JP2004315565A - 活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【解決手段】光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、あらゆる記録材料に、様々な印字環境下においても、高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号、特開平6−200204号、特表2000−504778号において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
その中でも、特に、カチオン重合性化合物を用いた紫外線硬化型インクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、これらの紫外線硬化型インクジェット用インクは、酸素阻害作用を受けることがないため、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすいといった問題がある。すなわち、上記特許文献に記載のカチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェットインク組成物は、光重合性化合物として、例えば、ダウ・ケミカル社製のUVR6110及びUVR6105、ダイセル化学社製のセロキサイド2021が用いられることが多く、これらの化合物は、印字環境(例えば、温度、湿度)により吐出安定性・硬化性が大きく変動し、また硬化収縮により皺が発生するという課題を抱えている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−220526号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0008】
【特許文献2】
特開2002−188025号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−317139号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0012】
1.光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0013】
2.光重合性化合物として4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシドを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0014】
3.更に、光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする前記1または2項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0015】
4.前記ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキ基を有するフッ素系界面活性剤であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0016】
5.光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0017】
6.前記オキセタン環を有する化合物の1種が、前記一般式(E)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0018】
7.25℃における粘度が、7〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0019】
8.顔料を含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0020】
9.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0021】
10.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0022】
11.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
12.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0024】
13.前記9〜12項のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0025】
本発明者は、活性光線硬化型インクジェットインク組成物(以下、活性光線硬化型インクあるいは単にインクともいう)において、光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつ、ノニオン性界面活性剤を含有することにより、飛躍的に吐出安定性および硬化性が改良され、印字環境(例えば、温度、湿度)に影響を受けずに、良好な吐出安定性・硬化性が得られることを見出し、本発明に至った次第である。また、光重合性化合物として4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシドを含有し、かつ、ノニオン性界面活性剤を含有する構成においても、上記と同様の効果が得られることを見出したものである。
【0026】
従来、カチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェットインク組成物では、前記特許文献1〜3に見られるように、光重合性化合物としては、ダウ・ケミカル社製のUVR6110及び同UVR6105、ダイセル化学社製のセロキサイド2021等が用いられることが多く、印字環境の変化により、吐出安定性や得られる硬化度が大きく変動するという課題を有していた。また、本発明に係る光重合性化合物を用いた例も、前記特許文献2及び3に開示はされているが、本発明の構成であるノニオン性界面活性剤を用いることによる吐出安定性の改良、あるいは印字環境(温度、湿度)による硬化収縮に伴う皺の発生防止効果に関しては一切言及がなされていない。
【0027】
特に、本発明の構成からなる活性光線硬化型インクジェットインク組成物は、オキセタン環を含有する化合物と合わせて用いることにより、インクジェット記録をする上での重要な特性とされる吐出安定性が非常に良好となり、かつ硬化環境に左右されずにインクが記録材料上に着弾した後のDot径の制御が容易にでき、再現性よく高画質な画像を形成することができる画期的な構成である。
【0028】
また、本発明の構成として、好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有するインクであり、この構成とすることにより、前記の硬化性及び吐出安定性が、より一層向上する。
【0029】
また、前記一般式(E)で表されるオキセタン化合物を用いることで、前記硬化性及び吐出安定性ともに格段に向上することを見出した。光重合性化合物としてオキセタン化合物のみ用いる場合、単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上有する多官能オキセタン化合物とを併用すると更に好ましい。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、光重合性化合物として、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名セロキサイド3000等を用いることが特徴である。また、光重合性化合物として、4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシド、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名セロキサイド2000等を用いることが特徴である。上記2種の化合物は、脂環式エポキシの中でも、特に印字環境(例えば、温度、湿度)にかかわらず、吐出安定性・硬化性に優れる。
【0031】
更に、本発明のインクにおいては、光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含む。本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、例えば、特開2001−220526、同2001−310937に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0032】
また、本発明においては、前記2種の他にも、オキシラン基を有する化合物を含有しても良い。
【0033】
光重合性モノマーとしては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用出来る。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0034】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0035】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0036】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0037】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0038】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
また、本発明においては、AMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0040】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0041】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0042】
更に、本発明においては、公知のビニルエーテル化合物を用いることができる。
【0043】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0044】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明において、好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有するとことであり、この構成とすることにより、硬化性及び吐出安定性がともに向上する。
【0046】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために前記一般式(E)で表されるオキセタン環を有する化合物を用いることが、特に好ましい。
【0047】
以下、本発明に係る前記一般式(E)で表されるオキセタン環を含有する化合物について説明する。
【0048】
一般式(E)において、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を表し、このとき、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0049】
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化2】
【0051】
上記一般式(2)〜(5)において、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1〜R6は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、R7及びR8は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基を表す。
【0052】
本発明で使用するオキセタン環含有化合物としては、上記一般式(2)〜(5)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R7及びR8がプロピル基、ブチル基、フェニル基またはベンジル基、Zが酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。また、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0053】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(6)、(7)、(13)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化3】
【0055】
上記一般式(6)及び(7)において、mは2、3または4、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基またはフリル基、R9は、例えば、下記一般式(8)で示される炭素数1〜12の線形または分枝アルキレン基、線形または分枝ポリ(アルキレンオキシ)基、
【0056】
【化4】
【0057】
(一般式(8)中、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基を表す。)
または、下記一般式(9)、(10)及び(11)からなる群から選択される多価基を表す。
【0058】
【化5】
【0059】
上記一般式(9)において、nは0または1〜2000の整数、R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記一般式(12)からなる群から選択される基を表す。
【0060】
【化6】
【0061】
上記一般式(12)において、jは0または1〜100の整数、R13は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、R12はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0062】
【化7】
【0063】
上記一般式(10)において、R14は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基またはカルボキシル基を表す。
【0064】
【化8】
【0065】
上記一般式(11)において、R15は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH3)2またはC(CF3)2を表す。
【0066】
本発明で使用されるオキセタン環を有する化合物として、上記一般式(6)、(7)においては、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R9が、一般式(10)においてR14が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(8)においてR10がエチル基、一般式(9)、(12)においてR12及びR13がメチル基、Zは酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0067】
【化9】
【0068】
一般式(13)において、rは25〜200の整数であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基である。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0069】
一般式(E)で表される化合物例を以下に示す。
【0070】
【化10】
【0071】
これらの化合物は「高分子科学と有機化学とのキャッチボール」の第4講に記載の方法をはじめ、下記文献を参考にすることで容易に合成できる。
【0072】
1)Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533−538,May(1995)
2)A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
3)Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503−2509(1981)
4)Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853−3854(1983)
5)Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
6)Chem.Ber.101,1850(1968)
7)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
8)H.A.J.Curless,“Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)
9)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)
10)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)
11)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)
12)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
また、本発明のインクにおいては、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録材料への密着性を向上させる上で更に好ましい。ただし、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になったり、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0073】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、ノニオン性界面活性剤を含有することが特徴である。
【0074】
本発明で用いることのできるノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、第2級アルコールエトキシレート、第1級アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、オレイルアルコールエトキシレート、ラウリルアルコールエトキシレート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールオレート、ソルビタンステアリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体が共重合されたアクリル樹脂等を挙げることができる。更に、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール、またはグリコールエーテル類等が例示される。本発明に係るノニオン性界面活性剤は、単独であっても2種類以上の混合物であってもよい。
【0075】
本発明においては、ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤であることが更に好ましい。これは、フッ素原子、パーフルオロアルキル基が有する電気特性と分子特性に関連しているものと考えられる。
【0076】
本発明で使用される分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキル含有オリゴマー等を挙げることができ、具体的には、例えば、「サーフロン(SURFLON)S−141」、「サーフロンS−145」、「サーフロンS−381」、「サーフロンS−383」、「サーフロンS−393」、「サーフロンSC−101」、「サーフロンSC−105」、「サーフロンKH−40」、「サーフロンSA−100」(以上、セイミケミカル(株)製)、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−173」、「メガファックF−177」、「メガファックF−178A」、「メガファックF−178K」、「メガファックF−179」、「メガファックF−183」、「メガファックF−184」、「メガファックF−815」、「メガファックF−470」、「メガファックF−471」(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等を挙げることができる。また、「13700の化学商品」p1239〜p1242、化学工業日報社(2000)に記載の各化合物を挙げることができる。本発明に係るパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤は、単独でももしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0077】
本発明に係るノニオン性界面活性剤は、インク中に20〜50,000ppmの範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは50〜20,000ppmである。本発明に係るノニオン性界面活性剤の含有量が20ppm未満である場合には、十分な吐出安定性や良好な硬化性を得ることができず、また含有量が50,000ppmを超える場合には、インクの硬化性を阻害する恐れがある。
【0078】
本発明の活性光線硬化型インクには、公知のあらゆる光酸発生剤を用いることができる。
【0079】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0080】
本発明で用いることのできる光酸発生剤について説明する。
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
【0081】
本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物の、BF4 −、B(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −塩を挙げることができる。
【0082】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0083】
【化11】
【0084】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0085】
【化12】
【0086】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0087】
【化13】
【0088】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0089】
【化14】
【0090】
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物と共に、各種公知の染料及び/または顔料を含有しているが、好ましくは顔料を含有する。
【0091】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、81、83、87、95、109、
C.I Pigment Orange−16、36、38、
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、144、146、185、
C.I Pigment Violet−19、23、
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、27、29、60、
C.I Pigment Green−7、36、
C.I Pigment White−6、18、21、
C.I Pigment Black−7、
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0092】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明の照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0093】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明のインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0094】
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0095】
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0096】
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0097】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0098】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0099】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0100】
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0101】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0102】
インクの吐出条件としては、インクジェット記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0103】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0104】
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0105】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0106】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0107】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0108】
本発明では、254nmの波長領域に最高照度をもつ活性光線を用いることが好ましく、総消費電力が1kW・hr以上の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。
【0109】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0110】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0111】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0112】
図1は、本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0113】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0114】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0115】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0116】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0117】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0118】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0119】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0120】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、熱陰極管、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0121】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0122】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0123】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0124】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0125】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0126】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0127】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0128】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0129】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【0130】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0131】
《インク組成物セットの調製》
下記の方法に従って、表1〜6に記載の組成からなるインク組成物セット1〜6を調製した。
【0132】
分散剤(PB822 味の素ファインテクノ社製)を3質量部と、表1〜6に記載の各光重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に表1〜6に記載の色材を添加した後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光酸発生剤、酸増殖剤、熱塩基発生剤、ノニオン性界面活性剤を表1〜6に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物セット1〜6を調製した。
【0133】
なお、上記調製した各インク組成物セットの各色インク粘度は、以下の通りである。粘度は、各色インクの最大及び最小粘度での粘度巾で表示した。
【0134】
インク組成物セット1:28〜33mPa・s
インク組成物セット2:23〜27mPa・s
インク組成物セット3:24〜27mPa・s
インク組成物セット4:30〜35mPa・s
インク組成物セット5:28〜33mPa・s
インク組成物セット6:24〜27mPa・s
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【化15】
【0142】
【化16】
【0143】
【化17】
【0144】
表1〜6に記載の各インクと各化合物、表示の詳細は、以下の通りである。
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク
色材1:C.I.pigment Black 7
色材2:C.I.pigment Blue 15:3
色材3:C.I.pigment Red 57:1
色材4:C.I.pigment Yellow 13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)
〔光重合性化合物〕
*E1:脂環式エポキシ化合物
セロキサイド2000:ダイセル化学工業社製
セロキサイド2021P:ダイセル化学工業社製
セロキサイド3000:ダイセル化学工業社製
UVR6110:ダウ・ケミカル社製
*E2:エポキシ化脂肪酸イソブチル
D−55:アデカサイザーD−55(旭電化工業社製 エポキシ化脂肪酸ブチル エポキシ化合物)
*E3:エポキシ化亜麻仁油
Vf9040:Vikoflex9040(ATOFINA社製)
*O:オキセタン化合物
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製)
〔酸増殖剤〕
アクプレス11M:日本ケミックス社製
〔光酸発生剤〕
UVI6992:ダウ・ケミカル社製
C9000:Chivacure9000(Chitec社製)プロピレンカーボネート50%溶液
SP152:トリフェニルスルホニウム塩(アデカオプトマーSP−152 旭電化社製)プロピレンカーボネート50%溶液
〔ノニオン性界面活性剤〕
F178k:メガファックスF178k(大日本インキ化学工業社製)
F471:メガファックスF471(大日本インキ化学工業社製)
F475:メガファックスF475(大日本インキ化学工業社製)
TF907:メガファックスEXP TF907(大日本インキ化学工業社製)
F1405:メガファックスF1405(大日本インキ化学工業社製)
KH−40:サーフロンKH−10(セイミケミカル社製)
N564:ニューコール564(日本乳化剤社製)
〔その他〕
*1:γ−カプロラクトン(試薬 関東化学社製)
*2:N−エチルジエタノールアミン(塩基性化合物)
*3:プロピオンカーボネート(試薬 関東化学社製)
*4:トリブチルアミン(塩基性化合物)
*5:γ−ブチロラクトン(試薬 関東化学社製)
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜3を装填し、表7に記載の各表面エネルギーを有する巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。各インクが着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより、瞬時(着弾後2秒未満)に表7に記載の各照射光源より紫外線照射してインクを硬化した。画像記録後に、総インク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0145】
次いで、図2に記載のラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用い、インク組成物セット4〜6を用いて、同様にして各画像を形成した。
【0146】
上記2つの方式により、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び32℃、80%RHの環境下の3条件で印字を行った。
【0147】
なお、表7に記載の各照射光源の詳細は、以下の通りである。
照射光源A:熱陰極管(ニッポ社製U字管 光源消費電力1kW・hr未満)
照射光源B:低圧水銀ランプ(岩崎電気社製 特注品)
また、表7に記載の各照射光源の照度は、ウシオ電機社製のURS40で220〜420nmの積算照度を測定して表示した。
【0148】
また、表7に記載の各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
OPP:oriented polypropylene
PET:polyethylene terephthalate
シュリンクOPS:市販のシュリンク用途のoriented polystyrene
【0149】
【表7】
【0150】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0151】
〔文字品質の評価〕
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0152】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〔色混じり(滲み、皺)の評価〕
720dpiで、Y、M、C、K各色1dotが隣り合うように印字し、隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲みによる色混じり、皺の発生の有無を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0153】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲み及び皺の発生がない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲み、皺の発生がない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、また、重なり部に皺の発生があり、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表8に示す。
【0154】
【表8】
【0155】
表8より明らかなように、本発明に係る構成からなる画像形成方法は、比較例に対し、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質が優れ、色混じり(滲み、皺)の発生もない高精細な画像を記録することができることが分かる。
【0156】
【発明の効果】
本発明により、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料
【発明の属する技術分野】
本発明は、あらゆる記録材料に、様々な印字環境下においても、高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインク組成物、それを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号、特開平6−200204号、特表2000−504778号において、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
その中でも、特に、カチオン重合性化合物を用いた紫外線硬化型インクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、これらの紫外線硬化型インクジェット用インクは、酸素阻害作用を受けることがないため、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすいといった問題がある。すなわち、上記特許文献に記載のカチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェットインク組成物は、光重合性化合物として、例えば、ダウ・ケミカル社製のUVR6110及びUVR6105、ダイセル化学社製のセロキサイド2021が用いられることが多く、これらの化合物は、印字環境(例えば、温度、湿度)により吐出安定性・硬化性が大きく変動し、また硬化収縮により皺が発生するという課題を抱えている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−220526号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0008】
【特許文献2】
特開2002−188025号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−317139号公報 (特許請求の範囲及び実施例)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0012】
1.光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0013】
2.光重合性化合物として4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシドを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0014】
3.更に、光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする前記1または2項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0015】
4.前記ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキ基を有するフッ素系界面活性剤であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0016】
5.光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0017】
6.前記オキセタン環を有する化合物の1種が、前記一般式(E)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0018】
7.25℃における粘度が、7〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0019】
8.顔料を含有することを特徴とする前記1〜7項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0020】
9.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0021】
10.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0022】
11.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
12.インクジェット記録ヘッドより、前記1〜8項のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0024】
13.前記9〜12項のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0025】
本発明者は、活性光線硬化型インクジェットインク組成物(以下、活性光線硬化型インクあるいは単にインクともいう)において、光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつ、ノニオン性界面活性剤を含有することにより、飛躍的に吐出安定性および硬化性が改良され、印字環境(例えば、温度、湿度)に影響を受けずに、良好な吐出安定性・硬化性が得られることを見出し、本発明に至った次第である。また、光重合性化合物として4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシドを含有し、かつ、ノニオン性界面活性剤を含有する構成においても、上記と同様の効果が得られることを見出したものである。
【0026】
従来、カチオン重合性化合物を用いた活性光線硬化型インクジェットインク組成物では、前記特許文献1〜3に見られるように、光重合性化合物としては、ダウ・ケミカル社製のUVR6110及び同UVR6105、ダイセル化学社製のセロキサイド2021等が用いられることが多く、印字環境の変化により、吐出安定性や得られる硬化度が大きく変動するという課題を有していた。また、本発明に係る光重合性化合物を用いた例も、前記特許文献2及び3に開示はされているが、本発明の構成であるノニオン性界面活性剤を用いることによる吐出安定性の改良、あるいは印字環境(温度、湿度)による硬化収縮に伴う皺の発生防止効果に関しては一切言及がなされていない。
【0027】
特に、本発明の構成からなる活性光線硬化型インクジェットインク組成物は、オキセタン環を含有する化合物と合わせて用いることにより、インクジェット記録をする上での重要な特性とされる吐出安定性が非常に良好となり、かつ硬化環境に左右されずにインクが記録材料上に着弾した後のDot径の制御が容易にでき、再現性よく高画質な画像を形成することができる画期的な構成である。
【0028】
また、本発明の構成として、好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有するインクであり、この構成とすることにより、前記の硬化性及び吐出安定性が、より一層向上する。
【0029】
また、前記一般式(E)で表されるオキセタン化合物を用いることで、前記硬化性及び吐出安定性ともに格段に向上することを見出した。光重合性化合物としてオキセタン化合物のみ用いる場合、単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上有する多官能オキセタン化合物とを併用すると更に好ましい。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、光重合性化合物として、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名セロキサイド3000等を用いることが特徴である。また、光重合性化合物として、4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシド、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名セロキサイド2000等を用いることが特徴である。上記2種の化合物は、脂環式エポキシの中でも、特に印字環境(例えば、温度、湿度)にかかわらず、吐出安定性・硬化性に優れる。
【0031】
更に、本発明のインクにおいては、光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含む。本発明で用いることのできるオキセタン化合物としては、例えば、特開2001−220526、同2001−310937に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0032】
また、本発明においては、前記2種の他にも、オキシラン基を有する化合物を含有しても良い。
【0033】
光重合性モノマーとしては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用出来る。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0034】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0035】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0036】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0037】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0038】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
また、本発明においては、AMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物としては、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドの少なくとも一方であることが特に好ましい。
【0040】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0041】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0042】
更に、本発明においては、公知のビニルエーテル化合物を用いることができる。
【0043】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0044】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明において、好ましくは、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、オキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、ビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有するとことであり、この構成とすることにより、硬化性及び吐出安定性がともに向上する。
【0046】
また、本発明においては、更なる硬化性及び吐出安定性の向上のために前記一般式(E)で表されるオキセタン環を有する化合物を用いることが、特に好ましい。
【0047】
以下、本発明に係る前記一般式(E)で表されるオキセタン環を含有する化合物について説明する。
【0048】
一般式(E)において、R1〜R6はそれぞれ水素原子または置換基を表し、このとき、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0049】
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化2】
【0051】
上記一般式(2)〜(5)において、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1〜R6は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、R7及びR8は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基を表す。
【0052】
本発明で使用するオキセタン環含有化合物としては、上記一般式(2)〜(5)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R7及びR8がプロピル基、ブチル基、フェニル基またはベンジル基、Zが酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。また、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0053】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(6)、(7)、(13)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化3】
【0055】
上記一般式(6)及び(7)において、mは2、3または4、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基またはフリル基、R9は、例えば、下記一般式(8)で示される炭素数1〜12の線形または分枝アルキレン基、線形または分枝ポリ(アルキレンオキシ)基、
【0056】
【化4】
【0057】
(一般式(8)中、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基を表す。)
または、下記一般式(9)、(10)及び(11)からなる群から選択される多価基を表す。
【0058】
【化5】
【0059】
上記一般式(9)において、nは0または1〜2000の整数、R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記一般式(12)からなる群から選択される基を表す。
【0060】
【化6】
【0061】
上記一般式(12)において、jは0または1〜100の整数、R13は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、R12はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0062】
【化7】
【0063】
上記一般式(10)において、R14は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基またはカルボキシル基を表す。
【0064】
【化8】
【0065】
上記一般式(11)において、R15は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH3)2またはC(CF3)2を表す。
【0066】
本発明で使用されるオキセタン環を有する化合物として、上記一般式(6)、(7)においては、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R9が、一般式(10)においてR14が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(8)においてR10がエチル基、一般式(9)、(12)においてR12及びR13がメチル基、Zは酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0067】
【化9】
【0068】
一般式(13)において、rは25〜200の整数であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基である。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0069】
一般式(E)で表される化合物例を以下に示す。
【0070】
【化10】
【0071】
これらの化合物は「高分子科学と有機化学とのキャッチボール」の第4講に記載の方法をはじめ、下記文献を参考にすることで容易に合成できる。
【0072】
1)Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533−538,May(1995)
2)A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
3)Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503−2509(1981)
4)Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853−3854(1983)
5)Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
6)Chem.Ber.101,1850(1968)
7)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
8)H.A.J.Curless,“Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)
9)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)
10)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)
11)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)
12)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
また、本発明のインクにおいては、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録材料への密着性を向上させる上で更に好ましい。ただし、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になったり、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0073】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクは、ノニオン性界面活性剤を含有することが特徴である。
【0074】
本発明で用いることのできるノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、第2級アルコールエトキシレート、第1級アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、オクチルフェノールエトキシレート、オレイルアルコールエトキシレート、ラウリルアルコールエトキシレート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールオレート、ソルビタンステアリルエステル、ソルビタンオレイルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンオレイルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有不飽和単量体が共重合されたアクリル樹脂等を挙げることができる。更に、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール、またはグリコールエーテル類等が例示される。本発明に係るノニオン性界面活性剤は、単独であっても2種類以上の混合物であってもよい。
【0075】
本発明においては、ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤であることが更に好ましい。これは、フッ素原子、パーフルオロアルキル基が有する電気特性と分子特性に関連しているものと考えられる。
【0076】
本発明で使用される分子中にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキル含有オリゴマー等を挙げることができ、具体的には、例えば、「サーフロン(SURFLON)S−141」、「サーフロンS−145」、「サーフロンS−381」、「サーフロンS−383」、「サーフロンS−393」、「サーフロンSC−101」、「サーフロンSC−105」、「サーフロンKH−40」、「サーフロンSA−100」(以上、セイミケミカル(株)製)、「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−173」、「メガファックF−177」、「メガファックF−178A」、「メガファックF−178K」、「メガファックF−179」、「メガファックF−183」、「メガファックF−184」、「メガファックF−815」、「メガファックF−470」、「メガファックF−471」(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等を挙げることができる。また、「13700の化学商品」p1239〜p1242、化学工業日報社(2000)に記載の各化合物を挙げることができる。本発明に係るパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤は、単独でももしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0077】
本発明に係るノニオン性界面活性剤は、インク中に20〜50,000ppmの範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは50〜20,000ppmである。本発明に係るノニオン性界面活性剤の含有量が20ppm未満である場合には、十分な吐出安定性や良好な硬化性を得ることができず、また含有量が50,000ppmを超える場合には、インクの硬化性を阻害する恐れがある。
【0078】
本発明の活性光線硬化型インクには、公知のあらゆる光酸発生剤を用いることができる。
【0079】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0080】
本発明で用いることのできる光酸発生剤について説明する。
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。
【0081】
本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物の、BF4 −、B(C6F5)4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、CF3SO3 −塩を挙げることができる。
【0082】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0083】
【化11】
【0084】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0085】
【化12】
【0086】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0087】
【化13】
【0088】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0089】
【化14】
【0090】
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物と共に、各種公知の染料及び/または顔料を含有しているが、好ましくは顔料を含有する。
【0091】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、81、83、87、95、109、
C.I Pigment Orange−16、36、38、
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、101、144、146、185、
C.I Pigment Violet−19、23、
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、27、29、60、
C.I Pigment Green−7、36、
C.I Pigment White−6、18、21、
C.I Pigment Black−7、
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0092】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明の照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0093】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。本発明のインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1質量%乃至10質量%であることが好ましい。
【0094】
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0095】
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0096】
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0097】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0098】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0099】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0100】
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0101】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0102】
インクの吐出条件としては、インクジェット記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0103】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0104】
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜2.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0105】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0106】
また、活性光線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0107】
従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、光源の総消費電力が1kW・hrを超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特に、シュリンクラベルなどへの印字では、記録材料の収縮があまりにも大きく、実質上使用出来ないのが現状であった。
【0108】
本発明では、254nmの波長領域に最高照度をもつ活性光線を用いることが好ましく、総消費電力が1kW・hr以上の光源を用いても、高精細な画像を形成出来、且つ、記録材料の収縮も実用上許容レベル内に収められる。
【0109】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LEDなどがあるが、これらに限定されない。
【0110】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0111】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0112】
図1は、本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0113】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0114】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0115】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0116】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0117】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0118】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0119】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0120】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、熱陰極管、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なえ、好ましい。ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0121】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0122】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0123】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0124】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0125】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0126】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0127】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0128】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0129】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【0130】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0131】
《インク組成物セットの調製》
下記の方法に従って、表1〜6に記載の組成からなるインク組成物セット1〜6を調製した。
【0132】
分散剤(PB822 味の素ファインテクノ社製)を3質量部と、表1〜6に記載の各光重合性化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間かけて撹拌、混合して溶解させた。次いで、この溶液に表1〜6に記載の色材を添加した後、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理を行った。次いで、ジルコニアビーズを取り除き、各光酸発生剤、酸増殖剤、熱塩基発生剤、ノニオン性界面活性剤を表1〜6に記載の組み合わせで添加し、これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過して、インク組成物セット1〜6を調製した。
【0133】
なお、上記調製した各インク組成物セットの各色インク粘度は、以下の通りである。粘度は、各色インクの最大及び最小粘度での粘度巾で表示した。
【0134】
インク組成物セット1:28〜33mPa・s
インク組成物セット2:23〜27mPa・s
インク組成物セット3:24〜27mPa・s
インク組成物セット4:30〜35mPa・s
インク組成物セット5:28〜33mPa・s
インク組成物セット6:24〜27mPa・s
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【化15】
【0142】
【化16】
【0143】
【化17】
【0144】
表1〜6に記載の各インクと各化合物、表示の詳細は、以下の通りである。
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
W:ホワイトインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク
色材1:C.I.pigment Black 7
色材2:C.I.pigment Blue 15:3
色材3:C.I.pigment Red 57:1
色材4:C.I.pigment Yellow 13
色材5:酸化チタン(アナターゼ型 平均粒径0.20μm)
〔光重合性化合物〕
*E1:脂環式エポキシ化合物
セロキサイド2000:ダイセル化学工業社製
セロキサイド2021P:ダイセル化学工業社製
セロキサイド3000:ダイセル化学工業社製
UVR6110:ダウ・ケミカル社製
*E2:エポキシ化脂肪酸イソブチル
D−55:アデカサイザーD−55(旭電化工業社製 エポキシ化脂肪酸ブチル エポキシ化合物)
*E3:エポキシ化亜麻仁油
Vf9040:Vikoflex9040(ATOFINA社製)
*O:オキセタン化合物
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
OXT−221:ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製)
〔酸増殖剤〕
アクプレス11M:日本ケミックス社製
〔光酸発生剤〕
UVI6992:ダウ・ケミカル社製
C9000:Chivacure9000(Chitec社製)プロピレンカーボネート50%溶液
SP152:トリフェニルスルホニウム塩(アデカオプトマーSP−152 旭電化社製)プロピレンカーボネート50%溶液
〔ノニオン性界面活性剤〕
F178k:メガファックスF178k(大日本インキ化学工業社製)
F471:メガファックスF471(大日本インキ化学工業社製)
F475:メガファックスF475(大日本インキ化学工業社製)
TF907:メガファックスEXP TF907(大日本インキ化学工業社製)
F1405:メガファックスF1405(大日本インキ化学工業社製)
KH−40:サーフロンKH−10(セイミケミカル社製)
N564:ニューコール564(日本乳化剤社製)
〔その他〕
*1:γ−カプロラクトン(試薬 関東化学社製)
*2:N−エチルジエタノールアミン(塩基性化合物)
*3:プロピオンカーボネート(試薬 関東化学社製)
*4:トリブチルアミン(塩基性化合物)
*5:γ−ブチロラクトン(試薬 関東化学社製)
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜3を装填し、表7に記載の各表面エネルギーを有する巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。各インクが着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより、瞬時(着弾後2秒未満)に表7に記載の各照射光源より紫外線照射してインクを硬化した。画像記録後に、総インク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0145】
次いで、図2に記載のラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用い、インク組成物セット4〜6を用いて、同様にして各画像を形成した。
【0146】
上記2つの方式により、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び32℃、80%RHの環境下の3条件で印字を行った。
【0147】
なお、表7に記載の各照射光源の詳細は、以下の通りである。
照射光源A:熱陰極管(ニッポ社製U字管 光源消費電力1kW・hr未満)
照射光源B:低圧水銀ランプ(岩崎電気社製 特注品)
また、表7に記載の各照射光源の照度は、ウシオ電機社製のURS40で220〜420nmの積算照度を測定して表示した。
【0148】
また、表7に記載の各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
OPP:oriented polypropylene
PET:polyethylene terephthalate
シュリンクOPS:市販のシュリンク用途のoriented polystyrene
【0149】
【表7】
【0150】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0151】
〔文字品質の評価〕
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0152】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
〔色混じり(滲み、皺)の評価〕
720dpiで、Y、M、C、K各色1dotが隣り合うように印字し、隣り合う各色dotをルーペで拡大し、滲みによる色混じり、皺の発生の有無を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0153】
◎:隣り合うdot形状が真円を保ち、滲み及び皺の発生がない
○:隣り合うdot形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲み、皺の発生がない
△:隣り合うdotが少し滲んでいてdot形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うdotが滲んで混じりあっており、また、重なり部に皺の発生があり、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表8に示す。
【0154】
【表8】
【0155】
表8より明らかなように、本発明に係る構成からなる画像形成方法は、比較例に対し、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質が優れ、色混じり(滲み、皺)の発生もない高精細な画像を記録することができることが分かる。
【0156】
【発明の効果】
本発明により、様々な印字環境下においても、あらゆる記録材料に対して、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインク組成物とそれを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 インクジェット記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料
Claims (13)
- 光重合性化合物として1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 光重合性化合物として4−ビニルシクロヘキセン−1,2−エポキシドを含有し、かつノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 更に、光重合性化合物としてオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 前記ノニオン性界面活性剤が、分子中にパーフルオロアルキ基を有するフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を25〜90質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を10〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 25℃における粘度が、7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- 顔料を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
- インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾した後、0.001〜2.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
- インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインク組成物が着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
- インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出するインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
- インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物を、記録材料上に噴射して画像印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式のインクジェット記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項9〜12のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク組成物及びインクジェット記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
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