JP2004193356A - 熱電モジュール及びその製造方法 - Google Patents
熱電モジュール及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004193356A JP2004193356A JP2002359821A JP2002359821A JP2004193356A JP 2004193356 A JP2004193356 A JP 2004193356A JP 2002359821 A JP2002359821 A JP 2002359821A JP 2002359821 A JP2002359821 A JP 2002359821A JP 2004193356 A JP2004193356 A JP 2004193356A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thermoelectric
- thermoelectric element
- layer
- solder
- thermoelectric module
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Cooling Or The Like Of Semiconductors Or Solid State Devices (AREA)
Abstract
【解決手段】支持基板1、2の表面に設けられた配線導体3、4の上に、複数の熱電素子5を配列し、該複数の熱電素子5と前記配線導体3、4とが半田層6を介して接合されてなる熱電モジュールであって、前記熱電素子5の接合端部8付近に、該熱電素子5の側面を一周するように前記半田層6を構成する半田に対する濡れ性の低い反発層9を設けたことを特徴とし、前記反発層9が、酸化物層からなることが好ましい。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体等の発熱体の冷却等に好適に使用され、熱電特性に優れる熱電モジュール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ペルチェ効果を利用した熱電モジュールは、電流を流すことにより一端が発熱するとともに他端が吸熱するため、冷却用の熱電素子として用いられている。この熱電モジュールは、構造が簡単で、取扱いが容易であるのみでなく、安定な特性を維持することが出来るため、広範囲にわたる利用が注目されている。
【0003】
特に、熱電モジュールを用いると局所冷却ができ、室温付近の精密な温度制御が可能であるため、レーザーダイオードの温度制御、小型で構造が簡単でありフロンレスの冷却装置、冷蔵庫、恒温槽、光検出素子、半導体製造装置等の電子冷却素子、レーザーダイオードの温度調節等への幅広い利用が期待されている。特に、小型で局所冷却ができ、室温付近の精密な温度制御が可能であるため、半導体レーザーや光集積回路等に代表される一定温度に精密制御される恒温装置や小型冷蔵庫への応用が積極的に進められている。
【0004】
室温付近で冷却用熱電モジュールに用いられる熱電材料としては、冷却特性が優れるという観点からBi2Te3(テルル化ビスマス)の材料が一般的に用いられている。なお、熱電素子はP型およびN型を対にして用いる必要があり、N型にはBi2Te3とBi2Se3(セレン化ビスマス)との固溶体が、P型にはBi2Te3とSb2Te3(テルル化アンチモン)との固溶体が優れた性能を示すことが知られ、このA2B3型(AはBiまたはSbの1種または2種、BはTeまたはSeの1種または2種)結晶が冷却用熱電モジュール用熱電材料として広く用いられている。(例えば特許文献1参照)
上記の材料で構成された熱電素子は、支持基板の表面に設けられた配線導体の上に、半田接合によって接合される。その接合方法としては、配線導体上に半田ペーストを塗布し、該半田ペーストを溶融(リフロー)させて接合する方法が示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、半田接合をする場合に、半田が熱電材料と反応することがあり、上述のA2B3型(AはBi及び/又はSb、BはTe及び/又はSe)結晶はSn−Sb半田と反応し、熱電素子の特性劣化を招くため、半田接合をする際に熱電素子材料と半田とが接触しないように、接合に関与する熱電素子の端面の表面に半田の拡散を抑制するメッキ層を設けることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
[特許文献1]
特開2002−232025号公報
[特許文献2]
特開2002−232022号公報
[特許文献3]
特開2001−196646号公報(第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3に記載の反応防止層を形成する方法では、半田が熱電素子の端面を介して拡散するのを防止するため、半田と熱電素子との反応を防止することができるものの、Au−Sn半田と上記A2B3型結晶との濡れ性が良好なことから、半田が熱電素子の側面に回り込み、熱電素子の側面を被う現象が発生するため、電流の一部が側面を伝わることにより、PN接合の状態が一部異常となり、熱電特性(冷却性能)の劣化を招くという問題があった。
【0008】
特に、熱電特性(冷却性能)を向上させるために、0.95mm以下に熱電素子を短くして用いる場合、半田が熱電素子の側面に回り込み、熱電素子の側面を被う現象によって熱電特性(冷却性能)の劣化が激しくなり、最悪の場合には、側面の半田がつながって回路が短絡し、製品の不良率が高くなるという問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、冷却性能が高く、製造時の不良率が低い熱電モジュール及びその製造法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、熱電素子の側面の接合端部付近に半田と濡れ性の悪い反発層を設けることにより、半田層の側面への必要以上の回り込みを抑えることができるという知見に基づき、その結果、熱電素子と濡れ性の高い半田を用いた熱電モジュールであっても、冷却性能が高く、製造時の不良率の低い熱電モジュール及びその製造法を実現したものである。
【0011】
即ち、本発明品の熱電モジュールは、支持基板の表面に設けられた配線導体の上に、複数の熱電素子を配列し、該複数の熱電素子と前記配線導体とが半田層を介して接合されてなる熱電モジュールであって、前記熱電素子の接合端部付近に、該熱電素子の側面を一周するように前記半田層を構成する半田に対する濡れ性の低い反発層を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
特に、前記反発層が、酸化物層からなることが好ましい。これにより十分な冷却性能を安定して発揮できる。
【0013】
また、前記反発層の幅が、25μm以上であることが好ましい。これにより、半田の広がりを防ぎやすくなり、優れた冷却性能を安定して実現する熱電モジュールを提供できる。
【0014】
さらに、前記反発層の厚みが、1〜100μmであることが好ましい。これにより反発層と熱電素子との密着性が向上し、反発層がはがれることが無くなるので、信頼性が向上する。
【0015】
また、前記反発層から前記熱電素子の接合端部までの最小距離が熱電素子長の15%以下であることが好ましい。これにより、優れた冷却性能を得ることができる。
【0016】
さらに、前記熱電素子が、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含むことが好ましい。これにより、熱電素子の特性を高めることができ、それによって冷却性能の高い熱電モジュールを得ることができる。
【0017】
さらにまた、前記半田が、少なくともSnを含むことが好ましい。酸化物層は、半田との濡れ性が非常に悪いので、半田の広がりをより防ぎやすい。
【0018】
また、本発明の熱電モジュールの製造方法は、熱電素子の側面にレーザー光を照射し、該レーザー光を前記熱電素子の側面に対して一周するように走査して反発層を形成した後、配線導体が表面に形成された一対の支持基板間に、前記熱電素子を含む前記熱電素子を複数挿入し、しかる後に前記支持基板と前記熱電素子とを接合せしめることを特徴とするものである。これによって、上記の接合体を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明品の熱電モジュールは、図1に示したように、支持基板1、2の主面にそれぞれ配線導体3、4が設けられ、複数の熱電素子5が配線導体3、4によって挟持され、且つ複数の熱電素子5は、N型熱電素子5aとP型熱電素子5bが交互に配列し、PNPNPNの順に電気的に直列に接続されるように設けられ、直流電圧を印加することによって、その電流の向きに応じて吸熱あるいは発熱を生じせしめることができる。
【0020】
図1における一対の熱電素子5は、支持基板1、2に配線導体3、4を介して固定される。即ち、図2に示すように、配線導体3、4と熱電素子5a、5bは、配線導体3、4の表面に、半田層6、メッキ層7を介して接合される。
【0021】
本発明によれば、P型及びN型の熱電素子5の接合端部付近に、側面を一周するように、特に帯状に、半田層6を構成する半田との濡れ性が低い反発層9を設けることが重要である。即ち、図3に示したように、熱電素子5において、半田層6との接合端部8の付近に、側面を一周するように反発層9を形成する。このように、接合端部8付近に反発層9を設けることによって、半田が熱電素子5の側面を被うことを防止でき、冷却性能を向上することができる。
【0022】
この理由は明確では無いが、熱電素子5の側面を一周するように反発層9を設けることで熱電素子5の側面を被うように半田が表面移動することを抑制し、熱電素子5を流れる電流の一部がこの側面を伝って流れる事によるPN接合の状態の異常を防止できるので、熱電特性を向上できると考えられる。
【0023】
また、半田の被覆量を制限することにより、熱電素子5の側面の多くが被われ、絶縁破壊や半田の短絡による不良を防ぐことができるため、さらに製品としての信頼性が向上するとともに、製造段階での不良率を低減できる。
【0024】
反発層9の幅Wは、25μm以上、特に50μm以上が良い。このようにWを設定することによって、反発層9を乗り越えて熱電素子5側面を被う半田量を減少させて半田による短絡をより確実に防止でき、優れた冷却特性を安定して実現することができる。また、半田ペーストを塗布し、それが溶融する前に熱電素子側面に飛び散った半田ペーストが原因で起こる短絡の影響を低減することに関しても効果的である。
【0025】
反発層9の厚みtの下限値は、熱電素子5と半田との反応を確実に防止するために1μm、特に5μmであるのが良い。また、tの上限値は、厚すぎて反発層9が剥離することを防止するとともに、製造コスト低減にも効果があるため、100μm、特に50μmが良い。
【0026】
反発層9から熱電素子5の接合端部8までの最小距離Tは、熱電素子5の全長Lの15%以下(T/L≦0.15)、特に10%以下(T/L≦0.1)であることが好ましい。熱電特性は熱電素子5の長さに比例するため、Tを上記の値に設定することにより、熱電素子5の実質的な長さが大きくなり、熱電素子5の熱電特性を向上し、その結果冷却能力を高めることができる。
【0027】
反発層9は、酸化物層からなることが好ましい。半田に対する濡れ性の低い酸化物層を用いることにより、熱電素子5の側面に広がる半田をより確実に防止することができる。具体的には、Sb2O3、Bi2O3及びTeO2を例示でき、これらの酸化物のうち少なくとも1種を用いると良い。
【0028】
熱電素子5は、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を主成分とすることが好ましい。Bi2Te3、Sb2Te3、Bi2Se3等のカルコゲナイト型結晶を使用した熱電素子5は、室温付近の熱電特性に優れ、情報通信関連の冷却用熱電モジュールとして好適に使用され得る。
【0029】
また、N型熱電素子5aは、I及び/又はBrを含むことが好ましい。即ち、半導体を形成するため、ハロゲン元素の添加によって電子濃度の調整がなされ、キャリア濃度の制御されたN型熱電素子5aとして優れた特性を示すことができる。
【0030】
なお、N型熱電素子5a及びP型熱電素子5bは、溶製材料であっても焼結体であっても良いが、N型熱電素子5aを溶製材料、特に単結晶からなり、P型熱電素子5bが焼結体、特に平均結晶粒径が5μm以下の焼結体からなることが、特性及びコストの点で好ましい。
【0031】
半田として用いる材料は、特に制限されるものではないが、比較的使用温度を容易に設定でき、使いやすいSn成分を含むことが好ましい。特に、Bi、Sb、Te又はSeを含む熱電素子を用いる場合、Sn成分により半田の濡れ性が良くなり、半田接合の作業が容易に行える効果を発揮できる。
【0032】
具体的には、Sn−Sb半田及びAu−Sn半田を例示でき、扱い易さ、低コスト及び低温処理の点ではSn−Sb半田が、耐熱性の点ではAu−Sn半田が好ましい。なお、接合のための温度は、Sn−Sb半田の場合240℃以上、Au−Sn半田の場合280℃以上であれば良い。
【0033】
メッキ層7は、熱電素子5の端面5cにおいて熱電素子5と半田が異常に反応することによる熱電特性劣化を防止する効果が高い。従って、優れた熱電特性を維持するために、熱電素子5の端面5cにメッキ層7を設けるのが良い。具体的には、NiやCu等の遷移金属のうち少なくとも1種を用いることができ、更にはNiメッキ層の上にAu−Sn半田と濡れ性の良いAu等の卑金属を2重にメッキして接合強度を高めることも可能である。
【0034】
支持基板1、2には、耐振動及び衝撃性に優れ、配線導体の密着強度が大きく、また、冷却面と放熱面としての熱抵抗が小さいものが好ましい。具体的には、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素を例示できる。特にコストの点からアルミナを、熱伝導率が高く、熱抵抗が小さい点で窒化アルミニウムを、強度及び熱伝導率の点で炭化珪素を、衝撃性や強度の点で窒化珪素を好適に使用できる。
【0035】
特に、支持基板1、2の強度は、200MPa以上、特に250MPa以上、更には300MPa以上にすることが好ましく、これにより、配線導体3、4の形成や半田層6の形成に伴う応力集中に対しても基板の破損を防止する効果を高め、より高い信頼性を得ることができる。
【0036】
配線導体3、4は、Cu、Al、Au、Pt、Ni及びWの少なくとも1種の金属を用いることが可能である。これらのうち、特にCuが電気電導性、コスト及び支持基板1、2への密着強度の点で望ましい。
【0037】
以上のように構成された本発明の熱電モジュールは、特に優れた熱電特性(冷却性能)と製造時の不良率の低減ができるため、特に半導体レーザー及び光集積回路などの恒温装置や小型冷蔵庫として好適に使用することができる。
【0038】
次に、本発明品の製造方法について、Au−Sn半田を用いた場合を取り上げて説明する。
【0039】
まず、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素又は炭化珪素からなる絶縁性を有するセラミックスか高熱伝導性の絶縁性有機材料等の支持基板1、2を準備し、この支持基板1、2の主面にCu、Ni、W等の導電性の材料で配線導体3、4を形成する。さらにその上に、所望により、Niメッキ、Auメッキ等を順次施しても良い。
【0040】
また、接合するための熱電素子5を用意する。熱電素子5には、例えば、Bi、Sb、Te、Seのうち少なくとも2種を含む化合物からり、A2B3型金属間化合物及びその固溶体である材料を用いることができる。ここで、AがBi及び/又はSb、BがTe及び/又はSeからなる半導体結晶であって、特に組成比B/Aが1.4〜1.6であることが、室温における熱電特性を高めるために好ましい。
【0041】
A2B3型金属間化合物としては、公知であるBi2Te3、Sb2Te3、Bi2Se3の少なくとも1種であることが好ましく、固溶体としてBi2Te3とBi2Se3の固溶体であるBi2Te3−xSex(x=0.05〜0.25)、又はBi2Te3とSb2Te3の固溶体であるBixSb2−xTe3(x=0.1〜0.6)等を例示できる。
【0042】
N型熱電素子5aには、金属間化合物を効率よく半導体化するために、ドーパントとしてSbI3のように、I、Cl及びBr等のハロゲン元素を含むことが好ましい。このハロゲン元素は、半導体化の点で、上記の金属間化合物原料100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.01〜0.1重量部の割合で含まれることが好ましい。
【0043】
P型熱電素子5bには、キャリア濃度調整のためにTeを含むことが好ましい。これにより、N型熱電素子5aと同様に、熱電特性を高めることができる。
【0044】
このようにして作製された熱電素子5は、加工されて所望の形状とし、配線導体3、4と接合する面に支持基板1、2と同様にNiメッキ、Auメッキを必要に応じて施しても良い。
【0045】
なお、半田接合を強固なものとするため、熱電素子5と半田の濡れ性を改善し、半田成分の拡散を防止するため、銅表面に金メッキを施したり、熱電素子5の接続面にはNiメッキ及び金メッキ等を施し、密着性と半田との濡れ性を改善していても良い。
【0046】
次に本発明の熱電素子5の側面に反発層9を形成する。反発層9は、半田と濡れ性の悪い層であれば特に限定しないが、特に容易に形成でき、安定性があるという点で酸化物層が好ましい。
【0047】
酸化物層の形成は、特に制限はなく、例えば、レーザー光を用いれば良い。具体的には、熱電素子5の側面の接合端部8に近い部位にレーザー光を照射し、熱電素子5の側面に対して一周するようにレーザー光を走査して、反発層9を形成する。
【0048】
酸化物層としては、半田との濡れ性の悪い材質であれば制限されるものではないが、熱電素子として、Sb、Bi又はTeを用いた場合、容易に形成できる点で、Sb2O3、Bi2O3及びTeO2のうち少なくとも1種が良い。
【0049】
また、反発層9を形成するために、酸化物粉末を含むスラリーを熱電素子5の所望の部位に塗布し、熱処理で酸化物層を形成することもできる。また、スパッタ法、蒸着法又はCVD法等の薄膜形成法を用い、マスキングをした熱電素子5に酸化物層を形成することもできる。あるいは、薄膜を形成した後に不要な部位の膜を除去しても良い。
【0050】
次に、準備した支持基板1、2と熱電素子5を、Au−Sn半田を用いて接合する。即ち、支持基板1に半田ペーストを印刷し、その上に熱電素子5を載置し、さらにその上に半田ペーストを印刷した支持基板2を載せ、加重を加えて、Au−Sn半田の融点以上の温度で溶融させて図1の様な本発明の熱電モジュールを作製することができる。
【0051】
半田ペーストは、例えば、Au−Sn半田粉末と流れ性および酸化をコントロールするためにロジンや有機溶媒(例えばジエチレングリコール・モノ・ヘキシルエーテル)からなるフラックスとを混合して作製する事ができる。
【0052】
なお、半田層6の形成には、半田ペーストを印刷する例を用いて説明したが、半田ペーストを用いる代わりに、半田を接合部にメッキすることもでき、また、Au−Sn箔を接合部に塗布することも可能である。さらに、半田ペーストを印刷し、一回溶融して接合部の一方に固着させたものでも使用できる。
【0053】
【実施例】
支持基板として、長さ8mm、幅8mm、厚み0.3mmのアルミナ焼結体を用意した。また、配線導体として銅を支持基板の主面に形成した。所望により、配線導体の表面にNi及び金をメッキした。
【0054】
熱電素子を作製するため、出発原料には、平均粒径35μm、純度99.99%以上のBi2Te3とSb2Te3、及びBi2Se3を準備した。これらの化合物からN型熱電素子としてBi2Te2.85Se0.15、P型熱電素子としてBi0.4Sb1.6Te3となるように秤量し、混合粉とした。なお、N型熱電素子にはドーパントとして熱電素子組成100質量部に対してSbI3を0.09質量部添加した。
【0055】
これらの原料粉末を、粒径が35〜72μmになるように粉砕し、分級後に焼成して相対密度が98.2%のインゴット状の熱電素子を得た。これを切断し、縦0.6mm、横0.6mm、高さ0.8mmの形状に加工した。これにも支持基板と同様に、所望によりメッキ層を形成した。そして、熱電素子の全長Lを、マイクロメータを用いて測定した。
【0056】
その後、熱電素子の側面にレーザー光を照射し、表1に示すような所定の位置、所定の幅、所定の厚みで反発層を形成した。レーザーには、CO2レーザーを用いた。熱電素子の表面の温度が430℃以上になるように出力、照射時間、レーザーの焦点距離等を調節した。またレーザーの照射は、酸素の存在する雰囲気で行い、これにより酸化物層を形成した。
【0057】
次いで、反発層の幅W、反発層から熱電素子の接合端部までの最小距離Tを、レーザー走査方式の顕微鏡「(株)キーエンス製VK-8550」によって測定した。そして、熱電素子の全長Lに対する反発層から熱電素子の接合端部までの最小距離Tの比T/Lを算出した。
【0058】
上記の熱電素子23対と1対の支持基板を用いて、表1に示す条件で、Au−Sn(表中Aで表示)又はSn−Sb(表中Sで表示)による半田接合を行って、図1のような熱電モジュールを作製した。なお、半田接合は、窒素ガス雰囲気中において実施した。
【0059】
得られた熱電モジュールは、20個作製中の短絡の不良数を測定し、不良率を算出した。
【0060】
次に、冷却性能テストを実施した。冷却性能テストは、熱電モジュールに電流を1.6A流し、熱電モジュールの発熱面(支持基板1)を25℃に保ちながら、反対面の熱電モジュールの冷却面(支持基板2)にヒーターを接触させ、接触面の温度を25℃に上げるのに必要な熱量を実測し吸熱量とした。そして従来の熱電モジュールで観察された熱量を100%とし、この従来品に対する本発明品の吸熱量を百分率表示した。なお、この冷却性能が100%を越えることは、熱電特性(冷却性能)が優れていることを示すものである。
【0061】
冷熱性能テスト後、レーザーを走査した部位(反発層)をオージェ電子分光装置で元素分析を行った。その結果、N型熱電素子からは、Bi、Te及びSeに加えて酸素が、P型熱電素子からはBi、Sb及びTeに加えて酸素がいずれの試料においても検出された。
【0062】
また、オージェ電子分光装置によるマッピングを行って、Bi、Te及びSe又はBi、Sb及びTeと酸素との重なりから、上記の酸素はSb2O3、Bi2O3及びTeO2が形成していると判断した。さらに、熱電素子の断面を同様にして酸素の分析を行い、酸素の分布から反発層の厚みtを測定した。
【0063】
次いで、熱電素子の側面をレーザー走査方式の顕微鏡「(株)キーエンス製VK-8550」によって観察し、半田が熱電素子の側面を覆っている領域の面積の占有率Sを測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
熱電素子の側面を一周するように半田との濡れ性の低い反発層を設けた本発明品の試料No.2〜15は、熱電特性(冷却性能)が116%以上で従来品に比べ、冷却能力に優れており、半田の短絡による不良率も5%以下と小さい事がわかった。
【0066】
特に、反発層の幅Wを25μm以上の試料No.3〜15は、半田の短絡による不良率が0%と小さく歩留まりが高く、製品としての信頼性が高いことがわかった。
【0067】
さらに、反発層の幅Wを25μm以上、且つ熱電素子の全長Lに対する反発層から熱電素子の接合端部までの最小距離Tの比T/Lが10%以下の試料No.3〜9及び11〜15は、熱電特性(冷却性能)が123%以上とさらに優れた性能を示した。
【0068】
一方、本発明の範囲外である熱電素子に反発層がない試料No.1は、半田の短絡による不良率が20%と高く、製品としての信頼性が低く、熱電モジュールとしての冷却能力が低かった。
【0069】
【発明の効果】
本発明の熱電モジュールは、P型熱電素子及びN型熱電素子と配線導体とが半田層を介して接合され、複数の熱電素子の少なくとも一部に熱電素子の側面を一周するように半田との濡れ性の低い反発層を設けたことにより、冷却性能が高く、製造時の不良率の低い熱電モジュールを提供することが可能となった。
【0070】
特に、反発層の幅を25μm以上、熱電素子の一端部から反発層までの最小距離が熱電素子長の15%以下、反発層の厚みが1〜100μmにすることによって、熱電素子として作用する領域を増加せしめて熱電特性を向上するとともに、半田の短絡による不良率を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電モジュールを示す斜視図である。
【図2】本発明の熱電モジュールの一部を示す断面図である。
【図3】本発明の熱電モジュールの半田接合端部付近を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1、2・・・支持基板
3、4・・・配線導体
5・・・熱電素子
5a・・・N型熱電素子
5b・・・P型熱電素子
5c・・・熱電素子の端面
6・・・半田層
7・・・メッキ層
8・・・接合端部
9・・・反発層
L・・・熱電素子の全長
T・・・反発層から熱電素子の接合端部までの最小距離
t・・・反発層の厚み
W・・・反発層の幅
Claims (8)
- 支持基板の表面に設けられた配線導体の上に、複数の熱電素子を配列し、該複数の熱電素子と前記配線導体とが半田層を介して接合されてなる熱電モジュールであって、前記熱電素子の接合端部付近に、該熱電素子の側面を一周するように前記半田層を構成する半田に対する濡れ性の低い反発層を設けたことを特徴とする熱電モジュール。
- 前記反発層が、酸化物層からなることを特徴とする請求項1記載の熱電モジュール。
- 前記反発層の幅が、25μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電モジュール。
- 前記反発層の厚みが、1〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱電モジュール。
- 前記反発層から前記熱電素子の接合端部までの最小距離が熱電素子長の15%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電モジュール。
- 前記熱電素子が、Bi、Sb、Te及びSeのうち少なくとも2種を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱電モジュール。
- 前記半田が、少なくともSnを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱電モジュール。
- 熱電素子の側面にレーザー光を照射し、該レーザー光を前記熱電素子の側面に対して一周するように走査して反発層を形成した後、配線導体が表面に形成された一対の支持基板間に、前記熱電素子を含む前記熱電素子を複数挿入し、しかる後に前記支持基板と前記熱電素子とを接合せしめることを特徴とする熱電モジュールの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002359821A JP2004193356A (ja) | 2002-12-11 | 2002-12-11 | 熱電モジュール及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002359821A JP2004193356A (ja) | 2002-12-11 | 2002-12-11 | 熱電モジュール及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004193356A true JP2004193356A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32759104
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002359821A Pending JP2004193356A (ja) | 2002-12-11 | 2002-12-11 | 熱電モジュール及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004193356A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009001598A1 (ja) * | 2007-06-27 | 2008-12-31 | Kyocera Corporation | 熱電モジュール及びその製造方法 |
JP2010199270A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Kyocera Corp | 熱電変換モジュール |
-
2002
- 2002-12-11 JP JP2002359821A patent/JP2004193356A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009001598A1 (ja) * | 2007-06-27 | 2008-12-31 | Kyocera Corporation | 熱電モジュール及びその製造方法 |
JPWO2009001598A1 (ja) * | 2007-06-27 | 2010-08-26 | 京セラ株式会社 | 熱電モジュール及びその製造方法 |
JP4967018B2 (ja) * | 2007-06-27 | 2012-07-04 | 京セラ株式会社 | 熱電モジュール及びその製造方法 |
JP2010199270A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Kyocera Corp | 熱電変換モジュール |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0969525A1 (en) | thermoelectric module | |
JP2004031696A (ja) | 熱電モジュール及びその製造方法 | |
WO2010050455A1 (ja) | 熱電モジュール | |
US10224472B2 (en) | Thermoelectric power module | |
JP2008270353A (ja) | パワー半導体モジュール | |
JP4401754B2 (ja) | 熱電変換モジュールの製造方法 | |
JP4699822B2 (ja) | 半導体モジュ−ルの製造方法 | |
KR102225427B1 (ko) | 파워 모듈용 기판 및 그 제조 방법, 파워 모듈 | |
US7670879B2 (en) | Manufacturing method of semiconductor module including solid-liquid diffusion joining steps | |
JP2004031697A (ja) | 熱電モジュール | |
JP3550390B2 (ja) | 熱電変換素子及び熱電モジュール | |
JP6404983B2 (ja) | 熱電発電モジュール | |
JP2010109054A (ja) | 熱電変換モジュールならびに冷却装置、発電装置および温度調節装置 | |
JP2004193356A (ja) | 熱電モジュール及びその製造方法 | |
JP3840132B2 (ja) | ペルチェ素子搭載用配線基板 | |
WO2021019891A1 (ja) | 熱電モジュール及び熱電モジュールの製造方法 | |
JP3588355B2 (ja) | 熱電変換モジュール用基板及び熱電変換モジュール | |
JP2005294538A (ja) | 熱電素子、その製造方法及び熱電モジュール | |
EP3813130A1 (en) | Thermoelectric conversion module and method for manufacturing thermoelectric conversion module | |
JP3935062B2 (ja) | 熱電モジュール | |
JP3670432B2 (ja) | 熱電冷却デバイス用はんだ | |
WO2010024229A1 (ja) | 熱電素子および熱電モジュール | |
JP2005161397A (ja) | はんだおよびその製造方法 | |
JP2005050863A (ja) | 熱電モジュール | |
JPH1140583A (ja) | ろう付け用合金およびろう付け接合方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040924 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070309 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070403 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070528 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080318 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080717 |