JP2004183165A - 紙用撥水剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】古紙含有量の増加によりライナー紙質の変化した撥水ライナーの保管後の撥水性低下を防止する撥水剤組成物を提供する。
【解決手段】パラフィンワックス類、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションの撥水原体と、Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有し、前記合成樹脂エマルションの割合は固形分として、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有し、前記パラフィンワックスが撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有している。
【選択図】なし
【解決手段】パラフィンワックス類、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションの撥水原体と、Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有し、前記合成樹脂エマルションの割合は固形分として、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有し、前記パラフィンワックスが撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有している。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙用撥水剤組成物に関し、特に、段ボールライナーを撥水加工する際に使用される紙用撥水剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
段ボールの種類には用途により、撥水機能を付与した撥水段ボールがある。これは、最外装のライナーに撥水剤の水溶液を塗工し乾燥させて撥水ライナーとしている。又、その撥水ライナーを使用し撥水段ボールの生産をしている。
【0003】
従来の撥水剤の例として、特許文献1及び2がある。
【特許文献1】
特開2000−326428号公報(第1〜2頁)。
【特許文献2】
特開2001−315230号公報(第1〜2頁)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近のライナー紙質においては、環境問題、資源の有効利用の観点より古紙の再利用が優先し古紙含有量が増加傾向にあり、その為に撥水性の低下が問題になっている。
【0005】
具体的には、ライナーが撥水塗工工程、乾燥工程を経てロールに巻き取られ保管される際の保管温度(40℃〜70℃)、及び巻圧の影響により保管後の撥水性低下が古紙含有量増加に伴い顕著になっており、従来の撥水剤では古紙増量紙質ライナーではその課題が解決出来ていない。すなわち、ライナー紙質の変化(古紙含有量の増加)した撥水ライナーの保管後の撥水性低下を防止する撥水剤組成物については必ずしも十分なものは提供されていない。
【0006】
本発明の目的は、たとえ古紙含有量が増量した紙質ライナーであっても、保管後の撥水性の低下を防止することができる紙用撥水剤組成物を提供するところにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、パラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションを撥水原体とし、これにTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを配合した撥水剤組成物であれば、たとえ古紙含有量が増量した紙質ライナーに撥水塗工する場合であっても、段ボールライナーにおける撥水性の低下を防止することを見出した。
【0008】
すなわち、撥水原体としてパラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤の混合物エマルションと、
Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有することを特徴とする紙用撥水剤組成物である。
【0009】
これにより、ライナーの保管条件(温度、巻圧)に起因する撥水成分(パラフィンワックス)の紙層内部への沈み込み及び塗工面に接触している被塗工面への移行を防止することができ、撥水性の低下を防止することができる。この撥水性低下の防止機構については定かではないが、前記組成物に合成樹脂を配合する事でパラフィンワックス成分を部分的に被覆し、これがパラフィンワックス(撥水成分)の沈み込み及び移行を防止することができるものと考えられる。
【0010】
上記合成樹脂エマルションの割合は、固形分として、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有することが好ましく、また、前記パラフィンワックスの割合は、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションとしては、SBR(スチレン−ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン)、アクリル酸アルキルエステル共重合物、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリル酸アルキルエステル系共重合物、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリロニトリルーメタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物等が挙げられる。Tg(ガラス転移点)が−10℃未満の合成樹脂エマルションでは、皮膜が柔軟になり巻き取り後ブロッキングのトラブルが発生し、Tg(ガラス転移点)が60℃を超える合成樹脂エマルションでは皮膜が硬くなり、ひび割れを起こしガイドロール等にカスが発生するので、本発明はTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを採用している。
【0012】
パラフィンワックスとしては、n−パラフィンワックス、イソパラフィンワックス、シクロパラフィンワックス、酸化パラフィンワックス等が挙げられる。
【0013】
合成樹脂エマルションの配合量としては、撥水剤組成物全体の固形分に対して、合成樹脂の固形分として10〜60重量%の範囲が撥水性低下防止に効果がある。前記合成樹脂が10重量%未満の場合、被覆効果乏しく撥水性低下防止効果も認められない。60重量%を超える場合は、被覆が過剰になりパラフィンワックスの撥水機能が発揮されない。
一方、撥水成分であるパラフィンワックスの配合量は、撥水剤組成物全体の固形分に対して、10〜60重量%の範囲が撥水機能を発揮する。10重量%未満の場合、初期撥水性が発揮されない、60重量%を越える場合滑り性に問題がある。
【0014】
撥水剤の付帯機能として、防滑性付与がありその対策として、粘着付与剤を配合している。粘着付与剤としては、石油樹脂類(脂肪族炭化水素系、脂環族系炭化水素系、水添脂環族系炭化水素系、芳香族系炭化水素系、ジシクロペンタジエン系、シクロペンテン系、或いはそれらのマレイン酸変性物)及びロジン系樹脂類(ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、変性ロジンエステル、二塩基酸変性ロジンエステル)、テルペン樹脂系、クマロン樹脂系等が挙げられる。
【0015】
パラフィンワックス及び粘着付与剤は水不溶性のため、乳化剤(界面活性剤)を用いてエマルション化する必要がある。その際の乳化剤は公知のアニオン活性剤、ノニオン活性剤を用い、乳化方法は転相乳化にて行う事により作製する。
【0016】
アニオン活性剤として、例えば、カルボン酸塩系(石鹸など)、硫酸エステル塩系(高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン等)、スルホン酸塩系(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、エアロゾルOTなど)、リン酸エステル塩系(高級アルコールリン酸エステル塩等)等が挙げられる。また、ノニオン活性剤として、例えば、ポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物等)、多価アルコール系(グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
【0017】
【実施例】
本発明の実施例として、以下に述べる実施例1〜7に係る紙用撥水剤組成物を、比較例として、以下に述べる比較例1〜3に係る紙用撥水剤組成物を、それぞれ作製して、撥水剤としての試験を行った。
【0018】
(実施例1)
パラフィンワックス5部と粘着付与剤(防滑成分)6.5部と乳化剤1.5部を混合して90〜95℃に加温し、次に水49.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)37.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して56.7重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して16.7重量%配合されている。
【0019】
(実施例2)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水59部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)20部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0020】
(実施例3)
パラフィンワックス17部と粘着付与剤(防滑成分)7部と乳化剤2.4部を混合して90〜95℃に加温し、次に水65.6部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して12重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して56.7重量%配合されている。
【0021】
(実施例4)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水59.6部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、アクロナールYJ−1100D(スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アクリルエステル系樹脂/BASFディスパージョン株式会社製:Tg58℃、固形分46%、自己架橋型)19.6部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0022】
(実施例5)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、アクロナールYJ−1560D(スチレン−アクリル酸アクリルエステル系樹脂/三菱化学製:Tg15℃、固形分48%、自己架橋型)18.8部を配合し撥水剤組成物の18.8%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0023】
(実施例6)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、クロスレン2M−571(SBR系樹脂/武田薬品工業製:Tg−10℃、固形分48%)18.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0024】
(実施例7)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、クロスレン2M−576(SBR系樹脂/武田薬品工業製:Tg3℃、固形分48%)18.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0025】
(比較例1)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)17部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に、水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0026】
(比較例2)
パラフィンワックス2部と粘着付与剤(防滑成分)25部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して6.7重量%配合されている。
【0027】
(比較例3)
パラフィンワックス19部と粘着付与剤(防滑成分)8部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して63.3重量%配合されている。
【0028】
実施例及び比較例に係る撥水剤をクラフトライナーに塗工し、撥水度試験及び滑り角度試験について行った。試験条件は、以下に示す通りである。
【0029】
試験結果を表1及び表2に示す。表によれば、比較例に比べ、実施例に係る撥水剤の初期撥水度が高く、しかも保温・加圧による撥水度の劣化も少ない。また、滑り角度の低下も少なく、撥水性と防滑性が両立して優れていることを示している。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の撥水剤組成物は、撥水原体としてパラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤の混合物エマルションと、Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有する紙用撥水剤組成物であるので、古紙含有量の増加によるライナー紙質の変化した撥水ライナーの保管後の撥水性低下を防止することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙用撥水剤組成物に関し、特に、段ボールライナーを撥水加工する際に使用される紙用撥水剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
段ボールの種類には用途により、撥水機能を付与した撥水段ボールがある。これは、最外装のライナーに撥水剤の水溶液を塗工し乾燥させて撥水ライナーとしている。又、その撥水ライナーを使用し撥水段ボールの生産をしている。
【0003】
従来の撥水剤の例として、特許文献1及び2がある。
【特許文献1】
特開2000−326428号公報(第1〜2頁)。
【特許文献2】
特開2001−315230号公報(第1〜2頁)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近のライナー紙質においては、環境問題、資源の有効利用の観点より古紙の再利用が優先し古紙含有量が増加傾向にあり、その為に撥水性の低下が問題になっている。
【0005】
具体的には、ライナーが撥水塗工工程、乾燥工程を経てロールに巻き取られ保管される際の保管温度(40℃〜70℃)、及び巻圧の影響により保管後の撥水性低下が古紙含有量増加に伴い顕著になっており、従来の撥水剤では古紙増量紙質ライナーではその課題が解決出来ていない。すなわち、ライナー紙質の変化(古紙含有量の増加)した撥水ライナーの保管後の撥水性低下を防止する撥水剤組成物については必ずしも十分なものは提供されていない。
【0006】
本発明の目的は、たとえ古紙含有量が増量した紙質ライナーであっても、保管後の撥水性の低下を防止することができる紙用撥水剤組成物を提供するところにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、パラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションを撥水原体とし、これにTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを配合した撥水剤組成物であれば、たとえ古紙含有量が増量した紙質ライナーに撥水塗工する場合であっても、段ボールライナーにおける撥水性の低下を防止することを見出した。
【0008】
すなわち、撥水原体としてパラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤の混合物エマルションと、
Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有することを特徴とする紙用撥水剤組成物である。
【0009】
これにより、ライナーの保管条件(温度、巻圧)に起因する撥水成分(パラフィンワックス)の紙層内部への沈み込み及び塗工面に接触している被塗工面への移行を防止することができ、撥水性の低下を防止することができる。この撥水性低下の防止機構については定かではないが、前記組成物に合成樹脂を配合する事でパラフィンワックス成分を部分的に被覆し、これがパラフィンワックス(撥水成分)の沈み込み及び移行を防止することができるものと考えられる。
【0010】
上記合成樹脂エマルションの割合は、固形分として、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有することが好ましく、また、前記パラフィンワックスの割合は、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションとしては、SBR(スチレン−ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン)、アクリル酸アルキルエステル共重合物、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリル酸アルキルエステル系共重合物、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合物、スチレン−アクリロニトリルーメタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合物等が挙げられる。Tg(ガラス転移点)が−10℃未満の合成樹脂エマルションでは、皮膜が柔軟になり巻き取り後ブロッキングのトラブルが発生し、Tg(ガラス転移点)が60℃を超える合成樹脂エマルションでは皮膜が硬くなり、ひび割れを起こしガイドロール等にカスが発生するので、本発明はTg(ガラス転移点)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを採用している。
【0012】
パラフィンワックスとしては、n−パラフィンワックス、イソパラフィンワックス、シクロパラフィンワックス、酸化パラフィンワックス等が挙げられる。
【0013】
合成樹脂エマルションの配合量としては、撥水剤組成物全体の固形分に対して、合成樹脂の固形分として10〜60重量%の範囲が撥水性低下防止に効果がある。前記合成樹脂が10重量%未満の場合、被覆効果乏しく撥水性低下防止効果も認められない。60重量%を超える場合は、被覆が過剰になりパラフィンワックスの撥水機能が発揮されない。
一方、撥水成分であるパラフィンワックスの配合量は、撥水剤組成物全体の固形分に対して、10〜60重量%の範囲が撥水機能を発揮する。10重量%未満の場合、初期撥水性が発揮されない、60重量%を越える場合滑り性に問題がある。
【0014】
撥水剤の付帯機能として、防滑性付与がありその対策として、粘着付与剤を配合している。粘着付与剤としては、石油樹脂類(脂肪族炭化水素系、脂環族系炭化水素系、水添脂環族系炭化水素系、芳香族系炭化水素系、ジシクロペンタジエン系、シクロペンテン系、或いはそれらのマレイン酸変性物)及びロジン系樹脂類(ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、変性ロジンエステル、二塩基酸変性ロジンエステル)、テルペン樹脂系、クマロン樹脂系等が挙げられる。
【0015】
パラフィンワックス及び粘着付与剤は水不溶性のため、乳化剤(界面活性剤)を用いてエマルション化する必要がある。その際の乳化剤は公知のアニオン活性剤、ノニオン活性剤を用い、乳化方法は転相乳化にて行う事により作製する。
【0016】
アニオン活性剤として、例えば、カルボン酸塩系(石鹸など)、硫酸エステル塩系(高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン等)、スルホン酸塩系(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、エアロゾルOTなど)、リン酸エステル塩系(高級アルコールリン酸エステル塩等)等が挙げられる。また、ノニオン活性剤として、例えば、ポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物等)、多価アルコール系(グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
【0017】
【実施例】
本発明の実施例として、以下に述べる実施例1〜7に係る紙用撥水剤組成物を、比較例として、以下に述べる比較例1〜3に係る紙用撥水剤組成物を、それぞれ作製して、撥水剤としての試験を行った。
【0018】
(実施例1)
パラフィンワックス5部と粘着付与剤(防滑成分)6.5部と乳化剤1.5部を混合して90〜95℃に加温し、次に水49.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)37.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して56.7重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して16.7重量%配合されている。
【0019】
(実施例2)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水59部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)20部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0020】
(実施例3)
パラフィンワックス17部と粘着付与剤(防滑成分)7部と乳化剤2.4部を混合して90〜95℃に加温し、次に水65.6部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、ポリトロンF320(スチレン−アクリル系樹脂/旭化成製:Tg35℃、固形分45%)8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して12重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して56.7重量%配合されている。
【0021】
(実施例4)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水59.6部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、アクロナールYJ−1100D(スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アクリルエステル系樹脂/BASFディスパージョン株式会社製:Tg58℃、固形分46%、自己架橋型)19.6部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0022】
(実施例5)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、アクロナールYJ−1560D(スチレン−アクリル酸アクリルエステル系樹脂/三菱化学製:Tg15℃、固形分48%、自己架橋型)18.8部を配合し撥水剤組成物の18.8%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0023】
(実施例6)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、クロスレン2M−571(SBR系樹脂/武田薬品工業製:Tg−10℃、固形分48%)18.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0024】
(実施例7)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)9部と乳化剤2部を混合して90〜95℃に加温し、次に水60.2部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水原体を得た。次に、合成樹脂エマルションとして、クロスレン2M−576(SBR系樹脂/武田薬品工業製:Tg3℃、固形分48%)18.8部を配合し撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記合成樹脂エマルションは撥水剤組成物の固形分全量に対して30重量%配合されている。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0025】
(比較例1)
パラフィンワックス10部と粘着付与剤(防滑成分)17部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に、水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して33.3重量%配合されている。
【0026】
(比較例2)
パラフィンワックス2部と粘着付与剤(防滑成分)25部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して6.7重量%配合されている。
【0027】
(比較例3)
パラフィンワックス19部と粘着付与剤(防滑成分)8部と乳化剤3部を混合して90〜95℃に加温し、次に水70部を徐々に加え転相乳化を行い、冷却工程を経て撥水剤組成物の30%エマルションを得た。前記パラフィンワックスは撥水剤組成物の固形分全量に対して63.3重量%配合されている。
【0028】
実施例及び比較例に係る撥水剤をクラフトライナーに塗工し、撥水度試験及び滑り角度試験について行った。試験条件は、以下に示す通りである。
【0029】
試験結果を表1及び表2に示す。表によれば、比較例に比べ、実施例に係る撥水剤の初期撥水度が高く、しかも保温・加圧による撥水度の劣化も少ない。また、滑り角度の低下も少なく、撥水性と防滑性が両立して優れていることを示している。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の撥水剤組成物は、撥水原体としてパラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤の混合物エマルションと、Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有する紙用撥水剤組成物であるので、古紙含有量の増加によるライナー紙質の変化した撥水ライナーの保管後の撥水性低下を防止することができる。
Claims (4)
- 撥水原体としてパラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションと、
Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを含有することを特徴とする紙用撥水剤組成物。 - 前記合成樹脂エマルションの割合は、固形分として、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有する請求項1記載の紙用撥水剤組成物。
- 前記パラフィンワックスの割合は、撥水剤組成物全体の固形分に対して10〜60重量%含有する請求項2記載の紙用撥水剤組成物。
- パラフィンワックス、粘着付与剤及び乳化剤を含む混合物エマルションの撥水原体に、Tg(ガラス転移温度)が−10℃〜60℃の範囲にある合成樹脂エマルションを配合して撥水剤組成物を作製し、この撥水剤組成物を段ボールの外装ライナーに塗工し、乾燥させて得ることを特徴とする撥水段ボールの製造方法。
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2002
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