JP2004218610A - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】分離した潤滑用オイルをオイル分離手段に溜まり難くすることができる圧縮機を提供する。
【解決手段】リヤハウジング4には台座部42の環状ポート51bとオイル貯留室35とを連通する戻し通路としてのガス戻し通路54が形成されている。ガス戻し通路54はハウジングの径方向に延びており、透孔36と略平行状態となっている。また、ガス戻し通路54は透孔36よりも小径(例えば約1mm程度)に設定され、オイル貯留室35に入り込んだ冷媒ガスを環状ポート51b(吐出経路)に戻す通路として機能する。
【選択図】 図2
【解決手段】リヤハウジング4には台座部42の環状ポート51bとオイル貯留室35とを連通する戻し通路としてのガス戻し通路54が形成されている。ガス戻し通路54はハウジングの径方向に延びており、透孔36と略平行状態となっている。また、ガス戻し通路54は透孔36よりも小径(例えば約1mm程度)に設定され、オイル貯留室35に入り込んだ冷媒ガスを環状ポート51b(吐出経路)に戻す通路として機能する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルをオイル分離手段で分離し、そのオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に循環する圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
斜板式圧縮機等の圧縮機では、斜板を支持する駆動軸や駆動軸の回動時に往復動するピストン等に潤滑用オイルが浸されているが、そのオイルの一部は冷媒ガス中にミスト状になって含まれている。従って、圧縮機内部で圧縮された冷媒ガスが外部冷却回路に吐出循環される際に、冷媒ガスに含まれるミスト状の潤滑用オイルも外部冷却回路に吐出され、このオイルが外部冷却回路の蒸発器の内壁等に付着して、熱交換の妨げになってしまう。
【0003】
そこで、冷媒ガス中に含まれる潤滑用オイルを冷媒ガスから分離して、分離したオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に戻すオイルセパレータが例えば特許文献1等に開示されている。このオイルセパレータではオイル分離室で分離された潤滑用オイルをオイル貯留室に一時貯留し、微小隙間をもって入口を開閉するリード弁からオイル戻し通路を介して、オイル貯留室に貯まったオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に戻して潤滑に使用している。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−61680号公報(第2−5頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、冷媒ガスの吐出容量が多い場合にはオイル分離室で分離する潤滑用オイルも多くなる。しかし、オイル戻し通路を通してオイル貯留室に流れるオイルは決まった所定量しか流れ出ず、分離する潤滑用オイルが多い場合にはそのオイルがオイル分離室に留まってしまう問題が起こり得る。このオイル溜まりはオイル分離室の室内体積が小さい場合に顕著になり、充分な室内面積を確保しようとすると圧縮機の大型化にも繋がることから、これを解消したい要望もあった。
【0006】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、分離した潤滑用オイルをオイル分離手段に貯まり難くすることができる圧縮機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明では、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通する戻し通路を備えた。
【0008】
この発明によれば、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通し、オイル貯留室の冷媒ガスを吐出経路に戻す戻し通路を形成した。このため、吐出経路上に生じる差圧によって冷媒ガスには透孔、オイル貯留室及び戻し通路を通って吐出経路に戻るガス流れが生じる。従って、オイル分離手段で分離した潤滑用オイルをこの冷媒ガスの流れによって透孔を介して直ぐにオイル貯留室に送ることが可能となり、オイル分離手段でのオイル溜まりが抑止される。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記吐出経路のうち前記オイル分離手段よりも下流側に配置され、前記吐出経路の径を小さくすることによってその前後間に所定の差圧を発生させる差圧発生手段を備え、前記戻し通路は前記差圧発生手段の下流側における前記吐出経路と前記オイル貯留室とを連通する。
【0010】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、オイル分離手段よりも下流側の吐出経路に所定の差圧発生手段を設けたので、差圧発生手段の前後間には大きな差圧が生じる。従って、オイル分離手段、オイル貯留室及び戻し通路を通って吐出経路に戻るガス流れが大きくなり、分離後の潤滑用オイルが直ぐにオイル貯留室に送られることになってオイル分離手段でのオイル溜まりが一層生じ難くなる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、オイル分離後の冷媒ガスが流れる前記吐出経路のうち少なくとも前記戻し通路の形成位置までは、前記オイル貯留室の上面に沿った向きである。
【0012】
この発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、オイル分離後の冷媒ガスが流れる吐出経路のうち少なくとも戻し通路の形成位置までは、オイル貯留室の上面に沿った向きであるので、例えば吐出経路をオイル貯留室の上面に対し垂直向きとする場合に比べて戻し通路の長さが短く済み、これに伴って圧縮機の小型化が図れる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は3に記載の発明において、前記オイル分離手段を構成し、前記冷媒ガスを外周面に沿って案内して旋回させることによって該冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するパイプ部と、前記パイプ部の内部の冷媒ガスを導入する位置に配置された前記差圧発生手段としての絞り、及び前記絞りからの冷媒ガスが流れるとともに前記戻し通路に連通された流通路を有する台座部と、前記流通路の下流側に位置して吐出経路上での冷媒ガスの逆流を抑制する逆止弁とからなる逆止弁ユニットを備えた。
【0014】
この発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、逆止弁、台座部及びパイプ部をユニット化された逆止弁ユニットした逆止弁ユニットを用いるので、この逆止弁ユニットを圧縮機に取り付けるだけで済み、取付作業が簡単になる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明において、外部駆動源により駆動する駆動軸によって回転する斜板を収容したクランク室と、そのクランク圧を調節して冷媒ガスの吐出容量を制御する第1制御手段と、冷媒ガスの吐出経路上の差圧を検出して、その差圧の圧力差の変動に基づきこの圧力変動を打ち消す側に前記第1制御手段を制御して前記吐出容量を調節する第2制御手段とを備え、前記第2制御手段は前記差圧を前記差圧発生手段の前後間から導入する。
【0016】
この発明によれば、請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、第2制御手段は差圧を差圧発生手段の前後間から導入する構成であるので、冷媒ガスのガス流れを生じるための差圧を第2制御弁の差圧検知にも利用可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の圧縮機を可変容量型斜板式圧縮機に具体化した第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0018】
図1は、圧縮機1の模式断面図である。容量可変型斜板式圧縮機(以下、単に圧縮機と記す)1はシリンダブロック1aと、その前端に接合固定されたフロントハウジング2と、シリンダブロック1aの後端に弁形成体3を介して接合固定されたリヤハウジング4とを備えている。これらシリンダブロック1a、フロントハウジング2及びリヤハウジング4が、圧縮機のハウジングを構成している。シリンダブロック1aとフロントハウジング2とで囲まれた領域には低圧部としてのクランク室5が区画されている。
【0019】
クランク室5には駆動軸6が回転可能に支持されている。クランク室5において駆動軸6上にはラグプレート7が一体回転可能に固定されている。クランク室5には駆動軸6にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持され、ヒンジ機構8を介してラグプレート7に連結された斜板9が収容されている。斜板9はヒンジ機構8を介したラグプレート7とのヒンジ連結及び駆動軸6の支持によってラグプレート7及び駆動軸6と同期回転可能で、駆動軸6の軸線方向へのスライド移動を伴って駆動軸6に対し傾動可能となっている。
【0020】
駆動軸6はその前端部において動力伝達機構10を介して外部駆動源としての車両のエンジン11に作動連結されている。動力伝達機構10は、外部からの電気制御によって動力の伝達/遮断を選択可能なクラッチ機構(例えば電磁クラッチ)であってもよく、又は、そのようなクラッチ機構を持たない常時伝達型のクラッチレス機構(例えばベルト/プーリの組合せ)であってもよい。なお、本例ではクラッチレスタイプの動力伝達機構10を採用している。
【0021】
シリンダブロック1aには周方向に沿って等間隔に複数(1つのみ図示)のシリンダボア12が駆動軸6を取り囲むように貫通形成されている。各シリンダボア12には片頭型のピストン13が軸方向に沿って往復動可能に収容されている。シリンダボア12の前後開口は弁形成体3及びピストン13によって閉鎖され、シリンダボア12内にはピストン13の往復動に応じて体積変化する圧縮室が区画されている。ピストン13はシュー14を介して斜板9の外周部に係留され、駆動軸6の回転運動が斜板9及びヒンジ機構8により直線運動に変換されて往復動する。
【0022】
弁形成体3とリヤハウジング4との間には、径方向外側寄りに位置する吸入室15と、それに囲まれた吐出室16とが区画形成されている。吐出室16の圧力(吐出圧Pd)は吸入室15の圧力(吸入圧Ps)よりも高くなる。弁形成体3には各シリンダボア12に対応して吸入ポート17及び同ポート17を開閉する吸入弁18、並びに吐出ポート19及び同ポート19を開閉する吐出弁20が形成されている。吸入ポート17を介して吸入室15とシリンダボア12とが連通され、吐出ポート19を介してシリンダボア12と吐出室16とが連通されている。
【0023】
そして、各ピストン13が上死点位置から下死点側へ往動したときに吸入弁18が開状態となり、吸入室15内の冷媒ガスが吸入ポート17及び吸入弁18を介してシリンダボア12に吸入される。一方、下死点位置に位置したピストン13が上死点側に復動したときにシリンダボア12内の冷媒ガスが所定圧まで圧縮され、この復動に伴って吐出弁20が開状態となって、圧縮した冷媒ガスが吐出ポート19及び吐出弁20を介して吐出室16に吐出される。
【0024】
圧縮機1には圧縮後の冷媒ガスを用いて車室内を冷却する外部冷媒回路21が接続されている。外部冷媒回路21は例えば凝縮器22、温度式膨張弁23及び蒸発器24を備えている。圧縮機1は吐出室16から放出通路25及び吐出パイプ26を介して圧縮した冷媒ガスを外部冷媒回路21に送り、熱吸収後の冷媒ガス(冷媒液)を吸入配管としての流路管27を介して吸入室15に取り込み、この吸入・圧縮・吐出の一連動作を繰り返し行う。ここで、放出通路25及び吐出パイプ26は吐出経路の一部を構成している。
【0025】
シリンダブロック1a及びリヤハウジング4には、吐出室16とクランク室5とを連通する給気通路28が貫通形成されている。給気通路28の経路上にはクランク室5の圧力(クランク圧Pc)を制御する制御弁29が配設されている。弁形成体3には給気通路28が位置する部位にその前後の経路断面積よりも内径が小さく設定された固定絞り30が形成されている。また、シリンダブロック1aにはクランク室5と吸入室15とを連通する抽気通路31が貫通形成されている。
【0026】
制御弁29は内部の弁開度を調節することで、給気通路28を介したクランク室5への高圧な冷媒ガスの導入量と、抽気通路31を介したクランク室5からの冷媒ガスの導出量とのバランスを制御してクランク圧Pcを設定している。このクランク圧Pcの変更に応じて、ピストン13を介してのクランク圧Pcとシリンダボア12の内圧との差が変更され、斜板9の傾斜角度が変更される結果、ピストン13のストローク、即ち圧縮機1の吐出容量が調節される。
【0027】
図2は、オイルセパレータ32の模式断面図である。図1及び図2に示すようにリヤハウジング4にはハウジングの径方向に延びるようにオイル分離室34が形成されている。リヤハウジング4には圧縮機1の取付状態における下方位置にオイル貯留室35が形成されている。オイル分離室34とオイル貯留室35との間には両室を連通する透孔36が形成されている。また、オイル貯留室35の底部にはオイル貯留室35とクランク室5とを連通するオイル戻し通路37が形成されている。
【0028】
リヤハウジング4にはオイル分離室34と吐出室16とを連通する流入通路38が形成されている。また、リヤハウジング4にはオイル分離室34を径方向外側(図2では右側)に開口するように吐出孔39が形成され、この吐出孔39には内部を封止するための封止部39aが固着されている。シリンダブロック1a及びリヤハウジング4には吐出孔39の最下流位置と吐出パイプ26の内部とを連通する放出通路25が形成されている。流入通路38、オイル分離室34及び吐出孔39は吐出経路の一部を構成している。
【0029】
吐出孔39には吐出経路での冷媒ガスの逆流を防ぐ逆止弁ユニット40が取り付けられている。逆止弁ユニット40は逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を備え、これら部材41〜43が一体的に固着されることでユニット化されている。逆止弁41は片側が開口した円筒形状のキャップ44と略円筒形状のケース部45とを備え、ケース部45の基端が台座部42に、先端がキャップ44により閉じられることでケース部45の内部には弁室46が形成されている。なお、オイル分離室34及びパイプ部43がオイル分離手段を構成する。
【0030】
ケース部45には弁室46とその外部を連通する連通孔47が形成されている。弁室46には略有底円筒形状の弁体49が軸方向に相対移動可能に収容されている。キャップ44の内面と弁体49との間には弁体49を弁閉方向に付勢する付勢バネ50が介装され、付勢バネ50の一端はキャップ44の内面のバネ座44aに取着され、その他端は弁体49の内面に固定される。
【0031】
台座部42の先端面は弁体49のシール面49aが当接可能であり、この当接部位が弁座48となっている。台座部42の内部には軸方向に延びる弁孔51が形成され、弁孔51に対応する位置に十字ポート51aが形成されている。また、吐出孔39の内壁面とこれに圧入された台座部42の外周面との間には、台座部42の外周面に周方向全域に亘る周溝を設けることで十字ポート51aの4つの端部と通じた環状ポート51bが形成されている。逆止弁ユニット40は台座部42を吐出孔39に圧入することで圧縮機1に取り付けられる。
【0032】
台座部42の弁孔51、逆止弁41の弁室46及び連通孔47は吐出経路の一部を構成し、図2の右方向が冷媒ガスの吐出方向となる。また、キャップ44にはバネ座44aに対応する位置に開口孔44bが形成され、吐出孔39側の圧力をこの開口孔44bから弁室46に導入している。弁体49はシール面49aに作用する吐出室16側の圧力と背面に作用する凝縮器22側の圧力との差に基づく荷重と、付勢バネ50の付勢力とのバランスによって弁座48に対して位置決めされる。なお、弁孔51、十字ポート51a及び環状ポート51bが流通路を構成する。
【0033】
例えば、吐出圧力が十分に高い場合には、弁体49が弁座48から離間して開弁することで外部冷媒回路21を経由する冷媒循環が許容される。逆に圧縮機1の吐出容量が最小となって吐出圧力が低い場合には、弁体49が弁座48に当接して外部冷媒回路21を経由する冷媒循環が遮断される。なお、逆止弁41の主たる役目は外部冷媒回路21の凝縮器22側から吐出室16への冷媒の逆流を防止することにある。しかし、本例では動力伝達機構10にクラッチレスタイプのものを用いるために、前述した役目(圧縮機の吐出容量に応じて冷媒循環回路を開閉する)も逆止弁41が兼ねている。
【0034】
台座部42の基端面にはオイル分離室34に位置した略無底円筒形状のパイプ部43が固定されている。パイプ部43はオイル分離室34に流れ込んだ冷媒ガスをその外周面に当接させ、外周面に沿って案内することによって先端側に向けて渦流を発生させることでオイルを遠心分離する機能を担う。オイル分離後の冷媒ガスはパイプ部43の内部を通って逆止弁41に流れ込む。また、パイプ部43の軸方向中間には先端に向かうに従って径が小さくなるテーパ状とすることで傾斜面43aが形成され、オイル分離室34に流入した冷媒ガスを傾斜面43aによってパイプ部43の先端側に向かい易くしている。
【0035】
台座部42にはパイプ部43の内部と弁孔51との間に絞り53が形成され、オイル分離室34、パイプ部43の内部空間及び絞り53も吐出経路の一部を構成している。絞り53はパイプ部43の内径及び弁孔51の内径よりも小さい径に設定され、パイプ部43の内部と弁孔51との間で吐出経路上に差圧ΔPを生じる差圧発生手段の役目を担っている。また、パイプ部43の内部及び吐出孔39の内部に存在する吐出経路は、オイル貯留室35の上面35aに沿った向き(略平行状態)となっている。
【0036】
リヤハウジング4には台座部42の環状ポート51bとオイル貯留室35とを連通する戻し通路としてのガス戻し通路54が形成されている。ガス戻し通路54はハウジングの径方向に延びており、透孔36と略平行状態となっている。また、ガス戻し通路54は透孔36よりも小径(例えば約1mm程度)に設定され、オイル貯留室35に入り込んだ冷媒ガスを環状ポート51b(吐出経路)に戻す通路として機能する。
【0037】
次に、前記のように構成された圧縮機の作用について説明する。
まず、吐出室16から圧縮された冷媒ガスが吐出されると、その冷媒ガスが流入通路38を通ってオイル分離室34に流れ込む。オイル分離室34に流れ込んだ冷媒ガスはパイプ部43の外周面に衝突し、その外周面を周方向に沿ってパイプ部43の先端側に旋回して流れる。このとき、冷媒ガスがパイプ部43の外周面に衝突、又はパイプ部43の外周面に沿って旋回することで、冷媒ガスに含まれるミスト状のオイルが冷媒ガスから分離する。
【0038】
冷媒ガスから分離したオイルはオイル分離室34の底部分に貯まり、透孔36の入口からオイル貯留室35に流れ込む。オイル貯留室35のオイルはオイル戻し通路37からクランク室5や流路管27に戻され、圧縮機1の摺動部分の潤滑にこのオイルが利用される。また、オイルが分離した後の冷媒ガスはパイプ部43の内部、台座部42の弁孔51及び逆止弁41を通過し、吐出パイプ26を流れて外部冷媒回路21に供給される。
【0039】
ここで、冷媒ガスの吐出経路とオイル貯留室35との間にはガス戻し通路54が形成されているので、オイル分離室34と吐出経路との間には絞り53の前後間に生じる差圧ΔPによって図2の破線で示すガスの流れが生じる。従って、オイル分離室34に分離したオイルはオイル分離室34に貯まることなく、このガスの流れに乗って直ちにオイル貯留室35に流れ込む。このため、冷媒ガスの吐出量が多い場合にはオイル分離室34で多量のオイルが分離されることになるが、このような状況下であっても分離したオイルは直ちにオイル貯留室35に流れるので、オイルがオイル分離室34に貯まり難くなる。
【0040】
従って、この実施形態では以下のような効果を得ることができる。
(1)逆止弁ユニット40の台座部42に絞り53を設け、この絞り53の下流側に位置する弁孔51とオイル貯留室35との間にガス戻し通路54を形成した。従って、オイルセパレータ32には絞り53の前後間に生じる差圧ΔPによって図2の破線に示す冷媒ガスの流れが生じるので、この流れによってオイル分離室34で分離したオイルを直ぐにオイル貯留室35に送ることができ、オイル分離室34でのオイル溜まりを抑止できる。
【0041】
(2)オイル分離室34で分離したオイルは直ちにオイル貯留室35に流れるので、オイル溜まり分を考慮してオイル分離室34を大きく確保する必要がない。従って、オイル分離室34を小さくすることができ、これに伴い圧縮機1の小型化も図れる。
【0042】
(3)台座部42に絞り53を設けたので、絞り53の前後間には大きな差圧ΔPが生じる。従って、図2の破線で示すガスの流れを大きくでき、オイル分離室34でのオイル溜まりを一層生じ難くできる。
【0043】
(4)吐出孔39はハウジングの軸方向に沿って延びるとともに、流入通路38(放出パイプ25)よりも径方向内側寄りに配置されてので、例えば吐出孔39を縦向きに配置する場合に比べてガス戻し通路54の長さが短く済む。
【0044】
(5)逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を一体物としてユニット化し、この逆止弁ユニット40を圧縮機1に取り付ける構成とした。従って、例えば逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を圧縮機に各々設ける場合に比較して、圧縮機を大幅に設計変更する必要がない。また、この逆止弁ユニット40を圧縮機1の吐出孔39に圧入するだけなので、その取付作業が簡単で済む。
【0045】
(6)台座部42には弁孔51に通じる十字ポート51aを設け、台座部42の外周面には十字ポート51aと連通した環状ポート51bを設けている。従って、逆止弁ユニット40を吐出孔39に圧入するときに、その軸線回りのどの角度位置に取り付けても、弁孔51とガス戻し通路54とが連通状態となり、これに伴い逆止弁ユニット40の取付作業が楽になる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図3に従って説明する。本例は第1実施形態と比較してオイルセパレータで生じる差圧を用いて制御弁29を制御する構成が異なっており、他の基本的な部分については同じであるので、同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図3は制御弁29の模式断面図である。制御弁29は給気通路28の開度を調節する弁体55と、弁体55の図面上側に作動連結された感圧機構56と、弁体55の図面下側に作動連結された電磁アクチュエータ57とをバルブハウジング58内に備えてなる。バルブハウジング58内には給気通路28の一部を構成する弁孔58aが形成されており、バルブハウジング58内において弁孔58aの開口周囲は弁座58bをなしている。弁体55は下動して弁座58bから離間することで弁孔58aの開度を増大し、逆に上動して弁座58bに近接することで弁孔58aの開度を減少させる。
【0048】
感圧機構56は、バルブハウジング58内の上部に形成された感圧室56aと、感圧室56a内に収容されたベローズ56bとからなっている。感圧室56aにおいてベローズ56bの内空間には、第1検圧通路59を介して絞り53の上流側監視点P1の圧力PdHが導かれている。感圧室56aにおいてベローズ56bの外空間には、第2検圧通路60を介して下流側監視点P2の圧力PdLが導かれている。
【0049】
電磁アクチュエータ57には、固定鉄心57a、可動鉄心57b及びコイル57cが備えられており、固定鉄心57aはバルブハウジング58の内面に固着されている。可動鉄心57bには弁体55が作動連結され、固定鉄心57aと可動鉄心57bとの間には可動鉄心57bを固定鉄心57aに対し離間側に付勢する付勢バネ57dが介装されている。なお、弁体55と電磁アクチュエータ57が第1制御手段を構成し、感圧機構56が第2制御手段を構成している。
【0050】
コイル57cには冷房負荷等に応じた制御コンピュータたるエアコンECU61の指令に基づき、駆動回路62から電力が供給される。このとき、駆動回路62からコイル57cへの電力供給量に応じた大きさの電磁力(電磁吸引力)が固定鉄心57aと可動鉄心57bとの間に発生し、この電磁力によって可動鉄心57bが上方に移動する。コイル57cへの通電制御は印加電圧を調整することでなされ、この印加電圧の調整にはPWM(パルス幅変調)制御が採用されている。
【0051】
制御弁29の作動を以下に説明すると、まずコイル57cへの通電がない場合(デューティ比Dt=0%)は、ベローズ56b自身が有するバネ弾性に基づく下向き付勢力により、弁体55が最下動位置に配置されて弁孔58aの開度が全開となる。このため、クランク室5の内圧は、その時おかれた状況下において取り得る最大値となり、このクランク室5の内圧と圧縮室の内圧とのピストン13を介した差は大きくて、斜板9は傾斜角度を最小として圧縮機1の吐出容量は最小となっている。
【0052】
圧縮機1の吐出容量が最小では吐出圧力が低くなり、逆止弁41が閉じられる。従って、外部冷媒回路21を経由した冷媒循環が停止される。このため、圧縮機1による冷媒ガスの圧縮が継続されたとしても空調(冷房)が行われることはなく、圧縮機1は空調機能的にオフされた状態となっている。
【0053】
また、制御弁29においてコイル57cに対しデューティ比可変範囲の最小デューティ比Dt(min)(>0%)以上の通電がなされたとする。このとき、可動鉄心57bが弁体55に作用させる上向きの電磁力と、ベローズ56bが弁体55に作用させる二点間差圧ΔPに基づく下向き押圧力及びベローズ56bのバネ弾性に基づく下向き付勢力とが対抗する。そして、これら上下付勢力がバランスする位置に弁体55が位置決めされる。
【0054】
例えば、エンジン11の回転速度が減少して冷媒循環回路の冷媒流量が減少すると、ベローズ56bが弁体55に作用させる差圧ΔPに基づく力が減少する。従って、弁体55が上動して弁孔58aの開度が減少し、クランク室5の内圧が低下傾向となる。このため、斜板9が傾斜角度増大方向に傾動し、圧縮機の吐出容量は増大される。圧縮機の吐出容量が増大すれば冷媒循環回路における冷媒流量も増大し、差圧ΔPは増加する。
【0055】
逆に、エンジン11の回転速度が増大して冷媒循環回路の冷媒流量が増大すると、ベローズ56bが弁体55に作用させる差圧ΔPに基づく力が増大する。従って、弁体55が下動して弁孔58aの開度が増加し、クランク室5の内圧が増大傾向となる。このため、斜板9が傾斜角度減少方向に傾動し、圧縮機1の吐出容量は減少される。圧縮機の吐出容量が減少すれば冷媒循環回路における冷媒流量も減少し、差圧ΔPは減少する。
【0056】
また、例えば、コイル57cへの通電デューティ比Dtを大きくして弁体55に作用する電磁力を大きくすると、弁体55が上動して弁孔58aの開度が減少し、圧縮機1の吐出容量が増大される。従って、冷媒循環回路における冷媒流量が増大し、差圧ΔPも増大する。逆に、コイル57cへの通電デューティ比Dtを小さくして弁体55に作用する電磁力を小さくすると、弁体55が下動して弁孔58aの開度が増加し、圧縮機の吐出容量が減少する。従って、冷媒循環回路における冷媒流量が減少し、差圧ΔPも減少する。
【0057】
つまり、制御弁29はコイル57cへの通電デューティ比Dtによって決定された差圧ΔPの制御目標(設定差圧)を維持するように、この差圧ΔPの変動に応じて感圧機構56が内部自律的に弁体55を位置決めする構成となっている。また、この設定差圧はコイル57cへの通電デューティ比Dtを調節することで外部から変更可能となっている。
【0058】
本例では第1実施形態(1)〜(6)と同様な効果が得られる他に、次の効果が得られる。
(7)図2に示すガスの流れが発生するように逆止弁ユニット40に設けた絞り53の前後の監視点P1,P2の各圧力PdH,PdLを制御弁29の感圧機構56に導入する構成であるので、ガス流れを生じるための差圧ΔPを制御弁29の差圧検知にも利用することができる。
【0059】
なお、実施形態は前記に限定されず、例えば次の態様に変更してもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、必ずしも絞り53を設ける必要はない。例えばガス戻し通路54を下流側寄りに設けることによって、オイル貯留室35内の冷媒ガスを吐出経路側に戻せるような差圧ΔPが吐出経路上に生じれば、絞り53を設けずにガス戻し通路54のみを形成する構成でもよい。
【0060】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁41、台座部42及びパイプ部43がユニット化された逆止弁ユニット40を用いる構成に限定されない。例えばこれら部材41〜43が別体である構成でもよいし、または台座部42とパイプ部43が一体型で逆止弁41がこれと別体である構成としてもよい。
【0061】
○ 第1及び第2実施形態において、オイルセパレータ32はこの種の構造のものに限らず、冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離可能であれば、特にその構造は限定されない。
【0062】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁ユニット40は圧縮機1の軸方向に沿った横向きに配置される構成に限らず、例えば縦向きに取り付ける構成でもよい。
【0063】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁41を必ずしも設ける必要はなく、圧縮機1をクラッチ式として逆止弁41を省略してもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、差圧発生手段は絞り53に限らず、オイル貯留室35内の冷媒ガスを吐出経路側に戻せるような差圧ΔPを吐出経路上に生じさせることが可能なものであれば、その構成は特に限定されない。
【0064】
○ 第1及び第2実施形態において、冷媒ガスから分離したオイルの戻し先はクランク室5に限らず、例えば吸入室15や流路管27でもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、圧縮機1は可変容量型圧縮機に限らず、例えばスクロール型等の他の構成の圧縮機を用いてもよい。
【0065】
前記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(1)オイル分離手段によって分離された潤滑用オイルをオイル分離室に貯留し、分離した潤滑用オイルをオイル戻し通路を介して圧縮機内の低圧部又は吸入配管に戻す圧縮機に取り付けられる逆止弁ユニットであって、前記オイル分離手段を構成し、前記冷媒ガスを外周面に沿って案内して旋回させることによって該冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するパイプ部と、前記パイプ部の内部の冷媒ガスを導入する位置に配置された前記差圧発生手段としての絞り、及び前記絞りからの冷媒ガスが流れるとともに前記オイル貯留室に通じた戻し通路に連通された流通路を有する台座部と、前記流通路の下流側に位置して吐出経路上での冷媒ガスの吐出方向に対する逆流を抑制する逆止弁とからなる逆止弁ユニット。
【0066】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通し、オイル貯留室の冷媒ガスを吐出経路に戻す戻し通路を設けたので、透孔、オイル貯留室及び戻し通路を通る冷媒ガスの流れが生じ、分離した潤滑用オイルがこのガス流れによって直ぐにオイル貯留室に送られ、オイル分離手段でのオイル溜まりを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態における圧縮機の模式断面図。
【図2】オイルセパレータを拡大して示す模式断面図。
【図3】第2実施形態における制御弁の模式断面図。
【符号の説明】
1…圧縮機、5…低圧部としてのクランク室、6…駆動軸、9…斜板、11…外部駆動源としてのエンジン、27…吸入配管としての流路管、34…吐出経路及びオイル分離手段を構成するオイル分離室、35…オイル貯留室、35a…上面、36…透孔、37…オイル戻し通路、40…逆止弁ユニット、41…逆止弁、42…台座部、43…オイル分離手段を構成するパイプ部、51…吐出経路及び流通路を構成する弁室、51a…吐出経路及び流通路を構成する十字ポート、51b…吐出経路及び流通路を構成する環状ポート、53…吐出経路を構成するとともに差圧発生手段としての絞り、54…戻し通路としてのガス戻し通路、55…第1制御手段を構成する弁体、56…第2制御手段としての感圧機構、57…第1制御手段を構成する電磁アクチュエータ、Pc…クランク圧、ΔP…差圧。
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルをオイル分離手段で分離し、そのオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に循環する圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
斜板式圧縮機等の圧縮機では、斜板を支持する駆動軸や駆動軸の回動時に往復動するピストン等に潤滑用オイルが浸されているが、そのオイルの一部は冷媒ガス中にミスト状になって含まれている。従って、圧縮機内部で圧縮された冷媒ガスが外部冷却回路に吐出循環される際に、冷媒ガスに含まれるミスト状の潤滑用オイルも外部冷却回路に吐出され、このオイルが外部冷却回路の蒸発器の内壁等に付着して、熱交換の妨げになってしまう。
【0003】
そこで、冷媒ガス中に含まれる潤滑用オイルを冷媒ガスから分離して、分離したオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に戻すオイルセパレータが例えば特許文献1等に開示されている。このオイルセパレータではオイル分離室で分離された潤滑用オイルをオイル貯留室に一時貯留し、微小隙間をもって入口を開閉するリード弁からオイル戻し通路を介して、オイル貯留室に貯まったオイルを圧縮機内の低圧部又は吸入配管等に戻して潤滑に使用している。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−61680号公報(第2−5頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、冷媒ガスの吐出容量が多い場合にはオイル分離室で分離する潤滑用オイルも多くなる。しかし、オイル戻し通路を通してオイル貯留室に流れるオイルは決まった所定量しか流れ出ず、分離する潤滑用オイルが多い場合にはそのオイルがオイル分離室に留まってしまう問題が起こり得る。このオイル溜まりはオイル分離室の室内体積が小さい場合に顕著になり、充分な室内面積を確保しようとすると圧縮機の大型化にも繋がることから、これを解消したい要望もあった。
【0006】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、分離した潤滑用オイルをオイル分離手段に貯まり難くすることができる圧縮機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため請求項1に記載の発明では、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通する戻し通路を備えた。
【0008】
この発明によれば、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通し、オイル貯留室の冷媒ガスを吐出経路に戻す戻し通路を形成した。このため、吐出経路上に生じる差圧によって冷媒ガスには透孔、オイル貯留室及び戻し通路を通って吐出経路に戻るガス流れが生じる。従って、オイル分離手段で分離した潤滑用オイルをこの冷媒ガスの流れによって透孔を介して直ぐにオイル貯留室に送ることが可能となり、オイル分離手段でのオイル溜まりが抑止される。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記吐出経路のうち前記オイル分離手段よりも下流側に配置され、前記吐出経路の径を小さくすることによってその前後間に所定の差圧を発生させる差圧発生手段を備え、前記戻し通路は前記差圧発生手段の下流側における前記吐出経路と前記オイル貯留室とを連通する。
【0010】
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、オイル分離手段よりも下流側の吐出経路に所定の差圧発生手段を設けたので、差圧発生手段の前後間には大きな差圧が生じる。従って、オイル分離手段、オイル貯留室及び戻し通路を通って吐出経路に戻るガス流れが大きくなり、分離後の潤滑用オイルが直ぐにオイル貯留室に送られることになってオイル分離手段でのオイル溜まりが一層生じ難くなる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、オイル分離後の冷媒ガスが流れる前記吐出経路のうち少なくとも前記戻し通路の形成位置までは、前記オイル貯留室の上面に沿った向きである。
【0012】
この発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加え、オイル分離後の冷媒ガスが流れる吐出経路のうち少なくとも戻し通路の形成位置までは、オイル貯留室の上面に沿った向きであるので、例えば吐出経路をオイル貯留室の上面に対し垂直向きとする場合に比べて戻し通路の長さが短く済み、これに伴って圧縮機の小型化が図れる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は3に記載の発明において、前記オイル分離手段を構成し、前記冷媒ガスを外周面に沿って案内して旋回させることによって該冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するパイプ部と、前記パイプ部の内部の冷媒ガスを導入する位置に配置された前記差圧発生手段としての絞り、及び前記絞りからの冷媒ガスが流れるとともに前記戻し通路に連通された流通路を有する台座部と、前記流通路の下流側に位置して吐出経路上での冷媒ガスの逆流を抑制する逆止弁とからなる逆止弁ユニットを備えた。
【0014】
この発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、逆止弁、台座部及びパイプ部をユニット化された逆止弁ユニットした逆止弁ユニットを用いるので、この逆止弁ユニットを圧縮機に取り付けるだけで済み、取付作業が簡単になる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の発明において、外部駆動源により駆動する駆動軸によって回転する斜板を収容したクランク室と、そのクランク圧を調節して冷媒ガスの吐出容量を制御する第1制御手段と、冷媒ガスの吐出経路上の差圧を検出して、その差圧の圧力差の変動に基づきこの圧力変動を打ち消す側に前記第1制御手段を制御して前記吐出容量を調節する第2制御手段とを備え、前記第2制御手段は前記差圧を前記差圧発生手段の前後間から導入する。
【0016】
この発明によれば、請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加え、第2制御手段は差圧を差圧発生手段の前後間から導入する構成であるので、冷媒ガスのガス流れを生じるための差圧を第2制御弁の差圧検知にも利用可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明の圧縮機を可変容量型斜板式圧縮機に具体化した第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0018】
図1は、圧縮機1の模式断面図である。容量可変型斜板式圧縮機(以下、単に圧縮機と記す)1はシリンダブロック1aと、その前端に接合固定されたフロントハウジング2と、シリンダブロック1aの後端に弁形成体3を介して接合固定されたリヤハウジング4とを備えている。これらシリンダブロック1a、フロントハウジング2及びリヤハウジング4が、圧縮機のハウジングを構成している。シリンダブロック1aとフロントハウジング2とで囲まれた領域には低圧部としてのクランク室5が区画されている。
【0019】
クランク室5には駆動軸6が回転可能に支持されている。クランク室5において駆動軸6上にはラグプレート7が一体回転可能に固定されている。クランク室5には駆動軸6にスライド移動可能でかつ傾動可能に支持され、ヒンジ機構8を介してラグプレート7に連結された斜板9が収容されている。斜板9はヒンジ機構8を介したラグプレート7とのヒンジ連結及び駆動軸6の支持によってラグプレート7及び駆動軸6と同期回転可能で、駆動軸6の軸線方向へのスライド移動を伴って駆動軸6に対し傾動可能となっている。
【0020】
駆動軸6はその前端部において動力伝達機構10を介して外部駆動源としての車両のエンジン11に作動連結されている。動力伝達機構10は、外部からの電気制御によって動力の伝達/遮断を選択可能なクラッチ機構(例えば電磁クラッチ)であってもよく、又は、そのようなクラッチ機構を持たない常時伝達型のクラッチレス機構(例えばベルト/プーリの組合せ)であってもよい。なお、本例ではクラッチレスタイプの動力伝達機構10を採用している。
【0021】
シリンダブロック1aには周方向に沿って等間隔に複数(1つのみ図示)のシリンダボア12が駆動軸6を取り囲むように貫通形成されている。各シリンダボア12には片頭型のピストン13が軸方向に沿って往復動可能に収容されている。シリンダボア12の前後開口は弁形成体3及びピストン13によって閉鎖され、シリンダボア12内にはピストン13の往復動に応じて体積変化する圧縮室が区画されている。ピストン13はシュー14を介して斜板9の外周部に係留され、駆動軸6の回転運動が斜板9及びヒンジ機構8により直線運動に変換されて往復動する。
【0022】
弁形成体3とリヤハウジング4との間には、径方向外側寄りに位置する吸入室15と、それに囲まれた吐出室16とが区画形成されている。吐出室16の圧力(吐出圧Pd)は吸入室15の圧力(吸入圧Ps)よりも高くなる。弁形成体3には各シリンダボア12に対応して吸入ポート17及び同ポート17を開閉する吸入弁18、並びに吐出ポート19及び同ポート19を開閉する吐出弁20が形成されている。吸入ポート17を介して吸入室15とシリンダボア12とが連通され、吐出ポート19を介してシリンダボア12と吐出室16とが連通されている。
【0023】
そして、各ピストン13が上死点位置から下死点側へ往動したときに吸入弁18が開状態となり、吸入室15内の冷媒ガスが吸入ポート17及び吸入弁18を介してシリンダボア12に吸入される。一方、下死点位置に位置したピストン13が上死点側に復動したときにシリンダボア12内の冷媒ガスが所定圧まで圧縮され、この復動に伴って吐出弁20が開状態となって、圧縮した冷媒ガスが吐出ポート19及び吐出弁20を介して吐出室16に吐出される。
【0024】
圧縮機1には圧縮後の冷媒ガスを用いて車室内を冷却する外部冷媒回路21が接続されている。外部冷媒回路21は例えば凝縮器22、温度式膨張弁23及び蒸発器24を備えている。圧縮機1は吐出室16から放出通路25及び吐出パイプ26を介して圧縮した冷媒ガスを外部冷媒回路21に送り、熱吸収後の冷媒ガス(冷媒液)を吸入配管としての流路管27を介して吸入室15に取り込み、この吸入・圧縮・吐出の一連動作を繰り返し行う。ここで、放出通路25及び吐出パイプ26は吐出経路の一部を構成している。
【0025】
シリンダブロック1a及びリヤハウジング4には、吐出室16とクランク室5とを連通する給気通路28が貫通形成されている。給気通路28の経路上にはクランク室5の圧力(クランク圧Pc)を制御する制御弁29が配設されている。弁形成体3には給気通路28が位置する部位にその前後の経路断面積よりも内径が小さく設定された固定絞り30が形成されている。また、シリンダブロック1aにはクランク室5と吸入室15とを連通する抽気通路31が貫通形成されている。
【0026】
制御弁29は内部の弁開度を調節することで、給気通路28を介したクランク室5への高圧な冷媒ガスの導入量と、抽気通路31を介したクランク室5からの冷媒ガスの導出量とのバランスを制御してクランク圧Pcを設定している。このクランク圧Pcの変更に応じて、ピストン13を介してのクランク圧Pcとシリンダボア12の内圧との差が変更され、斜板9の傾斜角度が変更される結果、ピストン13のストローク、即ち圧縮機1の吐出容量が調節される。
【0027】
図2は、オイルセパレータ32の模式断面図である。図1及び図2に示すようにリヤハウジング4にはハウジングの径方向に延びるようにオイル分離室34が形成されている。リヤハウジング4には圧縮機1の取付状態における下方位置にオイル貯留室35が形成されている。オイル分離室34とオイル貯留室35との間には両室を連通する透孔36が形成されている。また、オイル貯留室35の底部にはオイル貯留室35とクランク室5とを連通するオイル戻し通路37が形成されている。
【0028】
リヤハウジング4にはオイル分離室34と吐出室16とを連通する流入通路38が形成されている。また、リヤハウジング4にはオイル分離室34を径方向外側(図2では右側)に開口するように吐出孔39が形成され、この吐出孔39には内部を封止するための封止部39aが固着されている。シリンダブロック1a及びリヤハウジング4には吐出孔39の最下流位置と吐出パイプ26の内部とを連通する放出通路25が形成されている。流入通路38、オイル分離室34及び吐出孔39は吐出経路の一部を構成している。
【0029】
吐出孔39には吐出経路での冷媒ガスの逆流を防ぐ逆止弁ユニット40が取り付けられている。逆止弁ユニット40は逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を備え、これら部材41〜43が一体的に固着されることでユニット化されている。逆止弁41は片側が開口した円筒形状のキャップ44と略円筒形状のケース部45とを備え、ケース部45の基端が台座部42に、先端がキャップ44により閉じられることでケース部45の内部には弁室46が形成されている。なお、オイル分離室34及びパイプ部43がオイル分離手段を構成する。
【0030】
ケース部45には弁室46とその外部を連通する連通孔47が形成されている。弁室46には略有底円筒形状の弁体49が軸方向に相対移動可能に収容されている。キャップ44の内面と弁体49との間には弁体49を弁閉方向に付勢する付勢バネ50が介装され、付勢バネ50の一端はキャップ44の内面のバネ座44aに取着され、その他端は弁体49の内面に固定される。
【0031】
台座部42の先端面は弁体49のシール面49aが当接可能であり、この当接部位が弁座48となっている。台座部42の内部には軸方向に延びる弁孔51が形成され、弁孔51に対応する位置に十字ポート51aが形成されている。また、吐出孔39の内壁面とこれに圧入された台座部42の外周面との間には、台座部42の外周面に周方向全域に亘る周溝を設けることで十字ポート51aの4つの端部と通じた環状ポート51bが形成されている。逆止弁ユニット40は台座部42を吐出孔39に圧入することで圧縮機1に取り付けられる。
【0032】
台座部42の弁孔51、逆止弁41の弁室46及び連通孔47は吐出経路の一部を構成し、図2の右方向が冷媒ガスの吐出方向となる。また、キャップ44にはバネ座44aに対応する位置に開口孔44bが形成され、吐出孔39側の圧力をこの開口孔44bから弁室46に導入している。弁体49はシール面49aに作用する吐出室16側の圧力と背面に作用する凝縮器22側の圧力との差に基づく荷重と、付勢バネ50の付勢力とのバランスによって弁座48に対して位置決めされる。なお、弁孔51、十字ポート51a及び環状ポート51bが流通路を構成する。
【0033】
例えば、吐出圧力が十分に高い場合には、弁体49が弁座48から離間して開弁することで外部冷媒回路21を経由する冷媒循環が許容される。逆に圧縮機1の吐出容量が最小となって吐出圧力が低い場合には、弁体49が弁座48に当接して外部冷媒回路21を経由する冷媒循環が遮断される。なお、逆止弁41の主たる役目は外部冷媒回路21の凝縮器22側から吐出室16への冷媒の逆流を防止することにある。しかし、本例では動力伝達機構10にクラッチレスタイプのものを用いるために、前述した役目(圧縮機の吐出容量に応じて冷媒循環回路を開閉する)も逆止弁41が兼ねている。
【0034】
台座部42の基端面にはオイル分離室34に位置した略無底円筒形状のパイプ部43が固定されている。パイプ部43はオイル分離室34に流れ込んだ冷媒ガスをその外周面に当接させ、外周面に沿って案内することによって先端側に向けて渦流を発生させることでオイルを遠心分離する機能を担う。オイル分離後の冷媒ガスはパイプ部43の内部を通って逆止弁41に流れ込む。また、パイプ部43の軸方向中間には先端に向かうに従って径が小さくなるテーパ状とすることで傾斜面43aが形成され、オイル分離室34に流入した冷媒ガスを傾斜面43aによってパイプ部43の先端側に向かい易くしている。
【0035】
台座部42にはパイプ部43の内部と弁孔51との間に絞り53が形成され、オイル分離室34、パイプ部43の内部空間及び絞り53も吐出経路の一部を構成している。絞り53はパイプ部43の内径及び弁孔51の内径よりも小さい径に設定され、パイプ部43の内部と弁孔51との間で吐出経路上に差圧ΔPを生じる差圧発生手段の役目を担っている。また、パイプ部43の内部及び吐出孔39の内部に存在する吐出経路は、オイル貯留室35の上面35aに沿った向き(略平行状態)となっている。
【0036】
リヤハウジング4には台座部42の環状ポート51bとオイル貯留室35とを連通する戻し通路としてのガス戻し通路54が形成されている。ガス戻し通路54はハウジングの径方向に延びており、透孔36と略平行状態となっている。また、ガス戻し通路54は透孔36よりも小径(例えば約1mm程度)に設定され、オイル貯留室35に入り込んだ冷媒ガスを環状ポート51b(吐出経路)に戻す通路として機能する。
【0037】
次に、前記のように構成された圧縮機の作用について説明する。
まず、吐出室16から圧縮された冷媒ガスが吐出されると、その冷媒ガスが流入通路38を通ってオイル分離室34に流れ込む。オイル分離室34に流れ込んだ冷媒ガスはパイプ部43の外周面に衝突し、その外周面を周方向に沿ってパイプ部43の先端側に旋回して流れる。このとき、冷媒ガスがパイプ部43の外周面に衝突、又はパイプ部43の外周面に沿って旋回することで、冷媒ガスに含まれるミスト状のオイルが冷媒ガスから分離する。
【0038】
冷媒ガスから分離したオイルはオイル分離室34の底部分に貯まり、透孔36の入口からオイル貯留室35に流れ込む。オイル貯留室35のオイルはオイル戻し通路37からクランク室5や流路管27に戻され、圧縮機1の摺動部分の潤滑にこのオイルが利用される。また、オイルが分離した後の冷媒ガスはパイプ部43の内部、台座部42の弁孔51及び逆止弁41を通過し、吐出パイプ26を流れて外部冷媒回路21に供給される。
【0039】
ここで、冷媒ガスの吐出経路とオイル貯留室35との間にはガス戻し通路54が形成されているので、オイル分離室34と吐出経路との間には絞り53の前後間に生じる差圧ΔPによって図2の破線で示すガスの流れが生じる。従って、オイル分離室34に分離したオイルはオイル分離室34に貯まることなく、このガスの流れに乗って直ちにオイル貯留室35に流れ込む。このため、冷媒ガスの吐出量が多い場合にはオイル分離室34で多量のオイルが分離されることになるが、このような状況下であっても分離したオイルは直ちにオイル貯留室35に流れるので、オイルがオイル分離室34に貯まり難くなる。
【0040】
従って、この実施形態では以下のような効果を得ることができる。
(1)逆止弁ユニット40の台座部42に絞り53を設け、この絞り53の下流側に位置する弁孔51とオイル貯留室35との間にガス戻し通路54を形成した。従って、オイルセパレータ32には絞り53の前後間に生じる差圧ΔPによって図2の破線に示す冷媒ガスの流れが生じるので、この流れによってオイル分離室34で分離したオイルを直ぐにオイル貯留室35に送ることができ、オイル分離室34でのオイル溜まりを抑止できる。
【0041】
(2)オイル分離室34で分離したオイルは直ちにオイル貯留室35に流れるので、オイル溜まり分を考慮してオイル分離室34を大きく確保する必要がない。従って、オイル分離室34を小さくすることができ、これに伴い圧縮機1の小型化も図れる。
【0042】
(3)台座部42に絞り53を設けたので、絞り53の前後間には大きな差圧ΔPが生じる。従って、図2の破線で示すガスの流れを大きくでき、オイル分離室34でのオイル溜まりを一層生じ難くできる。
【0043】
(4)吐出孔39はハウジングの軸方向に沿って延びるとともに、流入通路38(放出パイプ25)よりも径方向内側寄りに配置されてので、例えば吐出孔39を縦向きに配置する場合に比べてガス戻し通路54の長さが短く済む。
【0044】
(5)逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を一体物としてユニット化し、この逆止弁ユニット40を圧縮機1に取り付ける構成とした。従って、例えば逆止弁41、台座部42及びパイプ部43を圧縮機に各々設ける場合に比較して、圧縮機を大幅に設計変更する必要がない。また、この逆止弁ユニット40を圧縮機1の吐出孔39に圧入するだけなので、その取付作業が簡単で済む。
【0045】
(6)台座部42には弁孔51に通じる十字ポート51aを設け、台座部42の外周面には十字ポート51aと連通した環状ポート51bを設けている。従って、逆止弁ユニット40を吐出孔39に圧入するときに、その軸線回りのどの角度位置に取り付けても、弁孔51とガス戻し通路54とが連通状態となり、これに伴い逆止弁ユニット40の取付作業が楽になる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図3に従って説明する。本例は第1実施形態と比較してオイルセパレータで生じる差圧を用いて制御弁29を制御する構成が異なっており、他の基本的な部分については同じであるので、同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図3は制御弁29の模式断面図である。制御弁29は給気通路28の開度を調節する弁体55と、弁体55の図面上側に作動連結された感圧機構56と、弁体55の図面下側に作動連結された電磁アクチュエータ57とをバルブハウジング58内に備えてなる。バルブハウジング58内には給気通路28の一部を構成する弁孔58aが形成されており、バルブハウジング58内において弁孔58aの開口周囲は弁座58bをなしている。弁体55は下動して弁座58bから離間することで弁孔58aの開度を増大し、逆に上動して弁座58bに近接することで弁孔58aの開度を減少させる。
【0048】
感圧機構56は、バルブハウジング58内の上部に形成された感圧室56aと、感圧室56a内に収容されたベローズ56bとからなっている。感圧室56aにおいてベローズ56bの内空間には、第1検圧通路59を介して絞り53の上流側監視点P1の圧力PdHが導かれている。感圧室56aにおいてベローズ56bの外空間には、第2検圧通路60を介して下流側監視点P2の圧力PdLが導かれている。
【0049】
電磁アクチュエータ57には、固定鉄心57a、可動鉄心57b及びコイル57cが備えられており、固定鉄心57aはバルブハウジング58の内面に固着されている。可動鉄心57bには弁体55が作動連結され、固定鉄心57aと可動鉄心57bとの間には可動鉄心57bを固定鉄心57aに対し離間側に付勢する付勢バネ57dが介装されている。なお、弁体55と電磁アクチュエータ57が第1制御手段を構成し、感圧機構56が第2制御手段を構成している。
【0050】
コイル57cには冷房負荷等に応じた制御コンピュータたるエアコンECU61の指令に基づき、駆動回路62から電力が供給される。このとき、駆動回路62からコイル57cへの電力供給量に応じた大きさの電磁力(電磁吸引力)が固定鉄心57aと可動鉄心57bとの間に発生し、この電磁力によって可動鉄心57bが上方に移動する。コイル57cへの通電制御は印加電圧を調整することでなされ、この印加電圧の調整にはPWM(パルス幅変調)制御が採用されている。
【0051】
制御弁29の作動を以下に説明すると、まずコイル57cへの通電がない場合(デューティ比Dt=0%)は、ベローズ56b自身が有するバネ弾性に基づく下向き付勢力により、弁体55が最下動位置に配置されて弁孔58aの開度が全開となる。このため、クランク室5の内圧は、その時おかれた状況下において取り得る最大値となり、このクランク室5の内圧と圧縮室の内圧とのピストン13を介した差は大きくて、斜板9は傾斜角度を最小として圧縮機1の吐出容量は最小となっている。
【0052】
圧縮機1の吐出容量が最小では吐出圧力が低くなり、逆止弁41が閉じられる。従って、外部冷媒回路21を経由した冷媒循環が停止される。このため、圧縮機1による冷媒ガスの圧縮が継続されたとしても空調(冷房)が行われることはなく、圧縮機1は空調機能的にオフされた状態となっている。
【0053】
また、制御弁29においてコイル57cに対しデューティ比可変範囲の最小デューティ比Dt(min)(>0%)以上の通電がなされたとする。このとき、可動鉄心57bが弁体55に作用させる上向きの電磁力と、ベローズ56bが弁体55に作用させる二点間差圧ΔPに基づく下向き押圧力及びベローズ56bのバネ弾性に基づく下向き付勢力とが対抗する。そして、これら上下付勢力がバランスする位置に弁体55が位置決めされる。
【0054】
例えば、エンジン11の回転速度が減少して冷媒循環回路の冷媒流量が減少すると、ベローズ56bが弁体55に作用させる差圧ΔPに基づく力が減少する。従って、弁体55が上動して弁孔58aの開度が減少し、クランク室5の内圧が低下傾向となる。このため、斜板9が傾斜角度増大方向に傾動し、圧縮機の吐出容量は増大される。圧縮機の吐出容量が増大すれば冷媒循環回路における冷媒流量も増大し、差圧ΔPは増加する。
【0055】
逆に、エンジン11の回転速度が増大して冷媒循環回路の冷媒流量が増大すると、ベローズ56bが弁体55に作用させる差圧ΔPに基づく力が増大する。従って、弁体55が下動して弁孔58aの開度が増加し、クランク室5の内圧が増大傾向となる。このため、斜板9が傾斜角度減少方向に傾動し、圧縮機1の吐出容量は減少される。圧縮機の吐出容量が減少すれば冷媒循環回路における冷媒流量も減少し、差圧ΔPは減少する。
【0056】
また、例えば、コイル57cへの通電デューティ比Dtを大きくして弁体55に作用する電磁力を大きくすると、弁体55が上動して弁孔58aの開度が減少し、圧縮機1の吐出容量が増大される。従って、冷媒循環回路における冷媒流量が増大し、差圧ΔPも増大する。逆に、コイル57cへの通電デューティ比Dtを小さくして弁体55に作用する電磁力を小さくすると、弁体55が下動して弁孔58aの開度が増加し、圧縮機の吐出容量が減少する。従って、冷媒循環回路における冷媒流量が減少し、差圧ΔPも減少する。
【0057】
つまり、制御弁29はコイル57cへの通電デューティ比Dtによって決定された差圧ΔPの制御目標(設定差圧)を維持するように、この差圧ΔPの変動に応じて感圧機構56が内部自律的に弁体55を位置決めする構成となっている。また、この設定差圧はコイル57cへの通電デューティ比Dtを調節することで外部から変更可能となっている。
【0058】
本例では第1実施形態(1)〜(6)と同様な効果が得られる他に、次の効果が得られる。
(7)図2に示すガスの流れが発生するように逆止弁ユニット40に設けた絞り53の前後の監視点P1,P2の各圧力PdH,PdLを制御弁29の感圧機構56に導入する構成であるので、ガス流れを生じるための差圧ΔPを制御弁29の差圧検知にも利用することができる。
【0059】
なお、実施形態は前記に限定されず、例えば次の態様に変更してもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、必ずしも絞り53を設ける必要はない。例えばガス戻し通路54を下流側寄りに設けることによって、オイル貯留室35内の冷媒ガスを吐出経路側に戻せるような差圧ΔPが吐出経路上に生じれば、絞り53を設けずにガス戻し通路54のみを形成する構成でもよい。
【0060】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁41、台座部42及びパイプ部43がユニット化された逆止弁ユニット40を用いる構成に限定されない。例えばこれら部材41〜43が別体である構成でもよいし、または台座部42とパイプ部43が一体型で逆止弁41がこれと別体である構成としてもよい。
【0061】
○ 第1及び第2実施形態において、オイルセパレータ32はこの種の構造のものに限らず、冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離可能であれば、特にその構造は限定されない。
【0062】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁ユニット40は圧縮機1の軸方向に沿った横向きに配置される構成に限らず、例えば縦向きに取り付ける構成でもよい。
【0063】
○ 第1及び第2実施形態において、逆止弁41を必ずしも設ける必要はなく、圧縮機1をクラッチ式として逆止弁41を省略してもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、差圧発生手段は絞り53に限らず、オイル貯留室35内の冷媒ガスを吐出経路側に戻せるような差圧ΔPを吐出経路上に生じさせることが可能なものであれば、その構成は特に限定されない。
【0064】
○ 第1及び第2実施形態において、冷媒ガスから分離したオイルの戻し先はクランク室5に限らず、例えば吸入室15や流路管27でもよい。
○ 第1及び第2実施形態において、圧縮機1は可変容量型圧縮機に限らず、例えばスクロール型等の他の構成の圧縮機を用いてもよい。
【0065】
前記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(1)オイル分離手段によって分離された潤滑用オイルをオイル分離室に貯留し、分離した潤滑用オイルをオイル戻し通路を介して圧縮機内の低圧部又は吸入配管に戻す圧縮機に取り付けられる逆止弁ユニットであって、前記オイル分離手段を構成し、前記冷媒ガスを外周面に沿って案内して旋回させることによって該冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するパイプ部と、前記パイプ部の内部の冷媒ガスを導入する位置に配置された前記差圧発生手段としての絞り、及び前記絞りからの冷媒ガスが流れるとともに前記オイル貯留室に通じた戻し通路に連通された流通路を有する台座部と、前記流通路の下流側に位置して吐出経路上での冷媒ガスの吐出方向に対する逆流を抑制する逆止弁とからなる逆止弁ユニット。
【0066】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、透孔の入口よりも下流側の吐出経路とオイル貯留室とを連通し、オイル貯留室の冷媒ガスを吐出経路に戻す戻し通路を設けたので、透孔、オイル貯留室及び戻し通路を通る冷媒ガスの流れが生じ、分離した潤滑用オイルがこのガス流れによって直ぐにオイル貯留室に送られ、オイル分離手段でのオイル溜まりを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態における圧縮機の模式断面図。
【図2】オイルセパレータを拡大して示す模式断面図。
【図3】第2実施形態における制御弁の模式断面図。
【符号の説明】
1…圧縮機、5…低圧部としてのクランク室、6…駆動軸、9…斜板、11…外部駆動源としてのエンジン、27…吸入配管としての流路管、34…吐出経路及びオイル分離手段を構成するオイル分離室、35…オイル貯留室、35a…上面、36…透孔、37…オイル戻し通路、40…逆止弁ユニット、41…逆止弁、42…台座部、43…オイル分離手段を構成するパイプ部、51…吐出経路及び流通路を構成する弁室、51a…吐出経路及び流通路を構成する十字ポート、51b…吐出経路及び流通路を構成する環状ポート、53…吐出経路を構成するとともに差圧発生手段としての絞り、54…戻し通路としてのガス戻し通路、55…第1制御手段を構成する弁体、56…第2制御手段としての感圧機構、57…第1制御手段を構成する電磁アクチュエータ、Pc…クランク圧、ΔP…差圧。
Claims (5)
- 冷媒ガスの吐出経路に配置されて前記冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するオイル分離手段と、分離後の潤滑用オイルの通路となる透孔と、前記透孔を介して取り込んだ分離後の潤滑用オイルを貯留して圧縮機内の低圧部又は吸入配管に戻すオイル貯留室とを備えた圧縮機において、
前記透孔の入口よりも下流側の吐出経路と前記オイル貯留室とを連通する戻し通路を備えた圧縮機。 - 前記吐出経路のうち前記オイル分離手段よりも下流側に配置され、前記吐出経路の径を小さくすることによってその前後間に所定の差圧を発生させる差圧発生手段を備え、
前記戻し通路は前記差圧発生手段の下流側における前記吐出経路と前記オイル貯留室とを連通する請求項1に記載の圧縮機。 - オイル分離後の冷媒ガスが流れる前記吐出経路のうち少なくとも前記戻し通路の形成位置までは、前記オイル貯留室の上面に沿った向きであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機。
- 前記オイル分離手段を構成し、前記冷媒ガスを外周面に沿って案内して旋回させることによって該冷媒ガスに含まれる潤滑用オイルを分離するパイプ部と、
前記パイプ部の内部の冷媒ガスを導入する位置に配置された前記差圧発生手段としての絞り、及び前記絞りからの冷媒ガスが流れるとともに前記戻し通路に連通された流通路を有する台座部と、
前記流通路の下流側に位置して吐出経路上での冷媒ガスの吐出方向に対する逆流を抑制する逆止弁とからなる逆止弁ユニットを備えた請求項2又は3に記載の圧縮機。 - 外部駆動源により駆動する駆動軸によって回転する斜板を収容したクランク室と、そのクランク圧を調節して冷媒ガスの吐出容量を制御する第1制御手段と、冷媒ガスの吐出経路上の差圧を検出して、その差圧の圧力差の変動に基づきこの圧力変動を打ち消す側に前記第1制御手段を制御して前記吐出容量を調節する第2制御手段とを備え、
前記第2制御手段は前記差圧を前記差圧発生手段の前後間から導入する請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の圧縮機。
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