JP2004190844A - シール装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シール装置は両回転軸用で被密封流体のシールを可能にし、且つシール能力を向上させると共に、シール面の摺動抵抗を低減して摩耗を防止することにある。
【解決手段】ハウジングの嵌合孔に密封に保持される嵌着部2に一端部が密封固着されて被密封流体側の自由端が回転軸50の周面と密接する第1シール部2Bを有するゴム又は樹脂材製で環状の第1リップシール2Aと第1リップシール2Aの大気側に第2リップシール5を有し、第1リップシール2Aの回転軸50と接面する第1シール部2Aに軸芯方向へ長手に形成された潤滑作用手段6を有するのである。
【選択図】 図1
【解決手段】ハウジングの嵌合孔に密封に保持される嵌着部2に一端部が密封固着されて被密封流体側の自由端が回転軸50の周面と密接する第1シール部2Bを有するゴム又は樹脂材製で環状の第1リップシール2Aと第1リップシール2Aの大気側に第2リップシール5を有し、第1リップシール2Aの回転軸50と接面する第1シール部2Aに軸芯方向へ長手に形成された潤滑作用手段6を有するのである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リップシールにより正・逆回転する両用の回転軸をシールするシール装置に関する。更に詳しくは、高圧の被密封流体をシールリップにより耐圧状態でシールすると共に、リップシールの摩耗を防止したシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明のシール装置に係わる関連技術として、特開平10−331984号公報、特開平10−252898号公報、特開平11−159629号公報及び特開2002−5302号公報が存在する。
【0003】
これらの公報に記載されたシール装置は、コンプレッサのような高圧条件下で用いられるリップ型シールである。そして、被密封流体は冷媒及び冷凍機油が用いられる場合が多く、しかも、所定の高圧に保持されている。更に、回転軸の回転時及び静止時でも流体漏れを防止しなければならない。最近では、右回転用回転軸と、左回転用回転軸との両用回転軸に用いられる場合が多く、両用のシール装置がないためにシール能力を向上させることが困難であった。
【0004】
これらのリップ型シールは、密封条件が過酷であるために、密封能力を有するオイルシールと2次シールとしてのリップシールを単に組み合わせたものであるから、被密封流体を密封するシール能力はオイルシールにより負担する。オイルシールは、ゴム材製であるから、被密封流体の高圧力を受けると回転軸とシール面が密接してシール能力を発揮させることが目的にしている。
更に、このオイルシールのシール面が摩耗して被密封流体が漏洩した場合は、大気側のリップシールでシールするものである。
このように構成されたリップ型シールは、オイルシールのシール面が被密封流体により押圧されて回転軸と密接すると、シール面に潤滑作用がなくなるから、回転中の回転軸との摩擦によりシール面が摩耗することになる。
又、オイルシールで被密封流体をシールしている間は、大気側に設けられたリップシールのシール面へ被密封流体が流れないから、このリップシールが樹脂材製であっても、回転中に被密封流体側のオイルシールよりも早期に、回転軸との摩擦により摩耗することになる。この為、リップ型シールを機械装置の内部に装着すると、外部から見知できないために磨耗状態が分からず、問題となっている。
【0005】
この問題点を具体的に説明する。図13は、前述の公報に類似する形状のシール型リップ100の半断面図である。
図13に示すリップ型シール100は、オイルシール101とリップシール108とを組み合わせた構成である。このリップ型シール100は、ハウジング111の取付孔112に嵌着されて回転軸113との間をシールしている。このシールされる被密封流体は、高圧状態あって、しかも、二酸化炭素ガスのような特殊な条件の気体又は液体のものである。この為、リップ型シール100は、シール能力に優れた2つのオイルシール101とリップシール108とを組み合わせて一体化したものが採用されている。
【0006】
このリップ型シール100には、オイルシール101が設けられている。オイルシール101には、補強環103を埋設した基部102からシール部104が被密封流体側Aに傾斜して延び、そのシール部104に回転軸113の外周面と密接するシール面104aが設けられている。
このシール面104aを緊迫するガータスプリング105がシール部104の外周面に設けられた環状溝に装着されている。このガータスプリング105によりシール面104aにP圧力を発生させてシールしている。
【0007】
又、オイルシール101の大気側Bの回転軸113と取付孔112との間には、環状のリップシール108が設けられている。このリップシール108の外周にはゴム材製の保持リング110が取付孔112に固着されていると共に、保持リング110に保持された金属材製のバックアッププレート106がオイルシール101に接触する状態で配置されている。
更に、バックアッププレート106の大気側Bには、リップ部107を設けた樹脂材製のリップシール108がバックアッププレート106と同形状に配置されている。又、リップシール108の大気側Bにはリング状のサポートプレート109が配置されてリップシール108を支持している。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このリップシール108は、オイルシール101と並列に配列されて被密封流体に対して二重にシールする。
そして、ゴム材製のオイルシール101により、被密封流体はほとんどシールされる。しかも、被密封流体の圧力が高圧であればあるほどゴム材製のシール面104aは、回転軸113に弾性変形して密接し、受圧面積を大きくして圧接するから、シール面104aには被密封流体が介在しなくなる。この状態が続くと、シール面104aが回転している回転軸113との摩擦により摩耗させられる。
【0009】
この間、被密封流体はオイルシール101でシールされているから、リップ部107のシール面には、被密封流体がほとんど流入せず、回転軸113との摩擦によりシール面が摩耗することになる。
特に、リップ部107は、バックアッププレート106と回転軸113との間で挟持されており、更には、被密封流体の高圧力がオイルシール101とバックアッププレート106を介してリップ部107に作用するから、リップ部107は回転軸113との摺動抵抗をさらに増加すると共に、摩耗することになる。
【0010】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その発明が解決しようとする技術的課題は、被密封流体が冷媒等の特殊な液化した流体であり、しかも、高圧であっても、本発明のシール装置は、シール面の摩耗を防止して、シール能力の向上を図ると共に、機械装置の故障を防止することにある。
又、このシール装置は、回転軸が正・逆両回転用であっても、シール面に被密封流体を供給して摩耗を防止し、シール能力を向上させることにある。
更に、このシール装置は、被密封流体の高圧に対して第1シール部の摺動抵抗を小さくして摩耗を防止すると共に、第2リップシールのシール面に被密封流体を供給して摩耗を防止し、シール装置のシール能力を向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その技術的解決手段は以下のように構成されている。
【0012】
請求項1に係わる本発明のシール装置は、嵌合孔を有するハウジングとハウジングの嵌合孔に嵌装する回転軸との間の被密封流体を密封するシール装置であって、ハウジングの嵌合孔に密封に保持される嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が回転軸の周面と嵌合する第1シール部を有するゴム又は樹脂材製の第1リップシールと、嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が回転軸の周面と密接する第2シール面を有するゴム又は樹脂材製の第2リップシールとを具備し、第1シール部の回転軸と接面する第1摺動面に回転軸が正回転又は逆回転しても被密封流体を第2リップシール側へ導入する潤滑作用手段を有するものである。
【0013】
この請求項1に係わる本発明のシール装置では、第1シール部の回転軸と接面する第1摺動面に被密封流体を第1摺動面に潤滑させると共に、第2シール面へ被密封流体を流出させる潤滑作用手段が設けられているから、回転軸が正回転又は逆回転しても、潤滑作用手段により第1摺動面へ入り込んだ被密封流体を回転と共に周方向へ流入させて潤滑作用をする。同時に、潤滑作用手段の働きにより被密封流体を第1摺動面から第2シール面側へ流出させる。この流出された被密封流体は、第2リップシールの第2シール面に介在して第2シール面の摺動抵抗を低下させると共に、摩耗を防止する。
【0014】
又、第2シール面の端部側の第2シール部により第1シール部の第1摺動面から吐出された被密封流体は、シールされるが、小量の被密封流体が第2シール面に介在して第2シール面の潤滑膜となり、第2シール面の摺動抵抗を低減する。この為、第2シール面は摩耗するのが防止され、第2リップシールの耐久能力が飛躍的に向上する。
更に、第1シール部の潤滑作用手段が軸芯方向を成しているから、回転軸が正・逆どちらに回転しても上述したような第1摺動面及び第2シール面に被密封流体を介在させる作用が発揮される。この為、1個のシール装置で、回転軸が正回転する場合と、逆回転する場合との両用に活用できる。
【0015】
請求項2に係わる本発明のシール装置は、第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力を大きくされている。
【0016】
この請求項2の本発明のシール装置では、被密封流体側の第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力が大きくされているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの第1シール部で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。
しかも、潤滑作用手段は、ゴム状弾性力が大きい第1シール部に設けられているから、この材質の弾性力により、潤滑作用手段が回転軸の回転速度に応じて摺動面に被密封流体を潤滑させると共に、第2シール面へ被密封流体側を吐き出す作用をさせることが可能になる。
【0017】
請求項3に係わる本発明のシール装置は、潤滑作用手段が略軸芯に沿って凸部に形成されていると共に凸部の周方向幅よりも軸方向の長さが長く形成されているものである。
【0018】
この請求項3に係わる本発明のシール装置では、第1シール部に潤滑作用手段が凸部に形成されていると共に、凸部が軸芯方向へ長く形成されているから、被密封流体が凸部の側面側の間隙に入ると、回転軸の回転につれて第1摺動面へ被密封流体が介在して潤滑することになる。同時に、凸部の第2シール面側へ長手に形成された部分で被密封流体を第2シール面側へ強制的に吐出させることができる。この為に、第2シール面に被密封流体を供給して第2シール面の潤滑作用を成し、第2シール面の摩耗を防止してシール能力を向上させる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる好ましい実施の形態のシール装置を、その図面に基づいて詳述する。尚、以下に説明する各図面は、設計図を基にした正確な図である。
【0020】
図1は、本発明に係わる第1実施の形態のシール装置を示すものであって、軸に装着されない状態の半断面図である。
図1において、1はシール装置である。このシール装置1における第1リップシール2A及び第2リップシール5の取付状態は、環状の第1シール部2Bと第2シール面5Aが仮想線で示す回転軸50に接合状態に弾性変形して嵌合する。
【0021】
又、シール装置1は、図示省略のハウジングの嵌合孔に嵌着するゴム材製の嵌着部2に形成されている。この嵌着部2の外周面には、嵌着したときにシールする凸部状のシール部分が2条に形成されている。又、嵌着部2には、第1補強環15Aが埋設されており、この第1補強環15Aによりハウジングとの嵌着を強固にすると共に、嵌着部2に第1リップシール2A及び第2リップシール5の一端部が保持される。
【0022】
又、この第1補強環15Aを埋設した嵌着部2から被密封流体側Aへ突出するゴム材製の第1リップシール2Aが筒状を成して回転軸50と嵌合可能に形成されている。この第1リップシール2Aの材質は、ゴムに限らず、樹脂にすることも可能である。この樹脂材の第1リップシール2Aの場合は、第2リップシールの材質よりゴム状弾性力を大きくすると良い。
この第1リップシール2Aの内端には、第1シール部2Bが設けられており、この第1シール部2Bの先端は断面が三角形状を成している。第1シール部2Bは、大気側Bと被密封流体側Aとの間を断面三角形状の角部の圧接により面圧でシールする。このとき、第1摺動面2Cも回転軸50と接合して摺動する。
第1シール部2Bの第2リップシール5側の第1摺動面2Cには軸芯方向を成す三角形状に突起した潤滑作用凸部6Aが周面に沿って等配に形成されている。この潤滑作用凸部6Aが軸芯に沿って形成されているので、回転軸50が正回転又は逆回転しても被密封流体を第1摺動面2C及び第2シール面5Aへ供給することが可能になる。
この実施例では潤滑作用凸部6Aが20個設けられているが、設計に応じて例えば24個、28個に設定される。又、潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cの周面に沿って、等配ではなく、設計された間隔に配列することもできる。
【0023】
又、この潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封液体の潤滑作用を生じると共に、第2リップシール5側へ被密封流体を流出させるものである。この潤滑作用凸部6Aを含めて潤滑作用手段6と称する。
この第1シール部2Bに於ける先端の角部が回転軸50に密接し、回転軸50が回転しないときは、潤滑作用凸部6Aの被密封流体A側が、弾性変形して回転軸50に対して角部が密接しているので、被密封流体を大気側Bへ漏洩させないようにしている。
この第1シール部2Bの角部の弾性変形した密接によるシャ−プな面圧は、回転軸50が静止しているときにシール能力を発揮する。
一方、回転軸50が回転しているときは、第1リップシール2Aに設けられた潤滑作用凸部6Aが作動して第1シール部2Bの第1摺動面2Cに被密封流体を導入して介在させる。その被密封流体の潤滑膜の一部が長手の潤滑作用凸部6Aの第2リップシール5側の凸部の作用により第2リップシール5側へ被密封流体を微小ずつ流出させる。この被密封流体の流出は、第2リップシール5の第2シール面5Aに潤滑作用を奏する。
【0024】
第1リップシール2Aの大気側Bには、ほぼ第1リップシール2Aと同様な形状の支持環13が設けられている。この支持環13の外周保持部は嵌着部2に第2リップシール5と共に、第3補強環15Bにより挟持されている。
更に、支持環13の内端は支持部に形成されている。この支持部は断面円弧状を成して第1リップシール2Aの回転軸50側へ曲げられた内周面と接合して支持するように形成されている。
この支持環13は、金属板を深絞りした加工により、外周部をフランジ状にした円筒体に形成されている。そして、支持環13は第1リップシール2Aに受ける被密封流体の圧力を支持する耐圧の厚さに形成されている。
【0025】
更に、支持環13の大気側Bには、樹脂材製の第2リップシール5が設けられている。この第2シールリップ5は、外周の一端部が径方向を成すフランジ状に形成されており、内周が一端部から筒状の傾斜部に形成されている。そして、傾斜部の自由端側の内周面が回転軸50と略平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第2シール面5Aに形成されている。
第2シール面5Aの端部には、第2シール部5Bが設けられている。この第2シール部5Bは、第1リップシール2Aの潤滑作用凸部6Aにより流出した被密封流体をシールする。同時に、この第2シール部5Bは、第1シール部2Bのような断面三角形状の角部とは異なり、円筒状の端部に設けられているから、被密封流体を微小ずつ第2シール面5Aへ浸入させることが可能になる。そして、この被密封流体は第2シール面5Aの潤滑作用を成して第2シール面5Aの摩耗を防止する。
【0026】
このように構成されたシール装置1は、回転軸50が静止しているときは、第1リップシール2Aの第1シール部2Bが潤滑作用凸部6Aの被密封流体側Aを弾性変形させて回転軸50に密接し、第1シール部2Bの角部に於ける弾性力の接合によりシャープな面圧で被密封流体をシールする。
この為に、被密封流体が高圧であっても、シール装置1により被密封流体の漏れは防止される。
【0027】
次に、回転軸50が正回転又は逆回転した場合である。回転軸50が正回転又は逆回転すると、第1リップシール2Aに設けられた潤滑作用凸部6Aは、回転軸50との摩擦により弾性変形して潤滑作用凸部6Aの側面が開いてくる。この為に、被密封流体は第1シール部2Bの潤滑作用凸部6Aの側面から第1摺動面2Cに浸入して回転軸50の回転と共に第1摺動面2Cの全面に介在し、潤滑膜となって第1シール部2Bの摺動抵抗を低減する。
同時に、潤滑作用凸部6Aの第2リップシール5側の凸部により、回転軸50の回転と共に、被密封流体を第2リップシール5側へ流出させる。この被密封流体の流出が増してくると、第1シール部2Bに介在する被密封流体の潤滑膜の厚さにより被密封流体の流出量は低減する。
反対に、第1摺動面2Cの潤滑被膜が少なくなって摺動摩擦が増してくると、潤滑作用凸部6Aが前述と同様な作用により第1摺動面2Cに被密封流体を供給する。
【0028】
上述した作動中に、第2リップシール5には、第1リップシール2Aの潤滑作用凸部6Aにより被密封流体が供給される。第2リップシール5に供給された被密封流体は第2シール部5Bによりシールされる。しかし、第2シール部5Bは端部によるシールであるから、第2シール面5Aに被密封流体を漏洩させることが可能になる。この漏洩した被密封流体が第2シール面5Aに潤滑作用をして摺動抵抗を低減し、第2シール面5Aの摩耗を防止する。
この作動が、微視的には繰り返されてシール装置1の第1摺動面2C及び第2シール面5Aの摩耗を低減する。
【0029】
図2は、本発明に係わる第2実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。
この図2に示すシール装置1に於いて、図1のシール装置1と相違する構成は、
図1に示す潤滑作用凸部6Aの断面が半楕円形状にしたものである。
この潤滑作用凸部6Aは、第1シール部2Bが静止した回転軸50に嵌合すると、第1シール部2Bの嵌合した圧接と被密封流体の圧力により第1摺動面2Cと略同一平面状態に近い弾性変形をする。この為に、潤滑作用凸部6Aの側面と回転軸50との間は間隙が小さくなるから、被密封流体は第1シール部2Bによりシールされる。例え、微小な漏れが生じても、後述する第2リップシール5によりシールされる。
一方、回転軸50が回転すると、潤滑作用凸部6Aの弾性力により潤滑作用凸部6Aの側面側に図1の潤滑作用凸部6Aより大きな間隙が生じる。すなわち、回転軸50が回転すると、第1摺動面2Cと潤滑作用凸部6Aの両面の境に断面が三角形状の微小な隙間が生じ、この間隙から第1摺動面2Cに被密封流体が介在して潤滑作用をする。
この潤滑作用手段6は、正・逆両回転する回転軸50用であるために、潤滑作用凸部6Aの形状が第1摺動面2Cに軸芯方向へ長手に形成される。
【0030】
更に、第2リップシール5の第2シール面5Aには、回転軸50が正・逆両方に回転しても被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする同心の第1シール溝(総称してシール作用手段36と言う)36Aに設けられている。この第1シール溝36Aは、第2シール面5Aの軸方向へ沿って同心の切り込みが複数条に形成されているが、第2シール面5Aに溝形状とは限らず回転軸50が回転すると被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする形状であればよい。このシール作用手段36は第1シール溝36Aを含むポンピング作用をするものである。
このシール作用手段36として、第2シール面5Aにメス加工により螺旋状の切込面を設けても良い。この切込面に被密封流体が作用すると切込面は三角形状に開いて被密封流体が被密封流体側Aへ押し出され、被密封流体をシールする。この切込面は、図示するように3条とは限らず、必要に応じて5条から8条に形成することができる。
更に、第2シール面5Aの第2シール部5B側には周面に沿った多数の円弧状を成す螺旋溝に形成することもできる。
【0031】
この嵌着部2に保持された第2リップシール5は、第1リップシール2Aとの間に空間部を設けて取り付けられている。この第2リップシール5は樹脂材製であるが、硬質ゴム材製にもすることができる。この空間部は第2リップシール5の第2シール部5Bが第1リップシール2Aと小さな間隔を設けている。この間隔は、空間部に被密封流体を溜めるようにして第1シール溝36Aにより被密封流体側Aへ効果的にポンピングさせるものである。
【0032】
尚、この第2シール面5Aに設けられた第1シール溝36Aが、一方回転用のポンピング作用である場合は、第2リップシール5の大気側Bに、更に第3リップシールを設ければよい。この第3リップシールは外周一端部が径方向を成すリング状の挟持部に形成されて、内周が挟持部から筒状の傾斜部に形成される。そして、傾斜部の自由端側の内端面が回転軸50に平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第3シール面に形成する。この第3シール面に回転軸50が逆回転したときに被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする第3シール溝を設けるものである。
【0033】
この第1シール溝36Aは、その他のシール溝を含めてシール作用手段36と称している。
更に、第2シール面5Aの第2シール部5B側には周面に沿った多数の円弧状溝を形成することもできる。
又、第1リップシール2Aはゴム材製であり、第2リップシール5は、ゴム状弾性を成すゴム又は樹脂材製であるが、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質の硬度は選択される。そして、第1リップシール5は、第2リップシールよりもゴム状弾性力を大きくすると良い。
【0034】
その他の構成は、図1に示すシール装置1の構成と略同様である。
この第2図に示すシール装置1においても、図1に示したシール装置1と同様な作用効果を奏する。
【0035】
図3は、本発明に係わる第3実施の形態を示すシール装置の半断面図である。
図3に於いて、図1のシール装置1と相違する点は、図1の嵌着部2と補強環15Aの代わりに、金属製の嵌着環2を設けると共に、嵌着環2の環状凹部にゴム材製のOリング4を設けたものである。このOリング4により嵌着環2を取り付けるハウジングとの嵌着面の間をシールする。このOリング4は、図示上は多少大きくされているが圧着されると嵌着環2の外周面と略同一径となる。嵌着環2を図3のように構成することにより、シール装置1の部品構成を少なくする。
又、図1のゴム材製の第1リップシール2Aと支持環13の代わりに樹脂材製の第1リップシール2Aが設けられている。更に、第2リップシール5は、第1リップシール2Aよりもやや硬質のゴム状弾性を有するゴム又は樹脂材製に形成されている。
この第2リップシール5の第2シール面5Aには、周面に沿って波形にくねった第2シール溝36Bが形成されている。この第2シール溝36Bの波形は1周に2個、4個、6個とくねるように設けられている。そして、回転軸50が回転すると被密封流体を第2シール面5Aに供給して潤滑すると共に、この被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする構成になされている。又、この第2シール溝36Bは、同心の第1シール溝36Aや螺旋溝に形成して被密封流体を被密封流体側Aへポンピングすることもできる。
この第1リップシール2Aと第2リップシール5に於ける材質の相関関係は、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質の硬度又は弾性力の特性を選択するが、被密封流体側Aがゴム状弾性力を大きくすると良い。
又、第1リップシール2Aがゴム材質の場合は、被密封流体の高圧との関係から、弾性変形の大きいゴムではなく、潤滑作用溝6Aが微小に変形する程度の硬質のゴム材にする必要がある。
【0036】
図4から図6に示す潤滑作用凸部6A、6A、6Aは、潤滑作用手段6の各種の形状を示すものである。
図4の第1潤滑作用凸部6Aは被密封流体側Aから見て三角形状の凸部であって、平面が軸方向に長い三角形状に形成されたものである(軸芯に対して両側が対称である)。この第1潤滑作用凸部6Aの形状は第1摺動面2C内に形成されている。この摺動面2Cに対する第1潤滑作用凸部6Aの軸芯方向の長さにより第1潤滑作用凸部6Aの側面に於ける軸方向の傾斜角度が決められるから、この傾斜角度により被密封流体を第2リップシール5側へ吐出(流出)させる流量が設定される。又、第1潤滑作用凸部6Aの三角形状の底面の各辺の大小により潤滑作用を加減することが可能になる。
【0037】
次に、図5の第2潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封流体側Aから見て台形状の凸部に突出しているものである。そして、第2潤滑作用凸部6Aは、平面図では、軸芯に対して対称で、しかも、第2シール面5A側の幅寸法が狭く形成されている。
又、図6の第3潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封流体側Aから見て半楕円形に突出した形状に形成されていて、軸芯に対して対称に成されている。そして、平面図で何れも被密封流体側Aが大きな幅寸法にされていると共に、第2シール面5A側の幅寸法が狭くなる形状で、軸芯方向へ長手に形成されている。
上述の第2潤滑作用凸部6Aは、回転軸50に接合するとほとんど第1摺動面2Cと同じ平面状態に弾性変形するが、この弾性力が第1潤滑作用凸部6Aより大きいので、被密封流体の圧力が第1潤滑作用凸部6Aより高圧の場合に適している。この為に、第2潤滑作用凸部6Aの両側面に微小な隙間を残すことができる。そして、回転軸50が回転すると、この微小な隙間が回転につれて弾性変形して被密封流体を巻き込み、第1摺動面2Cに潤滑膜を形成する。同時に、巻き込んだ被密封流体を第2リップシール5側へ流出させる。
更に、第3潤滑作用凸部6Aも第2潤滑作用凸部6Aと同様な作用を成すが、第2潤滑作用凸部6Aよりも側面側に形成される隙間が大きく、被密封流体の吐出量を大きくする場合に適している。
この第1,第2及び第3潤滑作用凸部6Aは、回転軸50の回転と協働して正回転するとき及び逆回転するとき、共に被密封流体を第1摺動面2Cに潤滑膜として介在させると共に、第2リップシール5側へ被密封流体を吐出させる作用をする。
【0038】
図7に示す第1潤滑作用凸部6Aは、第1潤滑作用凸部6Aに被密封流体が巻き込まれる状態の断面図である。図7において、右回転(正回転)N1の場合は、右回転N1の被密封流体Lが被密封流体側Aから潤滑作用凸部6Aの側面側へ浸入する。又、左回転(逆回転)N2の場合は、左回転N2の被密封流体Lが被密封流体側Aから潤滑作用凸部6Aの側面側へ浸入する。そして、第1潤滑作用凸部6Aの側面の隙間に浸入した被密封流体は、回転軸50の回転により一部が第1摺動面2Cに沿って潤滑膜を形成する。同時に、浸入した残りの被密封流体は、第2リップシール5側へ流出する。そして、第2リップシール5の第2シール面5Aの潤滑作用をする。
【0039】
図10から図12のシール装置30A、30B、30Cは、本発明の比較例の半断面図である。
図10は、本発明の試験のため製作した第1比較例のシール装置30Aである。 このシール装置30Aの嵌着部32には補強環33Aが埋設されていて、補強環33Aにより嵌着部32を補強している。この嵌着部32から円筒状に被密封流体側へ突出するゴム材製の第1リップシール32Aが設けられている。この第1リップシール32Aの回転軸50と嵌合する第1シール部32Bは、断面角状に形成されて回転軸50と密接している。そして、この第1シール部32Bにより回転軸50は軸封される。
又、支持環35は、第1リップシール32Aが被密封流体の圧力により回転軸50に必要以上に圧接されないように支持している。そして、この第1リップシール32Aにより回転軸50が正回転するときも、逆回転するときも被密封流体をシールする。
【0040】
次に、嵌着部32に保持された保持板33Bと支持環35とにより挟持された樹脂材製の第2リップシール31が取り付けられている。この第2リップシール31はフランジ状の一端部から裁頭円錐環に形成されている。
この第2リップシール31には、回転軸50と嵌合する第2シール面31Aが設けられていると共に、被密封流体を先端でシールする第2シール部31Bが設けられている。
このように構成されたシール装置30Aの第2シール面31Aは、回転軸50に嵌合すると、図1に示すシール装置1の第2リップシール5と同様に略円筒状に弾性変形して嵌合する。そして、第1リップシール32Aから漏洩する被密封流体を二重にシールする。
【0041】
図11は、試験のために製作した第2比較例のシール装置30Bである。このシール装置30Bは、図10に示すシール装置30Aと略同様に形成されている。相違する点は、第1シール部32Bに、図11に示すように、軸心に対して傾斜した吐出凸部38が摺動面に沿って多数が形成されている。そして、この吐出凸部38は回転軸50が正回転するときに、被密封流体を被密封流体側へポンピングするように構成されている。しかし、この吐出凸部38は、回転軸50が逆回転するときに被密封流体を大気側へ強制的にポンピングさせるので、この被密封流体が第2シール面31Aから漏洩することになる。この為に、シール装置30Bは、回転軸50が一方に回転するときにのみ利用される。
このシール装置30Bに於けるその他の構成は、図10のシール装置30Aと略同様に構成されている。
【0042】
図12に示す第3比較例のシール装置30Cは、図10に示すシール装置30Aと略同様に構成されている。相違する点は、第1シール部32Bの摺動面に突起した逆回転用の吐出凸部37と正回転用の吐出凸部38がハの形に設けられていることである。この摺動面に交互に形成された吐出凸部37、38により回転軸50が正回転及び逆回転するときに共に被密封流体を被密封流体側へポンピングして軸封するものである。
【0043】
比較例1、2及び3のシール装置30A、30B、30Cは、何れも第1シール部32Bのシール能力が優れているために、第2リップシール31の第2シール面31Aには、被密封流体が流出しないように構成されている。この為に、試験結果によれば、第2シール面31Aの摺動抵抗が大きくなり、第2シール面31Aが摩耗してシール能力を低下させる。又、第1シール部32Bは、回転軸50と接合する角部で回転軸50をシールするために、シール能力に優れる反面、第1シール部32Bの潤滑性が劣り、摩耗が促進される。特に、被密封流体が高圧であればあるほど第1シール部32Bと第2シール面31Aは摩耗が促進される。結局、第1シール部32Bの摩耗が促進されると、摩耗量が拡大されるから、第1シール部32Bは急にシール能力を低下させる。特に、被密封流体の圧力が高圧であればあるほど摩耗量が拡大する。この為に、シール装置30A、30B、30Cは、被密封流体の圧力が高くなると早期にシール能力が低下する。
【0044】
次に図1から図3に示す本発明の第1実施の形態から第3実施の形態のシール装置1と第1比較例から第3比較例のシール装置30A、30B、30Cを試験した試験機40の構造を簡単に説明する。
この試験機はハウジング46と回転軸47との間にハウジング46のエンドカバー41により油室Oを形成する。更に、油室Oの両側に回転軸47と取付空間を設けて嵌合するシール装置1、1Aの第1保持部品43Aと第2保持部品43Bが取り付けられている。この第1及び第2保持部品43A、43Bはハウジング46に取付部品42、44を介して固定されている。
これらの各部品間には油室O内の油やガスが漏洩しないようにOリング45、46が設けられている。又、油室Oに連通する流体通路Gから油に対して一定圧力の窒素ガスが圧送するように成されている。
【0045】
試験機40の第1保持部品43Aには、試験するシール装置1(又はシール装置30A)が取り付けられる。又、第2保持部品43Bにはダミー用のシール装置1Aが取り付けられる。
そして、試験機40の試験条件は下記の通りである。
1)回転軸径は、14.27mm
2)回転軸47の回転数は、9000rpm
3)被密封流体は、PAG油
4)油室Oの圧力は、0.49MPa
5)油温は150°C
【0046】
本発明のシール装置は、特に、図1に示すシール装置1について繰り返し試験した。又、比較例1のシール装置30Aについても同様の条件で実施した。
【0047】
本発明の試験の試験結果は図5に示す通りである。
図5に於いて、
Aは、比較例1のシール装置30A(図10に示す)
Bは、本発明のシール装置1(図1に示す)
【0048】
本発明のシール装置1は、実験の結果、図9のBのグラフに示すような結果となる。この図9から明らかなように、シール装置1は、第1シール部2Bの摺動面2Cに被密封流体の潤滑膜が形成されるために、摩擦係数が小さく、第1摺動面2Cの摩耗が防止されることが認められる。
同様に、第2リップシール5の第2シール面5Aにも第1シール部2Bから被密封流体が供給されて介在するから、第2シール面5Aの摺動抵抗が小さく、第2シール面5Aの摩耗が防止されることが認められる。
しかし、摺動時間が長時間経過するとやがて摩耗が発生するから、Bグラフの点線で示すように被密封流体の漏洩が発生すると認められる。つまり、第1摺動面2Cおよび第2シール面5Aの摩耗を防止すれば、シール能力を向上できることが認められる。
【0049】
一方、比較例1に於ける第2リップシール31の第2シール面31Aには、第1リップシール32Aの軸封により、被密封流体が十分に介在しないから、第2シール面31Aの摺動抵抗が大きくなると共に、摩耗が促進されると認められる。
又、第1シール部32Bも被密封流体側の角部で軸封されるから、摺動面に被密封流体の潤滑作用が不十分となる。この為に、第1シール部32Bの摺動面側が摩耗してシール能力が急速に低下すると認められる。この為に、被密封流体の漏れ量が大きく、図9に示す実線Aのグラフになると認められる。
つまり、比較例1のシール装置30Aでは、第1リップシール2Aと第2リップシール5との全てにシール性能を向上させることに目的の主願がある。
しかし、この目的のために、シール面又は摺動面が早期に摩耗するので、結果的に早期にシール能力が低下している。特に、被密封流体が高圧の場合又は過酷な特性の被密封流体の場合には、欠点が顕著となり、このシール性能が急速に低下する。
【0050】
一方、本発明のシール装置1は、シール能力と摩耗防止が共に優れているために長期に渡り軸封能力が向上するものと認められる。
又、本発明のシール装置1は、潤滑作用手段6により、回転軸50が正・逆回転しても、両回転に対して同一のシール効果を発揮できる。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係わるシール装置によれば、以下に記載するような優れた効果を奏する。
シール装置は、回転軸が正回転しても、逆回転しても、長期に渡り被密封流体を効果的にシールすることが可能になる効果を奏する。そして、シール面に於ける潤滑作用手段により常に摺動面及びシール面に潤滑作用が生じるから、シール面の摺動抵抗を小さくして摺動面及びシール面の摩耗が防止される効果を奏する。又、潤滑作用手段は第2リップシールへ被密封流体を供給して第2シール面の摺動抵抗を低減し、第2シール面の摩耗を防止して長期に渡りシール能力を発揮させる。
【0052】
第1シール部には、軸芯方向へ長手の潤滑作用凸部が設けられているから、この軸芯方向の長さにより、第1摺動面に潤滑作用を発揮すると共に、第2リップシール側へ被密封流体の適量をポンピングする作用を発揮する。
【0053】
又、第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性の樹脂材に形成されているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの弾性力で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。
又、第2リップシールの第2シール面は硬質のゴム又は樹脂材であり、シール面に被密封流体が潤滑膜として介在するから、摺動抵抗を小さくして摩耗を防止すると共に、長期に渡りシール能力を発揮させる。更に、第2シール面にシール作用手段を設けることにより、第1リップシールで漏洩させた被密封流体をポンピングしてシール能力を発揮させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図4】本発明のシール装置1に係わる第1実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図5】本発明のシール装置1に係わる第2実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図6】本発明のシール装置1に係わる第3実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図7】本発明に係わる第1実施例に於ける回転軸が正・逆両回転したときの潤滑作用手段による被密封流体の流れを示す断面図である。
【図8】本発明に係わるシール装置1と比較例のシール装置30を試験した試験機の半断面図である。
【図9】本発明のシール装置1と比較例のシール装置30Aとの被密封流体の漏れ量を実験したデータのグラフである。
【図10】本発明に関連する第1比較例のシール装置30Aの半断面図である。
【図11】本発明に関連する第2比較例のシール装置30Bの半断面図である。
【図12】本発明に関連する第3比較例のシール装置30Cの半断面図である。
【図13】本発明の関連技術に係わるシール装置の半断面図である。
【符号の説明】
1 シール装置
2 嵌着部
2A 第1リップシール
2B 第1シール部
2C 第1摺動面
4 Oリング
5 第1リップシール
5A 第2シール面
5B 第2シール部
6 潤滑作用手段
6A 潤滑作用凸部
13 支持環
15A 第1補強環
15B 第2補強環
36 シール作用手段
36A 第1シール溝
36B 第2シール溝
50 回転軸
A 第1比較例のシール装置30Aの試験時間に対する被密封流体の漏れ量のグラフである。
B 本発明のシール装置1の試験時間に対する被密封流体の漏れ量のグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、リップシールにより正・逆回転する両用の回転軸をシールするシール装置に関する。更に詳しくは、高圧の被密封流体をシールリップにより耐圧状態でシールすると共に、リップシールの摩耗を防止したシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明のシール装置に係わる関連技術として、特開平10−331984号公報、特開平10−252898号公報、特開平11−159629号公報及び特開2002−5302号公報が存在する。
【0003】
これらの公報に記載されたシール装置は、コンプレッサのような高圧条件下で用いられるリップ型シールである。そして、被密封流体は冷媒及び冷凍機油が用いられる場合が多く、しかも、所定の高圧に保持されている。更に、回転軸の回転時及び静止時でも流体漏れを防止しなければならない。最近では、右回転用回転軸と、左回転用回転軸との両用回転軸に用いられる場合が多く、両用のシール装置がないためにシール能力を向上させることが困難であった。
【0004】
これらのリップ型シールは、密封条件が過酷であるために、密封能力を有するオイルシールと2次シールとしてのリップシールを単に組み合わせたものであるから、被密封流体を密封するシール能力はオイルシールにより負担する。オイルシールは、ゴム材製であるから、被密封流体の高圧力を受けると回転軸とシール面が密接してシール能力を発揮させることが目的にしている。
更に、このオイルシールのシール面が摩耗して被密封流体が漏洩した場合は、大気側のリップシールでシールするものである。
このように構成されたリップ型シールは、オイルシールのシール面が被密封流体により押圧されて回転軸と密接すると、シール面に潤滑作用がなくなるから、回転中の回転軸との摩擦によりシール面が摩耗することになる。
又、オイルシールで被密封流体をシールしている間は、大気側に設けられたリップシールのシール面へ被密封流体が流れないから、このリップシールが樹脂材製であっても、回転中に被密封流体側のオイルシールよりも早期に、回転軸との摩擦により摩耗することになる。この為、リップ型シールを機械装置の内部に装着すると、外部から見知できないために磨耗状態が分からず、問題となっている。
【0005】
この問題点を具体的に説明する。図13は、前述の公報に類似する形状のシール型リップ100の半断面図である。
図13に示すリップ型シール100は、オイルシール101とリップシール108とを組み合わせた構成である。このリップ型シール100は、ハウジング111の取付孔112に嵌着されて回転軸113との間をシールしている。このシールされる被密封流体は、高圧状態あって、しかも、二酸化炭素ガスのような特殊な条件の気体又は液体のものである。この為、リップ型シール100は、シール能力に優れた2つのオイルシール101とリップシール108とを組み合わせて一体化したものが採用されている。
【0006】
このリップ型シール100には、オイルシール101が設けられている。オイルシール101には、補強環103を埋設した基部102からシール部104が被密封流体側Aに傾斜して延び、そのシール部104に回転軸113の外周面と密接するシール面104aが設けられている。
このシール面104aを緊迫するガータスプリング105がシール部104の外周面に設けられた環状溝に装着されている。このガータスプリング105によりシール面104aにP圧力を発生させてシールしている。
【0007】
又、オイルシール101の大気側Bの回転軸113と取付孔112との間には、環状のリップシール108が設けられている。このリップシール108の外周にはゴム材製の保持リング110が取付孔112に固着されていると共に、保持リング110に保持された金属材製のバックアッププレート106がオイルシール101に接触する状態で配置されている。
更に、バックアッププレート106の大気側Bには、リップ部107を設けた樹脂材製のリップシール108がバックアッププレート106と同形状に配置されている。又、リップシール108の大気側Bにはリング状のサポートプレート109が配置されてリップシール108を支持している。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このリップシール108は、オイルシール101と並列に配列されて被密封流体に対して二重にシールする。
そして、ゴム材製のオイルシール101により、被密封流体はほとんどシールされる。しかも、被密封流体の圧力が高圧であればあるほどゴム材製のシール面104aは、回転軸113に弾性変形して密接し、受圧面積を大きくして圧接するから、シール面104aには被密封流体が介在しなくなる。この状態が続くと、シール面104aが回転している回転軸113との摩擦により摩耗させられる。
【0009】
この間、被密封流体はオイルシール101でシールされているから、リップ部107のシール面には、被密封流体がほとんど流入せず、回転軸113との摩擦によりシール面が摩耗することになる。
特に、リップ部107は、バックアッププレート106と回転軸113との間で挟持されており、更には、被密封流体の高圧力がオイルシール101とバックアッププレート106を介してリップ部107に作用するから、リップ部107は回転軸113との摺動抵抗をさらに増加すると共に、摩耗することになる。
【0010】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その発明が解決しようとする技術的課題は、被密封流体が冷媒等の特殊な液化した流体であり、しかも、高圧であっても、本発明のシール装置は、シール面の摩耗を防止して、シール能力の向上を図ると共に、機械装置の故障を防止することにある。
又、このシール装置は、回転軸が正・逆両回転用であっても、シール面に被密封流体を供給して摩耗を防止し、シール能力を向上させることにある。
更に、このシール装置は、被密封流体の高圧に対して第1シール部の摺動抵抗を小さくして摩耗を防止すると共に、第2リップシールのシール面に被密封流体を供給して摩耗を防止し、シール装置のシール能力を向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その技術的解決手段は以下のように構成されている。
【0012】
請求項1に係わる本発明のシール装置は、嵌合孔を有するハウジングとハウジングの嵌合孔に嵌装する回転軸との間の被密封流体を密封するシール装置であって、ハウジングの嵌合孔に密封に保持される嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が回転軸の周面と嵌合する第1シール部を有するゴム又は樹脂材製の第1リップシールと、嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が回転軸の周面と密接する第2シール面を有するゴム又は樹脂材製の第2リップシールとを具備し、第1シール部の回転軸と接面する第1摺動面に回転軸が正回転又は逆回転しても被密封流体を第2リップシール側へ導入する潤滑作用手段を有するものである。
【0013】
この請求項1に係わる本発明のシール装置では、第1シール部の回転軸と接面する第1摺動面に被密封流体を第1摺動面に潤滑させると共に、第2シール面へ被密封流体を流出させる潤滑作用手段が設けられているから、回転軸が正回転又は逆回転しても、潤滑作用手段により第1摺動面へ入り込んだ被密封流体を回転と共に周方向へ流入させて潤滑作用をする。同時に、潤滑作用手段の働きにより被密封流体を第1摺動面から第2シール面側へ流出させる。この流出された被密封流体は、第2リップシールの第2シール面に介在して第2シール面の摺動抵抗を低下させると共に、摩耗を防止する。
【0014】
又、第2シール面の端部側の第2シール部により第1シール部の第1摺動面から吐出された被密封流体は、シールされるが、小量の被密封流体が第2シール面に介在して第2シール面の潤滑膜となり、第2シール面の摺動抵抗を低減する。この為、第2シール面は摩耗するのが防止され、第2リップシールの耐久能力が飛躍的に向上する。
更に、第1シール部の潤滑作用手段が軸芯方向を成しているから、回転軸が正・逆どちらに回転しても上述したような第1摺動面及び第2シール面に被密封流体を介在させる作用が発揮される。この為、1個のシール装置で、回転軸が正回転する場合と、逆回転する場合との両用に活用できる。
【0015】
請求項2に係わる本発明のシール装置は、第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力を大きくされている。
【0016】
この請求項2の本発明のシール装置では、被密封流体側の第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力が大きくされているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの第1シール部で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。
しかも、潤滑作用手段は、ゴム状弾性力が大きい第1シール部に設けられているから、この材質の弾性力により、潤滑作用手段が回転軸の回転速度に応じて摺動面に被密封流体を潤滑させると共に、第2シール面へ被密封流体側を吐き出す作用をさせることが可能になる。
【0017】
請求項3に係わる本発明のシール装置は、潤滑作用手段が略軸芯に沿って凸部に形成されていると共に凸部の周方向幅よりも軸方向の長さが長く形成されているものである。
【0018】
この請求項3に係わる本発明のシール装置では、第1シール部に潤滑作用手段が凸部に形成されていると共に、凸部が軸芯方向へ長く形成されているから、被密封流体が凸部の側面側の間隙に入ると、回転軸の回転につれて第1摺動面へ被密封流体が介在して潤滑することになる。同時に、凸部の第2シール面側へ長手に形成された部分で被密封流体を第2シール面側へ強制的に吐出させることができる。この為に、第2シール面に被密封流体を供給して第2シール面の潤滑作用を成し、第2シール面の摩耗を防止してシール能力を向上させる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる好ましい実施の形態のシール装置を、その図面に基づいて詳述する。尚、以下に説明する各図面は、設計図を基にした正確な図である。
【0020】
図1は、本発明に係わる第1実施の形態のシール装置を示すものであって、軸に装着されない状態の半断面図である。
図1において、1はシール装置である。このシール装置1における第1リップシール2A及び第2リップシール5の取付状態は、環状の第1シール部2Bと第2シール面5Aが仮想線で示す回転軸50に接合状態に弾性変形して嵌合する。
【0021】
又、シール装置1は、図示省略のハウジングの嵌合孔に嵌着するゴム材製の嵌着部2に形成されている。この嵌着部2の外周面には、嵌着したときにシールする凸部状のシール部分が2条に形成されている。又、嵌着部2には、第1補強環15Aが埋設されており、この第1補強環15Aによりハウジングとの嵌着を強固にすると共に、嵌着部2に第1リップシール2A及び第2リップシール5の一端部が保持される。
【0022】
又、この第1補強環15Aを埋設した嵌着部2から被密封流体側Aへ突出するゴム材製の第1リップシール2Aが筒状を成して回転軸50と嵌合可能に形成されている。この第1リップシール2Aの材質は、ゴムに限らず、樹脂にすることも可能である。この樹脂材の第1リップシール2Aの場合は、第2リップシールの材質よりゴム状弾性力を大きくすると良い。
この第1リップシール2Aの内端には、第1シール部2Bが設けられており、この第1シール部2Bの先端は断面が三角形状を成している。第1シール部2Bは、大気側Bと被密封流体側Aとの間を断面三角形状の角部の圧接により面圧でシールする。このとき、第1摺動面2Cも回転軸50と接合して摺動する。
第1シール部2Bの第2リップシール5側の第1摺動面2Cには軸芯方向を成す三角形状に突起した潤滑作用凸部6Aが周面に沿って等配に形成されている。この潤滑作用凸部6Aが軸芯に沿って形成されているので、回転軸50が正回転又は逆回転しても被密封流体を第1摺動面2C及び第2シール面5Aへ供給することが可能になる。
この実施例では潤滑作用凸部6Aが20個設けられているが、設計に応じて例えば24個、28個に設定される。又、潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cの周面に沿って、等配ではなく、設計された間隔に配列することもできる。
【0023】
又、この潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封液体の潤滑作用を生じると共に、第2リップシール5側へ被密封流体を流出させるものである。この潤滑作用凸部6Aを含めて潤滑作用手段6と称する。
この第1シール部2Bに於ける先端の角部が回転軸50に密接し、回転軸50が回転しないときは、潤滑作用凸部6Aの被密封流体A側が、弾性変形して回転軸50に対して角部が密接しているので、被密封流体を大気側Bへ漏洩させないようにしている。
この第1シール部2Bの角部の弾性変形した密接によるシャ−プな面圧は、回転軸50が静止しているときにシール能力を発揮する。
一方、回転軸50が回転しているときは、第1リップシール2Aに設けられた潤滑作用凸部6Aが作動して第1シール部2Bの第1摺動面2Cに被密封流体を導入して介在させる。その被密封流体の潤滑膜の一部が長手の潤滑作用凸部6Aの第2リップシール5側の凸部の作用により第2リップシール5側へ被密封流体を微小ずつ流出させる。この被密封流体の流出は、第2リップシール5の第2シール面5Aに潤滑作用を奏する。
【0024】
第1リップシール2Aの大気側Bには、ほぼ第1リップシール2Aと同様な形状の支持環13が設けられている。この支持環13の外周保持部は嵌着部2に第2リップシール5と共に、第3補強環15Bにより挟持されている。
更に、支持環13の内端は支持部に形成されている。この支持部は断面円弧状を成して第1リップシール2Aの回転軸50側へ曲げられた内周面と接合して支持するように形成されている。
この支持環13は、金属板を深絞りした加工により、外周部をフランジ状にした円筒体に形成されている。そして、支持環13は第1リップシール2Aに受ける被密封流体の圧力を支持する耐圧の厚さに形成されている。
【0025】
更に、支持環13の大気側Bには、樹脂材製の第2リップシール5が設けられている。この第2シールリップ5は、外周の一端部が径方向を成すフランジ状に形成されており、内周が一端部から筒状の傾斜部に形成されている。そして、傾斜部の自由端側の内周面が回転軸50と略平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第2シール面5Aに形成されている。
第2シール面5Aの端部には、第2シール部5Bが設けられている。この第2シール部5Bは、第1リップシール2Aの潤滑作用凸部6Aにより流出した被密封流体をシールする。同時に、この第2シール部5Bは、第1シール部2Bのような断面三角形状の角部とは異なり、円筒状の端部に設けられているから、被密封流体を微小ずつ第2シール面5Aへ浸入させることが可能になる。そして、この被密封流体は第2シール面5Aの潤滑作用を成して第2シール面5Aの摩耗を防止する。
【0026】
このように構成されたシール装置1は、回転軸50が静止しているときは、第1リップシール2Aの第1シール部2Bが潤滑作用凸部6Aの被密封流体側Aを弾性変形させて回転軸50に密接し、第1シール部2Bの角部に於ける弾性力の接合によりシャープな面圧で被密封流体をシールする。
この為に、被密封流体が高圧であっても、シール装置1により被密封流体の漏れは防止される。
【0027】
次に、回転軸50が正回転又は逆回転した場合である。回転軸50が正回転又は逆回転すると、第1リップシール2Aに設けられた潤滑作用凸部6Aは、回転軸50との摩擦により弾性変形して潤滑作用凸部6Aの側面が開いてくる。この為に、被密封流体は第1シール部2Bの潤滑作用凸部6Aの側面から第1摺動面2Cに浸入して回転軸50の回転と共に第1摺動面2Cの全面に介在し、潤滑膜となって第1シール部2Bの摺動抵抗を低減する。
同時に、潤滑作用凸部6Aの第2リップシール5側の凸部により、回転軸50の回転と共に、被密封流体を第2リップシール5側へ流出させる。この被密封流体の流出が増してくると、第1シール部2Bに介在する被密封流体の潤滑膜の厚さにより被密封流体の流出量は低減する。
反対に、第1摺動面2Cの潤滑被膜が少なくなって摺動摩擦が増してくると、潤滑作用凸部6Aが前述と同様な作用により第1摺動面2Cに被密封流体を供給する。
【0028】
上述した作動中に、第2リップシール5には、第1リップシール2Aの潤滑作用凸部6Aにより被密封流体が供給される。第2リップシール5に供給された被密封流体は第2シール部5Bによりシールされる。しかし、第2シール部5Bは端部によるシールであるから、第2シール面5Aに被密封流体を漏洩させることが可能になる。この漏洩した被密封流体が第2シール面5Aに潤滑作用をして摺動抵抗を低減し、第2シール面5Aの摩耗を防止する。
この作動が、微視的には繰り返されてシール装置1の第1摺動面2C及び第2シール面5Aの摩耗を低減する。
【0029】
図2は、本発明に係わる第2実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。
この図2に示すシール装置1に於いて、図1のシール装置1と相違する構成は、
図1に示す潤滑作用凸部6Aの断面が半楕円形状にしたものである。
この潤滑作用凸部6Aは、第1シール部2Bが静止した回転軸50に嵌合すると、第1シール部2Bの嵌合した圧接と被密封流体の圧力により第1摺動面2Cと略同一平面状態に近い弾性変形をする。この為に、潤滑作用凸部6Aの側面と回転軸50との間は間隙が小さくなるから、被密封流体は第1シール部2Bによりシールされる。例え、微小な漏れが生じても、後述する第2リップシール5によりシールされる。
一方、回転軸50が回転すると、潤滑作用凸部6Aの弾性力により潤滑作用凸部6Aの側面側に図1の潤滑作用凸部6Aより大きな間隙が生じる。すなわち、回転軸50が回転すると、第1摺動面2Cと潤滑作用凸部6Aの両面の境に断面が三角形状の微小な隙間が生じ、この間隙から第1摺動面2Cに被密封流体が介在して潤滑作用をする。
この潤滑作用手段6は、正・逆両回転する回転軸50用であるために、潤滑作用凸部6Aの形状が第1摺動面2Cに軸芯方向へ長手に形成される。
【0030】
更に、第2リップシール5の第2シール面5Aには、回転軸50が正・逆両方に回転しても被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする同心の第1シール溝(総称してシール作用手段36と言う)36Aに設けられている。この第1シール溝36Aは、第2シール面5Aの軸方向へ沿って同心の切り込みが複数条に形成されているが、第2シール面5Aに溝形状とは限らず回転軸50が回転すると被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする形状であればよい。このシール作用手段36は第1シール溝36Aを含むポンピング作用をするものである。
このシール作用手段36として、第2シール面5Aにメス加工により螺旋状の切込面を設けても良い。この切込面に被密封流体が作用すると切込面は三角形状に開いて被密封流体が被密封流体側Aへ押し出され、被密封流体をシールする。この切込面は、図示するように3条とは限らず、必要に応じて5条から8条に形成することができる。
更に、第2シール面5Aの第2シール部5B側には周面に沿った多数の円弧状を成す螺旋溝に形成することもできる。
【0031】
この嵌着部2に保持された第2リップシール5は、第1リップシール2Aとの間に空間部を設けて取り付けられている。この第2リップシール5は樹脂材製であるが、硬質ゴム材製にもすることができる。この空間部は第2リップシール5の第2シール部5Bが第1リップシール2Aと小さな間隔を設けている。この間隔は、空間部に被密封流体を溜めるようにして第1シール溝36Aにより被密封流体側Aへ効果的にポンピングさせるものである。
【0032】
尚、この第2シール面5Aに設けられた第1シール溝36Aが、一方回転用のポンピング作用である場合は、第2リップシール5の大気側Bに、更に第3リップシールを設ければよい。この第3リップシールは外周一端部が径方向を成すリング状の挟持部に形成されて、内周が挟持部から筒状の傾斜部に形成される。そして、傾斜部の自由端側の内端面が回転軸50に平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第3シール面に形成する。この第3シール面に回転軸50が逆回転したときに被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする第3シール溝を設けるものである。
【0033】
この第1シール溝36Aは、その他のシール溝を含めてシール作用手段36と称している。
更に、第2シール面5Aの第2シール部5B側には周面に沿った多数の円弧状溝を形成することもできる。
又、第1リップシール2Aはゴム材製であり、第2リップシール5は、ゴム状弾性を成すゴム又は樹脂材製であるが、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質の硬度は選択される。そして、第1リップシール5は、第2リップシールよりもゴム状弾性力を大きくすると良い。
【0034】
その他の構成は、図1に示すシール装置1の構成と略同様である。
この第2図に示すシール装置1においても、図1に示したシール装置1と同様な作用効果を奏する。
【0035】
図3は、本発明に係わる第3実施の形態を示すシール装置の半断面図である。
図3に於いて、図1のシール装置1と相違する点は、図1の嵌着部2と補強環15Aの代わりに、金属製の嵌着環2を設けると共に、嵌着環2の環状凹部にゴム材製のOリング4を設けたものである。このOリング4により嵌着環2を取り付けるハウジングとの嵌着面の間をシールする。このOリング4は、図示上は多少大きくされているが圧着されると嵌着環2の外周面と略同一径となる。嵌着環2を図3のように構成することにより、シール装置1の部品構成を少なくする。
又、図1のゴム材製の第1リップシール2Aと支持環13の代わりに樹脂材製の第1リップシール2Aが設けられている。更に、第2リップシール5は、第1リップシール2Aよりもやや硬質のゴム状弾性を有するゴム又は樹脂材製に形成されている。
この第2リップシール5の第2シール面5Aには、周面に沿って波形にくねった第2シール溝36Bが形成されている。この第2シール溝36Bの波形は1周に2個、4個、6個とくねるように設けられている。そして、回転軸50が回転すると被密封流体を第2シール面5Aに供給して潤滑すると共に、この被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする構成になされている。又、この第2シール溝36Bは、同心の第1シール溝36Aや螺旋溝に形成して被密封流体を被密封流体側Aへポンピングすることもできる。
この第1リップシール2Aと第2リップシール5に於ける材質の相関関係は、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質の硬度又は弾性力の特性を選択するが、被密封流体側Aがゴム状弾性力を大きくすると良い。
又、第1リップシール2Aがゴム材質の場合は、被密封流体の高圧との関係から、弾性変形の大きいゴムではなく、潤滑作用溝6Aが微小に変形する程度の硬質のゴム材にする必要がある。
【0036】
図4から図6に示す潤滑作用凸部6A、6A、6Aは、潤滑作用手段6の各種の形状を示すものである。
図4の第1潤滑作用凸部6Aは被密封流体側Aから見て三角形状の凸部であって、平面が軸方向に長い三角形状に形成されたものである(軸芯に対して両側が対称である)。この第1潤滑作用凸部6Aの形状は第1摺動面2C内に形成されている。この摺動面2Cに対する第1潤滑作用凸部6Aの軸芯方向の長さにより第1潤滑作用凸部6Aの側面に於ける軸方向の傾斜角度が決められるから、この傾斜角度により被密封流体を第2リップシール5側へ吐出(流出)させる流量が設定される。又、第1潤滑作用凸部6Aの三角形状の底面の各辺の大小により潤滑作用を加減することが可能になる。
【0037】
次に、図5の第2潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封流体側Aから見て台形状の凸部に突出しているものである。そして、第2潤滑作用凸部6Aは、平面図では、軸芯に対して対称で、しかも、第2シール面5A側の幅寸法が狭く形成されている。
又、図6の第3潤滑作用凸部6Aは、第1摺動面2Cに被密封流体側Aから見て半楕円形に突出した形状に形成されていて、軸芯に対して対称に成されている。そして、平面図で何れも被密封流体側Aが大きな幅寸法にされていると共に、第2シール面5A側の幅寸法が狭くなる形状で、軸芯方向へ長手に形成されている。
上述の第2潤滑作用凸部6Aは、回転軸50に接合するとほとんど第1摺動面2Cと同じ平面状態に弾性変形するが、この弾性力が第1潤滑作用凸部6Aより大きいので、被密封流体の圧力が第1潤滑作用凸部6Aより高圧の場合に適している。この為に、第2潤滑作用凸部6Aの両側面に微小な隙間を残すことができる。そして、回転軸50が回転すると、この微小な隙間が回転につれて弾性変形して被密封流体を巻き込み、第1摺動面2Cに潤滑膜を形成する。同時に、巻き込んだ被密封流体を第2リップシール5側へ流出させる。
更に、第3潤滑作用凸部6Aも第2潤滑作用凸部6Aと同様な作用を成すが、第2潤滑作用凸部6Aよりも側面側に形成される隙間が大きく、被密封流体の吐出量を大きくする場合に適している。
この第1,第2及び第3潤滑作用凸部6Aは、回転軸50の回転と協働して正回転するとき及び逆回転するとき、共に被密封流体を第1摺動面2Cに潤滑膜として介在させると共に、第2リップシール5側へ被密封流体を吐出させる作用をする。
【0038】
図7に示す第1潤滑作用凸部6Aは、第1潤滑作用凸部6Aに被密封流体が巻き込まれる状態の断面図である。図7において、右回転(正回転)N1の場合は、右回転N1の被密封流体Lが被密封流体側Aから潤滑作用凸部6Aの側面側へ浸入する。又、左回転(逆回転)N2の場合は、左回転N2の被密封流体Lが被密封流体側Aから潤滑作用凸部6Aの側面側へ浸入する。そして、第1潤滑作用凸部6Aの側面の隙間に浸入した被密封流体は、回転軸50の回転により一部が第1摺動面2Cに沿って潤滑膜を形成する。同時に、浸入した残りの被密封流体は、第2リップシール5側へ流出する。そして、第2リップシール5の第2シール面5Aの潤滑作用をする。
【0039】
図10から図12のシール装置30A、30B、30Cは、本発明の比較例の半断面図である。
図10は、本発明の試験のため製作した第1比較例のシール装置30Aである。 このシール装置30Aの嵌着部32には補強環33Aが埋設されていて、補強環33Aにより嵌着部32を補強している。この嵌着部32から円筒状に被密封流体側へ突出するゴム材製の第1リップシール32Aが設けられている。この第1リップシール32Aの回転軸50と嵌合する第1シール部32Bは、断面角状に形成されて回転軸50と密接している。そして、この第1シール部32Bにより回転軸50は軸封される。
又、支持環35は、第1リップシール32Aが被密封流体の圧力により回転軸50に必要以上に圧接されないように支持している。そして、この第1リップシール32Aにより回転軸50が正回転するときも、逆回転するときも被密封流体をシールする。
【0040】
次に、嵌着部32に保持された保持板33Bと支持環35とにより挟持された樹脂材製の第2リップシール31が取り付けられている。この第2リップシール31はフランジ状の一端部から裁頭円錐環に形成されている。
この第2リップシール31には、回転軸50と嵌合する第2シール面31Aが設けられていると共に、被密封流体を先端でシールする第2シール部31Bが設けられている。
このように構成されたシール装置30Aの第2シール面31Aは、回転軸50に嵌合すると、図1に示すシール装置1の第2リップシール5と同様に略円筒状に弾性変形して嵌合する。そして、第1リップシール32Aから漏洩する被密封流体を二重にシールする。
【0041】
図11は、試験のために製作した第2比較例のシール装置30Bである。このシール装置30Bは、図10に示すシール装置30Aと略同様に形成されている。相違する点は、第1シール部32Bに、図11に示すように、軸心に対して傾斜した吐出凸部38が摺動面に沿って多数が形成されている。そして、この吐出凸部38は回転軸50が正回転するときに、被密封流体を被密封流体側へポンピングするように構成されている。しかし、この吐出凸部38は、回転軸50が逆回転するときに被密封流体を大気側へ強制的にポンピングさせるので、この被密封流体が第2シール面31Aから漏洩することになる。この為に、シール装置30Bは、回転軸50が一方に回転するときにのみ利用される。
このシール装置30Bに於けるその他の構成は、図10のシール装置30Aと略同様に構成されている。
【0042】
図12に示す第3比較例のシール装置30Cは、図10に示すシール装置30Aと略同様に構成されている。相違する点は、第1シール部32Bの摺動面に突起した逆回転用の吐出凸部37と正回転用の吐出凸部38がハの形に設けられていることである。この摺動面に交互に形成された吐出凸部37、38により回転軸50が正回転及び逆回転するときに共に被密封流体を被密封流体側へポンピングして軸封するものである。
【0043】
比較例1、2及び3のシール装置30A、30B、30Cは、何れも第1シール部32Bのシール能力が優れているために、第2リップシール31の第2シール面31Aには、被密封流体が流出しないように構成されている。この為に、試験結果によれば、第2シール面31Aの摺動抵抗が大きくなり、第2シール面31Aが摩耗してシール能力を低下させる。又、第1シール部32Bは、回転軸50と接合する角部で回転軸50をシールするために、シール能力に優れる反面、第1シール部32Bの潤滑性が劣り、摩耗が促進される。特に、被密封流体が高圧であればあるほど第1シール部32Bと第2シール面31Aは摩耗が促進される。結局、第1シール部32Bの摩耗が促進されると、摩耗量が拡大されるから、第1シール部32Bは急にシール能力を低下させる。特に、被密封流体の圧力が高圧であればあるほど摩耗量が拡大する。この為に、シール装置30A、30B、30Cは、被密封流体の圧力が高くなると早期にシール能力が低下する。
【0044】
次に図1から図3に示す本発明の第1実施の形態から第3実施の形態のシール装置1と第1比較例から第3比較例のシール装置30A、30B、30Cを試験した試験機40の構造を簡単に説明する。
この試験機はハウジング46と回転軸47との間にハウジング46のエンドカバー41により油室Oを形成する。更に、油室Oの両側に回転軸47と取付空間を設けて嵌合するシール装置1、1Aの第1保持部品43Aと第2保持部品43Bが取り付けられている。この第1及び第2保持部品43A、43Bはハウジング46に取付部品42、44を介して固定されている。
これらの各部品間には油室O内の油やガスが漏洩しないようにOリング45、46が設けられている。又、油室Oに連通する流体通路Gから油に対して一定圧力の窒素ガスが圧送するように成されている。
【0045】
試験機40の第1保持部品43Aには、試験するシール装置1(又はシール装置30A)が取り付けられる。又、第2保持部品43Bにはダミー用のシール装置1Aが取り付けられる。
そして、試験機40の試験条件は下記の通りである。
1)回転軸径は、14.27mm
2)回転軸47の回転数は、9000rpm
3)被密封流体は、PAG油
4)油室Oの圧力は、0.49MPa
5)油温は150°C
【0046】
本発明のシール装置は、特に、図1に示すシール装置1について繰り返し試験した。又、比較例1のシール装置30Aについても同様の条件で実施した。
【0047】
本発明の試験の試験結果は図5に示す通りである。
図5に於いて、
Aは、比較例1のシール装置30A(図10に示す)
Bは、本発明のシール装置1(図1に示す)
【0048】
本発明のシール装置1は、実験の結果、図9のBのグラフに示すような結果となる。この図9から明らかなように、シール装置1は、第1シール部2Bの摺動面2Cに被密封流体の潤滑膜が形成されるために、摩擦係数が小さく、第1摺動面2Cの摩耗が防止されることが認められる。
同様に、第2リップシール5の第2シール面5Aにも第1シール部2Bから被密封流体が供給されて介在するから、第2シール面5Aの摺動抵抗が小さく、第2シール面5Aの摩耗が防止されることが認められる。
しかし、摺動時間が長時間経過するとやがて摩耗が発生するから、Bグラフの点線で示すように被密封流体の漏洩が発生すると認められる。つまり、第1摺動面2Cおよび第2シール面5Aの摩耗を防止すれば、シール能力を向上できることが認められる。
【0049】
一方、比較例1に於ける第2リップシール31の第2シール面31Aには、第1リップシール32Aの軸封により、被密封流体が十分に介在しないから、第2シール面31Aの摺動抵抗が大きくなると共に、摩耗が促進されると認められる。
又、第1シール部32Bも被密封流体側の角部で軸封されるから、摺動面に被密封流体の潤滑作用が不十分となる。この為に、第1シール部32Bの摺動面側が摩耗してシール能力が急速に低下すると認められる。この為に、被密封流体の漏れ量が大きく、図9に示す実線Aのグラフになると認められる。
つまり、比較例1のシール装置30Aでは、第1リップシール2Aと第2リップシール5との全てにシール性能を向上させることに目的の主願がある。
しかし、この目的のために、シール面又は摺動面が早期に摩耗するので、結果的に早期にシール能力が低下している。特に、被密封流体が高圧の場合又は過酷な特性の被密封流体の場合には、欠点が顕著となり、このシール性能が急速に低下する。
【0050】
一方、本発明のシール装置1は、シール能力と摩耗防止が共に優れているために長期に渡り軸封能力が向上するものと認められる。
又、本発明のシール装置1は、潤滑作用手段6により、回転軸50が正・逆回転しても、両回転に対して同一のシール効果を発揮できる。
【0051】
【発明の効果】
本発明に係わるシール装置によれば、以下に記載するような優れた効果を奏する。
シール装置は、回転軸が正回転しても、逆回転しても、長期に渡り被密封流体を効果的にシールすることが可能になる効果を奏する。そして、シール面に於ける潤滑作用手段により常に摺動面及びシール面に潤滑作用が生じるから、シール面の摺動抵抗を小さくして摺動面及びシール面の摩耗が防止される効果を奏する。又、潤滑作用手段は第2リップシールへ被密封流体を供給して第2シール面の摺動抵抗を低減し、第2シール面の摩耗を防止して長期に渡りシール能力を発揮させる。
【0052】
第1シール部には、軸芯方向へ長手の潤滑作用凸部が設けられているから、この軸芯方向の長さにより、第1摺動面に潤滑作用を発揮すると共に、第2リップシール側へ被密封流体の適量をポンピングする作用を発揮する。
【0053】
又、第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性の樹脂材に形成されているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの弾性力で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。
又、第2リップシールの第2シール面は硬質のゴム又は樹脂材であり、シール面に被密封流体が潤滑膜として介在するから、摺動抵抗を小さくして摩耗を防止すると共に、長期に渡りシール能力を発揮させる。更に、第2シール面にシール作用手段を設けることにより、第1リップシールで漏洩させた被密封流体をポンピングしてシール能力を発揮させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係わるシール装置1の回転軸に装着前の半断面図である。
【図4】本発明のシール装置1に係わる第1実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図5】本発明のシール装置1に係わる第2実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図6】本発明のシール装置1に係わる第3実施例の潤滑作用手段の断面図である。
【図7】本発明に係わる第1実施例に於ける回転軸が正・逆両回転したときの潤滑作用手段による被密封流体の流れを示す断面図である。
【図8】本発明に係わるシール装置1と比較例のシール装置30を試験した試験機の半断面図である。
【図9】本発明のシール装置1と比較例のシール装置30Aとの被密封流体の漏れ量を実験したデータのグラフである。
【図10】本発明に関連する第1比較例のシール装置30Aの半断面図である。
【図11】本発明に関連する第2比較例のシール装置30Bの半断面図である。
【図12】本発明に関連する第3比較例のシール装置30Cの半断面図である。
【図13】本発明の関連技術に係わるシール装置の半断面図である。
【符号の説明】
1 シール装置
2 嵌着部
2A 第1リップシール
2B 第1シール部
2C 第1摺動面
4 Oリング
5 第1リップシール
5A 第2シール面
5B 第2シール部
6 潤滑作用手段
6A 潤滑作用凸部
13 支持環
15A 第1補強環
15B 第2補強環
36 シール作用手段
36A 第1シール溝
36B 第2シール溝
50 回転軸
A 第1比較例のシール装置30Aの試験時間に対する被密封流体の漏れ量のグラフである。
B 本発明のシール装置1の試験時間に対する被密封流体の漏れ量のグラフである。
Claims (3)
- ハウジングの嵌合孔に対して密封に保持される嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が回転軸の周面と嵌合する第1シール部を有するゴム又は樹脂材製の第1リップシールと、前記嵌着部に一端部が密着されて被密封流体側の自由端が前記回転軸の周面と密接する第2シール面を有するゴム又は樹脂材製の第2リップシールとを具備し、前記第1シール部の前記回転軸と接面する第1摺動面に前記回転軸が正回転又は逆回転しても前記被密封流体を前記第2シール面側へ導入する潤滑作用手段を有する、ことを特徴とするシール装置。
- 前記第1リップシールは前記第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力が大きいことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
- 前記潤滑作用手段が略軸芯に沿って凸部に形成されていると共に凸部の周方向幅よりも軸方向の長さが長く形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシール装置。
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