JP2004187468A - 電気負荷駆動システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】昇圧コンバータCONV1により昇圧した電圧を平滑コンデンサCに蓄え、これをインバータINV1、INV2により所定の交流電流としてモータMG1、MG2に電流量供給する。ここで、昇圧コンバータCONV1におけるスイッチのPWM制御における搬送波と、インバータINV1、INV2のスイッチのPWM制御における搬送波の位相または周波数を調整することで、平滑コンデンサCに出入りするインバータINV1、INV2からのパルス電流と昇圧コンバータCONV1からのパルス電流を相殺して、コンデンサCに出入りする電流の大きさを減少する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部のスイッチング素子をオンオフして低圧直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、この昇圧コンバータからの高圧直流電圧を保持平滑する平滑コンデンサと、この平滑コンデンサに保持された高圧直流電圧を受け、内部のスイッチング素子をオンオフすることにより所定の交流電圧を電気負荷に供給するインバータと、を含む電気負荷駆動システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の機器の動力源として交流モータが広く利用されており、電気自動車や、ハイブリッド自動車などにおいても、通常は電池からの直流電力をインバータで所望の交流電力に変換してモータに供給するシステムが採用されている。このシステムによって、出力トルクの広範囲な制御が可能となり、また回生制動による電力を電池の充電に利用できるというメリットもある。
【0003】
ここで、大出力のモータの電源としては高電圧のものが効率がよく、電気自動車やハイブリッド自動車では、そのインバータの入力側に接続する主電池として、数100Vという高電圧のものを利用している。
【0004】
一方、大電圧の電池は、多くのセルを直列接続して得なければならず、電池が大型化し、またセル間のバラツキが大きいと、一部のセルのみの過充電や過放電が生じ、メンテナンスが難しいなどの問題がある。
【0005】
そこで、DCDCコンバータを利用し、低圧電池の出力電圧を昇圧することにより高電圧にしてインバータに供給するシステムが提案されている。このシステムによって、電池自体は低電圧として、インバータ入力電圧を高電圧にできる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、インバータの入力電圧が変動すると、モータ駆動電流を安定させることができないため、インバータの入力側にはコンデンサが設けられ、インバータ入力電圧を安定化している。
【0007】
特に、インバータは通常PWM(パルス幅変調)制御されるため、ここに流れる電流はパルス的な電流となる。従って、平滑コンデンサがこのパルス状の電流による電圧変動を吸収している。
【0008】
ところが、上述のように、昇圧コンバータを設けた場合、この昇圧コンバータもPWM制御される。従って、コンデンサには、インバータによるパルス状の電流と、昇圧コンバータによるパルス状電流の両方が出入りする。このため、両電流が重なるときには、パルス状の成分が非常に大きくなり、電圧変動を抑制するために大きなコンデンサが必要になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、インバータによるパルス状の電流と昇圧コンバータによるパルス状電流を効果的に互いに打ち消しあうことができる電気負荷駆動システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内部のスイッチング素子をオンオフして低圧直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、この昇圧コンバータからの高圧直流電圧を保持平滑する平滑コンデンサと、この平滑コンデンサに保持された高圧直流電圧を受け、内部のスイッチング素子をオンオフすることにより所定の交流電圧を電気負荷に供給するインバータと、を含む電気負荷駆動システムにおいて、前記インバータおよび前記昇圧コンバータは、内部のスイッチング素子をPWM制御してその出力を制御するとともに、前記インバータのスイッチング素子のPWM制御する基本周波数を決定するインバータ用PWM搬送波と、前記昇圧コンバータのスイッチング素子をPWM制御する基本周波数を決定するコンバータ用PWM搬送波とを制御する制御回路を設け、この制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波と、前記コンバータ用PWM搬送波とを同期させると共に、所定量位相をずらせるかまたは周波数を異ならせることで互いに異なるものとすることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明によれば、インバータ用PWM搬送波と、コンバータ用PWM搬送波とを同期させると共に、所定量位相をずらせるかまたは周波数を異ならせることで、インバータと平滑コンデンサ間の電流と、コンバータと平滑コンデンサ間の電流を相殺して、平滑コンデンサに出入りする電流を減少することができる。従って、平滑コンデンサの容量を小さくしたり、その寿命を長くすることができる。
【0012】
また、前記制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波と、前記コンバータ用PWM搬送波とを、90°位相をずらせて同期させることが好適である。
【0013】
また、前記制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波に対し、前記コンバータ用PWM搬送波の周波数を2倍として同期させることが好適である。
【0014】
また、前記昇圧コンバータは、並列接続した2つの昇圧コンバータを有する2アーム構成であり、前記制御回路は、前記2つのアームの内の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と90°位相をずらせ、他の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と270°位相をずらせ、同期させることが好適である。
【0015】
また、前記昇圧コンバータは、並列接続した2つの昇圧コンバータを有する2アーム構成であり、前記制御回路は、前記2つのアームの内の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波との位相ずれは0°とし、他の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と180°位相をずらせ、同期させることが好適である。
【0016】
また、前記制御回路は、前記昇圧コンバータにおける昇圧比に基づいて、インバータ用PWM搬送波に対する昇圧コンバータ用PWM搬送波の関係が異なるように変更することが好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
「回路構成」
本実施形態に係る電気負荷駆動システムの回路を図1に示す。ここで、図1(a)は、1アーム式昇圧コンバータCONV1を用いた例であり、図1(b)は2アーム式昇圧コンバータCONV2を用いた例である。
【0019】
図1(a)において、2つの3相のモータMG1、MG2には、インバータINV1、INV2がそれぞれ接続されている。このインバータINV1、INV2は、それぞれ3相のインバータであり、2つのスイッチング素子が直列接続して形成されたアーム(インバータアーム)を3本有している。インバータINV1の3つのアームの中間点がモータMG1の3相コイル端にそれぞれ接続され、インバータINV2の3つのアームの中間点がモータMG2の3相のコイル端にそれぞれ接続されている。
【0020】
インバータINV1、INV2の正極母線は昇圧コンバータCONV1の正出力に共通接続され、インバータINV1、INV2の負極母線は昇圧コンバータCONV1の負出力に共通接続されている。昇圧コンバータCONV1は、正負出力間に接続されるコンデンサCと、このコンデンサCに並列接続されたコンバータアームを有している。このコンバータアームは、2つのスイッチング素子SW1、SW2が直列接続して形成されている。そして、このコンバータアームの中間点がコイルL1および抵抗R1を介し、低圧電池Vの正極に接続されている。また、電池Vの負極は昇圧コンバータCONV1の負出力に接続されている。なお、コイルL1、抵抗R1、スイッチング素子SW1、SW2からなるコンバータアーム、コンデンサCが昇圧コンバータCONV1を構成する。
【0021】
また、図1(b)には、2アーム構成の昇圧コンバータCONV2を利用したシステムが示されている。すなわち、昇圧コンバータCONV2は、上述したスイッチング素子SW1、SW2からなるアームの他に、スイッチング素子SW3、SW4からなるアームをコンデンサCに並列して有している。さらに、スイッチング素子SW3、SW4の中間点は、コイルL2、抵抗R2を介し、電池Vの正極に接続されている。
【0022】
このようなシステムにおいて、昇圧コンバータCONV1(またはCONV2)のスイッチング素子SW1、SW2、(およびSW3、SW4)のスイッチングを制御することで、電池Vの出力電圧を所定の昇圧比率で昇圧した電圧をコンデンサCの両端に得ることができる。そして、このコンデンサCの両端電圧がインバータINV1、INV2の入力となり、インバータINV1、INV2のスイッチング制御によって、所定のモータ駆動電流がモータMG1、MG2に供給され、これらモータMG1、MG2が駆動される。
【0023】
なお、インバータINV1、INV2および昇圧コンバータCONV1(またはCONV2)は、PWM搬送波と制御電圧の比較により各スイッチング素子のオンオフ制御信号を作成し、これによって各スイッチング素子のオンオフを制御している。これによって、モータ駆動電流をPWM制御することができ、また昇圧コンバータCONV1(またはCONV2)の昇圧をPWM制御することができる。
【0024】
「シミュレーション」
このような電気負荷駆動システムをモデルとして、そのシステム内に流れる電流をシミュレーションし、コンデンサCに流れ込む電流のリップルを評価した。ここで、電流の正負は、モータMG1、MG2が発電してコンデンサCに向かって流れる方向を正とし、インバータINV1からコンデンサに流れる電流をIp1、インバータINV2からコンデンサCに流れる電流をIp2、昇圧コンバータCONV1、CONV2からコンデンサCに流れる電流をそれぞれIdcp1、Idcp2と定義する。
【0025】
また、このシミュレーションに使用したモータMG1、MG2と昇圧コンバータCONV1(1アーム式昇圧コンバータ)、CONV2(2アーム式昇圧コンバータ)の各種定数を表1に示す。
【表1】
【0026】
「シミュレーション結果」
(パルス電流とPWMインバータ搬送波との関係)
1アーム式昇圧コンバータINV1において、電池V電圧200V、コンデンサC電圧600V(昇圧比=1:3)とし、モータMG1、MG2及び昇圧コンバータCONV1の全てのPWMインバータ搬送波(以下、PWMインバータ搬送波を、単に搬送波と適宜いう)を同相(同一周波数、位相ずれ0)にしたときの、モータ側インバータ電流(以下パルス電流という)Ip1、Ip2、コンバータ側インバータ電流(以下パルス電流という)Idcp1と搬送波の関係を図2〜5に示す。
【0027】
図2はMG1:10kW発電、MG2:10kW駆動、図3はMG1:10kW駆動、MG2:10kW発電、図4はMG1:10kW発電、MG2:2.5kW駆動、図5はMG1:2.5kW発電、MG2:10kW駆動の状態を示している。なお、このシミュレーションでは、モータに加わる電圧はコンデンサC電圧に関係なく、600Vに固定した。また、各図において、上段から、インバータINV1の搬送波とインバータ−コンデンサ間のモータ側パルス電流(Ip1)、インバータINV2の搬送波とインバータ−コンデンサ間のモータ側パルス電流(Ip2)、昇圧コンバータの搬送波(インバータの搬送波と同一)とコンバータ−コンデンサ間のコンバータ側パルス電流(Idcp1)の関係を示した。
【0028】
図2〜5より、発電と駆動では電流Ip1、Ip2の極性(+−)が反転し、電力が小さいと電流Ip1、Ip2が小さくなることがわかる。そして、インバータINV1、INV2のモータ側パルス電流Ip1、Ip2は、搬送波が0と交わる点の近傍で流れているのに対し、昇圧コンバータCONV1のコンバータ側パルス電流Idcp1のパルスは、搬送波が最小点の近傍で流れている。したがって、モータ側パルス電流Ip1、Ip2は、搬送波1周期に対して2パルスの電流であるが、コンバータ側パルス電流は、搬送波1周期に1パルスである。
【0029】
次に、昇圧比が低い電池V電圧400V、コンデンサ電圧450Vの条件で、MG1が10kWの発電、MG2が2.5kWの駆動のときの、パルス電流と搬送波との関係を図6に示す。
【0030】
図6より、昇圧比が低くなると、コンバータ側パルス電流のパルス幅が大きくなることがわかる。すなわち、図4では、パルス幅が搬送波の半周期(0.1ms)以下であったが、図6では半周期以上のパルス幅になっている。なお、パルス幅が搬送波の半周期以上になるのは、昇圧比が1:2以下の場合である。
【0031】
ここで、コンデンサCの電流は、図2〜6で示したインバータINV1、INV2と昇圧コンバータCONV1の電流の合計(Ip1+Ip2+Idcp1)になる。そして、パルス電流Ip1、Ip2は搬送波の位相によって流れる位置が決まる。したがって、3つの電流を合計したときにパルス電流がキャンセルされるように、各搬送波の位相を調整すればコンデンサCの電流を小さく抑制することができる。
【0032】
「90°位相をずらす」
まず、インバータINV1、INV2は、共に搬送波が0と交わる点の近傍でパルス電流が流れるため、同位相であることが望ましい。一方、昇圧コンバータCONV1のパルス電流Idcp1は搬送波が最小点の近傍で流れるため、インバータINV1、INV2のパルス電流Ip1、Ip2と同じ位置でパルス電流Idcp1を流すためには、インバータINV1、INV2の搬送波の位相に対しコンバータCONV1における搬送波の位相を90°ずらすことが望ましい。
【0033】
図7に、昇圧コンバータCONV1の搬送波の位相をインバータINV1およびINV2の搬送波の位相に対し90°遅らせたときのパルス電流と搬送波の関係を示す。なお、このときの条件は、電池V電圧200V、コンデンサC電圧600V、MG1:10kW発電、MG2:2.5kW駆動である。
【0034】
このように、昇圧コンバータCONV1の搬送波の位相を90°遅らせることで、昇圧コンバータCONV1の搬送波の最小点近傍ではパルス電流をキャンセルできる。
【0035】
「周波数を倍にする」
上述の90°位相をずらす手法では、昇圧コンバータCONV1の搬送波が最大点近傍でもインバータINV1、INV2でパルス電流が流れているため、半分のパルス電流しかキャンセルできない。そこで、昇圧コンバータCONV1の搬送波が最大点近傍でもパルス電流をキャンセルできるようにする方法として、昇圧コンバータCONV1の搬送波周波数を2倍にすることが考えられる。
【0036】
まず、昇圧コンバータCONV1の搬送波周波数をインバータの搬送波周波数の2倍にしてシミュレーションした結果を、図8に示す。このときの条件は、電池電圧200V、コンデンサ電圧600V、MG1:10kW発電、MG2:2.5kW駆動である。
【0037】
ここで、インバータINV1、INV2の搬送波の最大最小点に、昇圧コンバータCONV1の搬送波の最大点が重なるようにして、シミュレーションした。これによって、インバータINV1、INV2のパルス電流と昇圧コンバータCONV1のパルス電流とを毎回打ち消すことができる。そこで、図8に示すように、周波数を倍にすることによって、ひげ状のリップルは残るもののコンデンサCへのパルス電流を図7の最下段の波形よりも減少できることが分かる。
【0038】
「2アーム式昇圧コンバータCONV2」
また、昇圧コンバータのアームを2本に増やすこと(2アーム式昇圧コンバータCONV2)を利用し、両アームの180°ずらすことでも、毎回パルス電流を打ち消すことができる。すなわち、図1(b)に示す2アーム式昇圧コンバータCONV2を利用し、2つのコンバータアームの位相をずらす場合には、2本のインバータアームを位相差180°の搬送波で駆動すると、インバータINV1、INV2と同様に、搬送波1周期に2つのパルス電流が流れるようになる。
【0039】
そこで、インバータINV1、INV2と、搬送波の位相を90°と270°ずらした2アーム式昇圧コンバータCONV2によって、システムを構成する。
【0040】
図9に、2アーム式昇圧コンバータCONV2の搬送波の位相を、インバータINV1、INV2より90°、270°遅らせたときの、パルス電流と搬送波の関係を示す。シミュレーション条件は、電池電圧200V、コンデンサ電圧600V、MG1:10kW発電、MG2:2.5kW駆動である。
【0041】
このように、図9においてもパルス電流は、図7の最下段の波形よりも低減できている。
【0042】
このように、図8、9より、1アーム式昇圧コンバータCONV1の搬送波の周波数を倍にするか、2アーム式昇圧コンバータCONV2にすることによって、コンデンサCに流れるパルス電流を抑制できることが分かった。
【0043】
「昇圧比が低い場合」
しかし、図6に示されるように、昇圧比が低くなると昇圧コンバータCONV1のパルス電流の幅が大きくなることから、2アーム式昇圧コンバータCONV2では、2本のアーム間で干渉してパルス電流が大きくなる恐れがある。昇圧コンバータCONV2でのパルス電流は、それぞれのアームの搬送波が最小点近傍で流れているため、2本のアームのパルス電流が干渉するのは、搬送波が0と交わる点近傍になる。
【0044】
このため、昇圧比が1:2以下の、パルス電流幅が搬送波の半周期以上になる条件では、2アーム式昇圧コンバータCONV2のパルス電流は、搬送波が0と交わる点近傍で流れる。これは、インバータINV1、INV2の搬送波とパルス電流との関係と同じである。従って、昇圧比が1:2以下でアームが2本の条件では、インバータの搬送波を全て同相(コンバータの2つのアームでは搬送波の位相は180°ずれている)にすればコンデンサのパルス電流を抑制できることになる。
【0045】
図10に、昇圧比が1:2以下(電池電圧400V、コンデンサ電圧450V)の条件において、2アーム式昇圧コンバータCONV2の搬送波の位相を、インバータ1、2と同相にしたときの、パルス電流と搬送波の関係を示す。このときの条件は、MG1:10kW発電、MG2:2.5kW駆動である。このように、コンデンサCに出入りする電流の合計であるIp1+Ip2+Idcp1+Idcp2において、リップルは残るもののパルス電流の振幅を減少することができる。
【0046】
「昇圧コンバータの構成についてのまとめ」
このように、以下の4つの昇圧コンバータの構成においてシミュレーションを行い、パルス電流を低減できることが明らかになった。
【0047】
(i)搬送波位相差90°の1アーム式昇圧コンバータ
(ii)搬送波周波数を倍にした1アーム式昇圧コンバータ
(iii)搬送波位相差90°,270°の2アーム式昇圧コンバータCONV2(昇圧比1:2以上)
(iv)搬送波位相差0°,180°の2アーム式昇圧コンバータCONV2(昇圧比1:2以下)
上記(i)〜(iv)の構成についてパルス電流低減効果の大小を見積るため、図11のように各条件におけるパルス電流のパルス量を定量化した。定量化するにあたり、図11中に示すようにインバータINV1、INV2によるモータ側パルス電流のパルス幅をxm、高さをymとし、昇圧コンバータの構成(i)〜(iv)のコンバータ側インバータ側電流のパルス幅をそれぞれx1〜x4、高さをy1〜y4とした。ここでコンデンサ電圧が一定と仮定すれば、モータ側パルス電流の積分値と、(i)の昇圧コンバータCONV1のパルス電流の積分値は等しいので、次式の関係が成立する。
【数1】
2xmym=x1y1
【0048】
また、(ii)の昇圧コンバータCONV1は(i)の搬送波周波数を倍にしたため、パルス電流の幅が(i)の1/2で高さが同じになり、次式のようになる。
【数2】
x2=x1/2
y2=y1
【0049】
また、(iii)、(iv)の昇圧コンバータCONV2は(i)のアーム数が2本になるため、パルス電流の幅が(i)と同じで高さが1/2になり、次式のようになる。
【数3】
x3=x1
y3=y1/2
x4=x1
y4=y1/2
【0050】
ここで、モータ側のパルス電流の幅と、(i)の昇圧コンバータCONV1のパルス電流の幅との比をαとおく。すなわち、
【数4】
x1=αxm
とすると、上に示した関係より、
【数5】
y1=2ym/α
となる。また同様に、x2〜x4、y2〜y4もα,xm,ymで表すことができる。
【0051】
以下では、xm=0.3、ym=100に固定し、αをパラメータとして、コンバータパルス電流Idcpを決定し、モータ側パルス電流Ipとの差(Ip−Idcp)から、パルス電流量の実効値=(1/T)∫(Ip−Idcp)2dt[t=0〜T]を算出した。αとパルス電流量実効値の関係を図12に示す。
【0052】
図12より、パルス電流量の実効値が最小になるのは、α=1.4以下では、搬送波位相差90°,270°の2アーム式昇圧コンバータCONV2であり、α=1.4以上では、搬送波周波数を倍にした1アーム式昇圧コンバータCONV1である。
【0053】
搬送波位相差90°の1アーム式昇圧コンバータCONV1と搬送波位相差90°,270°の2アーム式昇圧コンバータCONV2は、α=2以上になるとほぼ同量のパルス電流量になる。これは、モータ側と昇圧コンバータ側それぞれのパルス電流のパルス幅が同程度(搬送波位相差90°,270°の2アーム式昇圧コンバータCONV2においてα=1のときパルス幅同じ)であるときは、昇圧コンバータCONV2を2アームにすることによるパルス電流低減効果が得られるが、α=2以上のようなパルス電流のパルス幅が大きい範囲になると、2アームにすることの効果は得られにくいということを意味している。
【0054】
昇圧コンバータのパルス電流のパルス幅は、昇圧比が低くなるほど大きくなるため、2アーム式昇圧コンバータCONV2では、昇圧比1:2以下になると各アームのパルス電流のパルス幅が搬送波の半周期以上になり、2つのパルス電流のパルスが重なって悪影響を及ぼしていた。
【0055】
したがって、昇圧比1:2以上では搬送波位相差を90°,270°(図9)にし、昇圧比1:2以下では搬送波位相差を0°,180°(図10)にすることが有効であった。ここでは、xm=0.3としてパルス電流量を算出しているため、昇圧比1:2以下の条件に相当するのはα=3.3以上である(0.3×3.3≒1)。
【0056】
また、図12より、α=3.3付近で搬送波位相差90°,270°の2アーム式昇圧コンバータCONV2と搬送波位相差0°,180°の2アーム式昇圧コンバータCONV2のパルス電流量が交わり、α=3.3以上では逆転していることがわかる。
【0057】
さらにα≧4.4で、(ii)の搬送波周波数が倍の1アーム式昇圧コンバータCONV1と(iv)の搬送波位相差0°,180°の2アーム式昇圧コンバータCONV2の、パルス電流量の実効値がほぼ一致しているという現象が確認できる。このとき、(ii)と(iv)の昇圧コンバータのパルス電流波形は異なっている。
【0058】
図13に、図12より得られる2アーム式昇圧コンバータCONV2を用いたシステムの制御フローを示す。
【0059】
まず、電池電圧とコンデンサ電圧より昇圧比を算出する(S11)とともに、インバータINV1、INV2のオンオフ指令値を取り込み(S12)、これらからパラメータαを算出する(S13)。
【0060】
そして、α≦1.4か否かを判定し(S14)、YESであれば、インバータINV1、INV2の搬送波と、昇圧コンバータCONV2の搬送波が同じ周波数で、位相差90°と270°とする(S15)。S14の判定でNOであれば、次にα≦4.4を判定し(S16)、YESであれば、昇圧コンバータの搬送周波数をインバータINV1、INV2の搬送波周波数の倍で駆動する。ただし、昇圧コンバータCONV2の2つのアームは同じオンオフ動作を行う(S17)。ここで、2アーム式昇圧コンバータCONV2の2つのアームを、同じオンオフパターンで動かせば、1アーム式昇圧コンバータCONV1と同じになる。
【0061】
S16でNOであれば、上述のS17またはインバータINV1、INV2の搬送波と昇圧コンバータの搬送波が同じ周波数で、位相差0°と180°とする(S18)。これによって、図12におけるパルス電流量の実行値が低いシステムを随時選択することができる。
【0062】
このように、図11のように各インバータのパルス電流を定量化し、パルス電流量を算出することによって、(i)〜(iv)の昇圧コンバータによるパルス電流低減効果の大小が明らかになり、図12の制御フローチャートにより、2アーム式昇圧コンバータCONV2を効果的に制御することができる。
【0063】
「搬送波の調整によるパルス電流リップル成分の抑制」
上述の構成では、各インバータINV1、INV2での搬送波と、パルス電流のパルスの関係を明らかにし、搬送波位相差や周波数の調整により、パルス電流を抑制する方法を示し、この結果をふまえて、コンデンサCに流れ込む電流リップルをシミュレーションした。
【0064】
ここでは、MG1のdq軸目標電流を図14に示すように設定(約10kW発電)し、MG2のd軸目標電流0A、q軸目標電流−19.875A(約2.5kW駆動)に固定した。その他の解析条件は、電池電圧200V、コンデンサ電圧600V(昇圧比=1:3)とした。
【0065】
ここでのパラメータは、インバータINV1、INV2、昇圧コンバータCON1、CONV2のそれぞれのインバータINV1、INV2における搬送波位相差と周波数であるが、表2に比較するパラメータの条件を示す。
【表2】
【0066】
以下では、(xi)を基準に考える。前節で明らかになった搬送波とパルス電流の関係から、(xiii)(xv)が電流リップル最良条件(1アームのときと2アームのときそれぞれ)、(xiv)が最悪条件であると考えられる。
【0067】
図15に、(xi)〜(xv)のパルス電流リップルを示す(図において、パルス電流リップルをIcpと表す)。この波形には、電流リップルとして搬送波周期0.2msの他に、2.5msと5msのリップルが重なっているが、これはそれぞれMG1,MG2のd軸電流の脈動によるものである。
【0068】
図16〜20に、(xi)〜(xv)における各パルス電流と搬送波の関係を示す。各条件で、図16〜20に示す各パルス電流の合計が、図15のパルス電流である。
【0069】
図21に、図15の波形からMG1,MG2のd軸電流の脈動によるリップル分を除き、搬送波周期によるリップル分のみ残したパルス電流リップルを示す。このように、(xiii)(xv)は基準の(xi)より電流リップルが小さく、(xiv)は(xi)よりも電流リップルが大きい。(xii)と(xv)でアーム数による比較をすると、(xv)の2アーム式昇圧コンバータCONV2の方が電流リップルが小さいが、1アーム式昇圧コンバータCONV1でも搬送波周波数を倍にした(xiii)は、(xv)と同等の電流リップルである。
【0070】
図22に、図21の波形を平均化して比較した結果を示す。最も電流リップルが小さいのは搬送波周波数を倍にした1アーム式昇圧コンバータCONV1の(xiii)であり、基準の(xi)より24〜53%低減できている。昇圧コンバータのインバータ搬送波のみ90°(と270°)位相をずらした(xii)(xv)のパルス電流リップルは、インバータ2の搬送波のみ90°位相をずらした(xiv)のリップルより34〜62%低減できており、基準の(xi)と比較しても、21〜41%低減できている。また、(xii)と(xv)で昇圧コンバータのアーム数による比較をすると、2アーム式昇圧コンバータCONV2の方が3〜5%電流リップルが小さいことが分かる。搬送波周波数を倍にした1アーム式昇圧コンバータCONV1は、2アーム式昇圧コンバータCONV2よりもさらに5%〜18%電流リップルが小さい。
【0071】
ここで、本シミュレーション結果から、前節で使用したパルス電流パルス幅のパラメータα(図11参照)を算出した。モータ側のパルス電流(Ip1+Ip2)、昇圧コンバータのパルス電流(Idcp1)それぞれが正なら1、負なら−1、0なら0としたときの平均値(以下、デューティー比と表す)を求め、モータ側と昇圧コンバータ側のデューティー比の比率によってαを求めた。実際のパルス電流波形は、図11のように規則的ではなく、(xi)〜(xv)の条件によってαが異なる。そのため、参考までに基準の(xi)のみについて、モータ側のデューティー比、昇圧コンバータのデューティー比、αの算出結果を図23に示す。
【0072】
αの値は1.2から約2.0までで、時間とともに増加している。図12でαがこの範囲なら、搬送波周波数を倍にした条件、2アーム式昇圧コンバータCONV2の条件、1アーム式昇圧コンバータCONV1の条件の順にパルス電流リップル量が増加しており、この結果は、図22とほぼ一致する。
【0073】
以上のように、上記シミュレーションにより、4種類のコンバータの構成には、次のような特性があることがわかった。
【0074】
(i)インバータINV1、INV2、昇圧コンバータCONV1、CONV2のインバータそれぞれについて、インバータ搬送波とパルス電流のパルスの関係を明らかにした。昇圧コンバータCONV1、CONV2の2アーム化や同搬送波周波数の増加により、パルス電流のパルスの低減は可能だが、その低減効果は、モータ側のパルス電流のパルス幅と昇圧コンバータCONV1、CONV2における電池電圧とコンデンサ電圧の比により、電流リップルの低減効果が異なる。
【0075】
(ii)上記の結果より、1アーム式昇圧コンバータCONV1において、搬送波周波数を倍(モータのインバータ搬送波を基準に)にすることにより、コンデンサに流入出する電流リップルを24〜53%抑制できることが分かった。また、昇圧コンバータのインバータ搬送波位相を90°(と270°)ずらすことにより、パルス電流リップルを21〜41%抑制でき、昇圧コンバータのアーム数による比較をすると、2アーム式昇圧コンバータCONV2の方が1アーム式昇圧コンバータCONV1よりも3〜5%電流リップルが小さいことが分かった。
【0076】
そこで、これらの特性を適宜利用して、コンデンサに出入りする電流の実行値を効果的に抑制することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インバータ用PWM搬送波と、コンバータ用PWM搬送波とを同期させると共に、所定量位相をずらせるかまたは周波数を異ならせることで、インバータと平滑コンデンサ間の電流と、コンバータと平滑コンデンサ間の電流を相殺して、平滑コンデンサに出入りする電流を減少することができる。従って、平滑コンデンサの容量を小さくしたり、その寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る電気負荷駆動システムの構成を示す図である。
【図2】パルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図3】パルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図4】パルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図5】パルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図6】昇圧比が小さい場合におけるパルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図7】コンバータの搬送波位相をインバータ搬送波に比べ90°遅らせた場合のパルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図8】コンバータの搬送波周波数ををインバータ搬送波に比べ倍にした場合のパルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図9】2アーム式コンバータを用いた場合におけるパルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図10】2アーム式コンバータを用い、コンバータとインバータの搬送波を同位相にした場合におけるパルス電流と搬送波の関係を示す図である。
【図11】シミュレーションの場合のパルスのモデルを説明する図である。
【図12】パラメータαとパルス電流の実効値の関係を示す図である。
【図13】2アーム式昇圧コンバータの制御フローを示す図である。
【図14】MG1のdq軸目標電流を示す図である。
【図15】各方式のリップルを大きさを示す図である。
【図16】条件(xi)のパルス電流を示す図である。
【図17】条件(xii)のパルス電流を示す図である。
【図18】条件(xiii)のパルス電流を示す図である。
【図19】条件(xiv)のパルス電流を示す図である。
【図20】条件(xv)のパルス電流を示す図である。
【図21】条件(xi)〜(xv)の電流リップルを示す図である。
【図22】条件(xi)〜(xv)の平均化した電流リップルを示す図である。
【図23】条件(xi)のデューティー比とαの関係を示す図である。
【図24】MG1、MG2のdq軸電圧進角を示す図である。
【符号の説明】
MG1,MG2 モータ、 INV1,inv2 インバータ、CONV1,CONV2 昇圧コンバータ、C コンデンサ。
Claims (6)
- 内部のスイッチング素子をオンオフして低圧直流電圧を昇圧する昇圧コンバータと、この昇圧コンバータからの高圧直流電圧を保持平滑する平滑コンデンサと、この平滑コンデンサに保持された高圧直流電圧を受け、内部のスイッチング素子をオンオフすることにより所定の交流電圧を電気負荷に供給するインバータと、を含む電気負荷駆動システムにおいて、
前記インバータおよび前記昇圧コンバータは、内部のスイッチング素子をPWM制御してその出力を制御するとともに、前記インバータのスイッチング素子のPWM制御する基本周波数を決定するインバータ用PWM搬送波と、前記昇圧コンバータのスイッチング素子をPWM制御する基本周波数を決定するコンバータ用PWM搬送波とを制御する制御回路を設け、
この制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波と、前記コンバータ用PWM搬送波とを同期させると共に、所定量位相をずらせるかまたは周波数を異ならせることで互いに異なるものとする電気負荷駆動システム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波と、前記コンバータ用PWM搬送波とを、90°位相をずらせて同期させる電気負荷駆動システム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記制御回路は、前記インバータ用PWM搬送波に対し、前記コンバータ用PWM搬送波の周波数を2倍として同期させる電気負荷駆動システム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記昇圧コンバータは、並列接続した2つの昇圧コンバータを有する2アーム構成であり、前記制御回路は、前記2つのアームの内の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と90°位相をずらせ、他の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と270°位相をずらせ、同期させる電気負荷駆動システム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記昇圧コンバータは、並列接続した2つの昇圧コンバータを有する2アーム構成であり、前記制御回路は、前記2つのアームの内の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波との位相ずれは0°とし、他の1つのアームについては、前記インバータ用搬送波と180°位相をずらせ、同期させる電気負荷駆動システム。 - 請求項1に記載のシステムにおいて、
前記制御回路は、前記昇圧コンバータにおける昇圧比に基づいて、インバータ用PWM搬送波に対する昇圧コンバータ用PWM搬送波の関係が異なるように変更する電気負荷駆動システム。
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