JP2004193255A - ガスレーザ発振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】制御性、経済性等に優れたビームモード可変のガスレーザ発振装置。
【解決手段】光共振空間に複数の放電セクション2a、2bが形成され、形状、大きさ、構造等が互いに異なる電極12a、12bが設けられる。レーザ媒質ガスは、送風機6、熱交換器5a、5bを通る循環通路を流通する。各放電セクション2a、2bで単独に放電を起こさせた場合、互いに異なるモードが得られる。放電セクション2a、2bの双方で放電を起こさせた場合には、独立して動作する放電励起用電源1a、1bからの供給電力の配分に応じて中間的な諸モードが得られる。放電セクションの数を3つ以上の場合、その内の少なくとも2つの放電セクションについて、各放電セクションへの放電電力の供給の配分が制御可能であり、且つ、「単独放電時に異モードが励起される」ように、放電セクションの形状、寸法あるいは電極の形状、寸法、構造が選定される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばレーザ加工、医学治療、照明や通信に用いられ、気体をレーザ媒質とする放電励起方式のレーザ発振装置に関し、特に、レーザ出力の横モード(以下、「ビームモード」あるいは単に「モード」という)を制御する機能を備えたガスレーザ発振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばレーザ加工、医学治療、照明や通信等に広く用いられているガスレーザ発振装置として、複数の放電セクションを持ち、各放電セクションに設けられた電極に夫々放電励起用電源を接続したものが知られている。図8は、その代表的な例について要部構成を示した図である。同図において、符号4a、4bは、夫々部分透過性を有しないリアミラーと、部分透過性を有する出力ミラーを表わし、両ミラー4a、4b間に光共振空間が形成される。光共振空間内には、2つの放電セクション3a、3bが設けられている。
【0003】
各放電セクション3a、3bは、各々電極22a、22bを備え、電極22aは放電励起用電源1aに接続され、電極22bは放電励起用電源1bに接続されている。放電セクション3aと3bは同サイズ、同形状であり、また、電極22a、22bについても、同サイズ、同形状で同等の電極構造のものが使用されている。
放電励起用電源1a、1bは、各々独立して動作し、各放電セクション3a、3bに供給する電力を自由に調整できる周知のものである。
【0004】
レーザ媒質ガスは、送風機6により、光共振器内を通る循環路内を流通するようになっている。送風機から送り出された媒質ガスは、圧縮熱を除去するための熱交換器5aを通過し、放電セクション3a、3bに供給される。各放電セクション3a、3bでは放電によってレーザ媒質ガスが励起され、レーザ光が発生する。周知の原理により、発生したレーザ光は光共振器内で増幅され、出力ミラー4bから、出力レーザビームが取り出される。レーザ光放出後、放電により高温となった媒質ガスは、熱交換器5bで冷却され、再び送風機6に戻る。2つの放電セクション3a、3bは、この例では2本の放電管で構成され、独立して動作する2台の放電励起用電源1a、1bによって駆動されている。各放電励起用電源1a、1bは交流電源であり、従って、各放電セクション3a、3bで起る放電は交流放電である。
【0005】
一般に、このタイプのガスレーザ発振装置は、光共振器の構造や寸法で決まるビームモードを形成する。即ち、光共振器の長さ(ミラー4a、4b間の光路長)や放電セクションの断面形状、寸法などによって、種々のビームモードが形成される。また、放電セクションが放電管で構成される場合には、その内径、電極形状や、さらには、図示は省略したが、光路上に設置されたアパーチャの内径などによって、形成されるビームモードが決まる。これらについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0006】
実際にレーザ発振装置を使用するにあたってどのようなモードにするかは、加工などの使用目的によって決まるが、広範な用途に対応できるためには、このビームモードを使途に適した特性に、適宜、制御できることが望ましい。
【0007】
このビームモードの制御に関しては、従来から、特許文献2に開示されているように、アパーチャを光路上に出し入れして、モードを変化させる方法が広く実施されている。
【0008】
即ち、アパーチャを光軸上に配置した場合と、アパーチャを光軸上から撤去された場合とで、TEM00モード(ガウスモード)、低次モードとTEM01jp1*(リングモード)、もしくは高次モードの間でのモード切り替えを行なっている。しかし、このようなアパーチャを機械的に移動させる方法は、一般に、耐久性や応答性に問題があり、高速の制御が難しく、また、アパーチャの光軸調整が困難で、非常に高価でもある。
【0009】
また、別の従来技術の開示例として、特許文献3がある。これは、ビームモードの制御方法の改良に関するもので、同特許文献の実施例には、モードの制御にアダプティブミラー(曲率可変ミラー)を使用して、機械的に変化するミラー曲率の2つの設定により、モードを切り替える手法が示されている。しかし、このミラーの曲率を変化させる方法でも、同様に、応答性、制御性、光軸調整の難易度、価格の問題などがある。なお、アダプティブミラーの機能、構造に関しては、特許文献4に詳しい記載がある。
【0010】
【特許文献1】
特開昭64−42187号公報
【特許文献2】
欧州特許出願公開第0492340号明細書
【特許文献3】
特開2002−118312号公報
【特許文献4】
特許第3072519号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、アパーチャの移動やミラー曲率の変化といった機械的な条件の制御に依存せず、電気的な制御によって、高速動作が容易で、制御性、取扱いの簡便さ、保守性の良さ、経済性のいずれにおいても優れた、レーザビームモード制御機能を有するガスレーザ発振装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、夫々放電のための電極が設けられた複数の放電セクションと、該複数の放電セクションの電極に夫々接続された複数の放電励起用電源を有するガスレーザ発振装置について、前記複数の放電セクションに各々単独で放電を起こさせた場合に互いに異なるモードを励起させる電極を備えた少なくとも2つの放電セクションを含むようにする。
【0013】
そして、前記複数の放電励起用電源の内、少なくとも2つの放電セクションに放電電力を供給する放電励起用電源は、該少なくとも2つの放電セクションに対する放電電力供給量の配分を調節できるように構成する。例えば、「該少なくとも2つの放電セクション」と同数の互いに独立して動作する放電励起用電源を使用する。これにより、各放電セクションに供給する放電電力を制御して、夫々の放電セクションに対する放電電力の配分を変化させ、レーザ出力の横モードを制御することができる。
【0014】
ここで、各放電セクションに「各々単独で放電を起こさせた場合に互いに異なるモードを励起させる電極」の組合せとしては、少なくとも寸法、形状あるいは構造の内のいずれか1つについて相違があるものの組合せが採用できる。
【0015】
本発明では、放電励起用電源により各放電セクションに供給する電力の配分を調整するだけで、種々の用途に最適なビームモードが簡単に実現でき、広範な用途に適用できる。また、材料の加工などを行なうレーザ加工機に適用すれば、加工ヘッドが任意の位置乃至区間や、時間を指定してビームモードの制御が可能になり、機能の高いレーザ発振装置が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の1つの実施形態に係るレーザ発振装置の要部構成を図8と同様に描示形態で示したものである。なお、図8に示した構成と共通した要素については、適宜、同じ参照番号を使用した。同図を参照すると、部分透過性を有しないリアミラー4aと部分透過性を有する出力ミラー4bとの間に光共振空間が形成され、その中に2つの放電セクション2a、2bが設けられている。
【0017】
各放電セクション2a、2bは、各々電極12a、12bを備え、電極12aは放電励起用電源1aに接続され、電極12bは放電励起用電源1bに接続されている。各放電励起用電源1a、1bは、各々独立して動作する交流電源で、各放電セクション2a、2bに供給する電力を個別に調整して設定できるようになっている。なお、このような放電励起用交流電源自体は周知なので、供給電力調整のための回路構成等の詳細説明は省く。
【0018】
図8に示した例と同様に、レーザ媒質ガスは、送風機6により、光共振器内を通る循環路内を流通する。送風機から送り出された媒質ガスは、圧縮熱を除去するための熱交換器5aを通過し、放電セクション2a、2bに供給される。各放電セクション2a、2bでは放電によってレーザ媒質ガスが励起され、レーザ光が発生する。周知の原理により、発生したレーザ光は光共振器内で増幅され、出力ミラー4bから、出力レーザビームが取り出される。
【0019】
レーザ光放出後、放電により高温となった媒質ガスは、熱交換器5bで冷却され、再び送風機6に戻る。2つの放電セクション2a、2bは、この例では2本の放電管で構成され、上記したように、独立して動作する2台の放電励起用電源1a、1bによって駆動されている。
【0020】
ここで重要なことは、図8に示した従来例と異なり、各放電セクション2a、2bを構成する各放電管の電極形状が異なっていることである。即ち、放電セクション2aの放電管には、図2(a)に示したように、狭い電極幅を持つ電極12aが設けられる一方、放電セクション2bの放電管には、図3(a)に示したように、広い電極幅を持つ電極12bが設けられている。
【0021】
ここで、前述の特許文献1にも記載されているように、放電管の電極の幅に応じて、励起されるモードが変化する。本実施形態の場合、電極幅の狭い放電セクション2aのみで放電を起こさせると(放電励起用電源1bはオフ)、図2(b)に示したような、ガウスモードに近いモードが得られ、電極幅の広い放電セクション2bのみで放電を起こさせると(放電励起用電源1aはオフ)、図3(b)に示したような、リングモードが得られる。
【0022】
そして、放電セクション2a、2bの双方で放電を起こさせた場合には、各放電セクションへの供給電力の配分に応じて、図2(b)に示したガウスモードに近いモードと、図3(b)に示したリングモードとの中間的な諸モードが得られることになる。例えば、放電セクション2a、2bにほぼ同等の電力供給を行なえば、図4のような台形状のモードが得られる。
【0023】
また、放電セクション2aへの電力供給を大きめにとり、放電セクション2bへの電力供給を小さめにとれば、図5に示したようなモードが得られ、放電セクション2bへの電力供給を大きめにとり、放電セクション2aへの電力供給を小さめにとれば、図6に示したようなモードが得られる。このように、放電セクション2a、2bに対する電力供給の配分を調節することで、用途に適したモードの設定が可能となる。
【0024】
なお、本実施形態では、2つの放電セクション2a、2bで異なる電極幅を持つ電極12a、12bを使用する例を説明したが、これは本発明を限定するものではない。2つの放電セクションを設ける場合、一般には、2つの放電セクション自体の寸法または形状の組合せ、あるいは、電極の寸法、形状または構造の組合せは、「各電極を持つ放電セクションで単独の放電を起こさせた時に、互いに異なるモードが励起される」ものであれば、上記実施形態と同様に、2つの放電セクションに供給する電力の配分を変えることで、種々のモードが得られることになる。
【0025】
即ち、放電セクション2aの単独放電時で得られるモードをモードAとし、放電セクション2bの単独放電時で得られるモードをモードBとした場合、モードAとモードBとの中間的な諸モードが自由に選択出来る。
【0026】
上記の放電セクションの仕様の組合せの条件、即ち、「各々電極を持つ各放電セクションで単独の放電を起こさせた時に、互いに異なるモードが励起される」を満たすためには、一般に、「電極の形状」、「電極の大きさ(面積)」、「電極の構造」、「放電セクション自体の形状」、「放電セクション自体の大きさ(例えば径)」の内の少なくとも1つが異なれば良い。
【0027】
図7(a)には、互いに異なる径を持つ2つの放電セクションを組み合わせた実施形態を図1と同様の描示形式で示した。図7(a)に示したレーザ発振装置は、2つの放電セクション2a、2b(図1)に代えて互いに径が異なる放電セクション2c、2dを採用した以外は、共通の構造(詳細説明の繰り返しは省略)を有している。
【0028】
この場合、放電セクション2c、2dにほぼ同等の電力供給を行なった場合にはほぼ台形状のモード(図7(b))が得られる。また、図7(c)は、放電セクション2dのみに電力供給を行なった場合に得られるガウス状のモードを示し、図7(d)は、放電セクション2cのみに電力供給を行なった場合に得られる2ピーク形のモードを示している。この他、可変放電励起用電源1a、1bによる電力供給の比率を種々選ぶことで、図7(c)、(d)を混合させたような様々なモードを得ることができる。従って、用途に適したモードの設定が容易となる。
【0029】
また、放電電極を相違させる他の例としては、2つの放電セクションに螺旋状電極を用い、その螺旋のピッチを異ならせても良い。また、一方の電極幅の中央にスリットを設ける方法も有効である(構造相違の例)。
【0030】
更に、光共振器内に設けられる放電セクションの数を3つ以上としても、その内の少なくとも2つの放電セクションについて、各放電セクションへの放電電力の供給の配分が制御可能であり、且つ、「単独放電時に異モードが励起される」ように電極が選定されていれば、上記実施形態と同様に、モードを制御できるガスレーザ発振装置が得られることは言うまでもない。
【0031】
例えば、同一電極を設けた「単独放電時にモードAが得られる放電セクション(同一電極使用)」を2つ設けるとともに1台の放電励起用電源で駆動する一方、それら2つの放電セクションの間に、別の電極を設けた「単独放電時にモードBが得られる放電セクション」を1つ設け、別の1台の放電励起用電源で駆動し、独立に動作する各放電励起用電源からの放電電力の供給量を調整することで、レーザ発振装置全体で得られるモードを可変制御することができる。
【0032】
なお、本発明が適用可能なガスレーザ発振装置のタイプとしては、上述の実施形態のような高速軸流型レーザの他、低速軸流型レーザ、2軸直交型レーザ、3軸直交型レーザ、あるいはTEAレーザ等が含まれ、また、放電方式に関しても、ここで述べた交流放電の他、直流放電、パルス放電、あるいはSD放電の方式による各レーザへの適用が可能である。そして、これらタイプのガスレーザにおいても本発明を適用すれば同様の効果が得られることも明らかである。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、簡便で制御性の良いビームモード制御機能が実現できるため、種々の用途に最適なビームモードが簡単に設定でき、広範な用途に適用できる。また、レーザ加工機に適用すれば、加工時に任意の位置、時間でのビームモードの制御が可能となり、機能性に優れたレーザ加工機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施形態に係るレーザ発振装置の要部構成を示した図である。
【図2】(a)は放電セクション2aで用いられる放電管について説明する断面図であり、(b)は放電セクション2aで単独に放電を起こさせた時に励起されたモードを示した図である。
【図3】(a)は放電セクション2bで用いられる放電管について説明する断面図であり、(b)は放電セクション2bで単独に放電を起こさせた時に励起されたモードを示した図である。
【図4】放電セクション2a、2bにほぼ同等の電力供給を行なった場合に励起されるモードを示した図である。
【図5】放電セクション2aへの電力供給を大きめにとり、放電セクション2bへの電力供給を小さめにとった場合に励起されるモードを示した図である。
【図6】放電セクション2aへの電力供給を小さめにとり、放電セクション2bへの電力供給を大きめにとった場合に励起されるモードを示した図である。
【図7】(a)は本発明の1つの実施形態に係るレーザ発振装置の要部構成を示した図であり、(b)は放電セクション2c、2dにほぼ同等の電力供給を行なった場合に得られるモード、(c)は放電セクション2dのみに電力供給を行なった場合に得られるモード、(d)は放電セクション2cのみに電力供給を行なった場合に得られるモードを示した図である。
【図8】複数の放電セクションを持ち、各放電セクションに設けられた電極に夫々放電励起用電源を接続したガスレーザ発振装置の従来例について、要部構成を説明する図である。
【符号の説明】
1a、1b 放電励起用電源
2a、2b、2c、2d、3a、3b 放電セクション
4a リアミラー
4b 出力ミラー
5a、5b 熱交換器
6 送風機
12a、12b、22a、22b 電極

Claims (3)

  1. 夫々放電のための電極が設けられた複数の放電セクションと、該複数の放電セクションの電極に夫々接続され、各放電セクションに放電電力を供給する複数の放電励起用電源とを有するガスレーザ発振装置において、
    前記複数の放電セクションは、各々単独で放電を起こさせた場合に互いに異なるビームモードを励起させる少なくとも2つの放電セクションを含み、
    前記複数の放電励起用電源の内、少なくとも2つの放電セクションに放電電力を供給する放電励起用電源は、該少なくとも2つの放電セクションに対する放電電力供給量の配分を調節できることを特徴とする、ガスレーザ発振装置。
  2. 前記放電セクションの組合せについて、各放電セクションの夫々に設けられた電極は、少なくとも寸法、形状あるいは構造の内のいずれか1つについて相違があることを特徴とする、請求項1に記載のガスレーザ発振装置。
  3. 前記放電セクションの組合せについて、各放電セクションの間には、少なくとも寸法あるいは形状のいずれか1方について相違があることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガスレーザ発振装置。
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