JP2019072744A - Mig溶接方法及びmig溶接装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高電流を必要とせずにアークを安定させることができ、低コストで高品質の溶接を高能率で行えるMIG溶接方法及びMIG溶接装置を提供する。【解決手段】電流値を個別に変更可能な一対の溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1の開先1aに沿って配置し、両溶接ワイヤ22,24に略同一の電流値の電流を流して、溶接方向前進側の溶接ワイヤ24のアークで溶融池の前方に陰極点を発生させ、鋼板1,1の表面をアークによりクリーニングする第1の動作と、溶接ワイヤ22に溶接ワイヤ24よりも高電流値のパルス電流を流すことで、両溶接ワイヤ22,24の各アークで溶融池に陰極点を発生させて新たに溶融池を形成し、両溶接ワイヤ22,24を溶接方向に前進させて新たな溶融池に陰極点を移動させつつ、鋼板1,1の表面の酸化物が除去された範囲で溶接を行う第2の動作と、を繰り返す。【選択図】図2

Description

本発明は、MIG溶接方法及びMIG溶接装置に関し、特にMIG溶接における溶接品質の向上を図る技術に関する。
従来、鋼構造物等の金属部材同士の溶接手法の一つとしてMIG溶接が知られている。
MIG溶接では、不活性ガスからなるシールドガスにより大気と遮断された状態で金属部材同士を溶接トーチから送出される溶接ワイヤを用いてアーク溶接により溶接するようにしており、これにより空気中の酸素の影響を受けることなく溶接を行い、熱を溶接部に集中させるようにし、歪みの少ない溶接を実現することが可能である。
不活性ガスとしては、アルゴンガス(Ar)やヘリウムガス(He)が使用されるが、入手し易いことや低廉であることから、一般にはアルゴンガス(Ar)が使用されることが多い。また、MIG溶接では、比較的良好な溶接品質が確保される等の理由から、通常は溶接ワイヤ側を正極(+)とし金属部材側を負極(−)として溶接を行うようにしている。
ところで、溶接ワイヤ側を正極(+)とし金属部材側を負極(−)として溶接を行う場合、金属部材上のアークの発生する点、即ち陰極点の位置は金属部材上の酸化物の存在や放電子の密度に応じて変化するため、一点に定まらず、アークが安定せず、ひいては溶接品質が安定しないという問題がある。この問題は、シールドガスとしてアルゴンガス(Ar)のみ(即ち、100%Ar)を用いる場合に顕著であることが知られている。
そこで、例えば、溶接ワイヤ側と金属部材側の極性を逆、即ち溶接ワイヤ側を負極(−)とし金属部材側を正極(+)とし、且つ溶接ワイヤの表面に酸化物を形成し易い元素を固着させることで、アークを介して溶接ワイヤに最接近する金属部材の位置に酸化物を集中的に形成させ、これにより陰極点の位置を略固定してアークを安定させる技術が開発されている(特許文献1)。
また、例えば、シールドガスとしてアルゴンガス(Ar)にヘリウムガス(He)を加えたり、さらに二酸化炭素(CO)や酸素(O)を加えたりすることで、アークを安定させる技術が開発されている(特許文献2)。
ここで、特許文献1に開示の技術では、溶接ワイヤの表面に酸化物を形成し易い元素を固着させる必要があることから、溶接ワイヤのコストアップに繋がり好ましいことではない。また、溶接ワイヤ側を負極(−)とし金属部材側を正極(+)として溶接を行う場合、溶接時の金属の溶け込みが不充分となり、溶接ビードが浅くなることが知られている。
一方、特許文献2に開示の技術では、シールドガスとしてアルゴンガス(Ar)にヘリウムガス(He)を加えるようにしているが、ヘリウムガス(He)はアルゴンガス(Ar)よりも入手し難く高価である。さらにシールドガスとして二酸化炭素(CO)や酸素(O)を加えると、溶接部分の機械的性質が劣化することが知られている。
最近では、アークを安定させる技術として、上記の技術に代わるものが開発されている(特許文献3)。
この特許文献3に開示の技術は、溶接方向に対して先行するTIG電極側でTIGアークを発生させ、後行するMIG電極側でMIGアークを発生させて母材を溶接する複合溶接方法であって、この方法では、先行側のTIG電極に流す電流を後行側のMIG電極に流す電流よりも大きく設定して、TIG電極のTIGアークが形成する溶融池内にMIG電極のMIGアークの陰極点領域を止めることで、アークの安定性向上を図るようにしている。
特開2003−320479号公報 特開2007−083303号公報 特開2013−158826号公報
ところが、特許文献3に開示の技術では、アークを安定させることができるものの、先行側のTIG電極に高電流を流して形成する溶融池内に、後行側に位置するMIG電極のMIGアークの陰極点領域を止めるようにしているので、常に高電流を必要とするという問題を有しており、これを解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、低コスト化及び溶接品質の向上を実現したうえで、高電流を必要とすることなくアークを安定させることが可能なMIG溶接方法及びMIG溶接装置を提供することを目的としている。
本発明の第1の態様は、被溶接金属部材に溶融池を形成するMIG溶接方法であって、電流値を個別に変更可能で且つ少なくともいずれか一方にはパルス電流が流れる一対のMIG電極を配置し、前記一対のMIG電極を溶接方向に移動させながら該一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の移動方向の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークにより除去する第1の動作と、前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う第2の動作と、を繰り返す構成としている。
この場合、一対のMIG電極における他方のMIG電極に一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流す動作を第1の動作とし、前記一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流す動作を第2の動作として、これらの第1の動作及び第2の動作を繰り返すようにしてもよい。
本発明の第2の態様は、前記一対のMIG電極を前記被溶接金属部材の溶接線に沿って配置し、前記第1の動作では、前記一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの溶接方向の前進側に位置する一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークのクリーニング作用により除去し、前記第2の動作では、前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記一対のMIG電極の各アークによって前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記一対のMIG電極を前記溶接方向に前進させて前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う構成としている。
本発明の第3の態様は、前記一対のMIG電極の一方に流すパルス電流のパルス幅を可変とした構成としている。
本発明の第4の態様は、前記一対のMIG電極にそれぞれ流す電流がいずれもパルス電流である構成としており、本発明の第5の態様は、前記一対のMIG電極にそれぞれ流すパルス電流を互いに同期させ、前記一対のMIG電極のうちのいずれか一方のMIG電極に流すパルス電流のピーク電流値といずれか他方のMIG電極に流すパルス電流のベース電流値とを略等しくする構成としている。
本発明の第6の態様は、被溶接金属部材に溶融池を形成するMIG溶接装置であって、電流値を個別に変更可能で且つ少なくともいずれか一方にはパルス電流が流れる一対のMIG電極と、前記一対のMIG電極を溶接方向に移動させる移動ユニットと、前記シールドガスを前記一対のMIG電極及び前記被溶接金属部材間に供給するガス供給部と、前記一対のMIG電極による溶接及び前記移動ユニットによる前記一対のMIG電極の移動を制御する制御部を備え、前記制御部では、前記一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の移動方向の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークにより除去する第1の制御と、前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記移動ユニットにより前記一対のMIG電極を前記溶接方向に移動させて前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う第2の制御と、が繰り返し実行される構成としている。
この場合、一対のMIG電極における他方のMIG電極に一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流す制御を第1の制御とし、一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流す制御を第2の制御として、これらの第1の制御及び第2の制御が繰り返し実行されるようにしてもよい。
本発明のMIG溶接方法及びMIG溶接装置は、アークの発生する陰極点が(1)酸化物 >(2)溶融池 >(3)クリーニング面 の順に発生し難くなる性質を利用したものであり、被溶接金属部材の表面におけるこれから溶接する範囲の酸化物をアークで予め除去して(クリーニングして)、意図的に陰極点が溶融池よりも発生し難くしておき、その後、クリーニングした範囲を溶接する際に、陰極点が確実に溶融池に集中して発生するように、陰極点の発生位置を制御するものである。
この陰極点の発生位置の制御は、一対のMIG電極に同時に電流を流した際に、双方のMIG電極のそれぞれに生じるアークの周りにおける各磁界の変化を利用している。
具体的には、例えば被溶接金属部材の溶接線に沿って互いに配置した一対のMIG電極に同時に電流を流すと、双方のMIG電極のそれぞれについてアークが発生して、被溶接金属部材の表面に溶融池が形成される。この際、各アークの周りには「右ねじの法則」に従って磁界が生じることから、互いの磁界が引力としてアークに作用し合うことになる。
一対のMIG電極のうちの例えば溶接方向後退側のMIG電極にパルス電流を流して、このパルス電流がベース電流であるとすると、溶接方向後退側のMIG電極のアークで発生する磁界強度は小さくなる。そのため、溶接方向前進側のMIG電極のアークを後退側に引き寄せる力(アーク引力)は小さい。このアーク引力が小さい場合はアークが広がるので、被溶接金属部材の表面におけるこれから溶接する範囲(溶融池の前方)に陰極点が発生し、これがクリーニングとして作用する。
一方、例えば一対のMIG電極のうちの溶接方向後退側のMIG電極にパルス電流を流して、このパルス電流がピーク電流であるとすると、溶接方向後退側のMIG電極のアークで発生する磁界強度は大きくなる。そのため、溶接方向前進側のMIG電極のアークを後退側に引き寄せる力(アーク引力)が大きくなる。このアーク引力が大きい場合はアークが緊縮するので、溶接方向前進側の一方のMIG電極にて発生するアークは後退側の他方のMIG電極にて発生するアークに引き寄せられ、溶融池に陰極点が集中して発生し、その結果、安定した濡れ性の高い溶接が成される。
この際、溶接方向後退側の他方のMIG電極に流すパルス電流の増加量は、溶接に寄与する分だけでよいので、高電流を必要としない。また、一対のMIG電極はいずれも消耗電極なので、両方のMIG電極の溶滴移行によって高能率な溶接が成されることとなる。
本発明のMIG溶接方法及びMIG溶接装置によれば、高電流を必要とすることなくアークを安定させることが可能であり、低コストで品質のよい安定した濡れ性の高い溶接を高能率で行うことができる。
本発明に係るMIG溶接方法を実施するMIG溶接装置とMIG溶接の実施される一対の鋼板を示す全体構成図である。 本発明の一実施例に係るMIG溶接方法によるアーク溶接の溶接手順を、鋼板及び溶接トーチを横方向から見た図(a)と上方向から見た図(b)と溶接ワイヤに通電する電流値の経時変化を示す図(c)とで(1)〜(3)まで時系列的に示す図である。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るMIG溶接方法を実施するMIG溶接装置10とMIG溶接の実施される一対の鋼板(被溶接金属部材)1,1を示す全体構成図である。
鋼板1,1は、例えばこれら鋼板1,1の側縁間に所定の開先ギャップを有してI形開先1aを形成するよう側縁同士を突き合わせて設置される。
MIG溶接装置10は、消耗電極である一対の溶接ワイヤ(MIG電極)22,24を供給する溶接ワイヤ供給部20、シールドガスGを供給するシールドガス供給部30、溶接ワイヤ供給部20及びシールドガス供給部30に接続されてシールドガスGを噴射するとともに溶接ワイヤ22,24を送出する溶接トーチ40、溶接トーチ40を鋼板1,1のI形開先1aに沿って移動させる移動ユニット50、及び、溶接ワイヤ22,24に通電する電流や溶接ワイヤ22,24の供給速度等のアーク溶接のための種々の制御、さらには移動ユニット50の作動を制御する制御部60を備えて構成されている。
シールドガス供給部30から供給されるシールドガスGとしては100%不活性ガスが用いられるが、ここでは他の不活性ガスよりも入手し易く低廉であることから、例えば、アルゴンガス(Ar)を使用することが望ましく、100%Arを使用することがより望ましい。
溶接ワイヤ供給部20は、溶接ワイヤ22,24の巻かれた溶接ワイヤコイル21(溶接ワイヤ22分の溶接ワイヤコイル21のみ示す)を備え、溶接ワイヤ22,24を溶接ワイヤコイル21から連続して供給可能に構成されている。
溶接トーチ40は、溶接ワイヤ供給部20から供給される溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1のI形開先1aに沿って保持し、各々の先端を溶接トーチ40から常時突き出し可能に構成されている。溶接ワイヤ22,24の各先端の溶接トーチ40からの突き出し量は、溶接ワイヤ22,24の各先端における電圧や電流等に応じて制御部60により適宜適正量に制御される。
なお、この実施例において、一対の溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1のI形開先1a(溶接線)に沿って配置するようにしているが、一対の溶接ワイヤ22,24は、溶接方向に対して互いに前後していればよく、必ずしも一対の溶接ワイヤ22,24をI形開先1aに沿わせて配置する必要はない。
また、この実施例において、溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1に対して垂直に設置した場合を例に挙げて説明するが、鋼板1,1に対して溶接ワイヤ22,24を独立して傾けてもよい。
溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1に対して傾ける場合、例えば、先端を溶接方向後方に向けて前進側に傾けるとクリーニングがし辛く、これとは逆に、先端を溶接方向前方に向けて後退側に傾けるとクリーニングがし易くなる反面、溶け込み量が少なくなる。
したがって、溶接ワイヤ22,24を傾ける場合の方向や角度は、被溶接金属部材の材質等の溶接仕様により適宜決定される。
移動ユニット50では、溶接トーチ40を鋼板1,1のI形開先1aに沿って前進及び後退させることを可能としており、制御部60からの指令によって溶接トーチ40の移動速度も変更可能としている。この際、移動ユニット50は、溶接トーチ40を動作させて溶接ワイヤ22,24にウィービングを行わせたり、溶接ワイヤ22,24を鋼板1,1に接近離間させたりするように構成されていてもよい。
制御部60は、上述したように、一対の溶接ワイヤ22,24のそれぞれに個別に通電制御を行うとともに、移動ユニット50に対して溶接トーチ40をI形開先1aに沿って前進させる指令を発する機能を有している。
また、このMIG溶接装置10では、溶接ワイヤ22,24側をいずれも正極(+)とし鋼板1,1側を負極(−)として溶接を行うようにしている。このように、溶接ワイヤ22,24側を正極(+)とし鋼板1,1側を負極(−)とすると、これとは逆に溶接ワイヤ22,24側を負極(−)とし鋼板1,1側を正極(+)とした場合に比べ、比較的良好な溶接品質が確保される。
以下、上記のように構成されたMIG溶接装置10によるMIG溶接方法について説明する。
図2を参照すると、本発明の一実施例に係るMIG溶接方法によるアーク溶接の溶接手順が、鋼板1,1及び溶接トーチ40を横方向から見た図(a)と上方向から見た図(b)と溶接ワイヤ22,24にそれぞれ通電する電流値の経時変化を示す図(c)とで(1)〜(3)まで時系列的に示されており、以下図2に基づき説明する。
先ず、鋼板1,1のI形開先1aの溶接開始位置に溶接方向後退側に位置する溶接ワイヤ22(他方のMIG電極)の先端を位置させ、溶接ワイヤ22にだけパルス電流を流して溶接を開始する。溶接が開始されると、溶接ワイヤ22の先端の溶滴移行によりI形開先1aに溶融池が形成され始める。
鋼板1,1のI形開先1aの溶接開始位置にて一旦溶融池が形成されると、図2の(1)に示すように、制御部60からの指令により、溶接ワイヤ22にはパルス電流を流すと共に溶接ワイヤ24(一方のMIG電極)には定常の電流を流すようにする(第1の動作及び第1の制御)。このとき、図2の(1)の(c)に示すように、溶接ワイヤ22に流すパルス電流1のベース電流と、溶接ワイヤ24に流す電流2を双方共に同一或いは略同一(実質的同一)の電流値とする。
なお、溶接ワイヤ24に流す電流2は、アークを発生するものの鋼板1,1に容易に溶融池を形成しない程度の電流値の電流であり、図2の(1)の(c)に示す段階では、溶接ワイヤ22に流すパルス電流1も同様に容易に溶融池を形成しない程度の電流値の電流である。
このように溶接ワイヤ22,24に同時に電流を流すと、溶接ワイヤ22と溶接ワイヤ24のそれぞれについてアークが発生し、各アークの周りには「右ねじの法則」に従い磁界を生じることから、互いの磁界が引力としてアークに作用し合うことになる。しかしながら、溶接方向後退側に位置する溶接ワイヤ22のパルス電流がベース電流であって、溶接ワイヤ22,24の一点鎖線上の各電流値が同一或いは略同一であると、溶接ワイヤ22のアークで発生する磁界強度は小さくなる。そのため、溶接方向前進側の溶接ワイヤ24のアークを後退側に引き寄せる力は小さい。
これより、溶接ワイヤ22にて発生するアークは鋼板1,1の表面の溶接線上における溶融池の側方に存在する酸化物にて陰極点が発生し易く、溶接ワイヤ24にて発生するアークは鋼板1,1の表面の溶接線上における溶融池の溶接方向前進側に存在する酸化物にて陰極点が発生し易くなり、図2中にアークの発生する範囲を網掛け線で示し、陰極点を白抜き○印で代表して例示しているが、図2の(1)の(a),(b)に示すように、鋼板1,1の表面の溶接線上における溶融池の溶接方向前進側及び側方において陰極点が散発し、上記網掛け線で示すアークの発生する範囲内において酸化物が除去され、鋼板1,1の表面のクリーニングが行われる。
鋼板1,1の表面のクリーニングを行うと、図2の(2)に示すように、制御部60からの指令により一方のMIG電極である溶接ワイヤ24に流す電流2については一定としたまま、他方のMIG電極である溶接ワイヤ22に流すパルス電流1のピーク電流を溶接に寄与する電流値まで増加させる(第2の動作及び第2の制御)。
このように溶接ワイヤ22に流すパルス電流1のピーク電流を溶接に寄与する電流値まで増加させると(溶接ワイヤ22,24の一点鎖線上の各電流値に差を持たせると)、溶接方向後退側の溶接ワイヤ22のアークで発生する磁界強度は大きくなる。そのため、溶接方向前進側の溶接ワイヤ24のアークを後退側に引き寄せる力が大きくなり、溶接ワイヤ24にて発生するアークは溶接ワイヤ22にて発生するアークに引き寄せられ、溶融池に近づけられる。
これにより、溶融池では鋼板1,1の表面のクリーニングされた部分と比べて陰極点が発生し易い傾向にあることから、溶接ワイヤ22及び溶接ワイヤ24共に陰極点ひいてはアークの発生点が溶融池に集中し、新たな溶融池が形成され始め、再び溶接が開始される。即ち、溶接ワイヤ22,24の先端の溶滴移行によりI形開先1aに溶融池が形成され始める。
そして、図2の(3)に示すように、溶接ワイヤ22に流すパルス電流1を溶接に寄与する電流値まで増加させたまま、制御部60からの指令により移動ユニット50によって溶接トーチ40を通常の前進速度で溶接方向に定速前進させて溶接を行い(第2の動作及び第2の制御)、溶接ワイヤ24の先端が鋼板1,1の表面のクリーニングされた範囲の終端に達すると、再び、図2の(1)に戻る。以降、図2の(c)に示すパルス電流波形に基づき、図2の(1)〜(3)の動作を繰り返す。これにより、溶融池が溶接方向前方に移動し、後方では溶融池が冷却されて溶接ビードが形成される。
この際、制御部60からの指令によって、溶接ワイヤ22に流すパルス電流1のパルス幅を変更する構成としてもよく、この構成を採用した場合には、クリーニングに充てる時間及び溶接に充てる時間の割合を適宜コントロールすることが可能である。
また、溶接ワイヤ24にのみパルス電流を流したり、溶接ワイヤ22とともに溶接ワイヤ24にもパルス電流を流したりするようにしてもよく、溶接ワイヤ22,24のいずれにもパルス電流を流す場合には、両パルス電流を同期させて位相やパルス幅を互いに異なる値に設定することで、溶接ワイヤ22,24の各アーク同士の引力をよりコントロールすることができる。
例えば、溶接ワイヤ22,24のいずれにもパルス電流を流す場合において、両パルス電流を同期させて、溶接ワイヤ24に流すパルス電流のピーク電流値と溶接ワイヤ22に流すパルス電流のベース電流値とを略等しく設定する、すなわち、溶接ワイヤ22に流すパルス電流のピーク電流値と溶接ワイヤ24に流すパルス電流のベース電流値との差を大きく設定することで、溶接ワイヤ22,24の各アーク同士の引力をより大きくすることができる。
上記したように、この実施例に係るMIG溶接方法では、従来と同様の消耗電極である溶接ワイヤ22,24を用いて、溶接線上の溶融池の溶接方向前方の鋼板1,1の表面を予めアークによりクリーニングすることにより、溶接時には常に溶接ワイヤ22,24の各アークを溶融池に集中させて、即ち溶接ワイヤ22,24の各アークによる熱を溶融池及びその周りに集中させて、鋼板1,1の溶融池周りの部分を確実に加熱することができる。
その結果、低コストで安定した濡れ性の高い溶接が成され、溶接時における溶接方向後退側の溶接ワイヤ22に流すパルス電流1の増加量は、溶接に寄与する分だけでよいので、高電流を必要としない。そして、一対の溶接ワイヤ22,24はいずれも消耗電極なので、両方の溶接ワイヤ22,24の溶滴移行によって高能率な溶接が成されることとなる。
また、この実施例に係るMIG溶接方法では、シールドガス供給部30から供給されるシールドガスGとして、100%不活性ガス(100%Ar)を使用しているので、被溶接金属部材としての鋼板1に対して全く酸化させずに溶接を行い得る。
このように、この実施例に係るMIG溶接方法では、溶接対象である被溶接金属部材を全く酸化させないので、酸化が許されないNi合金やTi合金やAl合金等の高級被溶接金属部材に対する溶接にも対応可能である。
以上で本発明に係る実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を突き合わせ溶接として鋼板1,1のI形開先1aに適用した場合を例に説明したが、隅肉溶接に適用することも可能である。
1 鋼板(被溶接金属部材)
10 MIG溶接装置
20 溶接ワイヤ供給部
21 溶接ワイヤコイル
22 溶接ワイヤ(他方のMIG電極)
24 溶接ワイヤ(一方のMIG電極)
30 シールドガス供給部
40 溶接トーチ
50 移動ユニット
60 制御部

Claims (6)

  1. 被溶接金属部材に溶融池を形成するMIG溶接方法であって、
    電流値を個別に変更可能で且つ少なくともいずれか一方にはパルス電流が流れる一対のMIG電極を配置し、
    前記一対のMIG電極を溶接方向に移動させながら該一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の移動方向の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークにより除去する第1の動作と、
    前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う第2の動作と、
    を繰り返すMIG溶接方法。
  2. 前記一対のMIG電極を前記被溶接金属部材の溶接線に沿って配置し、前記第1の動作では、前記一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの溶接方向の前進側に位置する一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークのクリーニング作用により除去し、前記第2の動作では、前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記一対のMIG電極の各アークによって前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記一対のMIG電極を前記溶接方向に前進させて前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う請求項1に記載のMIG溶接方法。
  3. 前記一対のMIG電極の一方に流すパルス電流のパルス幅を可変とした請求項1又は2に記載のMIG溶接方法。
  4. 前記一対のMIG電極にそれぞれ流す電流がいずれもパルス電流である請求項1〜3のいずれか一つの項に記載のMIG溶接方法。
  5. 前記一対のMIG電極にそれぞれ流すパルス電流を互いに同期させ、前記一対のMIG電極のうちのいずれか一方のMIG電極に流すパルス電流のピーク電流値といずれか他方のMIG電極に流すパルス電流のベース電流値とを略等しくする請求項4に記載のMIG溶接方法。
  6. 被溶接金属部材に溶融池を形成するMIG溶接装置であって、
    電流値を個別に変更可能で且つ少なくともいずれか一方にはパルス電流が流れる一対のMIG電極と、
    前記一対のMIG電極を溶接方向に移動させる移動ユニットと、
    前記シールドガスを前記一対のMIG電極及び前記被溶接金属部材間に供給するガス供給部と、
    前記一対のMIG電極による溶接及び前記移動ユニットによる前記一対のMIG電極の移動を制御する制御部を備え、
    前記制御部では、
    前記一対のMIG電極に略同一の電流値の電流を流すことで、前記一対のMIG電極のうちの一方のMIG電極のアークによって前記溶融池の移動方向の前方に陰極点を発生させて、前記被溶接金属部材の表面の酸化物を前記アークにより除去する第1の制御と、
    前記一対のMIG電極の他方のMIG電極に前記一方のMIG電極よりも高い電流値のパルス電流を流すことで、前記溶融池に陰極点をそれぞれ発生させて新たに溶融池を形成し、前記移動ユニットにより前記一対のMIG電極を前記溶接方向に移動させて前記新たに形成された溶融池に陰極点を移動させながら、前記被溶接金属部材の表面の前記酸化物が除去された範囲で溶接を行う第2の制御と、
    が繰り返し実行されるMIG溶接装置。
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