JP2004218958A - 真空冷却方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】突沸やそれに伴なう飛散防止、あるいは型くずれを防止し、被冷却物に合った適切な冷却が行えるようにする。
【解決手段】処理槽3内の圧力が所定保持圧力となるように処理槽3内の減圧を行い、被冷却物2の温度の時間変化が基準値以下となったことを判定することで保持圧力に等しい飽和温度にほぼ近づいたことを判定し、処理槽3の圧力が所定保持圧力から所定値低減した所定保持圧力となるように処理槽3内の減圧を行い、被冷却物2の温度の時間変化の判定と所定保持圧力の低減による減圧とを繰り返して行うことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、食品や野菜などを冷却するとき、処理槽内を真空にすることにより冷却を行う真空冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品などの安全性および衛生面への配慮から、調理した食品などの温度を素速く低下させることが要求されるようになった。これらの食品など(以下、「被冷却物」と云う)を冷却する方法の一つに、真空冷却する方法がある。
【0003】
このような真空冷却方法では、水分を前記被冷却物そのものから気化させるため、急激に減圧すると、前記被冷却物の内部で沸騰が発生すること等により、前記処理槽内に前記被冷却物の一部が飛散したり、型くずれを起こすことがある。一方、ゆっくりと真空冷却すれば、沸騰などは生じないが、冷却時間が長くなり、真空冷却機の運転効率が悪くなる。すなわち、真空冷却方法においては、沸騰防止と冷却時間の短縮という相反する課題がある。
【0004】
こうした課題を解決するために、出願人は、前記被冷却物毎に事前に検討した減圧特性曲線をプログラミングにより制御器に格納し、処理槽内の圧力を検出して、前記減圧特性曲線にそった減圧制御を行うことを提案している(特願2002−42412)。
【0005】
この方法は、前記被冷却物の沸騰を防止する技術として有効である。しかしながら、前記制御器に格納した前記減圧特性曲線に対応する前記被冷却物以外の被冷却物に対しては効果的でなく、数多くの前記被冷却物について沸騰を防止することはできないという課題がある。
【0006】
また、前記被冷却物の沸騰を防止する技術として、処理槽内の圧力を検出するとともに、前記被冷却物の温度(以下、「品温」と云う)を検出して、前記処理層内を前記被冷却物の飽和圧力に制御する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−27307号公報(第3頁,図1)
【0008】
前記特許文献1に記載の従来技術によれば、予め設定された被冷却物の温度値における飽和圧力に制御するものであるために、適切な冷却速度とすることができず、冷却時間が長くなるという課題がある。その結果、前記従来技術は、相反する真空冷却方法の課題である沸騰防止と冷却時間の短縮の解決において十分なものとはいえないものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、突沸やそれに伴なう飛散防止、あるいは型くずれを防止し、被冷却物に合った適切な冷却が行えるようにすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽内を減圧して被冷却物を冷却する真空冷却方法であって、前記処理槽内の圧力が所定保持圧力となるように前記処理槽内の減圧を行い、前記被冷却物の温度の時間変化が基準値以下となったことを判定することで前記被冷却物の温度が前記保持圧力に等しい飽和温度にほぼ近づいたことを判定し、前記処理槽の圧力が前記所定保持圧力から所定値低減した所定保持圧力となるように前記処理槽内の減圧を行い、前記被冷却物の温度の時間変化の判定と前記所定保持圧力の低減による減圧とを繰り返して行うことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記基準値を調整可能としたことを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明は、食品等(以下、「被冷却物」と云う)を冷却するとき、処理槽内を真空にすることにより、冷却を行う真空冷却機を用いた真空冷却方法において実施することができる。
【0013】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態は、処理槽内を減圧して被冷却物を冷却する真空冷却方法であって、前記処理槽内の圧力が所定保持圧力となるように前記処理槽内の減圧を行い、前記被冷却物の温度(以下、「品温」と云う)の時間変化が基準値以下となったことを判定することで品温が前記保持圧力に等しい飽和温度にほぼ近づいたことを判定し、前記処理槽の圧力が前記所定保持圧力から所定値低減した所定保持圧力となるように前記処理槽内の減圧を行い品温の時間変化の判定と前記所定保持圧力の低減による減圧とを繰り返して行うことを特徴とする真空冷却方法である。
【0014】
この実施形態においては、前記処理槽内の減圧を開始すると、前記処理槽内の圧力は、外気を導入(リーク)させながら、始めは大きい勾配にて下がり、時間の経過とともに前記勾配が小さくなり、最終的には前記所定保持圧力に到達する。こうして、前記処理槽内の圧力を前記所定保持圧力に保持する(第一圧力保持工程)。この前記所定保持圧力保持により、品温は、前記所定保持圧力に等しい前記処理槽内の飽和温度まで低下する。そして、品温の時間的変化が少なくなると品温が前記度飽和温度にほぼ近づいたと判定し、この状態において、品温の時間的変化が前記基準値以下かどうかを判定し(品温時間変化判定工程)、前記基準値以下が判定されると、前記所定保持圧力を少量の所定値だけ低減し(保持圧力低減工程)、前記処理槽内の圧力を低減された所定保持圧力となるように減圧を行う(第二圧力保持工程)。前記第二圧力保持工程は、前記保持圧力低減工程を含む。
【0015】
前記において、品温が前記所定保持圧力に等しい「前記飽和温度に近づく」とは、品温が前記飽和温度よりやや高い場合、品温が前記飽和温度と等しい場合、品温が前記飽和温度よりやや低い場合を含む。
【0016】
そして、前記第一圧力保持工程の後、前記品温時間変化判定工程および前記第二圧力保持工程を繰り返すことにより、前記被冷却物の温度と前記処理槽内の飽和温度との差が一定温度範囲以下となるように冷却するものである。前記処理槽の飽和温度とは、前記処理槽の圧力に対応する被冷却物の飽和温度である。
【0017】
前記第一圧力保持工程および前記第二圧力保持工程による前記処理槽内の圧力一定保持は、好ましくは、つぎのようにして行われる。前記処理槽にリーク量を多段階に調整する電動弁を接続するとともに、前記処理槽に減圧手段を接続し、前記電動弁の開度を所定値として前記減圧手段の排気量を一定に制御することにより、前記処理槽内の圧力は、前記所定保持圧力に一定に保持される。
【0018】
前記減圧手段としては、真空ポンプの他,前記真空ポンプと蒸気エゼクタと熱交換器とを組み合わせたもの,前記真空ポンプと前記熱交換器とを組み合わせたものを用いることができる。前記蒸気エゼクタは、水エゼクタに代えることもできる。
【0019】
前記品温時間変化判定工程は、冷却運転により品温が低下するのを品温の温度変化/時間(ΔT/Δt)の変化として捉えて、前記温度変化/時間(以下、「品温の時間変化」と云う)が前記基準値(ΔT1/Δt1)に達したかどうかを判定する。前記基準値に到達したとの判定は、前記処理槽内の飽和温度と品温との差が減少して、品温が飽和温度に近づいたことの判定を意味する。
【0020】
前記基準値(ΔT1/Δt1)は、好ましくは、その値を調整可能とし、さらに好ましくは、前記時間(Δt1)を一定時間として、前記温度差(ΔT1)のみを可変とする。実施に応じて、前記ΔT1および前記Δt1の両方を調整可能とすることもできる。
【0021】
前記基準値は、その値を小さくすることにより、ゆっくりと減圧でき、逆に、液量が少なく、固体が多い被冷却物については値を大きくすることにより、速く減圧することができる。また、前記基準値は、被冷却物の種類,量に応じて設定することができる他、同じ被冷却物および量であっても過去の真空冷却運転の結果に基づいて一層適当と判断される値に設定することができる。
【0022】
また、前記基準値の設定は、真空冷却機のユーザーまたはメンテ員により実行され、設定の結果は、前記真空冷却機の制御器に記憶される。そして、前記設定は、真空冷却運転毎に行う必要はなく、基準値の変更を必要とするときに行えば良い。
【0023】
前記保持圧力低減工程は、前記所定保持圧力を少量の所定値だけ下げる工程であり、前記電動弁の開度調節により行われる。この保持圧力低減工程は、前記圧力保持工程により品温の変化が無くなってきたとき、つぎの効果的な品温低下のために必要な工程である。
【0024】
この実施の形態によれば、前記第一圧力保持工程を行った後、前記品温時間変化判定工程および前記第二圧力保持工程を繰り返して行うので、品温と飽和温度との差を大きくすることなく、過熱領域の形成を抑制した真空冷却を行うことができる。また、前記品温の時間変化の基準値を被冷却物の種類などに応じて変更して設定することができるので、過熱領域の形成による沸騰を発生させない範囲で前記基準値を大きくすることにより、真空冷却に要する時間,すなわち真空冷却時間を短縮することができる。
【0025】
この発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、つぎの実施の形態2〜実施の形態8を含む。
【0026】
(実施の形態2)
処理槽内を減圧して被冷却物を冷却する真空冷却方法であって、前記処理槽内の圧力を第一所定保持圧力に保持する第一圧力保持工程と、品温の時間変化が前記基準値以下となったかどうかを判定する品温時間変化判定工程と、前記品温時間変化判定工程により前記基準値以下が判定されると、前記所定保持圧力を小量の所定値だけ低減する保持圧力低減工程を含み、前記処理槽内の圧力を前記保持圧力低減工程により設定された第二所定保持圧力に保持する第二圧力保持工程とを有し、前記品温時間変化判定工程および前記第二圧力保持工程を繰り返して行うことを特徴とする真空冷却方法。
【0027】
(実施の形態3)
前記実施の形態1または前記実施の形態2において、前記保持圧力低減工程における前記所定値を前記品温時間変化判定工程の前記基準値以下が判定されたときの品温に応じて調整することを特徴とする真空冷却装置。
【0028】
この実施の形態3においては、前記保持圧力低減工程における前記所定値が前記品温時間変化判定工程の前記基準値以下が判定されたときの品温に応じて調整される。具体的には、前記所定値の調整は、前記電動弁の開度の調整であり、前記電動弁の動作時間を長くすると前記電動弁を閉める量が多くなる。したがって、品温がT11℃では前記動作時間をt11とし、品温がT11未満,T12(<T11)以上で前記動作時間をt12(<t11)とし、品温がT12未満,T13(<T12)以上で前記動作時間をt13(<t12)…とする制御を行う。
【0029】
この実施の形態3によれば、前記保持圧力低減工程における所定圧力の量が、品温に応じて調整されるので、前記所定保持圧力が低い領域における被冷却物の沸騰防止を効果的に行うことができる。
【0030】
(実施の形態4)
前記実施の形態2または前記実施の形態3において、品温が第一設定温度へ到達したかどうかの品温判定工程を設け、前記第一設定温度への到達が判定され、かつ前記品温時間変化判定工程において前記基準値への到達が判定されると、前記保持圧力低減工程を実行する真空冷却方法。
【0031】
(実施の形態5)
前記実施の形態4において、前記第一設定温度を調整可能とした真空冷却方法。
【0032】
この実施の形態5によれば、前記第一設定温度を高い値に設定すると、減圧速度を遅くできるので、粘度の高い液体など温度の低下により著しく粘度が高くなる被冷却物の突沸防止に好適である。また、前記第一設定温度を低く設定すると、真空冷却時間を短縮することができる。
【0033】
(実施の形態6)
前記実施の形態1〜前記実施の形態5のいずれかにおいて、前記保持圧力低減工程における所定保持圧力低減の実行時期を調整可能な遅延時間(t2)だけ遅らせる遅延工程をさらに含ませた真空冷却方法。
【0034】
この実施の形態6における前記遅延工程は、前記保持圧力低減工程の前に行われる。前記遅延時間は、調整可能であり、その時間を長くすると、放熱などにより前記処理槽内の飽和温度よりも品温を十分低くでき、つぎの保持圧力低減工程による急激な圧力低下時にも突沸を防止することができる。さらに前記遅延時間を長くするとその後の減圧無しで、品温を目的温度まで低減させることができる。
【0035】
(実施の形態7)
前記実施の形態1〜前記実施の形態6のいずれかにおいて、品温が前記第一温度より低い第二設定温度となると前記保持圧力低減工程による低減調整を最大として、前記処理槽内を減圧する冷却工程を前記第二圧力保持工程の後に含む真空冷却方法。
【0036】
この実施の形態7によれば、品温が前記第二設定温度となると急激な減圧を行い、真空冷却時間を短縮することができる。この実施の形態は、品温が一定温度まで低下すれば、被冷却物の上面と底面との温度差が大きくならず、急激な減圧をさせても沸騰が起こらないという発明者らによる知見に基づく。
【0037】
(実施の形態8)
実施の形態7において、前記第二設定温度を調整可能とした真空冷却方法。
【0038】
この実施の形態8においては、前記第二設定温度が被冷却物の特性により異なるので、被冷却物に応じた温度設定ができるようにしたものである。
【0039】
【実施例】
(第一実施例)
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の真空冷却方法を適用する実施例の真空冷却装置を説明する概略的な説明図であり、図2は、同実施例の制御器による制御手順を示すフローチャート図であり、図3は、被冷却物を温水とした場合の同実施例の真空冷却方法による被冷却部の底部の品温および処理槽内の飽和温度の時間変化を示す特性図である。
【0040】
(実施例の構成)
図1において、真空冷却装置1は、冷却される食品等(以下、「被冷却物」と云う。)2を収容する処理槽3と、この処理槽3を気密に閉鎖する扉(図示省略)と、前記処理槽3内を減圧するための減圧手段4と、前記被冷却物2の温度(以下、「品温」と云う)を検出する品温検出手段としての温度センサ5と、大気を前記処理槽3内へ導入することにより前記保持圧力を複数段階に調整する保持圧力調整手段としての電動弁6と、真空冷却運転を制御する制御器7とを備えている。
【0041】
前記被冷却物2は、水分を多く含んだ食品,たとえばスープであり、多数のパン(容器)8,8,…に入れられ、前記処理槽3内において、複数段の棚9,9,…に載置されている。
【0042】
前記減圧手段4は、前記処理槽3に接続される真空吸引ライン10に設けた真空ポンプ11,蒸気エジェクタ12,コンデンサ(熱交換器)13および逆止弁14を含む。前記蒸気エジェクタ12は、前記真空ポンプ11の上流側で前記処理槽3内を減圧する。これにより、前記減圧手段4は、2段の減圧を行う。前記コンデンサ13は、前記エジェクタ12の下流側で前記真空ポンプ11が吸引する気体を冷却する機能を備えている。
【0043】
前記温度センサ5は、品温を検出し、その温度信号を前記制御器7へ出力する。そして、前記温度センサ5の先端部(符号省略)は、前記被冷却物2のうちの1つの中へ差し込んで品温を検出する。
【0044】
前記電動弁6は、前記処理槽3と接続されている空気配管14に設けられている。前記電動弁6は、前記制御器7の出力信号により、その開度を全開から全閉までの間において複数段階に調節することで、大気の導入量を複数段階に調節する機能を備えている。前記電動弁6の開度調整機能により、前記保持圧力の低減が複数段階に調整される。そして、この空気配管14の先端には、前記処理槽3内へ導入する空気を清浄にするためのエアフィルター15が設けられている。
【0045】
前記制御器7は、前記減圧手段4,前記温度センサ5および前記電動弁6と回線16,16,…を介してそれぞれ接続されている。前記制御器7は、図2に示す処理手順に従い、前記減圧手段4の作動および前記電動弁6の作動を制御することにより、この発明の真空冷却方法を実現する。前記制御器8による前記減圧手段4の制御は、前記真空ポンプ11の起動,停止制御と、前記蒸気エジェクタ12の作動流体である蒸気の供給を制御する電磁弁(図示省略)の開閉制御と、前記コンデンサ13への作動流体(図示省略)の供給の制御とを含む。
【0046】
(実施例の動作)
前記実施例の動作を図2に示す処理手順に従い説明する。まず、前記処理槽3内へ被冷却物2としての温水を前記各パン8に入れた状態で収納し、前記扉を閉め、真空冷却運転の準備をしておく。ついで、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する)において、調整可能な設定値,すなわち品温の第一設定温度T0℃,温度変化ΔT1℃,遅延時間t2min(分),品温の前記第一設定温度より低い第二設定温度T2℃を設定し、入力する。
【0047】
前記第一設定温度T0℃は、温度変化判定工程の開始を決める品温である。この前記第一設定温度T0℃は、それ以上では、沸騰が起こっても気泡の径があまり大きくならず、飛散が起こらない温度である。そして、高粘度液などの表面張力の大きい被冷却物2に対しては、温度を高く設定する必要がある。
【0048】
前記温度変化ΔT1℃は、前記品温の時間変化(ΔT/Δt)の基準値(ΔT1/Δt1)の分母であり、時間Δt1minは固定の3分としている。前記遅延時間t2minは、前記電動弁6による前記保持圧力の調整実行を遅延させる時間である。前記第二設定温度T2℃は、前記電動弁6を全閉として前記保持圧力の低減調整を最大とする時点を決定するための品温である。なお、前記各設定値の入力は、必要に応じて行われるものである。
【0049】
図3に示す真空冷却運転においては、前記第一設定温度T0℃を50℃とし,前記温度変化ΔT1℃を1.8℃とし,前記遅延時間t2min(分)を2分とし,前記第二設定温度T2℃を15℃としている。
【0050】
ついで、S2へ移行して、真空冷却運転の開始スイッチ(図示省略)を入れると、前記電動弁6を全開から約14.5秒閉じ(弁開度は約1/2となる)、前記真空ポンプ11を作動させ、前記処理槽3内の圧力が前記電動弁6の開度に応じた所定保持圧力となるように減圧して(第一圧力保持工程)、真空冷却運転を開始する。
【0051】
この第一圧力保持工程の前半においては、前記真空ポンプ11のみ作動させ、冷却運転開始から品温が所定温度,この実施例では約45℃になるか、または冷却運転開始から設定時間,この実施例では約5分後に前記エゼクタ12の作動を開始させる。こうして、前記第一圧力保持工程は、段階的に減圧速度を速める制御を行い、品温と前記処理槽の飽和温度との差を前記過熱領域を形成しない程度の温度差(約4℃)を超えないようにしている。
【0052】
前記第一圧力保持工程においては、前記減圧手段4の真空吸引作用により、前記処理槽3内が減圧され、前記真空吸引ライン10を通して排気される。この吸引排気作用により、被冷却物から水分が蒸発することで品温が徐々に低下する。その際、前記電動弁6から外気が吸引されながら真空吸引され、前記電動弁6の開度に応じた所定保持圧力を保持するように真空冷却運転が行われることになる。この品温の低下の様子は、図3に示される。この図において曲線Aは、被冷却物の飽和温度の時間変化を示し、曲線Bは、被冷却物の底部,すなわち前記パン8内底部の品温の時間変化を示している。前記曲線AのX点は、前記エゼクタ12が作動した時点の飽和温度を示している。
【0053】
この第一圧力保持工程により、前記処理槽3内の飽和温度(圧力)は、図3の曲線Aに示すように減圧開始当初は急激に低下し、その後その低下勾配が緩くなり、前記電動弁6の開度に対応する所定保持圧力に保持される。そして、品温は、図3の曲線Bに示すように前記処理槽3の飽和温度に漸次近づいてゆく。これは、品温と被冷却物の飽和温度との差が少なくなってゆく過程を表すものである。
【0054】
こうした第一圧力保持工程中において、前記温度センサ5による検出温度が前記50℃となったかどうかの判定(第一品温時間変化判定工程)をS3において行う。S3において、NOが判定されると前記電動弁6の開度を変えることなく前記第一圧力保持工程が続行され、YESが判定されると、処理は、S4へ移行する。
【0055】
S4においては、品温の時間変化(ΔT/Δt)が前記基準値(ΔT1/Δt1)以下となったかどうか,すなわち3分間における品温の変化が1.8℃より小さくなったかどうかを判定する(第二品温時間変化判定工程であって、前記第一品温時間変化判定工程と同じ)。S4において、NOが判定されると、処理は、S4にとどまり、前記第一圧力保持工程が続行され、YESが判定されると、処理は、S5ヘ移行する。このS4におけるYESの判定は、品温時間変化が少なくなり、このまま前記第一圧力保持工程を続行すると、真空冷却運転の長期化をもたらすことを意味する。
【0056】
S5においては前記遅延時間(t2)の2分が経過したかどうかが判定される(第一遅延時間判定工程)。S5で、NOが判定されると、前記第一冷却工程が続けられ、YESが判定されると、S6へ移行する。
【0057】
S6においては、前記電動弁6を0.4秒だけ閉じることで、その開度を少し小さくし、前記所定保持圧力を少し低くして(保持圧力低減整工程)、前記処理槽3内を低減された保持圧力となるように減圧することにより、真空冷却運転(第二圧力保持工程)を行う。前記電動弁6による保持圧力の調整時点は、図3のP点に示される。前記P点直後で前記処理槽3内の圧力低下の勾配が急となっていることが分かる。この保持圧力の調整により、再び品温と飽和圧力との差が大きくなり、被冷却物からの水分の蒸発が活発となって、品温低下が促進される。
【0058】
S6の保持圧力低減工程後、処理は、S7へ移行し、保持圧力調整の実行後、所定の遅延時間(t3:この実施例では、固定の値で、80sec)が経過したかどうかを判定する(第二遅延時間判定工程)。S7で、NOが判定されると、S7にとどまり、YESが判定されると、S8へ移行し、品温が前記第二設定温度の15℃に到達したかどうかの判定(第二品温判定工程)を行う。
【0059】
S8において、NOが判定されると、処理は、S4へ戻り、前記第一設定温度への到達が判定されるまで、前記第二圧力保持工程が行われる。この第二圧力保持工程において、前記処理槽3内の圧力低下の勾配は、図3のP点以降に示すように、保持圧力調整直後では急であるが、その後徐々に緩やかとなり、所定の圧力に保持される。そして品温と飽和温度との差が少なくなると、品温の時間変化(ΔT/Δt)の値も小さくなり、その値が再び前記第一設定値となると、S4にてYESが判定される。
【0060】
すると、前記したS5の前記第一遅延時間判定工程−S6の前記保持圧力低減工程−S8の前記第二品温判定工程−S4の前記品温時間変化判定工程が、前記第二品温判定工程による前記第二設定温度への到達判定まで繰り返し行われることになる。この工程の繰り返しは、前記品温の時間変化が小さくなると、保持圧力を少し低減し、再び前記品温の時間変化が小さくなると、保持圧力を少し低くするという動作を繰り返すものである。図3に示す例においては、Q点において再びS6の保持圧力の低減が行われている。
【0061】
前記遅延時間(t3)を設けた理由は、つぎの通りである。S6の保持圧力の低減を行っても、直ちに前記品温の時間変化が変化しない。よって、前記遅延時間(t3)を設けないと、S6の処理後、S8経由で直ちにS4の判定を行うと、YESが判定され、保持圧力調整の効果が現われる前に、再びS6の保持圧力の調整が行われる。これを避けるために前記遅延時間(t3)を設けている。
【0062】
S8において、前記第二設定温度への到達が判定されると、処理はS9へ移行する。S9では、前記電動弁6を全閉,すなわち保持圧力低減の調整を最大の状態で前記冷却槽3内を減圧し、真空冷却運転を行う(急冷却運転)。図3の例では、R点が急冷却運転の開始時点を示している。
【0063】
なお、前記実施例では、前記電動弁6の特性上2回目の開度調整でほとんど閉じてしまい、前期第二設定温度まで冷却されているが、前記電動弁6を全閉までの時間が長いものを用いれば、僅かずつの保持圧力低減を行うことができ、S4からS7までの工程の繰り返し回数を増加できる。
【0064】
(実施例の効果)
前記実施例によれば、品温の時間変化が小さくなると、保持圧力を低減し、再び品温の時間変化が小さくなると、保持圧力を低減するという動作を繰り返し行うように構成しているので、品温と飽和温度との差を大きくすることなく、沸騰の主原因である被冷却物の過熱領域の発生を抑制できる。その結果、前記パン8からの被冷却物の飛散を防止できる。また、前記品温の時間変化が小さくなると、保持圧力を低くするので、真空冷却運転時間を短縮できる。
【0065】
また、前記実施例によれば、前記第一設定温度T0℃,前記温度変化ΔT1℃,前記遅延時間t2min(分),前記第二設定温度T2℃を調整することができるので、被冷却物の種類が異なる場合,被冷却物の量が異なる場合,前記パン8への被冷却物の収容状態(蓋の有る無しや前記パン8の深さなど)が異なる場合にであっても、前記設定値の一つまたは複数の値の調整により、沸騰を抑制した真空冷却運転を行うことができる。
【0066】
さらに、前記実施例によれば、圧力センサを用いることなく、突沸やそれに伴なう飛散防止、あるいは型くずれを防止し、被冷却物に合った適切な冷却が行えるものである。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、突沸やそれに伴なう飛散防止、あるいは型くずれを防止し、被冷却物に合った適切な冷却が行えるなど多大なる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の真空冷却方法を適用する実施例の真空冷却装置を説明する概略的な説明図である。
【図2】同実施例の制御器による制御手順を示すフローチャート図である。
【図3】被冷却物を温水とした場合の同実施例の真空冷却方法による被冷却部の底部の品温および処理槽内の飽和温度の時間変化を示す特性図である。
【符号の説明】
2 被冷却物
3 処理槽
4 減圧手段
5 温度センサ
6 電動弁

Claims (2)

  1. 処理槽3内を減圧して被冷却物2を冷却する真空冷却方法であって、前記処理槽3内の圧力が所定保持圧力となるように前記処理槽3内の減圧を行い、前記被冷却物2の温度の時間変化が基準値以下となったことを判定することで前記被冷却物2の温度が前記保持圧力に等しい飽和温度にほぼ近づいたことを判定し、前記処理槽3の圧力が前記所定保持圧力から所定値低減した所定保持圧力となるように前記処理槽3内の減圧を行い、前記被冷却物2の温度の時間変化の判定と前記所定保持圧力の低減による減圧とを繰り返して行うことを特徴とする真空冷却方法。
  2. 前記基準値を調整可能とした請求項1に記載の真空冷却方法。
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