JP4330872B2 - シール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールリップにより回転軸をシールするシール装置に関する。更に詳しくは、高圧の被密封流体をシールリップにより耐圧状態でシールすると共に、回転軸の回転方向に関係なくシール出来るようにしたシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明のシール装置に係わる関連技術として、特開閉5−149442号公報、特開閉6−159519号公報及び特開2000−179702号公報が存在する。
【0003】
これらの公報に記載されたシール装置は、コンプレッサの様な高圧条件下で用いられるシールリップ型シールである。そして、被密封流体は冷媒及び冷凍機油が用いられる場合が多く、しかも、所定の高圧に保持されている。更に、回転軸の回転時及び静止時でも流体漏れを防止しなければならない。最近では、右回転用回転軸と、左回転用回転軸との両用に用いられる場合が多く、両用のシール装置がないためにシール能力を向上させることが困難であった。
【0004】
図11は、前述の特開2000−179702号公報に記載のシール装置200を示す半断面図である。
この公報に記載の軸封装置200は、図11に示すように構成されている。この軸封装置200は、ハウジング211の取付孔212に嵌着されて回転軸213との間をシールしている。シールされる被密封流体は、高圧状態あって、しかも、二酸化炭素ガスのような特殊な条件のガス又は液状のものである。この為、軸封装置200は、シールリップ201とシール部208とを一体化したものが採用されている。
【0005】
この軸封装置200は、外周に波状の凸部207を設けた嵌着部202から被密封流体側Aへ筒状のリップ201Aを突出させた形状にシールリップ201が設けられている。そして、このシールリップ201は、ゴム材製であるために、嵌着部202に補強環203が埋設されている。この補強環203は嵌着部202を補強してリップ201Aを支持している。
このゴム材製のシールリップ201と樹脂材製のシール部208との間には、金属薄板206が配置されている。そして、ゴム材製のシールリップ201では、二酸化炭素ガスが透過しやすいので、この金属薄板206により二酸化炭素の透過を防止しようとするものである。このために、金属薄板206は、シールリップ201とシール部208との間で、シールリップ201の大気側Bの全面に貼り付けるような形で介在されている。
【0006】
しかし、この薄板金属のバックアップリング206では、シールリップ201が回転軸213に対して常に密接するように支持することは、構成的にも強度的にも困難である。
又、被密封流体の圧力によりリップ部分204Aが押圧されて回転軸213にべた当たりに圧接して摩耗するのを、このバックアップリング206により防止することは困難である。
更に、バックアップリング206は、薄肉金属であるために、リップ201Aのリップ部分204Aを回転軸213に最適に圧接するように緊迫に拡張して保持することも構成上困難であるから、回転軸213が静止しているときにシール能力を発揮させることは難しい。
【0007】
この為に、シールリップ201の大気側Bに樹脂材製のシール部208が設けられている。このシール部208の回転軸213と接合する内周面には4個の同心溝(又は螺旋溝)208Aが設けられている。この同心溝208Aにより被密封流体をシールするものである。尚、この先行技術ではシール部208の溝は同心溝でも、螺旋溝でも良いと記載されているので、単にシールすればよいことを技術的には意味する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、シール部208に螺旋溝208Aが設けられた場合には、回転軸213が一方に回転するときにしか螺旋溝208Aによるシール効果が生じない。例えば、回転軸213が逆回転するときには被密封流体が漏洩することになる。
一方、シール部208に同心溝208Aが設けられた場合には、正回転・逆回転共に同心溝208Aによるシール効果が発揮されないことが認められている。つまり、同心溝208Aを設けても設けなくとも大きな差は生じない。
【0009】
更に、ゴム材製のシールリップ201のリップ201Aに回転軸213を接合しても、シールリップ201に被密封流体の高圧力を受けると、回転軸213にリップ部分204Aがべた当たりし、そのシール面が全面接触する。この嵌合状態は、リップ部分204Aが回転軸213周面との接触面積を大きくするので、リップ部分204Aの回転軸213との間に潤滑作用がなくなり、リップ部分204Aの摩耗が惹起する。その結果、回転軸213が静止しているときでも被密封流体をシールすることが困難になる。
更に、上述の状態で被密封流体の圧力が高圧に増加すると、シール部の回転軸213周面との摩擦が大きくなり、シール面の摩耗を促進することになる。
【0010】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その発明が解決しようとする技術的課題は、被密封流体が冷媒等の特殊な液化した流体で、しかも、高圧であっても、本発明のシール装置によりシール能力を発揮させることにある。
又、本発明は、回転軸がどちらに回転しても1個のシール装置でシール能力を発揮できるようにさせることにある。
更に、本発明のシール装置は、被密封流体の高圧に対して摺動抵抗を小さくしてシールすると共に、シールリップの耐久能力を向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その技術的解決手段は以下のように構成されている。
【0012】
請求項1に係わる本発明のシール装置は、嵌合孔を有するハウジングと前記ハウジングの嵌合孔に嵌装する軸との間の被密封流体を密封するシール装置であって、ハウジングの嵌合孔に密封に保持される嵌着部に一端部が固着されて被密封流体側の自由端が軸の周面と密接する環状の第1シール面を有するゴム又は樹脂材製の第1リップシールと、嵌着部に一端部が固着されて被密封流体側の自由端が軸の周面と密接する環状の第2シール面を有するゴム又は樹脂材製の第2リップシールとを有し、第1リップシールの第1シール面と第2リップシールの第2シール面とのうちの一方のシール面に軸が正回転するとき被密封流体を被密封流体側へ吐き出す第1シール作用手段を有し、他方のシール面に軸が逆回転するとき被密封流体を被密封流体側へ吐き出す第2シール作用手段を有するものである。
【0013】
この請求項1に係わる本発明のシール装置では、1個のシール装置で、回転軸が正回転する場合と、逆回転する場合との両用に活用できる。そして、このシール装置により効果的に被密封流体をシールすることが可能になる。更に、シール面に設けられたシール作用手段により常にシール面に潤滑作用が生じるから、シール面の摺動抵抗を小さくしてシール面の摩耗が防止される。
特に、第1リップシールと第2リップシールを並列にして2段にし、しかも、正・逆回転時にシールするシール作用手段が隔てた各シール面に設けられているから、被密封流体が高圧であっても、両リップシール間の空間に生じる内圧によりシール能力が発揮される。
又、近年は、回転軸が正・逆回転する機械装置が開発されるにつれて、単品の正回転用のシール装置と逆回転用のシール装置とを別個に組み込んでいるが、両シール装置とも類似するために、シール装置の部品やシール装置自体の組み込みにミスが生じ、被密封流体のシールに大きな問題を生じている。この組み込み部品のミスを確実に防止できる。更に、シール装置の取付空間を小型にできる。
【0014】
請求項2に係わる本発明のシール装置は、第1リップシールは第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力を大きくしたものである。
【0015】
この請求項2に係わる本発明のシール装置では、被密封流体側の第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力が大きくされているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの第1シール面で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。しかも、第1シール面にはシール作用手段が設けられているから、このシール作用手段により被密封流体を被密封流体側へ押し出してシール能力を向上させることが可能になる。更に、第1シール面は硬質ゴム又は樹脂材製であり、しかも、シール面に被密封流体が介在するから摺動抵抗も小さくなる。
【0016】
請求項3に係わる本発明のシール装置は、第1リップシールの一端部と第1シール面との間に環状の傾斜部を有すると共に、第2リップシールの一端部と第2シール面との間に環状の傾斜部を有するものである。
【0017】
この請求項3の本発明のシール装置では、従来例のシール部のように、取付部から直角にシール面が円筒状を成して軸に嵌合すると、摺動抵抗が大きくなる上に、シール作用手段が十分に発揮されないが、傾斜部の自由端部側が軸と嵌合するシール面に形成されてシール面にシール作用手段が設けられているから、シール面が支持部材等で無理に圧接されることなく、傾斜部により弾性に支持されたシール面のシール作用手段のポンピング作用が発揮されて被密封流体の吐き出し効果を奏する。
【0018】
請求項4に係わる本発明のシール装置は、第1シール作用手段及び第2シール作用手段が螺旋溝又は螺旋切込面に形成されているものである。
【0019】
この請求項4に係わる本発明のシール装置では、シール面に螺旋溝又は螺旋切込面が形成されているので、加工が極めて容易であり、生産コストを大きく低減できる。又、螺旋溝又は螺旋切込面は、被密封流体の高圧力に応じて溝の大きさが形成されるから、シール面としてのシール効果と螺旋溝又は螺旋切込面によるシール効果が発揮される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる好ましい実施の形態のシール装置を、その図面に基づいて詳述する。尚、以下に説明する各図面は、設計図を基にした正確な図である。
【0021】
図1は、本発明に係わる第1実施の形態のシール装置を示すものであって、軸に装着されない状態の半断面図である。
図1において、1はシール装置である。シール装置1の取付状態は、図11に示すように取り付けられる。又、シール装置1におけるリップシール5、10の取付状態は、環状のシール面5A、10Aが仮想線で示す軸50に接合するように弾性変形して嵌合する。
【0022】
又、シール装置1は、ハウジングの嵌合孔に嵌着するゴム材製の嵌着部2に形成されている。この嵌着部2の外周面には、凸部状のシール部分が2条に形成されている。又、嵌着部2には、第1補強環15Aが埋設されており、この第1補強環15Aによりハウジングとの嵌着を強固にすると共に、嵌着部2と後述する第1リップシール5及び第2リップシール10が取り付けられる一端部を保持するものである。
【0023】
又、この第1補強環15Aを埋設して被密封流体側へ突出するゴム材製のシールリップ2Aが嵌着部2から回転軸50に向かって筒状に形成されている。このシールリップ2Aの材質は、ゴムに限らず、樹脂にすることも可能である。この場合は第1リップシール及び第2リップシールの材質よりゴム状弾性力を大きくすると良い。
このシールリップ2Aの内端には、シール部2Bが形成されており、このシール部2Bの先端は断面が三角状を成している。このシール部2Bは大気側Bと被密封流体側Aとをシールする。そして、このシール部2Bの先端が回転軸50に密接して軸50が回転しないときにシャープな面圧Pmaxを形成してシールする。このシャ−プな面圧は、回転軸50が静止しているときに、シール部2Bのシール能力を発揮する。しかし、被密封流体が高圧であるために、回転軸50が回転しているときは、第1リップシール5と第2リップシール10側へ微小ずつ被密封流体が漏洩をする。この被密封流体の漏洩は、第1リップシール5及び第2リップシール10のシール面5A,10Aの潤滑作用をする。
【0024】
シールリップ2Aの大気側Bの内周面側には、ほぼシールリップ2A内周面と同様な形状の支持環13が設けられている。この支持環13の外周保持部は嵌着部2に第1リップシール5と共に、第3補強環15Cにより挟持されている。
更に、支持環13の内端は支持部に形成されている、この支持部は断面円弧状を成してシールリップ2Aの回転軸50側へ曲げられた内周面と圧入嵌合して支持するように形成されている。
この支持環13は、金属板を深絞りの加工により、フランジ状の外周保持部を設けた円筒体に形成されている。そして、支持環13はシールリップ2Aに被密封流体の圧力を受けても変形しないで支持する耐圧性の厚さに形成されている。
【0025】
更に、支持環13の大気側Bには、樹脂材製の第1リップシール5が設けられている。この第1シールリップ5は、外周の一端部が径方向を成すリング状の挟持部に形成されており、内周が挟持部から筒状の傾斜部に形成されている。そして、傾斜部の自由端側の内周面が回転軸50と平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第1シール面5Aに形成されている。
【0026】
この第1リップシール5の第1シール面5Aには、軸50が正回転すると被密封流体を被密封流体側へポンピングするねじ状の第1シール溝(総称してシール作用手段と言う)6が設けられている。この第1シール溝6は、溝形状とは限らず軸50が回転すると被密封流体を被密封流体側へポンピングする形状であればよい。これが第1シール溝を含むシール作用手段6である。
【0027】
このシール作用手段6として、第1シール面5Aにメス加工により螺旋状の切込面を設けても良い。この切込面に被密封流体が作用すると切込面は三角状に開いて被密封流体が被密封流体側Aへ押し出され、被密封流体をシールする。この切込面は、図示するように3条とは限らず、必要に応じて5条から8条に形成しても良い。
更に、第1シール面5Aの第1シール角部5B側には周面に沿った多数の円弧状を成す螺旋溝に形成することもできる。
【0028】
また、支持環13の外周支持部と、第1リップシール5の一端部と、第2リップシール10の一端部とは第2補強環15Bと第3補強環15Cを間にして第4補強環15Dを介し嵌着部2の一端部のカシメにより挟持して固定されている。
この嵌着部2に保持された第2リップシール10は、第1リップシール5との間に空間部を設けて第2リップシール10と同様な配列に取り付けられている。この第2リップシール10も樹脂材製である。又、硬質ゴム材製にもすることができる。この空間部は第2リップシール10の第2シール角部10Bが第1リップシール5と間隔を設けている。この間隔は、空間部に被密封流体を溜めるようにして第2シール溝7により被密封流体側へ効果的にポンピングさせるものである。
この第2シールリップ10も、外周一端部が径方向を成すリング状の挟持部に形成されており、内周が挟持部から筒状の傾斜部に形成されている。そして、傾斜部の自由端側の内端面が回転軸50に平行に嵌合し、回転軸50と筒状を成して接合する第2シール面10Aに形成されている。
【0029】
この第2リップシール10の第2シール面10Aには、軸50が逆回転すると被密封流体を被密封流体側Aへポンピングするねじ状の第2シール溝(シール作用手段)7が設けられている。この第2シール溝7は、溝とは限らず軸50が回転すると被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする形状であればよい。これが第2シール溝を含むシール作用手段7である。
このシール作用手段7として、第2シール面10Aにメス加工により螺旋状の切込面を設けても良い。この切込面に被密封流体が作用すると、三角状に分割面が開いて被密封流体を被密封流体側Aへ押し出す。
更に、第2シール面10Aの第2シール角部10B側には周面に沿った多数の螺旋溝を形成することもできる。
図1の第1リップシール5と第2リップシール10は、略同一のゴム又は樹脂状弾性を成すゴム又は樹脂材製であるが、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質は選択される。ゴム材質の場合は、樹脂に近い硬度にする必要がある。そして、第1リップシール5は、第2リップシールのゴム状弾性力を大きくすると良い。
更に、シールリップ2Aと第1リップシール5と第2リップシール10との材質は、第1リップシール5と第2リップシール10とを略同じ材質にしてシールリップ2Aを第1リップシール5及び第2リップシール10よりもゴム状弾性力を大きくすると更に好ましい。又、第1リップシール5は第2リップシール10の材質よりもゴム状弾性力を大きくすると良い。
【0030】
図2は、本発明の第2実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。図2に於いて、図1のシール装置1と相違する点は、第1シール面5Aに対して軸50が正回転転するときに、第1シール面5Aに設けられた第2シール溝7は、被密封流体に対してシール能力が発揮されない。単に、第1シール面5Aによりシールするのみである。従って、被密封流体は、高圧力であるために、軸50が回転中しているときには第2リップシール10側へ微小ずつ漏洩する可能性がある。
しかし、第2シール10Aに設けられた第1シール溝6は、漏洩した被密封流体をポンピングして被密封流体側Aへ押し返す作用をする。この為に、被密封流体は第2リップシール10の第1シール溝6により被密封流体が被密封流体側Aへ押しだされて漏洩が防止される。
【0031】
次に、軸50が逆回転するときは、第1リップシール5の第1シール面5Aに設けられた第2シール溝7により被密封流体を被密封流体側Aへポンピングする。このときは、第2リップシール10の第1シール溝6は、シール作用がなく、第2シール面10Aの面圧でシールするのみである。しかし、第1リップシール5の第1シール面5Aに設けられた第2シール溝7により被密封流体を被密封流体側Aへポンピングするから、被密封流体が漏洩するのを防止する。
この第1シール溝6と第2シール溝7は、図1で説明した第1シール溝6と第2シール溝7の構成と略同様である。又、第1シール溝6と第2シール溝7を含む第1シール作用手段6と第2シール作用手段7も同様に種々のシール溝6、7を含んでいる。
図1の第1リップシール5と第2リップシール10は、略同一のゴム又は樹脂状弾性を成すゴム又は樹脂材製であるが、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質は選択される。ゴム材質の場合は、樹脂に近い硬度にする必要がある。そして、第1リップシール5は、第2リップシールのゴム状弾性力よりも大きくすると良い。
更に、シールリップ2Aと第1リップシール5と第2リップシール10との材質は、第1リップシール5と第2リップシール10とを略同じ材質にしてシールリップ2Aを第1リップシール5と第2リップシール10とよりもゴム状弾性力を大きくすると好ましい。尚、被密封流体側Aから順にシールリップ2Aと、第1リップシール5と、第2リップシール10との材質を大気側に向かって硬質に構成するとシール能力が向上することも認められている。
その他の構成は、図1に示すシール装置1の構成と略同様である。
【0032】
図3は、本発明に係わる第3実施の形態を示すシール装置1の半断面図である。
図3に於いて、図1のシール装置1と相違する点は、図1の嵌着部2とシールリップ2Aと支持環13の代わりに、単品の保持環3を設けると共に、保持環3の環状凹部にゴム材製のOリング4を設けたものである。このOリング4により保持環3とハウジングの嵌着面との間をシールする。この保持環3は、シール装置1の部品構成を少なくする。
第1リップシール5と第2リップシール10は、略同一のゴム又は樹脂状弾性を成すゴム又は樹脂材製であるが、必要に応じて両部品のゴム又は樹脂材質は選択できる。ゴム材質の場合は、被密封流体の高圧との関係から、弾性変形の大きいゴムではなく、硬質のゴム又は樹脂にする必要がある。
又、第1リップシール5の材質を第2リップシールの材質よりもゴム状弾性力を少し大きくすると良い。
その他の構成は、シールリップ2Aと支持部13を除き、図1と略同様である。
【0033】
図4は、本発明に係わる第4実施の形態を示すシール装置の半断面図である。
図4に於いて、図2のシール装置1と相違する点は、図2の嵌着部2とシールリップ2Aと支持環13の代わりに、保持環3を設けると共に、保持環3の環状凹部にゴム材製のOリング4を設けたものである。
その他の構成は、図2と略同様である。尚、樹脂材製の第1リップシール5は、樹脂材製の第2リップシール10の材質よりもゴム状の弾性材にすることもできる。
【0034】
図3と図4のシール装置は、シールリップ2Aにより被密封流体をシールすることなく、直接に第1リップシール5と第2リップシール10により被密封流体をシールするものである。このシール装置1の構成では、軸50が回転しているときに、第1リップシール5と第2リップシール10との協働作用により、被密封流体をシールする効果が発揮される。又、シール面5A、10Aは被密封流体の潤滑により摺動抵抗を低減する。
【0035】
図7から図10のシール装置30A、30B、30C、30Dは、本発明の比較例の半断面図である。
図7は、第1比較例のシール装置30Aである。シール装置30Aの嵌着部32には補強環33Aが埋設されて嵌着部32を補強している。そして、嵌着部32に保持された保持板33B及び33Cにより樹脂材製のリップシール31が取り付けられた一端部から裁頭円錐環に形成されている。このリップシール31には、軸50と嵌合するシール面31Aが設けられていると共に、被密封流体を先端でシールするシール角部31Bが設けられている。
このように構成されたシール装置30Aのシール面31Aは、軸50に嵌合すると、図1に示すシール装置1の第1リップシール5と同様に略円筒状に変形して嵌合する。
【0036】
図8に示す第2比較例のシール装置30Bは、シール面31Aに図1に示す第1シール溝6を一方のシール溝34とし、又、同じ第2シール溝7を他方の溝35として周面の2個所で交差するように設けたものである。シール装置30Bのその他の構成は、図7のシール装置30Aと略同様に構成されている。
【0037】
図9に示す第3比較例のシール装置30Cは、シール面31Aに図1の第2シール溝7を他方のシール溝35として被密封流体側Aに設けると共に、図1の第1シール溝6を一方のシール溝34として大気側Bに設けたものである。シール装置30Cのその他の構成は、図7のシール装置30Aと略同様に構成されている。
【0038】
図10に示す第4比較例のシール装置30Dは、図7に示すシール装置30Aのシール面31Aに径方向を成す同心のシール溝36を複数で並列に設けたものである。
その他の構成は図7に示すシール装置30Aと略同様である。
【0039】
次に図1から図4に示す本発明の第1実施の形態から第4実施の形態のシール装置1と第1比較例から第4比較例のシール装置30A、30B、30C、30Dを試験した試験機40の構造を簡単に説明する。
この試験機はハウジング46と回転軸47との間にハウジング46のエンドカバー41により油室Oを形成する。更に、油室Oの両側に回転軸47と取付空間を設けて嵌合するシール装置1、1Aの第1保持部品43Aと第2保持部品43Bが取り付けられている。この第1及び第2保持部品43A、43Bはハウジング46に取付部品42、44を介して固定されている。
これらの各部品間には油室O内の油やガスが漏洩しないようにOリング45、46が設けられている。又、油室Oに連通する流体通路Gから油に対して一定圧力の窒素ガスが圧送するように成されている。
【0040】
試験機40の第1保持部品43Aには、試験するシール装置1が取り付けられる。又、第2保持部品43Bにはダミー用のシール装置1Aが取り付けられる。
そして、試験機40の試験条件は下記の通りである。
1)回転軸径は、14.27mm
2)回転軸47の回転数は、6000rpm
3)被密封流体は、PAG油
4)油室Oの圧力は、0.4MPa
5)油温は80°C
【0041】
本発明のシール装置は、特に、図1に示すシール装置1と図4に示すシール装置1について繰り返し試験した。又、比較例のシール装置30A、30B、30C、30Dについても同様の条件で実施した。
【0042】
本発明の試験の結果
試験結果は図5に示す通りである。
図5に於いて、
Aは、本発明のシール装置1
Bは、比較例4のシール装置30D(図10に示す)
Cは、比較例2のシール装置30B(図8に示す)
Dは、比較例1のシール装置30A(図7に示す)
Eは、比較例3シール装置30C(図9に示す)
【0043】
本発明のシール装置1は、実験の結果、図1と図2に示すシール装置1に対し図3と図4に示すシール装置1とのシール能力差はほとんどない。しかし、図1と図2のシール装置1は、回転軸50が静止しているときのシール能力が図3及び図4に示すシール装置1に比べてやや優れる。
又、図3と図4に示すシール装置1は図1及び図2に示すシール装置1に対して摩擦係数が小さくなる。この為にシール面5A、10Aの摺動抵抗が小さく、耐摩耗能力にすぐれる。
又、シール作用手段6、7を各リップシール5、10に設けると共に、各リップシール5、10の間に空間を設けたものが、シール能力に優れることが認められる。
回転軸50の回転時にシール能力を発揮しないシール作用手段6、7は、溝無しシール面と同等のシール効果を奏する。この為に、シール面5A、10Aに被密封流体の潤滑膜が形成されるから、摺動抵抗を低減して耐摩耗性を発揮する。そして、そのシール面5A、10Aから漏洩した被密封流体は、次の大気側Bのシール装置に於けるシール面5A、10Aのシール作用手段6、7により被密封流体側Aへ押し返すから、シール面5A、10Aのシール能力と共に、摺動抵抗を低減する。
【0044】
【発明の効果】
本発明に係わるシール装置によれば、以下に記載するような優れた効果を奏する。
【0045】
シール装置は、回転軸が正回転しても、逆回転しても、1個で被密封流体を効果的にシールすることが可能になる。そして、シール面に於けるシール作用手段により常にシール面に潤滑作用が生じるから、シール面の摺動抵抗を小さくしてシール面の摩耗が防止される効果を奏する。
特に、第1リップシールと第2リップシールとが並列にされて間隔を設けた2段に構成してあるから、正・逆回転時にシールするシール面のシール作用手段が隔てた空間部を介して、被密封流体が高圧であってもシール能力を発揮する。
又、第1リップシールと第2リップシールが一体に構成されているから、組立機械で部品を組立てることが可能になる。この為に、同じ第1リップシールと第1リップシールを二重に機械装置へ組み込むようなミスを確実に防止できる。更に、シール装置の部品の簡素化は、製造コストを低減できる効果を奏する。
【0046】
又、第1リップシールが第2リップシールの材質よりもゴム状弾性の樹脂材に形成されているから、回転軸が停止しているときにも、この第1リップシールの第1シール面で被密封流体のシール能力を向上させることが可能になる。しかも、第1シール面には、シール作用手段が設けられているから、被密封流体を被密封流体側へ押し返してシール能力を向上することが可能になる。更に、第1シール面は硬質のゴム状弾性材製であり、シール面に被密封流体が介在するから摺動抵抗も小さくなる。
【0047】
第1リップシールと第2リップシールは、傾斜部より軸側が軸と嵌合する筒状のシール面に形成され、このシール面にシール作用手段が設けられているから、シール面が支持部材等で無理に支持されることなく、傾斜部で弾性に支持されたシール面のシール作用手段により被密封流体の吐き出し効果が発揮される効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係わるシール装置の回転軸に装着前の半断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係わるシール装置の回転軸に装着前の半断面図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係わるシール装置の回転軸に装着前の半断面図である。
【図4】本発明の第4実施の形態に係わるシール装置の回転軸に装着前の半断面図である。
【図5】本発明のシール装置1と比較例のシール装置30との被密封流体の漏れ量を実験したデータのグラフである。
【図6】本発明に係わるシール装置を試験した試験機の半断面図である。
【図7】第1比較例のシール装置の半断面図である。
【図8】第2比較例のシール装置の半断面図である。
【図9】第3比較例のシール装置の半断面図である。
【図10】第4比較例のシール装置の半断面図である。
【図11】本発明の関連技術に係わるシール装置の半断面図である。
【符号の説明】
1 シール装置
2 嵌着部
2A シールリップ
2B シール部
3 保持環
4 Oリング
5 第1リップシール
5A シール面
5B シール角部
6 第1シール溝(第1シール作用手段)
7 第2シール溝(第2シール作用手段)
10 第2リップシール
10A 第2シール面
10B 第2シール角部
13 支持環
15A 第1補強環
15B 第2補強環
15C 第3補強環
15D 第4補強環
50 回転軸
A 本発明のシール装置1
B 第4比較例のシール装置30D
C 第2比較例のシール装置30B
D 第1比較例のシール装置30A
E 第3比較例のシール装置30C
Claims (2)
- 嵌合孔を有するハウジングと前記ハウジングの嵌合孔に嵌装する回転軸との間の被密封流体を密封するシール装置において、
前記ハウジングの嵌合孔に密封に保持されるゴム材製の嵌着部から前記回転軸に向かい、被密封流体側へ突出する筒状のシールリップと、
前記嵌着部に一端部が固着されて被密封流体側の自由端が前記回転軸の周面と密接する第1シール面を有する樹脂材製で環状の第1リップシールと、
前記嵌着部に一端部が固着されて被密封流体側の自由端が前記回転軸の周面と密接する第2シール面を有する樹脂材製で環状の第2リップシールと、を有し、
前記シールリップの内端には、大気側と被密封流体側とをシールするシール部が形成され、
前記第1リップシールの第1シール面と前記第2リップシールの第2シール面とのうちの一方のシール面に前記回転軸が正回転するとき被密封流体を被密封流体側へ吐き出す螺旋溝又は螺旋切込みが形成された第1シール作用手段を有し、
前記他方のシール面に前記回転軸が逆回転するとき被密封流体を被密封流体側へ吐き出す螺旋溝又は螺旋切込みが形成された第2シール作用手段を有するシール装置であって、
前記第1リップシールと前記第2リップシールとは同じ樹脂材質であり、
前記シールリップのゴム状弾性力は、前記第1シールリップ及び前記第2シールリップの弾性力よりも大きいことを特徴とするシール装置。 - 前記第1リップシール(5)は前記第2リップシール(10)より被密封流体側に配置され、前記第1リップシール(5)の弾性力は前記第2リップシール(10)の弾性力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
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