JP2006321906A - 樹脂組成物、成形体、プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
樹脂組成物、成形体、プラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明は、環境変化や長時間の光照射に対して耐性を有する環状オレフィン系樹脂から構成される樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いて成型された成型体、プラスチック製光学素子、及びこのプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置に関するものである。
従来、MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった記録機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子の適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通することがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
また、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)で用いるよりも短い波長で情報の記録、再生を行なうBlu−ray Disk等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器の開発が新たに行なわれている。
特開2002−105131号公報 (第4頁)
しかしながら、Blu−ray Disk等のいわゆる次世代DVDでは、情報の記録、再生には波長400nm付近の光を用いるが、特許文献1に記載の方法では光学素子がこのような短波長の光照射を受けるため、光学素子自身が白濁したり、あるいは屈折率が変動するなどの樹脂特性の劣化により、光学素子の交換が必要になる場合があった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高精度の光学特性を有し、かつ長時間にわたってその特性を維持可能な樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いて成型された成型体、プラスチック製光学素子、及びこのプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)との比B/Aが、0.05以下であることを特徴とする樹脂組成物。
下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)との比B/Aが、0.05以下であることを特徴とする樹脂組成物。
〔式中、x、yはそれぞれ共重合比を表し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。また、R1は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基であり、R2は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種以上の1価の基であり、R3は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基である。〕
(請求項2)
下記一般式(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、炭化水素系溶媒に溶解して、不溶物である樹脂酸化物を濾過により除去し、該樹脂酸化物の含有量を0.03%以下に低減させたことを特徴とする樹脂組成物。
(請求項2)
下記一般式(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、炭化水素系溶媒に溶解して、不溶物である樹脂酸化物を濾過により除去し、該樹脂酸化物の含有量を0.03%以下に低減させたことを特徴とする樹脂組成物。
〔式中、x、yはそれぞれ共重合比を表し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数であり、nは1または2であり、置換基Qの置換数を示す。また、R1は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2+n価の基であり、R2は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種以上の1価の基であり、R3は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基であり、QはCOOR4で表される構造群から選ばれる1種以上の2価の基である。R4は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10以下の構造群から選ばれる1種以上の1価の基である。〕
(請求項3)
請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
(請求項3)
請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
(請求項4)
請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするプラスチック製光学素子。
請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするプラスチック製光学素子。
(請求項5)
樹脂組成物を用いて成型された厚さ3mmの成型体の波長400nmにおける光線透過率が、85%以上であることを特徴とする請求項4記載のプラスチック製光学素子。
樹脂組成物を用いて成型された厚さ3mmの成型体の波長400nmにおける光線透過率が、85%以上であることを特徴とする請求項4記載のプラスチック製光学素子。
(請求項6)
樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載のプラスチック製光学素子。
樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項7)
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項8)
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項9)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項10)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項11)
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
該複数の回折輪帯のうちの少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
該複数の回折輪帯のうちの少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
(請求項12)
光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、
該光学素子ユニットは、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。
光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、
該光学素子ユニットは、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。
(請求項13)
前記光源は、波長390nm以上、420nm以下の光を出射することを特徴とする請求項12に記載の光ピックアップ装置。
前記光源は、波長390nm以上、420nm以下の光を出射することを特徴とする請求項12に記載の光ピックアップ装置。
(請求項14)
前記光学素子ユニットは、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成され、かつ該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子が、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子であることを特徴とする請求項12または13に記載の光ピックアップ装置。
前記光学素子ユニットは、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成され、かつ該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子が、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子であることを特徴とする請求項12または13に記載の光ピックアップ装置。
本発明によれば、高精度の光学特性を有し、かつ長時間にわたってその特性を維持可能な樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いて成型された成型体、プラスチック製光学素子、及びこのプラスチック製光学素子を適用した光ピックアップ装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
請求項1に記載の発明では、光源から出射される光を用いて、光情報記録媒体に対して情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置等に用いられるプラスチック製光学素子(以下、単に光学素子ともいう)を構成する樹脂組成物であって、少なくとも脂環式構造を含む繰り返し単位を有する脂環式炭化水素系共重合体を用いて成形され、該脂環式炭化水素系共重合体の赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)の比B/Aが0.05以下であることを特徴とする。
また、請求項1に記載の発明によれば、光学素子に適用される脂環式炭化水素系の樹脂組成物には、1720±10cm-1に赤外吸収を有する化合物、すなわち脂環式炭化水素系樹脂の酸化劣化物の含有比率が少なく、この酸化劣化物は、樹脂の光劣化、熱劣化を促進するため、請求項1で規定する範囲を満たす炭化水素系樹脂組成物は、耐光性及び耐熱性の高い樹脂組成物となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、光学素子に適用される脂環式炭化水素系の樹脂組成物には、炭化水素系溶媒に溶解させたときに生じる不溶物(主成分は酸化劣化物)が含まれる割合が少なくなり、上記と同様にして、請求項2に記載の炭化水素系の樹脂組成物は、耐光性及び耐熱性の高い樹脂組成物となる。
従って、請求項1または2に記載の脂環式炭化水素系の樹脂組成物を適用したプラスチック製光学素子を用いることで、例えば、これをBlu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対するピックアップ装置に適用した場合、長期間にわたって良好なピックアップ特性で情報の読み書きを行なうことが可能となり、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
請求項5に記載の発明では、本発明のプラスチック製光学素子に適用される樹脂組成物が、請求項1または2に記載の脂環式炭化水素系重合体から構成される樹脂組成物を含んでいるため、この樹脂組成物を用いて得られた厚さ3mmの成形体の400nmにおける光線透過率は85%以上となる。このように高い光線透過率を具備した光学素子によって、光情報記録媒体への光の照射と、この光情報記録媒体で反射した光の検知とを少ないエネルギー損失で行なうことが可能となり、例えば、光源の出力を小さくして消費電力の少ない光ピックアップ装置等を作製できる。
また、請求項6、7に記載の発明によれば、光学素子を構成する脂環式炭化水素系樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgにおけるメルトインデックス値(MI)は20〜60g/10min(ASTM D1238準拠)であり、射出成形等の成形法に適した範囲にある。そのため、射出成形等の方法で光学素子を作製するとき、溶融した環状オレフィン樹脂が光路差付与構造に対応する部分の先端まで到達できるため、こうして成形された光学素子は高い精度を有する光路差付与構造を具備する。よって、光情報記録媒体に対する情報の再生、記録に用いられるような特定の波長の光に対して高い精度で光路差を付与できる。このため、複数種の光情報記録媒体に対して再生、記録を行なう光ピックアップ装置において、それぞれの光情報記録媒体に対応した波長の光を情報記録面で収束させたり、上記情報記録面で反射した光を集光して受光素子に導いたりする動作を高い信頼性で行なうことができる。このことにより、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行なえる光ピックアップ装置を作製できる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項7に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、これら複数の回折輪帯のうち少なくとも一つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ、各段の光学面が不連続面であることを特徴とする。
請求項8〜請求項11に記載の発明によれば、射出成形等の成形法に適したメルトインデックスの環状オレフィン樹脂をプラスチック製光学素子に適用することで、射出成形等の方法でプラスチック製光学素子を成形する時に、金型の輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部に対応する部分に、溶融した環状オレフィン樹脂が先端まで行き渡る。そのため、光路差付与構造をなす輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部が高い精度で形成されるので、特定の波長の光に高い精度で光路差を付与できる。
よって、複数種の光情報記録媒体に対して再生、記録を行なう光ピックアップ装置において、それぞれの光情報記録媒体に対応した波長の光を情報記録面で収束させたり、上記情報記録面で反射した光を集光して受光素子に導いたりする動作を高い信頼性で行なうことができる。このことにより、複数の光情報記録媒体に対して良好なピックアップ特性で情報の再生、記録を行なえる光ピックアップ装置を作製できる。
請求項12に記載の発明は、光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、該光学素子ユニットは、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明によれば、高い精度で光路差付与構造が形成されたプラスチック製光学素子を光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子とすることで、複数種の光情報記録媒体の情報記録面に対して高い信頼度で光を集光して収束させることができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。また、高い精度で光路差付与構造が形成された本発明のプラスチック製光学素子を光情報記録媒体に対して集光させる対物光学素子とすることで、複数種の光情報記録媒体の情報記録面に対して高い信頼度で光を集光して収束させることができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
請求項13に記載の発明によれば、請求項4〜請求項11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子であって、前記光源から出射される光の波長は390nm〜420nmであることを特徴とする。
請求項13に記載の発明において、プラスチック製光学素子に適用される樹脂組成物は、樹脂劣化を促進する樹脂の酸化物の含有量が少ないため,Blu−ray Discのような高い情報密度を有する光情報記録媒体に対応した390nm〜420nmという範囲の波長の光を透過する場合でも、白濁や透過率の変動といったプラスチック製光学素子を劣化させる現象の発生を抑制できる。よって、プラスチック製光学素子の寿命を伸ばし、光ピックアップ装置として信頼性の高いものを得ることができる。
請求項14に記載の発明は、光学素子ユニットは、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成され、かつ該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子が、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子であることを特徴とする。
請求項14に記載の発明によれば、光学素子ユニットの単玉光学素子のうちの少なくとも1つに、高い精度で光路差付与構造が形成された本発明の光学素子を適用することで、高い信頼性で光情報記録媒体に光を照射したり、光情報記録媒体で反射した光を集光したりすることができる。よって、良好なピックアップ特性で光情報記録媒体に対して情報の再生、記録をできる光ピックアップ装置を作製できる。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明のプラスチック製光学素子に適用される樹脂組成物は、前記一般式(1)で示される脂環式炭化水素系共重合体で、該脂環式炭化水素系樹脂組成物の赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)の比B/Aが0.05以下であるか,あるいは、前記一般式(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体で、炭化水素系溶媒に溶解させ、不溶物として生じる樹脂酸化物を濾過により除去し、該樹脂酸化物の含有量を0.03%以下に低減させたことを特徴とする。また、本発明の樹脂組成物により成型したプラスチック製光学素子は、厚さ3mmの成形体で測定したASTM D1003準拠による400nmにおける光線透過率が85%以上の重合体であるとともに、温度260℃、荷重2.16kgにおけるASTM D1238準拠によるメルトインデックスが20〜60g/10minであることが好ましい。
本発明で用いられる一般式(1)または(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体について説明する。
前記一般式(1)において、x、yはそれぞれ共重合比を表し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数である。また、R1は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基であり、R2は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種以上の1価の基であり、R3は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基である。
また、前記一般式(2)において、x、yはそれぞれ共重合比を表し、0/100≦y/x≦95/5を満たす実数であり、nは1または2であり、置換基Qの置換数を示す。また、R1は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2+n価の基であり、R2は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10の構造群から選ばれる1種以上の1価の基であり、R3は炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基であり、QはCOOR4で表される構造群から選ばれる1種以上の2価の基である。R4は水素原子及び炭化水素からなり、炭素数1〜10以下の構造群から選ばれる1種以上の1価の基である。
前記一般式(1)、(2)において、R1は好ましくは炭素数2〜12の炭化水素基群から選ばれる1種以上の2価の基であり、より好ましくは下記一般式(3)で表される2価の基である。
上記一般式(3)において、pは0〜2の整数である。
更に好ましくは、上記一般式(3)において、pが0または1である2価の基である。
R1の構造は、1種のみ用いても、2種以上併用しても構わない。R2の例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基等が挙げられるが、好ましくは、水素原子またはメチル基であり、最も好ましくは水素原子である。R3の例としては、この基を含む構造単位の好ましい例として、n=0の場合、例えば、(a)、(b)、(c)で表される基が挙げられる。
上記一般式、R1は前記一般式(1)、(2)のR1と同義である。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体おいて、共重合のタイプは特に制限されるものではなく、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合等、公知の共重合のタイプを適用することができるが、好ましくはランダム共重合である。
また、本発明の樹脂組成物においては、本発明の成形方法によって得られる製品の物性を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は特に限定されることはないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、それ以上共重合させた場合には、光学特性を損ない高精度の光学部品が得らることができなくなる。この時の共重合のタイプは特に限定はされないが、ランダム共重合が好ましい。
次に、本発明に係る一般式(1)、(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体を、より具体的に例示する。
一例として、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式(4)で表される環状オレフィンとを共重合させて得られるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体について説明するが、本発明の脂環式炭化水素系共重合体について何ら限定を加えるものではない。
上記一般式(4)において、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、Ra及びRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
R1〜R18ならびにRa及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
さらに上記一般式(4)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで、形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、一般式(4)において、それぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基及びイソプロピリデン基を挙げることができる。
上記一般式(4)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。
一例として、
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(別名ノルボルネン 上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
さらに、他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン誘導体、
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以後単にテトラシクロドデセンという。上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)、及びこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
さらに他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
また、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]ペンタデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]ヘキサデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカ−4−エン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]エイコサ−5−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]エイコサ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]ヘンエイコサ−5−エン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]ドコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]ペンタコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]ヘキサコサ−6−エン及びその誘導体などが挙げられる。
これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明に係る脂環式炭化水素系共重合体は、上記一般式(4)で表される環状オレフィンを用いて、例えば、ば特開昭60−168708号、同61−120816号、同61−115912号、同61−115916号、同61−271308号、同61−272216号、同62−252406号及び同62−252407号などの公報において提案された方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
そのうち、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。なおα−オレフィン及び環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
ここで、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を構成する炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについて説明する。α−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
このα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶融した際に、その溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。たとえば、極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶融することにより確認することができる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、前記一般式(4)で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記一般式(5)で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
上記一般式(5)において、n、m、q、R1〜R18ならびにRa及びRbは、前記一般式(4)におけるそれらと同義である。
また、本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンまたは環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)シクロヘキサ−1−エン及びシクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、ヘキサ−1,4−ジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチルヘキサ−1,4−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、ジシクロペンタジエン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。これらの他のモノマーは、単独でも、あるいは組み合わせても用いることができる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位を含有させる場合には、通常20モル%以下、さらには10モル%以下の量とすることが好ましい。
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと前記一般式(4)で表される環状オレフィンとを用いて、前記公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
また、この共重合反応では固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムがあげられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基にはアルキル基が置換していてもよい。これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
また、有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒については、例えば、特開昭61−221206号、特開昭64−106号及び特開平2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
本発明に係る脂環式炭化水素系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、さらには、70〜210℃であることが好ましい。
軟化点は、サーモメカニカルアナライザーで測定した軟化点(TMA)として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。ここで、軟化点の測定は、デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により行った。すなわちシート上に荷重49gをかけた石英製針を乗せ、5℃/minの速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度を軟化点(TMA)とした。
本発明に係る脂環式炭化水素系樹脂組成物は、少なくとも脂環式構造を含む繰り返し単位を有する脂環式炭化水素系共重合体で,該樹脂組成物の赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)の比B/Aが0.05以下であることを特徴とする脂環式炭化水素系共重合体、または、炭化水素系溶媒に溶解させ、不溶物(樹脂酸化物)を濾過により除去し、不溶物含有量を初めの状態の30%以下に低減させたことを特徴とする樹脂組成物に、界面活性剤及び各種可塑剤を添加した樹脂組成物として調製される。
(界面活性剤)
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止する。
界面活性剤は、同一分子中に親水基と疎水基とを有する化合物である。界面活性剤は樹脂表面への水分の付着や上記表面からの水分の蒸発の速度を調節することで、樹脂組成物の白濁を防止する。
界面活性剤の親水基としては、具体的にヒドロキシ基、炭素数1以上のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基、アンモニウム塩、チオール、スルホン酸塩、リン酸塩、ポリアルキレングリコール基などが挙げられる。ここで、アミノ基は1級、2級、3級のいずれであってもよい。界面活性剤の疎水基としては、具体的に炭素数6以上のアルキル基、炭素数6以上のアルキル基を有するシリル基、炭素数6以上のフルオロアルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数6以上のアルキル基は置換基として芳香環を有していてもよい。アルキル基としては、具体的にヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデセニル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ミリスチル、ステアリル、ラウリル、パルミチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。芳香環としてはフェニル基などが挙げられる。この界面活性剤は、上記のような親水基と疎水基とをそれぞれ同一分子中に少なくとも1個ずつ有していればよく、各基を2個以上有していてもよい。このような界面活性剤としては、より具体的にはたとえば、ミリスチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシトリデシルアミン、2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシテトラデシルアミン、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジ−2−ヒドロキシエチル−2−ヒドロキシドデシルアミン、アルキル(炭素数8〜18)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド、エチレンビスアルキル(炭素数8〜18)アミド、ステアリルジエタノールアミド、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、などが挙げられる。これらのうちでも、ヒドロキシアルキル基を有するアミン化合物またはアミド化合物が好ましく用いられる。本発明では、これら化合物を2種以上組合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.01〜10質量部添加される。界面活性剤の添加量が0.01質量部を下回る場合、温度、湿度の変動に伴なう成形物の白濁を効果的に抑えることができない。一方、添加量が10質量部を超える場合、成形物の光透過率が低くなり、光ピックアップ装置への適用が困難となる。界面活性剤の添加量は脂環式炭化水素系重合体100質量部に対して0.05〜5質量部とすることが好ましく、0.3〜3質量部とすることがさらに好ましい。
(可塑剤)
可塑剤は環状オレフィン樹脂のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
可塑剤は環状オレフィン樹脂のメルトインデックスを調節するため、必要に応じて添加される。
可塑剤としては、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、環状オレフィンの透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
このような環状オレフィン系樹脂は、透明性、低複屈折性、耐熱性、耐熱老化性、耐薬品性、耐溶剤性、誘電特性、種々の機械的特性、精密成形性、防湿性(低吸水性)に優れている。特に本発明に係る環状オレフィン系樹脂は、嵩高い環状オレフィンから導かれる構成単位と、同一分子中に親水基と疎水基とを有する界面活性剤とを特定割合で含有しており、高温や高湿度といった環境から常温常湿度へと環境変化した場合などにおいても優れた透明性を保持することができる。
本発明においては、環状オレフィン系重合体に、さらに他の樹脂を配合した樹脂組成物を必要に応じて添加することもできる。他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内で添加される。
ここで、環状オレフィン系重合体に添加し得る他の樹脂を以下に例示する。
(1)1個または2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体で、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブタ−1−エン、ポリ4−メチルペンタ−1−エン、ポリブタ−1−エン及びポリスチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。なおこれらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
(2)ハロゲン含有ビニル重合体で、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴムなどが挙げられる。
(3)α,β−不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体で、具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、または前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
(4)不飽和アルコール及びアミン、または不飽和アルコールのアシル誘導体またはアセタールから誘導される重合体で、具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリ ルメラミン、または前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
(5)エポキシドから誘導される重合体で、具体的にはポリエチレンオキシドまたはビスグリシジルエーテルから誘導された重合体などが挙げられる。
(6)ポリアセタール類で、具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレンなどが挙げられる。
(7)ポリフェニレンオキシド
(8)ポリカーボネート
(9)Sポリスルフォン
(10)ポリウレタン及び尿素樹脂
(11)ジアミン及びジカルボン酸及び/またはアミノカルボン酸、または相応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミドで、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
(8)ポリカーボネート
(9)Sポリスルフォン
(10)ポリウレタン及び尿素樹脂
(11)ジアミン及びジカルボン酸及び/またはアミノカルボン酸、または相応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミドで、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
(12)ジカルボン酸及びジアルコール及び/またはオキシカルボン酸、または相応するラクトンから誘導されたポリエステルで、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。
(13)アルデヒドとフェノール、尿素またはメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体で、具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
(14)アルキッド樹脂で、具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂などが挙げられる。
(15)飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂。
(16)天然重合体で、具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、あるいはそれらの誘導体、例えば、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。
(17)軟質重合体、例えば、環状オレフィン成分を含む軟質重合体、α−オレフィン系共重合体、α−オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレンまたはイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体または共重合体等が挙げられる。
脂環式炭化水素系共重合体と、他の樹脂成分や添加剤等との混合方法としては、それ自体公知の方法が適用でき、例えば、各成分を同時に混合する方法などである。
上述の様にして調製された環状オレフィン樹脂は、温度260℃、荷重2.16kgで測定したメルトインデックス(MI)が20〜60g/10minであることが好ましい。ここで、MIの測定方法は、ASTM D1238に準拠する。MIは、さらに好ましくは40〜60g/10minである。
ここで、上記MIは、例えばモノマーの組成比の選定による結晶化度の制御、重合方法や重合条件の選定による分子量の制御や、可塑剤の添加といった公知の方法により、調節することができる。
環状オレフィン樹脂のMIが上述の範囲内にあることで、射出成形等の方法で光学素子を成形する際、溶融した環状オレフィン樹脂は金型の後述する輪帯状レンズ面、回折輪帯、輪帯状凹部、輪帯状凸部に対応した部位の先端まで行き渡るので、高い精度で上記部位を形成することができる。よって、高い信頼性で媒体に光を照射したり媒体で反射した光を集光したりできる光学素子を作製することができる。
(光ピックアップ装置)
次に、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置について図1及び図2を参照して説明する。
次に、本発明のプラスチック製光学素子及び光ピックアップ装置について図1及び図2を参照して説明する。
本発明の光ピックアップ装置1は、波長650nmの光を適用する現行のDVD(以下、現行DVDと表記)、波長405nmの光を適用するいわゆる次世代のDVD(以下、次世代DVDと表記)の2種類の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なう装置である。
光ピックアップ装置1は、光源2から出射されるレーザ光(光)を、コリメータレンズ3、後述する対物レンズ(プラスチック製光学素子)10といった単玉光学素子を通過させて、光軸4上で光情報記録媒体5の情報記録面6に集めて集光スポットを形成し、情報記録面6からの反射光を、偏向ビームスプリッタ7で取り込み、検出器8の受光面に再びビームスポットを形成するものである。
光源2は、レーザダイオードを有して構成されており、公知の切り換え方法により、650nm、405nmという2種類の波長の光を選択して出射できる構成となっている。コリメータレンズ3、対物レンズ(プラスチック製光学素子)10、偏向ビームスプリッタ7は、光学素子ユニットを構成する。
本発明に係る対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を射出成形で成形することにより作成される。対物レンズ10は図2に示すように、両面非球面の単玉光学素子であり、その一方(光源側)の光学面11上に、該光学面11を通過する所定の光に対して予め定められた光路差を付与する光路差付与構造20を有している。
光路差付与構造20は、光学面11が光軸4を中心とした3つの輪帯状レンズ面(以下、内側から順に第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23と言う)により構成され、該3つの輪帯状レンズ面21〜23のうち隣り合う輪帯状レンズ面21〜23は異なる屈折力を有している。
第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは、同一の光学面11上にあり、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっている。
第1輪帯状レンズ面21は、波長650nm、405nm両方の光を通過させ、第2輪帯状レンズ面22は、現行DVDに対応した波長650nmの光を通過させ、第3輪帯状レンズ面23は、次世代DVDに対応した波長405nmの光を通過させる。そして、各輪帯状レンズ面21〜23を通過した光は、情報記録面6の同じ位置に集光されるようになっている。
なお、図2では、第1輪帯状レンズ面21と第3輪帯状レンズ面23とは同一光学面11上に設けられているが、これら第1及び第3輪帯状レンズ面21、23とは同一光学面上に設けなくても良く、また、第2輪帯状レンズ面22は、光学面11から平行移動した面となっているが、特に平行移動した面でなくても良い。また、3つの輪帯状レンズ面21〜23は5つであっても良く、少なくとも3つ以上であれば良い。
対物レンズ10は、上述の環状オレフィン樹脂を適用しているので、溶融して金型に射出して成形する際、金型の第1輪帯状レンズ面21、第2輪帯状レンズ面22、第3輪帯状レンズ面23の境界部分に対応する部分に確実に樹脂が行き渡っている。そのため、対物レンズ10は光路差付与構造20が高い精度で付与されている。
こうして形成された光路差付与構造20の作用により、対物レンズ10は現行DVD、次世代DVDといった複数種の光情報記録媒体5に対して、光源2で出射した光の情報記録面6への集光と、情報記録面6で反射した光の検出器8へ向けての集光を高い信頼性で行なうことができる。また、対物レンズ10をなす環状オレフィン樹脂は85%以上という高い光透過率を有しているため、上記集光は高い効率で行なうことができる。よって、光源2の消費電力を小さくすることができるので、光ピックアップ装置1全体の消費電力を軽減できる。
また、環状オレフィン樹脂は酸化防止剤を含んでいるので、次世代DVDの情報を再生、記録するための405nmという光を透過する場合でも、白濁や屈折率の変動がほとんど生じない。よって、光ピックアップ装置1を長期間にわたり、高いピックアップ特性で作動させることができる。
なお、本発明に係る対物レンズ10は、上記光路差付与構造20を有するものに限らず、例えば、図3〜図7に示す光路差付与構造20a〜20dを有する対物レンズ10a〜10eとしても良い。
図3における光路差付与構造20aは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21aからなり、複数の回折輪帯21aの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21aの光学面11aが不連続面となっている。また、複数の回折輪帯21aは、光軸4から離れるにしたがって厚みが増すように形成されている。図3に示す対物レンズ10aは、いわゆる回折レンズである。
図4における光路差付与構造20bは、光軸4を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部21bを同心円状に有している。輪帯状凹部21bは、光学面11bのうちの光軸4を中心とした一方の面(図4における光軸4を中心に上下の光学面)に5つずつ形成されている。また、隣り合う輪帯状凹部21bどうしは、連続して一体になっており、各輪帯状凹部21b全体としての断面が階段状となっている。また、各輪帯状凹部21bを形成する光学面22bは、光学面11bに対して平行移動した面となっている。図4に示す対物レンズ10bはいわゆる位相差レンズである。
なお、図4では、隣り合う輪帯状凹部21bどうしが連続して一体になっていて、全体の断面が階段状のものであるとしたが、単に光学面11bに輪帯状凹部21bを個々に設けたものとしても良い(この場合、例えば、図2に示した対物レンズ10と同様の構造となる)。また、図4では輪帯状凹部21bを同心円状に有しているとしたが、図5に示すように、図2の第3輪帯状レンズ面23上に輪帯状凸部23bを有した対物レンズ10cとしても良い(図5中、図2と同様の構成部分については同様の符号を付した)。
図6における光路差付与構造20dは、光軸4を中心とした複数の回折輪帯21dからなり、複数の回折輪帯21dの断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯21dの光学面11dが不連続面である。そして、各回折輪帯21dの断面が光軸方向に沿った3段22dの階段状であり、各段22dの光学面12dが不連続面で、光軸4に対して直交する面となっている。
なお、図6に示すレンズ10dは、例えば、図7に示すように図6と同様の光路差付与構造20dを有するホログラム光学素子(HOE)10eと対物レンズ10fとで別体の構成としても良い。この場合、ホログラム光学素子10eは、平板状の光学素子を使用して、該光学素子の対物レンズ10fの面に光路差付与構造20dを設ける。
なお、本発明に係る光ピックアップ装置1は、例えばCD、現行DVD、次世代DVDの3種の光情報記録媒体5について情報の再生、記録を行なうこととしてもよい。光ピックアップ装置1で情報の再生、記録を行なう光情報記録媒体5の組み合わせは設計事項であり、適宜設定される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《成型体の作製》
〔成型体Aの作製:本発明〕
(成型体A1の作製)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体5質量部を、60℃に加温しながらシクロヘキサン100質量部に溶解させ、不溶物(樹脂酸化物)を濾過により除去し、濾液に500質量部のエタノールを加えて、樹脂を析出させ、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して、樹脂酸化物の除去処理を行い、樹脂組成物を得た。こうして得られた樹脂組成物の赤外吸収測定を行い、2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)の比B/Aを測定した結果、0.01であった。
〔成型体Aの作製:本発明〕
(成型体A1の作製)
ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体5質量部を、60℃に加温しながらシクロヘキサン100質量部に溶解させ、不溶物(樹脂酸化物)を濾過により除去し、濾液に500質量部のエタノールを加えて、樹脂を析出させ、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して、樹脂酸化物の除去処理を行い、樹脂組成物を得た。こうして得られた樹脂組成物の赤外吸収測定を行い、2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)の比B/Aを測定した結果、0.01であった。
次いで、上記樹脂組成物100質量部に対して、界面活性剤としてペンタエリスリトールジステアレート0.5質量部を、ニ軸混練機(東芝機械社製、TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィードレート10kg/時間)に添加、混練した後、ペレット化した。得られたペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用いて70℃で2時間乾燥して水分を除去した後、射出成形機(ファナック社製AUTOSHOT MODEL 30A)により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、一次射出圧力98.1MPa、二次射出圧力78.4MPaにて、射出成形し、Φ30mm、厚さ3mmの成形板A1を得た。
(成型体A2、A3の作製)
上記成形板A1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.04、0.05に変更した以外は同様にして、成型体A2、A3を作製した。
上記成形板A1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.04、0.05に変更した以外は同様にして、成型体A2、A3を作製した。
〔成型体Bの作製:本発明〕
(成型体B1の作製)
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体を、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンのランダム共重合体に変更した以外は同様にして、吸光度比B/Aが0.02である樹脂組成物を用いた成型体B1を作製した。
(成型体B1の作製)
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体を、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンのランダム共重合体に変更した以外は同様にして、吸光度比B/Aが0.02である樹脂組成物を用いた成型体B1を作製した。
(成型体B2、B3の作製)
上記成形板B1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.04、0.05に変更した以外は同様にして、成型体B2、B3を作製した。
上記成形板B1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.04、0.05に変更した以外は同様にして、成型体B2、B3を作製した。
〔成型体Cの作製:本発明〕
(成型体C1の作製)
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体を、ガラス転移温度(Tg)180℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン,9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,602,7]ドデカ−4−エンのランダム共重合体に変更した以外は同様にして、吸光度比B/Aが0.01である樹脂組成物を用いた成型体C1を作製した。
(成型体C1の作製)
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体を、ガラス転移温度(Tg)180℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン,9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,602,7]ドデカ−4−エンのランダム共重合体に変更した以外は同様にして、吸光度比B/Aが0.01である樹脂組成物を用いた成型体C1を作製した。
(成型体C2、C3の作製)
上記成形板C1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.03、0.05に変更した以外は同様にして、成型体C2、C3を作製した。
上記成形板C1の作製において、樹脂酸化物の除去処理条件を適宜調整して、それぞれ吸光度比B/Aを0.03、0.05に変更した以外は同様にして、成型体C2、C3を作製した。
〔成型体Dの作製:比較例〕
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.D1〜D4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体D1〜D4を作製した。
上記成形板A1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.D1〜D4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体D1〜D4を作製した。
〔成型体Eの作製:比較例〕
上記成形板B1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.E1〜E4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体E1〜E4を作製した。
上記成形板B1の作製において、ガラス転移温度(Tg)135℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.E1〜E4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体E1〜E4を作製した。
〔成型体Fの作製:比較例〕
上記成形板C1の作製において、ガラス転移温度(Tg)180℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン,9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,602,7]ドデカ−4−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.F1〜F4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体F1〜F4を作製した。
上記成形板C1の作製において、ガラス転移温度(Tg)180℃、極限粘度[η]0.6dl/gであるエチレンとビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン,9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,602,7]ドデカ−4−エンのランダム共重合体として、吸光度比B/Aが異なる4つのロット品(Lot.F1〜F4)の100部を用い、樹脂酸化物の除去処理を除いた以外は同様にして、成型体F1〜F4を作製した。
《成型体の評価》
(光耐久性の評価)
80℃、55%RHの恒温恒湿槽内で、図1に記載の光ピックアップ装置を用い、各成型板上に光源2のレーザーダイオードから405nmの波長の光を直径1cmの円形スポット光として250時間に亘り連続照射を施した後、そのレーザー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って耐久性を評価した。
(光耐久性の評価)
80℃、55%RHの恒温恒湿槽内で、図1に記載の光ピックアップ装置を用い、各成型板上に光源2のレーザーダイオードから405nmの波長の光を直径1cmの円形スポット光として250時間に亘り連続照射を施した後、そのレーザー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って耐久性を評価した。
○:連続照射後、レーザー照射箇所に変質は全く認められない。
△:連続照射後、レーザー照射箇所に極僅か濁りが認められるが、実用上許容の範囲にある。
×:連続照射後、レーザー照射箇所に白濁現象が認められが実用上問題がある。
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いて成型された成型体は、比較例に対し、短波長の光を長時間連続照射しても着色や白濁を生じず、高い透明性を維持できることが分かる。
1 光ピックアップ装置
2 光源
3 コリメータレンズ
4 光軸
5 光情報記録媒体
6 情報記録面
7 偏光ビームスプリッタ
8 検出器
10、10a、10b、10c、10d、10f 対物レンズ(光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b 輪帯状凸部
2 光源
3 コリメータレンズ
4 光軸
5 光情報記録媒体
6 情報記録面
7 偏光ビームスプリッタ
8 検出器
10、10a、10b、10c、10d、10f 対物レンズ(光学素子、対物光学素子)
11、11a、11d、12d、22b 光学面
20、20a、20b、20c、20d 光路差付与構造
21 第1輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
21a、21d 回折輪帯
21b 輪帯状凹部
22 第2輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23 第3輪帯状レンズ面(輪帯状レンズ面)
23b 輪帯状凸部
Claims (14)
- 下記一般式(1)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、赤外吸収測定による2970±10cm-1に現れる吸収の吸光度(A)に対する1720±10cm-1に現れる吸収の吸光度(B)との比B/Aが、0.05以下であることを特徴とする樹脂組成物。
- 下記一般式(2)で表される脂環式炭化水素系共重合体を含有し、該脂環式炭化水素系共重合体は、炭化水素系溶媒に溶解して、不溶物である樹脂酸化物を濾過により除去し、該樹脂酸化物の含有量を0.03%以下に低減させたことを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とする成形体。
- 請求項1または2に記載の樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするプラスチック製光学素子。
- 樹脂組成物を用いて成型された厚さ3mmの成型体の波長400nmにおける光線透過率が、85%以上であることを特徴とする請求項4記載のプラスチック製光学素子。
- 樹脂組成物の温度260℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトインデックス(MI)値が、20<MI(g/10分)<60の範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載のプラスチック製光学素子。
- 少なくとも1つの光学面に、該光学面を通過する所定の光に対して、予め定められた光路差を付与する光路差付与構造を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、前記光学面が光軸を中心とした3つ以上の輪帯状レンズ面により構成され、該3つ以上の輪帯状レンズ面のうち、隣り合う輪帯状レンズ面は異なる屈折力を有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした位相差を生じる複数の輪帯状凹部または輪帯状凸部を同心円状に有することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。
- 前記光路差付与構造は、光軸を中心とした複数の回折輪帯からなり、前記複数の回折輪帯の断面が鋸歯状であり、かつ、各回折輪帯の光学面が不連続面であり、
該複数の回折輪帯のうちの少なくとも1つの回折輪帯の断面が階段状であり、かつ各段の光学面が不連続面であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック製光学素子。 - 光情報記録媒体に対し、情報の再生または記録を行う光ピックアップ装置であって、
光を出射する光源と、該光源から出射された光の該光情報記録媒体への照射または該光情報記録媒体で反射される光の集光を行なう光学素子ユニットとを備え、
該光学素子ユニットは、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。 - 前記光源は、波長390nm以上、420nm以下の光を出射することを特徴とする請求項12に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光学素子ユニットは、複数の単玉光学素子を一体に組み合わせて構成され、かつ該複数の単玉光学素子のうちの少なくとも1つの単玉光学素子が、請求項4〜11のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子であることを特徴とする請求項12または13に記載の光ピックアップ装置。
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-
2005
- 2005-05-19 JP JP2005146396A patent/JP2006321906A/ja active Pending
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