JP4147943B2 - 画像形成方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、さまざまな記録材料に、さまざまな印字環境下においても、高精細な画像を安定に再現できる画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷等、さまざまな印刷分野に応用されてきている。特に、微細等ットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢等を飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録材料が制限されること、記録材料のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる記録材料へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式等である。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性のない記録材料への記録ができる点で、近年注目されつつあり、例えば、特開平6−200204号、特表2000−504778において紫外線硬化型インクジェットインク、また特許文献1には紫外線硬化型インクジェット記録装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、さまざまな記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
例えば、この紫外線硬化型インクとして、ラジカル重合型紫外線硬化型インクとカチオン重合型紫外線硬化型インクがある。
【0007】
アクリル系組成物を中心としたラジカル重合型紫外線硬化型インク(例えば、特許文献2参照)は、その重合メカニズム上、酸素が介在した環境では酸素阻害作用を受けるため硬化性が落ちて画質が落ちる問題がある。
【0008】
また、カチオン重合型紫外線硬化型インクは、酸素阻害作用を受けることがないが、重合反応の性質上、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすく硬化性が落ちて画質が落ちる問題がある。
【0009】
【特許文献1】
米国特許第6,457,823号明細書
【0010】
【特許文献2】
特開2002−188025号公報(第2−7頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、さまざまな印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記構成により達成された。
【0013】
1.活性光線硬化型インクをインクジェット記録により記録材料上に吐出する画像形成方法において、該記録材料が非吸収性であり、該活性光線硬化型インクが該記録材料上に着弾後、2つ以上の照射手段により2回以上活性光線を照射し、かつ、着弾後最初に照射する第一の活性光線による該活性光線硬化型インクの硬化度(該活性光線硬化型インク中の光重合性化合物の転化率)が40〜70%であることを特徴とする画像形成方法。
ただし、以下の態様を除く。
顔料を含みそしてインクジェット印刷に適当な粘度及び表面張力を有する1種またはそれより多くのインクジェットインキを重合する方法であって、インクジェットプリンタにおいて1個またはそれより多くのインクジェットヘッドを使用して基材上に1種またはそれより多くのインキを付着させ、付着したインキを第1紫外線供給源により生成されるUVC放射が相対的に高い紫外線、UVCに富んだ放射により、該基材を第1紫外線供給源に対して移動させる間に照射し、そして第1紫外線供給源と塗られたインキとの間の中間の領域が照射期間中比較的酸素を含まないように基材表面に近い領域の酸素を減少させてインキに到達するUVCの量を増加させる、段階を含んでなり、そのインキは比較的光開始剤を含んでいなくてもよいようにする方法。
【0014】
2.活性光線硬化型インクが記録材料上に着弾後、0.001〜1.0秒の間に第一の活性光線を照射することを特徴とする前記1に記載の画像形成方法。
【0015】
3.活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする前記1または2に記載の画像形成方法。
【0016】
4.記録ヘッドのノズルより吐出するインク液滴量が、1〜15plであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0019】
5.活性光線硬化型インクが、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0020】
6.活性光線硬化型インクが、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を50〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を5〜40質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0021】
7.オキセタン環を有する化合物が、前記一般式(A)で表されることを特徴とする前記5または6に記載の画像形成方法。
【0023】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、記録ヘッドを収納したキャリッジの両脇に第一の活性光線ユニットを設けることを特徴とするインクジェット記録装置。
【0024】
9.前記1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドのすぐ下流に幅手方向に渡り第一の活性光線ユニットを設けることを特徴とするインクジェット記録装置。
【0025】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者は、活性光線硬化型インクを用いた画像形成方法において、インクが非吸収性の記録材料上に着弾後、活性光線源と着弾したインクの空間の酸素を減少せずに、2つ以上の照射手段により2回以上活性光線を照射し、かつ、着弾後最初に照射する第一の活性光線によるインクの硬化度(インク中の光重合性化合物の転化率)を40〜70%に留め、その後、十分な活性光線を照射し完全硬化することで、非常に再現性よく高精細な画像を形成することを見出し本発明に至った次第である。従来のように一つの活性光線で一括に露光すると、温度や湿度等の硬化環境によって、硬化不良やインクが記録材料上に着弾した後のドット径のばらつきが大きくなってしまっていた。米国特許第6,457,823号等にも同様な多段露光の技術が紹介されているが、この構成では高精細な画像は再現できない。
【0026】
特に、オキセタン環を含有する化合物を含有するインクを用いる場合、インクジェット記録をする上で重要な特性とされる吐出安定性が非常に良好で、かつ硬化環境に左右されずにインクが記録材料上に着弾した後のドット径の制御が容易にでき、再現性よく高画質な画像を形成することができる画期的な構成である。
【0027】
好ましくは、光重合性モノマーとして、オキセタン環を有する化合物を50〜95質量%、オキシラン基を有する化合物を5〜40質量%、ビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することで、前記硬化性及び吐出安定性はともに向上する。
【0028】
また、オキセタン環を含有する化合物として前記一般式(A)で表されるオキセタン化合物を用いることで、前記硬化性及び吐出安定性ともに格段に向上することを見出した。
【0029】
本発明におけるインクの硬化度とは、インク中の光重合性化合物の転化率のことをいう。転化率は、例えば、サーモ・ニコレー社製NEXUS470のような、リアルタイム測定可能な赤外分光光度計を用いて容易に測定できる。
【0030】
一般に光重合性化合物の転化(反応)は、活性光線照射終了後も徐々に転化(反応)が進むことがあるが、本発明において、第一の活性光線によるインクの硬化度とは、第一の活性光線が照射されてから第二の活性光線が照射される前までにインク中の光重合性化合物が転化(反応)した割合を指す。
【0031】
本発明においては、第一の活性光線によるインクの硬化度は40〜70%である。70%を超えるとインクが完全に硬化してしまい記録材料によってはドット径が小さくなり過ぎてしまったり、インクの硬化収縮により記録材料がカールしてしまうことが多く、高精細な画像が形成できない。
【0032】
(記録材料)
本発明で用いることのできる記録材料としては、各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類等が使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に、本発明の構成は有効となる。これらの記録材料は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱等により、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が記録材料の収縮に追従し難い。
【0033】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0036】
次に、本発明に用いられるインクについて説明する。
本発明において用いるインクは少なくとも光重合性化合物、光重合開始剤から構成される。
【0037】
(光重合性化合物)
光重合性化合物には、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物が挙げられる。
【0038】
ラジカル重合性化合物としては、各種(メタ)アクリレートモノマーが使用できる。例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。
【0039】
この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0040】
なお、感作性、皮膚刺激性、眼刺激性、変異原性、毒性等の観点から、上記モノマーの中でも特に、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラクトン変性可とう性アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0041】
更にこの中でも、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。
【0042】
カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーを併用できる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0043】
エポキシ化合物のうち、芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0044】
エポキシ化合物のうち、脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによつて得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0045】
好ましい脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0046】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0047】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0048】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0049】
(オキセタン環を有する化合物)
オキセタン化合物はオキセタン環を有する化合物のことであり、特開2001−220526、同2001−310937に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0050】
本発明に用いられるインクとしては、上記光重合性化合物の中でも、酸素重合阻害のないカチオン重合性化合物が好ましく、なかでもオキセタン環を有する化合物を用いることが硬化性及び活性光線によるドット径の制御の点で特に好ましい。更に、オキセタン環を有する化合物を50〜95質量%、オキシラン基を有する化合物を5〜40質量%、ビニルエーテル化合物を0〜40質量%含む併用系が硬化性・吐出安定性の点で好ましい。
【0051】
また、オキセタン環を有する化合物としては、前記一般式(A)で表されるオキセタン環を有する化合物を用いることが特に好ましい。
【0052】
一般式(A)で表されるオキセタン環を含有する化合物について説明する。
分子中に1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化2】
【0054】
(式(2)〜(5)中、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは主鎖に酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1〜R6は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、R7及びR8は、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基を表す。)
本発明で使用するオキセタン環含有化合物としては、上記一般式(2)〜(5)において、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R7及びR8がプロピル基、ブチル基、フェニル基またはベンジル基、Zが酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。また、R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0055】
分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(6)、(7)、(13)で表される化合物を挙げることができる。
【0056】
【化3】
【0057】
(式(6)及び(7)中、mは2、3または4、Zはそれぞれ独立で、酸素または硫黄原子、あるいは酸素または硫黄原子を含有してもよい2価の炭化水素基、R1は水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基またはフリル基、R9は、例えば下記一般式(8)で示される炭素数1〜12の線形または分枝アルキレン基、線形または分枝ポリ(アルキレンオキシ)基、
【0058】
【化4】
【0059】
(式(8)中、R10はメチル基、エチル基またはプロピル基等の低級アルキル基を表す。)
または、下記一般式(9)、(10)及び(11)からなる群から選択される多価基を表す。)
【0060】
【化5】
【0061】
(式(9)中、nは0または1〜2000の整数、R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基及び下記一般式(12)からなる群から選択される基を表す。)
【0062】
【化6】
【0063】
(式(12)中、jは0または1〜100の整数、R13は1〜10個の炭素原子を有するアルキル、R12はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0064】
【化7】
【0065】
(式(10)中、R14は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜10個のアルキル基、炭素数1〜10個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシレート基またはカルボキシル基を表す。)
【0066】
【化8】
【0067】
(式(11)中、R15は酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH3)2またはC(CF3)2を表す。)
本発明で使用されるオキセタン環を有する化合物として、上記式(6)、(7)においては、R1が低級アルキル基、特にエチル基、R9が、式(10)においてR14が水素原子である基、ヘキサメチレン基、式(8)においてR10がエチル基、式(9)、(12)においてR12及びR13がメチル基、Zは酸素または硫黄原子を含まない炭化水素基であるものが好ましい。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0068】
【化9】
【0069】
式(13)において、rは25〜200の整数であり、R16は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基である。R3〜R6が同時に水素原子を表すことがない。
【0070】
一般式(A)で表される化合物例を以下に示す。
【0071】
【化10】
【0072】
これらの化合物は「高分子科学と有機化学とのキャッチボール」の第4講に記載の方法をはじめ、下記文献を参考にすることで容易に合成できる。
1)Hu Xianming,Richard M.Kellogg,Synthesis,533−538,May(1995)
2)A.O.Fitton,J.Hill,D.Ejane,R.Miller,Synth.,12,1140(1987)
3)Toshiro Imai and Shinya Nishida,Can.J.Chem.Vol.59,2503−2509(1981)
4)Nobujiro Shimizu,Shintaro Yamaoka,and Yuho Tsuno,Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,3853−3854(1983)
5)Walter Fisher and Cyril A.Grob,Helv.Chim.Acta.,61,2336(1978)
6)Chem.Ber.101,1850(1968)
7)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
8)H.A.J.Curless,“Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)9)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)
10)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)
11)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)
12)“Heterocyclic Compounds with Three−and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)
(光重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、アリールアルキルケトン、オキシムケトン、チオ安息香酸S−フェニル、チタノセン、芳香族ケトン、チオキサントン、ベンジルとキノン誘導体、ケトクマリン類等の従来公知の重合開始剤が使用できる。重合開始剤については「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)に詳しい。中でもアシルフォスフィンオキシドやアシルホスフォナートは、感度が高く、重合開始剤の光開裂により吸収が減少するため、インクジェット方式のように1色当たり5〜12μmの厚みを持つインク画像での内部硬化に特に有効である。具体的には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等が好ましい。
【0073】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編,「イメ−ジング用有機材料」,ぶんしん出版(1993年),187〜192ページ、技術情報協会,「光硬化技術」,2001年、に紹介されている光酸発生剤)。本発明に好適な化合物例として、第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4 -,PF6 -,AsF6 -,SbF6 -,CF3SO3 -塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物を持つものが酸発生能力が高く好ましい。オニウム化合物の具体的な例を以下に示す。
【0074】
【化11】
【0075】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。具体的な化合物を以下に例示する。
【0076】
【化12】
【0077】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。以下に具体的な化合物を例示する。
【0078】
【化13】
【0079】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0080】
【化14】
【0081】
また、前述のモノマー同様、安全性を考慮した選択では、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア(R)1173)が好適に用いられる。好ましい添加量は、インク組成物全体の1〜6質量%、好ましくは2〜5質量%である。
【0082】
(顔料)
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物(光重合性化合物、光重合開始剤)と共に、各種公知の染料及び/または顔料を含有しているが、好ましくは顔料を含有する。
【0083】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42、
C.I Pigment Orange−16、36、38、
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101、
C.I Pigment Violet−19、23、
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29、
C.I Pigment Green−7、36、
C.I Pigment White−6、18、21、
C.I Pigment Black−7。
【0084】
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げるために、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0085】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し1〜50質量部添加することが好ましい。分散は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤ではなく重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0086】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
【0087】
本発明に係るインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1〜10質量%であることが好ましい。
【0088】
本発明の活性光線硬化型インクには、上記説明した以外にさまざまな添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミン等の塩基性有機化合物等があげられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0089】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法においては、上記のインクをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線等の活性光線を複数回に分けて照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0090】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題があるため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0091】
なお、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0092】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0093】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が1〜15plであることが好ましい。本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が1〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成できる。
【0094】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線源と着弾したインクの空間の酸素を減少せずに、2回以上活性光線を照射する。活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.8秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
【0095】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0096】
本発明においては、活性光線を照射を2段階以上に分け、まずインク着弾後0.001〜1.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射しインクを完全に硬化させる。
【0097】
本発明においては、更に活性光線を照射する光源の総消費電力が1kW・hr未満であることが好ましい。総消費電力が1kW・hr未満の光源の例としては、蛍光管、冷陰極管、LED等があるが、これらに限定されない。
【0098】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)について説明する。
【0099】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。なお、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0100】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0101】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0102】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0103】
なお、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0104】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、重合開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで重合開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0105】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0106】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0107】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0108】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される第一の照射手段である。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0109】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。例えば、日亜化学製の365nmで出力100mWのLEDを20個配列し、LED1個当たり1cm2照射するように配列する。照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0110】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。また、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0111】
また、記録材料搬送方向のヘッド下流に、幅手に渡り第二の照射手段を設けてインクを完全に硬化する。
【0112】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0113】
図1においては、シリアルヘッド方式による記録装置の一例を示したが、図2は、本発明のインクジェット記録装置に係る要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0114】
図2で示したインクジェット方式は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色の記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0115】
一方、ヘッドキャリッジ2の上流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、照射光源、例えば、LED、冷陰極管等を主走査方向及び副走査方向に複数個配列して、インク印字面全域をカバーするように配置されている第一の照射手段41、第二の照射手段42が設けられている。
【0116】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び第一の照射手段41、第二の照射手段42は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【0117】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0118】
実施例1
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0119】
《インクの作製》
下記のようにインクを作製した。
【0120】
ソルスパース32000GR(アビシア製) 10部
光重合性化合物 表1〜6記載の種類、量(単位は部)
以上をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間撹拌混合し溶解させた。これに、表1〜6に示す種類、量のpigmentを入れて、直径1mmのジルコニアビーズ200gと共にポリ瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて2時間分散処理した後、ジルコニアビーズを取り除き、表1〜6に示す光開始剤、増感剤を加えて撹拌混合した。これをプリンター目詰まり防止のため0.8μmメンブランフィルターで濾過してインクセット1〜6を得た。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
【化15】
【0128】
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製したインクセット1〜3を装填し、表7に記載の表面エネルギーを有する巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)の解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。キャリッジの走査速度は750mm/sとした。着弾した後、キャリッジ両脇の第一の照射手段により瞬時(着弾後1秒未満)に照射され、硬化環境に応じて表8に示す転化率になる。転化率の測定はサーモ・ニコレー社製FT−IR、NEXUS470にて行った。そして、更に第二の照射手段により完全に硬化する(比較試料は第一照射手段のみ)。記録後、総インク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。なお、インクジェット画像の形成は、上記方法に従って、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び32℃、80%RHの環境下でそれぞれ行った。
【0129】
また、全く同様に図2に記載のラインヘッド記録方式のインクジェット記録装置を用い、インクセット4〜6を用いて、画像を形成した。記録材料の搬送速度は600mm/sとした。
【0130】
なお、表7に記載の各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
OPP:oriented polypropylene
PET:polyethylene terephthalate
シュリンクOPS:市販のシュリンク用途のoriented polystyrene
【0131】
【表7】
【0132】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、下記の各評価を行った。
【0133】
(文字品質)
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0134】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
(色混じり(滲み))
720dpiで、Y、M、C、K各色1ドットが隣り合うように印字し、隣り合う各色ドットをルーペで拡大し、滲み具合を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0135】
◎:隣り合うドット形状が真円を保ち、滲みがない
○:隣り合うドット形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みがない
△:隣り合うドットが少し滲んでいてドット形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うドットが滲んで混じりあっており、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を表8に示す。
【0136】
【表8】
【0137】
表8から本発明の構成は、印字環境によらず、さまざまな記録材料に非常に安定に高精細な画像を形成することが分かる。
【0138】
【発明の効果】
本発明により、さまざまな印字環境下においても、文字品質に優れ、色混じりの発生がなく、高精細な画像を非常に安定に記録することができる画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録材料
Claims (9)
- 活性光線硬化型インクをインクジェット記録により記録材料上に吐出する画像形成方法において、該記録材料が非吸収性であり、該活性光線硬化型インクが該記録材料上に着弾後、2つ以上の照射手段により2回以上活性光線を照射し、かつ、着弾後最初に照射する第一の活性光線による該活性光線硬化型インクの硬化度(該活性光線硬化型インク中の光重合性化合物の転化率)が40〜70%であることを特徴とする画像形成方法。
ただし、以下の態様を除く。
顔料を含みそしてインクジェット印刷に適当な粘度及び表面張力を有する1種またはそれより多くのインクジェットインキを重合する方法であって、インクジェットプリンタにおいて1個またはそれより多くのインクジェットヘッドを使用して基材上に1種またはそれより多くのインキを付着させ、付着したインキを第1紫外線供給源により生成されるUVC放射が相対的に高い紫外線、UVCに富んだ放射により、該基材を第1紫外線供給源に対して移動させる間に照射し、そして第1紫外線供給源と塗られたインキとの間の中間の領域が照射期間中比較的酸素を含まないように基材表面に近い領域の酸素を減少させてインキに到達するUVCの量を増加させる、段階を含んでなり、そのインキは比較的光開始剤を含んでいなくてもよいようにする方法。 - 活性光線硬化型インクが記録材料上に着弾後、0.001〜1.0秒の間に第一の活性光線を照射することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- 活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
- 記録ヘッドのノズルより吐出するインク液滴量が、1〜15plであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 活性光線硬化型インクが、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 活性光線硬化型インクが、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を50〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を5〜40質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物を0〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、記録ヘッドを収納したキャリッジの両脇に第一の活性光線ユニットを設けることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドのすぐ下流に幅手方向に渡り第一の活性光線ユニットを設けることを特徴とするインクジェット記録装置。
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