JP2004196908A - 易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器 - Google Patents
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Abstract
【目的】低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器を提供する。
【構成】下記の条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%と、ビニル単量体70〜5重量%をグラフト反応条件に付して得られた改質プロピレン系重合体を含有する易開封性容器用熱封着材、及び、該易開封性容器用熱封着材とプロピレン系樹脂表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有する易開封性容器。
(1)示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であること。
(2)球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有すること。
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
【構成】下記の条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%と、ビニル単量体70〜5重量%をグラフト反応条件に付して得られた改質プロピレン系重合体を含有する易開封性容器用熱封着材、及び、該易開封性容器用熱封着材とプロピレン系樹脂表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有する易開封性容器。
(1)示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であること。
(2)球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有すること。
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器に関し、特に、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する包装容器又は包装袋等に好適に用いられる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂容器本体を樹脂フィルム状蓋材で熱封着して包装するシールパック包装が、乳製品、菓子、果汁飲料等の主に飲食品の包装に盛んに用いられており、樹脂包装袋と共に重要な地位を占めるに到っている。そして、それらの熱封着材としては、従来より溶液型接着剤やホットメルト型接着剤が用いられてきたが、これらは、開封時に熱封着材が延性破壊を起こして糸状物を形成するため、開封が必ずしも容易ではなかったり、剥離面の外観が良くない等の易開封性に欠けるという問題があり、又、耐熱性不足のために、高温下で剥離してしまう等の封着性に欠けるという問題があった。
【0003】
こうした問題を改良すべく、封着性と易開封性を兼ね備えた熱封着材が、種々提案され、用いられている。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体に粘着付与剤を配合した組成物があり、又、オレフィン系重合体を芳香族ビニル単量体で改質した改質オレフィン系重合体を主成分とする材料(例えば、特許文献1参照。)等がある。又、プロピレン系樹脂を芳香族ビニル単量体で改質した改質プロピレン系樹脂を主成分とする熱封着材を、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する包装容器等の該プロピレン系樹脂面に熱封着した易開封性容器等も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特公平1−42967号公報。
【特許文献2】
特開平11−100483号公報。
【特許文献3】
特開2000−177079号公報。
【0005】
しかしながら、本発明者等の検討によると、それらに開示される易開封性容器は、低温での熱封着性において改良の余地を残すものであることが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、易開封性容器用熱封着材及び易開封性容器における前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の改質プロピレン系重合体を用いることにより、前記目的を達成できることを見出し本発明を完成したもので、即ち、本発明は、下記の条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%と、ビニル単量体70〜5重量%をグラフト反応条件に付して得られた改質プロピレン系重合体を含有する易開封性容器用熱封着材、及び、該易開封性容器用熱封着材とプロピレン系樹脂表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有する易開封性容器、を要旨とする。
【0008】
(1)示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であること。
(2)球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有すること。
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の易開封性容器用熱封着材を構成する改質プロピレン系重合体における結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよく、そのプロピレン以外のα−オレフィンとしては、通常、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のもの、具体的には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。又、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、二元又は三元以上であっても、ランダム又はブロック共重合体のいずれであってもよい。本発明におけるプロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、ブロピレン−エチレン−他α−オレフィンランダム共重合体等のプロピレン−エチレン系共重合体、又は、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体等のプロピレン−1−ブテン系共重合体が好ましく、プロピレン−エチレン系ランダム共重合体が特に好ましい。
【0010】
そして、本発明における結晶性プロピレン系重合体は、条件(1)において、示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であることが必須であり、115〜150℃であるのが好ましく、120〜140℃であるのが特に好ましい。この融点〔Tm 〕が前記範囲未満では、易開封性容器用熱封着材として耐熱性が劣り、一方、前記範囲超過では、低温での熱封着性が劣ることとなる。
【0011】
更に、本発明における結晶性プロピレン系重合体は、条件(2)において、球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有することが必須であり、以下の式(Ib)の関係を有するのが好ましく、以下の式(Ic)の関係を有するのが特に好ましい。
【0012】
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
11.9×Tm −1050<d<11.9×Tm −870 (Ib)
11.9×Tm −1010<d<11.9×Tm −920 (Ic)
【0013】
ここで、前記式は、結晶性プロピレン系重合体を後述する改質により易開封性容器用熱封着材として用いたとき、球晶サイズによって熱封着材表面に生ずる微細な凹凸が、開封性及び熱封着性に影響を及ぼすことを意味し、球晶半径〔d〕が前記範囲以下では、易開封性容器用熱封着材として低温での熱封着性が劣ることとなり、一方、前記範囲以上では、開封性が劣ることとなる。
【0014】
尚、本発明において、球晶半径〔d(μm)〕は、He−Neレーザー(λ=632.8nm)を偏光子に通した後、フィルム状のサンプルを透過させるときに起こる散乱強度プロファイルを測定する光散乱法により測定したものであり、散乱光のうち入射光とは垂直な電場ベクトル成分のみを検光し、得られるフローバーパターンの散乱像を解析して得られ、散乱強度は偏光子と検光子のそれぞれに対して45度の角度になるような位置で測定され、散乱強度が極大となる散乱角(θ)を用いて、以下の式から算出したものである。
d(μm)=4.09/〔4π/6328×sin(θ/2)〕
【0015】
又、前記条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体は、JIS K6921に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが、0.5〜200g/10分であるのが好ましく、1〜100g/10分であるのが更に好ましく、2〜50g/10分であるのが特に好ましい。
【0016】
本発明における前記結晶性プロピレン系重合体の製造方法は、前記条件(1)、及び(2)を満足する限り特に限定されるものではなく、従来公知の方法によることができ、例えば、代表的には、チタン含有化合物等の遷移金属化合物、或いは、該遷移金属化合物をマグネンウム含有化合物等の担体に担持させた担体担持化合物を主触媒とし、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物を助触媒とするチーグラー・ナッタ系触媒、又は、代表的には、2個の架橋された共役5員環配位子を含む周期表第4族遷移金属元素であるチタン族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)の化合物を主触媒とし、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、或いは更に有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物等を助触媒とするメタロセン系触媒等の触媒の存在下、スラリー法、バルク法、溶液法、或いは気相法等による連続或いは回分式等の各種重合方式により製造される。中で、本発明においては、メタロセン系触媒により重合されたものが好ましい。
【0017】
又、重合において分子量調節剤として水素を用いることができ、重合条件としては、通常−78〜160℃、好ましくは0〜150℃の範囲の重合温度で、通常、常圧〜9MPa、好ましくは0.5〜5MPaの範囲の重合圧力が採られる。
【0018】
尚、以上の本発明における結晶性プロピレン系重合体は、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性、及びスクラッチ性が共に優れたフィルムを得ることができる重合体として、例えば、特開2001−354716号公報等によって知られているものである。
【0019】
又、本発明の易開封性容器用熱封着材を構成する改質プロピレン系重合体におけるビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸〔ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸又はそのエステル類、無水マレイン酸、ジメチルマレエート、ジ(2−エチルヘキシル)マレエート等の他の不飽和カルボン酸又はそのエステル類、(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の不飽和モノ又はジハライド類等を挙げることができ、中で、芳香族ビニル化合物類が好ましく、スチレン、2−メチルスチレンが特に好ましく、就中、スチレンが好ましい。尚、本発明において、これらのビニル単量体は2種以上が併用されていてもよい。
【0020】
本発明において、改質プロピレン系重合体は、前記結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%、好ましくは40〜70重量%、特に好ましくは45〜65重量%と、前記ビニル単量体70〜5重量%、好ましくは60〜30重量%、特に好ましくは55〜35重量%をグラフト反応条件に付して得られたものであり、ビニル単量体がこの範囲未満では、熱封着材として封着力が強過ぎて易開封性容器としての開封が困難となり、一方、この範囲超過では、均質性が損なわれ実用に供し得ない。
【0021】
又、本発明において、グラフト反応条件としては、基本的には、従来公知の溶融混練下、溶液下、水性懸濁下等での、電子線照射或いはラジカル発生剤添加等による方法を採り得るが、本発明においては、ラジカル発生剤添加での水性懸濁法によるのが好ましい。
【0022】
ラジカル発生剤添加での水性懸濁法について、具体的に述べれば、ラジカル発生剤としては、分解温度が好ましくは50℃以上、特に好ましくは50〜130℃であって、油溶性であるものが好ましい。分解温度が50℃未満のものでは、ビニル単量体の重合が異常に進行して均質な改質重合体が得られにくい傾向となる。尚、ここで、分解温度とは、ベンゼン1リットル中にラジカル発生剤0.1モルを添加して10時間放置したときにラジカル発生剤の50%が分解するときの温度、所謂、「10時間半減期温度」である。
【0023】
本発明において、そのラジカル発生剤としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド(分解温度53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(分解温度55℃)、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(分解温度59.5℃)、オクタノイルパーオキサイド(分解温度62℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(分解温度72.5℃)、o−メチルベンゾイルパーオキサイド(分解温度73℃)、ベンゾイルパーオキサイド(分解温度74℃)、シクロヘキサノンパーオキサイド(分解温度97℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(分解温度100℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(分解温度104℃)、ジ−t−ブチル−ジパーオキシフタレート(分解温度107℃)、メチルエチルケトンパーオキサイド(分解温度109℃)、ジクミルパーオキサイド(分解温度117℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(分解温度124℃)等の有機過酸化物、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(分解温度52℃)、アゾビスイソブチロニトリル(分解温度79℃)等のアゾ化合物等が挙げられる。尚、本発明において、これらのラジカル発生剤は2種以上が併用されていてもよい。
【0024】
前記ラジカル発生剤の添加量は、前記ビニル単量体の使用量100重量部に対して0.01〜10重量部程度であり、この範囲より少ないと反応が円滑に進まず、この範囲より多いと改質重合体中にゲルが発生し易い傾向となる。
【0025】
本発明において好適な水性懸濁グラフト反応条件としては、前記結晶性プロピレン系重合体、前記ビニル単量体、及び前記ラジカル発生剤の所定量を含む水性懸濁液を、ラジカル発生剤の分解が実質的に起こらない温度に昇温してビニル単量体を結晶性プロピレン系重合体に含浸させた後、更に昇温してグラフト反応を完結させた方法である。
【0026】
ここで、水性懸濁液は、結晶性プロピレン系重合体の水性懸濁液に、ラジカル発生剤を溶存させたビニル単量体を加えて攪拌するか、ラジカル発生剤を溶存させたビニル単量体の水性懸濁液に、結晶性プロピレン系重合体を加えて攪拌するいずれかの方法によって作製するのが好ましい。
【0027】
又、その水性懸濁液中の結晶性プロピレン系重合体及びビニル単量体の含有量は、水100重量部に対して5〜100重量部程度であり、安定な分散状態を保つために、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子、アルキルベンゼンスルホネート等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、或いは、酸化マグネシウム、燐酸カルシウム等の水不溶性の無機塩等の懸濁安定剤を、単独で又は併用して、水100重量部に対して0.01〜10重量部程度用いることが好ましい。
【0028】
結晶性プロピレン系重合体へのビニル単量体の含浸は、攪拌下、一般的には室温〜100℃、好ましくは70〜100℃で、遊離のビニル単量体がビニル単量体全量の20重量%以下、好ましくは5重量%以下となる程度まで、通常は2〜8時間程度でなされる。結晶性プロピレン系重合体はビニル単量体と比較的相溶性があるので、反応開始前にこの程度のビニル単量体が遊離していても、反応中にこれらのビニル単量体は結晶性プロピレン系重合体に含浸し、均質な改質重合体が得られる。
【0029】
グラフト反応は、一般的には、攪拌下、50〜150℃程度の温度、常圧〜1MPa程度の圧力で、2〜10時間程度でなされるが、その間の温度及び圧力は、一定である必要はない。尚、反応に用いられる結晶性プロピレン系重合体は、粉粒状で用いられるが、平均粒径が1〜8mm、特には3〜7mmの粒子状であるのが好ましい。
【0030】
本発明において、改質プロピレン系重合体としては、熱封着材としての封着力と易開封性の面から、前記結晶性プロピレン系重合体のマトリックスに、前記ビニル単量体の重合体が0.2〜3μmの粒子径で粒子分散し、その界面に前記ビニル単量体がグラフト重合した結晶性プロピレン系重合体が存在する分散構造を有するものが好ましい。
【0031】
以上の改質プロピレン系重合体を含有する本発明の易開封性容器用熱封着材は、低温での熱封着性、及び易開封性を向上させること等を目的として、更に、前記改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体、又は/及び、ビニル単量体の重合体を含有していてもよい。
【0032】
ここで、そのオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等の直鎖状低・中・高密度エチレン−α−オレフィン共重合体、及び、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂等が挙げられる。中で、分岐状低密度ポリエチレンが特に好ましい。尚、本発明において、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
【0033】
又、そのビニル単量体の重合体としては、前記改質プロピレン系重合体において挙げたビニル単量体と同様のビニル単量体の重合体及び共重合体が挙げられ、中で、ポリスチレンが特に好ましい。
【0034】
本発明において、前記改質プロピレン系重合体に含有されるこれらのオレフィン系重合体又は/及びビニル単量体の重合体の含有量は、改質プロピレン系重合体100重量部に対して、両者の合計量として800重量部以下であるのが好ましく、1〜700重量部であるのが更に好ましく、5〜600重量部であるのが特に好ましい。
【0035】
前記改質プロピレン系重合体、又は、更に前記改質プロピレン系重合体以外の前記オレフィン系重合体、又は/及び、前記ビニル単量体の重合体を含有する本発明の易開封性容器用熱封着材において、結晶性プロピレン系重合体の前記改質時に生成したビニル単量体のグラフト及びホモ重合体、並びに、更に含有させた前記ビニル単量体の重合体の全含有量は、5〜70重量%であるのが好ましく、6〜60重量%であるのが更に好ましく、7〜50重量%であるのが特に好ましい。ビニル単量体の重合体の全含有量がこの範囲未満では、熱封着材として封着力が強過ぎて開封が困難な傾向となり、一方、この範囲超過では、均質性が損なわれ実用に供し得ない。
【0036】
尚、本発明の易開封性容器用熱封着材には、前記改質プロピレン系重合体、前記オレフィン系重合体又は/及び前記ビニル単量体の重合体の外に、本発明の効果を損なわない範囲で、これら以外の熱可塑性樹脂やゴム、及び、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、可塑剤、顔料等の添加剤、充填材等が配合されていてもよい。これらの配合は、改質に供する結晶性プロピレン系重合体に予め加えておくとか、オレフィン系重合体やビニル単量体重合体に加えておくとか、熱封着材の調製時に加えるとかの外、改質プロピレン系重合体の製造時に、例えば、ビニル単量体にラジカル発生剤と共に加える等の方法によってもよい。
【0037】
本発明の易開封性容器用熱封着材は、前記改質プロピレン系重合体、必要に応じて用いられる前記オレフィン系重合体又は/及び前記ビニル単量体の重合体、並びに、他の熱可塑性樹脂やゴム、添加剤等を、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練することにより調製される。
【0038】
本発明の易開封性容器用熱封着材は、その熱封着材単層で、易開封性容器としての容器蓋体或いは容器本体に用いられてもよいが、実用上は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂のフィルム、アルミニウム箔、紙等の基材との積層体として用いられ、その積層方法としては、グルーラミネート法、押出ラミネート法、及び前記各種熱可塑性樹脂との共押出法等の従来公知の方法が採られる。尚、その際の本発明の熱封着材層の厚みは、5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0039】
本発明の易開封性容器は、前記易開封性容器用熱封着材と被着材表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有するものである。その被着材としては、特に限定されるものではないが、プロピレン系樹脂であるのが好ましく、そのプロピレン系樹脂としては、前記改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体として挙げたと同様のプロピレン系樹脂が挙げられ、そのプロピレン系樹脂が表面を形成しているものであれば、単層或いは積層状態のいずれでも構わない。
【0040】
本発明において、具体的な易開封性容器の形態を、被着材をプロピレン系樹脂として挙げれば、例えば、(1) 容器本体と蓋材からなる包装容器として、(a) 本発明の易開封性容器用熱封着材を蓋材側に用いた場合であって、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する容器本体と、該熱封着材を熱封着面に有する蓋材とからなる易開封性容器、(b) 本発明の易開封性容器用熱封着材を容器本体側に用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する容器本体と、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する蓋材とからなる易開封性容器、(2) 包装袋として、(a) 本発明の易開封性容器用熱封着材を袋の両面に用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する袋部材の熱封着材同士を対向させて熱封着した袋体である易開封性容器、及び、(b) 本発明の易開封性容器用熱封着材を袋の一方の面に用い、他方の面にプロピレン系樹脂を熱封着面に有する袋部材を用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する袋部材と、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する袋部材のプロピレン系樹脂表面とを熱封着した袋体である易開封性容器、等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例に用いた結晶性プロピレン系重合体を以下に示す。
【0042】
<結晶性プロピレン系重合体(A)の製造例>
内容積1リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換し、脱水、脱酸素したn−ヘプタン230ミリリットルを導入して系内温度を40℃に維持した後、特開2001−354716号公報記載の方法により化学処理したモンモリロナイト10gをトルエンスラリーとして添加し、更に、同公報記載の方法により合成・精製したジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジロコニウムジクロリドのラセミ体0.15ミリモルとトリイソブチルアルミニウム1.5ミリモルのトルエン溶液を添加し、次いで、プロピレンを10g/時間の速度で120分間導入し、その後120分間重合を継続した後、窒素下で溶媒を除去し、乾燥させることにより、固体成分1g当たり1.9gのブロピレン単独重合体を含有する固体触媒成分を調製した。
【0043】
一方、内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入し、更に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液500ミリリットル(0.12ミリモル)、エチレン2.25g、及び水素8.0リットル(標準状態の体積として)を加え、系内温度を30℃に維持して前記で調製した固体触媒成分1.2gをアルゴンで圧入して重合を開始させ、30分かけて70℃に昇温して1時間同温度を維持した後、エタノール100ミリリットルを添加して反応を停止させ、残ガスをパージし、生成物を濾過、乾燥させることにより、結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)21kgを製造した。
【0044】
得られた結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)について、以下に示す方法で測定した、メルトフローレートは7.3g/10分、融点は124.3℃、球晶半径は520μmであった。従って、球晶半径値は、前記式(Ia)における左辺値512と右辺値792との間に位置するものであった。
【0045】
<メルトフローレート>
JIS K6921に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nにて測定した。
<融点>
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、JIS 7121に準拠し、試料5.0mgを200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で降温して結晶化させ、次いで、10℃/分の昇温速度で昇温して融解させたときに観測される融解ピークのトップ温度を融点〔Tm (℃)〕とした。
<球晶半径>
厚み20μmのアルミニウム箔をスペーサーとして設置した2枚のガラス板で重合体試料を挟み、200℃のホットプレート上で5分間加熱して十分な溶融状態を形成した後、40±1℃に制御された温浴中にガラス板に挟んだ状態で投入して急冷した試料について、光散乱装置で散乱強度が極大となる散乱角(θ)を測定し、以下の式から算出した。
d(μm)=4.09/〔4π/6328×sin(θ/2)〕
【0046】
<結晶性プロピレン系重合体(B)の製造例>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、脱水、脱酸素したn−ヘプタン60リットルを導入し、更に、ジエチルアルミニウムクロリド45g及び三塩化チタン(エム・アンド・エム社製)16gを、プロピレン雰囲気下で55℃で導入し、引き続いて、気相水素濃度を5.5容量%に保ちながら、55℃で、プロピレンを5.8kg/時間、及びエチレンを0.36kg/時間の速度で4時間導入し、更に1時間重合を継続した後、残ガスをパージし、生成物を濾過、乾燥させることにより、結晶性プロピレン−エチレン共重合体(B)25kgを製造した。
【0047】
得られた結晶性プロピレン−エチレン共重合体(B)について、前記と同様の方法で測定した、メルトフローレートは5.1g/10分、融点は136.1℃、球晶半径は450μmであった。従って、球晶半径値は、前記式(Ia)における左辺値530より小さいものであった。
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜3
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gと、懸濁助剤として第三燐酸カルシウム0.6kgとを入れて水性媒体とし、これに、前記各結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)、又は(B)の平均粒径3〜4mmの粒子各6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、ラジカル発生剤として3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド15.6gとベンゾイルパーオキサイド9gとを溶解したスチレンモノマー6kgを加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、オートクレーブ内を65℃に昇温し、この温度で6時間攪拌して、ラジカル発生剤を含むスチレンモノマーの全量をプロピレン系重合体粒子中に含浸させた。引き続いて、オートクレーブ内を100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に120℃に昇温し、この温度で12時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗し、粒子状の各改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)、又は(B’)の各粒子12kgを得た。得られた改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)及び(B’)は、それぞれ、ポリスチレン50重量%を含有するものであった。
【0049】
前記で得られた各改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)及び(B’)のペレットを、或いは、更に、該改質プロピレン−エチレン共重合体100重量部に対して、低密度ポリエチレン(密度0.913g/cm3 、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート7g/10分)、又は、ポリスチレン(密度1.1g/cm3 、200℃、荷重49.03Nで測定したメルトフローレート6g/10分)を表1に示す量で加える場合には、それらを一軸押出機に供給して210℃で溶融混練してペレット化したペレットを、Tダイを備えた35mm径のフィルム成形機(プラコー社製)に供給し、230℃で溶融押出して冷却することにより、厚み30μmのフィルムを成形し、該フィルムを、イソシアネート系アンカーコート剤を用いて厚み20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと接着し2層積層フィルムを作製した。
【0050】
一方、厚み200μmのポリプロピレン樹脂のシートから熱成形して作製した角形の容器本体のフランジ部に、前記の積層フィルムを蓋材として用い、その改質プロピレン−エチレン共重合体層を接着面として、以下に示す条件で熱封着して易開封性容器を作製し、得られた各容器について、以下に示す方法でその剥離強度を測定し、結果を表1に示した。
【0051】
<剥離強度>
熱板式ヒートシーラーを用い、温度140℃、160℃、又は180℃、圧力1.96×105 Pa、時間0.5秒で、蓋材を容器本体フランジ部に5mm幅で熱圧着し、その接着部を15mm長さでサンプリングし、インストロン型引張試験機を用い、長さに直角方向に、23℃で、引張速度300mm/分で剥離することにより180度剥離強度(g/15mm)を測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器に関し、特に、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する包装容器又は包装袋等に好適に用いられる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、樹脂容器本体を樹脂フィルム状蓋材で熱封着して包装するシールパック包装が、乳製品、菓子、果汁飲料等の主に飲食品の包装に盛んに用いられており、樹脂包装袋と共に重要な地位を占めるに到っている。そして、それらの熱封着材としては、従来より溶液型接着剤やホットメルト型接着剤が用いられてきたが、これらは、開封時に熱封着材が延性破壊を起こして糸状物を形成するため、開封が必ずしも容易ではなかったり、剥離面の外観が良くない等の易開封性に欠けるという問題があり、又、耐熱性不足のために、高温下で剥離してしまう等の封着性に欠けるという問題があった。
【0003】
こうした問題を改良すべく、封着性と易開封性を兼ね備えた熱封着材が、種々提案され、用いられている。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体に粘着付与剤を配合した組成物があり、又、オレフィン系重合体を芳香族ビニル単量体で改質した改質オレフィン系重合体を主成分とする材料(例えば、特許文献1参照。)等がある。又、プロピレン系樹脂を芳香族ビニル単量体で改質した改質プロピレン系樹脂を主成分とする熱封着材を、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する包装容器等の該プロピレン系樹脂面に熱封着した易開封性容器等も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特公平1−42967号公報。
【特許文献2】
特開平11−100483号公報。
【特許文献3】
特開2000−177079号公報。
【0005】
しかしながら、本発明者等の検討によると、それらに開示される易開封性容器は、低温での熱封着性において改良の余地を残すものであることが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、易開封性容器用熱封着材及び易開封性容器における前述の従来技術に鑑みてなされたものであって、従って、本発明は、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の改質プロピレン系重合体を用いることにより、前記目的を達成できることを見出し本発明を完成したもので、即ち、本発明は、下記の条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%と、ビニル単量体70〜5重量%をグラフト反応条件に付して得られた改質プロピレン系重合体を含有する易開封性容器用熱封着材、及び、該易開封性容器用熱封着材とプロピレン系樹脂表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有する易開封性容器、を要旨とする。
【0008】
(1)示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であること。
(2)球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有すること。
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の易開封性容器用熱封着材を構成する改質プロピレン系重合体における結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよく、そのプロピレン以外のα−オレフィンとしては、通常、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のもの、具体的には、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。又、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、二元又は三元以上であっても、ランダム又はブロック共重合体のいずれであってもよい。本発明におけるプロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、ブロピレン−エチレン−他α−オレフィンランダム共重合体等のプロピレン−エチレン系共重合体、又は、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体等のプロピレン−1−ブテン系共重合体が好ましく、プロピレン−エチレン系ランダム共重合体が特に好ましい。
【0010】
そして、本発明における結晶性プロピレン系重合体は、条件(1)において、示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であることが必須であり、115〜150℃であるのが好ましく、120〜140℃であるのが特に好ましい。この融点〔Tm 〕が前記範囲未満では、易開封性容器用熱封着材として耐熱性が劣り、一方、前記範囲超過では、低温での熱封着性が劣ることとなる。
【0011】
更に、本発明における結晶性プロピレン系重合体は、条件(2)において、球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有することが必須であり、以下の式(Ib)の関係を有するのが好ましく、以下の式(Ic)の関係を有するのが特に好ましい。
【0012】
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia)
11.9×Tm −1050<d<11.9×Tm −870 (Ib)
11.9×Tm −1010<d<11.9×Tm −920 (Ic)
【0013】
ここで、前記式は、結晶性プロピレン系重合体を後述する改質により易開封性容器用熱封着材として用いたとき、球晶サイズによって熱封着材表面に生ずる微細な凹凸が、開封性及び熱封着性に影響を及ぼすことを意味し、球晶半径〔d〕が前記範囲以下では、易開封性容器用熱封着材として低温での熱封着性が劣ることとなり、一方、前記範囲以上では、開封性が劣ることとなる。
【0014】
尚、本発明において、球晶半径〔d(μm)〕は、He−Neレーザー(λ=632.8nm)を偏光子に通した後、フィルム状のサンプルを透過させるときに起こる散乱強度プロファイルを測定する光散乱法により測定したものであり、散乱光のうち入射光とは垂直な電場ベクトル成分のみを検光し、得られるフローバーパターンの散乱像を解析して得られ、散乱強度は偏光子と検光子のそれぞれに対して45度の角度になるような位置で測定され、散乱強度が極大となる散乱角(θ)を用いて、以下の式から算出したものである。
d(μm)=4.09/〔4π/6328×sin(θ/2)〕
【0015】
又、前記条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体は、JIS K6921に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが、0.5〜200g/10分であるのが好ましく、1〜100g/10分であるのが更に好ましく、2〜50g/10分であるのが特に好ましい。
【0016】
本発明における前記結晶性プロピレン系重合体の製造方法は、前記条件(1)、及び(2)を満足する限り特に限定されるものではなく、従来公知の方法によることができ、例えば、代表的には、チタン含有化合物等の遷移金属化合物、或いは、該遷移金属化合物をマグネンウム含有化合物等の担体に担持させた担体担持化合物を主触媒とし、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物を助触媒とするチーグラー・ナッタ系触媒、又は、代表的には、2個の架橋された共役5員環配位子を含む周期表第4族遷移金属元素であるチタン族元素(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)の化合物を主触媒とし、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、或いは更に有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物等を助触媒とするメタロセン系触媒等の触媒の存在下、スラリー法、バルク法、溶液法、或いは気相法等による連続或いは回分式等の各種重合方式により製造される。中で、本発明においては、メタロセン系触媒により重合されたものが好ましい。
【0017】
又、重合において分子量調節剤として水素を用いることができ、重合条件としては、通常−78〜160℃、好ましくは0〜150℃の範囲の重合温度で、通常、常圧〜9MPa、好ましくは0.5〜5MPaの範囲の重合圧力が採られる。
【0018】
尚、以上の本発明における結晶性プロピレン系重合体は、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性、及びスクラッチ性が共に優れたフィルムを得ることができる重合体として、例えば、特開2001−354716号公報等によって知られているものである。
【0019】
又、本発明の易開封性容器用熱封着材を構成する改質プロピレン系重合体におけるビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸〔ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味するものとする。〕、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸又はそのエステル類、無水マレイン酸、ジメチルマレエート、ジ(2−エチルヘキシル)マレエート等の他の不飽和カルボン酸又はそのエステル類、(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の不飽和モノ又はジハライド類等を挙げることができ、中で、芳香族ビニル化合物類が好ましく、スチレン、2−メチルスチレンが特に好ましく、就中、スチレンが好ましい。尚、本発明において、これらのビニル単量体は2種以上が併用されていてもよい。
【0020】
本発明において、改質プロピレン系重合体は、前記結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%、好ましくは40〜70重量%、特に好ましくは45〜65重量%と、前記ビニル単量体70〜5重量%、好ましくは60〜30重量%、特に好ましくは55〜35重量%をグラフト反応条件に付して得られたものであり、ビニル単量体がこの範囲未満では、熱封着材として封着力が強過ぎて易開封性容器としての開封が困難となり、一方、この範囲超過では、均質性が損なわれ実用に供し得ない。
【0021】
又、本発明において、グラフト反応条件としては、基本的には、従来公知の溶融混練下、溶液下、水性懸濁下等での、電子線照射或いはラジカル発生剤添加等による方法を採り得るが、本発明においては、ラジカル発生剤添加での水性懸濁法によるのが好ましい。
【0022】
ラジカル発生剤添加での水性懸濁法について、具体的に述べれば、ラジカル発生剤としては、分解温度が好ましくは50℃以上、特に好ましくは50〜130℃であって、油溶性であるものが好ましい。分解温度が50℃未満のものでは、ビニル単量体の重合が異常に進行して均質な改質重合体が得られにくい傾向となる。尚、ここで、分解温度とは、ベンゼン1リットル中にラジカル発生剤0.1モルを添加して10時間放置したときにラジカル発生剤の50%が分解するときの温度、所謂、「10時間半減期温度」である。
【0023】
本発明において、そのラジカル発生剤としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド(分解温度53℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(分解温度55℃)、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(分解温度59.5℃)、オクタノイルパーオキサイド(分解温度62℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(分解温度72.5℃)、o−メチルベンゾイルパーオキサイド(分解温度73℃)、ベンゾイルパーオキサイド(分解温度74℃)、シクロヘキサノンパーオキサイド(分解温度97℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(分解温度100℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(分解温度104℃)、ジ−t−ブチル−ジパーオキシフタレート(分解温度107℃)、メチルエチルケトンパーオキサイド(分解温度109℃)、ジクミルパーオキサイド(分解温度117℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(分解温度124℃)等の有機過酸化物、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(分解温度52℃)、アゾビスイソブチロニトリル(分解温度79℃)等のアゾ化合物等が挙げられる。尚、本発明において、これらのラジカル発生剤は2種以上が併用されていてもよい。
【0024】
前記ラジカル発生剤の添加量は、前記ビニル単量体の使用量100重量部に対して0.01〜10重量部程度であり、この範囲より少ないと反応が円滑に進まず、この範囲より多いと改質重合体中にゲルが発生し易い傾向となる。
【0025】
本発明において好適な水性懸濁グラフト反応条件としては、前記結晶性プロピレン系重合体、前記ビニル単量体、及び前記ラジカル発生剤の所定量を含む水性懸濁液を、ラジカル発生剤の分解が実質的に起こらない温度に昇温してビニル単量体を結晶性プロピレン系重合体に含浸させた後、更に昇温してグラフト反応を完結させた方法である。
【0026】
ここで、水性懸濁液は、結晶性プロピレン系重合体の水性懸濁液に、ラジカル発生剤を溶存させたビニル単量体を加えて攪拌するか、ラジカル発生剤を溶存させたビニル単量体の水性懸濁液に、結晶性プロピレン系重合体を加えて攪拌するいずれかの方法によって作製するのが好ましい。
【0027】
又、その水性懸濁液中の結晶性プロピレン系重合体及びビニル単量体の含有量は、水100重量部に対して5〜100重量部程度であり、安定な分散状態を保つために、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子、アルキルベンゼンスルホネート等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、或いは、酸化マグネシウム、燐酸カルシウム等の水不溶性の無機塩等の懸濁安定剤を、単独で又は併用して、水100重量部に対して0.01〜10重量部程度用いることが好ましい。
【0028】
結晶性プロピレン系重合体へのビニル単量体の含浸は、攪拌下、一般的には室温〜100℃、好ましくは70〜100℃で、遊離のビニル単量体がビニル単量体全量の20重量%以下、好ましくは5重量%以下となる程度まで、通常は2〜8時間程度でなされる。結晶性プロピレン系重合体はビニル単量体と比較的相溶性があるので、反応開始前にこの程度のビニル単量体が遊離していても、反応中にこれらのビニル単量体は結晶性プロピレン系重合体に含浸し、均質な改質重合体が得られる。
【0029】
グラフト反応は、一般的には、攪拌下、50〜150℃程度の温度、常圧〜1MPa程度の圧力で、2〜10時間程度でなされるが、その間の温度及び圧力は、一定である必要はない。尚、反応に用いられる結晶性プロピレン系重合体は、粉粒状で用いられるが、平均粒径が1〜8mm、特には3〜7mmの粒子状であるのが好ましい。
【0030】
本発明において、改質プロピレン系重合体としては、熱封着材としての封着力と易開封性の面から、前記結晶性プロピレン系重合体のマトリックスに、前記ビニル単量体の重合体が0.2〜3μmの粒子径で粒子分散し、その界面に前記ビニル単量体がグラフト重合した結晶性プロピレン系重合体が存在する分散構造を有するものが好ましい。
【0031】
以上の改質プロピレン系重合体を含有する本発明の易開封性容器用熱封着材は、低温での熱封着性、及び易開封性を向上させること等を目的として、更に、前記改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体、又は/及び、ビニル単量体の重合体を含有していてもよい。
【0032】
ここで、そのオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等の直鎖状低・中・高密度エチレン−α−オレフィン共重合体、及び、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂等が挙げられる。中で、分岐状低密度ポリエチレンが特に好ましい。尚、本発明において、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。
【0033】
又、そのビニル単量体の重合体としては、前記改質プロピレン系重合体において挙げたビニル単量体と同様のビニル単量体の重合体及び共重合体が挙げられ、中で、ポリスチレンが特に好ましい。
【0034】
本発明において、前記改質プロピレン系重合体に含有されるこれらのオレフィン系重合体又は/及びビニル単量体の重合体の含有量は、改質プロピレン系重合体100重量部に対して、両者の合計量として800重量部以下であるのが好ましく、1〜700重量部であるのが更に好ましく、5〜600重量部であるのが特に好ましい。
【0035】
前記改質プロピレン系重合体、又は、更に前記改質プロピレン系重合体以外の前記オレフィン系重合体、又は/及び、前記ビニル単量体の重合体を含有する本発明の易開封性容器用熱封着材において、結晶性プロピレン系重合体の前記改質時に生成したビニル単量体のグラフト及びホモ重合体、並びに、更に含有させた前記ビニル単量体の重合体の全含有量は、5〜70重量%であるのが好ましく、6〜60重量%であるのが更に好ましく、7〜50重量%であるのが特に好ましい。ビニル単量体の重合体の全含有量がこの範囲未満では、熱封着材として封着力が強過ぎて開封が困難な傾向となり、一方、この範囲超過では、均質性が損なわれ実用に供し得ない。
【0036】
尚、本発明の易開封性容器用熱封着材には、前記改質プロピレン系重合体、前記オレフィン系重合体又は/及び前記ビニル単量体の重合体の外に、本発明の効果を損なわない範囲で、これら以外の熱可塑性樹脂やゴム、及び、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、可塑剤、顔料等の添加剤、充填材等が配合されていてもよい。これらの配合は、改質に供する結晶性プロピレン系重合体に予め加えておくとか、オレフィン系重合体やビニル単量体重合体に加えておくとか、熱封着材の調製時に加えるとかの外、改質プロピレン系重合体の製造時に、例えば、ビニル単量体にラジカル発生剤と共に加える等の方法によってもよい。
【0037】
本発明の易開封性容器用熱封着材は、前記改質プロピレン系重合体、必要に応じて用いられる前記オレフィン系重合体又は/及び前記ビニル単量体の重合体、並びに、他の熱可塑性樹脂やゴム、添加剤等を、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練することにより調製される。
【0038】
本発明の易開封性容器用熱封着材は、その熱封着材単層で、易開封性容器としての容器蓋体或いは容器本体に用いられてもよいが、実用上は、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂のフィルム、アルミニウム箔、紙等の基材との積層体として用いられ、その積層方法としては、グルーラミネート法、押出ラミネート法、及び前記各種熱可塑性樹脂との共押出法等の従来公知の方法が採られる。尚、その際の本発明の熱封着材層の厚みは、5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0039】
本発明の易開封性容器は、前記易開封性容器用熱封着材と被着材表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有するものである。その被着材としては、特に限定されるものではないが、プロピレン系樹脂であるのが好ましく、そのプロピレン系樹脂としては、前記改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体として挙げたと同様のプロピレン系樹脂が挙げられ、そのプロピレン系樹脂が表面を形成しているものであれば、単層或いは積層状態のいずれでも構わない。
【0040】
本発明において、具体的な易開封性容器の形態を、被着材をプロピレン系樹脂として挙げれば、例えば、(1) 容器本体と蓋材からなる包装容器として、(a) 本発明の易開封性容器用熱封着材を蓋材側に用いた場合であって、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する容器本体と、該熱封着材を熱封着面に有する蓋材とからなる易開封性容器、(b) 本発明の易開封性容器用熱封着材を容器本体側に用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する容器本体と、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する蓋材とからなる易開封性容器、(2) 包装袋として、(a) 本発明の易開封性容器用熱封着材を袋の両面に用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する袋部材の熱封着材同士を対向させて熱封着した袋体である易開封性容器、及び、(b) 本発明の易開封性容器用熱封着材を袋の一方の面に用い、他方の面にプロピレン系樹脂を熱封着面に有する袋部材を用いた場合であって、該熱封着材を熱封着面に有する袋部材と、プロピレン系樹脂を熱封着面に有する袋部材のプロピレン系樹脂表面とを熱封着した袋体である易開封性容器、等が挙げられる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例に用いた結晶性プロピレン系重合体を以下に示す。
【0042】
<結晶性プロピレン系重合体(A)の製造例>
内容積1リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換し、脱水、脱酸素したn−ヘプタン230ミリリットルを導入して系内温度を40℃に維持した後、特開2001−354716号公報記載の方法により化学処理したモンモリロナイト10gをトルエンスラリーとして添加し、更に、同公報記載の方法により合成・精製したジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジロコニウムジクロリドのラセミ体0.15ミリモルとトリイソブチルアルミニウム1.5ミリモルのトルエン溶液を添加し、次いで、プロピレンを10g/時間の速度で120分間導入し、その後120分間重合を継続した後、窒素下で溶媒を除去し、乾燥させることにより、固体成分1g当たり1.9gのブロピレン単独重合体を含有する固体触媒成分を調製した。
【0043】
一方、内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン45kgを導入し、更に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液500ミリリットル(0.12ミリモル)、エチレン2.25g、及び水素8.0リットル(標準状態の体積として)を加え、系内温度を30℃に維持して前記で調製した固体触媒成分1.2gをアルゴンで圧入して重合を開始させ、30分かけて70℃に昇温して1時間同温度を維持した後、エタノール100ミリリットルを添加して反応を停止させ、残ガスをパージし、生成物を濾過、乾燥させることにより、結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)21kgを製造した。
【0044】
得られた結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)について、以下に示す方法で測定した、メルトフローレートは7.3g/10分、融点は124.3℃、球晶半径は520μmであった。従って、球晶半径値は、前記式(Ia)における左辺値512と右辺値792との間に位置するものであった。
【0045】
<メルトフローレート>
JIS K6921に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nにて測定した。
<融点>
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、JIS 7121に準拠し、試料5.0mgを200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で降温して結晶化させ、次いで、10℃/分の昇温速度で昇温して融解させたときに観測される融解ピークのトップ温度を融点〔Tm (℃)〕とした。
<球晶半径>
厚み20μmのアルミニウム箔をスペーサーとして設置した2枚のガラス板で重合体試料を挟み、200℃のホットプレート上で5分間加熱して十分な溶融状態を形成した後、40±1℃に制御された温浴中にガラス板に挟んだ状態で投入して急冷した試料について、光散乱装置で散乱強度が極大となる散乱角(θ)を測定し、以下の式から算出した。
d(μm)=4.09/〔4π/6328×sin(θ/2)〕
【0046】
<結晶性プロピレン系重合体(B)の製造例>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、脱水、脱酸素したn−ヘプタン60リットルを導入し、更に、ジエチルアルミニウムクロリド45g及び三塩化チタン(エム・アンド・エム社製)16gを、プロピレン雰囲気下で55℃で導入し、引き続いて、気相水素濃度を5.5容量%に保ちながら、55℃で、プロピレンを5.8kg/時間、及びエチレンを0.36kg/時間の速度で4時間導入し、更に1時間重合を継続した後、残ガスをパージし、生成物を濾過、乾燥させることにより、結晶性プロピレン−エチレン共重合体(B)25kgを製造した。
【0047】
得られた結晶性プロピレン−エチレン共重合体(B)について、前記と同様の方法で測定した、メルトフローレートは5.1g/10分、融点は136.1℃、球晶半径は450μmであった。従って、球晶半径値は、前記式(Ia)における左辺値530より小さいものであった。
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜3
50リットル容量のオートクレーブに、水20kgと、懸濁剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gと、懸濁助剤として第三燐酸カルシウム0.6kgとを入れて水性媒体とし、これに、前記各結晶性プロピレン−エチレン共重合体(A)、又は(B)の平均粒径3〜4mmの粒子各6kgを加え、攪拌して水性懸濁液とした。この水性懸濁液に、ラジカル発生剤として3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド15.6gとベンゾイルパーオキサイド9gとを溶解したスチレンモノマー6kgを加え、オートクレーブ内に窒素を導入して系内を0.5kg/cm2 に加圧した後、オートクレーブ内を65℃に昇温し、この温度で6時間攪拌して、ラジカル発生剤を含むスチレンモノマーの全量をプロピレン系重合体粒子中に含浸させた。引き続いて、オートクレーブ内を100℃に昇温し、この温度で3時間攪拌してグラフト反応を行い、更に120℃に昇温し、この温度で12時間攪拌して反応を完結させた。冷却後、反応固形物を取り出して水洗し、粒子状の各改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)、又は(B’)の各粒子12kgを得た。得られた改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)及び(B’)は、それぞれ、ポリスチレン50重量%を含有するものであった。
【0049】
前記で得られた各改質プロピレン−エチレン共重合体(A’)及び(B’)のペレットを、或いは、更に、該改質プロピレン−エチレン共重合体100重量部に対して、低密度ポリエチレン(密度0.913g/cm3 、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート7g/10分)、又は、ポリスチレン(密度1.1g/cm3 、200℃、荷重49.03Nで測定したメルトフローレート6g/10分)を表1に示す量で加える場合には、それらを一軸押出機に供給して210℃で溶融混練してペレット化したペレットを、Tダイを備えた35mm径のフィルム成形機(プラコー社製)に供給し、230℃で溶融押出して冷却することにより、厚み30μmのフィルムを成形し、該フィルムを、イソシアネート系アンカーコート剤を用いて厚み20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと接着し2層積層フィルムを作製した。
【0050】
一方、厚み200μmのポリプロピレン樹脂のシートから熱成形して作製した角形の容器本体のフランジ部に、前記の積層フィルムを蓋材として用い、その改質プロピレン−エチレン共重合体層を接着面として、以下に示す条件で熱封着して易開封性容器を作製し、得られた各容器について、以下に示す方法でその剥離強度を測定し、結果を表1に示した。
【0051】
<剥離強度>
熱板式ヒートシーラーを用い、温度140℃、160℃、又は180℃、圧力1.96×105 Pa、時間0.5秒で、蓋材を容器本体フランジ部に5mm幅で熱圧着し、その接着部を15mm長さでサンプリングし、インストロン型引張試験機を用い、長さに直角方向に、23℃で、引張速度300mm/分で剥離することにより180度剥離強度(g/15mm)を測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、低温での熱封着でも充分な封着力を有すると共に、開封時の開封が容易な熱封着部を形成することができる易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器を提供することができる。
Claims (8)
- 下記の条件(1)、及び(2)を満足する結晶性プロピレン系重合体30〜95重量%と、ビニル単量体70〜5重量%をグラフト反応条件に付して得られた改質プロピレン系重合体を含有することを特徴とする易開封性容器用熱封着材。
(1)示差走査熱量計で測定した融点〔Tm (℃)〕が110〜160℃であること。
(2)球晶半径〔d(μm)〕が融点〔Tm (℃)〕との間で以下の式(Ia)の関係を有すること。
11.9×Tm −1090<d<11.9×Tm −810 (Ia) - 結晶性プロピレン系重合体がプロピレン−エチレン系共重合体である請求項1に記載の易開封性容器用熱封着材。
- ビニル単量体が芳香族ビニル化合物である請求項1又は2に記載の易開封性容器用熱封着材。
- 改質プロピレン系重合体のグラフト反応条件が、結晶性プロピレン系重合体、ビニル単量体、及びラジカル発生剤を含む水性懸濁液を、ラジカル発生剤の分解が実質的に起こらない温度に昇温してビニル単量体を結晶性プロピレン系重合体に含浸させた後、更に昇温してグラフト反応を完結させてなるものである請求項1乃至3のいずれかに記載の易開封性容器用熱封着材。
- 更に、改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体、又は/及び、ビニル単量体の重合体を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の易開封性容器用熱封着材。
- 改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体が低密度ポリエチレンであり、ビニル単量体の重合体がポリスチレンである請求項5に記載の易開封性容器用熱封着材。
- 改質プロピレン系重合体、又は、更に、改質プロピレン系重合体以外のオレフィン系重合体、又は/及び、ビニル単量体の重合体を含有する易開封性容器用熱封着材におけるビニル単量体の重合体の含有量が5〜70重量%である請求項1乃至6のいずれかに記載の易開封性容器用熱封着材。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の易開封性容器用熱封着材とプロピレン系樹脂表面とが熱封着されてなる熱封着構造を有することを特徴とする易開封性容器。
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JP2002365353A JP2004196908A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | 易開封性容器用熱封着材及びそれを用いた易開封性容器 |
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JP2015042738A (ja) * | 2013-07-24 | 2015-03-05 | 三菱化学株式会社 | シーラント材料用熱可塑性樹脂組成物 |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002365353A patent/JP2004196908A/ja active Pending
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