JP6581840B2 - 飲料用缶、飲料用缶の製造方法および画像形成システム - Google Patents
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しかしながら、活性放射線の照射により画像を形成するインクを完全に硬化させた後、画像上に被覆層を形成した場合、画像と被覆層との間で歪みが生じ、被覆層が剥がれるおそれがある。
本発明を飲料用缶の製造方法として捉えた場合、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶本体部の外周面に対して、複数のインク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いて、活性放射線を照射することで硬化するインクを吐出してインク層を形成し、前記缶本体部の外周面に活性放射線を照射することで、硬化度が70%以上95%以下となるように、前記インク層を硬化させ、硬化度が70%以上95%以下の前記インク層上に、樹脂塗料を塗布することで当該インク層を覆う被覆層を形成する飲料用缶の製造方法である。
ここで、前記活性放射線は、紫外線であることを特徴とすることができる。この場合、例えば活性放射線として電子線を用いる場合と比較して、簡易な装置でインク層を硬化させることが可能となる。
また、前記缶本体部の外周面に活性放射線を1回照射することで、硬化度が70%以上95%以下となるように、前記インク層を硬化させることを特徴とすることができる。
本発明を画像形成システムとして捉えた場合、本発明が適用される画像形成システムは、筒状に形成され且つ金属材料に形成され飲料用缶に用いられる缶体への印刷を行う画像形成システムであって、複数のインク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いて、前記缶体の外周面に活性放射線を照射することで硬化するインクを吐出するインク吐出手段と、前記インク吐出手段により吐出された前記インクの硬化度が70%以上95%以下となるように、前記缶体の外周面に活性放射線を照射する活性放射線照射手段と、前記活性放射線照射手段により硬化された前記インク上に、当該インクを被覆する被覆層を形成する被覆層形成手段とを備える画像形成システムである。
ここで、前記インク吐出手段は、前記缶体の外周面に紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化型のインクを吐出し、前記活性放射線照射手段は、前記活性放射線として紫外線を照射することを特徴とすることができる。この場合、例えば活性放射線として電子線を用いる場合と比較して、簡易な装置でインク層を硬化させることが可能となる。
また、前記被覆層形成手段は、加熱により硬化する熱硬化型樹脂塗料を前記インク上に塗布することで前記被覆層を形成することを特徴とすることができる。この場合、例えば紫外線硬化型の樹脂塗料により被覆層を形成する場合と比較して、得られる飲料用缶の衛生性を向上させることができる。
さらに、前記被覆層を形成した缶体の外周面に遠赤外線を照射することで前記熱硬化型樹脂塗料を硬化させる遠赤外線照射手段をさらに備えることを特徴とすることができる。この場合、例えば熱硬化型樹脂塗料をガスオーブン等により加熱して硬化させる場合と比較して、短時間で熱硬化型樹脂塗料を硬化させることができ、エネルギー消費量を低減できる。
さらにまた、前記活性放射線照射手段は、前記インクの硬化度が70%以上95%以下となるように、前記缶体の外周面に前記活性放射線を1回照射することを特徴とすることができる。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成システム100を上方から眺めた場合の図である。
本実施の形態における画像形成システム100は、飲料缶に用いられる缶体(飲料用缶、缶本体部)10に対してデジタルの画像情報に基づき画像を形成する。
本実施の形態の印刷装置200では、旋回タレット210が、缶体10を保持した状態で缶体10の搬送を行う。
缶体投入部230には、不図示の缶体供給装置が設けられ、この缶体供給装置によってマンドレル225への缶体10の供給が行われる。
缶体排出部240には、不図示の缶体取り外し装置が設けられ、マンドレル225からの缶体10(印刷済みの缶体10)の取り外しが行われる。
6つのインクジェットヘッドHは、旋回タレット210の回転方向において、30°おきに配置されている。インクジェットヘッドHの各々は、下面に、複数のインク吐出口(不図示)を備え、このインク吐出口から下方の缶体10に向けて下地またはインクを吐出し、缶体10への下地またはインクの塗布を行う。
各インクジェットヘッドHでは、紫外線硬化型の下地またはインクが、缶体10の外周面へ吐出される。本実施の形態では、紫外線照射装置300から缶体10へ紫外線を照射することで、缶体10の外周面に塗布された下地およびインクを硬化させる。
本実施の形態の紫外線照射装置300としては、例えば、紫外線を出射するUVLEDやUVランプを用いることができる。
缶体投入部230では、マンドレル225が待機しており、不図示の缶体供給装置によって、このマンドレル225に対して缶体10が供給される。これにより、マンドレル225による缶体10の保持が開始される。
マンドレル225による缶体10の保持が開始されると、旋回タレット210の回転が開始され、マンドレル225は、第1インクジェットヘッドH1の下部に到達する。マンドレル225が第1インクジェットヘッドH1の下部に到達すると、旋回タレット210の回転は一旦停止される。
具体的には、缶体支持部材220内には、ロータリエンコーダ付モータが設けられており、マンドレル225による缶体10の保持が開始されると、このロータリエンコーダ付モータによりマンドレル225の回転が開始される。
缶体10が1回転すると、缶体10の全周に亘って下地が塗布された状態となり、第1インクジェットヘッドH1による下地の塗布は終了する。
缶体10が1回転すると、缶体10の全周に亘って画像が形成された状態となり、第2インクジェットヘッドH2によるインクの塗布は終了する。
なお、本実施の形態では、第1インクジェットヘッドH1が下地の吐出を開始したときの缶体10の回転位置については、検出、格納を行っていない。
より具体的には、缶体10の回転位置が、制御部に格納された上記回転位置になると、第3インクジェットヘッドH3からのインクの吐出が開始される。そして、缶体10が1回転すると、第3インクジェットヘッドH3によるインクの塗布は終了する。
同様に、旋回タレット210の回転が再び行われ、缶体10が、第6インクジェットヘッドH6の下部に達し、第6インクジェットヘッドH6からのインクの吐出が行われる。そして、インクの吐出開始から缶体10が1回転すると、第6インクジェットヘッドH6によるインクの塗布は終了する。
以上の工程により、第2インクジェットヘッドH2〜第6インクジェットヘッドH6により吐出されたインクによって缶体10の外周面に、YMCK色のインクからなる画像が形成される。
マンドレル225(缶体10)を停止または減速をさせる場合は、各インクジェットヘッドHに缶体10が到達する度に、マンドレル225の回転数を増加させ、回転数が予め定められた回転数になると、各インクジェットヘッドHからのインクの吐出が開始される。
この位置でも、缶体10の回転(自転)が行われ、紫外線照射装置300から出射される紫外線が缶体10の外周面に照射される。これにより、缶体10に塗布された下地およびインクが硬化し、缶体10の外周面に下地層およびインク層が形成される。
なお、詳細については後述するが、本実施の形態の紫外線照射装置300では、インク層の硬化度が、70%以上95%以下となるように、缶体10に対して紫外線が照射される。
この位置でも、缶体10の回転(自転)が行われ、缶体10に形成されたインク層上に、オーバーコート層を形成するための塗料が塗布される。本実施の形態の塗料塗布装置400では、コーターにより缶体10に塗料が塗布される。また、塗料塗布装置400では、塗料として、熱により硬化する熱硬化型の樹脂塗料が用いられる。
その後、旋回タレット210の回転に伴い、缶体10は、缶体排出部240に到達する。
取り外された缶体10は、後の工程へ移送される。なお、缶体10が取り外された後のマンドレル225は、缶体投入部230に再び到達し、缶体投入部230では、このマンドレル225に対して新たな缶体10が供給される。
遠赤外線照射装置500では、缶体10に対して遠赤外線が照射される。これにより、缶体10の表面に塗布された熱硬化型の樹脂塗料が加熱されて硬化し、オーバーコート層が形成される。
この結果、本実施の形態では、例えばガスの熱により加熱するガスオーブン等を用いて樹脂塗料を硬化させる場合と比較して、効率的に樹脂塗料を硬化させることが可能となる。
本実施の形態に用いるインクは、紫外線の照射により硬化するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、紫外線重合性のビヒクル、光重合開始剤及び着色剤を含み、さらに必要に応じて樹脂粒子、有機溶剤および添加剤等を含む。
このような化合物として具体的には、不飽和ポリエステル系樹脂、不飽和アクリル系樹脂、不飽和ウレタン系樹脂、不飽和エポキシ系樹脂、不飽和ポリアミド系樹脂、あるいはこれらの樹脂とエチレン系不飽和基を有する反応性希釈剤との混合物等が挙げられる。これらの中でも、耐候性、密着性等に優れたアクリルウレタンオリゴマーを用いることが好ましい。
このようなアクリルウレタンオリゴマーとしては、例えば、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの反応によって得られるオリゴマー、ポリエーテル系アクリルウレタンオリゴマー、ポリエステル系アクリルウレタンオリゴマー、ポリブタジエン系アクリルウレタンオリゴマー等が挙げられる。
水酸基および不飽和基を有する化合物としては、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの反応性希釈剤は、アクリルウレタンオリゴマー100重量部に対し、10重量部〜300重量部配合することが好ましい。
そして、紫外線硬化型のインクに用いられる光重合開始剤やモノマーには、人体に摂取された場合における安全性が低いものが存在する。このため、紫外線硬化型のインクにより形成された画像が、缶体10に充填された飲料物を飲む人の唇等に直接触れることを防止する必要がある。
また、インク層に未反応の光重合開始剤やモノマーが残存した場合、これらに起因した臭気が発生する場合がある。
したがって、缶体10に対して紫外線硬化型のインクを用いて画像を形成する場合には、衛生上の観点から、インク層上にオーバーコート層を形成する必要がある。
したがって、缶体10に対してインクジェット方式により画像を形成する場合には、缶体10の外観上の観点から、インク層上にオーバーコート層を形成する必要がある。
そして、インク層12とオーバーコート層との界面で歪みが生じた場合、オーバーコート層13がインク層12から剥離する場合がある。言い換えると、オーバーコート層13の界面剥離が生じる場合がある。
そして、紫外線硬化型のインクがオーバーコート層13の表面まで浮上した場合には、缶体10に充填された飲料物を飲む人の唇等に紫外線硬化型のインクが接触するおそれがある。
図3は、インク層12の硬化度を70%以上95%以下の範囲とすることによる作用を説明するための図であり、本実施の形態の印刷装置200にて画像の印刷が行われた後の缶体10の外周面を示した断面拡大図である。
具体的には、インク層12に紫外線を照射した後、オーバーコート層13を構成する樹脂塗料をインク層12上に積層した場合、インク層12とオーバーコート層13との界面近傍で対流が起こるものの、インク層12の硬化度が70%未満である場合と比較して対流の発生量は少ない。
このため、遠赤外線照射装置500により遠赤外線を照射した場合に、インク層12を構成するインクが対流によってオーバーコート層13の表面に浮上する前に、オーバーコート層13を構成する樹脂塗料が硬化される。
また、インク層12を構成する紫外線硬化型のインクがオーバーコート層13の表面に露出することが抑制されることで、紫外線硬化型のインクに含まれる光重合開始剤やモノマー等に起因する臭気の発生が抑制される。
(インク層12の形成)
洗浄処理を施した容量350ml用の円筒状のアルミニウム缶からなる缶体10に対して、上述した印刷装置200を用いて、インク層12を形成した。具体的には、印刷装置200の第5インクジェットヘッドH5を用いて、紫外線硬化型の黒色のインクにより、缶体10の外周面に対して円周方向に連続した画像を形成した。
続いて、紫外線硬化型のインクにより画像を形成した缶体10に対して、紫外線照射装置300により紫外線を照射し、インクを硬化させた。
紫外線照射装置300としては、京セラ株式会社製LED−UVランプ KVL−S05E−G3型(波長385nm、照射幅110mm、最大消費電力1.5kW)を用いた。紫外線照射装置300における紫外線の出射位置と缶体10(インク層12)の表面までの距離は、10mmとした。また、紫外線照射装置300による紫外線の照射は、缶体10を回転(自転)した状態で、缶体10が2回転するまでの時間行った。
照射条件1:UVランプの調光度(出力)25%、照射時間0.25秒
照射条件2:UVランプの調光度(出力)25%、照射時間0.5秒
照射条件3:UVランプの調光度(出力)100%、照射時間0.25秒
照射条件4:UVランプの調光度(出力)100%、照射時間0.5秒
続いて、上述したATR法により、照射条件1〜照射条件4にて紫外線を照射したインク層12のFT−IRスペクトルをそれぞれ測定した。そして、得られたFT−IRスペクトルから、インク層12に対する紫外線の照射による、1720cm-1のピーク強度(P1720)に対する810cm-1のピーク強度(P810)の比の減少度を以下の式により算出した。
減少度=(P810(照射前)−P810(照射後))/P1720 ×100
照射条件1〜照射条件4にて紫外線を照射したインク層12のFT−IRスペクトルから得られた減少度を、以下に示す。
照射条件1:42.1
照射条件2:50.8
照射条件3:54.8
照射条件4:57.9
それぞれの照射条件におけるインク層12の相対硬化度を以下に示す。
照射条件1:72.7(%)
照射条件2:87.8(%)
照射条件3:94.6(%)
照射条件4:100(%)
続いて、それぞれの照射条件にてインク層12を硬化させた缶体10に対して、塗料塗布装置400により樹脂塗料を塗布し、遠赤外線照射装置500により樹脂塗料を硬化させて、オーバーコート層13を形成した。
ここで、硬化度(相対硬化度)が70%以上95%以下の範囲である、照射条件1〜照射条件3の缶体10では、インク層12からのオーバーコート層13の剥離が発生しないことが確認された。
しかしながら、インク層12に用いるインクの種類等によって、得られるFT−IRスペクトルの形状が異なる場合がある。このような場合には、上述した例と同様に、インク層12の硬化に無関係なピークと、インク層12の硬化に伴い強度が変化するピークとの比により、インク層12の硬化度(相対硬化度)を算出することができる。
なお、インク層12の硬化度の算出方法は、FT−IRスペクトルを用いた方法に限られるものではない。
Claims (9)
- 筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶本体部と、
前記缶本体部の外周面に形成され且つ活性放射線で硬化するインクにより形成され、硬化度が70%以上95%以下の範囲である画像層と、
前記画像層上に形成され当該画像層を被覆する被覆層と
を備える飲料用缶。 - 飲料用缶の製造方法であって、
筒状に形成され且つ金属材料により形成された缶本体部の外周面に対して、複数のインク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いて、活性放射線を照射することで硬化するインクを吐出してインク層を形成し、
前記缶本体部の外周面に活性放射線を照射することで、硬化度が70%以上95%以下となるように、前記インク層を硬化させ、
硬化度が70%以上95%以下の前記インク層上に、樹脂塗料を塗布することで当該インク層を覆う被覆層を形成する飲料用缶の製造方法。 - 前記活性放射線は、紫外線であることを特徴とする請求項2に記載の飲料用缶の製造方法。
- 前記缶本体部の外周面に活性放射線を1回照射することで、硬化度が70%以上95%以下となるように、前記インク層を硬化させることを特徴とする請求項2に記載の飲料用缶の製造方法。
- 筒状に形成され且つ金属材料に形成され飲料用缶に用いられる缶体への印刷を行う画像形成システムであって、
複数のインク吐出口を有するインクジェットヘッドを用いて、前記缶体の外周面に活性放射線を照射することで硬化するインクを吐出するインク吐出手段と、
前記インク吐出手段により吐出された前記インクの硬化度が70%以上95%以下となるように、前記缶体の外周面に活性放射線を照射する活性放射線照射手段と、
前記活性放射線照射手段により硬化された前記インク上に、当該インクを被覆する被覆層を形成する被覆層形成手段と
を備える画像形成システム。 - 前記インク吐出手段は、前記缶体の外周面に紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化型のインクを吐出し、
前記活性放射線照射手段は、前記活性放射線として紫外線を照射することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。 - 前記被覆層形成手段は、加熱により硬化する熱硬化型樹脂塗料を前記インク上に塗布することで前記被覆層を形成することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
- 前記被覆層を形成した缶体の外周面に遠赤外線を照射することで前記熱硬化型樹脂塗料を硬化させる遠赤外線照射手段をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成システム。
- 前記活性放射線照射手段は、前記インクの硬化度が70%以上95%以下となるように、前記缶体の外周面に前記活性放射線を1回照射することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
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