JP2004195528A - マグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法 - Google Patents

マグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法 Download PDF

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智之 上山
Kogun Do
紅軍 仝
Yuji Ueda
裕司 上田
Michitaka Todo
道隆 藤堂
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Abstract

【課題】アーク溶接部にレーザ5を照射しながらマグネシウム又はマグネシウム合金2を溶接するレーザ照射アーク溶接方法において、3mm以下の板厚の溶接ではレーザ照射により形成されたキーホールによって溶け落ちが発生し、良好な溶接ができない。
【解決手段】本発明は、マグネシウム又はマグネシウム合金の被溶接材2の板厚が0.8mm以上3mm以下であり、アーク溶接法がMIGパルス溶接であり、レーザ5の照射部のエネルギー密度を、溶融池にキーホールが形成される値未満の範囲であって所定の溶け込み深さを得ることができる値に設定するマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アーク溶接部にレーザを照射しながらマグネシウム又はマグネシウム合金を溶接するレーザ照射アーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム又はその合金は、アルミニウム又はその合金よりも軽くかつ強度も高いことから,自動車、車両等の輸送機器の材料として使用されつつある。マグネシウム材を構造物に使用する場合、その接合方法としてはTIG溶接、MIG溶接等のアーク溶接が一般に適用される。しかし、マグネシウム材は、材料表面にアルミニウム材よりも強固な酸化被膜が形成されているために、この酸化皮膜を何らかの方法によって除去しないと安定したアーク溶接を行うことはできない。
【0003】
[従来技術1]
例えば、特許文献1に記載するアルミニウム合金のTIG溶接方法では、マグネシウム材ではなくアルミニウム材を対象とするものであるが、交流電流の通電と正極性パルス電流の通電とを交互に繰り返すことによって、クリーニング作用を作用させてアルミニウム表面の酸化被膜を除去し、かつ、溶け込み等のビード形状を良好にすることができる。このTIG溶接方法をマグネシウム材に適用すれば、同様に良好な溶接結果を得ることができる。しかし、一般的にTIG溶接方法は、溶接速度が遅いために作業能率が低いという問題がある。さらに、TIG溶接は、溶接ロボット等を利用して自動化を図ることが難しいという問題もある。
【0004】
[従来技術2]
次に、特許文献2に記載するアルミニウム合金の溶接方法では、図6に示すように、溶接トーチ先端部に取り付けた1つのノズル4から、アーク3を発生させるために給電された電極ワイヤ1と溶融池2aに添加されるフィラーワイヤ1aとを共に送給することによって、作業能率を高くしかつ溶接部の品質を向上させることができる。この溶接方法はアルミニウム材を対象とするものであり、マグネシウム材に適用すると下記のような問題が発生する。
【0005】
すなわち、図7に示すように、マグネシウムワイヤのワイヤ溶融速度はアルミニウムワイヤのワイヤ溶融速度よりも1.5倍程度速い。このために、マグネシウム溶接では、平均溶接電流が小さい値でマグネシウムワイヤは溶融するために、被溶接材への入熱が不足して溶け込みの浅い凸状ビードとなり、溶接品質が悪くなるという問題がある。このようなビード形状の例を図8に示す。同図(A)は重ね隅肉溶接の場合であり、同図(B)はT字隅肉溶接の場合である。どちらの場合も、溶け込みが浅く溶け込み不足であり、凸状ビードとなっている。これらの問題を解決するためには、マグネシウムワイヤを溶融させるアーク3以外から被溶接材2への入熱を追加して与える必要がある。しかし、上述した従来技術2の溶接方法では、被溶接材2への入熱は電極ワイヤ1を溶融させるアーク3のみから行われるために、上記の問題は解決することができない。
【0006】
[従来技術3]
さらに、特許文献3に記載するレーザ光によるアーク誘導溶接方法及び装置では、図9に示すように、溶接部にレーザ5を照射してアーク3を照射位置に誘導することによって、深い溶け込みを得ながら高速溶接を行うことができる。これは、溶融池2aにレーザ5が照射されるとその非常に高いエネルギー密度によってキーホール7が形成される。そして、この照射部からプラズマ6a及びプルーム(金属蒸気)6bが生成される。このプラズマ6a及びプルーム6bにアーク3が誘導されることになるからである。上記において、通常レーザ5は、照射部でのエネルギー密度を高くするために、被溶接材2の表面近傍でフォーカスが正確に合うように調整される。このために、ビームスポット径は0.5〜1mm程度と小さくなる。
【0007】
しかし、上記の溶接方法では、レーザ5の照射によって溶融池2a内にキーホール7を形成させてその周辺部を溶融するで深い溶け込みを得ている。このために、板厚が3mm以下になると、逆にこのキーホール7によって溶け落ちが発生しやすくなる。したがって、この溶接方法では、板厚3mm以下のマグネシウム材を溶接することは難しい。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−314966号公報
【特許文献2】
特開平5−169268号公報
【特許文献3】
特開2000−301338号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
板厚が3mm以下のマグネシウム及びその合金のMIG溶接において、被溶接材表面の強固な酸化皮膜を除去すると共に溶け落ちの発生しない溶接をすることができ、適正な溶け込み深さ及び凸状でないフラットなビード外観を得るために適正な被溶接材への入熱を与えることができ、作業効率を高めるために高速溶接をすることができるレーザ照射アーク溶接方法を提供することが本発明の課題である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、アーク溶接部にレーザを照射しながらマグネシウム又はマグネシウム合金を溶接するレーザ照射アーク溶接方法において、
前記マグネシウム又はマグネシウム合金の被溶接材の板厚が0.8mm以上3mm以下であり、前記アーク溶接法がMIGパルス溶接であり、前記レーザの照射部のエネルギー密度を、溶融池にキーホールが形成される値未満の範囲であって所定の溶け込み深さを得ることができる値に設定する、ことを特徴とするマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法である。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のエネルギー密度の設定を、前記レーザの出力値及び/又は照射部のビームスポット径を調整することによって行うことを特徴とするマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のレーザ照射アーク溶接方法を実施するための溶接装置の構成図である。溶接電源装置9は、MIGパルス溶接を行うための溶接電圧及び溶接電流をアーク3に供給する。マグネシウム材の溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給装置の送給ロール12の回転によって溶接トーチ8を通って被溶接材2へと送給されて、アーク3が発生する。
【0013】
レーザ発振装置11は、レーザ5をレーザトーチ10を介して溶接部に照射する。このレーザの種類としては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ又は半導体レーザを使用することができる。
【0014】
図2は、上述した図9に対応する本発明の溶接部の模式図である。レーザ5は、キーホールが形成されないエネルギー密度の値未満であり、かつ、適正な溶け込み深さ及びフラットなビード外観が得られるエネルギー密度の値に設定される。ここで、エネルギー密度Ed[kw/cm2]は、下式で定義される。
Ed=P/((0.5×D×0.1)×(0.5×D×0.1)×π)
ここで、P[kW]はレーザ出力値であり、D[mm]はビームスポットの直径であり、πは円周率である。この式から明らかなように、エネルギー密度Edを設定するためには、レーザ出力P及び/又はビームスポット径Dを調整すればよい。
【0015】
同図に示すように、レーザ照射によってキーホールが形成されないために、プラズマ及びプルームが少ししか生成されないので、アーク3がレーザ照射位置に誘導されることはない。したがって、レーザ5の作用は、アーク3の誘導ではなく被溶接材2への追加の入熱を与えることである。このことで、溶け落ちを発生させることなく、適正な溶け込み深さ及びフラットなビード外観を得ることができる。
【0016】
図3は、キーホールが形成されずかつ溶け込み不足も発生しないエネルギー密度Edの範囲の一例を示す図である。同図の横軸はビームスポット径Dを示し、縦軸はエネルギー密度Edを示す。同図は、被溶接材に板厚3mmのマグネシウム合金を用いて、同材質でワイヤ径1.2mmのマグネシウム合金ワイヤによってMIGパルス溶接を行い、同時に溶接部にレーザを照射したものである。その他の溶接条件としては、溶接電流70A(ワイヤ送給速度830cm/分)、溶接電圧20V、溶接速度3m/分のときである。
【0017】
同図から明らかなように、エネルギー密度Edが500kW/cm2を超えると、溶融池にキーホールが形成されるために、溶け落ちが発生しやすくなる。他方、エネルギー密度Edが15kW/cm2未満になると入熱不足となり、溶け込み不足が発生しやすくなる。したがって、良好な溶接結果を得るためには、エネルギー密度Edを、キーホールの形成される値未満の範囲で、所定の溶け込みを得ることができる値に設定する必要がある。
【0018】
アーク溶接法としてMIGパルス溶接を使用する理由は、直流MIG溶接に比べてスパッタの発生が少なく、かつ、フラットなビード外観を得ることができるからである。すなわち、MIGパルス溶接からの入熱と、レーザ照射による入熱とが加算されて、適正な溶け込み深さ及びフラットなビード外観を実現することができる。
【0019】
また、アークとレーザ照射とによって強固な酸化皮膜を除去しながら、安定した溶接を行うことができる。上述したように、レーザは、ビームスポット径が略最小値(0.5〜1.0mm程度)となるフォーカス状態で使用されるのが原則である。しかし、本発明では、ビームスポット径が1〜5mm程度のデフォーカス状態でも積極的に使用する。これは、薄板の高速溶接においては、ビームスポット径が大きい方が、レーザ照射位置、被溶接材の固定位置、溶接トーチの溶接線倣い誤差等の位置ズレに対する裕度が広くなる効果もあるからである。また、現在使用されているマグネシウム材の最小板厚は、0.8mm程度である。したがって、本発明の対象となる板厚の範囲は、0.8mm以上3mm以下となる。
【0020】
図4は、本発明の効果の一例として上述した図8に対応するビード断面図である。同図(A)に示す重ね隅肉溶接の場合及び同図(B)に示すT字隅肉溶接の場合も、溶け込みは適正であり、ビード外観も凸状ではなくフラットであり、良好な溶接品質となっている。
【0021】
図5は、本発明の作業能率の向上効果を表わす良好な溶接が可能な最大溶接速度の範囲を示す図である。同図は、従来技術1、従来技術2及び本発明において、板厚が0.8〜3mmのマグネシウム合金を良好に溶接することができる最大溶接速度を測定した結果である。なお、従来技術3は、板厚が3mm以下であるために溶け落ちが発生しやすく測定することができなかった。同図から明らかなように、本発明の各板厚に対する最大溶接速度は、従来技術1の約8倍、従来技術2の約4倍となり、作業能率が大幅に向上することになる。
【0022】
【発明の効果】
本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法によれば、板厚0.8〜3mmのマグネシウム材の溶接において、被溶接材表面の強固な酸化皮膜をアーク及びレーザによって除去することができ、かつ、適正な溶け込み深さ及びフラットなビード外観を形成することができ、かつ、溶接速度が従来技術のときの約4倍以上となり作業能率の高い溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレーザ照射アーク溶接装置の構成図である。
【図2】本発明のレーザ照射アーク溶接部の模式図である。
【図3】本発明におけるレーザ照射部のエネルギー密度の設定範囲を示す図である。
【図4】本発明のビード断面図である。
【図5】本発明の最大溶接速度を示す図である。
【図6】従来技術2の溶接方法を示す溶接トーチ先端部の模式図である。
【図7】マグネシウムワイヤ及びアルミニウムワイヤの溶融特性図である。
【図8】従来技術2のビード断面図である。
【図9】従来技術3の溶接方法を示す溶接部の模式図である。
【符号の説明】
1 溶接ワイヤ
1a フィラーワイヤ
2 被溶接材
2a 溶融池
2b ビード
3 アーク
4 ノズル
5 レーザ
6a プラズマ
6b プルーム
7 キーホール
8 溶接トーチ
9 溶接電源装置
10 レーザトーチ
11 レーザ発振装置
12 送給ロール
D ビームスポット径
Ed エネルギー密度
P レーザ出力値

Claims (2)

  1. アーク溶接部にレーザを照射しながらマグネシウム又はマグネシウム合金を溶接するレーザ照射アーク溶接方法において、
    前記マグネシウム又はマグネシウム合金の被溶接材の板厚が0.8mm以上3mm以下であり、前記アーク溶接法がMIGパルス溶接であり、前記レーザの照射部のエネルギー密度を、溶融池にキーホールが形成される値未満の範囲であって所定の溶け込み深さを得ることができる値に設定する、ことを特徴とするマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法。
  2. 請求項1記載のエネルギー密度の設定を、前記レーザの出力値及び/又は照射部のビームスポット径を調整することによって行うことを特徴とするマグネシウム又はマグネシウム合金のレーザ照射アーク溶接方法。
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