JP2004182899A - 共重合体ラテックス及びその製造方法並びに紙塗工用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の共重合体ラテックスは、共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体を重合して得られるコア/シェル型重合体を含有し、該重合体をGPC測定によって求められたゲル成分の含量が65〜85重量%であり、該ゲル成分の面積割合Aに対する半値幅Wの比(W×100)/Aが0.6以上である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共重合体ラテックス及びその製造方法並びに紙塗工用組成物に関し、更に詳しくは、接着強度、印刷光沢等の塗工紙特性に優れ、且つ、機械的安定性、ベトツキ防止性等の塗工操業性に優れ、更に広い印刷速度範囲にわたって上記の優れた印刷適性を有する紙塗工用組成物を与える共重合体ラテックス及びその製造方法並びに紙塗工用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、顔料と水性バインダーとを主体とした紙塗工用組成物を紙に塗工し、印刷適性に優れた塗工紙が製造されている。共重合体ラテックスは、その優れた接着性を発揮することから、紙塗工用組成物の主バインダーとして使用されている。
【0003】
近年、印刷の高級化、高速化にともない、塗工紙に要求される性能も厳しくなってきており、表面強度、耐水性、剛度、インキ転移性、印刷光沢や耐ブリスター性等の改良が要求されるようになった。更に、近年はコスト低減の目的等からバインダー量を低減する要求が高まっており、より少量の使用量でも十分な表面強度を示すバインダーが求められている。
【0004】
また、塗工紙の製造そのものも高速化しており、接着性のみならず、塗工操業性の改良、特に主な障害であるロール汚れ性の改良、即ち、共重合体ラテックスの粘着性の低減(ベトツキ防止性)も強く要求されている。
また、塗工操業性は、凝集物の発生の低減により向上させることができる。凝集物は共重合体ラテックス製造時、及び共重合体ラテックスと顔料を主成分とする紙塗工用組成物の作製時、あるいは塗工操業時において、ラテックス安定性が欠如した場合に発生し、かかる凝集物の発生量が多いと、ブレード塗工時のストリークトラブルやアプリケーター汚れ、キャレンダー処理時の汚れ、印刷時のブランケットパイリング等の問題が生じる。即ち、共重合体ラテックス製造時の重合安定性が良好であり、且つ、機械的・化学的安定性に優れるラテックスが求められている。
【0005】
塗工紙に要求される性能としては、前記の性質、特に表面強度の改良が求められ、そのために、例えば共重合体ラテックスのゲル含量を調整する方法や共重合体組成を調整する等の改良方法が提案されている。しかし、表面強度と他の特性とは互いに背反することが多く、全ての特性をバランスよく高いレベルにすることは非常に困難である。
【0006】
例えば、共重合体ラテックスの接着強度を改良する方法として、共重合体ラテックスを製造する際に用いられる共役ジエン系単量体の量を増やして共重合体のガラス転移温度を低くする方法が従来より行われてきた。しかしながら、この方法ではベトツキ防止性及びラテックスの機械的安定性を改善することは難しい。逆に、ガラス転移温度を高くすると、機械的安定性及び耐水性の点は良好であるが、接着強度及び印刷光沢の低下が著しい。また、エチレン系不飽和カルボン酸単量体あるいは官能基を有する単量体を多量に用いて共重合体ラテックスを製造することにより、接着強度及びラテックスの機械的・化学的安定性は改良されるが、ラテックスの粘度が高くなるため、作業性が著しく低下する。
このように、これらのいずれの方法も、ある特性の改良が達成されたとしても、全ての特性に対する要求を満たすことは困難であった。
【0007】
そこで、これら相反する特性を改良すべく、特許文献1には、ガラス転移温度を少なくとも2つ以上有する共重合体ラテックスの製造方法が開示されている。また、特許文献2では、示差走査熱量計によって得られる示差熱量曲線において、転移領域の最低温度と最高温度との差ΔTが30℃以上である共重合体ラテックスが開示されている。しかしながら、これらの方法では、塗工紙のドライピック強度、ウェットピック強度及びベトツキ防止性のバランスは向上するものの、いずれも不十分なものであった。また、特許文献3には、特定の組成の単量体を3段階で重合する紙塗工用共重合体ラテックスの製造方法及び各工程で用いる単量体から得られる重合体の溶解性パラメーター並びにガラス転移温度が異なることを特徴とする製造方法について開示されているが、上記改良方法と全く同様の発想であり、この方法で得られる共重合体ラテックスでは、ドライピック強度の向上も不十分であり、ウェットピック強度及びベトツキ防止性のバランスレベルが低い。
以上のように、塗工紙の接着強度と操業性のバランスを向上させるための手段として、共重合体ラテックスの粒子内構造、即ち、コア/シェル構造あるいはガラス転移点の違いによる粒子内の異組成化度合を制御する方法に頼った設計では、もはや性能のバランスアップは望めない状況にある。
上記、共重合体ラテックスの粒子構造制御に加えて、共重合体ラテックスの分子量をも考慮に入れた改良方法が提案されている。特許文献4には、2段重合法における1段目の反応工程において形成される共重合体の分子量について開示されている。しかしながら、その後の反応工程、即ち、2段目の反応工程においては、更に架橋反応が促進されるため、共重合体ラテックスの分子量を制御したとは言い難く、その品質も不十分なものであった。更に、特許文献5及び特許文献6では、反応を完結し、最終的に形成された共重合体ラテックスの分子量を考慮した改良技術が紹介されている。しかしながら、これらの方法により改良効果は得られるものの、更なる改良要求に対しては十分な対応が取れていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−324113号公報
【特許文献2】
特開平11−279336号公報
【特許文献3】
特開2002−194006号公報
【特許文献4】
特開平7−324112号公報
【特許文献5】
特開2001−144694号公報
【特許文献6】
特開2001−172894号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の技術的背景のもとになされたものであり、接着強度、印刷光沢等の塗工紙特性に優れ、且つ、機械的安定性、ベトツキ防止性等の塗工操業性に優れ、更に広い印刷速度範囲にわたって上記の優れた印刷適性を有する紙塗工用組成物を与える共重合体ラテックス及びその製造方法並びに紙塗工用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
[1] 共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体を重合して得られる重合体を含有し、上記重合体のGPC測定によって求められたゲル成分の含量が65〜85重量%であり、上記ゲル成分の面積割合Aに対する半値幅Wの比(W×100)/Aが0.6以上であることを特徴とする共重合体ラテックス。
[2] 本共重合体ラテックスに含有される重合体のうち、上記ゲル成分以外の重合体成分の重量平均分子量が5万以上である上記[1]に記載の共重合体ラテックス。
[3] 共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜6重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体24〜69重量%を含む単量体(但し、全量を100重量%とする。)を60℃以下で重合してコア/シェル型重合体を含有する共重合体ラテックスを製造する方法において、
上記コア/シェル型重合体を構成するコア部は、上記コア部の形成に関わる単量体全量のうちの10〜30重量%を重合する工程、及び残り70〜90重量%を各々異なる単量体組成にて2回以上に分けて添加しながら重合する工程によって形成させることを特徴とし、上記コア部の形成の最終工程において、上記コア部の形成に関わる単量体のうちの10〜40重量%を重合し、且つ、最終工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量を、上記最終工程の直前の重合工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量より少なくして重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法。
[4] 上記重合工程において用いる分子量調節剤の使用量の合計は、用いる単量体全量の100重量部に対して1.5重量部以下であり、且つ、上記分子量調節剤中のメルカプタン系分子量調節剤の含有割合が50重量%以下である上記[3]に記載の共重合体ラテックスの製造方法。
[5] 上記単量体の重合は、還元剤を連続的に添加しながら行う上記[3]又は[4]に記載の共重合体ラテックスの製造方法。
[6] 上記コア部の形成に用いる単量体は、上記コア部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、共役ジエン系単量体40〜95重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0〜5重量%、及びこれらと共重合可能な単量体を残部として含み、上記シェル部の形成に用いる単量体は、上記シェル部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、共役ジエン系単量体0〜30重量%及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜30重量%を含む上記[3]乃至[5]のいずれかに記載の共重合体ラテックスの製造方法。
[7] 上記重合に用いる単量体全量を100重量%とした場合に、コア部に用いられる単量体の割合が60〜90重量%、シェル部に用いられる単量体の割合が10〜40重量%であることを特徴とする上記[3]乃至[6]のいずれかに記載の共重合体ラテックスの製造方法。
[8] 上記[1]又は[2]に記載の共重合ラテックスを含有することを特徴とする紙塗工用組成物。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の共重合ラテックスは、共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体を重合して得られる重合体を含有するものである。この重合体としては、コア/シェル型構造の重合体を含むことが好ましく、共役ジエン系単量体(以下、「単量体(a)」ともいう。)及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体(以下、「単量体(b)」ともいう。)等の単量体から形成される。
【0012】
上記単量体(a)は、得られる重合体に適度な柔軟性と伸びを与え、耐衝撃性を付与するための成分である。
上記単量体(a)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらのうち、ブタジエンが好ましい。また、これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記単量体(a)の使用量は、全単量体を100重量%とすると、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは30〜65重量%である。この使用量が20重量%以下では、十分な接着強度を得ることができず、一方、70重量%を超えると、耐水性が低下して好ましくない。
【0013】
また、上記単量体(b)としては、例えば、(イ)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類、(ロ)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類、(ハ)マレイン酸メチル,イタコン酸メチル,β−メタクリルオキシエチルアシッドヘキサハイドロフタレート等のハーフエステル類等が挙げられる。尚、上記(イ)、(ロ)の不飽和カルボン酸類の無水物である、アクリル酸無水物、マレイン酸無水物等は、水性媒体中で乳化重合する際にカルボン酸に変化するので、乳化重合の際の単量体として用いることができる。上記単量体(b)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合せて使用することができる。
上記単量体(b)の使用量は、全単量体を100重量%とすると、好ましくは1〜6重量%、より好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは1〜4重量%である。この使用量が1重量%未満では、共重合体ラテックスの機械的、化学的安定性が欠如し、共重合体ラテックスと顔料を主成分とする紙塗工用組成物の調製時、あるいは塗工操業時において凝集物が発生する等、操業上及び塗工紙物性上の問題が生じる。一方、6重量%を超えると、得られるラテックスの粘度が高くなりすぎ、その取り扱いが難しくなり、また、耐水性も低下する。
【0014】
更に、上記共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体(以下、「単量体(c)」ともいう。)を用いることもでき、この単量体(c)としては、例えば、(イ)アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、あるいはグリシジルエステル、(ロ)スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、(ハ)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸のアクリルアミド又はメタクリルアミド化合物、(ニ)酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、(ホ)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物等が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニル化合物としてのスチレンが、シアン化ビニル化合物としてのアクリロニトリルが好ましい。また、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記単量体(c)の使用量は、全単量体を100重量%とすると、好ましくは24〜69重量%、より好ましくは30〜65重量%、更に好ましくは35〜60重量%である。単量体(c)の使用量が24重量%未満では、耐水性が劣り、一方、単量体(c)の使用量が69重量%を超えると、共重合体が硬くなりすぎ、接着強度が低下する。
以上の単量体(a)、(b)及び(c)をうまく組み合わせることによって、得られる共重合体ラテックスに適度な硬さ、剛度及び耐水性、耐溶剤性等を付与することができる。
【0015】
本発明の共重合体ラテックスは、含まれる重合体全量に対するゲル成分の含量が65〜85%、好ましくは70〜85%である。本発明における「ゲル成分」とは、下記条件により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から得られる分子量分布において、ポリスチレン換算の分子量で100万以上を示すもの、即ち、縦軸を検出量、横軸を溶出時間としたクロマトグラムにおいて、分子量が100万に対応する溶出時間より早く検出されるピークに相当する成分である。
ここで、上記ゲル成分の含量の求め方を、図1を用いて説明する。図1は、下記GPC測定条件に従って得られたクロマトグラムを示す。クロマトグラム中の溶出曲線1において、溶出曲線1と横軸で囲まれた部分を全面積S(S=S1+S2)とした場合、ポリスチレン換算の分子量で100万に対応する溶出時間T1より早く検出されるピーク1に相当する成分がゲル成分である(面積はS1)。また、ピーク2は、ポリスチレン換算の分子量で100万に対応する溶出時間T1より遅く検出される成分である(面積はS2)。
ゲル成分の含量、即ち、ゲル成分の面積割合(A)は、下記式(1)により求められる。
A(%)={S1/(S1+S2)}×100 (1)
【0016】
上記ゲル成分の含量が65%未満では、架橋成分が不足し、良好な接着強度が得られない。また、85%を超えると、架橋密度が高くなり過ぎ、逆に強度は低下する。
本発明の共重合体ラテックスにおいて、上記ゲル成分の含量を65〜85%とするためには、重合温度、分子量調節剤の量・種類、単量体の組成、添加方法等、特定の組み合わせにより制御することができる。
【0017】
(GPC測定条件)
1.試料の調製
固形分を50重量%に調整した共重合体ラテックス0.05gに水0.05gと、常法に従い洗浄、水洗したカチオン交換樹脂約1gとを加え、陽イオンを除去する。次いで、テトラヒドロフラン20mlを加え、2時間放置し、溶解する。次にポリテトラフルオロエチレン製メンブレインフィルター(ポアサイズ3μm、ADVANTEC社製)で濾過し、濾液を測定試料とする。
2.装置、測定条件等
測定装置;「HLC−8220」(東ソー社製)
カラム;有機溶媒系GPCカラム「TSKgel GMHHR−H(30)」
(充填剤;ポリスチレンゲル、粒子径;30μm、カラムサイズ;7.8mmI.D.×300mm、東ソー社製)
検出器;示差屈折率計
温度;40℃
溶媒;テトラヒドロフラン
流速;1ml/分
試料濃度;0.2重量%
注入量;50μl
尚、測定に際しては、分子量既知のポリスチレン標準物質を用いて、予め検量線を作成し、これを用いた。また、「GPC−8020 Model−II」(東ソー社製)を用い、得られた溶出曲線を、面積一定として規格化した。
【0018】
また、本発明の共重合ラテックスは、図1に示されるクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算の分子量で100万に対応する溶出時間T1より早く検出されるピーク1に示唆されるゲル成分の分布が極めて広いことが好ましく、上記条件によりGPC測定した際のピーク1の面積Aに対する半値幅W(分)の比Xは0.6以上、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.7以上である。上記比Xが0.6未満では、共重合体ラテックスのゲル成分の分布幅が狭く、即ち、共重合体ラテックスの架橋構造がタイトで、より緻密な構造であることを示しており、接着強度等の更なる改善は期待できない。
上記ゲル成分の面積割合Aに対するピーク1の半値幅Wの比Xは、下記式(2)により求められる。
X=(W×100)/A (2)
本発明の共重合体ラテックスにおいて、上記ゲル成分の面積割合Aに対するピーク1の半値幅Wの比Xを0.6以上とするためには、重合温度、分子量調節剤の量・種類、単量体の組成、添加方法等の重合条件の特定の組み合わせにより制御することができる。
【0019】
本発明の共重合体ラテックスに含有される重合体のうち、上記ゲル成分以外の重合体成分(例えば、図1におけるピーク2)の重量平均分子量Mw(以下、単に「Mw」ともいう。)は、好ましくは5万以上、より好ましくは6万以上である。Mwが5万未満であると、良好な接着強度が得られず、またベトツキ防止性が低下する。
上記重量平均分子量を5万以上とするためには、重合温度、分子量調節剤の量・種類、単量体の組成、添加方法等の重合条件の特定の組み合わせにより制御することができる。
【0020】
また、本発明の共重合ラテックスは、含まれる重合体全量に対するトルエン不溶分が好ましくは80〜94重量%、より好ましくは85〜94重量%である。このトルエン不溶分が上記範囲外では、接着強度は低下し、更に、トルエン不溶分が少な過ぎる場合は、更に機械的安定性、ベトツキ防止性が低下し、トルエン不溶分が多すぎる場合は、耐水強度が低下する。
上記トルエン不溶分の測定方法は、以下の通りである。即ち、共重合体ラテックスをpH8.0に調製した後、イソプロパノールで凝固し、この凝固物を洗浄、乾燥した後、所定量(約0.03g)の試料を100mlのトルエンに20時間浸漬する。その後、120メッシュの金網で濾過し、得られる残存固形分の重量を測定し、初めの共重合体ラテックスの全固形分に対する割合を求めることによって得られる。
上記トルエン不溶分は、重合温度、分子量調節剤の量・種類等によって制御できる。
【0021】
次に、上記共重合体ラテックスを製造する方法について説明する。
本発明の共重合体ラテックスの製造方法は、共役ジエン系単量体30〜70重量%及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜6重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体24〜69重量%を含む単量体(但し、全量を100重量%とする。)を60℃以下で重合してコア/シェル型重合体を含有する共重合体ラテックスを製造するために、上記コア/シェル型重合体を構成するコア部は、上記コア部の形成に関わる単量体全量のうちの10〜30重量%を重合する工程、及び残り70〜90重量%を各々異なる単量体組成にて2回以上に分けて添加しながら重合する工程によって形成させることを特徴とし、上記コア部の形成の最終工程において、上記コア部の形成に関わる単量体のうちの10〜40重量%を重合し、且つ、最終工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量を、上記最終工程の直前の重合工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量より少なくして重合するものである。
【0022】
重合に関わる共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体並びにこれらと共重合可能な単量体は、上記単量体(a)、(b)及び(c)として例示したものを好ましく用いることができる。
【0023】
上記コア/シェル型重合体の形成に用いる単量体の使用量について、単量体全量を100重量%とした場合、コア部の形成に用いる単量体は、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは65〜85重量%であり、シェル部の形成に用いる単量体は、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%である。コア部に用いる単量体の割合が60重量%未満、即ち、シェル部に用いる単量体の割合が40重量%を超えると、コア部において相対的にガラス転移点の低い成分が少なくなり、耐衝撃性が十分でなく、接着強度が劣る。一方、コア部に用いる単量体の割合が90重量%を超える、即ち、シェル部に用いる単量体の割合が10重量%未満では、相対的にガラス転移点の高い、硬い外層部分が少なくなり過ぎ、ベトツキ防止性が低下する傾向にある。
【0024】
上記コア部の形成に用いる単量体の使用量は、コア部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、好ましくは単量体(a)を40〜95重量%及び単量体(b)を0〜5重量%、より好ましくは単量体(a)を45〜90重量%及び単量体(b)を0.5〜3重量%である。残部は、単量体(c)である。上記単量体(a)の使用量が40重量%未満であるとコア部が硬くなり過ぎ、接着強度が改良されない。一方、95重量%を超えると、重合速度が極端に低下し、生産性が低くなる。また、単量体(b)の使用量が5重量%を超えると、耐水性が悪化する。
【0025】
上記コア部は、多段の重合工程によって形成される。第1工程では、コア部の形成に用いる単量体全量に対して、10〜30重量%に相当する単量体を重合する。また、コア部の形成のための最終工程では、コア部の形成に用いる単量体全量に対して、10〜40重量%を重合する。第1工程と最終工程の間の中間工程においては、コア部の形成に用いる単量体全量に対して、30〜80重量%を重合する。この中間工程は、更に分割してもよい。
また、コア部の形成のための最終工程において用いられる単量体(a)の使用量は、その直前のコア部の重合工程において用いられる単量体(a)の使用量より少なくして重合することが好ましい。これによって、本発明では、コア/シェル型重合体粒子のコア粒子においても、その内部から表層にかけて相対的に硬くなるような異相構造を制御することが可能となり、ベトツキ防止性、接着強度、耐水強度のバランスが格段に向上する。
更に、重合反応の進行に伴い、架橋性の単量体である単量体(a)の使用量を段階的に減量することで、重合反応の進行に伴って生じる架橋反応を抑制することが可能となり、接着強度発現に有利な高分子量の重合体を形成することができる。
【0026】
上記コア部の形成のための各工程における単量体の添加方法も特に限定されず、用いる単量体を全量一括で仕込んで重合してもよいし、所定量の単量体を連続的に添加してもよいし、任意の間隔をおいて添加してもよい。各単量体を連続的に重合系内に添加する場合には、重合反応が一気に進行して反応熱が発生し、かかる反応熱によって重合系内の温度が急激に上昇するのを防止することができる。
【0027】
一方、上記シェル部は、重合に関わる単量体全量のうちの単量体(a)の使用量を、上記コア部の形成で用いた単量体(a)、更には、該コア部の形成における最終工程で用いられた単量体(a)の使用量より少なくして重合する工程によって形成する。この工程において用いる単量体の組成は、該シェル部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、好ましくは単量体(a)を0〜30重量%及び単量体(b)を0.5〜30重量%、より好ましくは単量体(a)を0〜25重量%及び単量体(b)を1〜25重量%である。残部は、単量体(c)である。単量体(a)の使用量が30重量%を超えると、耐水性、ベトツキ防止性が低下する。また、単量体(b)の使用量が30重量%を超えると、得られるラテックスの粘度が高くなり過ぎて、その取り扱いが難しくなり、作業性が低下し、実用性に欠けるものとなる。
【0028】
上記シェル部の形成のための各工程における単量体の添加方法も特に限定されず、用いる単量体を全量一括で仕込んで重合してもよいし、所定量の単量体を連続的に添加してもよいし、任意の間隔をおいて添加してもよい。各単量体を連続的に重合系内に添加する場合には、重合反応が一気に進行して反応熱が発生し、かかる反応熱によって重合系内の温度が急激に上昇するのを防止することができる。
以上の工程により得られるコア/シェル型重合体の粒子径は、50〜150nmが好ましく、更に好ましくは50〜120nmである。
【0029】
上記単量体の重合は、乳化重合法により行うことが好ましく、通常、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤、還元剤等が併用される。
上記乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステル等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が用いられる。
【0031】
上記両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてはアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つものが挙げられ、具体的にはラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン、等のアミノ酸タイプのもの等が用いられる。
【0032】
上記乳化剤のうち、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが更に好ましい。
また、上記乳化剤の使用量は、単量体全量100重量部に対して、通常、0.05〜2重量部であり、より好ましくは0.05〜1重量部である。乳化剤の使用量が2重量部を超えると、耐水性が低下し、紙塗工用組成物の泡立ちが著しくなって塗工時に問題となる。上記乳化剤の添加方法は特に限定されず、重合系にそれぞれ回分的、連続的あるいはこれらを組み合わせて添加することができる。
【0033】
上記重合開始剤としては、無機系あるいは有機系のラジカル触媒を用いることが好ましい。このラジカル触媒は、熱又は還元性物質の存在下でラジカル分解して単量体を付加重合させるものである。無機系触媒としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられ、有機系触媒としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。
【0034】
上記分子量調節剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムスルフィド類、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー等の炭化水素類、及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノーレン、α−テルネピン、γ−テルネピン、ジペンテン、1,1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらのうち、メルカプタン類、キサントゲンジスルフィド類、チウラムジスルフィド類、1,1−ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー等がより好ましい。また、これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記分子量調節剤の使用量は、単量体全量を100重量部とした場合に、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.3重量部以下である。また、更に好ましい使用量は、分子量調節剤の全量が1.5重量部以下、且つ、分子量調節剤の全量に対するメルカプタン系分子量調節剤の割合が50重量%以下であり、特に好ましい使用量は、分子量調節剤の全量が1.3重量部以下、且つ分子量調節剤の全量に対するメルカプタン系分子量調節剤の割合が45重量%以下であり、更には40重量%以下である。上記メルカプタン系分子量調節剤の使用量としては、単量体全量を100重量部とした場合、好ましくは0.75重量部以下、より好ましくは0.05〜0.65重量部、更に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0036】
上記分子量調節剤の使用量は、単量体構成条件、重合温度等の重合条件に加え、本発明の意図する共重合体ラテックスを得るために重要な因子である。上記メルカプタン系分子量調節剤は、重合体が高分子量化しにくく、且つ、極めて分子量の低い重合体成分を生成しやすいため、その使用量を少なくすることが好ましい。単量体構成条件、重合温度等のその他重合条件との組み合わせにより、適宜調整する必要があるが、分子量調節剤の使用量の合計が1.5重量部を超え、分子量調節剤中のメルカプタン系分子量調節剤の割合が50重量%を超えると、本発明の意図する重合体、即ち、架橋点間分子量が高く、且つ、架橋成分の分布幅が広い、ルーズな架橋構造を持つ共重合体ラテックスを得ることができない。更には、低分子量の重合体が多く生成するため、ベトツキ防止性が低下する。
上記分子量調節剤の重合系内への添加方法は、一括添加、回分的添加、連続的添加、あるいはこれらの組み合わせのいずれでもよい。
【0037】
また、上記還元剤としては、例えば、エルソルビン酸、エルソルビン酸ナトリウム、エルソルビン酸カリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、糖類、ロンガリットソディウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウム等の亜燐酸塩、ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウム等のピロ亜燐酸塩、メルカプタン等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記還元剤の使用量は、単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部である。
【0038】
上記還元剤は、コア部を形成するための工程及びシェル部を形成するための工程では、連続的に添加することが好ましい。特に、重合開始初期、即ち、該コア部の形成の最初からシェル部の形成の最後まで還元剤を連続的に添加することが好ましく、これによって、ラテックスの機械的、化学的安定性が著しく向上し、前述の効果を奏することができる。また、共重合体ラテックス製造時の重合安定性が向上する。
【0039】
また、ラジカル触媒及び還元剤のより具体的な添加方法として、例えば、両者を別々の供給配管から同時に連続的に反応系内に添加する方法、ラジカル触媒が還元剤よりも過剰に存在する重合系内に還元剤を連続的に添加する方法、還元剤がラジカル触媒よりも過剰に存在する重合系内にラジカル触媒を連続的に添加する方法が挙げられる。尚、ラジカル触媒と還元剤との等量比は、100/1から1/100の間とするのが好ましい。
更に、ラジカル触媒及び還元剤以外に、更に酸化還元触媒を重合系内に添加して乳化重合を行うことができる。酸化還元触媒としては、金属触媒、例えば、2価の鉄イオン、3価の鉄イオン、銅イオン等が挙げられる。上記還元剤と同様に、酸化還元触媒も、重合系にそれぞれ回分的、連続的あるいはこの両者を組み合わせて添加することができる。ラジカル触媒、還元剤、及び酸化還元触媒の好ましい組み合わせとして、ラジカル触媒として過硫酸カリウム、還元剤として亜硫酸水素ナトリウム、及び酸化還元触媒として硫酸第一鉄を用いたものが挙げられる。
【0040】
本発明においては、必要により種々の重合調節剤を添加してもよい。例えば、pH調節剤、各種キレート剤等を使用することができる。
pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。中でも、重合後のpH調節剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムが好適に使用される。更には、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを混合して使用するのが好ましく、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの等量比は9/1〜1/9の間とするのが好ましい。その他各種キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
本発明の共重合ラテックスの製造方法における重合温度は、本発明の意図する、架橋点間分子量が高く、且つ、架橋成分の分布幅が広い、ルーズな架橋構造を持つ重合体を含有する共重合体ラテックスを得るための重要な因子の一つである。即ち、本発明においては、反応容器内の温度を60℃以下として重合を行う。好ましい重合温度範囲は20〜55℃であり、より好ましくは30〜50℃である。特に、前述のコア部を形成する工程における重合温度を40℃以下とすることが好ましい。重合温度が高すぎると、架橋反応が著しく進行して、架橋点間分子量が低下するとともに、架橋成分の分布幅の狭い、非常にタイトな架橋構造を形成するため、強度が不十分となる。
【0042】
本発明の共重合体ラテックスは、オフセット輪転印刷、オフセット枚葉印刷又はグラビア印刷用のバインダーとして好適に使用されるが、オフセット印刷又はグラビア印刷用以外の用途、例えば凸版印刷等の各種印刷用紙、及び紙のコーティング剤、カーペットバッキング剤、接着剤、塗料等としても使用することができる。
【0043】
本発明の紙塗工用組成物は、上記共重合体ラテックスを含有するものである。紙塗工用組成物は、無機あるいは有機顔料に、共重合体ラテックス、必要に応じて他のバインダー、耐水強度改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等種々の助剤を配合して調製することができる。上記共重合体ラテックスの配合量は、顔料100重量部に対して好ましくは1〜30重量部(固形分として)、より好ましくは3〜25重量部である。共重合体ラテックスが1重量部未満であると、接着強度が著しく低下し、一方30重量部を超えるとインク乾燥性の低下が著しい。
【0044】
上記無機顔料としてはクレー、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、上記有機顔料としてはポリスチレン、尿素ホルマリン樹脂等が挙げられる。これらは目的、用途に応じて、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせ用いることができる。
【0045】
上記他のバインダーとしては、カゼイン、カゼイン変性物、澱粉、澱粉変性物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性バインダーを用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本文中、割合を示す「部」及び「%」はそれぞれ重量部及び重量%を意味するものである。
1.共重合体ラテックスの製造
実施例1−1〜3
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、表1に示される1段目成分を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を40℃に昇温し、この温度で1時間重合を行った。次いで、表1に示される2段目成分と、還元剤水溶液の1/5量とを5時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を進めた。更に、3段目成分と、還元剤水溶液の1/5量とを2時間かけて連続的に重合系内に添加した。その後、4段目成分と、及び還元剤水溶液の2/5量を1時間かけて連続的に重合系内に添加した。重合を完結させるために、残り1/5量の還元剤水溶液を2時間かけて連続的に添加した。最終的な重合転化率は98%であった。
得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いてpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックスを得た。
【0047】
実施例1−3〜5
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、表1に示される1段目成分を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を40℃に昇温し、この温度で1時間重合を行った。次いで、表1に示される2段目成分と、還元剤水溶液の1/5量とを5時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を進めた。更に、3段目成分と、還元剤水溶液の1/5量とを2時間かけて連続的に重合系内に添加した。その後、4段目成分と、及び還元剤水溶液の2/5量を1時間かけて連続的に重合系内に添加した。重合を完結させるために、残り1/5量の還元剤水溶液を2時間かけて連続的に添加した。最終的な重合転化率は98%であった。
得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムを用いてpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックスを得た。
【0048】
比較例1−1〜9
攪拌装置及び温度調節機を備えた耐圧反応容器に、表1及び表2に示される1段目成分を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を50℃に昇温し、この温度で1時間重合を行った。次いで、表1及び表2に示される2段目成分を5時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を進めた。その後、3段目成分を2時間かけて連続的に重合系内に添加し、次いで4段目成分と、還元剤水溶液の1/2量とを1時間かけて連続的に重合系内に添加した。重合を完結させるために、残り1/2量の還元剤水溶液を2時間かけて連続的に添加した。最終的な重合転化率は98%であった。
得られた共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いてpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応単量体を除去し、更に加熱水蒸気蒸留によって固形分濃度50%の共重合体ラテックスを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
各共重合体ラテックスについて、下記評価を行った。その結果を表3及び表4に示す。
(1)平均粒子径
大塚電子社製の粒子径測定装置(LPA−3100)を用いた。
(2)GPC測定
本文中に示した方法によって、ゲル成分の面積割合A、即ち、ゲル成分の含量と、ゲル成分の分布Xと、ゲル成分以外の重合体成分の重量平均分子量Mwを求めた。
(3)トルエン不溶分
本文中に示した。
(4)ベトツキ防止性
ラテックスをポリエチレンテレフタレートフィルム上にNo.18ロッドにより塗布し、120℃で30秒間乾燥させ、皮膜を形成させた。この皮膜と黒羅紗紙とを合わせて、ベンチスーパーカレンダーにより線圧200kg/m、温度70℃の条件で圧着させる。両者を引き剥がして、黒羅紗紙のラテックスへの転写の程度を目視により5段階で評価した。転写の程度が少ないものほど高得点とした。数値は測定回数6回の平均値で示した。
(5)ラテックス再分散性
ラテックスを黒羅紗紙上にNo.18ロッドにより塗布し、室温で1分間乾燥させた後、直ちに40℃の温水で3分間洗浄した。かかる黒羅紗紙を室温で乾燥させた後、黒羅紗紙上に残るラテックス皮膜の程度を5段階で評価した。ラテックス皮膜の程度が小さいものほど高得点とした。数値は測定回数3回の平均値で示した。
(6)機械的安定性
市販のマロン式機械的安定度試験機を用いて、固形分濃度30%のラテックス(試料120g)に、ロータ回転数1,000rpm、ロータ荷重15kg、回転時間15分の条件で機械的剪断を与えた後、120メッシュの金網に残る凝集物を捕捉した。捕捉した凝集物を乾燥させた後、元の試料固形分重量に対する凝集物の割合を求めた。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
2.紙塗工用組成物の評価
上記実施例1−1〜5で製造した共重合体ラテックスを用いて、下記の配合処方により、オフセット印刷用紙塗工用組成物を調製した。
(処方)
カオリンクレー 70.0部
炭酸カルシウム 30.0部
分散剤 0.2部
水酸化ナトリウム 0.1部
澱粉 4.0部
共重合体ラテックス(固形分として) 10.0部
水 全固形分が60%となるように適当量添加
【0055】
実施例2−1〜5及び比較例2−1〜9
次に、各紙塗工用組成物を、塗工用原紙の片面に塗工量が13.0±0.5gとなるように、電動式ブレードコータ(熊谷理機社製)を用いて塗工し、150℃の電気式熱風乾燥機にて15秒乾燥させた。その後、23℃、湿度50%の恒温恒湿槽に1昼夜放置し、その後、線圧100kg/cm、ロール温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を4回行った。得られた塗工紙の性能評価は以下の方法にて行った。その結果を表3及び表4に示す。
【0056】
(1)ドライピック強度
RI印刷機で印刷したときのピッキングの強度を肉眼で判定し、5段階で評価した。ピッキング現象が少ないものほど高得点とした。数値は測定回数6回の平均値で示した。
(2)ウェットピック強度
RI印刷機を用いて、塗工紙表面を給水ロールで湿してからRI印刷機で印刷したときのピッキングの強度を肉眼で判定し、5段階で評価した。ピッキング現象が少ないものほど高得点とした。数値は測定回数6回の平均値で示した。
(3)印刷光沢
RI印刷機を用いてオフセット用インキをベタ塗りし、村上式光沢計を使用して入射角60度で測定した。
【0057】
3.実施例の効果
表1及び表2より、比較例1−1、2、6及び1−7によって得られた共重合体ラテックスは、コア部の形成の最終工程で用いた単量体の合計が、コア部の形成に関わる単量体全量に対していずれも40%を超えて、且つ、最終工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量が、その直前の重合工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量以上である例であり、ゲル成分の分布が0.6未満で、ゲル成分以外の重合体成分のMwも低く(表3及び表4における比較例2−1、2、6及び2−7)、ベトツキ防止性等のラテックス物性と強度等の塗工紙物性のバランスが劣る。比較例1−6により得られた共重合体ラテックスは、更に、共役ジエン系単量体の量が範囲未満の例であり、ドライピック強度と印刷光沢が劣る。比較例1−7により得られた共重合体ラテックスは、共役ジエン系単量体の量が範囲以上の例であり、ベトツキ防止性、再分散性、ウェットピック強度が劣る。
比較例1−3によって得られた共重合体ラテックスは、分子量調節剤としてメルカプタン類の使用割合が高い例であり、ゲル成分以外の重合体のMwが低く、比較例1−1及び2で得られたラテックス同様、ベトツキ防止性等のラテックス物性と強度等の塗工紙物性のバランスが劣る。
比較例1−4によって得られた共重合体ラテックスは、分子量調節剤の使用量の合計が、重合に関わる単量体全量100部に対して1.61部と高い例であり、ゲル成分分布が0.65と、0.6以上であるが、トルエン不溶分が少なく、ベトツキ防止性、再分散性、機械的安定性及び強度等の塗工紙物性に劣る。
比較例1−8によって得られた共重合体ラテックスは、ゲル成分の分布が0.6未満で粒子径が大きい例であり、特に強度が劣る。また、比較例1−9によって得られた共重合体ラテックスは、ゲル成分の分布が0.6未満で粒子径が小さい例であり、特に共重合体ラテックスの機械的安定性、再分散性が劣る。
一方、実施例1−1乃至1−5によって得られた重合体ラテックスは、いずれも本発明の範囲内にあり、ベトツキ防止性及び機械的安定性の高さから、優れた塗工操業性を発揮するだけでなく、各種物性バランスに優れた塗工紙を提供することができることが分かる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の共重合体ラテックスは、含まれる重合体のGPC測定から得られるゲル成分の割合が65〜85重量%であることから、相対的に架橋成分が多く、且つ、上記ゲル成分の割合、即ち、GPCクロマトグラムから求められるゲル成分の面積割合Aに対する半値幅Wの比が0.6以上であることから、ゲル成分の分布が極めて広いといった特徴を有する。従って、本共重合体ラテックスは、架橋点間分子量が極めて高く、従来に比べて、架橋成分の分布幅が広い、よりルーズな架橋構造を持つ。このため、ポリマーの凝集力及び接着力が極めて高く、高速印刷時における変形速度の極めて大きい衝撃に対して、従来以上に高い耐性を有することで、優れた接着強度を発現する。
また、本共重合体ラテックスに含有される重合体のうち、上記ゲル成分以外の重合体成分の重量平均分子量が5万以上である場合は、より接着強度及びベトツキ防止性に優れる。
【0059】
本発明の共重合体ラテックスの製造方法は、コア部を形成する重合工程及びシェル部を形成する重合工程を少なくとも有し、且つ、重合に関わる単量体の種類及び使用量を特定の範囲とすることによって、得られる共重合体ラテックスには、同一粒子内に低いガラス転移点を有する共重合体と高いガラス転移点を有する共重合体とが存在するコア/シェル型重合体を含む。このコア粒子においても、コア粒子の内部から表層にかけて相対的に硬くなるような異相構造に制御することで、上記の新規な架橋構造制御による効果と相まって、従来に比べ、ベトツキ防止性、接着強度、耐水強度のバランスが格段に向上する。
また、共重合体ラテックスの製造時に使用する分子量調節剤の全量を所定量以下とし、更にメルカプタン系分子量調節剤を用いる場合の使用量を少なくすることで、上記架橋構造の制御が可能となり、優れた接着強度を発現するとともに、低分子量の重合体成分の生成が抑制され、ベトツキ防止性が向上し、塗工操業性が著しく改善される。
更に、共重合体ラテックスの製造時に、還元剤を連続的に添加することにより、得られる共重合体ラテックスの機械的、化学的安定性が著しく向上し、塗工操業性を更に改善することができる。
【0060】
本発明の紙塗工用組成物は、上記共重合体ラテックスを用いた場合、その組成物の安定性が優れるために塗工操業性が一段と改善され、得られる塗工紙の表面強度が大幅に改良され、且つ、耐水性、インキ乾燥性、印刷光沢に優れ、しかも、ベトツキ防止性が著しく優れる。更に、広い印刷速度範囲にわたって塗工が可能であり、上記の優れた印刷適性を有する塗工紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】GPC測定によって得られるクロマトグラムであり、検出曲線の一例を示す説明図である。
Claims (8)
- 共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体を含む単量体を重合して得られる重合体を含有し、該重合体のGPC測定によって求められたゲル成分の含量が65〜85重量%であり、該ゲル成分の面積割合Aに対する半値幅Wの比(W×100)/Aが0.6以上であることを特徴とする共重合体ラテックス。
- 本共重合体ラテックスに含有される重合体のうち、上記ゲル成分以外の重合体成分の重量平均分子量が5万以上である請求項1に記載の共重合体ラテックス。
- 共役ジエン系単量体30〜70重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体1〜6重量%、及びこれらと共重合可能な他の単量体24〜69重量%を含む単量体(但し、全量を100重量%とする。)を60℃以下で重合してコア/シェル型重合体を含有する共重合体ラテックスを製造する方法において、
上記コア/シェル型重合体を構成するコア部は、該コア部の形成に関わる単量体全量のうちの10〜30重量%を重合する工程、及び残り70〜90重量%を各々異なる単量体組成にて2回以上に分けて添加しながら重合する工程によって形成させることを特徴とし、該コア部の形成の最終工程において、該コア部の形成に関わる単量体のうちの10〜40重量%を重合し、且つ、最終工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量を、該最終工程の直前の重合工程において用いられる共役ジエン系単量体の使用量より少なくして重合することを特徴とする共重合体ラテックスの製造方法。 - 上記重合工程において用いる分子量調節剤の使用量の合計は、用いる単量体全量の100重量部に対して1.5重量部以下であり、且つ、該分子量調節剤中のメルカプタン系分子量調節剤の含有割合が50重量%以下である請求項3に記載の共重合体ラテックスの製造方法。
- 上記重合は、還元剤を連続的に添加しながら行う請求項3又は4に記載の共重合体ラテックスの製造方法。
- 上記コア部の形成に用いる単量体は、該コア部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、共役ジエン系単量体40〜95重量%、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0〜5重量%、及びこれらと共重合可能な単量体を残部として含み、上記シェル部の形成に用いる単量体は、該シェル部の形成に関わる単量体全量を100重量%とした場合に、共役ジエン系単量体0〜30重量%及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体0.5〜30重量%を含む請求項3乃至5のいずれかに記載の共重合体ラテックスの製造方法。
- 上記重合に用いる単量体全量を100重量%とした場合に、コア部に用いられる単量体の割合が60〜90重量%、シェル部に用いられる単量体の割合が10〜40重量%である請求項3乃至6のいずれかに記載の共重合体ラテックスの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の共重合ラテックスを含有することを特徴とする紙塗工用組成物。
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