JP2004221014A - ブロック共重合体を用いた電池用バインダ樹脂組成物、電極及び電池 - Google Patents
ブロック共重合体を用いた電池用バインダ樹脂組成物、電極及び電池 Download PDFInfo
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池用バインダ樹脂組成物、電極、電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子技術の進歩により、電子機器の性能が向上して小型化、ポータブル化が進み、その電源としてエネルギー密度の高い二次電池が望まれている。従来の二次電池としては、鉛蓄電他、ニッケル−カドミウム電池等が挙げられるが、高エネルギー密度の電池という点では未だ不十分である。そこで、これらの電池に替わるものとして、近年、エネルギー密度を大幅に向上できる有機電解液系リチウム二次電池(以下、単に「リチウム電池」と記す)が開発され、急速に普及している。
【0003】
リチウム電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としてはリチウムイオンの層間への挿入(リチウム層間化合物の形成)及び層間からのリチウムイオンの放出が可能な多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。正・負極の極板は、これらの活物質とバインダ樹脂とをN−メチル−2−ピロリドンあるいは水等の溶剤に分散させてスラリーとしたものを集電体である金属箔上に両面塗布し、溶剤を乾燥除去して合剤層を形成後、これをロールプレス機で圧縮成形して作製されている。
【0004】
この際のバインダ樹脂としては、両極ともポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す)が多用されているが、フッ化ビニリデンを主成分とし、これに少量の不飽和二塩基性モノエステルを共重合して得られたフッ化ビニリデン系共重合体を用いて密着性を改良した物も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
PVDF等の含フッ素系以外のバインダ樹脂としては、耐電解液性が良好なスチレン・ブタジエン・ゴム(SBR樹脂)等のジエン系合成ゴムを用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、カルボキシル基含有樹脂であるポリアクリル酸系樹脂も、耐電解液性に優れたバインダ樹脂として提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
ところで、性質の異なる二つの分子鎖(換言すれば、そのブロック源の各モノマどうしが混ざり合わない)をもつブロック共重合体は、ミクロ相分離構造を形成して、特異な性質を示すことが知られている。一例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS樹脂)は、ポリスチレン由来の剛直な分子鎖(ハードセグメント)とポリブタジエン由来の柔軟な分子鎖(ソフトセグメント)とからなるミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体である。このSBS樹脂は、常温ではハードセグメントが架橋点として作用し、ソフトセグメントがゴム成分として働く熱可塑性樹脂のひとつである(非特許文献1参照)。
【0007】
他の例として、ポリエチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体は非極性の分子鎖と極性の分子鎖とを有する非イオン系高分子界面活性剤で、これは乳化剤や消泡剤として利用されている(非特許文献2及び非特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平6−172452号公報
【特許文献2】特開平5−74461号公報
【特許文献3】特開平11−354125号公報
【非特許文献1】高分子学会編、高分子データハンドブック応用編、培風館、1986、pp.299−307参照)。
【非特許文献2】シグマ−アルドリッチ社ホームページ、製品情報(http://www.sigma−aldrich.com/saws.nsf/Technical+Library?OpenFrameset)
【非特許文献3】CASレジストリー番号:97953−22−5
【0009】
バインダ樹脂として多用されているPVDFは密着性に劣るため、先に示した少量の不飽和二塩基性モノエステルを共重合させる方法(特許文献1)などで密着性が改良されている。しかし、このような共重合体をバインダ樹脂とした場合、集電体と合剤層との界面の密着性は大幅に向上する反面、耐電解液性が低下して膨潤し易くなるため、電解液注入後の密着性が低下する。
【0010】
SBR樹脂は、耐電解液性が良好なものが多いものの、スラリー中での活物質の安定性が著しく劣り、活物質が沈降しやすい。このためセルロース等の増粘剤あるいは界面活性剤などの添加が必要であり、これらが電解液に溶解してしまうため、電池の容量が低下するといった問題がある。
【0011】
また、ポリアクリル酸系樹脂は、それ自体が剛直なため可とう性に劣り、ロールプレス機で圧縮成形して作製する過程や、電池を捲回する過程において電極が剥離してしまう等の問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リチウム二次電池などに使用される可とう性と耐電解液性の高い電池用バインダ樹脂組成物、それを用いた電極及び電池を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(I)で示されるブロック共重合体を用いた電池用バインダ樹脂組成物、該樹脂組成物を含有する電極及び電池を提供するものである。
【0014】
【化4】
〔一般式(I)中、αは主鎖骨格に環を有さない非極性分子種を示し、βは主鎖骨格に環を有する極性分子種を示し、mとnは1以上の整数から独立に選ばれる。〕
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される化合物で、一般式(I)中、αは主鎖骨格に環を有さない非極性分子種を示し、βは主鎖骨格に環を有する非極性分子種を示し、mとnは1以上の整数から独立に選ばれる。
【0016】
αは、好ましくは、非極性有機基(アルキル基等)で置換されていてもよいメチレン鎖を主鎖に持つ非極性分子種である。すなわち、メチレン炭素(SP3炭素原子を有するもの)を主鎖に持つ分子種であるのが好ましい。主鎖を構成する炭素原子の一部がSP2炭素原子やSP炭素原子であっても構わない。また、主鎖を構成する原子の一部が、炭素原子よりも電気陰性度の低い複素原子(例えば、ケイ素、ホウ素等)であっても、非極性を保てる範囲内で、ハロゲン原子、酸素原子等の炭素原子よりも電気陰性度の高い原子であっても、構わない。
【0017】
本発明のブロック共重合体において、βは、シクロ環構造を主鎖に有する極性分子種であるのが好ましい。特に、前記シクロ環構造が、シクロアルケン誘導体、オキサシクロアルカン誘導体、オキサシクロアルケン誘導体、チアシクロアルカン誘導体又はチアシクロアルケン誘導体のいずれかであるのが好ましい。
また、βは、好ましくは、極性基で置換された環を主鎖にもつ極性分子種である。好ましいβとしては、極性基で置換された飽和又は不飽和脂環式化合物、極性基で置換された芳香族化合物、極性基で置換された複素環化合物、電気陰性度が炭素より高い複素原子を含む未置換複素環化合物等が例示される。
【0018】
分子鎖β中の環状化合物が極性基で置換されている場合、その極性基は、Hammettの置換基定数σから分離された「極性基効果に基づく置換基定数」σIを指針として選択することができる(M.Charton,Prog.Phys.Org.Chem.,13,119−251(1981)参照)。σIは水素原子を0として、置換基の極性が高いほど大きな値となる。そこで、分子鎖β中の環状化合物中の極性基のσIは+0.05以上+0.80以下が好ましく、より好ましくは+0.10以上+0.80以下、更に好ましくは+0.10以上+0.70以下である。
【0019】
分子鎖αと分子鎖βの各々の極性については、有機概念図を指針として選ぶこともできる。有機概念図は藤田らにより提案されたものであり、有機化合物の化学構造から種々の物理化学的性状を予測する有効な手法である(甲田善生著、有機概念図−基礎と応用−、三共出版(1984)参照)。有機化合物の極性は炭素原子数や置換基により左右されることから、メチレン基の有機性値を20とし、水酸基の無機性値を100とした場合を基準として、他の置換基の無機性値及び有機性値を定め、有機化合物の無機性値及び有機性値を算出するものである。無機性値の大きい有機化合物は極性が高く、有機性値の大きい有機化合物は極性が低い。
【0020】
有機概念図を指針とした場合、その槻念図における分子鎖αの無機性対有機性の比(無機性/有機性)は、好ましくは0以上0.3以下、より好ましくは0以上0.25以下、更に好ましくは0以上0.2以下である。ポリメチレン鎖であるとき、無機性/有機性は0であり、非極性で柔軟な特性をもつことを意味する。分子鎖βの有機概念図上の無機性対有機性の比(無機性/有機性)は、0.4以上10.0以下が好ましく、より好ましくは0.45以上7.5以下、更に好ましくは0.5以上5.0以下である。
【0021】
一般式(I)において好ましいmとnの範囲は1〜50000であり、より好ましくは、1〜10000であり、更に好ましくは、1〜5000である。
【0022】
一般式(I)の構成単位であるαは、一般式(II)で、βは一般式(III)で示される分子種であるのがそれぞれ好ましい。
【0023】
一般式(II)
【化5】
【0024】
一般式(II)中、Y1は2価の有機基を示し、Y2は水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。Y1は好ましくは、炭素原子数が1〜12の2価の有機基であり、さらに好ましくは2価の鎖状炭化水素基である。また、臭素等のハロゲン原子や酸素原子等の2価の原子を含んでいても良い。Y2は好ましくは、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である。
【0025】
一般式(I)で表されるユニットの具体例としては、一般式(IV)〜(XX)等があり、中でも、一般式(IV)、(V)、(VI)が好ましく用いられる。
【0026】
一般式(IV)〜(XX)
【化6】
【0027】
一般式(III)
【化7】
一般式(III)中、pは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは0又は1である。
【0028】
R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、カルボニル基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、シロキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、ホルミル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキルセレノ基、アルキルセレニニル基、及びアルキルセレノニル基の群から選ばれる。
ここで、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキルセレノ基、アルキルセレニニル基、又はアルキルセレノニル基の好ましい炭素原子数は、1〜20、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シアノアルキル基の好ましい炭素原子数は、2〜20、シクロアルキル基の好ましい炭素原子数は、3〜20であり、また、アリール基の好ましい炭素原子数は、6〜20である。
【0029】
R1〜R4は、少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは前記の群から選ばれる極性基である。
又は、R1〜R4のうちの2つずつで、1組又は2組が結合して−CO−O−CO−基(酸無水物)、−CO−O−基(ラクトン)、−CO−NR5−CO−基(イミド)又は−CO−NR5−基(ラクタム)となっていてもよい。好ましくは、−CO−O−CO−基(酸無水物)又は−CO−NR5−CO−基(イミド)である。なお、R1〜R4のうち1組が結合する場合、残り2つは水素原子であるのが好ましい。
ここで、R5は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、前記R5のアルキル基の炭素原子数は1〜4、シクロアルキル基の炭素原子数は3〜6が、アリール基の炭素原子数は6〜20が好ましい。また、前記−CO−NR5−CO−基(イミド)の場合は、R5は水素原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であるのが好ましい。
【0030】
また、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はC(R6)2であり、前記2個のR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれ、これらは同一でも異なっていてもよい。また、2個のR6が結合して前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から水素が1個抜けた2価の基で3〜8員環の環構造を形成していてもよく、スピロ環を形成していてもよい。R6の前記アルキル基は炭素原子数1〜4、シクロアルキル基は炭素原子数3〜6、アリール基は炭素原子数6〜20であるのが好ましい。
R6が水素原子でもハロゲン原子でもない場合、R6(アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基)内の炭素原子に結合する水素原子は炭素原子数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基又はアミド基等の置換基で置換されていても良い。
【0031】
X1、X2は、酸素原子又はC(R6)2であるのが好ましく、R6は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましい。また、X1、X2は同一であることが好ましい。
【0032】
一般式(III)で表されるユニットの具体例としては、一般式(XXI)〜(XXXXXV)等が挙げられる。
【0033】
一般式(XXI)〜(XXXXXV)
【化8】
【化9】
【0034】
本発明のブロック共重合体は、数平均分子量1000以上であれば特に制限がなく、ブロック共重合体の分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線から、ポリスチレン換算値として算出した値、以下同様)は10,000〜5,000,000であることが好ましく、30,000〜3,000,000であることがより好ましく、50,000〜2,000,000であることが特に好ましく、100,000〜1,000,000であることが極めて好ましい。この数平均分子量が10,000未満であるとフィラー(正極活物質、負極活物質および導電助剤)の分散性が低下する傾向があり、5,000,000を超えると、樹脂溶液の高粘度化が問題となり、スラリーの塗工が困難になる。
【0035】
本発明のブロック共重合体を用いたリチウム電池用バインダ樹脂組成物は、ブロック共重合体を溶剤に溶解及び/又は分散させたものであることを特徴とし、これに必要に応じて、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンアクリレート、エポキシ化ポリブタジエン等の靭性改良剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合したものである。これらのブロック共重合体の使用量は、本発明のリチウム電池用バインダ樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%程度である。0.01質量%未満では、十分な活物質間又は集電体との接着性が得られない。また20質量%を超えると活物質間又は集電体との接着性が低下する。
【0036】
上記ブロック共重合体を溶解及び/又は分散させるための溶剤としては、特に制限はなく、バインダ樹脂を均一に溶解又は分散できる溶媒であればよく、複数の有機溶媒の混合物でも構わない。例えば、バインダ樹脂の合成に用いることのできる溶媒がそのまま使用できるが、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等が好ましい。
これらの溶剤は、バインダ樹脂を均一に分散、溶解できればよく、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
【0037】
活物質は、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば特に制限されない。
正極の活物質としては、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入、放出できる遷移金属酸化物であればよく、リチウムコバルト複合酸化物やリチウム、ニッケル複合酸化物やこれらの混合物で良い。またリチウムニッケル複合酸化物においても、Al,V,Cr,Fe,Co,Sr,Mo,W,Mn,B,Mgから選ばれる少なくとも1種の金属でニッケルサイト又はリチウムサイトを置換したリチウムニッケル複合体でも良い。また、リチウムマンガン複合酸化物においても、Al,V,Cr,Fe,Co,Sr,Mo,W,Mn,B,Mgから選ばれる少なくとも1種の金属でマンガンサイト又はリチウムサイトを置換したリチウムマンガン複合酸化物でもよい。正極の活物質として好ましいものは、一般式LixMnyO2(xは0.2≦x≦2.5の範囲であり、yは0.8≦y≦1.25の範囲である。)で示されるリチウムマンガン複合酸化物である。
【0038】
一方、負極の活物質としては、例えば、非晶質炭素、黒鉛、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料が好ましいものとして挙げられ、炭素材料以外では、シリコン、すず、銀等の金属又はこれらの酸化物などが使用できる。これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、正極のスラリーにはバインダ樹脂と活物質の他に、カーボンブラックや黒鉛等の導電助剤を単独で又は二種以上組み合わせて添加してもよい。
【0039】
上記リチウム電池用スラリーを用いたリチウム電池用電極の作製方法及びそのリチウム電池用電極を正極及び/又は負極に用いた本発明のリチウム電池の製造方法については特に制約はなく、いずれも公知の方法を利用できる。
【0040】
本発明のリチウム電池に使用される電解液としては、電池の機能を発揮させるものであれば特に制限はなく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホン類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などの有機溶剤に、LiCl、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2Nなどの電解質を溶解した溶液が挙げられる。これらのうちでは、カーボネート類にLiPF6を溶解した電解液が好ましい。電解液の有機溶剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
【0041】
【実施例】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0042】
実施例で用いたブロック共重合体は以下のようにして作製した。
合成例1(ブロック共重合体1の合成)
【0043】
【化10】
【0044】
500mlの反応容器を窒素で置換し、テトラヒドロフラン(THF、和光純薬製)90ml及びシクロオクテン(東京化成製)11g(0.10mol)を加え、窒素雰囲気中で反応容器を60℃に加熱した。そこへ、下記構造式(XXXXXVI)のルテニウムカルベン錯体(ボールダーサイエンス社製)2.8g(3.3mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、それに酢酸ビニル(和光純薬製)を加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。ひきつづき、反応液中にendo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)21g(0.10mol)を加え、窒素雰囲気中60℃で4時間攪拌した。その後、反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、それに酢酸ビニルを加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。反応容器中の反応溶液に酢酸ビニル6.0ml(66mmol)を加え、攪拌しながら反応容器を室温まで冷却した。生成物はTHF200mlで希釈し、メタノール(和光純薬製)1L中に投じた。生じた沈殿を濾取し、減圧乾燥することにより、無色の繊維状物28g(単離収率90%)を得た。
【0045】
構造式(XXXXXVI)
【化11】
【0046】
重合反応をGPCで追跡した結果、シクロオクテン重合開始1時間後の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、11,000、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸添加後4時間経過後の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、25,000であった。なお、単離したブロック共重合体の数平均分子量は33,000、分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は1.9であった。GPCの測定条件は、カラム:TSKgelGMHXL−L(東ソー(株)製)2本、溶離液:THF、流速:1ml/min)、カラム温度:室温である。
【0047】
得られたポリマの1H−NMRチャートを図1に示した。1H−NMRスペクトルの測定は、BrukerAC−250で、溶剤:DMSO−d6である。図は、δ1.3付近のメチレン鎖(図1の構造式中のHa)のプロトンに起因するピークと、δ12.2付近のカルボン酸由来のプロトン(図1の構造式中のHb)との積分比が8:2であることを示し、ポリ(シクロオクテン)鎖とポリ(endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸)鎖の比は1:1であることが分かった。これは両モノマの仕込み比に一致していた。
【0048】
合成例2(ブロック共重合体2の合成)
シクロオクテン(東京化成製)15.4g(0.14mol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)12.6g(0.06mol)を用いた以外は全てブロック共重合体1の合成と同様に行った。単離収率90%、数平均分子量32,000、分子量分布1.8であった。
【0049】
合成例3(ブロック共重合体3の合成)
シクロオクテン(東京化成製)6.6g(0.06mol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)29g(0.14mol)を用いた以外は全てブロック共重合体1の合成と同様に行った。単離収率92%、数平均分子量34,000、分子量分布2.0であった。
【0050】
得られたブロック共重合体1〜3と比較樹脂1としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(呉羽化学製KF−1100)、比較樹脂2としてポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、数平均分子量590,000以下同様)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を乾燥後、膜厚約30μmとなるように、圧延銅箔又はアルミ箔上に、アプリケータ法で流延した後、90℃で10分間予備乾燥し、次いで150℃で1時間乾燥させて、塗膜を作製した。次いで、あらかじめ両面テープを貼り付けたガラス板に塗膜を貼り付け、ガラス板に貼り付けた圧延銅箔又はアルミ箔接着塗膜を得た。この塗膜の接着性(圧延銅箔又はアルミ箔に対するピール強度)を測定した。圧延銅箔又はアルミ箔に対するピール強度とは、ガラス、両面テープ、塗膜、銅箔又はアルミ箔をこの順に積層したものについて銅箔又はアルミ箔を剥離したときに塗膜が箔から剥離されるときの強度を意味する。その結果を表1に示した。
【0051】
【表1】表1.ピール強度(kN/m)
【0052】
表1から、ブロック共重合体1〜3は比較樹脂1〜2と比較して接着性に優れることが分かる。
【0053】
正極電極の作製
実施例1
平均粒系10μmのマンガン酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1を80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤嵩密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。可逆的にリチウムイオンを挿入、放出できる、遷移金属酸化物としてLi1.12 Mn1.88O4という組成のリチウムマンガン複合酸化物を用いた。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0054】
実施例2〜3
バインダ樹脂としてブロック共重合体2〜3を用いた以外は実施例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0055】
実施例4
平均粒系10μmのコバルト酸リチウムと平均粒径3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤嵩密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0056】
実施例5
平均粒系10μmのニッケル酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は片面220g/m2であった。その後合剤嵩密度が3.5g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0057】
比較例1
平均粒系10μmのマンガン酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデンとを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布し、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤かさ密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0058】
比較例2
正極活物質として平均粒径10μmのコバルト酸リチウムを用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0059】
比較例3
正極活物質として平均粒径10μmのニッケル酸リチウムを用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0060】
比較例4
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0061】
比較例5
正極活物質として平均粒径10μmのコバルト酸リチウムを用いた以外は比較例4と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0062】
比較例6
正極活物質として平均粒径10μmのニッケル酸リチウムを用いた以外は比較例4と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0063】
負極電極の作製
実施例6
平均粒系20μmの非晶質炭素とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを90:10体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は片面65g/m2であった。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0064】
実施例7〜8
バインダ樹脂としてブロック共重合体2〜3を用いた以外は実施例10と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0065】
実施例9
平均粒系20μmの人造黒鉛とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを90:10質量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は、単位面積あたりの負極容量/単位面積あたりの正極容量が1から1.2の範囲になるように塗布した。実施例1〜3など正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物を用いた場合、片面130g/m2であり、実施例5の正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合、片面150g/m2である。合剤嵩密度はいずれの場合も1.5g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0066】
比較例7
平均粒系20μmの非晶質炭素とバインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデンとを90:10体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は、単位面積あたりの負極容量/単位面積あたりの正極容量が1から1.2の範囲になるように塗布した。実施例1〜7など正極活物質にリチウムマンガン複合体を用いた場合、片面65g/m2であり、実施例6の正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用いた場合、片面100g/m2である。合剤かさ密度はいずれの場合も1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、120℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0067】
比較例8
ブロック共重合体1の代わりにポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた以外は実施例9と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0068】
比較例9
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は比較例7と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0069】
比較例10
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は実施例9と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0070】
得られた電極について、剥離の有無、及び耐電解液性(電解液A又はBに50℃、24時間浸漬した後の電子顕微鏡における倍率1000倍における外観異常の有無)を評価した。これらの結果をまとめて表2に示した。
【0071】
【表2】
表2.合剤の剥離、及び耐電解液性の評価結果
【0072】
電解液A:濃度が1MとなるようにLiPF6を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合液
電解液B:濃度が1MとなるようにLiPF6を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(体積比)の混合液
【0073】
表2に示した通り、ポリアクリル酸をバインダ樹脂として用いた比較例4〜6、9及び10では、可とう性不足によりプレス時に電極合剤が箔から剥離してしまい、耐電解液性評価及びその後の電池作製は困難であった。またポリフッ化ビニリデンをバインダ樹脂として用いた比較例1〜3、7及び8では、電極合剤を50℃で電解液に浸漬すると表面のバインダ樹脂が膨潤し、電極合剤の箔からの剥離やバインダ樹脂が活物質を被覆する状況が観察された。これらに対して実施例1〜9ではバインダ樹脂組成物の電解液に対する耐性が向上し、これらの現象は観察されなかった。
【0074】
電池の作製
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で作製した正極合剤電極と、実施例6〜9及び比較例7、8で作製した負極合剤電極を表3に示すように組み合わせ、厚さ25μm、幅58mmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。
【0075】
この捲回群を電池缶に挿入し、予め負極集電体の銅箔に溶接しておいたニッケルタブ端子を電池缶底に溶接した。
【0076】
次にエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2(体積比)に混合した溶液にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解した電解液を電池容器に5mlに注入した。次に、予め正極集電体のアルミニウム箔に溶接したアルミニウムタブ端子を蓋に溶接して、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置させ、この部分をかしめて密閉し、直径18mm、高さ65mmの円筒形電池を作製した。
【0077】
【表3】
表3.作製した電池
【0078】
本発明品1〜7及び比較品1の電池は、充電電流400mA、制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流800mAで放電終止電圧2.7Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
本発明品8〜9及び比較品2の電池は,充電電流750mA,制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流1500mAで放電終止電圧2.5Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
本発明品10及び比較品3の電池は、充電電流900mA,制限電圧4.15Vで定電圧充電した後、放電電流1800mAで放電終止電圧3.0Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
これらの条件での充電・放電を1サイクルとして、周囲温度50℃で充放電容量の70%以下に至るまで繰り返した。サイクル寿命の結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
表4.サイクル寿命の結果
【0080】
表4が示すように、活物質としてマンガン酸リチウム、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた正極と、活物質として非晶質炭素、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた負極とを組み合わせた比較品1の電池は50サイクルで寿命にいたっているのにもかかわらず、正極、負極少なくとも一方の電極のバインダとして本発明によるブロック共重合体を含むバインダ樹脂組成物を用いた非水電解液二次電池は、200サイクル以上と寿命が延びていることがわかる(本発明品1〜9)。特に、正極、負極バインダ両方に本発明によるブロック共重合体を含むバインダ樹脂組成物を用いた非水電解液二次電池は総じてサイクル寿命が向上していることが分かる(本発明品1、4、6、8及び9)。
【0081】
寿命後の電池を解体すると、比較品1は負極合剤が電極基体である銅箔から剥離し、この部分に金属リチウムの析出が確認されたが、本発明のバインダ樹脂組成物を用いた電極には見られなかった。このことから、本発明のバインダ樹脂組成物を用いた電池は、電極基体と合剤層界面及び合剤層相互間の優れた密着性を維持しているため、容量低下が小さいものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロック共重合体の1H−NMRスペクトルである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池用バインダ樹脂組成物、電極、電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子技術の進歩により、電子機器の性能が向上して小型化、ポータブル化が進み、その電源としてエネルギー密度の高い二次電池が望まれている。従来の二次電池としては、鉛蓄電他、ニッケル−カドミウム電池等が挙げられるが、高エネルギー密度の電池という点では未だ不十分である。そこで、これらの電池に替わるものとして、近年、エネルギー密度を大幅に向上できる有機電解液系リチウム二次電池(以下、単に「リチウム電池」と記す)が開発され、急速に普及している。
【0003】
リチウム電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としてはリチウムイオンの層間への挿入(リチウム層間化合物の形成)及び層間からのリチウムイオンの放出が可能な多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。正・負極の極板は、これらの活物質とバインダ樹脂とをN−メチル−2−ピロリドンあるいは水等の溶剤に分散させてスラリーとしたものを集電体である金属箔上に両面塗布し、溶剤を乾燥除去して合剤層を形成後、これをロールプレス機で圧縮成形して作製されている。
【0004】
この際のバインダ樹脂としては、両極ともポリフッ化ビニリデン(以下「PVDF」と略す)が多用されているが、フッ化ビニリデンを主成分とし、これに少量の不飽和二塩基性モノエステルを共重合して得られたフッ化ビニリデン系共重合体を用いて密着性を改良した物も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
PVDF等の含フッ素系以外のバインダ樹脂としては、耐電解液性が良好なスチレン・ブタジエン・ゴム(SBR樹脂)等のジエン系合成ゴムを用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、カルボキシル基含有樹脂であるポリアクリル酸系樹脂も、耐電解液性に優れたバインダ樹脂として提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
ところで、性質の異なる二つの分子鎖(換言すれば、そのブロック源の各モノマどうしが混ざり合わない)をもつブロック共重合体は、ミクロ相分離構造を形成して、特異な性質を示すことが知られている。一例として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS樹脂)は、ポリスチレン由来の剛直な分子鎖(ハードセグメント)とポリブタジエン由来の柔軟な分子鎖(ソフトセグメント)とからなるミクロ相分離構造を形成するブロック共重合体である。このSBS樹脂は、常温ではハードセグメントが架橋点として作用し、ソフトセグメントがゴム成分として働く熱可塑性樹脂のひとつである(非特許文献1参照)。
【0007】
他の例として、ポリエチレン−ポリエチレングリコールブロック共重合体は非極性の分子鎖と極性の分子鎖とを有する非イオン系高分子界面活性剤で、これは乳化剤や消泡剤として利用されている(非特許文献2及び非特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平6−172452号公報
【特許文献2】特開平5−74461号公報
【特許文献3】特開平11−354125号公報
【非特許文献1】高分子学会編、高分子データハンドブック応用編、培風館、1986、pp.299−307参照)。
【非特許文献2】シグマ−アルドリッチ社ホームページ、製品情報(http://www.sigma−aldrich.com/saws.nsf/Technical+Library?OpenFrameset)
【非特許文献3】CASレジストリー番号:97953−22−5
【0009】
バインダ樹脂として多用されているPVDFは密着性に劣るため、先に示した少量の不飽和二塩基性モノエステルを共重合させる方法(特許文献1)などで密着性が改良されている。しかし、このような共重合体をバインダ樹脂とした場合、集電体と合剤層との界面の密着性は大幅に向上する反面、耐電解液性が低下して膨潤し易くなるため、電解液注入後の密着性が低下する。
【0010】
SBR樹脂は、耐電解液性が良好なものが多いものの、スラリー中での活物質の安定性が著しく劣り、活物質が沈降しやすい。このためセルロース等の増粘剤あるいは界面活性剤などの添加が必要であり、これらが電解液に溶解してしまうため、電池の容量が低下するといった問題がある。
【0011】
また、ポリアクリル酸系樹脂は、それ自体が剛直なため可とう性に劣り、ロールプレス機で圧縮成形して作製する過程や、電池を捲回する過程において電極が剥離してしまう等の問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リチウム二次電池などに使用される可とう性と耐電解液性の高い電池用バインダ樹脂組成物、それを用いた電極及び電池を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式(I)で示されるブロック共重合体を用いた電池用バインダ樹脂組成物、該樹脂組成物を含有する電極及び電池を提供するものである。
【0014】
【化4】
〔一般式(I)中、αは主鎖骨格に環を有さない非極性分子種を示し、βは主鎖骨格に環を有する極性分子種を示し、mとnは1以上の整数から独立に選ばれる。〕
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるブロック共重合体は、上記一般式(I)で表される化合物で、一般式(I)中、αは主鎖骨格に環を有さない非極性分子種を示し、βは主鎖骨格に環を有する非極性分子種を示し、mとnは1以上の整数から独立に選ばれる。
【0016】
αは、好ましくは、非極性有機基(アルキル基等)で置換されていてもよいメチレン鎖を主鎖に持つ非極性分子種である。すなわち、メチレン炭素(SP3炭素原子を有するもの)を主鎖に持つ分子種であるのが好ましい。主鎖を構成する炭素原子の一部がSP2炭素原子やSP炭素原子であっても構わない。また、主鎖を構成する原子の一部が、炭素原子よりも電気陰性度の低い複素原子(例えば、ケイ素、ホウ素等)であっても、非極性を保てる範囲内で、ハロゲン原子、酸素原子等の炭素原子よりも電気陰性度の高い原子であっても、構わない。
【0017】
本発明のブロック共重合体において、βは、シクロ環構造を主鎖に有する極性分子種であるのが好ましい。特に、前記シクロ環構造が、シクロアルケン誘導体、オキサシクロアルカン誘導体、オキサシクロアルケン誘導体、チアシクロアルカン誘導体又はチアシクロアルケン誘導体のいずれかであるのが好ましい。
また、βは、好ましくは、極性基で置換された環を主鎖にもつ極性分子種である。好ましいβとしては、極性基で置換された飽和又は不飽和脂環式化合物、極性基で置換された芳香族化合物、極性基で置換された複素環化合物、電気陰性度が炭素より高い複素原子を含む未置換複素環化合物等が例示される。
【0018】
分子鎖β中の環状化合物が極性基で置換されている場合、その極性基は、Hammettの置換基定数σから分離された「極性基効果に基づく置換基定数」σIを指針として選択することができる(M.Charton,Prog.Phys.Org.Chem.,13,119−251(1981)参照)。σIは水素原子を0として、置換基の極性が高いほど大きな値となる。そこで、分子鎖β中の環状化合物中の極性基のσIは+0.05以上+0.80以下が好ましく、より好ましくは+0.10以上+0.80以下、更に好ましくは+0.10以上+0.70以下である。
【0019】
分子鎖αと分子鎖βの各々の極性については、有機概念図を指針として選ぶこともできる。有機概念図は藤田らにより提案されたものであり、有機化合物の化学構造から種々の物理化学的性状を予測する有効な手法である(甲田善生著、有機概念図−基礎と応用−、三共出版(1984)参照)。有機化合物の極性は炭素原子数や置換基により左右されることから、メチレン基の有機性値を20とし、水酸基の無機性値を100とした場合を基準として、他の置換基の無機性値及び有機性値を定め、有機化合物の無機性値及び有機性値を算出するものである。無機性値の大きい有機化合物は極性が高く、有機性値の大きい有機化合物は極性が低い。
【0020】
有機概念図を指針とした場合、その槻念図における分子鎖αの無機性対有機性の比(無機性/有機性)は、好ましくは0以上0.3以下、より好ましくは0以上0.25以下、更に好ましくは0以上0.2以下である。ポリメチレン鎖であるとき、無機性/有機性は0であり、非極性で柔軟な特性をもつことを意味する。分子鎖βの有機概念図上の無機性対有機性の比(無機性/有機性)は、0.4以上10.0以下が好ましく、より好ましくは0.45以上7.5以下、更に好ましくは0.5以上5.0以下である。
【0021】
一般式(I)において好ましいmとnの範囲は1〜50000であり、より好ましくは、1〜10000であり、更に好ましくは、1〜5000である。
【0022】
一般式(I)の構成単位であるαは、一般式(II)で、βは一般式(III)で示される分子種であるのがそれぞれ好ましい。
【0023】
一般式(II)
【化5】
【0024】
一般式(II)中、Y1は2価の有機基を示し、Y2は水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。Y1は好ましくは、炭素原子数が1〜12の2価の有機基であり、さらに好ましくは2価の鎖状炭化水素基である。また、臭素等のハロゲン原子や酸素原子等の2価の原子を含んでいても良い。Y2は好ましくは、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である。
【0025】
一般式(I)で表されるユニットの具体例としては、一般式(IV)〜(XX)等があり、中でも、一般式(IV)、(V)、(VI)が好ましく用いられる。
【0026】
一般式(IV)〜(XX)
【化6】
【0027】
一般式(III)
【化7】
一般式(III)中、pは0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、更に好ましくは0又は1である。
【0028】
R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、カルボニル基、シアノ基、イソシアノ基、ニトロ基、シロキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、ホルミル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキルセレノ基、アルキルセレニニル基、及びアルキルセレノニル基の群から選ばれる。
ここで、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキルセレノ基、アルキルセレニニル基、又はアルキルセレノニル基の好ましい炭素原子数は、1〜20、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シアノアルキル基の好ましい炭素原子数は、2〜20、シクロアルキル基の好ましい炭素原子数は、3〜20であり、また、アリール基の好ましい炭素原子数は、6〜20である。
【0029】
R1〜R4は、少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは前記の群から選ばれる極性基である。
又は、R1〜R4のうちの2つずつで、1組又は2組が結合して−CO−O−CO−基(酸無水物)、−CO−O−基(ラクトン)、−CO−NR5−CO−基(イミド)又は−CO−NR5−基(ラクタム)となっていてもよい。好ましくは、−CO−O−CO−基(酸無水物)又は−CO−NR5−CO−基(イミド)である。なお、R1〜R4のうち1組が結合する場合、残り2つは水素原子であるのが好ましい。
ここで、R5は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、前記R5のアルキル基の炭素原子数は1〜4、シクロアルキル基の炭素原子数は3〜6が、アリール基の炭素原子数は6〜20が好ましい。また、前記−CO−NR5−CO−基(イミド)の場合は、R5は水素原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であるのが好ましい。
【0030】
また、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はC(R6)2であり、前記2個のR6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から選ばれ、これらは同一でも異なっていてもよい。また、2個のR6が結合して前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から水素が1個抜けた2価の基で3〜8員環の環構造を形成していてもよく、スピロ環を形成していてもよい。R6の前記アルキル基は炭素原子数1〜4、シクロアルキル基は炭素原子数3〜6、アリール基は炭素原子数6〜20であるのが好ましい。
R6が水素原子でもハロゲン原子でもない場合、R6(アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基)内の炭素原子に結合する水素原子は炭素原子数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基又はアミド基等の置換基で置換されていても良い。
【0031】
X1、X2は、酸素原子又はC(R6)2であるのが好ましく、R6は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましい。また、X1、X2は同一であることが好ましい。
【0032】
一般式(III)で表されるユニットの具体例としては、一般式(XXI)〜(XXXXXV)等が挙げられる。
【0033】
一般式(XXI)〜(XXXXXV)
【化8】
【化9】
【0034】
本発明のブロック共重合体は、数平均分子量1000以上であれば特に制限がなく、ブロック共重合体の分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線から、ポリスチレン換算値として算出した値、以下同様)は10,000〜5,000,000であることが好ましく、30,000〜3,000,000であることがより好ましく、50,000〜2,000,000であることが特に好ましく、100,000〜1,000,000であることが極めて好ましい。この数平均分子量が10,000未満であるとフィラー(正極活物質、負極活物質および導電助剤)の分散性が低下する傾向があり、5,000,000を超えると、樹脂溶液の高粘度化が問題となり、スラリーの塗工が困難になる。
【0035】
本発明のブロック共重合体を用いたリチウム電池用バインダ樹脂組成物は、ブロック共重合体を溶剤に溶解及び/又は分散させたものであることを特徴とし、これに必要に応じて、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンアクリレート、エポキシ化ポリブタジエン等の靭性改良剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ性向上剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合したものである。これらのブロック共重合体の使用量は、本発明のリチウム電池用バインダ樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%程度である。0.01質量%未満では、十分な活物質間又は集電体との接着性が得られない。また20質量%を超えると活物質間又は集電体との接着性が低下する。
【0036】
上記ブロック共重合体を溶解及び/又は分散させるための溶剤としては、特に制限はなく、バインダ樹脂を均一に溶解又は分散できる溶媒であればよく、複数の有機溶媒の混合物でも構わない。例えば、バインダ樹脂の合成に用いることのできる溶媒がそのまま使用できるが、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等が好ましい。
これらの溶剤は、バインダ樹脂を均一に分散、溶解できればよく、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
【0037】
活物質は、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば特に制限されない。
正極の活物質としては、充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入、放出できる遷移金属酸化物であればよく、リチウムコバルト複合酸化物やリチウム、ニッケル複合酸化物やこれらの混合物で良い。またリチウムニッケル複合酸化物においても、Al,V,Cr,Fe,Co,Sr,Mo,W,Mn,B,Mgから選ばれる少なくとも1種の金属でニッケルサイト又はリチウムサイトを置換したリチウムニッケル複合体でも良い。また、リチウムマンガン複合酸化物においても、Al,V,Cr,Fe,Co,Sr,Mo,W,Mn,B,Mgから選ばれる少なくとも1種の金属でマンガンサイト又はリチウムサイトを置換したリチウムマンガン複合酸化物でもよい。正極の活物質として好ましいものは、一般式LixMnyO2(xは0.2≦x≦2.5の範囲であり、yは0.8≦y≦1.25の範囲である。)で示されるリチウムマンガン複合酸化物である。
【0038】
一方、負極の活物質としては、例えば、非晶質炭素、黒鉛、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料が好ましいものとして挙げられ、炭素材料以外では、シリコン、すず、銀等の金属又はこれらの酸化物などが使用できる。これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、正極のスラリーにはバインダ樹脂と活物質の他に、カーボンブラックや黒鉛等の導電助剤を単独で又は二種以上組み合わせて添加してもよい。
【0039】
上記リチウム電池用スラリーを用いたリチウム電池用電極の作製方法及びそのリチウム電池用電極を正極及び/又は負極に用いた本発明のリチウム電池の製造方法については特に制約はなく、いずれも公知の方法を利用できる。
【0040】
本発明のリチウム電池に使用される電解液としては、電池の機能を発揮させるものであれば特に制限はなく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホン類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などの有機溶剤に、LiCl、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2Nなどの電解質を溶解した溶液が挙げられる。これらのうちでは、カーボネート類にLiPF6を溶解した電解液が好ましい。電解液の有機溶剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いられる。
【0041】
【実施例】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0042】
実施例で用いたブロック共重合体は以下のようにして作製した。
合成例1(ブロック共重合体1の合成)
【0043】
【化10】
【0044】
500mlの反応容器を窒素で置換し、テトラヒドロフラン(THF、和光純薬製)90ml及びシクロオクテン(東京化成製)11g(0.10mol)を加え、窒素雰囲気中で反応容器を60℃に加熱した。そこへ、下記構造式(XXXXXVI)のルテニウムカルベン錯体(ボールダーサイエンス社製)2.8g(3.3mmol)を加え、60℃で1時間攪拌した。反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、それに酢酸ビニル(和光純薬製)を加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。ひきつづき、反応液中にendo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)21g(0.10mol)を加え、窒素雰囲気中60℃で4時間攪拌した。その後、反応系中から少量の反応溶液を抜き取り、それに酢酸ビニルを加えて反応を停止したものをGPC測定用試料とした。反応容器中の反応溶液に酢酸ビニル6.0ml(66mmol)を加え、攪拌しながら反応容器を室温まで冷却した。生成物はTHF200mlで希釈し、メタノール(和光純薬製)1L中に投じた。生じた沈殿を濾取し、減圧乾燥することにより、無色の繊維状物28g(単離収率90%)を得た。
【0045】
構造式(XXXXXVI)
【化11】
【0046】
重合反応をGPCで追跡した結果、シクロオクテン重合開始1時間後の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、11,000、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸添加後4時間経過後の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、25,000であった。なお、単離したブロック共重合体の数平均分子量は33,000、分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は1.9であった。GPCの測定条件は、カラム:TSKgelGMHXL−L(東ソー(株)製)2本、溶離液:THF、流速:1ml/min)、カラム温度:室温である。
【0047】
得られたポリマの1H−NMRチャートを図1に示した。1H−NMRスペクトルの測定は、BrukerAC−250で、溶剤:DMSO−d6である。図は、δ1.3付近のメチレン鎖(図1の構造式中のHa)のプロトンに起因するピークと、δ12.2付近のカルボン酸由来のプロトン(図1の構造式中のHb)との積分比が8:2であることを示し、ポリ(シクロオクテン)鎖とポリ(endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸)鎖の比は1:1であることが分かった。これは両モノマの仕込み比に一致していた。
【0048】
合成例2(ブロック共重合体2の合成)
シクロオクテン(東京化成製)15.4g(0.14mol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)12.6g(0.06mol)を用いた以外は全てブロック共重合体1の合成と同様に行った。単離収率90%、数平均分子量32,000、分子量分布1.8であった。
【0049】
合成例3(ブロック共重合体3の合成)
シクロオクテン(東京化成製)6.6g(0.06mol)、endo−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ランカスター社製)29g(0.14mol)を用いた以外は全てブロック共重合体1の合成と同様に行った。単離収率92%、数平均分子量34,000、分子量分布2.0であった。
【0050】
得られたブロック共重合体1〜3と比較樹脂1としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(呉羽化学製KF−1100)、比較樹脂2としてポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、数平均分子量590,000以下同様)のN−メチル−2−ピロリドン溶液を乾燥後、膜厚約30μmとなるように、圧延銅箔又はアルミ箔上に、アプリケータ法で流延した後、90℃で10分間予備乾燥し、次いで150℃で1時間乾燥させて、塗膜を作製した。次いで、あらかじめ両面テープを貼り付けたガラス板に塗膜を貼り付け、ガラス板に貼り付けた圧延銅箔又はアルミ箔接着塗膜を得た。この塗膜の接着性(圧延銅箔又はアルミ箔に対するピール強度)を測定した。圧延銅箔又はアルミ箔に対するピール強度とは、ガラス、両面テープ、塗膜、銅箔又はアルミ箔をこの順に積層したものについて銅箔又はアルミ箔を剥離したときに塗膜が箔から剥離されるときの強度を意味する。その結果を表1に示した。
【0051】
【表1】表1.ピール強度(kN/m)
【0052】
表1から、ブロック共重合体1〜3は比較樹脂1〜2と比較して接着性に優れることが分かる。
【0053】
正極電極の作製
実施例1
平均粒系10μmのマンガン酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1を80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤嵩密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。可逆的にリチウムイオンを挿入、放出できる、遷移金属酸化物としてLi1.12 Mn1.88O4という組成のリチウムマンガン複合酸化物を用いた。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0054】
実施例2〜3
バインダ樹脂としてブロック共重合体2〜3を用いた以外は実施例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0055】
実施例4
平均粒系10μmのコバルト酸リチウムと平均粒径3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤嵩密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0056】
実施例5
平均粒系10μmのニッケル酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は片面220g/m2であった。その後合剤嵩密度が3.5g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0057】
比較例1
平均粒系10μmのマンガン酸リチウムと平均粒系3μmの炭素粉末とバインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデンとを80:10:10の体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み20μmのアルミニウム箔の両面にこの溶液を塗布し、乾燥した。合剤塗布量は片面290g/m2であった。その後合剤かさ密度が2.6g/cm3になるようにロールプレス機で圧延し、54mm幅に切断して短冊状の正極合剤電極シートを作製した。正極合剤電極シートの端部にアルミニウム製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0058】
比較例2
正極活物質として平均粒径10μmのコバルト酸リチウムを用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0059】
比較例3
正極活物質として平均粒径10μmのニッケル酸リチウムを用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0060】
比較例4
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は比較例1と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0061】
比較例5
正極活物質として平均粒径10μmのコバルト酸リチウムを用いた以外は比較例4と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0062】
比較例6
正極活物質として平均粒径10μmのニッケル酸リチウムを用いた以外は比較例4と同様にして正極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0063】
負極電極の作製
実施例6
平均粒系20μmの非晶質炭素とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを90:10体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は片面65g/m2であった。合剤嵩密度が1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0064】
実施例7〜8
バインダ樹脂としてブロック共重合体2〜3を用いた以外は実施例10と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0065】
実施例9
平均粒系20μmの人造黒鉛とバインダ樹脂としてブロック共重合体1とを90:10質量%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は、単位面積あたりの負極容量/単位面積あたりの正極容量が1から1.2の範囲になるように塗布した。実施例1〜3など正極活物質にリチウムマンガン複合酸化物を用いた場合、片面130g/m2であり、実施例5の正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた場合、片面150g/m2である。合剤嵩密度はいずれの場合も1.5g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、150℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0066】
比較例7
平均粒系20μmの非晶質炭素とバインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデンとを90:10体積%の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。厚み10μmの銅箔の両面にこの溶液を塗布乾燥した。合剤塗布量は、単位面積あたりの負極容量/単位面積あたりの正極容量が1から1.2の範囲になるように塗布した。実施例1〜7など正極活物質にリチウムマンガン複合体を用いた場合、片面65g/m2であり、実施例6の正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用いた場合、片面100g/m2である。合剤かさ密度はいずれの場合も1.0g/cm3になるように、ロールプレス機で圧延し、56mm幅に切断して短冊状の負極合剤電極シートを作製した。負極合剤電極シートの端部にニッケル製の集電体タブを超音波溶着し、その後、電極内の残留溶媒、吸着水の除去のため、120℃で16時間真空乾燥して負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0067】
比較例8
ブロック共重合体1の代わりにポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた以外は実施例9と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0068】
比較例9
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は比較例7と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0069】
比較例10
バインダ樹脂としてポリアクリル酸を用いた以外は実施例9と同様にして負極合剤電極を得た。おのおのの剥離及びクラックを目視で調べた。
【0070】
得られた電極について、剥離の有無、及び耐電解液性(電解液A又はBに50℃、24時間浸漬した後の電子顕微鏡における倍率1000倍における外観異常の有無)を評価した。これらの結果をまとめて表2に示した。
【0071】
【表2】
表2.合剤の剥離、及び耐電解液性の評価結果
【0072】
電解液A:濃度が1MとなるようにLiPF6を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2(体積比)の混合液
電解液B:濃度が1MとなるようにLiPF6を溶解させたエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(体積比)の混合液
【0073】
表2に示した通り、ポリアクリル酸をバインダ樹脂として用いた比較例4〜6、9及び10では、可とう性不足によりプレス時に電極合剤が箔から剥離してしまい、耐電解液性評価及びその後の電池作製は困難であった。またポリフッ化ビニリデンをバインダ樹脂として用いた比較例1〜3、7及び8では、電極合剤を50℃で電解液に浸漬すると表面のバインダ樹脂が膨潤し、電極合剤の箔からの剥離やバインダ樹脂が活物質を被覆する状況が観察された。これらに対して実施例1〜9ではバインダ樹脂組成物の電解液に対する耐性が向上し、これらの現象は観察されなかった。
【0074】
電池の作製
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で作製した正極合剤電極と、実施例6〜9及び比較例7、8で作製した負極合剤電極を表3に示すように組み合わせ、厚さ25μm、幅58mmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。
【0075】
この捲回群を電池缶に挿入し、予め負極集電体の銅箔に溶接しておいたニッケルタブ端子を電池缶底に溶接した。
【0076】
次にエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2(体積比)に混合した溶液にLiPF6を1mol/lの濃度で溶解した電解液を電池容器に5mlに注入した。次に、予め正極集電体のアルミニウム箔に溶接したアルミニウムタブ端子を蓋に溶接して、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置させ、この部分をかしめて密閉し、直径18mm、高さ65mmの円筒形電池を作製した。
【0077】
【表3】
表3.作製した電池
【0078】
本発明品1〜7及び比較品1の電池は、充電電流400mA、制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流800mAで放電終止電圧2.7Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
本発明品8〜9及び比較品2の電池は,充電電流750mA,制限電圧4.2Vで定電圧充電した後、放電電流1500mAで放電終止電圧2.5Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
本発明品10及び比較品3の電池は、充電電流900mA,制限電圧4.15Vで定電圧充電した後、放電電流1800mAで放電終止電圧3.0Vに至るまで放電して初回容量を測定した。
これらの条件での充電・放電を1サイクルとして、周囲温度50℃で充放電容量の70%以下に至るまで繰り返した。サイクル寿命の結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
表4.サイクル寿命の結果
【0080】
表4が示すように、活物質としてマンガン酸リチウム、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた正極と、活物質として非晶質炭素、バインダとしてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた負極とを組み合わせた比較品1の電池は50サイクルで寿命にいたっているのにもかかわらず、正極、負極少なくとも一方の電極のバインダとして本発明によるブロック共重合体を含むバインダ樹脂組成物を用いた非水電解液二次電池は、200サイクル以上と寿命が延びていることがわかる(本発明品1〜9)。特に、正極、負極バインダ両方に本発明によるブロック共重合体を含むバインダ樹脂組成物を用いた非水電解液二次電池は総じてサイクル寿命が向上していることが分かる(本発明品1、4、6、8及び9)。
【0081】
寿命後の電池を解体すると、比較品1は負極合剤が電極基体である銅箔から剥離し、この部分に金属リチウムの析出が確認されたが、本発明のバインダ樹脂組成物を用いた電極には見られなかった。このことから、本発明のバインダ樹脂組成物を用いた電池は、電極基体と合剤層界面及び合剤層相互間の優れた密着性を維持しているため、容量低下が小さいものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロック共重合体の1H−NMRスペクトルである。
Claims (17)
- 一般式(I)中のαが置換又は非置換のメチレン基を主鎖に有する分子種である請求項1記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 一般式(I)中のβがシクロ環構造を主鎖に有する分子種である請求項1又は2記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- シクロ環構造が、シクロアルケン誘導体、オキサシクロアルカン誘導体、オキサシクロアルケン誘導体、チアシクロアルカン誘導体又はチアシクロアルケン誘導体、のいずれかである請求項3記載の電池用バインダ樹脂組成物
- 一般式(I)中のβが一般式(III)で示される請求項1〜5のいずれか1項記載の電池用バインダ樹脂組成物。
ここで、R1〜R4の少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは前記の群から選ばれる極性基であるか、
R1〜R4のうちの2つずつで、2組が結合して−CO−O−CO−基、−CO−O−基、−CO−NR5−CO−基又は−CO−NR5−基であるか、
又は、R1〜R4のうちの2つは結合して、−CO−O−CO−基、−CO−O−基、−CO−NR5−CO−基又は−CO−NR5−基であり(ここで、R5は水素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。)、残りは水素原子である。
また、一般式(III)中、X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はC(R6)2であり、前記2個のR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基又は置換又は非置換のアリール基から選ばれるか、又は、2個のR6は結合してアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基から水素が1個抜けた2価の基で3から8員環の環構造又はスピロ環を形成している。〕 - 一般式(II)中のY1が、炭素原子数が1〜12の2価の有機基である請求項5又は6記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 一般式(II)中のY1が、2価の鎖状炭化水素基である請求項7記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 一般式(III)中のR1〜R4の、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アシロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキルセレノ基、アルキルセレニニル基、又はアルキルセレノニル基の炭素原子数が3〜20であり、アリール基の炭素原子数が6〜20である請求項6〜8のいずれかに記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 一般式(III)中のX1及びX2が、酸素原子又はC(R6)2であり、R6が水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基である請求項6〜9のいずれかに記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 一般式(III)のX1及びX2が、同一である請求項6〜10のいずれかに記載の電池用バインダ樹脂組成物。
- 請求項1〜11のいずれか1項記載の電池用バインダ樹脂組成物を溶媒に分散又は溶解させ、これを活物質と混合したスラリーを集電体表面に塗布後、溶媒を除去して製造された電極。
- 活物質が充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものである請求項12記載の電極。
- 負極の活物質が、炭素材料である請求項12又は13記載の電極。
- 正極の活物質が、一般式LixMnyO2(xは0.2≦x≦2.5の範囲であり、yは0.8≦y≦1.25の範囲である。)で示されるリチウムマンガン複合酸化物である請求項12〜14のいずれか1項記載の電極。
- 請求項12〜15のいずれか1項記載の電極を用いて製造された電池。
- リチウムイオン二次電池である請求項16記載の電池。
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