JP2004199109A - 圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被流量制御流体を任意の流体Ggとした時の任意流体の実流量Qgを、Qg=Qb×SFF(但し、Qbは被流量制御流体を基準流体Gbとした圧力式流量制御装置に於ける任意流体の測定流量、SFFは任意の流体Ggの基準流体Gbに対する比フローファクタである。)として算定するようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に於いて、前記比フローファクタSFFを、
SFF=Δt(Gb)/Δt(Gg)・T(Gb)/T(Gg)
(但し、Δt(Gb)は基準流体Gbに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて圧力降下が任意の設定値ΔPに達するまでの時間、Δt(Gg)は任意の流体Ggに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて、圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達するまでの時間、T(Gb)は基準流体Gbの温度、T(Gg)は任意の流体Ggの温度である。)により演算する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や化学品、薬品、精密機械部品等の製造に用いる各種流体の圧力式流量制御装置を用いた流量制御方法の改良に関するものであり、更に詳細には、流量制御対象である流体の種類が変った際に用いる流量演算用の比フローファクタを、理論式から流体の物性値を用いて演算するのではなしに、当該流体を圧力式流量制御装置へ現実に流通させることにより、圧力式流量制御装置毎に簡単且つ高精度で比フローファクタを求められるようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体製造装置等の分野では、各種流体(ガス)の流量制御装置として、従前のマスフローコントローラに代えて圧力式流量制御装置が広く利用されている。
この圧力式流量制御装置(以下、FCS装置とも略称する)は本願発明者等の開発に係るものであり、その基本的な構成は特開平8−338546号として先きに開示されている。
【0003】
即ち、当該FCS装置は、オリフィスの上流側圧力P1 を下流側圧力P2 の約2倍以上に保持した状態で流体の流量制御を行ない、オリフィスと、オリフィスの上流側に設けたコントロール弁と、コントロール弁とオリフィス間に設けた圧力検出器と、圧力検出器の検出圧力P1 から流量QcをQc=KP1 (但しKは定数)として演算すると共に、流量指令信号Qsと前記演算した流量信号Qcとの差を制御信号Qyとして前記コントロール弁の駆動部へ出力する演算制御装置とから構成され、コントロール弁の開閉によりオリフィス上流側圧力P1 を調整し、オリフィス下流側流量を制御するものである。
【0004】
また、当該FCS装置の最大の特徴点は、オリフィスを流れているガスの流量Qcが上流側圧力P1 にのみ依存し、同一のオリフィスとガス種に対してはQc=KP1 (Kは定数)として演算で算出できることである。つまり、オリフィスとガス種を決めて比例定数Kを初期設定すれば、オリフィスの下流側圧力P2 の変動に関係なくオリフィスの上流側圧力P1 を測定するだけで、実際の流量を演算で算出できる。
【0005】
更に、当該FCS装置は、同一のオリフィスでもって複数の異なる流体(ガス)の流量制御を簡単に行なうことができる。即ち、オリフィスが同一の場合、流体の種類が変化すると、前記Qc=KP1 に於ける定数Kが各流体に応じて変化する。
そのため、現実のガス流量制御では、N2 ガス、Arガス、O2 ガスに対する前記定数KをKN 、KA 、KO としたとき、N2 ガスを基準にした比フローファクタSFFと云う数値が用いられている。
例えば、いまN2 ガス、Arガス、O2 ガスのフローファクタFFをFFN 、FFA 、FFO とするとN2 ガスの比フローファクタSFFN =KN /KN =1、Arガスの比フローファクタSFFA =KA /KN 、O2 ガスの比フローファクタSFFO =KO /KN で与えられる。つまり、比フローファクタSFFとは実際のガスの流量とN2 換算流量との比率であり、SFF=実ガス流量/N2 換算流量で定義されるファクタである。
【0006】
【表1】
表1は、ガス種毎の比フローファクタSFFの値の一例を示すものであり、当該比フローファクタSFFの値を用いて、同じFCS装置に於いて被流量制御ガスが例えばN2 ガスからO2 ガスに変化した場合には、O2 ガスのオリフィス上流側圧力P1 における流量(実ガス流量QO2)は、QO2=SFFO ×N2 換算流量=0.935237×N2 ガスを流した場合のオリフィス上流側圧力P1 におけるFCS装置の読み取り流量として演算されることになる。
【0007】
一方、前記各ガス種の比フローファクタSFFの算定基礎となる各ガス種のフローファクタFFは、各ガス種の物性値から演算式を用いて求めることができ、その演算方法は本願発明者等が先きに特開2000−322130号として開示している。
【0008】
即ち、高圧領域からオリフィスを介して低圧領域へとガスが流出しているとき、ガスの流管に連続の法則、エネルギー保存則および気体の状態方程式(気体の非粘性)を適用し、しかも流出時のガスは断熱変化をするものとする。更に、オリフィス流出時のガスの流速が、そのガス温度での音速に達すると仮定する。この音速条件はP1 ≧約2P2 ということであり、換言すれば圧力比P2 /P1 が臨界圧力比約1/2以下ということに相当する。
【0009】
これらの条件下に於いては、オリフィスを通過するガス流量Qは、下記の(1)式により得られる。
【数1】
また、この式(1)は、下記の(2)式のように整理することが出来る。
Q=FF・SP1 (1/T1 )1/2 ……(2)
但し、(2)式において、FFは前記フローファクタに相当するものであり、下記の(3)式で表わされる。
【数2】
K=(2×9.81)1/2 =4.429
【0010】
尚、(1)〜(3)式に於いて、Q(m3 /sec)は標準状態に於ける単位時間当りの体積流量、S(m2 )はオリフィス断面積、P1 (kg/m2 abs)は上流側絶対圧力、T1 (K)は上流側ガス温度、FF(m3 K1/2 /kg/sec)はフローファクター、Kは比例定数(2g)、γS (kg/m3 )はガスの標準状態に於ける密度、κ(無次元)はガスの比熱比、R(m/K)はガス定数である。
【0011】
ここで、演算流量Qc(=KP1 )を前記流量Qと等しいと考えると、定数KはK=FF・S/T1 1/2 で表わされ、ガス種、上流側ガス温度およびオリフィス断面積に依存することが分る。つまり、上流側圧力P1 、上流側温度T1 およびオリフィス断面積Sが同一の条件下では、演算流量QcはフローファクターFFにのみ依存することが明らかである。
【0012】
前記フローファクターFFは前記(3)式からも明らかなように標準状態に於ける密度γS 、比熱比κおよびガス定数Rに依存するから、ガス種のみによって決まる因子である。結果として、上流側圧力P1 、上流側温度T1 およびオリフィスが同一のとき、ガス種Aの演算流量がQA とすると、ガス種Bを流通させた場合には、その演算流量QB はQB =(FFB /FFA )QA =SFF・QA で与えられることになる。ここで、FFA 、FFB は各々ガス種A、Bのフローファクターであり、SFF=FFB /FFA は、ガス種Bのガス種Aに対する比フローファクタである。
【0013】
換言すると、ガス種以外の条件が同一のときには、ガス種変更時の流量QB は比フローファクタFFB /FFA (以下SFFと略称する)を流量QA に掛け込むだけで演算できる。
尚、前記基礎となるガス種Aは任意にとり得るが、一般にはN2 ガスが基礎流体とされる。従って、SFFとしてFF/FFN を採用する。
ここで、FFN はN2 ガスのフローファクタを意味する。各ガス種の物性値と演算されたフローファクタFF及び比フローファクタSFFは表2の通りである。
【0014】
【表2】
【0015】
【発明が解決しようとする問題点】
上記理論式から求めたフローファクタFF(又は比フローファクタSFF)を用いて演算した実ガス流量は、実測値に対する誤差が最大でも1%程度である。
例えば、O2 ガス流量QO2をQO2=SFF×QN2=0.935237QN2として演算した流量と、ビルドアップ法で実測した実際のO2 ガス流量とを比較した場合、両者の誤差は何れも実測値に対して1%の誤差範囲内に納まることが確認されており、当該フローファクタFFの演算方法は優れた実用的効用を有するものである。
【0016】
しかし、前記理論式からフローファクタFFや比フローファクタSFFを演算するためには、(式)3からも明らかなように各流体の物性値が明確に判明している必要があり、新種の流体(ガス)や既知の流体(ガス)でも混合比の不明な混合流体や、分子量が同一でも構造の異なる異性体ガス等では、フローファクタFFを容易に演算することが出来ないと云う難点がある。
特に近い将来、地球環境保全の見地から温暖化係数の低減を目指した新種のガスが開発されて来ることは明白なことであり、これ等の物性値の不明な新種のガスに対してはFCS装置を容易に適用することが出来ないと云う問題がある。
【0017】
本発明は、従前のFCS装置のフローファクタFFや比フローファクタSFFの算定に於ける上述の如き問題、即ち物性値の不明な新種のガス等ではフローファクタFFの算定が不可能であったり、或いは算定に手数が掛かり過ぎると云う問題を解決せんとするものであり、如何なる種類の流体(ガス種)であっても、FCS装置毎に当該ガス種に対する比フローファクタSFFを簡単且つ正確に求めることが出来るようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、オリフィスOL と、オリフィスOL の上流側に設けたコントロール弁Cvと、コントロール弁CvとオリフィスOL との間に設けた圧力検出器Pと、圧力検出器Pの検出圧力P1 から流量QcをQc=KP1 (但しKは定数)として演算すると共に、流量指令信号Qsと前記演算した流量信号Qcとの差を制御信号Qyとしてコントロール弁Cvの駆動部VDへ出力する演算制御装置CPUとから構成され、オリフィス上流側圧力P1 をオリフィス下流側圧力P2 の約2倍以上に保持した状態で前記コントロール弁Cvの開閉によりオリフィス上流側圧力P1 を調整し、オリフィス下流側の流体の流量を制御するようにした圧力式流量制御方法であって、被流量制御流体を任意の流体Ggとした時の任意流体の実流量QgをQg=Qb×SFF(但し、Qbは被流量制御流体を基準流体Gbとした圧力式流量制御装置に於ける任意流体の測定流量、SFFは任意の流体Ggの基準流体Gbに対する比フローファクタである。)として算定するようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に於いて、前記比フローファクタSFFを、
SFF=Δt(Gb)/Δt(Gg)・T(Gb)/T(Gg)
(但し、Δt(Gb)は基準流体Gbに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて、圧力降下が任意の設定値ΔPに達するまでの時間、Δt(Gg)は任意の流体Ggに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて、圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達するまでの時間、T(Gb)は基準流体Gbの絶対温度、T(Gg)は任意の流体Ggの絶対温度である。)により演算することを発明の基本構成とするものである。
【0019】
請求項2の発明は、被流量制御流体を任意の流体Ggとした時の任意流体の実流量QgをQg=Qb×SFF(但し、Qbは被流量制御流体を基準流体Gbとした圧力式流量制御装置に於ける基準流体の測定流量、SFFは任意の流体Ggの基準流体Gbに対する比フローファクタである。)として算定するようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に於いて、被流量制御流体を基準流体Gbとした時のオリフィスの圧力減衰特性に於いてオリフィス上流側圧力P1 の圧力降下が任意の設定値ΔPに達する間の平均流量Q(Gb)を、
Q(Gb)=C・Vl ・273.15/T(Gb)×ΔP/Δt(Gb)として算定し、
更に、被流量制御流体を任意の流体Ggとした時のオリフィスの圧力減衰特性に於いてオリフィス上流側圧力P1 の圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達する間の平均流量Q(Gg)を、
Q(Gg)=C・Vl ・273.15/T(Gg)×ΔP/Δt(Gg)として算出し、(但し、Cは換算定数、Vl は圧力制御装置の内容積、Δt(Gb)は基準流体Gbに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて圧力降下が任意の設定値ΔPに達するまでの時間、Δt(Gg)は任意の流体Ggに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達するまでの時間、T(Gb)は基準流体Gbの絶対温度、T(Gg)は任意の流体Ggの絶対温度である。)、前記比フローファクタSFFを、SFF=Q(Gg)/Q(Gb)として演算することを発明の基本構成とするものである。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明に於いて、基準流体Gbを窒素ガスとするようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用する標準的な圧力式流量制御装置(FCS装置)の回路構成図であり、Cvはコントロール弁、VDは弁駆動装置、Pは圧力検出器、Tは温度検出器、OL はオリフィス、L1 はオリフィス上流側ライン、L2 はオリフィス下流側ライン、AMPは増幅器、A/Dは信号変換器、DPは圧力表示器、DTは温度表示器、CPUは演算装置、Mは記憶装置、SCは電源回路、PTは外部通信ポート、ESは直流電源、STは流量設定回路、SFFは比フローファクタ表示回路、TRは外部回路である。
【0022】
上記図1に於いて、演算装置CPUには、後述する各ガス種に対する比フローファクタSFFの演算部と、演算された比フローファクタSFFを用いて各ガス種の流量を演算する流量演算部と、流量演算部で演算したガス流量と設定流量Qsとを対比し、演算ガス流量を設定流量Qsに調整するための流量調整部等が設けられており、前記流量演算部や流量調整部等の構成や機能は前記特開平8−338546号により公知であるため、ここではその説明を省略する。
【0023】
前記比フローファクタSFFはSFF=Qg/Qbとして定義されるものである。ここでQbは、被流量制御流体が基準流体Gb(N2 ガス)であるときのFCS装置による制御流量(基準ガス流量)であり、またQgは、同一のFCS装置へ被流量制御流体として同じ条件下で任意の流体Gg(例えばC4 F8 )を供給した場合の任意流体Ggの実ガス流量である。
従って、任意の流体Ggを同一のFCS装置へ同一の条件下で供給した際の任意流体Ggの実ガス流量Qgは、前記基準流体Gb(N2 ガス)に対して校正されたFCS装置による任意流体Ggの制御流量値に比フローファクタSFFを掛けることにより、求められることができる。
【0024】
即ち、ガス種が変わると、流量は変わるが、前記式(3)で演算されるフローファクタFFは圧力に関係なく一定であると考えられるため、基準流体Gb(N2 ガス)と任意の流体Gg(例えばC4 F8 ガス)が同一条件下で同一のFCS装置を流通する流量Qb及び流量Qgを実測することにより、前記比フローファクタを、SFF=Qg/Qbとして算出することができる。
【0025】
一方、FCS装置のコントロール弁Cvからオリフィス上流側ラインL1 へ圧力P1 を加え、その後コントロール弁Cvを閉にした時に前記圧力P1 が圧力P2 に降下するオリフィスOL を流通する流体の平均流量Q(SCCM)は、ビルドアップ法(Rate of Rise)として知られる下記の(4)式により演算することができる。
Q=C・Vl ・273.15/T(G)×(P1 − P2 )/(t2 −t1 )……(4)
但し、(4)式に於いて、Cは換算定数、Vl はFCSの内容積、T(G)は流体の絶対温度、P1 ・P2 はサンプリング圧力、ΔP=P1 −P2 はオリフィス上流側ラインの圧力降下、t1 ・t2 はサンプリング時刻、Δt=t2 −t1 は圧力降下P1 −P2 を生ずるに要する時間である。
【0026】
基準流体Gb(N2 ガス)に対する平均流量Qbと任意流体Ggに対する平均流量Qgとの比Qg/Qbを上記(4)式より求めると、下記の(5)式で表わされる。
SFF=Qg/Qb=Δt(Gb)/Δt(Gg)×T(Gb)/T(Gg)……(5)
但し、ここでΔt(Gg)は任意流体Ggが所定の圧力降下(P1 −P2 )を生ずるのに必要とする時間、Δt(Gb)は基準流体Gbが同一の圧力降下(P1 −P2 )を生ずるのに必要とする時間、T(Gb)は基準流体Gbの絶対温度、T(Gg)は任意流体Ggの絶対温度である。
【0027】
本発明は、上記同一条件下でFCS装置へ基準流体Gb並びに任意流体Ggを供給し、所定の設定圧力ΔP=P1 −P2 を生ずるに必要な時間Δt=t2 −t1 とガス温度T(G)を両流体Gb、Ggについて夫々測定し、これ等の測定値を用いて演算装置CPUにより比フローファクタSFFを演算するものである。
【0028】
具体的には、各ガス種に対する比フローファクタSFFを次の如き手順により算定する。
先ず、被流量制御液体をN2 としてFCS装置へ供給し、オリフィスOL の上流側ラインL1 の圧力減衰特性を測定する。即ち、FCS装置の制御を圧力減衰データを測定する圧力減衰モードにし、コントロール弁Cvを全開から全閉状態に切換えした際の上流側圧力P1 の時間的変化を測定する。
【0029】
図2は圧力減衰モードの実施例を示すフローチャートであり、外部回路TRからの信号によりメモリ装置Mに記憶されたプログラムが始動実行される。
即ち、圧力減衰モードであることが確認されると(n20)、設定流量Qsとして高設定流量QSHがCPUにセットされる(n21)。この高設定流量QSHとしてはフルスケールの100%が一般的である。この状態で上流側圧力P1 が測定され、このレンジでの最大値として最大圧力Pm で表わす(n22)。次に、外部回路TRからサンプリング圧力P1 =P1 ′とP1 =P2 ′の2点の圧力P1 ′,P2 ′が予かじめ設定(n23)され、更に、外部回路TRからのトリガー信号により、設定流量Qsとして低設定流量QSLがセットされ、この時点を時刻t=0(s)とする(n24)。低設定流量QSLとしては0%が一般的である。即ち、上流側圧力P1 を最大値から零(コントロール弁を全閉)にしてから上流側圧力P1 の減衰を計測するのである。
【0030】
t=0から上流側圧力P1 を測定し(n25)、時刻と圧力データ(t、P1t)をメモリ装置Mに記憶させる(n26)。圧力P1 が微小圧力ΔPだけ変化する毎に時間tを測定し、(n27)、圧力P1 がPsになるまで(28)、データ(t、P1t)を測定しながらメモリ装置Mに蓄える。
勿論、前記ステップ(n23)で設定した圧力P1 =P1 ′と圧力P1 =P2 ′の2点だけの圧力及び時刻の測定だけでも良いが、前記圧力減衰モードはオリフィス目詰の検出用としてFCS装置には一般的に設けられているので、これを活用するのが望ましい。
【0031】
現実の具体的な測定に於いては、内径が150μmのオリフィスの場合には、この間に50点の上流側圧力P1 を測定しており、圧力P1 =Psに至った時に圧力測定を完了している。
尚、ステップ25〜ステップ28に於いて、前記ステップ23で予かじめ設定した圧力P1 =P1 ′とその時の時間t=t1 ′及び圧力P1 =P2 ′とその時の時間t=t2 ′が測定され、そのデータが記憶装置Mに記憶されていることは勿論である。
【0032】
図3の曲線Aは、被流量測定流体をN2 とした場合に於ける前記図2のフローチャートにより測定した特定のFCS装置の圧力減衰特性曲線の一例を示すものであり、横軸はサンプリング時間(項数)を、また縦軸は圧力(digit)を夫々示している。
尚、本発明に於いて必要とするデータは、後述するように予かじめ前記ステップ23で設定した圧力P1 =P1 ′に於ける時間t=t1 ′と、圧力P1 =P2 ′に於ける時間t=t2 ′と、流通するガス温度T(G)の値である。
【0033】
前記基準流体GbをN2 ガスとした時のFCS装置の圧力減衰特性曲線Aのデータから、前記ΔP=P1 ′−P2 ′及びΔt=t2 ′−t1 ′が求まる(ステップn29)と、ステップn30に於いて、オリフィスOL を通過する平均N2 ガス流量QN (SCCM)が、ビルドアップ法(Rate of Rise)と前記式(4)を用いて計算される。
QN2=C・Vl ・273.15/T(Gb)・(P1 ′−P2 ′)/(t2 ′−t1 ′)
但し、ここで、QN2はN2 ガスの平均流量、Cは換算定数、Vl はFCSの内容積、T(Gb)はN2 ガスの絶対温度、P2 ′、P1 ′はサンプリング圧力、t2 ′、t1 ′はサンプリング時間である。
【0034】
上記N2 ガスを基準流体Gbとする圧力減衰特性及びオリフィスOL を通過する平均N2 ガス流量QN2(SCCM)の演算が終了すると、次に被流量制御ガスを任意の流体Gg(例えばC4 F8 ガス)に切換え、前記N2 ガスの場合と全く同一の手順でその圧力低減特性を測定する。
尚、C4 F8 ガスの場合でも、前記N2 ガスの場合と同様に、必ず測定すべきオリフィス上流側圧力P1 =P1 ′及びオリフィス上流側圧力P1 =P2 ′が予かじめ設定されており、そのため、オリフィス上流側圧力P1 がP1 =P1 ′の時の時間t1 〃及びオリフィス上流側圧力P1 がP2 ′の時の時間t2 〃もステップn26に於いて夫々測定され、記憶装置Mに記憶される。
【0035】
前記図3の曲線Bは、任意流体GgがC4 F8 ガスのときの圧力低減特性曲線を示すものであり、P1 =P1 ′=1450digitに於ける時間t1 〃及びP1 =P2 ′=1000digitに於ける時間t2 〃が前述のように記憶装置Mに記憶される。
【0036】
また、前記(4)式と同じ下記の流量計算式を用いて、オリフィスOL を通過する任意流体Gg(C4 F8 ガス)の平均流量Qgが演算される。
Qg=C・Vl ・273.15/T(Gg)×(P1 ′−P2 ′)/(t2 〃−t1 〃)
【0037】
上記C4 F8 ガスに対する流量Qgが算出されると、最後に被フローファクタSFFがSFF=Qg/Qb=Qg/QN2として算出される。
【0038】
尚、上記説明に於いては、平均N2 ガス流量QN2及び平均C4 F8 ガス流量Qgを夫々別個に求め、Qg/QN2から比フローファクタSFFを求めたが、現実には、前記(5)式と同一の下式により比フローファクタSFFは演算されている。即ち、図3に於ける各時間t2 ′−t1 ′,t2 〃−t1 〃間の圧力降下曲線を直線と近似して、比フローファクターSFFを求めている。
SFF=Qg/QN2=Δt(N2 )/Δt(Gg)×T(N2 )・T(Gg)
但し、Δt(N2 )=t2 ′−t1 ′、Δt(Gg)=t2 〃−t1 〃である。
【0039】
株式会社フジキン製の圧力式流量制御装置(オリフィス厚さ50μm、オリフィス内径130μm)を用いて、圧力減衰特性を測定し、その結果からN2 ガスを基準流体Gbとした場合のC4 F8 ガスの比フローファクタ(SFF)を実測した。
表3は圧力減衰特性の測定データであり、サンプリング時間は、項数×12msec(N2 ガス)及び項数×34msec(C4 F8 ガス)である。また、当該表2をグラフ化したものが前記図3である。
【0040】
【表3】
【0041】
当該実施例により算出したC4 F8 ガスの比フローファクタSFFは、表3の備考欄に記載している如くSFF=0.32215となる。本実施例で実測した比フローファクタは、理論式より計算した表2に記載のSFF値0.352260と比較して約10%程度の差がある。個々のFCS装置毎に実測したものであるから、本実施例に於いて求めた比フローファクタSFFの方が、より高精度で実ガス流量を表示するものと考えられる。
【0042】
【発明の効果】
本発明に於いては、圧力式流量制御装置毎に基準流体及び任意流体に対する圧力減衰特性を夫々実測し、当該圧力減衰特性の実測値から基準流体に対する任意流体の比フローファクタ(SFF)を演算する構成としている。
その結果、従前のガスの物性値からフローファクタ(FF)及び比フローファクタ(SFF)を求める従前の比フローファクタの算定方法に比較して、物性値の不明な新種ガスや混合ガスであっても容易にその比フローファクタ(SFF)を求めることが出来る。
【0043】
また、各圧力式流量制御装置毎に個別に比フローファクタ(SFF)を算出することが出来るため、ガス種やガスの流量レンジに拘わらず、任意の流体の実流量を高精度で制御することが可能となり、圧力式流量制御装置の適用範囲が拡大されることになる。
本発明は上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する圧力式流量制御装置の回路構成図である。
【図2】圧力減衰特性の測定に係るフローチャートである。
【図3】N2 ガス及びC4 F8 ガスの圧力減衰特性曲線の一例を示すものである。
【符号の説明】
Cvはコントロール弁、VDは弁駆動装置、Pは圧力検出器、Tは温度検出器、OL はオリフィス、L1 はオリフィス上流側ライン、L2 はオリフィス下流側ライン、AMPは増幅器、A/Dは信号変換器、DPは圧力表示器、DTは温度表示器、CPUは演算装置、Mは記憶装置、SCは電源回路、PTは外部通信ポート、ESは直流電源、STは流量設定回路、SFFは比フローファクタ表示器、TRは外部回路、Gbは基準流体(N2 ガス)、Ggは任意流体、Qbは基準流体の流量、Qgは任意の流体の流量、FFはフローファクタ、SFFは比フローファクタ、P1 はオリフィス上流側圧力、ΔPは圧力降下値、Δt(Gb)は基準流体の圧力降下ΔPに要する時間、Δt(Gg)は任意流体の圧力降下ΔPに要する時間、T(Gb)は基準流体の絶対温度、T(Gg)は任意流体の絶対温度、Cは換算定数、Vl は圧力制御装置の内容積。
Claims (3)
- 被流量制御流体を任意の流体Ggとした時の任意流体の実流量QgをQg=Qb×SFF(但し、Qbは被流量制御流体を基準流体Gbとした圧力式流量制御装置に於ける任意流体の測定流量、SFFは任意の流体Ggの基準流体Gbに対する比フローファクタである。)として算定するようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に於いて、前記比フローファクタSFFを、
SFF=Δt(Gb)/Δt(Gg)・T(Gb)/T(Gg)
(但し、Δt(Gb)は基準流体Gbに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて、圧力降下が任意の設定値ΔPに達するまでの時間、Δt(Gg)は任意の流体Ggに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて、圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達するまでの時間、T(Gb)は基準流体Gbの絶対温度、T(Gg)は任意の流体Ggの絶対温度である。)により演算するようにしたことを特徴とする圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法。 - 被流量制御流体を任意の流体Ggとした時の任意流体の実流量QgをQg=Qb×SFF(但し、Qbは被流量制御流体を基準流体Gbとした圧力式流量制御装置に於ける基準流体の測定流量、SFFは任意の流体Ggの基準流体Gbに対する比フローファクタである。)として算定するようにした圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法に於いて、被流量制御流体を基準流体Gbとした時のオリフィスの圧力減衰特性に於いてオリフィス上流側圧力P1 の圧力降下が任意の設定値ΔPに達する間の平均流量Q(Gb)を、
Q(Gb)=C・Vl ・T(Gb)×ΔP/Δt(Gb)として算定し、
更に、被流量制御流体を任意の流体Ggとした時のオリフィスの圧力減衰特性に於いてオリフィス上流側圧力P1 の圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達する間の平均流量Q(Gg)を、
Q(Gg)=C・Vl ・273.15/T(Gg)×ΔP/Δt(Gg)として算出し、(但し、Cは換算定数、Vl は圧力制御装置の内容積、Δt(Gb)は基準流体Gbに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて圧力降下が任意の設定値ΔPに達するまでの時間、Δt(Gg)は任意の流体Ggに対するオリフィスの圧力減衰特性に於いて圧力降下が前記任意の設定値ΔPに達するまでの時間、T(Gb)は基準流体Gbの絶対温度、T(Gg)は任意の流体Ggの絶対温度である。)
前記比フローファクタSFFを、SFF=Q(Gg)/Q(Gb)として演算するようにしたことを特徴とする圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法。 - 基準流体Gbを窒素ガスとするようにした請求項1又は請求項2に記載の圧力式流量制御装置を用いた流体の流量制御方法。
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