JP2004190174A - 棒状ポリイミドおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、および機械特性に優れた棒状の芳香族ポリイミドを製造するを提供する。
【解決手段】ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)を主成分とし、アスペクト比が5以上の棒状形状からなる棒状ポリイミド。ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒で再沈殿することによる棒状ポリイミドの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)を主成分とし、アスペクト比が5以上の棒状形状からなる棒状ポリイミド。ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒で再沈殿することによる棒状ポリイミドの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒状ポリイミドおよびその製造方法に関する。更に詳しくは、耐熱性に優れた棒状ポリイミドおよびその製造方法に関する。棒状ポリイミドは直線性および剛直性が高いため、耐熱性を有する高弾性率、高強度の等方性補強材料として利用される。
【0002】
【従来の技術】
近年高性能材料の要求から複合材料が注目されている。そのため補強剤として、高弾性率、高強度を有するグラファイト繊維やポリ(パラフェニレンフタラミド)繊維などの全芳香族ポリアミド繊維が開発されている。しかしながら、これらは長繊維であり、該長繊維をたとえ切断してもその長さには限界があり、例えば100μm以下のものを得ることは困難である。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、繊維長をコントロールすることができる有機高分子ウィスカーが知られている。ウィスカーは一般にアスペクト比(軸比)が10以上の短繊維であり、一次元的な補強効果しか示さないグラファイト、アラミド繊維とは異なり、そのアスペクト比を調製することで長さ100μm以上、太さ5μm以下の均一な短繊維に成形可能で、そのため被強化素材を二次元的かつ等方的に強化することができる。さらに、高分子ウィスカーは、従来のチタン酸バリウム等の無機系ウィスカーと比べて軽比重であり、高い比強度を発現することができる。従来高分子ウィスカーとして、ポリ(オキシメチレン)や特定のエポキシ、ポリエステル、ポリウレタン系樹脂が報告されているが、これらは低融点であり、強化剤として耐熱性に課題があった。
【0004】
上記の問題を解決する耐熱性高分子ウィスカーとして、ポリ(p−オキシベンゾイル)、ポリ(2−オキシ−6−ナフトイル)、ポリ(p−メルカプトベンゾイル)の高分子ウィスカーが報告されている。(特許文献1〜4参照)。これら高分子ウィスカーの製造方法としては、対応するモノマーを高沸点パラフィン溶媒中、希薄条件下に高温溶液重合することで溶液からウィスカー結晶として析出、単離する方法である。
【0005】
一方、耐熱性高分子の一つとしてポリイミドが知られており、その高い耐熱性や機械的物性から幅広く開発が成されている。とりわけ全芳香族ポリイミドはその剛直構造から特に高い耐熱性や機械的物性を発揮することが期待されている。そのような芳香族ポリイミドウィスカーの製造方法としては、モノマー成分である酸とアミンからなる塩をウィスカー結晶化しておき、これを結晶状態で重合する方法が知られている。(特許文献5)
【0006】
しかし、従来技術においては、ウィスカー形成モノマーを希薄条件、あるいは特殊な形態に成形後に重合して単離する方法が取られており、その低い生産性のため、工業化するには困難であるという問題があった。また、上記芳香族ポリイミドウィスカーの製造方法では、ポリイミド前駆体である酸とジアミンからなる塩は、ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)のような剛直系ポリイミドの場合、溶解性が低く合成することは困難であり、剛直系ポリイミドのウィスカーはこれまで知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−285217号公報 頁1〜4
【0008】
【特許文献2】
特開昭61−136516号公報 頁1〜2
【0009】
【特許文献3】
特開昭61−276819号公報 頁1〜5
【0010】
【特許文献4】
特開平6−80781号公報 頁1〜2
【0011】
【特許文献5】
特開平5−32498号公報 頁2
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり耐熱性に優れた高次構造の制御された剛直系棒状ポリイミドおよび簡便で、効率的に製造可能な方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒に再沈殿するという簡便な方法で、耐熱性、および機械特性に優れた棒状の芳香族ポリイミドを製造する方法を見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
1. ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)を主成分とし、アスペクト比が5以上の棒状ポリイミド。
2. 棒状ポリイミドの繊維径dが50nm < d < 100μmである上記記載の棒状ポリイミド。
3. ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒で再沈殿することによる上記記載の棒状ポリイミドの製造方法。
4. 貧溶媒が水であることを特徴とする上記記載の棒状ポリイミドの製造方法。
【0015】
棒状ポリイミドの繊維長とは、個々の棒状ポリイミドの長さ方向最大寸法を意味し、繊維径とは、個々の棒状ポリイミドの横断面最大寸法を意味する。アスペクト比は、この値が大きいほど長く伸びた形態を意味する。この棒状ポリイミドの繊維長は好ましくは1〜1000μm、繊維径は50nm〜100μmであり、より好ましくは、繊維長は1〜100μm、繊維径は100nm〜50μmである。この棒状ポリイミドは、ミクロン単位の微細で剛直な棒状構造物であり、電子顕微鏡を用いて観察すると無機ウィスカーに似た外観を有する。このように高い直線性を有する微細剛直構造を有することにより、優れたフィラー機能を発現しうる。
【0016】
本発明において、芳香族ポリイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により、前駆体であるポリアミック酸を得、次いで熱によりイミド閉環するか、または無水酢酸といった脱水剤とピリジンといったアミン触媒を用いる方法、カルボジイミド、亜リン酸トリフェニル等の化学閉環剤を用いて化学閉環する方法等を例示することができる。
【0017】
ジアミン成分としては、p−フエニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン基あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。
【0018】
使用するジアミンとして好ましくは、p−フェニレンジアミンおよび上記のごときそれと異なる芳香族ジアミンとの組み合わせからなり、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、80モル%を超える割合すなわちそれとは異なる芳香族ジアミンが20モル%未満からなり、さらに好ましくはp−フェニレンジアミン単独で用いることが好ましい。
【0019】
テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、等が挙げられる。
【0020】
使用するテトラカルボン酸成分として好ましくは、ピロメリット酸二無水物および上記のごときそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組み合わせからなり、ピロメリット酸二無水物は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合すなわちそれとは異なる芳香族ジアミンが20モル%未満からなり、さらに好ましくは、ピロメリット酸無水物単独で使用することが好ましい。
【0021】
ポリアミド酸について、芳香族ジアミンが、p−フエニレンジアミン成分100モル%であり、芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸成分100モル%であることが最も好ましい。
【0022】
上記いずれの方法においてもポリアミック酸を得るためには前記の有機溶媒中、ジアミンの使用量が酸無水物のモル数に対する比として好ましくは0.5〜1.5であり、より好ましくは0.9〜1.1で反応させポリアミック酸とすることが好ましい。
【0023】
このポリアミック酸においてポリマーの末端を封止することも可能である。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては無水フタル酸及びその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその置換体、無水コハク酸及びその置換体、アミン成分としてはアニリン及びその置換体が挙げられるがこれに限るものではない。
【0024】
上記ポリアミック酸の重合に用いられる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等があげられる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。
【0025】
ポリアミック酸溶液のポリマー濃度としては、固形分濃度として0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜25重量%である。
【0026】
ポリアミック酸の重合条件としては、不活性ガス雰囲気下で−20〜50℃、好ましくは30℃以下で攪拌することで、目的とするポリアミック酸を重合することができる。
【0027】
続いて、得られたポリアミック酸を公知の熱的および化学的イミド化することによりポリイミドを得ることができる。
【0028】
本発明において、芳香族ポリイミド硫酸溶液に用いられる硫酸としては、濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸など挙げられ、硫酸溶液中におけるポリイミドの固形分濃度としては、特に限定するものではないが、ポリマーの分子量により適宜選択され、好ましくは0.01〜30重量%である。
【0029】
本発明において、上記得られた芳香族ポリイミド硫酸溶液を芳香族ポリイミドの貧溶媒に添加し、再沈殿することにより、棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0030】
上記貧溶媒としては、芳香族ポリイミドの貧溶媒を用いることができるが、取り扱いの容易ことから水が特に好ましい。芳香族ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒に添加し、中性になるまで数回再沈溶媒で洗浄するという簡便な方法により、本発明の棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0031】
貧溶媒の使用量としては、特に制限はないが、例えばポリイミド硫酸溶液1重量部に対して水50重量部を使用して再沈殿させたのち、上澄み液を除去し、さらに水を加えて洗浄することを繰り返すことで棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0032】
再沈殿を行う際の温度については、特に制限はなく、貧溶媒の融点以上、沸点以下で行うことができる。
【0033】
このような簡便な操作を行うことで、機械的物性、耐熱性に優れた棒状剛直系ポリイミドを得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、機械的物性、耐熱性に優れ、高次構造の制御された剛直系棒状ポリイミドを作製することができる。また本発明の製造方法は、高濃度条件下においても、再沈殿法という簡便な方法で、棒状の芳香族ポリイミドを得ることが可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲が限定されるものではない。
【0036】
なおポリアミック酸の対数粘度は、NMP中ポリマー濃度0.5g/100mlで35℃で測定したものである。
【0037】
棒状ポリイミドの形態は走査型電子顕微鏡(日立s−510)により観察した。
【0038】
また、構造同定にはNicolet Magna 750赤外分光器を用いて行った。
【0039】
[実施例1]
(ア)ポリアミック酸の作製
温度計・撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、乾燥アセトン300mlを投入した。続いて、無水ピロメリット酸(PMDA)37.6gを上記アセトンに添加し、スラリー状溶液を調製した後、パラフェニレンジアミン(PPD)18.5gを室温で添加して、6時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過して回収したのち、60℃3時間減圧乾燥、続いて120℃3時間減圧乾燥してポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸の対数粘度は0.34dl/gであった。
【0040】
(イ)ポリイミド硫酸溶液の作製
温度計・攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記のポリアミック酸を投入し、続いてポリアミック酸10gに対して濃硫酸(98%)1Lを添加し、3時間攪拌した。ポリアミック酸を硫酸に溶解することで、ポリアミック酸が脱水反応によりイミド化することは、赤外吸収スペクトルにより確認した。上記ポリイミド硫酸溶液を大量の蒸留水に添加し、沈殿物を蒸留水で数回洗浄後、回収して棒状の白色固体を得た。この固体は、融点測定装置により500℃まで加熱しても、融解は確認されず非常に耐熱性が高いことがわかった。得られた棒状白色固体の赤外吸収スペクトル(図1)、蛍光顕微鏡写真(図2)、走査型電子顕微鏡写真(図3)を示す。赤外吸収スペクトルの結果から、棒状白色固体がポリイミドであることが確認された。顕微鏡写真から、平均繊維長200μm、平均繊維径8μmであった。
【0041】
[実施例2]
実施例1でポリイミド硫酸溶液の調製をポリアミック酸40gに対して濃硫酸(98%)1Lとした以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた棒状ポリイミド白色固体は、平均繊維長50μm、平均繊維径1μであり、赤外吸収スペクトルからポリイミドであることを確認した。図4に走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の蛍光顕微鏡写真(×100)である。
【図3】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の走査型電子顕微鏡写真(×200)である。
【図4】実施例2で得られた棒状ポリイミド白色固体の走査型電子顕微鏡写真(×1000)である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒状ポリイミドおよびその製造方法に関する。更に詳しくは、耐熱性に優れた棒状ポリイミドおよびその製造方法に関する。棒状ポリイミドは直線性および剛直性が高いため、耐熱性を有する高弾性率、高強度の等方性補強材料として利用される。
【0002】
【従来の技術】
近年高性能材料の要求から複合材料が注目されている。そのため補強剤として、高弾性率、高強度を有するグラファイト繊維やポリ(パラフェニレンフタラミド)繊維などの全芳香族ポリアミド繊維が開発されている。しかしながら、これらは長繊維であり、該長繊維をたとえ切断してもその長さには限界があり、例えば100μm以下のものを得ることは困難である。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、繊維長をコントロールすることができる有機高分子ウィスカーが知られている。ウィスカーは一般にアスペクト比(軸比)が10以上の短繊維であり、一次元的な補強効果しか示さないグラファイト、アラミド繊維とは異なり、そのアスペクト比を調製することで長さ100μm以上、太さ5μm以下の均一な短繊維に成形可能で、そのため被強化素材を二次元的かつ等方的に強化することができる。さらに、高分子ウィスカーは、従来のチタン酸バリウム等の無機系ウィスカーと比べて軽比重であり、高い比強度を発現することができる。従来高分子ウィスカーとして、ポリ(オキシメチレン)や特定のエポキシ、ポリエステル、ポリウレタン系樹脂が報告されているが、これらは低融点であり、強化剤として耐熱性に課題があった。
【0004】
上記の問題を解決する耐熱性高分子ウィスカーとして、ポリ(p−オキシベンゾイル)、ポリ(2−オキシ−6−ナフトイル)、ポリ(p−メルカプトベンゾイル)の高分子ウィスカーが報告されている。(特許文献1〜4参照)。これら高分子ウィスカーの製造方法としては、対応するモノマーを高沸点パラフィン溶媒中、希薄条件下に高温溶液重合することで溶液からウィスカー結晶として析出、単離する方法である。
【0005】
一方、耐熱性高分子の一つとしてポリイミドが知られており、その高い耐熱性や機械的物性から幅広く開発が成されている。とりわけ全芳香族ポリイミドはその剛直構造から特に高い耐熱性や機械的物性を発揮することが期待されている。そのような芳香族ポリイミドウィスカーの製造方法としては、モノマー成分である酸とアミンからなる塩をウィスカー結晶化しておき、これを結晶状態で重合する方法が知られている。(特許文献5)
【0006】
しかし、従来技術においては、ウィスカー形成モノマーを希薄条件、あるいは特殊な形態に成形後に重合して単離する方法が取られており、その低い生産性のため、工業化するには困難であるという問題があった。また、上記芳香族ポリイミドウィスカーの製造方法では、ポリイミド前駆体である酸とジアミンからなる塩は、ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)のような剛直系ポリイミドの場合、溶解性が低く合成することは困難であり、剛直系ポリイミドのウィスカーはこれまで知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−285217号公報 頁1〜4
【0008】
【特許文献2】
特開昭61−136516号公報 頁1〜2
【0009】
【特許文献3】
特開昭61−276819号公報 頁1〜5
【0010】
【特許文献4】
特開平6−80781号公報 頁1〜2
【0011】
【特許文献5】
特開平5−32498号公報 頁2
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり耐熱性に優れた高次構造の制御された剛直系棒状ポリイミドおよび簡便で、効率的に製造可能な方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、芳香族ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒に再沈殿するという簡便な方法で、耐熱性、および機械特性に優れた棒状の芳香族ポリイミドを製造する方法を見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
1. ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)を主成分とし、アスペクト比が5以上の棒状ポリイミド。
2. 棒状ポリイミドの繊維径dが50nm < d < 100μmである上記記載の棒状ポリイミド。
3. ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒で再沈殿することによる上記記載の棒状ポリイミドの製造方法。
4. 貧溶媒が水であることを特徴とする上記記載の棒状ポリイミドの製造方法。
【0015】
棒状ポリイミドの繊維長とは、個々の棒状ポリイミドの長さ方向最大寸法を意味し、繊維径とは、個々の棒状ポリイミドの横断面最大寸法を意味する。アスペクト比は、この値が大きいほど長く伸びた形態を意味する。この棒状ポリイミドの繊維長は好ましくは1〜1000μm、繊維径は50nm〜100μmであり、より好ましくは、繊維長は1〜100μm、繊維径は100nm〜50μmである。この棒状ポリイミドは、ミクロン単位の微細で剛直な棒状構造物であり、電子顕微鏡を用いて観察すると無機ウィスカーに似た外観を有する。このように高い直線性を有する微細剛直構造を有することにより、優れたフィラー機能を発現しうる。
【0016】
本発明において、芳香族ポリイミドは、公知の方法によって製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により、前駆体であるポリアミック酸を得、次いで熱によりイミド閉環するか、または無水酢酸といった脱水剤とピリジンといったアミン触媒を用いる方法、カルボジイミド、亜リン酸トリフェニル等の化学閉環剤を用いて化学閉環する方法等を例示することができる。
【0017】
ジアミン成分としては、p−フエニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン基あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。
【0018】
使用するジアミンとして好ましくは、p−フェニレンジアミンおよび上記のごときそれと異なる芳香族ジアミンとの組み合わせからなり、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、80モル%を超える割合すなわちそれとは異なる芳香族ジアミンが20モル%未満からなり、さらに好ましくはp−フェニレンジアミン単独で用いることが好ましい。
【0019】
テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、等が挙げられる。
【0020】
使用するテトラカルボン酸成分として好ましくは、ピロメリット酸二無水物および上記のごときそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組み合わせからなり、ピロメリット酸二無水物は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合すなわちそれとは異なる芳香族ジアミンが20モル%未満からなり、さらに好ましくは、ピロメリット酸無水物単独で使用することが好ましい。
【0021】
ポリアミド酸について、芳香族ジアミンが、p−フエニレンジアミン成分100モル%であり、芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸成分100モル%であることが最も好ましい。
【0022】
上記いずれの方法においてもポリアミック酸を得るためには前記の有機溶媒中、ジアミンの使用量が酸無水物のモル数に対する比として好ましくは0.5〜1.5であり、より好ましくは0.9〜1.1で反応させポリアミック酸とすることが好ましい。
【0023】
このポリアミック酸においてポリマーの末端を封止することも可能である。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては無水フタル酸及びその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその置換体、無水コハク酸及びその置換体、アミン成分としてはアニリン及びその置換体が挙げられるがこれに限るものではない。
【0024】
上記ポリアミック酸の重合に用いられる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の水溶性エーテル化合物、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の水溶性アルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等の水溶性ケトン系化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等の水溶性ニトリル化合物等があげられる。これらの溶媒は2種以上の混合溶媒として使用することも可能であり、特に制限されることはない。
【0025】
ポリアミック酸溶液のポリマー濃度としては、固形分濃度として0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜25重量%である。
【0026】
ポリアミック酸の重合条件としては、不活性ガス雰囲気下で−20〜50℃、好ましくは30℃以下で攪拌することで、目的とするポリアミック酸を重合することができる。
【0027】
続いて、得られたポリアミック酸を公知の熱的および化学的イミド化することによりポリイミドを得ることができる。
【0028】
本発明において、芳香族ポリイミド硫酸溶液に用いられる硫酸としては、濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸など挙げられ、硫酸溶液中におけるポリイミドの固形分濃度としては、特に限定するものではないが、ポリマーの分子量により適宜選択され、好ましくは0.01〜30重量%である。
【0029】
本発明において、上記得られた芳香族ポリイミド硫酸溶液を芳香族ポリイミドの貧溶媒に添加し、再沈殿することにより、棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0030】
上記貧溶媒としては、芳香族ポリイミドの貧溶媒を用いることができるが、取り扱いの容易ことから水が特に好ましい。芳香族ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒に添加し、中性になるまで数回再沈溶媒で洗浄するという簡便な方法により、本発明の棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0031】
貧溶媒の使用量としては、特に制限はないが、例えばポリイミド硫酸溶液1重量部に対して水50重量部を使用して再沈殿させたのち、上澄み液を除去し、さらに水を加えて洗浄することを繰り返すことで棒状の芳香族ポリイミドを得ることができる。
【0032】
再沈殿を行う際の温度については、特に制限はなく、貧溶媒の融点以上、沸点以下で行うことができる。
【0033】
このような簡便な操作を行うことで、機械的物性、耐熱性に優れた棒状剛直系ポリイミドを得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、機械的物性、耐熱性に優れ、高次構造の制御された剛直系棒状ポリイミドを作製することができる。また本発明の製造方法は、高濃度条件下においても、再沈殿法という簡便な方法で、棒状の芳香族ポリイミドを得ることが可能である。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただしこれらの実施例は本発明の範囲が限定されるものではない。
【0036】
なおポリアミック酸の対数粘度は、NMP中ポリマー濃度0.5g/100mlで35℃で測定したものである。
【0037】
棒状ポリイミドの形態は走査型電子顕微鏡(日立s−510)により観察した。
【0038】
また、構造同定にはNicolet Magna 750赤外分光器を用いて行った。
【0039】
[実施例1]
(ア)ポリアミック酸の作製
温度計・撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、乾燥アセトン300mlを投入した。続いて、無水ピロメリット酸(PMDA)37.6gを上記アセトンに添加し、スラリー状溶液を調製した後、パラフェニレンジアミン(PPD)18.5gを室温で添加して、6時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過して回収したのち、60℃3時間減圧乾燥、続いて120℃3時間減圧乾燥してポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸の対数粘度は0.34dl/gであった。
【0040】
(イ)ポリイミド硫酸溶液の作製
温度計・攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記のポリアミック酸を投入し、続いてポリアミック酸10gに対して濃硫酸(98%)1Lを添加し、3時間攪拌した。ポリアミック酸を硫酸に溶解することで、ポリアミック酸が脱水反応によりイミド化することは、赤外吸収スペクトルにより確認した。上記ポリイミド硫酸溶液を大量の蒸留水に添加し、沈殿物を蒸留水で数回洗浄後、回収して棒状の白色固体を得た。この固体は、融点測定装置により500℃まで加熱しても、融解は確認されず非常に耐熱性が高いことがわかった。得られた棒状白色固体の赤外吸収スペクトル(図1)、蛍光顕微鏡写真(図2)、走査型電子顕微鏡写真(図3)を示す。赤外吸収スペクトルの結果から、棒状白色固体がポリイミドであることが確認された。顕微鏡写真から、平均繊維長200μm、平均繊維径8μmであった。
【0041】
[実施例2]
実施例1でポリイミド硫酸溶液の調製をポリアミック酸40gに対して濃硫酸(98%)1Lとした以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた棒状ポリイミド白色固体は、平均繊維長50μm、平均繊維径1μであり、赤外吸収スペクトルからポリイミドであることを確認した。図4に走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の蛍光顕微鏡写真(×100)である。
【図3】実施例1で得られた棒状ポリイミド白色固体の走査型電子顕微鏡写真(×200)である。
【図4】実施例2で得られた棒状ポリイミド白色固体の走査型電子顕微鏡写真(×1000)である。
Claims (4)
- ポリ(パラフェニレンピロメリットイミド)を主成分とし、アスペクト比が5以上の棒状ポリイミド。
- 棒状ポリイミドの繊維径dが50nm < d < 100μmである請求項1記載の棒状ポリイミド。
- ポリイミド硫酸溶液を貧溶媒で再沈殿することによる請求項1〜2のいずれかに記載の棒状ポリイミドの製造方法。
- 貧溶媒が水であることを特徴とする請求項3記載の棒状ポリイミドの製造方法。
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JP2010180494A (ja) * | 2009-02-04 | 2010-08-19 | Ube Ind Ltd | 高耐熱性ポリイミド繊維およびその製造方法 |
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