JP2004195664A - 画像形成方法及び印刷物 - Google Patents
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Abstract
【課題】文字品質に優れ、色混じりの発生、文字の盛り上がりもなく高精細な画像を記録することができ、且つ印刷物のしわやカールの発生が無いインクジェット記録方法による画像形成方法及び印刷物を提供すること、及び換気の必要がない画像形成方法を提供すること。
【解決手段】選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの総消費電力が1kW・hr未満であることを特徴とする画像形成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの総消費電力が1kW・hr未満であることを特徴とする画像形成方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性光線硬化型インクジェット記録方法による画像形成方法及び印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号公報、特開平6−200204号公報、特表2000−504778号公報において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
特に、水をバインダーとした水性紫外線硬化型インクジェットインクが近年環境の点から注目されており、水、光によってラジカル重合する重合性化合物及び光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物の技術が公開されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、いずれの紫外線硬化型インクジェットにおいても、紫外線光源は消費電力の大きな高照度の光源を用いたものである。これらの高照度光源は非常に高価で大型であり、更には換気のためのダクトが必要であるといった問題を有している。更に、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、すべての記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
また、消費電力の大きな高照度の光源では、記録材料が収縮しやすいという問題点があった。特に、食品包装をはじめとする軟包装で使われる薄膜プラスチックフィルムや、粘着ラベルなどでは、特に収縮が起こりやすい。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−187918号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的はあらゆる記録材料に対し、文字品質に優れ、色混じりの発生、文字の盛り上がりもなく高精細な画像を記録することができ、且つ印刷物のしわやカールの発生が無いインクジェット記録方法による画像形成方法及び印刷物を提供することにある。更に、換気の必要がない画像形成方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0010】
1)選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの総消費電力が1kW・hr未満であることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
2)選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が0.1〜80mW/cm2であることを特徴とする画像形成方法。
【0012】
3)前記インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が1〜50mW/cm2であることを特徴とする前記2)に記載の画像形成方法。
【0013】
4)前記光照射ランプが蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、冷陰極管、LEDのいずれかであることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0014】
5)前記インクが着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする前記1)〜4)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0015】
6)前記記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が2〜15plであることを特徴とする前記1)〜5)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0016】
7)非吸収性記録材料を用いて前記1)〜6)のいずれか1項に記載の画像形成方法により作製することを特徴とする印刷物。
【0017】
8)前記非吸収性記録材料の表面エネルギーが35〜60mJ/m2であることを特徴とする前記7)に記載の印刷物。
【0018】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがある。なお、総消費電力が1W・hr以下では硬化が不十分であり、好ましくない。総消費電力は光源の駆動、照射に要する電力の総計であるが、本発明によれば上記のように少ない電力であっても文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができるインクジェット記録が可能となる。
【0019】
本発明では、硬化に有効な波長域における最高照度が0.1〜80mW/cm2の低照度の活性光線を用いることが好ましい。更に好ましくは1〜50mW/cm2である。従来、UVインクジェット方式ではインク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、硬化に有効な波長域における最高照度が80mW/cm2を超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特にシュリンクラベルなどでは、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用できないのが現状であった。
【0020】
活性光線照射で用いる光源の例としては、蛍光灯、低圧水銀ランプ、捕虫灯、ブラックライト、殺菌灯、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。好ましくは蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、冷陰極管、LEDであり、更に好ましくは蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、LEDである。
【0021】
本発明の光によってラジカル重合する重合性化合物について説明する。
かかる重合性化合物は水溶性であることが好ましく、例えば、酸性基と(メタ)アクリロイル基或いはビニル基を共に分子内に有し、具体的には無水琥珀酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、オルソ無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、ビニルナフタレンスルホン酸等である。
【0022】
水に可溶で、1分子中に重合性官能基を2個以上有する工業的に生産されている化合物としては、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性を付与した重合性化合物が知られている。このようなものとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、特開平8−165441号公報に記載の多官能の水溶性重合性化合物、特開2000−117960号公報のグリセリンから誘導される親水性ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸エステル、米国特許第5,612,388号明細書の多官能性カチオン性アクリルモノマーも好ましい水溶性の重合性化合物である。
【0023】
本発明で使用する、更に好ましい水溶性の重合性化合物について説明する。かかる重合性化合物としては、以下に例示するような親水性の多官能の重合性化合物が挙げられる。これらの化合物は、親水性が高く、水溶性であり、重合性を有し、且つ重合速度が速く、しかも、それ自身低粘度であると共に、水溶液とした場合の粘度は従来から知られている化合物と比較して格段に低粘度となる。
【0024】
光によってラジカル重合する重合性化合物としては、下記一般式群A及び下記一般式群Bから選ばれる水溶性の重合性化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
一般式群AにおけるA、Rp、Rx、Ry、Rzは下記の原子団を表す。
【0029】
【化4】
【0030】
一般式群BにおけるA、Rpは下記の原子団を表す。
【0031】
【化5】
【0032】
以下に、一般式群A及び一般式群Bから選ばれる水溶性の重合性化合物の具体例を示す。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
例示した重合性化合物A10−1やA10−2等は、アクリル酸のビニル基に、カルボキシル基を有するアミン、即ち広儀のアミン酸を付加させることによって製造することができる。この方法に用いられるカルボキシル基を有するアミンとしては、例えば、パラアミノ安息香酸、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、を挙げることができる。また、グルタミン酸、アスパラギン酸等の2個のカルボキシル基を有するアミノ酸からも同等性能の物質を誘導することができる。
【0039】
上記に挙げた多数の群の化合物の中でも、重合速度、硬化物の硬度、耐水摩擦性において特に優れているのは、分子中に3個の重合性官能基を有する化合物である。そのような傾向となる大きな理由は、3個以上の反応基を持つ化合物を重合させた場合は架橋密度が高く、重合することによって親水性を大きく減少させる効果を持つことによると考えられる。
【0040】
本発明の水溶性光重合開始剤について説明する。一例としては、例えば、波長400nm前後までの触媒が挙げられる。このような触媒としては、例えば、長波長領域に官能性、即ち紫外線を受けてラジカルを生成する感受性を持つ物質である下記一般式で表される光重合開始剤(以下、TX系と略称する)が挙げられ、本発明においては、これらの中から適宜に選択して使用することが特に好ましい。
【0041】
【化11】
【0042】
上記一般式TX1〜TX3中、R2は−(CH2)x−(x=0または1)、−O−(CH2)y−(y=1または2)、置換若しくは未置換のフェニレン基を表わす。また、R2がフェニレン基の場合には、ベンゼン環中の水素原子の少なくとも1つが、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等から選ばれる1つまたは2つ以上の基や原子で置換されていてもよい。Mは水素原子若しくはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K等)を表わす。更に、R3及びR4は各々独立に、水素原子、または置換若しくは未置換のアルキル基を表わす。ここでアルキル基の例としては、例えば、炭素数1〜10程度、特には炭素数1〜3程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、アルコキシル基(炭素数1〜3程度)等が挙げられる。また、mは1〜10の整数を表わす。
【0043】
これらの親水性原子団で置換されたチオキサントンは、水溶性、アニオン系水性顔料分散体との共溶性があり、有機顔料自身の吸収の影響が少ないので、顔料系組成物において感度の高い触媒として作用する。
【0044】
更に、本発明の光硬化型樹脂組成物を構成する水溶性光重合開始剤としては、下記一般式からなる光重合開始剤Irgacure2959(商品名:CibaSpecialty Chemicals製)の水溶性の誘導体(以下、IC系と略称する)を使用することもできる。具体的には、下記式からなるIC−1〜IC−3を使用することができる。
【0045】
【化12】
【0046】
上記したIC−1〜IC−3はノニオン性であるが、紫外線に対して感受し得る波長領域が、先に挙げたTX1〜TX3として示した光重合開始剤よりも短波長域にある。また、IC−1〜IC−3も前記したTX1〜TX3と同様に水溶性であるので、本発明の光硬化型樹脂組成物の構成成分として有用である。更に既存の紫外線重合システム用の触媒物質(光重合開始剤)から水性の誘導体を製造し、本発明の光硬化型樹脂組成物を構成する光重合開始剤として利用することも可能と考えられる。
【0047】
本発明に係るインク組成物を着色する場合は、色材を添加する。色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる各種色材を使用することができるが、耐候性の観点から顔料が好ましい。
【0048】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42
C.I Pigment Orange−16、36、38
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101
C.I Pigment Violet−19、23
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29
C.I Pigment Green−7、36
C.I Pigment White−6、18、21
C.I Pigment Black−7
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0049】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクではインク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0050】
顔料の分散は顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0051】
本発明のインクにおいては、色材濃度としてはインク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0052】
本発明のインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、インク組成物の保存性を高めるため、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することができる。紫外線硬化型のインクは、加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。この他にも必要に応じて、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。記録媒体との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その使用量は0.1〜5%の範囲であり、好ましくは0.1〜3%である。
【0053】
本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法においては、上記のインク組成物をインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0054】
本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成できる。
【0055】
本発明の画像記録方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0056】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0057】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、且つ全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0058】
本発明の印刷物について説明する。
本発明の印刷物は、吸水性材料上及び非吸収性録材料上に、本発明の画像形成方法及び/または本発明に記載の画像形成装置を用いて作製されることが好ましい。吸水性材料としては上質紙やコピー紙がある。また、ここで非吸収性とは、インク組成物(単にインクともいう)を吸収しないと言う意味であり、本発明においては、下記に示すようなブリストウ法におけるインク転移量が0.1ml/mm2未満であり、実質的に0ml/mm2であるようなものを非吸収性記録材料と定義する。
【0059】
ブリストウ法とは、短時間での紙及び板紙の液体吸収挙動を測定する方法であり、詳しくは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙または板紙の液体吸収性試験方法(ブリストウ法)に準じて測定し、接触時間40m秒におけるインク転移量(ml/m2)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、本発明においては、2%未満の水溶性染料を含有させてもよい。
【0060】
具体的な測定方法の一例を、以下に説明する。
インク転移量の測定法としては、記録媒体を25℃、50%RHの雰囲気下で12時間以上放置した後、例えば、熊谷理機工業株式会社製の液体動的吸収性試験機であるBristow試験機II型(加圧式)を用いて測定する。測定に用いる液体は、測定精度を高めるため、市販の水系インクジェットインク(例えば、マゼンタインク)とし、規定の接触時間後に記録媒体上のマゼンタ染色された部分の面積を測定することにより、インク転移量を求めることができる。
【0061】
本発明の非吸収性記録材料としては、通常の上質紙、非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類やガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能なPETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に、本発明の構成は有効となる。これらの基材はインクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0062】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mJ/m2のような広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できるが、更に好ましくは40〜60mJ/m2の範囲の記録材料である。
【0063】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作成効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0064】
【発明の実施の形態】
本発明に係る記録装置について説明する。
【0065】
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明に係る記録装置はこの図面に限定されない。
【0066】
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0067】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0068】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0069】
なお、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0070】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えば、UV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0071】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0072】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0073】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0074】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ブラックライト等を照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0075】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0076】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0077】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。また、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0078】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
実施例1
《インクの調製》
表1、2に記載の構成を有するインク組成物1、2を各々調製した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
色材1:C.I.pigment Black−7
色材2:C.I.pigment Blue−15:3
色材3:C.I.pigment Red−57:1
色材4:C.I.pigment Yellow−13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)
【0084】
【化13】
【0085】
《インクジェット画像形成方法》
記録ヘッド部は熱エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させるもので、熱エネルギーを発生させる手段として電気熱変換体を備えているジェットノズルを備えた、図1に記載のようなインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セットを装填し、表4に示す表面エネルギーをもつ照射光源によって、幅600mm、長さ100mの長尺の各記録材料へ下記の各画像記録を連続して行った。インク供給系はインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720dpi×720dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)の解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。着弾した後、0.2秒後に、表3記載の照射条件で硬化処理を行った。なお、評価は温度23℃、40%RHに調整された場所で行った。
【0086】
【表3】
【0087】
ここで、表3に記載の各記録材料の略称の詳細は以下の通りである。
OPP:oriented polypropylene
また、表3に記載の照射光源の詳細は以下の通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。なお、各評価は連続吐出した画像記録の1m後の試料、10m後の試料及び100m後の試料について行った。
【0090】
〈換気装置の必要性〉
換気装置が必要なものは×、不用なものは○とした。なお、これは試料に寄らないので、100m後の試料についてのみ結果を示した。
【0091】
〈印字部の盛り上がり〉
印字部の盛り上がりを目視で評価した。なお、これも試料に寄らないので、1m後の試料についてのみ結果を示した。
【0092】
◎:盛り上がり無し
○:盛り上がりあるが、問題にならない
△:盛り上がりがあり、画質が使用下限レベル
×:盛り上がりがあり、画質が劣化し、使用不可レベル
〈文字品質〉
YMCK各色目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大し、目視評価した。
【0093】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〈色混じり(滲み)〉
隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲み具合を目視評価した。
【0094】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲みがない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みがない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、使えないレベル
〈しわ及びカール〉
1m、10m、及び100m印刷した直後に、各印刷物について、照射・硬化によるしわやカールが発生していないかを目視観察し、下記の評価基準に則り評価した。
【0095】
○:しわやカールの発生が無く、良好である
△:ややしわやカールの発生が認められるが、実用上許容の範囲にある
×:印刷物に強いしわやカールが認められ、実用上問題となる
以上により得られた各評価結果を、表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
表5より、本発明のインク組成物セットを用いた画像記録方法は、文字品質に優れ、色混じり及び印刷部の盛り上がりのない高精細な画像を記録することができ、且つ印刷物のしわやカールの発生が無いことが明らかである。勿論、換気の必要がなく、文字の盛り上がりでも優れている。
【0098】
【発明の効果】
本発明により、文字品質に優れ、色混じり及び印刷部の盛り上がりのない、高精細な画像を記録することができ、且つしわやカールの発生が無い印刷物、更には換気の必要のない画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性光線硬化型インクジェット記録方法による画像形成方法及び印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録ができる点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号公報、特開平6−200204号公報、特表2000−504778号公報において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
特に、水をバインダーとした水性紫外線硬化型インクジェットインクが近年環境の点から注目されており、水、光によってラジカル重合する重合性化合物及び光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物の技術が公開されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、いずれの紫外線硬化型インクジェットにおいても、紫外線光源は消費電力の大きな高照度の光源を用いたものである。これらの高照度光源は非常に高価で大型であり、更には換気のためのダクトが必要であるといった問題を有している。更に、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、すべての記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
また、消費電力の大きな高照度の光源では、記録材料が収縮しやすいという問題点があった。特に、食品包装をはじめとする軟包装で使われる薄膜プラスチックフィルムや、粘着ラベルなどでは、特に収縮が起こりやすい。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−187918号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的はあらゆる記録材料に対し、文字品質に優れ、色混じりの発生、文字の盛り上がりもなく高精細な画像を記録することができ、且つ印刷物のしわやカールの発生が無いインクジェット記録方法による画像形成方法及び印刷物を提供することにある。更に、換気の必要がない画像形成方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0010】
1)選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの総消費電力が1kW・hr未満であることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
2)選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が0.1〜80mW/cm2であることを特徴とする画像形成方法。
【0012】
3)前記インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が1〜50mW/cm2であることを特徴とする前記2)に記載の画像形成方法。
【0013】
4)前記光照射ランプが蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、冷陰極管、LEDのいずれかであることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0014】
5)前記インクが着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする前記1)〜4)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0015】
6)前記記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が2〜15plであることを特徴とする前記1)〜5)のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0016】
7)非吸収性記録材料を用いて前記1)〜6)のいずれか1項に記載の画像形成方法により作製することを特徴とする印刷物。
【0017】
8)前記非吸収性記録材料の表面エネルギーが35〜60mJ/m2であることを特徴とする前記7)に記載の印刷物。
【0018】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがある。なお、総消費電力が1W・hr以下では硬化が不十分であり、好ましくない。総消費電力は光源の駆動、照射に要する電力の総計であるが、本発明によれば上記のように少ない電力であっても文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができるインクジェット記録が可能となる。
【0019】
本発明では、硬化に有効な波長域における最高照度が0.1〜80mW/cm2の低照度の活性光線を用いることが好ましい。更に好ましくは1〜50mW/cm2である。従来、UVインクジェット方式ではインク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、硬化に有効な波長域における最高照度が80mW/cm2を超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特にシュリンクラベルなどでは、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用できないのが現状であった。
【0020】
活性光線照射で用いる光源の例としては、蛍光灯、低圧水銀ランプ、捕虫灯、ブラックライト、殺菌灯、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。好ましくは蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、冷陰極管、LEDであり、更に好ましくは蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、LEDである。
【0021】
本発明の光によってラジカル重合する重合性化合物について説明する。
かかる重合性化合物は水溶性であることが好ましく、例えば、酸性基と(メタ)アクリロイル基或いはビニル基を共に分子内に有し、具体的には無水琥珀酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、オルソ無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル、ビニルナフタレンスルホン酸等である。
【0022】
水に可溶で、1分子中に重合性官能基を2個以上有する工業的に生産されている化合物としては、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性を付与した重合性化合物が知られている。このようなものとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、特開平8−165441号公報に記載の多官能の水溶性重合性化合物、特開2000−117960号公報のグリセリンから誘導される親水性ポリエポキシドの(メタ)アクリル酸エステル、米国特許第5,612,388号明細書の多官能性カチオン性アクリルモノマーも好ましい水溶性の重合性化合物である。
【0023】
本発明で使用する、更に好ましい水溶性の重合性化合物について説明する。かかる重合性化合物としては、以下に例示するような親水性の多官能の重合性化合物が挙げられる。これらの化合物は、親水性が高く、水溶性であり、重合性を有し、且つ重合速度が速く、しかも、それ自身低粘度であると共に、水溶液とした場合の粘度は従来から知られている化合物と比較して格段に低粘度となる。
【0024】
光によってラジカル重合する重合性化合物としては、下記一般式群A及び下記一般式群Bから選ばれる水溶性の重合性化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
一般式群AにおけるA、Rp、Rx、Ry、Rzは下記の原子団を表す。
【0029】
【化4】
【0030】
一般式群BにおけるA、Rpは下記の原子団を表す。
【0031】
【化5】
【0032】
以下に、一般式群A及び一般式群Bから選ばれる水溶性の重合性化合物の具体例を示す。
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
例示した重合性化合物A10−1やA10−2等は、アクリル酸のビニル基に、カルボキシル基を有するアミン、即ち広儀のアミン酸を付加させることによって製造することができる。この方法に用いられるカルボキシル基を有するアミンとしては、例えば、パラアミノ安息香酸、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、を挙げることができる。また、グルタミン酸、アスパラギン酸等の2個のカルボキシル基を有するアミノ酸からも同等性能の物質を誘導することができる。
【0039】
上記に挙げた多数の群の化合物の中でも、重合速度、硬化物の硬度、耐水摩擦性において特に優れているのは、分子中に3個の重合性官能基を有する化合物である。そのような傾向となる大きな理由は、3個以上の反応基を持つ化合物を重合させた場合は架橋密度が高く、重合することによって親水性を大きく減少させる効果を持つことによると考えられる。
【0040】
本発明の水溶性光重合開始剤について説明する。一例としては、例えば、波長400nm前後までの触媒が挙げられる。このような触媒としては、例えば、長波長領域に官能性、即ち紫外線を受けてラジカルを生成する感受性を持つ物質である下記一般式で表される光重合開始剤(以下、TX系と略称する)が挙げられ、本発明においては、これらの中から適宜に選択して使用することが特に好ましい。
【0041】
【化11】
【0042】
上記一般式TX1〜TX3中、R2は−(CH2)x−(x=0または1)、−O−(CH2)y−(y=1または2)、置換若しくは未置換のフェニレン基を表わす。また、R2がフェニレン基の場合には、ベンゼン環中の水素原子の少なくとも1つが、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等から選ばれる1つまたは2つ以上の基や原子で置換されていてもよい。Mは水素原子若しくはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K等)を表わす。更に、R3及びR4は各々独立に、水素原子、または置換若しくは未置換のアルキル基を表わす。ここでアルキル基の例としては、例えば、炭素数1〜10程度、特には炭素数1〜3程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、アルコキシル基(炭素数1〜3程度)等が挙げられる。また、mは1〜10の整数を表わす。
【0043】
これらの親水性原子団で置換されたチオキサントンは、水溶性、アニオン系水性顔料分散体との共溶性があり、有機顔料自身の吸収の影響が少ないので、顔料系組成物において感度の高い触媒として作用する。
【0044】
更に、本発明の光硬化型樹脂組成物を構成する水溶性光重合開始剤としては、下記一般式からなる光重合開始剤Irgacure2959(商品名:CibaSpecialty Chemicals製)の水溶性の誘導体(以下、IC系と略称する)を使用することもできる。具体的には、下記式からなるIC−1〜IC−3を使用することができる。
【0045】
【化12】
【0046】
上記したIC−1〜IC−3はノニオン性であるが、紫外線に対して感受し得る波長領域が、先に挙げたTX1〜TX3として示した光重合開始剤よりも短波長域にある。また、IC−1〜IC−3も前記したTX1〜TX3と同様に水溶性であるので、本発明の光硬化型樹脂組成物の構成成分として有用である。更に既存の紫外線重合システム用の触媒物質(光重合開始剤)から水性の誘導体を製造し、本発明の光硬化型樹脂組成物を構成する光重合開始剤として利用することも可能と考えられる。
【0047】
本発明に係るインク組成物を着色する場合は、色材を添加する。色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる各種色材を使用することができるが、耐候性の観点から顔料が好ましい。
【0048】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42
C.I Pigment Orange−16、36、38
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101
C.I Pigment Violet−19、23
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29
C.I Pigment Green−7、36
C.I Pigment White−6、18、21
C.I Pigment Black−7
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0049】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクではインク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0050】
顔料の分散は顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0051】
本発明のインクにおいては、色材濃度としてはインク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0052】
本発明のインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、インク組成物の保存性を高めるため、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することができる。紫外線硬化型のインクは、加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。この他にも必要に応じて、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。記録媒体との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その使用量は0.1〜5%の範囲であり、好ましくは0.1〜3%である。
【0053】
本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法においては、上記のインク組成物をインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0054】
本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成できる。
【0055】
本発明の画像記録方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0056】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0057】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、且つ全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0058】
本発明の印刷物について説明する。
本発明の印刷物は、吸水性材料上及び非吸収性録材料上に、本発明の画像形成方法及び/または本発明に記載の画像形成装置を用いて作製されることが好ましい。吸水性材料としては上質紙やコピー紙がある。また、ここで非吸収性とは、インク組成物(単にインクともいう)を吸収しないと言う意味であり、本発明においては、下記に示すようなブリストウ法におけるインク転移量が0.1ml/mm2未満であり、実質的に0ml/mm2であるようなものを非吸収性記録材料と定義する。
【0059】
ブリストウ法とは、短時間での紙及び板紙の液体吸収挙動を測定する方法であり、詳しくは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙または板紙の液体吸収性試験方法(ブリストウ法)に準じて測定し、接触時間40m秒におけるインク転移量(ml/m2)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、本発明においては、2%未満の水溶性染料を含有させてもよい。
【0060】
具体的な測定方法の一例を、以下に説明する。
インク転移量の測定法としては、記録媒体を25℃、50%RHの雰囲気下で12時間以上放置した後、例えば、熊谷理機工業株式会社製の液体動的吸収性試験機であるBristow試験機II型(加圧式)を用いて測定する。測定に用いる液体は、測定精度を高めるため、市販の水系インクジェットインク(例えば、マゼンタインク)とし、規定の接触時間後に記録媒体上のマゼンタ染色された部分の面積を測定することにより、インク転移量を求めることができる。
【0061】
本発明の非吸収性記録材料としては、通常の上質紙、非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類やガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能なPETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に、本発明の構成は有効となる。これらの基材はインクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0062】
これら各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mJ/m2のような広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できるが、更に好ましくは40〜60mJ/m2の範囲の記録材料である。
【0063】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作成効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0064】
【発明の実施の形態】
本発明に係る記録装置について説明する。
【0065】
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明に係る記録装置はこの図面に限定されない。
【0066】
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0067】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0068】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0069】
なお、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0070】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えば、UV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0071】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0072】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0073】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0074】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ブラックライト等を照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0075】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0076】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0077】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。また、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0078】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
実施例1
《インクの調製》
表1、2に記載の構成を有するインク組成物1、2を各々調製した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
色材1:C.I.pigment Black−7
色材2:C.I.pigment Blue−15:3
色材3:C.I.pigment Red−57:1
色材4:C.I.pigment Yellow−13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)
【0084】
【化13】
【0085】
《インクジェット画像形成方法》
記録ヘッド部は熱エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出させるもので、熱エネルギーを発生させる手段として電気熱変換体を備えているジェットノズルを備えた、図1に記載のようなインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セットを装填し、表4に示す表面エネルギーをもつ照射光源によって、幅600mm、長さ100mの長尺の各記録材料へ下記の各画像記録を連続して行った。インク供給系はインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720dpi×720dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)の解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。着弾した後、0.2秒後に、表3記載の照射条件で硬化処理を行った。なお、評価は温度23℃、40%RHに調整された場所で行った。
【0086】
【表3】
【0087】
ここで、表3に記載の各記録材料の略称の詳細は以下の通りである。
OPP:oriented polypropylene
また、表3に記載の照射光源の詳細は以下の通りである。
【0088】
【表4】
【0089】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。なお、各評価は連続吐出した画像記録の1m後の試料、10m後の試料及び100m後の試料について行った。
【0090】
〈換気装置の必要性〉
換気装置が必要なものは×、不用なものは○とした。なお、これは試料に寄らないので、100m後の試料についてのみ結果を示した。
【0091】
〈印字部の盛り上がり〉
印字部の盛り上がりを目視で評価した。なお、これも試料に寄らないので、1m後の試料についてのみ結果を示した。
【0092】
◎:盛り上がり無し
○:盛り上がりあるが、問題にならない
△:盛り上がりがあり、画質が使用下限レベル
×:盛り上がりがあり、画質が劣化し、使用不可レベル
〈文字品質〉
YMCK各色目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大し、目視評価した。
【0093】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〈色混じり(滲み)〉
隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲み具合を目視評価した。
【0094】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲みがない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みがない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、使えないレベル
〈しわ及びカール〉
1m、10m、及び100m印刷した直後に、各印刷物について、照射・硬化によるしわやカールが発生していないかを目視観察し、下記の評価基準に則り評価した。
【0095】
○:しわやカールの発生が無く、良好である
△:ややしわやカールの発生が認められるが、実用上許容の範囲にある
×:印刷物に強いしわやカールが認められ、実用上問題となる
以上により得られた各評価結果を、表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
表5より、本発明のインク組成物セットを用いた画像記録方法は、文字品質に優れ、色混じり及び印刷部の盛り上がりのない高精細な画像を記録することができ、且つ印刷物のしわやカールの発生が無いことが明らかである。勿論、換気の必要がなく、文字の盛り上がりでも優れている。
【0098】
【発明の効果】
本発明により、文字品質に優れ、色混じり及び印刷部の盛り上がりのない、高精細な画像を記録することができ、且つしわやカールの発生が無い印刷物、更には換気の必要のない画像形成方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料
Claims (8)
- 選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの総消費電力が1kW・hr未満であることを特徴とする画像形成方法。
- 選択的にインク滴の吐出制御可能な少なくとも1つのノズルを有する記録ヘッドで、少なくとも、水と、光によってラジカル重合する重合性化合物と、光の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂組成物を含有するインクを記録材料上に吐出する画像形成方法において、インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が0.1〜80mW/cm2であることを特徴とする画像形成方法。
- 前記インクを硬化させるための光照射ランプの硬化に有効な波長域でのピーク照度が1〜50mW/cm2であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
- 前記光照射ランプが蛍光灯、捕虫灯、ブラックライト、冷陰極管、LEDのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 前記インクが着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 前記記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が2〜15plであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 非吸収性記録材料を用いて請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成方法により作製することを特徴とする印刷物。
- 前記非吸収性記録材料の表面エネルギーが35〜60mJ/m2であることを特徴とする請求項7に記載の印刷物。
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