JP2004216468A - ツイストドリル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ドリル本体1の外周面に螺旋状のランド部3を備えたツイストドリルにおいて、上記ランド部のヒール5先端部には、ヒール面6が形成されており、上記ドリル本体をその軸心線と直交する断面で見た場合における、上記ヒール面と切れ刃直線lとがなすヒール面取り角θが、上記ドリル本体の先端部から後端部側に行くにつれて拡大している。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、切りくずの排出性を向上させたツイストドリルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、穴あけ加工に用いられる切削工具として、ツイストドリルが知られている。
【0003】
従来のツイストドリルは、バックテーパによる外径の減少を除いて、先端部と後端部の断面形状が略同一となっている。
【0004】
しかしながら、ツイストドリルの先端部と後端部の断面形状が同一である場合、生成される切りくずがツイストドリルの溝部内面やワークの加工穴面との摩擦によって排出され難いという問題があった。特に深穴加工においては、ツイストドリルの溝部内面とワークの加工穴面との間に切りくずが詰ってしまうことがあった。
【0005】
また、近年普及してきたドライ、セミドライ(MQL)加工においては、加工時の摩擦により熱を持った切りくずが溝部内面に接触することで、ツイストドリルが高温となり、切りくずの排出が円滑に行われないという問題があった。
【0006】
さらに、外部給油ドリルにおいては、加工穴が深くなるにしたがって、切削油がツイストドリルの先端部に到達し難くなるという問題もあった。
【0007】
そこで、ツイストドリルによる穴あけ加工においては、切りくずの排出性を向上するとともに、ツイストドリルの先端部に十分な切削油を供給するために種々の方法が考えられてきた。
【0008】
その1つとして、ツイストドリルの先端部と後端部において捩れ角を変化させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この方法は、ツイストドリルの先端部からワーク表面までの距離を短くすることで、切りくずの排出性を向上させたものである。
【0009】
また、他の1つとして、ツイストドリルの先端部と後端部において溝幅比(ランド部に対する溝部の比)を変化させる方法が提案されている(例えば、特許文献4〜6参照。)。この方法は、ツイストドリルの溝幅比を、その先端部から後端部側にゆくにつれて大きくなるように変化させ、ツイストドリルの先端部で生成された切りくずが後端部側に行くにつれて溝部を容易に通過できるようにしたものである。
【0010】
さらに、他の1つとして、ツイストドリルの先端部と後端部において心厚を変化させる方法が提案されている(例えば、特許文献7、8参照。)。この方法は、ツイストドリルのヒール側に副溝を設けるとともに、副溝の捩れ角をツイストドリルの先端部から後端部にゆくにつれて大きくなるよう変化させることで、ツイストドリルの溝幅比を変化させ、ツイストドリル先端部で生成された切りくずが後端部側に行くにつれて容易に通過できるようにしたものである。
【0011】
【特許文献1】
実公昭53−38953号公報。
【0012】
【特許文献2】
実開昭60−61110号公報。
【0013】
【特許文献3】
実開昭61−144905号公報。
【0014】
【特許文献4】
特開平5−253717号公報。
【0015】
【特許文献5】
実開平5−60715号公報。
【0016】
【特許文献6】
特開平7−40119号公報。
【0017】
【特許文献7】
実用新案2578251号公報。
【0018】
【特許文献8】
特開2001−121332号公報。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ツイストドリルの先端部と後端部において捩れ角を変化させる方法では、ツイストドリルの溝幅が先端部から後端部にわたって同一であるため、ツイストドリルの溝部内面や加工穴の周面との摩擦によって、生成される切りくずが排出され難いという問題がある。
【0020】
また、ツイストドリルの先端部と後端部において溝幅比を変化させる方法では、溝部の拡大に伴ってランド部の面積が縮小することで、ツイストドリルの後端部における剛性が低下するという問題がある。
【0021】
なお、特許文献8で開示されたツイストドリルの後端部側では、先端部側と比べて断面積が13パーセント〜40パーセント程度減少し、最小断面二次モーメントは23パーセント〜77パーセント程度減少している。
【0022】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであった、その目的とするところは、ドリル本体の剛性の低下を抑制しながら、切りくずの排出性を向上できるツイストドリルを提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために本発明のツイストドリルは次のように構成されている。
【0024】
(1)ドリル本体の外周面に螺旋状のランド部を備えたツイストドリルにおいて、上記ランド部のヒール先端部には、ヒール面が形成されており、上記ドリル本体をその軸心線と直交する断面で見た場合における、上記ヒール面と上記ドリル本体の軸心及び切れ刃を結ぶ直線とがなすヒール面取り角が、上記ドリル本体の先端部から後端部側に行くにつれて拡大していることを特徴とする。
【0025】
(2)(1)に記載されたツイストドリルにおいて、上記ヒール面と上記ドリル本体の軸心との距離が、上記ドリル本体の軸心線方向に対して略一定であることを特徴とする。
【0026】
(3)(1)に記載されたツイストドリルにおいて、上記ヒール面取り角の最大値が185度未満であることを特徴とする。
【0027】
(4)(1)に記載されたツイストドリルにおいて、上記ヒール面取り角が上記ドリル本体の先端部から後端部側に対して連続的に変化していることを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施の形態に係るツイストドリルを示す概略図、図2は同実施の形態に係るドリル本体を示す概略図であって、(a)は図1のA−A線に沿う断面図、(b)は図1のB−B線に沿う断面図、(c)は図1のC−C線に沿う断面図である。
【0030】
図1に示すツイストドリルは、刃部1aとシャンク部1bとから構成される略円柱状のドリル本体1を有し、刃部1aの外周面には全長に亘って、切りくずを排出するための2つの溝部2が螺旋状に形成されている。
【0031】
これら溝部2は、図2に示すように、ドリル本体1の周方向に約180度ずれて位置しており、これら溝部2が形成されることによって、刃部1aの外周面にはランド部3が螺旋状に形成されている。
【0032】
ランド部3は、切削時における回転方向(以下、切削回転方向とする)の先端側にリーディングエッジ4、切削回転方向の後端側にヒール5を有している。そして、リーディングエッジ4にはワークを切削する切れ刃が形成され、ヒール5には面取り加工によりヒール面6が形成されている。
【0033】
ヒール面6は、ドリル本体1の軸心Oに対して略一定の距離Lとなるよう形成されており、ドリル本体1をその軸心線と直交する断面で見た場合、軸心O及びリーディングエッジ4を結ぶ直線l(以下、切れ刃直線とする。)とヒール面6とがなす角θ(以下、ヒール面取り角とする。)は、ドリル本体1の先端部から後端部側に行くにつれて徐々に拡大している。すなわち、ヒール面取り角θは、刃部1aの先端部で最小、後端部で最大となっている。
【0034】
なお、ヒール面6と軸心Oとの距離Lは、ドリル本体1の外径寸法の15パーセント以上とされ、上限はドリル本体1の外径寸法により適宜決められるが、ドリル本体1の外径寸法の50パーセント未満が好ましい。
【0035】
このように、ヒール5に上述した形状のヒール面6を形成することによって、ドリル本体1の外周面に形成された溝部2の溝幅φmは、図2(a)〜(c)に示すように、ドリル本体1の先端部から後端部側に行くにつれて拡大している。
【0036】
なお、溝部2の溝幅φmは、ドリル本体1の軸心O及びヒール面6のランド部3側を結ぶ直線hと切れ刃直線lとがなす角によって定義され、ランド部3のランド幅φrは溝幅φmの余角によって定義される。以降、溝幅φmの大きさを溝幅比φm/φrによって示す。
【0037】
上記構成のツイストドリルにおいては、穴あけ加工によってドリル本体1の先端部で切りくずが生成されると、その切りくずはドリル本体1の溝部2に沿って移動し、その後端部側から加工穴の外部に排出される。
【0038】
また、このような用途には油穴付工具が用いられることも多く、その場合には、図2に示すように、ドリル本体1の所定位置に軸方向に沿って2つの油穴7が形成されている。これら油穴7はドリル本体1の後端から先端部まで連通しており、ドリル本体1の後端部から先端部に切削油を供給できるようになっている。
【0039】
[実施例]
上記構成のツイストドリルにおいて、ヒール面取り角θを種々に変更した場合の、溝幅比φm/φr、断面積A、断面二次モーメントIの値を下記[表1]に示す。なお、今回使用したツイストドリルの寸法は次の通りである。
【0040】
ドリル本体1の外径寸法:8[mm]、
油穴径:1[mm]、
油穴ピッチ:4[mm]、
距離L:外径寸法の30パーセント。
【0041】
【表1】
【0042】
[表1]に示すように、例えばヒール面取り角θが160度である場合、ヒール面取り角θが140度である場合と比べて、溝幅比φm/φrが約158パーセント、断面積Aが約93パーセント、断面二次モーメントIが約73パーセントとなることがわかる。
【0043】
すなわち、刃部1aの先端部におけるヒール面取り角θを140度とした場合、後端部におけるヒール面取り角θを160度にすることで、刃部1aの後端部における溝幅比φm/φrを先端部の約158パーセントまで拡大でき、さらに断面二次モーメントIの低下を先端部の約23パーセントに抑えることができる。
【0044】
また、ヒール面取り角θが185度である場合、ヒール面取り角θが140度である場合と比べて、溝幅比φm/φrが約316パーセント、断面積Aが約86パーセント、断面二次モーメントIが約48パーセントとなることがわかる。
【0045】
すなわち、刃部1aの先端部におけるヒール面取り角θを140度とした場合、後端部におけるヒール面取り角θを185度にすると、刃部1aの後端部における溝幅比φm/φrを先端部の約316パーセントまで拡大できる一方、断面二次モーメントIは先端部の約48パーセントまで低下してしまう。
【0046】
以上より、刃部1aの先端部におけるヒール面取り角θを140度とした場合、後端部におけるヒール面取り角θを160度以上、かつ185度未満に設定することで、切りくずを円滑に排出できる溝幅比φm/φrを確保できるとともに、ある程度の断面二次モーメントIを得ることができることがわかる。
【0047】
次いで、本実施例で用いたツイストドリル、及び従来のツイストドリルにおける溝幅比φm/φr、断面積A、断面二次モーメントIの値を下記[表2]に示す。
【0048】
なお、従来のツイストドリルは、特許文献7により開示された、ヒール側の溝砥石のねじれ角を小さくした仕様であり、本発明のツイストドリルとしては、ヒール面取り角θが150度となる断面を用いた。
【0049】
【表2】
【0050】
[表2]に示すように、従来のツイストドリルは、本実施例に係るツイストドリルと比べて、溝幅比φm/φrが約95パーセント、断面積Aが102パーセント、断面二次モーメントIが約89パーセントとなることがわかる。
【0051】
すなわち、本実施例のツイストドリルは、従来のツイストドリルに対して溝幅比φm/φrが約5パーセント大きいにも関わらず、断面二次モーメントIの減少が約10パーセントも抑制されていることがわかる。
【0052】
これにより、ドリル本体1のヒール5に上述した構成のヒール面6を形成することで、ヒール面6を有しない従来のツイストドリルに比べて、溝幅比φm/φrを拡大できるとともに、断面二次モーメントIの減少を抑制できることがわかる。
【0053】
上述した本実施の形態に係るツイストドリルによれば、刃部1aの外周面に形成される溝部2の溝幅比φm/φrをドリル本体1の先端部から後端部側に行くにつれて拡大させている。
【0054】
そのため、生成された切りくずは、ドリル本体1の後端部側に行くにつれて溝部2内を通過し易くなるから、切りくずを円滑に排出することができる。
【0055】
そして、上述した溝幅比φm/φrの拡大を実現するために、ヒール5の先端部にドリル本体1の軸心Oからの距離Lが一定となるヒール面6を形成し、上記ヒール面取り角θをドリル本体1の先端部から後端部側に向かって拡大させている。
【0056】
そのため、刃部1aの後端部における断面二次モーメントIの減少を抑制でき、この部分に所定の剛性を確保できるから、ドリル本体1の破損を抑制することができる。
【0057】
しかも、溝部2の溝幅比φm/φrが拡大しても、心厚が減少することがないから、ドリル本体1に油穴7を形成するためのスペースを確保し易い。
【0058】
また、上述したように、ヒール面6とドリル本体1の軸心Oとの距離Lをドリル本体1の軸心線方向に対して一定にしているため、ヒール面取り角θを拡大させるだけで、ドリル本体1の先端部から後端部側に向かって溝幅比φm/φrを拡大することができる。
【0059】
また、ヒール面取り角θをドリル本体1の先端部から後端部側にかけて徐々に変化させている。
【0060】
そのため、加工中にランド部3のヒール5側に応力集中が発生し難くなり、ドリル本体1の破損を抑制することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変更可能である。
【0062】
すなわち、ドリル本体1の先端部から後端部側に行くにつれて溝幅比φm/φrを拡大でき、さらに溝幅比φm/φrの拡大に伴う断面二次モーメントIの減少を抑制できるのであれば、ヒール面6とドリル本体1の軸心Oとの距離が一定である必要はない。ただし、ドリル本体1の後端部側におけるヒール面6とドリル本体1の軸心Oとの距離を先端部側よりも小さくしたほうが、切りくずの排出性の点で好ましい。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、ツイストドリルの剛性の低下を抑制しながら、切りくずの排出性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るツイストドリルを示す構成図。
【図2】同実施の形態に係るドリル本体を示す概略図であって、(a)は図1のA−A線に沿う断面図、(b)は図1のB−B線に沿う断面図、(c)は図1のC−C線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…ドリル本体
3…ランド部
5…ヒール
6…ヒール面
l…切れ刃直線
θ…ヒール面取り角
L…距離
Claims (4)
- ドリル本体の外周面に螺旋状のランド部を備えたツイストドリルにおいて、
上記ランド部のヒール先端部にはヒール面が形成されており、上記ドリル本体をその軸心線と直交する断面で見た場合における、上記ヒール面と上記ドリル本体の軸心及び切れ刃を結ぶ直線とがなすヒール面取り角が、上記ドリル本体の先端部から後端部側に行くにつれて拡大していることを特徴とするツイストドリル。 - 上記ヒール面と上記ドリル本体の軸心との距離が、上記ドリル本体の軸心線方向に対して略一定であることを特徴とする請求項1記載にツイストドリル。
- 上記ヒール面取り角の最大値が185度未満であることを特徴とする請求項1記載のツイストドリル。
- 上記ヒール面取り角が上記ドリル本体の先端部から後端部側に対して連続的に変化していることを特徴とする請求項1記載のツイストドリル。
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CN112705761A (zh) * | 2021-01-14 | 2021-04-27 | 阿斯图精密工具(上海)有限公司 | 用于钢件加工的通用钻头 |
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