる。
【0080】
実施の形態6の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図14に示した実施の形態5の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、後行ピーク電圧切換回路BSW4が、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。その他は、図14の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0081】
[実施の形態7]
図16は、実施の形態7のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
【0082】
同図において、先行ワイヤA1に通電する先行高パルス電流群APhと先行低パルス電流群APjとにおける平均電流を同じにして、ワイヤの溶融速度を一定にするために、先行高パルス電流群APhの先行高ピーク電流通電期間ATphを短くし、先行低パルス電流群APjの先行低ピーク電流通電期間ATpjを長くしている。また、後行ワイヤB1に通電する後行高パルス電流群BPhと後行低パルス電流群BPjとにおいても同様にしている。
さらに、パルス電流群切換信号S1がHighのときに、先行ワイヤA1に先行高短パルス電流群APhnを通電して、後行ワイヤB1に後行低長パルス電流群BPjwを通電する。また、パルス電流群切換信号S1がLowのときに、先行ワイヤA1に先行低長パルス電流群APjwを通電して、後行ワイヤB1に後行高短パルス電流群BPhnを通電する。その他の溶接電流の条件は、実施の形態6と同様であるので説明を省略する。
【0083】
図16に示す溶接電流を通電することによって、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1のそれぞれのワイヤの溶融速度を一定にすることができる。また、パルス電流群切換信号S1がHighのときは、先行ワイヤA1に先行高短パルス電流群APhnを通電することによって、先行アークA3のアーク力が強く、後行ワイヤB1に後行低長パルス電流群BPjwを通電することによって、後行アークB3のアーク力は弱い。また、パルス電流群切換信号S1がLowのときは、先行ワイヤA1に先行低長パルス電流群APjwを通電することによって、先行アークA3のアーク力が弱く、後行ワイヤB1に後行高短パルス電流群BPhnを通電することによって、後行アークB3のアーク力は強い。従って、図9に示した実施の形態2の溶接電流を通電したときの溶融池の状態ように、溶融池をより大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0084】
図17は、実施の形態7の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
同図において、先行ピーク電流長通電期間設定回路ATPWは、予め設定した先行ピーク電流長通電期間設定信号ATpwを出力する。また、先行ピーク電流短通電期間設定回路ATPNは、予め設定した先行ピーク電流短通電期間設定信号ATpnを出力する。
また、先行ピーク電流通電期間切換回路ASW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行ピーク電流短通電期間設定信号ATpnを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行ピーク電流長通電期間設定信号ATpwを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力する。
【0085】
また、後行ピーク電流長通電期間設定回路BTPWは、予め設定した後行ピーク電流長通電期間設定信号BTpwを出力する。また、後行ピーク電流短通電期間設定回路BTPNは、予め設定した後行ピーク電流短通電期間設定信号BTpnを出力する。
また、後行ピーク電流通電期間切換回路BSW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、後行ピーク電流長通電期間設定信号BTpwを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、後行ピーク電流短通電期間設定信号BTpnを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力する。
その他は、図14と同機能に同符号を付して、説明を省略する。
【0086】
以下、動作を説明する。
先行ピーク電圧切換回路ASW4は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行高ピーク電圧設定信号AVphを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行低ピーク電圧設定信号AVpjを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力する。
また、先行ピーク電流通電期間切換回路ASW6は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行ピーク電流短通電期間設定信号ATpnを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行ピーク電流長通電期間設定信号ATpwを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力する。
【0087】
また、後行ピーク電圧切換回路BSW4は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。
また、後行ピーク電流通電期間切換回路BSW6は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、後行ピーク電流長通電期間設定信号BTpwを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、後行ピーク電流短通電期間設定信号BTpnを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力する。
その他の動作は、図14に示した実施の形態5と同じであるので説明を省略する。
【0088】
この結果、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が高く通電期間が短い先行高短ピーク電流AIphnが通電され、後行ワイヤB1に、ピーク電流が低く通電期間が長い後行低長ピーク電流BIpjwが通電される。また、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が低く通電期間が長い先行低長ピーク電流AIpjwが通電され、後行ワイヤB1に、ピーク電流が高く通電期間が短い後行高短ピーク電流BIphnが通電される。
【0089】
[実施の形態8]
図18は、実施の形態8のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
同図に示す溶接電流は、上述した図16の溶接電流の波形図において、先行高短パルス電流群APhnの通電期間に、遅延時間Tdを設けて後行高短パルス電流群BPhnを通電し、先行低長パルス電流群APjwの通電期間に、遅延時間Tdを設けて後行低長パルス電流群BPjwを通電している。
【0090】
図18に示した実施の形態8の溶接電流を通電した結果、図5に示した実施の形態1の溶融池の状態と同様に、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が高い先行高短パルス電流群APhn及び後行高短パルス電流群BPhnをそれぞれ通電したときは、図5(A)に示すように、アーク力が強いために、アークA3、B3の直下の溶融金属はアークA3、B3の直下の外へ押し出される。
また、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が低い先行低長パルス電流群APjw及び後行低長パルス電流群BPjwを通電したときは、図5(B)に示すように、アーク力が弱いために、上述したアークA3、B3の直下から外へ押し出された溶融金属は、アークA3、B3の直下へ戻される。
従って、ピーク電流値が高い先行高短パルス電流群APhn及び後行高短パルス電流群BPhnとピーク電流値が低い先行低長パルス電流群APjw及び後行低長パルス電流群BPjwとの通電を繰返すことによって、溶融池を大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0091】
さらに、先行高短パルス電流群APhn及び後行高短パルス電流群BPhnと先行低長パルス電流群APjw及び後行低長パルス電流群BPjwとの平均電流がそれぞれ同じであるので、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1とのそれぞれの溶融速度を常に一定にすることができる。
【0092】
実施の形態8の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図17に示した実施の形態7の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、後行ピーク電圧切換回路BSW4が、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。
その他は、図17の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0093】
[実施の形態9]
図19は、実施の形態9のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
同図に示す溶接電流は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が高く通電期間が長い先行高長ピーク電流AIphwを通電する期間からなる先行高長パルス電流群APhwを通電し、後行ワイヤB1に、遅延時間Tdを設けて、ピーク電流が低く通電期間が短い後行低短ピーク電流BIpjnを通電する期間からなる後行低短パルス電流群BPjnを通電する。
また、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が低く通電期間が短い先行低短ピーク電流AIpjnを通電する期間からなる先行低短パルス電流群APjnを通電し、後行ワイヤB1に、遅延時間Tdを設けて、ピーク電流が高く通電期間が長い後行高長ピーク電流BIphwを通電する期間からなる後行高長パルス電流群BPhwを通電する。
【0094】
図19に示した実施の形態9の溶接電流を通電した結果、図9に示した実施の形態2の溶融池の状態と同様に、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行アークA3の力が強く後行アークB3の力が弱いために、先行アークA3の直下の溶融金属が押出されて後行アークB3の方へ移動している。次に、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行アークA3の力が弱く後行アークB3の力が強いために、後行アークB3の直下の溶融金属が押出されて先行アークA3の方へ移動している。この結果、溶融池をより大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0095】
さらに、先行高長パルス電流群APhw及び後行低短パルス電流群BPjnを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が増加して後行ワイヤの溶融速度が低下し、先行低短パルス電流群APjn及び後行高長パルス電流群BPhwを通電している期間は、先行ワイヤの溶融速度が低下して後行ワイヤの溶融速度が増加する。従って、先行ワイヤA1と後行ワイヤB1との合計の溶融速度を常に一定にすることができる。
【0096】
実施の形態9の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図17に示した実施の形態7の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、先行ピーク電圧切換回路ASW4は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行高ピーク電圧設定信号AVphを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行低ピーク電圧設定信号AVpjを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力する。
また、先行ピーク電流通電期間切換回路ASW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、先行ピーク電流長通電期間設定信号ATpwを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、先行ピーク電流短通電期間設定信号ATpnを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力する。
【0097】
また、後行ピーク電圧切換回路BSW4は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。
また、後行ピーク電流通電期間切換回路BSW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、後行ピーク電流短通電期間設定信号BTpnを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、後行ピーク電流長通電期間設定信号BTpwを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力する。
その他は、図17の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0098】
[実施の形態10]
図20は、実施の形態10のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図であり、同図(A)は、先行溶接電流AIwの時間変化を示しており、同図(B)は、後行溶接電流BIwの時間変化を示しており、同図(C)は、パルス電流群切換信号S1の時間変化を示している。
同図に示す溶接電流は、パルス電流群切換信号S1がHighレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が高く通電期間が長い先行高長ピーク電流AIphwを通電する期間からなる先行高長パルス電流群APhwを通電し、後行ワイヤB1に、遅延時間Tdを設けて、ピーク電流が高く通電期間が長い後行高長ピーク電流BIphwを通電する期間からなる後行高長パルス電流群BPhwを通電する。
また、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときは、先行ワイヤA1に、ピーク電流が低く通電期間が短い先行低短ピーク電流AIpjnを通電する期間からなる先行低短パルス電流群APjnを通電し、後行ワイヤB1に、遅延時間Tdを設けて、ピーク電流が低く通電期間が短い後行低短ピーク電流BIpjnを通電する期間からなる後行低短パルス電流群BPjnを通電する。
【0099】
図20に示した実施の形態10の溶接電流を通電した結果、図5に示した溶融池の状態のように、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が高く、通電期間が長い先行高長パルス電流群APhw及び後行高長パルス電流群BPhwをそれぞれ通電したときは、アーク力が強いために、アークA3、B3の直下の溶融金属はアークA3、B3の直下の外へ押し出される。
次に、先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1にピーク電流値が低く通電期間が短い先行低短パルス電流群APjn及び後行低短パルス電流群BPjnを通電したときは、アーク力が弱いために、上述したアークA3、B3の直下から外へ押し出された溶融金属は、アークA3、B3の直下へ戻される。
従って、ピーク電流値が高く通電期間が長い先行高長パルス電流群APhw及び後行高長パルス電流群BPhwとピーク電流値が低く通電期間が短い先行低短パルス電流群APjn及び後行低短パルス電流群BPjnとの通電を繰返すことによって、溶融池を大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【0100】
実施の形態10の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図は、図17に示した実施の形態7の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図において、先行ピーク電圧切換回路ASW4は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、先行高ピーク電圧設定信号AVphを先行ピーク電流制御設定信号AVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、先行低ピーク電圧設定信号AVpjを先行ピーク電圧制御設定信号AVpcとして出力する。
また、先行ピーク電流通電期間切換回路ASW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはb側に接続されて、先行ピーク電流長通電期間設定信号ATpwを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはa側に接続されて、先行ピーク電流短通電期間設定信号ATpnを先行ピーク電流通電期間制御設定信号ATpcとして出力する。
【0101】
また、後行ピーク電圧切換回路BSW4は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、後行高ピーク電圧設定信号BVphを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、後行低ピーク電圧設定信号BVpjを後行ピーク電圧制御設定信号BVpcとして出力する。
また、後行ピーク電流通電期間切換回路BSW6は、パルス電流群切換信号S1を入力して、この信号S1がHighレベルのときはa側に接続されて、後行ピーク電流長通電期間設定信号BTpwを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力し、パルス電流群切換信号S1がLowレベルのときはb側に接続されて、後行ピーク電流短通電期間設定信号BTpnを後行ピーク電流通電期間制御設定信号BTpcとして出力する。
その他は、図17の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0102】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0103】
本発明の2電極アーク溶接方法は、先行ワイヤと後行ワイヤとに、ピーク電流又はピーク電流の通電期間が異なるピーク電流を通電する期間からなる2つのパルス電流群をパルス電流群切換信号で切換えて、かつ、先行ワイヤと後行ワイヤとに通電するパルス電流群の切換えを同期させている。この結果、溶融池を大きく振動させ、攪拌させることができるために、溶融金属内の気泡の放出を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術1の軟鋼を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図2】従来技術2のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図3】従来技術3の1電極パルスアーク溶接制御方法で通電する溶接電流Iwの時間変化を示す図である。
【図4】実施の形態1のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電するの溶接電流を示す図である。
【図5】図4に示した実施の形態1の溶接電流を通電したときの、溶融池の状態を示す図である。
【図6】先行ワイヤA1及び後行ワイヤB1に図4に示した溶接電流を通電してプライマ塗布鋼板のT継手の隅肉溶接を行った場合の、パルス電流群切換信号S1[Hz](横軸)を変化させたときの溶接長が500[mm]当りのピットの発生数Np[個](縦軸)を示す図である。
【図7】実施の形態1の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図9】図8に示した実施の形態2の溶接電流を通電したときの、溶融池の状態を示す図である。
【図10】実施の形態3のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図11】実施の形態3の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態4のプライマ塗布鋼板又は亜鉛めっき鋼板を溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図13】実施の形態5のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図14】実施の形態5の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
【図15】実施の形態6のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図16】実施の形態7のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図17】実施の形態7の2電極アーク溶接方法を実施するための2電極パルスアーク溶接装置の回路構成を示すブロック図である。
【図18】実施の形態8のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図19】実施の形態9のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【図20】実施の形態10のアルミニウム又はステンレスを溶接する場合の2電極アーク溶接方法で通電する溶接電流を示す図である。
【符号の説明】
2 被溶接物
4 溶接トーチ
9 溶接ビード
10 ノズル
A1 先行ワイヤ
A3 先行アーク
A41 先行コンタクトチップ
AIB 先行ベース電流設定回路
AIb 先行ベース電流(設定信号)
AIp 先行ピーク電流
AIpc 先行ピーク電流制御設定信号
AIPH 先行高ピーク電流設定回路
AIph 先行高ピーク電流(設定信号)
AIphn 先行高短ピーク電流
AIphw 先行高長ピーク電流
AIPJ 先行低ピーク電流設定回路
AIpj 先行低ピーク電流(設定信号)
AIpjn 先行低短ピーク電流
AIpjw 先行低長ピーク電流
AIsc 先行電流制御設定信号
AIw 先行溶接電流
AM 無安定マルチバイブレータ
AND 論理積回路
AOD 先行遅延回路
AOd 先行遅延信号
AOsc 先行出力制御設定信号
APh 先行高パルス電流群
APhn 先行高短パルス電流群
APhw 先行高長パルス電流群
APj 先行低パルス電流群
APjn 先行低短パルス電流群
APjw 先行低長パルス電流群
APS 先行溶接電源装置
ASW1 先行電流切換回路
ASW2 先行ピーク電流切換回路
ASW3 先行パルス周期信号切換回路
ASW4 先行ピーク電圧切換回路
ASW5 先行出力切換回路
ASW6 先行ピーク電流通電期間切換回路
ATf 先行パルス周期信号
ATfc 先行パルス周期制御信号
ATfd 先行遅延パルス周期信号
ATOD 先行遅延時間設定回路
ATod 先行遅延時間設定信号
ATP 先行ピーク電流通電期間設定回路
ATp 先行ピーク電流通電期間(設定信号)
ATpc 先行ピーク電流通電期間制御設定信号
ATph 先行高ピーク電流通電期間
ATphn 先行高短ピーク電流通電期間
ATpj 先行低ピーク電流通電期間
ATpjw 先行低長ピーク電流通電期間
ATPN 先行ピーク電流短通電期間設定回路
ATpn 先行ピーク電流短通電期間設定信号
ATPW 先行ピーク電流長通電期間設定回路
ATpw 先行ピーク電流長通電期間設定信号
AVpc 先行ピーク電圧制御設定信号
AVPH 先行高ピーク電圧設定回路
AVph 先行高ピーク電圧(設定信号)
AVpj 先行低ピーク電圧(設定信号)
AVPJ 先行低ピーク電流設定回路
AVS 先行電圧設定回路
AVs 先行電圧設定信号
AVw 先行溶接電圧
AWC 先行ワイヤ送給制御回路
AWc 先行ワイヤ送給制御信号
AWF 先行ワイヤ送給装置
AWS 先行ワイヤ送給速度設定回路
AWs 先行ワイヤ送給速度設定信号
B1 後行ワイヤ
B3 後行アーク
B41 後行コンタクトチップ
BVPJ 後行低ピーク電流設定回路
BIB 後行ベース電流設定回路
BIb 後行ベース電流(設定信号)
BIp 後行ピーク電流(設定信号)
BIpc 後行ピーク電流制御設定信号
BIPH 後行高ピーク電流設定回路
BIph 後行高ピーク電流(設定信号)
BIphn 後行高短ピーク電流
BIphw 後行高長ピーク電流
BIPJ 後行低ピーク電流設定回路
BIpj 後行低ピーク電流(設定信号)
BIpjn 後行低短ピーク電流
BIpjw 後行低長ピーク電流
BIsc 後行電流制御設定信号
BIw 後行溶接電流
BOD 後行遅延回路
BOd 後行遅延信号
BOsc 後行出力制御設定信号
BPh 後行高パルス電流群
BPhn 後行高短パルス電流群
BPhw 後行高長パルス電流群
BPj 後行低パルス電流群
BPjn 後行低短パルス電流群
BPjw 後行低長パルス電流群
BPS 後行溶接電源装置
BSW1 後行電流切換回路
BSW2 後行ピーク電流切換回路
BSW3 後行パルス周期信号切換回路
BSW4 後行ピーク電圧切換回路
BSW5 後行出力切換回路
BSW6 後行ピーク電流通電期間切換回路
BTf 後行パルス周期信号
BTfd 後行遅延パルス周期信号
BTOD 後行遅延時間設定回路
BTod 後行遅延時間設定信号
BTP 後行ピーク電流通電期間設定回路
BTp 後行ピーク電流通電期間(設定信号)
BTpc 後行ピーク電流通電期間制御設定信号
BTPN 後行ピーク電流短通電期間設定回路
BTpn 後行ピーク電流短通電期間設定信号
BTPW 後行ピーク電流長通電期間設定回路
BTpw 後行ピーク電流長通電期間設定信号
BVpc 後行ピーク電圧制御設定信号
BVPH 後行高ピーク電圧設定回路
BVph 後行高ピーク電圧(設定信号)
BVpj 後行低ピーク電圧(設定信号)
BVw 後行溶接電圧
BWC 後行ワイヤ送給制御回路
BWc 後行ワイヤ送給制御信号
BWF 後行ワイヤ送給装置
BWS 後行ワイヤ送給速度設定回路
BWs 後行ワイヤ送給速度設定信号
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FG パルス電流群切換信号発生回路
Ib ベース電流
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
INV 出力制御回路
Iph 高ピーク電流
Ipj 低ピーク電流
Iw 溶接電流
MC 変調回路
MM 単安定マルチバイブレータ
Np ピットの発生数
Od 遅延パルス周期信号
OD 遅延回路
Ph 高パルス電流群
Pj 低パルス電流群
S1 パルス電流群切換信号
TD 遅延時間演算回路
Td 遅延時間(設定信号)
TP ピーク電流通電期間設定回路
Tp ピーク電流通電期間設定信号
Tph 高パルス電流通電期間
Tpj 低パルス電流通電期間
TS パルス周期設定回路
Ts パルス周期(設定信号)
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VF 変換回路
Vf 変換信号

Claims (4)

  1. 1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された先行ワイヤ及び後行ワイヤをそれぞれ予め定めた送給速度で送給し、前記先行ワイヤ及び前記後行ワイヤに通電して先行アーク及び後行アークをそれぞれ発生させて溶接する2電極アーク溶接方法において、前記先行アークに対してアーク長が高くなる先行高アーク長期間とアーク長が低くなる先行低アーク長期間とを周期的に切換え、前記後行アークに対してアーク長が高くなる後行高アーク長期間とアーク長が低くなる後行低アーク長期間とを周期的に切換え、前記先行高アーク長期間と前記後行高アーク長期間とを一致させ、前記先行低アーク長期間と前記後行低アーク長期間とを一致させたことを特徴とする2電極アーク溶接方法。
  2. 1つの溶接トーチから互いに電気的に絶縁された先行ワイヤ及び後行ワイヤをそれぞれ予め定めた送給速度で送給し、前記先行ワイヤに予め定めた先行ピーク電流の通電と、予め定めた先行ベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返す先行パルス電流群を通電すると共に、前記後行ワイヤに予め定めた後行ピーク電流の通電と予め定めた後行ベース電流の通電とを1周期とする通電を繰り返す後行パルス電流群を通電し、前記先行ワイヤ及び前記後行ワイヤと被溶接物との間にアークをそれぞれ発生させて溶接する2電極アーク溶接方法において、前記先行ワイヤに、予め定めた先行高パルス電流群通電期間中は、前記先行ピーク電流を予め定めた先行高ピーク電流に設定した前記先行パルス電流群を通電し、予め定めた先行低パルス電流群通電期間中は、前記先行ピーク電流を前記先行高ピーク電流よりも小さい予め定めた先行低ピーク電流に設定した前記先行パルス電流群を通電し、前記後行ワイヤに、予め定めた後行高パルス電流群通電期間中は、前記後行ピーク電流を予め定めた後行高ピーク電流に設定した前記後行パルス電流群を通電し、予め定めた後行低パルス電流群通電期間中は、前記後行ピーク電流を前記後行高ピーク電流よりも小さい予め定めた後行低ピーク電流に設定した前記後行パルス電流群を通電し、前記先行高パルス電流群通電期間と前記後行高パルス電流群通電期間とを一致させ、前記先行低パルス電流群通電期間と前記後行低パルス電流群通電期間とを一致させることを特徴とする2電極アーク溶接方法。
  3. 前記先行高パルス電流群通電期間の前記先行高ピーク電流の通電期間を前記先行低パルス電流群通電期間の前記先行低ピーク電流の通電期間より短くし、前記後行高パルス電流群通電期間の前記後行高ピーク電流の通電期間を前記後行低パルス電流群通電期間の前記後行低ピーク電流の通電期間より短くすることを特徴とする請求項2に記載の2電極アーク溶接方法。
  4. 前記先行高パルス電流群通電期間と前記後行低パルス電流群通電期間とを一致させ、前記先行低パルス電流群通電期間と前記後行高パルス電流群通電期間とを一致させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の2電極アーク溶接方法。
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