JP2004197067A - 環状オレフィン樹脂、プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光の照射や環境の変動によって光学素子が劣化しないようにする。
【解決手段】環状オレフィン樹脂を、炭素数2〜20のα−オレフィンと環状オレフィンからそれぞれ誘導される構成単位を含む構成とする。環状オレフィン樹脂を上記構成とすることで、短波長の光照射による屈折率変動が抑えられる。また、環状オレフィン樹脂を界面活性剤を含む構成とすることで、環境の変動による白濁が抑えられる。光学素子を、上記樹脂を成形することで作製する。
【選択図】 なし
【解決手段】環状オレフィン樹脂を、炭素数2〜20のα−オレフィンと環状オレフィンからそれぞれ誘導される構成単位を含む構成とする。環状オレフィン樹脂を上記構成とすることで、短波長の光照射による屈折率変動が抑えられる。また、環状オレフィン樹脂を界面活性剤を含む構成とすることで、環境の変動による白濁が抑えられる。光学素子を、上記樹脂を成形することで作製する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境変化や長時間の光照射に対する耐性を有する環状オレフィン樹脂と、この環状オレフィン樹脂を適用したプラスチック製光学素子と、このプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、媒体と略記)に対して情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチック製光学素子とすることが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1)等が知られている。
【0004】
ところで、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)の場合よりも短い波長で情報の読み書きを行なうBlu−ray Disc等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器が新たに開発されるようになってきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−105131(第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えばBlu−ray Discでは情報の読み書きに波長約400nmの光を用いるが、特許文献1の場合では、光学素子がこのような短波長の光の照射を受けるにつれて白濁したり屈折率が変動したりして寿命が短くなるという問題があった。また、温度や湿度といった環境の変動のために光学素子が白濁するという問題もあった。よって、光学素子の交換が必要になる場合があった。
そこで、このような光学素子の白濁を防止するために、酸化防止剤の添加量を増加させることが考えられるが、単に酸化防止剤を添加すると、光透過率が低下してしまう。さらに、樹脂中に酸化防止剤を十分に混練することが難しく残留してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、環境変化や長時間の光照射に対する耐性を有したプラスチック製光学素子と、良好なピックアップ特性を容易に維持できる光ピックアップ装置とを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤と、を含む環状オレフィン樹脂であって、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であるとともに、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化9】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化10】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、環状オレフィン樹脂は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤とを含んでいる。
環状オレフィン樹脂が界面活性剤を含むことで、この環状オレフィンの成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置した場合の400nmにおける光透過率の劣化を0.5%以下とすることができる。よって、温度や湿度といった環境の変動によってプラスチック製光学素子の光透過率が劣化しないようにすることができるので、光学素子の寿命を伸ばして、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
また、環状オレフィン樹脂が上記環状オレフィン系重合体と酸化防止剤を含むことで、例えば400nmといった短波長の光の照射を長時間受けた場合に、屈折率の変動等が抑えられる。よって、例えばこの環状オレフィン樹脂で光学素子を作製した場合、短波長の光の照射に伴なう光学素子の劣化を抑え、光学素子の寿命を伸ばすことができる。
また、上記環状オレフィン系重合体を水素添加処理することで、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上という高い値になる。よって、光情報記録媒体に対する情報の書き込み、読み取りを、高いエネルギー効率で行なうことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化11】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化12】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂に含まれる環状オレフィン系重合体は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤とを含んでいる。
環状オレフィン樹脂が界面活性剤を含むことで、この環状オレフィンの成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置した場合の400nmにおける光透過率の劣化を0.5%以下とすることができる。
また、環状オレフィン樹脂が上記環状オレフィン系重合体と酸化防止剤を含むことで、例えば400nmといった短波長の光の照射を長時間受けた場合に、屈折率の変動等が抑えられる。
また、上記環状オレフィン系重合体を水素添加処理することで、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上という高い値になる。よって、光情報記録媒体に対する情報の書き込み、読み取りを、高いエネルギー効率で行なうことができる。
これらのことにより、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体から得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、
前記環状オレフィン樹脂全体に対して前記酸化防止剤は、1質量%以上2質量%以下含まれていることを特徴とする。
【化13】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化14】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂に含まれる環状オレフィン系重合体は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含み、環状オレフィン樹脂全体に対して酸化防止剤が、1質量%以上2質量%以下含まれているので、例えば、約400nmといった短波長の光を長時間受けた場合でも白濁することを低減でき、また、屈折率の変動等が抑えられる。よって、短波長化した光源に対しての光透過率も劣化することなく、光学素子としての寿命を延ばすことができ、光学素子の交換頻度も減らすことができる。
また、酸化防止剤を上記範囲で添加することによって、樹脂中に酸化防止剤を十分に混練することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプラスチック製光学素子において、
前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、前記成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの前記初期値に対する光透過率の劣化が1%未満であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、環状オレフィン樹脂の成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの初期値に対する光透過率の劣化が1%未満であるので、短波長の光を長時間受けた場合でも光透過率の劣化を抑えることができ、光学素子の寿命を延ばすことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のプラスチック製光学素子において、
少なくとも一つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0021】
請求項5〜請求項9に記載の発明によれば、長時間光の照射を受けること伴なう屈折率の変動を抑えた環状オレフィン樹脂を適用することで、長期間にわたり、光に高い精度で光路差を付与できる。よって、長い運転時間にわたる光情報記録媒体に対する光の照射や光情報記録媒体で反射した光の集光を高い信頼度で行なうことができる。こうしてプラスチック製光学素子の寿命を延ばすことで、良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行なえる光ピックアップ装置を容易に維持管理できる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光源から出射される光の波長は390nm〜420nmであることを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂は炭素数2〜20のα−オレフィンから誘導された構成単位と環状オレフィンから誘導された構成単位と酸化防止剤とを含んでいるので、Blu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対応した390nm〜420nmという範囲の波長の光を透過する場合でも、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、プラスチック製光学素子の寿命を伸ばし、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光源から出射される光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明によれば、長期間にわたり高い精度で光に光路差を付与できる光路差付与構造を有したプラスチック製光学素子を対物光学素子とすることで、複数種の光情報記録媒体に対して高い信頼度で光を集光することができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子において、
複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする。
【0027】
請求項12に記載の発明によれば、光学素子ユニットが、長期間にわたり高い精度で光に光路差を付与できる光路差付与構造を有したプラスチック製光学素子を少なくとも一つ有することで、良好なピックアップ特性を有した光ピックアップ装置を作製できる。
【0028】
請求項13に記載の発明は、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、前記光の前記光情報記録媒体への照射及び/又は前記光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、前記光学素子ユニットは、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなるプラスチック製光学素子を有し、前記プラスチック製光学素子は、少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の波長の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化15】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化16】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0029】
請求項13に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0030】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする。
【0031】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0032】
請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする。
【0033】
請求項17に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0034】
請求項14〜17に記載の発明によれば、請求項5〜9に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0035】
請求項18に記載の発明は、請求項13〜17のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記光源は波長390nm〜420nmの光を出射することを特徴とする。
【0036】
請求項18に記載の発明によれば、請求項10に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0037】
請求項19に記載の発明は、請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記プラスチック製光学素子は、前記光源から出射される波長の光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする。
【0038】
請求項19に記載の発明によれば、請求項11に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0039】
請求項20に記載の発明は、請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記プラスチック製光学素子は、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする。
【0040】
請求項20に記載の発明によれば、請求項12に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体及びこの共重合体のグラフト変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理前重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含んでいる。
ここで、本発明に係る環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体で測定したASTM D1003準拠による400nmにおける光線透過率が85%以上の重合体であるとともに、上記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置(例えば温度25℃、湿度40%の条件下に1時間放置)した場合の400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下である。
また、本発明に係る環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの前記初期値に対する光透過率の劣化が1%未満である。
【0042】
本発明の環状オレフィン樹脂の環状オレフィン系共重合体は、好適には、少なくとも1種の炭素数が2〜20のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとを共重合させて得られるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、およびそのグラフト変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理前重合体を水素添加処理して得られる。
【0043】
ここで、環状オレフィン系重合体を構成する式(1)又は(2)で表される環状オレフィンについて説明する。本発明で用いられる環状オレフィンは、下記式(1)又は(2)で表される。
【0044】
【化17】
【0045】
上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1である。なお、qが1の場合には、RaおよびRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子又は炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
【0046】
R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0047】
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0048】
さらに上記式(1)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環又は多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環又は多環は二重結合を有していてもよい。ここで、形成される単環又は多環の具体例を下記に示す。
【化18】
上記例示において、1又は2の番号が付された炭素原子は、式(1)においてそれぞれR15(R16)又はR17(R18)が結合している炭素原子を示している。またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
【0049】
【化19】
【0050】
上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2である。またR1〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基である。ハロゲン原子は、前記式(1)におけるハロゲン原子と同じ意味である。
【0051】
炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基又は芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基およびアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基が例示される。
【0052】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などを例示することができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
【0053】
ここで、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子又はR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R9およびR13で表される基が、又はR10およびR11で表される基が、互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)又はプロピレン基(−CH2CH2CH2−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。
【0054】
さらに、n=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環又は多環の芳香族環として、たとえば下記のようなR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
【化20】
ここでqは、式(2)におけるqと同じ意味である。
【0055】
上記のような式(1)又は式(2)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。一例として、
【化21】
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(別名ノルボルネン。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0056】
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0057】
さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
【0058】
この他、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン誘導体、
【化22】
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以後単にテトラシクロドデセンという。上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)、およびこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0059】
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0060】
さらに他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
【0061】
また、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]ペンタデカ−3−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]ヘキサデカ−3−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカ−4−エンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]エイコサ−5−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]エイコサ−4−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]ヘンエイコサ−5−エンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]ドコサ−5−エンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]ペンタコサ−5−エンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]ヘキサコサ−6−エンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0062】
本発明で使用することのできる前記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの具体例は、上記した通りであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7−145213号公報明細書の段落番号0032〜0054に示されており、本発明においても、この明細書に例示されるものを環状オレフィンとして使用することができる。
【0063】
上記のような式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの製造方法としては、例えば、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応を挙げることが出来る。
これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0064】
本発明で用いられる環状オレフィンからなる処理前重合体は、上記のような式(1)又は式(2)で表される環状オレフィンを用いて、たとえば特開昭60−168708号、同61−120816号、同61−115912号、同61−115916号、同61−271308号、同61−272216号、同62−252406号および同62−252407号などの公報において提案された方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
【0065】
そのうち、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素数2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。
なお炭素数が2〜20のα−オレフィンおよび環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
【0066】
環状オレフィン樹脂がα−オレフィン及び環状オレフィンランダム重合体から誘導される構成単位を有することで、環状オレフィン樹脂からなるプラスチック製光学素子が短波長の光を照射されることに伴なう屈折率の変動を防止することができる。
【0067】
ここで、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を構成する炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについて説明する。α−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状又は分岐状のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0068】
このα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のような炭素原子数が2〜20の少なくとも1種類のα−オレフィンから誘導される構成単位と、環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶融した際に、その溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。たとえば、極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶融することにより確認することができる。
【0069】
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記式(3)又は(4)で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
【0070】
【化23】
上記式(3)において、n、m、q、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、式(1)におけるものと同じ意味である。
【0071】
【化24】
上記式(4)において、n、m、p、qおよびR1〜R19は、式(2)におけるものと同じ意味である。
【0072】
また本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
【0073】
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィン又は環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)シクロヘキサ−1−エンおよびシクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、1,4−ヘキサジエン、4−メチルヘキサ−1,4−ジエン、5−メチルヘキサ−1,4−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。これらの他のモノマーは、単独でも、あるいは組み合わせても用いることができる。
【0074】
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位を含有させる場合には、通常20モル%以下、さらには10モル%以下の量とすることが好ましい。
【0075】
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとを用いて、前記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
【0076】
また、この共重合反応では固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン又はハフニウムがあげられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基はアルキル基が置換していてもよい。
これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等があげられる。
【0077】
また、有機アルミニウムオキシ化合物および有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒については、例えば特開昭61−221206号、特開昭64−106号および特開平2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0078】
本発明において、水素添加処理の処理前重合体として用いられるグラフト変性物は、上記のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物である。
ここで用いられる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類があげられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(商標))などの不飽和カルボン酸、さらにこれら不飽和カルボン酸の誘導体たとえば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが例示される。
【0079】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0080】
これらのなかでは、α,β−不飽和ジカルボン酸およびα,β−不飽和ジカルボン酸無水物たとえばマレイン酸、ナジック酸(商標)およびこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、2種以上組合わせて用いることもできる。
【0081】
このようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物は、所望の変性率になるように、変性剤をこの共重合体に配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体とを所望の変性率になるように混合することにより製造することもできる。
【0082】
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体と変性剤とからグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。たとえば溶融状態にあるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいはα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などによりグラフト変性物を得ることができる。
【0083】
このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。またグラフト反応は、有機過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
【0084】
本発明では、水素添加処理の処理前重合体として、上記のようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、およびそのグラフト変性物のいずれかを単独で用いることができ、また同じグループの2種以上や、異なる2以上のグループを組み合わせて用いることもできる。
【0085】
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、さらには、70〜210℃であることが好ましい。
【0086】
また、環状オレフィン系重合体は、非晶性又は低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下である。
【0087】
135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は、好ましくは0.01〜20dl/gであり、より好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.08〜5dl/gである。
【0088】
ASTM D1238に準じ温度260℃、荷重2.16kgで測定した溶融流れ指数(MFR)は、通常0.1〜200g/10minであり、好ましくは1〜100g/10min、さらに好ましく3〜60g/10minである。
【0089】
軟化点は、サーモメカニカルアナライザーで測定した軟化点 (TMA)として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。ここで、軟化点の測定は、デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により行った。すなわちシート上に荷重49gをかけた石英製針を乗せ、5℃/minの速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度を軟化点(TMA)とした。
【0090】
上記の環状オレフィン系重合体のなかでは、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を水添処理して得られ、軟化点(TMA)が80℃以上であり、かつ極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであるものが好ましい。
【0091】
本発明における水添処理は、前記した処理前重合体を、環状飽和炭化水素を主成分とする溶媒中で、水素添加触媒の存在下に、水素添加することが好ましい。処理前重合体の溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、デカリン、シクロヘプタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、n−オクタンなどがあげられる。これらは1種単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0092】
これらの中では、シクロヘキサン、n−ヘキサンが好ましく、特に、シクロヘキサンを50重量%以上含有する溶剤が好ましい。
【0093】
水素添加触媒金属としては、Pt、Rh、Pd、Cu、Y、Fe、Ru、W、Znなどがあげられる。好ましくは、ラニーニッケル、活性炭担持パラジウム、ウィルキンソン錯体が用いられる。
【0094】
水素添加の方法は、例えば、処理前重合体を1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%溶融した前記水素添加用の溶媒に、この重合体に対して0.5〜10重量%の濃度の触媒(金属として)を加え、反応温度20〜200℃、好ましくは40〜120℃、水素分圧0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaにおいて行う。反応時間は、要求される色相の改善度の応じて適宜選ばれるが、通常、5分〜12時間、好ましくは5分〜6時間の間で選ばれる。反応後、触媒は濾過などにより除去される。
【0095】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、上述の共重合体に酸化防止剤と界面活性剤とが添加されて調製される。
【0096】
酸化防止剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド等が適用できる。
このうち、脂肪酸としては、具体的には、例えば、2−エチルヘキソイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、モンタン酸、ナフテン酸が挙げられる。
【0097】
また、上記金属塩としては、これらの酸の各種金属塩が挙げられる。金属塩形成用金属としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cd、Pbなどが挙げられる。金属塩としては、具体的には、例えば、ステアリン酸系の金属塩としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウム、12ーヒドロキシステアリン酸カルシウムが挙げられ、モンタン酸の金属塩としては、モンタン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0098】
これらの金属塩の内では、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムなどのカルシウム塩が特に好ましく用いられる。
【0099】
また、脂肪酸酸アミドとしては、モノアミド(例:オレイン酸アミド(C18H35ON)、ステアリン酸アミド[C18H37ON]、エルカ酸アミド[C22H43ON]ベヘン酸アミド[C22H45ON])、ビスアミド(例:メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミド)等が挙げられる。
【0100】
また、これら酸化防止剤は組合わせて用いることもでき、たとえばテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムとを組合わせて用いることができる。
酸化防止剤は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部添加する。酸化防止剤の添加量が0.1重量部を下回る場合、白濁や屈折率の変動を効果的に抑制できない。一方、酸化防止剤の添加量が10重量部を超える場合、環状オレフィン樹脂の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。なお、酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がさらに好ましい。
なお、光ピックアップ装置のプラスチック製光学素子として使用する場合には、酸化防止剤の、環状オレフィン系重合体と酸化防止剤とその他添加剤とを含む環状オレフィン樹脂全体に対する質量%が、1質量%以上2質量%以下であることが最も好ましい。
【0101】
上述のように酸化防止剤を添加することで、光学素子が例えば400nmといった短波長の光を照射されることに伴なう白濁や屈折率の変動を防止してプラスチック製光学素子の寿命を延ばすことができる。
【0102】
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は環状オレフィン樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、環状オレフィン樹脂の白濁を防止する。
界面活性剤の親水基としては、具体的にヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
【0103】
このような界面活性剤としては、より具体的にはたとえば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物又はアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
【0104】
界面活性剤は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.01〜10重量部添加される。界面活性剤の添加量が0.01重量部を下回る場合、温度、湿度の変動に伴なう環状オレフィン樹脂の白濁を効果的に抑えることができない。一方、添加量が10重量部を超える場合、環状オレフィン樹脂の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。界面活性剤の添加量は環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.05〜5重量部とすることが好ましく、0.3〜3重量部とすることがさらに好ましい。
【0105】
このような環状オレフィン系樹脂は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)に優れている。特に本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、嵩高い環状オレフィンから導かれる構成単位と、同一分子中に親水基と疎水基とを有する界面活性剤とを特定割合で含有しており、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
【0106】
さらに環状オレフィン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内であれば、酸化防止剤、界面活性剤の以外の任意成分を含んでも良い。任意成分として、例えば紫外線吸収剤、防曇剤などが必要に応じて配合される。
【0107】
このような任意成分として配合される耐候安定剤の紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ニッケル系化合物、ヒンダードアミン系化合物があり、具体的には、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールや2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルフォスフォリックアシッドエチルエステルのニッケル塩、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケイトなどが挙げられる。
【0108】
本発明においては、環状オレフィン系重合体にさらに他の樹脂を配合した樹脂組成物を必要に応じて添加することもできる。他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内で添加される。
【0109】
ここで、環状オレフィン系重合体に添加し得る他の樹脂を以下に例示する。
(1)1個又は2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブタ−1−エン、ポリ4−メチルペンタ−1−エン、ポリブタ−1−エンおよびポリスチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。なおこれらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
(2)ハロゲン含有ビニル重合体具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴムなどが挙げられる。
【0110】
(3)α,β−不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、又は前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0111】
(4)不飽和アルコールおよびアミン、又は不飽和アルコールのアシル誘導体又はアセタールから誘導される重合体具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン、又は前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばエチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0112】
(5)エポキシドから誘導される重合体具体的にはポリエチレンオキシド又はビスグリシジルエーテルから誘導された重合体などが挙げられる。
(6)ポリアセタール具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレンなどが挙げられる。
(7)ポリフェニレンオキシド(8)ポリカーボネート(9)Sポリスルフォン(10)ポリウレタンおよび尿素樹脂
【0113】
(11)ジアミンおよびジカルボン酸および/又はアミノカルボン酸、又は相応するラクタムから誘導されたポリアミドおよびコポリアミド具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
(12)ジカルボン酸およびジアルコールおよび/又はオキシカルボン酸、又は相応するラクトンから誘導されたポリエステル具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。
【0114】
(13)アルデヒドとフェノール、尿素又はメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
(14)アルキッド樹脂具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂などが挙げられる。
【0115】
(15)飽和および不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂。
(16)天然重合体具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、あるいはそれらの誘導体たとえば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0116】
(17)軟質重合体、例えば、環状オレフィン成分を含む軟質重合体、α−オレフィン系共重合体、α−オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレン又はイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体又は共重合体等が挙げられる。
【0117】
環状オレフィン系重合体と、各種添加剤等との混合方法としては、それ自体公知の方法が適用できる。たとえば各成分を同時に混合する方法などである。
【0118】
この様にして得られる環状オレフィン樹脂は、色相が改善されているので、厚さ3mmの成形体で分光光度計により測定した、400nmにおける光線透過率が85%以上である。なお、環状オレフィン系重合体の上記光線透過率は87%とすることがさらに好ましく、89%以上とすることが特に好ましい。
【0119】
また、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンからそれぞれ誘導された構成単位と、酸化防止剤を含んでいるので、短波長の光を長時間照射されても白濁したり屈折率が変動したりすることが抑えられる。
さらに、環状オレフィン樹脂は界面活性剤を含んでいるので、例えば温度60℃、湿度90%に168時間放置後、温度25℃、湿度40%といった常温常湿の条件下に1時間に放置するといった場合でも透過率の低下が0.5%以下と小さく抑えられる。よって、環境の変動に対して白濁したりすることが防止される。
【0120】
(成形物)
上述の環状オレフィン樹脂は、各種成形物の成形材料に適用可能である。
成形方法としては、射出成形法、押出成形法、吹込成形法、真空成形法、スラッシュ成形法等、公知の各種成形法が適用可能であるが、射出成形が成形性、生産性の観点から好ましい。成形条件は使用目的、又は成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、成形品にヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、成形物が黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
【0121】
本発明に係る環状オレフィン樹脂の成形により作製可能な成形物としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、種々の用途に使用でき、特に光学素子として好適である。
【0122】
光学素子の具体例としては、以下のものが挙げられる。光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザービームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザー走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0123】
また、その他の用途としては、医療用の血液検査セル等の各種検査セル、注射器シリンジ、パイプやチューブ、医薬用バイアルや薬液用容器、プリント基板の絶縁膜等にそれぞれ使用できる。
【0124】
これらの中でも、低複屈折性が要求される光ピックアップ装置を構成する光学系レンズやレーザー走査系レンズとして好適であり、光ピックアップ装置の光学系レンズに最も好適である。
【0125】
[光ピックアップ装置]
次に、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置について図1及び図2を参照して説明する。
本発明の光ピックアップ装置1は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用するいわゆる次世代のDVD(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なう装置である。
光ピックアップ装置1は、光源2から出射されるレーザ光(光)を、コリメータレンズ3、後述する対物レンズ(プラスチック製光学素子)10といった単玉光学素子を通過させて、光軸4上で光情報記録媒体5の情報記録面6に集めて集光スポットを形成し、情報記録面6からの反射光を、偏向ビームスプリッタ7で取り込み、検出器8の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
光源2は、レーザダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmという2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。
コリメータレンズ3、対物レンズ(プラスチック製光学素子)10、偏向ビームスプリッタ7は、光学素子ユニットを構成する。
【0126】
本発明に係る対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を射出成形で成形することにより作製される。対物レンズ10は図2に示すように、両面非球面の単玉光学素子であり、その一方(光源側)の光学面11上に、該光学面11を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造20を有している。
光路差付与構造20は、光学面11が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面21〜23のうち隣り合う輪帯状レンズ面21〜23は異なる屈折力を有している。
第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは、同一の光学面11上にあり、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっている。
第1輪帯状レンズ面21は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面22は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面23は、次世代DVDに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面21〜23を通過した光は、情報記録面6の同じ位置に集光されるようになっている。
なお、図2では、第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは同一光学面11上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面21、23とは同一光学面上に設けなくても良く、また、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくても良い。また、3つの輪帯状レンズ面21〜23は5つであっても良く、少なくとも3つ以上であれば良い。
【0127】
対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂から成形されるので、次世代DVDの再生に伴ない、405nmといった短波長の光の照射を長時間にわたって受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、長い運転時間にわたって、光源2で出射した光の情報記録面6への集光と、情報記録面6で反射した光の検出器8へ向けての集光を高い信頼性で行なうことができる。
また、上述の環状オレフィン樹脂は界面活性剤を含んでいるため、温度や湿度が著しく変動するような場合にも、白濁したりすることはない。そのため、光ピックアップ装置1において、環境の変動に関わらず良好なピックアップ特性を維持できる。
【0128】
なお、本発明に係る対物レンズ10は、上記光路差付与構造20を有するものに限らず、例えば図3〜図7に示す構造20a〜20dを有する対物レンズ10a〜10eとしても良い。
【0129】
図3における光路差付与構造20aは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21aからなり、複数の回折輪帯21aの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21aの光学面11aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯21aは、光軸4から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図3に示す対物レンズ10aは、いわゆる回折レンズである。
【0130】
図4における光路差付与構造20bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部21bを同心円状に有している。輪帯状凹部21bは、光学面11bのうちの光軸4を中心とした一方の面(図4における光軸4を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部21bどうしは、連続して一体になっており、各輪帯状凹部21b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部21bを形成する光学面22bは、光学面11bに対して平行移動した面となっている。図4に示す対物レンズ10bはいわゆる位相差レンズである。
なお、図4では、隣り合う輪帯状凹部21bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面11bに輪帯状凹部21bを個々に設けたものとしても良い(この場合、例えば図2に示した対物レンズ10と同様の構造となる)。また、図4では輪帯状凹部21bを同心円状に有しているとしたが、図5に示すように、図2の第3輪帯状レンズ面23上に輪帯状凸部23bを有した対物レンズ10cとしても良い(図5中、図2と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
【0131】
図6における光路差付与構造20dは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21dからなり、複数の回折輪帯21dの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21dの光学面11dが不連続面である。そして、各回折輪帯21dの断面が光軸方向に沿った3段22dの階段状であり、各段22dの光学面12dが不連続面で、光軸4に対して直交する面となっている。
なお、図6に示すレンズ10dは、例えば、図7に示すように図6と同様の光路差付与構造20dを有するホログラム光学素子(HOE)10eと対物レンズ10fとで別体の構成としても良い。この場合、ホログラム光学素子10eは、平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ10fの面に光路差付与構造20dを設ける。
【0132】
なお、本発明に係る光ピックアップ装置1は、例えばCD、現行DVD、次世代DVDの3種の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なうこととしてもよい。光ピックアップ装置1で情報の再生、記録を行なう光情報記録媒体5の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
【0133】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
(実施例1)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体をシクロヘキサンに溶解させ、濃度15重量%の溶液を調製した。その溶液300gにラニーニッケル触媒(ニッケル含有量40重量%)1.3gを加え、水素分圧3MPa、温度100℃で4時間反応させて水素添加処理を行なった。触媒を濾過した後、反応液をアセトン中に加えて、共重合体を析出させた。この共重合体100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)0.6重量部及びペンタエリスリトールジステアレート(界面活性剤)0.6重量部を、シリンダ温度を250℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練にて混合することにより環状オレフィン樹脂を得た。得られた環状オレフィン系樹脂を射出成形機(東芝機械製IS−55EPN)を用いて厚さ3mmの角板に射出成形した。
【0135】
(実施例2)
酸化防止剤として、ステアリン酸を共重合体100重量部に対して0.6重量部混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例1と揃えて角板を作製した。
【0136】
(比較例1)
界面活性剤を添加せず、それ以外の条件については実施例1と揃えて角板を作製した。
【0137】
(比較例2)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体について水素添加処理を行なわずに、ランダム共重合体100重量部に対してテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)0.6重量部を溶融混練法で混合して環状オレフィン樹脂を得た。環状オレフィン樹脂には界面活性剤は添加しなかった。上記混合物について、実施例1と同じ条件でプレス成形を行ない、角板を作製した。
【0138】
(光透過率の測定)
実施例1、2及び比較例1、2の各角板について、波長約400nmに近似した条件として、波長405nmにおける初期透過率To、高温多湿条件化での光透過率の変化量ΔTA、短波長の光照射に伴なう光透過率の変化量ΔTBの測定を行なった。透過率の測定方法はASTM D1003に準拠した。
各板の作製後速やかに測定された透過率をToとした。また、Toと、角板を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿条件として、温度25℃、湿度40%の条件下に1時間放置した時点での透過率との差をΔTAとした。そして、Toと、角板に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射してから測定して得られた値との差をΔTBとした。なお、比較例1、2についてはΔTBを測定しなかった。
To、ΔTA、ΔTBの測定結果を表1にまとめる。
【0139】
【表1】
測定の結果、水素添加処理を行なわなかった比較例2では、Toは85%を下回り、光学素子としては実用にならなかった、水素添加処理を行なった実施例1、実施例2、比較例1ではToは85%を上回り、実用の範囲内であった。
【0140】
角板を高温多湿条件下に置いた場合の透過率の変化を測定したところ、界面活性剤が添加されていない比較例1、比較例2では、ΔTAの値が、5.0%及び1.0%となり、実用限度である0.5%を超えて著しく白濁した。一方、実施例1、実施例2ではΔTAの値は0.5%であり、実用の範囲に収まった。
【0141】
角板に短波長の光を照射した場合の透過率の変化を測定したところ、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを添加した実施例1では、ΔTBの値は1.0%であり、実用限度である0.5%を超えた。一方、ステアリン酸を添加した実施例2では、ΔTBの値は0.3%であり実用の範囲に収まった。
【0142】
次に、酸化防止剤のオレフィン樹脂全体に対する質量比率を以下のように変化させて、それぞれ角板を作製した。
(実施例3)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)を0.6重量部、ペンタエリスリトールジステアレート(界面活性剤)を0.6重量部、シリンダ温度を250℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練にて混合することにより環状オレフィン樹脂を得た。このとき、酸化防止剤を、環状オレフィン樹脂全体に対して1質量%となるように混合した。そして、この環状オレフィン樹脂を射出成形機を用いて厚さ3mmの角板に射出成形した。
【0143】
(実施例4)
酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して1.5質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0144】
(実施例5)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して2質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0145】
(比較例3)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して0.1質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0146】
(比較例4)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して0.7質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0147】
(比較例5)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して2.5質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0148】
(光透過率の測定)
実施例3〜5、比較例3〜5の各角板について、波長約400nmに近似した条件として、波長405nmにおける初期透過率T0、短波長の光照射に伴う光透過率の変化量ΔTCの測定を行った。透過率の測定方法はASTM D 1003に準拠した。
各角板の作成後速やかに測定された透過率をT0とした。また、T0と角板に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射してから測定して得られた値との差をΔTCとした。To、ΔTCの測定結果を表2にまとめる。
【0149】
【表2】
測定の結果、実施例3〜5のように、環状オレフィン樹脂全体に対して、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタンである酸化防止剤を、1質量%以上2%質量%以下含ませた場合に、光透過率の変化量ΔTCを1%未満に抑えることができたが、酸化防止剤を上記範囲外で含ませた場合の比較例3〜5は、光透過率の変化量ΔTCが1%を越えて著しく白濁した。
【0150】
【発明の効果】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、エチレンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とを含むため、短波長の光を長時間照射されても屈折率の変動は小さい。また、この他に炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むので、成形時の収縮が抑えられるため、高い精度の形状を有した成形物を作製できる。
よって、このオレフィン樹脂をプラスチック製光学素子に適用することで、高密度の光情報記録媒体での情報の再生、記録を長時間にわたり良好なピックアップ特性で行なうことができる。
また、上記環状オレフィン樹脂は、高い光透過性を有するとともに、温度、湿度といった環境の変動に伴なう光透過率劣化が低く抑えられる。
よって、短波長の光の照射や環境の変動に由来する白濁や屈折率の変動が抑えられたプラスチック製光学素子を提供できるとともに、環境の変動に関わらず良好なピックアップ特性を維持可能な光ピックアップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置1の概略を示す側面図である。
【図2】本発明に係る対物レンズ10の断側面図である。
【図3】本発明の別の実施例に係る対物レンズ10aの断側面図である。
【図4】別の実施例に係る対物レンズ10bの断側面図である。
【図5】別の実施例に係る対物レンズ10cの断側面図である。
【図6】別の実施例に係る対物レンズ10dの断側面図である。
【図7】別の実施例に係るホログラム光学素子10e及び対物レンズ10fの断側面図である。
【符号の説明】
1 光ピックアップ装置
2 光源
4 光軸
5 光情報記録媒体
10、10a、10b、10c、10d、10f
対物レンズ(プラスチック製光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b輪帯状凸部
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境変化や長時間の光照射に対する耐性を有する環状オレフィン樹脂と、この環状オレフィン樹脂を適用したプラスチック製光学素子と、このプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、媒体と略記)に対して情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチック製光学素子とすることが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1)等が知られている。
【0004】
ところで、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)の場合よりも短い波長で情報の読み書きを行なうBlu−ray Disc等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器が新たに開発されるようになってきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−105131(第5頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、例えばBlu−ray Discでは情報の読み書きに波長約400nmの光を用いるが、特許文献1の場合では、光学素子がこのような短波長の光の照射を受けるにつれて白濁したり屈折率が変動したりして寿命が短くなるという問題があった。また、温度や湿度といった環境の変動のために光学素子が白濁するという問題もあった。よって、光学素子の交換が必要になる場合があった。
そこで、このような光学素子の白濁を防止するために、酸化防止剤の添加量を増加させることが考えられるが、単に酸化防止剤を添加すると、光透過率が低下してしまう。さらに、樹脂中に酸化防止剤を十分に混練することが難しく残留してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、環境変化や長時間の光照射に対する耐性を有したプラスチック製光学素子と、良好なピックアップ特性を容易に維持できる光ピックアップ装置とを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤と、を含む環状オレフィン樹脂であって、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であるとともに、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化9】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化10】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、環状オレフィン樹脂は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤とを含んでいる。
環状オレフィン樹脂が界面活性剤を含むことで、この環状オレフィンの成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置した場合の400nmにおける光透過率の劣化を0.5%以下とすることができる。よって、温度や湿度といった環境の変動によってプラスチック製光学素子の光透過率が劣化しないようにすることができるので、光学素子の寿命を伸ばして、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
また、環状オレフィン樹脂が上記環状オレフィン系重合体と酸化防止剤を含むことで、例えば400nmといった短波長の光の照射を長時間受けた場合に、屈折率の変動等が抑えられる。よって、例えばこの環状オレフィン樹脂で光学素子を作製した場合、短波長の光の照射に伴なう光学素子の劣化を抑え、光学素子の寿命を伸ばすことができる。
また、上記環状オレフィン系重合体を水素添加処理することで、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上という高い値になる。よって、光情報記録媒体に対する情報の書き込み、読み取りを、高いエネルギー効率で行なうことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化11】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化12】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂に含まれる環状オレフィン系重合体は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤とを含んでいる。
環状オレフィン樹脂が界面活性剤を含むことで、この環状オレフィンの成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置した場合の400nmにおける光透過率の劣化を0.5%以下とすることができる。
また、環状オレフィン樹脂が上記環状オレフィン系重合体と酸化防止剤を含むことで、例えば400nmといった短波長の光の照射を長時間受けた場合に、屈折率の変動等が抑えられる。
また、上記環状オレフィン系重合体を水素添加処理することで、厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上という高い値になる。よって、光情報記録媒体に対する情報の書き込み、読み取りを、高いエネルギー効率で行なうことができる。
これらのことにより、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体から得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、
前記環状オレフィン樹脂全体に対して前記酸化防止剤は、1質量%以上2質量%以下含まれていることを特徴とする。
【化13】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化14】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂に含まれる環状オレフィン系重合体は、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンから誘導された構成単位を含んだ環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含み、環状オレフィン樹脂全体に対して酸化防止剤が、1質量%以上2質量%以下含まれているので、例えば、約400nmといった短波長の光を長時間受けた場合でも白濁することを低減でき、また、屈折率の変動等が抑えられる。よって、短波長化した光源に対しての光透過率も劣化することなく、光学素子としての寿命を延ばすことができ、光学素子の交換頻度も減らすことができる。
また、酸化防止剤を上記範囲で添加することによって、樹脂中に酸化防止剤を十分に混練することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプラスチック製光学素子において、
前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、前記成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの前記初期値に対する光透過率の劣化が1%未満であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、環状オレフィン樹脂の成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの初期値に対する光透過率の劣化が1%未満であるので、短波長の光を長時間受けた場合でも光透過率の劣化を抑えることができ、光学素子の寿命を延ばすことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のプラスチック製光学素子において、
少なくとも一つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0021】
請求項5〜請求項9に記載の発明によれば、長時間光の照射を受けること伴なう屈折率の変動を抑えた環状オレフィン樹脂を適用することで、長期間にわたり、光に高い精度で光路差を付与できる。よって、長い運転時間にわたる光情報記録媒体に対する光の照射や光情報記録媒体で反射した光の集光を高い信頼度で行なうことができる。こうしてプラスチック製光学素子の寿命を延ばすことで、良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行なえる光ピックアップ装置を容易に維持管理できる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光源から出射される光の波長は390nm〜420nmであることを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明によれば、プラスチック製光学素子に適用される環状オレフィン樹脂は炭素数2〜20のα−オレフィンから誘導された構成単位と環状オレフィンから誘導された構成単位と酸化防止剤とを含んでいるので、Blu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対応した390nm〜420nmという範囲の波長の光を透過する場合でも、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、プラスチック製光学素子の寿命を伸ばし、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光源から出射される光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明によれば、長期間にわたり高い精度で光に光路差を付与できる光路差付与構造を有したプラスチック製光学素子を対物光学素子とすることで、複数種の光情報記録媒体に対して高い信頼度で光を集光することができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子において、
複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする。
【0027】
請求項12に記載の発明によれば、光学素子ユニットが、長期間にわたり高い精度で光に光路差を付与できる光路差付与構造を有したプラスチック製光学素子を少なくとも一つ有することで、良好なピックアップ特性を有した光ピックアップ装置を作製できる。
【0028】
請求項13に記載の発明は、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、前記光の前記光情報記録媒体への照射及び/又は前記光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、前記光学素子ユニットは、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなるプラスチック製光学素子を有し、前記プラスチック製光学素子は、少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の波長の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする。
【化15】
(上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1であり、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよく、かつこの単環又は多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)
【化16】
(上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2であり、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13又はR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0029】
請求項13に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0030】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする。
【0031】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0032】
請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする。
【0033】
請求項17に記載の発明は、請求項13に記載の光ピックアップ装置において、
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする。
【0034】
請求項14〜17に記載の発明によれば、請求項5〜9に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0035】
請求項18に記載の発明は、請求項13〜17のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記光源は波長390nm〜420nmの光を出射することを特徴とする。
【0036】
請求項18に記載の発明によれば、請求項10に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0037】
請求項19に記載の発明は、請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記プラスチック製光学素子は、前記光源から出射される波長の光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする。
【0038】
請求項19に記載の発明によれば、請求項11に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0039】
請求項20に記載の発明は、請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記プラスチック製光学素子は、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする。
【0040】
請求項20に記載の発明によれば、請求項12に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体及びこの共重合体のグラフト変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理前重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含んでいる。
ここで、本発明に係る環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体で測定したASTM D1003準拠による400nmにおける光線透過率が85%以上の重合体であるとともに、上記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿に放置(例えば温度25℃、湿度40%の条件下に1時間放置)した場合の400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下である。
また、本発明に係る環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの前記初期値に対する光透過率の劣化が1%未満である。
【0042】
本発明の環状オレフィン樹脂の環状オレフィン系共重合体は、好適には、少なくとも1種の炭素数が2〜20のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとを共重合させて得られるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、およびそのグラフト変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理前重合体を水素添加処理して得られる。
【0043】
ここで、環状オレフィン系重合体を構成する式(1)又は(2)で表される環状オレフィンについて説明する。本発明で用いられる環状オレフィンは、下記式(1)又は(2)で表される。
【0044】
【化17】
【0045】
上記式(1)中、nは0又は1であり、mは0又は1以上の整数であり、qは0又は1である。なお、qが1の場合には、RaおよびRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子又は炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
【0046】
R1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0047】
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0048】
さらに上記式(1)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環又は多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環又は多環は二重結合を有していてもよい。ここで、形成される単環又は多環の具体例を下記に示す。
【化18】
上記例示において、1又は2の番号が付された炭素原子は、式(1)においてそれぞれR15(R16)又はR17(R18)が結合している炭素原子を示している。またR15とR16とで、又はR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
【0049】
【化19】
【0050】
上記式(2)中、pおよびqは0又は1以上の整数であり、mおよびnは0、1又は2である。またR1〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基又はアルコキシ基である。ハロゲン原子は、前記式(1)におけるハロゲン原子と同じ意味である。
【0051】
炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基又は芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基およびアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基が例示される。
【0052】
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基などを例示することができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子で置換されていてもよい。
【0053】
ここで、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子又はR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R9およびR13で表される基が、又はR10およびR11で表される基が、互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)又はプロピレン基(−CH2CH2CH2−)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。
【0054】
さらに、n=m=0のとき、R15とR12又はR15とR19とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環又は多環の芳香族環として、たとえば下記のようなR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
【化20】
ここでqは、式(2)におけるqと同じ意味である。
【0055】
上記のような式(1)又は式(2)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。一例として、
【化21】
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(別名ノルボルネン。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0056】
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0057】
さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
【0058】
この他、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン誘導体、
【化22】
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以後単にテトラシクロドデセンという。上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)、およびこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
【0059】
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
【0060】
さらに他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
【0061】
また、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]ペンタデカ−3−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]ヘキサデカ−3−エンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカ−4−エンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]エイコサ−5−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]エイコサ−4−エンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]ヘンエイコサ−5−エンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]ドコサ−5−エンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]ペンタコサ−5−エンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]ヘキサコサ−6−エンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0062】
本発明で使用することのできる前記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの具体例は、上記した通りであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7−145213号公報明細書の段落番号0032〜0054に示されており、本発明においても、この明細書に例示されるものを環状オレフィンとして使用することができる。
【0063】
上記のような式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの製造方法としては、例えば、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応を挙げることが出来る。
これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0064】
本発明で用いられる環状オレフィンからなる処理前重合体は、上記のような式(1)又は式(2)で表される環状オレフィンを用いて、たとえば特開昭60−168708号、同61−120816号、同61−115912号、同61−115916号、同61−271308号、同61−272216号、同62−252406号および同62−252407号などの公報において提案された方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
【0065】
そのうち、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素数2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。
なお炭素数が2〜20のα−オレフィンおよび環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
【0066】
環状オレフィン樹脂がα−オレフィン及び環状オレフィンランダム重合体から誘導される構成単位を有することで、環状オレフィン樹脂からなるプラスチック製光学素子が短波長の光を照射されることに伴なう屈折率の変動を防止することができる。
【0067】
ここで、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を構成する炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについて説明する。α−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状又は分岐状のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0068】
このα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のような炭素原子数が2〜20の少なくとも1種類のα−オレフィンから誘導される構成単位と、環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶融した際に、その溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。たとえば、極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶融することにより確認することができる。
【0069】
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記式(3)又は(4)で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
【0070】
【化23】
上記式(3)において、n、m、q、R1〜R18ならびにRaおよびRbは、式(1)におけるものと同じ意味である。
【0071】
【化24】
上記式(4)において、n、m、p、qおよびR1〜R19は、式(2)におけるものと同じ意味である。
【0072】
また本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
【0073】
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィン又は環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)シクロヘキサ−1−エンおよびシクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、1,4−ヘキサジエン、4−メチルヘキサ−1,4−ジエン、5−メチルヘキサ−1,4−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。これらの他のモノマーは、単独でも、あるいは組み合わせても用いることができる。
【0074】
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位を含有させる場合には、通常20モル%以下、さらには10モル%以下の量とすることが好ましい。
【0075】
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとを用いて、前記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
【0076】
また、この共重合反応では固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン又はハフニウムがあげられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基はアルキル基が置換していてもよい。
これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等があげられる。
【0077】
また、有機アルミニウムオキシ化合物および有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒については、例えば特開昭61−221206号、特開昭64−106号および特開平2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
【0078】
本発明において、水素添加処理の処理前重合体として用いられるグラフト変性物は、上記のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物である。
ここで用いられる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類があげられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(商標))などの不飽和カルボン酸、さらにこれら不飽和カルボン酸の誘導体たとえば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが例示される。
【0079】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0080】
これらのなかでは、α,β−不飽和ジカルボン酸およびα,β−不飽和ジカルボン酸無水物たとえばマレイン酸、ナジック酸(商標)およびこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、2種以上組合わせて用いることもできる。
【0081】
このようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物は、所望の変性率になるように、変性剤をこの共重合体に配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体とを所望の変性率になるように混合することにより製造することもできる。
【0082】
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体と変性剤とからグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。たとえば溶融状態にあるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいはα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などによりグラフト変性物を得ることができる。
【0083】
このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。またグラフト反応は、有機過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
【0084】
本発明では、水素添加処理の処理前重合体として、上記のようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、およびそのグラフト変性物のいずれかを単独で用いることができ、また同じグループの2種以上や、異なる2以上のグループを組み合わせて用いることもできる。
【0085】
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、さらには、70〜210℃であることが好ましい。
【0086】
また、環状オレフィン系重合体は、非晶性又は低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下である。
【0087】
135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は、好ましくは0.01〜20dl/gであり、より好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.08〜5dl/gである。
【0088】
ASTM D1238に準じ温度260℃、荷重2.16kgで測定した溶融流れ指数(MFR)は、通常0.1〜200g/10minであり、好ましくは1〜100g/10min、さらに好ましく3〜60g/10minである。
【0089】
軟化点は、サーモメカニカルアナライザーで測定した軟化点 (TMA)として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。ここで、軟化点の測定は、デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により行った。すなわちシート上に荷重49gをかけた石英製針を乗せ、5℃/minの速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度を軟化点(TMA)とした。
【0090】
上記の環状オレフィン系重合体のなかでは、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を水添処理して得られ、軟化点(TMA)が80℃以上であり、かつ極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであるものが好ましい。
【0091】
本発明における水添処理は、前記した処理前重合体を、環状飽和炭化水素を主成分とする溶媒中で、水素添加触媒の存在下に、水素添加することが好ましい。処理前重合体の溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、デカリン、シクロヘプタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、n−オクタンなどがあげられる。これらは1種単独で、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0092】
これらの中では、シクロヘキサン、n−ヘキサンが好ましく、特に、シクロヘキサンを50重量%以上含有する溶剤が好ましい。
【0093】
水素添加触媒金属としては、Pt、Rh、Pd、Cu、Y、Fe、Ru、W、Znなどがあげられる。好ましくは、ラニーニッケル、活性炭担持パラジウム、ウィルキンソン錯体が用いられる。
【0094】
水素添加の方法は、例えば、処理前重合体を1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%溶融した前記水素添加用の溶媒に、この重合体に対して0.5〜10重量%の濃度の触媒(金属として)を加え、反応温度20〜200℃、好ましくは40〜120℃、水素分圧0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaにおいて行う。反応時間は、要求される色相の改善度の応じて適宜選ばれるが、通常、5分〜12時間、好ましくは5分〜6時間の間で選ばれる。反応後、触媒は濾過などにより除去される。
【0095】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、上述の共重合体に酸化防止剤と界面活性剤とが添加されて調製される。
【0096】
酸化防止剤としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド等が適用できる。
このうち、脂肪酸としては、具体的には、例えば、2−エチルヘキソイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、モンタン酸、ナフテン酸が挙げられる。
【0097】
また、上記金属塩としては、これらの酸の各種金属塩が挙げられる。金属塩形成用金属としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Cd、Pbなどが挙げられる。金属塩としては、具体的には、例えば、ステアリン酸系の金属塩としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウム、12ーヒドロキシステアリン酸カルシウムが挙げられ、モンタン酸の金属塩としては、モンタン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0098】
これらの金属塩の内では、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウムなどのカルシウム塩が特に好ましく用いられる。
【0099】
また、脂肪酸酸アミドとしては、モノアミド(例:オレイン酸アミド(C18H35ON)、ステアリン酸アミド[C18H37ON]、エルカ酸アミド[C22H43ON]ベヘン酸アミド[C22H45ON])、ビスアミド(例:メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミド)等が挙げられる。
【0100】
また、これら酸化防止剤は組合わせて用いることもでき、たとえばテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムとを組合わせて用いることができる。
酸化防止剤は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部添加する。酸化防止剤の添加量が0.1重量部を下回る場合、白濁や屈折率の変動を効果的に抑制できない。一方、酸化防止剤の添加量が10重量部を超える場合、環状オレフィン樹脂の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。なお、酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がさらに好ましい。
なお、光ピックアップ装置のプラスチック製光学素子として使用する場合には、酸化防止剤の、環状オレフィン系重合体と酸化防止剤とその他添加剤とを含む環状オレフィン樹脂全体に対する質量%が、1質量%以上2質量%以下であることが最も好ましい。
【0101】
上述のように酸化防止剤を添加することで、光学素子が例えば400nmといった短波長の光を照射されることに伴なう白濁や屈折率の変動を防止してプラスチック製光学素子の寿命を延ばすことができる。
【0102】
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は環状オレフィン樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、環状オレフィン樹脂の白濁を防止する。
界面活性剤の親水基としては、具体的にヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。
【0103】
このような界面活性剤としては、より具体的にはたとえば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物又はアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
【0104】
界面活性剤は、環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.01〜10重量部添加される。界面活性剤の添加量が0.01重量部を下回る場合、温度、湿度の変動に伴なう環状オレフィン樹脂の白濁を効果的に抑えることができない。一方、添加量が10重量部を超える場合、環状オレフィン樹脂の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。界面活性剤の添加量は環状オレフィン系重合体100重量部に対して0.05〜5重量部とすることが好ましく、0.3〜3重量部とすることがさらに好ましい。
【0105】
このような環状オレフィン系樹脂は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)に優れている。特に本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、嵩高い環状オレフィンから導かれる構成単位と、同一分子中に親水基と疎水基とを有する界面活性剤とを特定割合で含有しており、高温高湿雰囲気下から常温常湿雰囲気下へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
【0106】
さらに環状オレフィン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内であれば、酸化防止剤、界面活性剤の以外の任意成分を含んでも良い。任意成分として、例えば紫外線吸収剤、防曇剤などが必要に応じて配合される。
【0107】
このような任意成分として配合される耐候安定剤の紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ニッケル系化合物、ヒンダードアミン系化合物があり、具体的には、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールや2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルフォスフォリックアシッドエチルエステルのニッケル塩、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケイトなどが挙げられる。
【0108】
本発明においては、環状オレフィン系重合体にさらに他の樹脂を配合した樹脂組成物を必要に応じて添加することもできる。他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内で添加される。
【0109】
ここで、環状オレフィン系重合体に添加し得る他の樹脂を以下に例示する。
(1)1個又は2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブタ−1−エン、ポリ4−メチルペンタ−1−エン、ポリブタ−1−エンおよびポリスチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。なおこれらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
(2)ハロゲン含有ビニル重合体具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴムなどが挙げられる。
【0110】
(3)α,β−不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、又は前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0111】
(4)不飽和アルコールおよびアミン、又は不飽和アルコールのアシル誘導体又はアセタールから誘導される重合体具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン、又は前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばエチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0112】
(5)エポキシドから誘導される重合体具体的にはポリエチレンオキシド又はビスグリシジルエーテルから誘導された重合体などが挙げられる。
(6)ポリアセタール具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレンなどが挙げられる。
(7)ポリフェニレンオキシド(8)ポリカーボネート(9)Sポリスルフォン(10)ポリウレタンおよび尿素樹脂
【0113】
(11)ジアミンおよびジカルボン酸および/又はアミノカルボン酸、又は相応するラクタムから誘導されたポリアミドおよびコポリアミド具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
(12)ジカルボン酸およびジアルコールおよび/又はオキシカルボン酸、又は相応するラクトンから誘導されたポリエステル具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。
【0114】
(13)アルデヒドとフェノール、尿素又はメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
(14)アルキッド樹脂具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂などが挙げられる。
【0115】
(15)飽和および不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂。
(16)天然重合体具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、あるいはそれらの誘導体たとえば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0116】
(17)軟質重合体、例えば、環状オレフィン成分を含む軟質重合体、α−オレフィン系共重合体、α−オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレン又はイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体又は共重合体等が挙げられる。
【0117】
環状オレフィン系重合体と、各種添加剤等との混合方法としては、それ自体公知の方法が適用できる。たとえば各成分を同時に混合する方法などである。
【0118】
この様にして得られる環状オレフィン樹脂は、色相が改善されているので、厚さ3mmの成形体で分光光度計により測定した、400nmにおける光線透過率が85%以上である。なお、環状オレフィン系重合体の上記光線透過率は87%とすることがさらに好ましく、89%以上とすることが特に好ましい。
【0119】
また、炭素数2〜20の少なくとも1種のα−オレフィン及び環状オレフィンからそれぞれ誘導された構成単位と、酸化防止剤を含んでいるので、短波長の光を長時間照射されても白濁したり屈折率が変動したりすることが抑えられる。
さらに、環状オレフィン樹脂は界面活性剤を含んでいるので、例えば温度60℃、湿度90%に168時間放置後、温度25℃、湿度40%といった常温常湿の条件下に1時間に放置するといった場合でも透過率の低下が0.5%以下と小さく抑えられる。よって、環境の変動に対して白濁したりすることが防止される。
【0120】
(成形物)
上述の環状オレフィン樹脂は、各種成形物の成形材料に適用可能である。
成形方法としては、射出成形法、押出成形法、吹込成形法、真空成形法、スラッシュ成形法等、公知の各種成形法が適用可能であるが、射出成形が成形性、生産性の観点から好ましい。成形条件は使用目的、又は成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、成形品にヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、成形物が黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
【0121】
本発明に係る環状オレフィン樹脂の成形により作製可能な成形物としては、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、種々の用途に使用でき、特に光学素子として好適である。
【0122】
光学素子の具体例としては、以下のものが挙げられる。光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザービームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザー走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0123】
また、その他の用途としては、医療用の血液検査セル等の各種検査セル、注射器シリンジ、パイプやチューブ、医薬用バイアルや薬液用容器、プリント基板の絶縁膜等にそれぞれ使用できる。
【0124】
これらの中でも、低複屈折性が要求される光ピックアップ装置を構成する光学系レンズやレーザー走査系レンズとして好適であり、光ピックアップ装置の光学系レンズに最も好適である。
【0125】
[光ピックアップ装置]
次に、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置について図1及び図2を参照して説明する。
本発明の光ピックアップ装置1は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用するいわゆる次世代のDVD(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なう装置である。
光ピックアップ装置1は、光源2から出射されるレーザ光(光)を、コリメータレンズ3、後述する対物レンズ(プラスチック製光学素子)10といった単玉光学素子を通過させて、光軸4上で光情報記録媒体5の情報記録面6に集めて集光スポットを形成し、情報記録面6からの反射光を、偏向ビームスプリッタ7で取り込み、検出器8の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
光源2は、レーザダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmという2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。
コリメータレンズ3、対物レンズ(プラスチック製光学素子)10、偏向ビームスプリッタ7は、光学素子ユニットを構成する。
【0126】
本発明に係る対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を射出成形で成形することにより作製される。対物レンズ10は図2に示すように、両面非球面の単玉光学素子であり、その一方(光源側)の光学面11上に、該光学面11を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造20を有している。
光路差付与構造20は、光学面11が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面21〜23のうち隣り合う輪帯状レンズ面21〜23は異なる屈折力を有している。
第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは、同一の光学面11上にあり、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっている。
第1輪帯状レンズ面21は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面22は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面23は、次世代DVDに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面21〜23を通過した光は、情報記録面6の同じ位置に集光されるようになっている。
なお、図2では、第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは同一光学面11上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面21、23とは同一光学面上に設けなくても良く、また、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくても良い。また、3つの輪帯状レンズ面21〜23は5つであっても良く、少なくとも3つ以上であれば良い。
【0127】
対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂から成形されるので、次世代DVDの再生に伴ない、405nmといった短波長の光の照射を長時間にわたって受けても、白濁や屈折率の変動が抑えられる。よって、長い運転時間にわたって、光源2で出射した光の情報記録面6への集光と、情報記録面6で反射した光の検出器8へ向けての集光を高い信頼性で行なうことができる。
また、上述の環状オレフィン樹脂は界面活性剤を含んでいるため、温度や湿度が著しく変動するような場合にも、白濁したりすることはない。そのため、光ピックアップ装置1において、環境の変動に関わらず良好なピックアップ特性を維持できる。
【0128】
なお、本発明に係る対物レンズ10は、上記光路差付与構造20を有するものに限らず、例えば図3〜図7に示す構造20a〜20dを有する対物レンズ10a〜10eとしても良い。
【0129】
図3における光路差付与構造20aは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21aからなり、複数の回折輪帯21aの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21aの光学面11aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯21aは、光軸4から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図3に示す対物レンズ10aは、いわゆる回折レンズである。
【0130】
図4における光路差付与構造20bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部21bを同心円状に有している。輪帯状凹部21bは、光学面11bのうちの光軸4を中心とした一方の面(図4における光軸4を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部21bどうしは、連続して一体になっており、各輪帯状凹部21b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部21bを形成する光学面22bは、光学面11bに対して平行移動した面となっている。図4に示す対物レンズ10bはいわゆる位相差レンズである。
なお、図4では、隣り合う輪帯状凹部21bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面11bに輪帯状凹部21bを個々に設けたものとしても良い(この場合、例えば図2に示した対物レンズ10と同様の構造となる)。また、図4では輪帯状凹部21bを同心円状に有しているとしたが、図5に示すように、図2の第3輪帯状レンズ面23上に輪帯状凸部23bを有した対物レンズ10cとしても良い(図5中、図2と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
【0131】
図6における光路差付与構造20dは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21dからなり、複数の回折輪帯21dの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21dの光学面11dが不連続面である。そして、各回折輪帯21dの断面が光軸方向に沿った3段22dの階段状であり、各段22dの光学面12dが不連続面で、光軸4に対して直交する面となっている。
なお、図6に示すレンズ10dは、例えば、図7に示すように図6と同様の光路差付与構造20dを有するホログラム光学素子(HOE)10eと対物レンズ10fとで別体の構成としても良い。この場合、ホログラム光学素子10eは、平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ10fの面に光路差付与構造20dを設ける。
【0132】
なお、本発明に係る光ピックアップ装置1は、例えばCD、現行DVD、次世代DVDの3種の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なうこととしてもよい。光ピックアップ装置1で情報の再生、記録を行なう光情報記録媒体5の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
【0133】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
(実施例1)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体をシクロヘキサンに溶解させ、濃度15重量%の溶液を調製した。その溶液300gにラニーニッケル触媒(ニッケル含有量40重量%)1.3gを加え、水素分圧3MPa、温度100℃で4時間反応させて水素添加処理を行なった。触媒を濾過した後、反応液をアセトン中に加えて、共重合体を析出させた。この共重合体100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)0.6重量部及びペンタエリスリトールジステアレート(界面活性剤)0.6重量部を、シリンダ温度を250℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練にて混合することにより環状オレフィン樹脂を得た。得られた環状オレフィン系樹脂を射出成形機(東芝機械製IS−55EPN)を用いて厚さ3mmの角板に射出成形した。
【0135】
(実施例2)
酸化防止剤として、ステアリン酸を共重合体100重量部に対して0.6重量部混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例1と揃えて角板を作製した。
【0136】
(比較例1)
界面活性剤を添加せず、それ以外の条件については実施例1と揃えて角板を作製した。
【0137】
(比較例2)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体について水素添加処理を行なわずに、ランダム共重合体100重量部に対してテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)0.6重量部を溶融混練法で混合して環状オレフィン樹脂を得た。環状オレフィン樹脂には界面活性剤は添加しなかった。上記混合物について、実施例1と同じ条件でプレス成形を行ない、角板を作製した。
【0138】
(光透過率の測定)
実施例1、2及び比較例1、2の各角板について、波長約400nmに近似した条件として、波長405nmにおける初期透過率To、高温多湿条件化での光透過率の変化量ΔTA、短波長の光照射に伴なう光透過率の変化量ΔTBの測定を行なった。透過率の測定方法はASTM D1003に準拠した。
各板の作製後速やかに測定された透過率をToとした。また、Toと、角板を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿条件として、温度25℃、湿度40%の条件下に1時間放置した時点での透過率との差をΔTAとした。そして、Toと、角板に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射してから測定して得られた値との差をΔTBとした。なお、比較例1、2についてはΔTBを測定しなかった。
To、ΔTA、ΔTBの測定結果を表1にまとめる。
【0139】
【表1】
測定の結果、水素添加処理を行なわなかった比較例2では、Toは85%を下回り、光学素子としては実用にならなかった、水素添加処理を行なった実施例1、実施例2、比較例1ではToは85%を上回り、実用の範囲内であった。
【0140】
角板を高温多湿条件下に置いた場合の透過率の変化を測定したところ、界面活性剤が添加されていない比較例1、比較例2では、ΔTAの値が、5.0%及び1.0%となり、実用限度である0.5%を超えて著しく白濁した。一方、実施例1、実施例2ではΔTAの値は0.5%であり、実用の範囲に収まった。
【0141】
角板に短波長の光を照射した場合の透過率の変化を測定したところ、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを添加した実施例1では、ΔTBの値は1.0%であり、実用限度である0.5%を超えた。一方、ステアリン酸を添加した実施例2では、ΔTBの値は0.3%であり実用の範囲に収まった。
【0142】
次に、酸化防止剤のオレフィン樹脂全体に対する質量比率を以下のように変化させて、それぞれ角板を作製した。
(実施例3)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとのランダム共重合体100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(酸化防止剤)を0.6重量部、ペンタエリスリトールジステアレート(界面活性剤)を0.6重量部、シリンダ温度を250℃に設定した二軸押出機に供給して溶融混練にて混合することにより環状オレフィン樹脂を得た。このとき、酸化防止剤を、環状オレフィン樹脂全体に対して1質量%となるように混合した。そして、この環状オレフィン樹脂を射出成形機を用いて厚さ3mmの角板に射出成形した。
【0143】
(実施例4)
酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して1.5質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0144】
(実施例5)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して2質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0145】
(比較例3)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して0.1質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0146】
(比較例4)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して0.7質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0147】
(比較例5)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、環状オレフィン樹脂全体に対して2.5質量%となるように混合した。酸化防止剤以外の条件は実施例3と揃えて角板を作製した。
【0148】
(光透過率の測定)
実施例3〜5、比較例3〜5の各角板について、波長約400nmに近似した条件として、波長405nmにおける初期透過率T0、短波長の光照射に伴う光透過率の変化量ΔTCの測定を行った。透過率の測定方法はASTM D 1003に準拠した。
各角板の作成後速やかに測定された透過率をT0とした。また、T0と角板に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射してから測定して得られた値との差をΔTCとした。To、ΔTCの測定結果を表2にまとめる。
【0149】
【表2】
測定の結果、実施例3〜5のように、環状オレフィン樹脂全体に対して、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタンである酸化防止剤を、1質量%以上2%質量%以下含ませた場合に、光透過率の変化量ΔTCを1%未満に抑えることができたが、酸化防止剤を上記範囲外で含ませた場合の比較例3〜5は、光透過率の変化量ΔTCが1%を越えて著しく白濁した。
【0150】
【発明の効果】
本発明に係る環状オレフィン樹脂は、エチレンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とを含むため、短波長の光を長時間照射されても屈折率の変動は小さい。また、この他に炭素数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むので、成形時の収縮が抑えられるため、高い精度の形状を有した成形物を作製できる。
よって、このオレフィン樹脂をプラスチック製光学素子に適用することで、高密度の光情報記録媒体での情報の再生、記録を長時間にわたり良好なピックアップ特性で行なうことができる。
また、上記環状オレフィン樹脂は、高い光透過性を有するとともに、温度、湿度といった環境の変動に伴なう光透過率劣化が低く抑えられる。
よって、短波長の光の照射や環境の変動に由来する白濁や屈折率の変動が抑えられたプラスチック製光学素子を提供できるとともに、環境の変動に関わらず良好なピックアップ特性を維持可能な光ピックアップ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置1の概略を示す側面図である。
【図2】本発明に係る対物レンズ10の断側面図である。
【図3】本発明の別の実施例に係る対物レンズ10aの断側面図である。
【図4】別の実施例に係る対物レンズ10bの断側面図である。
【図5】別の実施例に係る対物レンズ10cの断側面図である。
【図6】別の実施例に係る対物レンズ10dの断側面図である。
【図7】別の実施例に係るホログラム光学素子10e及び対物レンズ10fの断側面図である。
【符号の説明】
1 光ピックアップ装置
2 光源
4 光軸
5 光情報記録媒体
10、10a、10b、10c、10d、10f
対物レンズ(プラスチック製光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b輪帯状凸部
Claims (20)
- 炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤と、界面活性剤と、を含む環状オレフィン樹脂であって、
厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であるとともに、
前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする環状オレフィン樹脂。
- 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、
少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、
前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、
前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とするプラスチック製光学素子。
- 光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられるプラスチック製光学素子であって、
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体から得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなり、
前記環状オレフィン樹脂全体に対して前記酸化防止剤は、1質量%以上2質量%以下含まれていることを特徴とするプラスチック製光学素子。
- 前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、前記成形体に波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射したときの前記初期値に対する光透過率の劣化が1%未満であることを特徴とする請求項3に記載のプラスチック製光学素子。
- 少なくとも一つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項2又は5に記載のプラスチック製光学素子。 - 前記光源から出射される光の波長は390nm〜420nmであることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光源から出射される光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子。
- 複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のプラスチック製光学素子。
- 光情報記録媒体に対して情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、
前記光の前記光情報記録媒体への照射及び/又は前記光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、
前記光学素子ユニットは、
炭素原子数が2〜20の少なくとも1種のα−オレフィンと下記式(1)又は(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体と、酸化防止剤とを含む環状オレフィン樹脂を成形してなるプラスチック製光学素子を有し、
前記プラスチック製光学素子は、少なくとも一つの光学面に、この光学面を通過する所定の波長の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有し、
前記環状オレフィン樹脂の厚さ3mmの成形体の波長約400nmにおける光線透過率の初期値が85%以上であり、
前記成形体を温度60℃、湿度90%の条件下に168時間放置後、常温常湿中に放置した場合の波長約400nmにおける光透過率の劣化が0.5%以下であることを特徴とする光ピックアップ装置。
- 前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部及び/又は輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。 - 前記光源は波長390nm〜420nmの光を出射することを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記プラスチック製光学素子は、前記光源から出射される波長の光を、前記光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記プラスチック製光学素子は、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成してなる光学素子ユニットに用いられ、かつ、前記複数の単玉光学素子のうちの少なくとも一つの単玉光学素子として用いられることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
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