JP2004175845A - 高速塗装性に優れた絞り加工缶用外面塗料組成物及び該組成物の利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低分子量ポリエステル樹脂(A)、中分子量ポリエステル樹脂(B)、アクリルアミド系モノマーを共重合させてなるアクリル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)、低分子エポキシ樹脂(E)を必須成分とする塗料組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶外面塗料に関し、詳しくは複雑な絞り加工に対する塗膜の強靭性、高速塗装が要求される飲料缶用の外面塗料に関する。より詳しくは、塗膜の高加工性と低温短時間硬化性とロールコートでの高速塗装性能を要求される絞り加工缶の缶胴部に好適な、絞り加工缶用上塗りクリアー塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属缶は、従来、飲料、食品類等の、包装容器の一種として広く用いられてきている。これらの缶の外面は、防蝕、美装、内容物表示の目的で印刷及び塗装がなされている。例えば、缶胴部の外面は、金属表面の保護を目的とするサイズコーティングと称する下塗りを施し、この上に油性インキ等で文字・図柄等の印刷がなされた後、その上に表面保護や、時には外観向上を目的としてクリアー(もしくは仕上げワニス)と称する透明な上塗りが施される。あるいはサイズコーティングの上に、ホワイトコーティングと称する中塗りを設け、その上に印刷層を設け、その上に上塗りが施される。クリアー上塗り塗料による塗装は、工程合理化の観点から、未乾燥インキ上に行われ、クリアー層と同時に加熱乾燥させる方法が広く一般的に採用されている。
【0003】
金属包装容器のうち、底部と円筒状部材とが一体化し一方の端が開口している有底円筒状部材(2ピース缶の缶胴部部材、単に缶胴部部材ともいう)と、蓋状部材とを具備してなる容器の場合、缶胴部部材の外面に上記したような下塗り層等を設けた後、缶胴部の金属の開口端の口径を、底部の口径よりも小さくすることが一般的である。
従来は、缶胴部の開口端の口径を、底部の口径の80〜90%程度位までしか小さくできなかった。例えば、従来は底部の口径が60mm程度の有底筒状部材の開口部の口径を、底部直径よりも10mm程度小さくし、直径50mm程度にまで細く絞る加工が標準的であった。
【0004】
最近は、缶胴部の開口端の口径を、底部の口径の40〜70%程度にまで小さくする加工(以下、絞り加工ともいう)が、下地金属の適切な選択やそれを成型する加工技術を面からは確立しつつある。例えば、底部の口径が60mm程度の有底筒状部材の開口部の口径を25mm程度小さくし、直径35mm程度にまで細く絞る加工が採用されつつある。
【0005】
そこで、このような新しく複雑かつ過酷な加工に対応すべく、下地金属上及び下塗り塗膜上に塗布された外面塗膜にも、従来よりも厳しい性能が要求されることとなった。
しかし、従来の塗料組成物から形成される塗膜は脆く、絞り加工やその後の処理によって、亀裂が生じてしまうという新たな問題が生じた。
そこで、そのような過酷な条件でも塗膜が損傷を受けないようにするために、塗膜に強靭性を持たせるための工夫が近年色々と試みられている。
【0006】
特許文献1:特開平8−325513号公報、特許文献2:特開平9−249580号公報には、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びアミノ樹脂を必須成分とする缶内外面用塗料組成物が開示されている。また、特許文献3:特開平7−62295号公報、特許文献4:特開平9−194794号公報には、高分子直鎖型ポリエステル樹脂、低分子分岐型ポリエステル樹脂及びアミノ樹脂を必須成分とする缶外面用塗料組成物が開示されており、これらの場合加工性やウエットインキ適性や耐レトルト性はかなり改良されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−325513号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−249580号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平7−62295号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平9−194794号公報
【0011】
ところで、飲料缶用外面塗料には、作業性向上を目指し、短時間焼付(硬化)性が強く要求されるが、上記公報に開示された塗料組成物ではこのような要求を満足することができなかった。また、高屈折率のポリエステル樹脂を使用した結果、塗膜の光沢が低下するという問題があった。さらに飲料等用の缶は、塗装された後搬送する際に缶同士又は缶と搬送レール等とが接触し、擦り合わされるので外面塗膜には耐傷付き性が要求されるが、上記公報に開示された塗料組成物ではこのような要求を満足することができなかった。
【0012】
そこで、上記課題に対し、低分子量ポリエステル樹脂(A)、数平均分子量6000〜15000の高分子量ポリエステル樹脂(B)、アクリル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)及び必要に応じて低分子エポキシ樹脂(E)を含有する塗料組成物が提案された(特願2002−168102号参照、以下先願という)。
上記先願に提案された塗料組成物は、低温短時間焼付硬化性に優れ、光沢及び性能(高加工性、密着性、耐傷付き性、耐水性)に優れる塗膜を形成し得るものではあった。
しかし、新たに大きな問題が2つ生じた。即ち、(1)高速塗装によってミストが発生する、(2)ラップ部に縦スジが発生したように見える、という問題である。
【0013】
(1)高速塗装によるミストの発生。
塗料の塗装と焼付硬化は、一般に一連の工程で成される。従って、短時間焼付硬化に対する要求は、2つの側面を有している。即ち、まず第1に短時間焼付硬化で十分な塗膜性能を発現し得ること、そして第2に短時間塗装、つまり高速で塗装し得ること、である。
上記先願に提案された塗料組成物は、短時間焼付硬化で十分な塗膜性能を発現し得るものである。そこで、次に高速塗装を試みた。
2ピース缶の缶胴部部材の外面は、一般にロールコート塗装される。塗装速度を上げたところ、高速で回転するロールから2ピース缶の缶胴部部材の外面に塗料が転移する際に、塗料の糸引き現象が生じ、その結果塗料ミストが塗装機及びその周辺、並びに塗装中の缶自体に著しく飛散した。塗料ミストが、塗装機及びその周辺を汚染すると塗装ラインを停止させ、洗浄する必要がある。また、塗料ミストで汚染された塗装中の缶は、不良品となる。
【0014】
ところで、ミスト発生は、塗料粘度と塗装速度の影響を大きく受ける。従って、塗料を低粘度下することによって、ミスト発生を抑制・防止しつつ、高速塗装することができる。
高分子量ポリエステル樹脂(B)を低分子量化したり、全く含有しなかったりすることによって、塗料を低粘度下することはできる。しかし、高分子量ポリエステル樹脂(B)を低分子量化したりすると、絞り加工缶として最も求められる高加工性の要求を満足できなくなる。
あるいは、高分子量ポリエステル樹脂(B)を含有しつつも、塗料を希釈し低固形分化することによって、塗料の粘度低下を図ることも可能ではある。しかし、塗料の固形分を低下させると、必要とされる膜厚を確保し難いばかりでなく、焼付硬化により多くのエネルギーを必要とし、省エネルギー、環境保護等の観点からも好ましくない。
【0015】
(2)ラップ部の「縦スジ」の発生。
ところで、絞り加工缶の外面塗装におけるミスト発生にはもう1つの要因がある。
絞り加工缶を含め、2ピース缶の缶胴部外面のクリアー上塗り塗料は、未乾燥のインキ上に2度重ね塗り(ダブルコート)した後、一度で焼付硬化することが一般的である。このようなダブルコートは、未硬化のクリアー上塗り塗料上にさらにクリアー上塗り塗料を塗装するので、高速塗装による糸引き現象がより顕著になり、ミストもより発生し易い。
そこで、ミスト発生抑制を目的として、ダブルコートを止め、未乾燥のインキ上にクリアー上塗り塗料を1度だけ塗装する、シングルコートが要求されるようになった。
【0016】
しかし、シングルコートとはいっても高速塗装故に完全なシングルコートは無理であり、塗装の初めの部分に塗装の終わりの部分がごく僅かに重なり合う。即ち、缶胴部外面の缶底側と開口部側とを僅かな幅の直線で結ぶようにクリア塗膜の重なり合いが生じ、この僅かに重なり合い部分をラップ部という。
上記先願に提案された塗料組成物を用いて、シングルコート仕様で高速塗装を試みたところ、ダブルコートの場合よりミスト発生は多少抑制されるとはいうものの、まだ相当量発生するばかりでなく、ラップ部の外観が、缶胴部外面の大部分を占めるシングルコート部とは大きく異なった様相を呈する。つまり、通常缶胴部外面は上塗り塗料で形成されるトップコート塗膜の下にインキ層が存在し、缶胴部外面の天地(縦)を結ぶように位置するラップ部では、シングルコート部よりもラップ部の方がインキ層の濃度が著しく濃く見えてしまう。インキ層の濃度差が著しく異なることで、缶胴部外面の縦方向にスジが発生するので、以下「縦スジ」という。この「縦スジ」の発生は、缶の外面の外観を著しく損なう。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状を踏まえてなされたものであり、その目的とするところは、低温短時間焼付硬化性に優れ、光沢及び性能(高加工性、密着性、耐傷付き性、耐水性)に優れる塗膜を形成し、且つ生産効率向上を狙った高速塗装性に優れた絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、
皮膜形成成分として、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、アクリルアミド系モノマーを共重合させてなるアクリル樹脂(C)、アミノ樹脂(D)、低分子エポキシ樹脂(E)を必須成分とする塗料組成物が、短時間での焼付硬化性が可能であり、高加工性及び高速塗装性に優れる塗膜を形成し得ること、
また動植物系ワックスや合成ワックスやシリコン樹脂等の潤滑性付与物質を上記塗料に配合させることで、塗装後の缶を搬送する工程における缶外面塗膜の耐傷付き性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
即ち、第1の発明は、(A)〜(E)合計100重量%中に、
数平均分子量1000〜3000、水酸基価が50mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上であるポリエステル樹脂(A):5〜20重量%、
数平均分子量3000以上6000未満、ガラス転移温度(Tg)が0〜30℃であるポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを5〜20重量%含有するアクリル系モノマーを共重合させてなるアクリル樹脂であって、ガラス転移点Tgが−20〜50℃、数平均分子量が5000〜15000であるアクリル樹脂(C):5〜10重量%、
アミノ樹脂(D):35〜60重量%、
数平均分子量300〜1500、エポキシ当量180〜1000である低分子エポキシ樹脂(E):1〜10重量%
を必須成分として含有することを特徴とする絞り加工缶用外面塗料組成物であり、
【0020】
第2の発明は、ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が、50〜200mgKOH/gであり、ポリエステル樹脂(B)の水酸基価が、5〜30mgKOH/gであることを特徴とする第1の発明に記載の絞り加工缶用外面塗料組成物である。
【0021】
第3の発明は、アミノ樹脂(D)が、ベンゾグアナミン樹脂及び/又はベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合樹脂であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の絞り加工缶用外面塗料組成物である。
【0022】
第4の発明は、潤滑性付与剤を含有することを特徴とする第1ないし第3の発明のいずれかに記載の絞り加工缶用外面塗料組成物である。
【0023】
第5の発明は、一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設け、該下塗り層上に第1ないし第4の発明のいずれかに記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層を設けてなることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属であり、
第6の発明は、下塗り層と上塗り層との間に、中塗り層及び印刷層、又は印刷層が設けられてなることを特徴とする請求項5記載の外面被覆有底円筒状金属である。
【0024】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)は、広く知られている多塩基酸と多価アルコールの重縮合反応(エステル化反応)により合成することができる。この反応は常圧下、減圧下の何れで行っても良く、又分子量の調節は多塩基酸と多価アルコールとの仕込み比によって行うことができる。
【0025】
本発明におけるポリエステル樹脂(A)、(B)の合成に使用できる多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族二塩基酸類、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸類、また(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等の脂肪族二塩基酸類が挙げられ、塗膜の硬度と可撓性を勘案してこれらのうちから適宜選択して使用することができる。
【0026】
また、二価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、キシレングリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪族二価アルコール、又バーサチック酸グリシジルエステル、εカプロラクトン等の二価アルコール相当化合物が挙げられ、塗膜の硬度と可撓性を勘案してこれらのうちから適宜選択して使用することができる。
【0027】
また、三価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。合成に際しては、生成樹脂の分岐度、分子量を制御するために多価アルコールの量を調整し、また塗膜の硬度と可撓性とを勘案して、二価アルコールの種を適宜選択すれば良い。
【0028】
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)は、数平均分子量が1000〜3000の範囲内にあり、水酸基価は50mgKOH/g以上であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃以上であることが重要であり、数平均分子量は1500〜2500の範囲内にあることが好ましく、水酸基価は50〜200mgKOH/g以下であることが好ましく、50〜100mgKOH/gであることがより好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、40〜60℃であることが好ましい。
数平均分子量が1000未満の場合は、充分な塗膜性能(硬度、加工性、耐水性)を与えることができず、一方数平均分子量が3000を超えたり、水酸基価が50mgKOH/gよりも小さい場合には、水酸基が少なくなり、アミノ樹脂との反応性が低下するとともに、高速塗装時に塗料飛散(ミスト)が多くなる傾向を示す。また、Tgが40℃よりも小さくなると、形成される塗膜が軟化しやすく塗膜の硬度を低下させ結果として外部からの傷が発生しやすくなる。
【0029】
ポリエステル樹脂(A)の市販品としては、東洋紡績(株)社製のバイロン220(Mn=3000、水酸基価=50mgKOH/g、Tg=53℃)、ユニチカ(株)社製のエリーテルUE3320(Mn=1800、水酸基価=60mgKOH/g、Tg=40℃)等が挙げられる。
【0030】
また、本発明において用いられるポリエステル樹脂(B)は、数平均分子量が3000以上6000未満の範囲にあること及びガラス転移温度(Tg)が0〜30℃であることが重要であり、数平均分子量は3500〜5000の範囲にあることが好ましく、Tgは0〜20℃がより好ましい。
また、水酸基価は30mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上20mgKOH/g未満であることがより好ましい。
【0031】
低分子量のポリエステル樹脂(A)に対し、数平均分子量が6000以上の高分子量ポリエステルを併用すると、高加工性に優れる塗膜を形成し得る。
しかし、従来の技術の欄にも記載したように、このような塗料は、高粘度で高速塗装時にミストが発生する等の問題を有している。ミスト発生の抑制・防止等の観点からは、併用するポリエステル樹脂(B)の分子量を小さくすることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)に対して数平均分子量が6000以上の大きな分子量のポリエステル樹脂を併用すると、塗料の流動性が低下するので、ラップ部におけるクリア塗料の上層塗膜と下層塗膜との一体感が損なわれる。ポリエステル樹脂(A)に対して数平均分子量が6000未満の中程度の分子量のポリエステル樹脂を併用することによって、塗料の流動性が向上し、ラップ部におけるクリア塗料の上層と下層とがなじみやすくなり、両層の一体感が確保でき、周囲のシングルコート部と同様の様相を呈することができる。
【0032】
ミスト発生やラップ部の縦スジ発生を抑制・防止するという観点からは、より低分子量のポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(A)に対して併用することが好ましい。しかし、ポリエステル樹脂(A)に対して数平均分子量が3000未満のポリエステル樹脂を併用すると、従来よりTgを低くしても、分子量低下に伴う高加工性の低下を補うことができなくなる。
【0033】
このようなポリエステル樹脂(B)の市販品としては、東洋紡績(株)社製のバイロンGK−V897(Mn=4000、水酸基価=30mgKOH/g、Tg=17℃)、Dynamit Nobel社製のダイナポールLH829(Mn=3000、水酸基価=35mgKOH/g、Tg=25℃)、ダイナポールLH773(Mn=4000、水酸基価=35mgKOH/g、Tg=30℃)等が挙げられる。
【0034】
上記重縮合反応で得られた両ポリエステル樹脂(A)及び(B)は、溶剤に溶解した溶液の形で塗料調整に供される。この溶剤にはポリエステル樹脂を希釈可能なものであれば制限なく使用できる。たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、セロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系の各種溶剤が挙げられる。
両ポリエステル樹脂(A)及び(B)溶液の固形分濃度は、いずれも通常20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。70重量%を超える場合には高粘度で取り扱いが困難となり、20重量%に満たない場合には調整した塗料の粘度が低くなりすぎる。
【0035】
次に本発明に用いられるアクリル系樹脂(C)について説明する。
アクリル樹脂(C)は、上記した両ポリエステル樹脂(A)及び(B)とアミノ樹脂との相溶性を向上し、ウエットインキ特性、光沢及び硬化性を向上する機能を担う。
本発明におけるアクリル樹脂(C)は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドモノマー(a)を5〜40重量%含有するアクリル系モノマーを従来公知の種々の重合方法、例えば有機溶剤中でラジカル重合させて得ることができる。
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドモノマー(a)との共重合に用いられる上記(a)以外のモノマーとしては、α、βーエチレン性不飽和二重結合及び−COOHを有するモノマー(b)、上記(a)、(b)以外のα、βーエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであってガラス転移温度が−85〜0℃の単独重合体を形成し得る低Tgモノマー(c)、上記(a)〜(c)と共重合可能な他のモノマー(d)を挙げることができる。
【0036】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に用いられるN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマー(a)としては、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、好ましくはN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
このようなモノマー(a)は、モノマー(a)〜(d)の合計の100重量%中に5〜20重量%の範囲にあることが重要であり、10〜18重量%の範囲にあることがより好ましい。モノマー(a)は、硬化塗膜を形成する際に自己縮合したり、上記ポリエステル樹脂(A)及び(B)と反応し得る官能基をアクリル樹脂(C)に導入する機能を担うので、このような自己縮合性モノマー(a)が、全モノマー100重量%中5%未満になると塗膜の架橋密度が低下し、その結果塗膜の傷つき性、塗膜硬度が低下してしまう。一方、モノマー(a)が、全モノマー100重量%中20重量%を超えると、モノマー(a)の自己縮合反応が促進して塗膜の架橋密度が増大し、その結果として本来発揮すべき加工性やインキ層、下塗り塗膜との密着性、及び塗膜硬度や耐溶剤性が低下してしまう。
【0037】
アクリル樹脂(C)を得る際に用いられ得るα、β−エチレン性不飽和二重結合及び−COOHを有し、上記(a)と共重合し得るモノマー(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマーが挙げられ、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。これら−COOH基含有モノマー(b)の使用量は、(a)〜(d)モノマー100重量%中1〜10重量%であることが好ましい。1重量%未満では基材に対する密着性が低下する傾向にあり、一方、10重量%を超えると、塗膜の耐熱水性を低下させる傾向にある。
【0038】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に用いられ得るα、β−エチレン性不飽和二重結合を有し、ガラス転移温度が−85〜0℃の単独重合体を形成し得る低Tgモノマー(c)としては、エチルアクリレート(−22℃)、イソプロピルアクリレート(−5℃)、n−ブチルアクリレート(−54℃)、n−ヘキシルメタアクリレート(−5℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)、n−ラウリルアクリレート(−3℃)、n−ラウリルメタアクリレート(−65℃)、イソオクチルアクリレート(−45℃)、フェノキシエチルアクリレート(−25℃)、トリデシルメタアクリレート(−46℃)が挙げられる。低Tgモノマー(c)の使用量は、(a)〜(d)全モノマー100重量%中20〜60重量%であることが重要であり、30〜55重量%であることが好ましい。低Tgモノマー(c)が、20重量%未満だとクリアー塗膜層とインキ層との相溶性及び塗膜の柔軟性が低下し易く、その結果としてインキ層上のクリアー塗膜に必須とされる光沢や加工性、密着性が低下する。一方、低Tgモノマー(c)が60重量%を超えると、形成される塗膜の耐傷付き性、硬度、耐臭気吸着性が低下し易い。
【0039】
本発明においてアクリル樹脂(C)を得る際に必要に応じて用いられる他のモノマー(d)は、上記(a)〜(c)と共重合しうるものであれば特に制限は無く、結果として共重合されたアクリル樹脂(C)のポリマーのTgが−20〜50℃に調整可能なモノマーが好ましい。例えば、メチルアクリレート(単独重合体のTg:8℃、以下同様)、n−ブチルメタアクリレート(20℃)、酢酸ビニル(30℃)、エチルメタアクリレート(65℃)、メチルメタアクリレート(105℃)、イソプロピ ルメタアクリレート(81℃)、イソブチルメタアクリレート(67℃)、t−ブチルメタアクリレート(107℃)、スチレン(100℃)、イソボロニルアクリレート(94℃)、シクロヘキシルメタアクリレート(66℃)等が挙げられる。また−OH基含有モノマーとしては、2−ヒドロキエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタアクリレートやε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらのモノマーの使用量は、(a)〜(d)の全モノマー100重量%中0〜40重量%であることが好ましい。
【0040】
本発明において上記アクリルモノマーを使用してアクリル樹脂(C)を得る際に用いられる重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、tーブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、又は2,2−アゾビスイソブチルニトリルのようなアゾ化合物が挙げられ、これらを使用してラジカル重合反応を行えばよい。
さらに重合反応時に使用する溶剤としては、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチルー3−メトキシブタノール等のグリコール系溶剤、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系が挙げられる。
【0041】
上記のようにして得られるアクリル樹脂(C)は、数平均分子量が5000〜15000であり、7000〜10000であることが好ましい。数平均分子量が5000未満となると、低分子物による加工性の低下が見られ、数平均分子量が15000を越えると配合される高分子ポリエステル樹脂(B)との相溶性が劣り、結果として加工性や硬化性が劣る。
また、上記のようにして得られるアクリル樹脂(C)のTgは、−20〜50℃であり、Tgが−20℃未満のアクリル共重合体を用いると、塗膜の伸縮性は向上するものの、塗膜硬度と耐傷つき性が劣る。一方、アクリル共重合体のTgが50℃を越えると、合成されたアクリル樹脂の樹脂溶液粘度が増大するので、結果として高分子ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、不揮発分50%以上の高固形分の塗料を得ることが困難となり、また塗膜の密着性も劣る。
【0042】
本発明において用いられるアミノ樹脂(D)は、一般に広く知られているベンゾグアナミンやメラミンのアミノ基の一部又は全部にホルムアルデヒドを付加してメチロール化した後、縮合させてなるものであり、イミノ基、メチロール基、またはメチロール基にアルコールが付加したメトキシ基を有し、これらの基を併せ持つものもある。
本発明において用い得るアミノ樹脂(D)としては、ベンゾグアナミン樹脂(ベンゾグアナミンの縮合物)、メラミン樹脂(メラミンの縮合物)の他、ベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂(ベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合物)が挙げられ、ベンゾグアナミン樹脂及び/又はベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂が好ましく、耐ブロッキング性の観点から両者を併用することがより好ましい。
尚、メラミン系アミノ樹脂を用いた場合には、自己縮合反応が促進され、硬化性と加工性が低下する傾向にある。
【0043】
ベンゾグアナミン樹脂としては、メチロール基の一部が部分的にメタノール又はブタノールでエーテル化されたメトキシ化ベンゾグアナミン樹脂、又はブトキシ化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。さらにベンゾグアナミン核1個あたり0.5〜2.0個のイミノ基を有するアミノ樹脂を用いることが好ましい。イミノ基が0.5個未満の場合、反応性の低下から耐臭気吸着性、耐沸水性、硬化性が低下する傾向にある。一方、イミノ基が2.0個を超えると、加工性、密着性が低下する傾向にある。
また、ベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂としては、ベンゾグアナミン樹脂の場合と同様にメチロール基の一部もしくは全部がエーテル化されてなる樹脂が挙げられる。
【0044】
ベンゾグアナミン樹脂の市販品としては、日立化成工業(株)社製のメラン359S、メラン310XK−IB、メラン3290、大日本インキ化学(株)社製のスーパーベッカミンTD−126等が挙げられる。
また、ベンゾグアナミン/メラミン共縮合樹脂の市販品としては、日立化成工業(株)社製のメラン322BK、メラン3270等が挙げられる。
【0045】
本発明においては被膜形成成分の1つとして、さらに数平均分子量300〜1500、エポキシ当量180〜1000である低分子エポキシ樹脂(E)を必要に応じて用いることができる。低分子エポキシ樹脂(E)としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(数平均分子量:900、エポキシ当量:450〜500)等を挙げることができる。
【0046】
本発明の塗料組成物は、上記した(A)〜(E)各成分を、塗料を構成する皮膜形成成分、即ち(A)〜(E)100重量%中に、
ポリエステル樹脂(A):5〜20重量%、
ポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、
アクリル樹脂(C):5〜10重量%、
アミノ樹脂(D):35〜60重量%、
低分子エポキシ樹脂(E):1〜10重量%を含有することが重要である。
【0047】
ポリエステル樹脂(A)の含有量が5重量%未満となり、ポリエステル樹脂(B)の含有量が40重量%を超えると、加工性は向上するものの官能基である−OH基が少ないため低温焼付での硬化性が劣り、ロールコートでの高速塗装時に塗料ミストが多く発生しやすい。
一方、ポリエステル樹脂(A)の含有量が20重量%を超え、ポリエステル樹脂(B)の含有量が、10重量%未満となると加工性を維持させるべく配合させた特徴のあるポリエステル樹脂(B)の含有量が少なくなり、結果として十分な加工性を得ることができない。
【0048】
アクリル樹脂(C)の含有量が5重量%未満の場合、ポリエステル樹脂(B)とアミノ樹脂(D)との相溶性が劣り結果として光沢性が劣る。また、一般的にポリエステル樹脂とインキ層の相溶性を向上させる効果が少なくなり、結果としてウエットインキ適性が劣る。一方、アクリル樹脂(C)の含有量が10重量部を超えると、ポリエステル樹脂(B)とアクリル樹脂(C)との相溶性が悪くなり、塗膜が白濁してしまい、光沢の面で劣った塗膜しか得られず、また加工性も低下する傾向を示す。
【0049】
本発明において使用されるアミノ樹脂(D)の含有量が35%未満では、形成される塗膜の耐傷付き性、耐熱水性、硬化性、硬度が低下する。一方、アミノ樹脂(D)の含有量が60重量%を超えると形成される塗膜の加工性、密着性が低下する傾向にある。
また、ベンゾグアナミン単独系アミノ樹脂にベンゾグアナミン/メラミン共縮合系アミノ樹脂を併用した場合、ベンゾグアナミン単独系/共縮合系の比率は100/0〜50/50が好ましい。ベンゾグアナミン単独系/共縮合系の比率が50/50より小さいと短時間焼付性において耐溶剤性は向上するものの加工性において低下する傾向を示す。
【0050】
本発明において低分子エポキシ樹脂(E)は、(A)〜(E)合計100重量%中1〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%であることがより好ましい。1重量%以下では下塗り層及びインキ層との密着性が劣り、煮沸後の塗膜の界面剥離が発生する。10重量%を超えると、相対的に低分子成分が増えるので加工性、耐沸水性が劣る。
【0051】
本発明の塗料組成物には、必要に応じて、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、リン酸等の酸触媒、又は前記酸触媒をアミンブロックしたものを、全樹脂(A)〜(E)100重量部に対して0.05〜4.0重量部添加して使用することができる。
特に弱酸タイプであるリン酸系触媒もしくは該リン酸系触媒をアミンブロックしたものを用いると塗膜の加工性が向上するので好ましい。短時間焼付性と加工性のバランスがとりやすくなるので、全樹脂(A)〜(E)100重量部に対してリン酸系触媒もしくは該リン酸系触媒をアミンブロックしたものを0.05〜0.5重量部添加することがより好ましい。
【0052】
本発明の塗料組成物には、さらに潤滑性付与剤を含有することができる。
潤滑性付与剤としては種々のワックス、シリコーンオイルが用いられる。ワックスは、天然又は合成いずれでもよく、天然ワックスは動物系、植物系いずれであっても良い。また、合成ワックスとしては、ポリオレフィン系、フッ素系ワックスの他に、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物も用いることができる。シリコーンオイルはシリコン樹脂に多種変性した変性シリコーン樹脂を用いることができる。また、潤滑性付与剤は2種類以上を併用することもでき、動植物系ワックス、ポリオレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスを併用することが好ましい。潤滑性付与剤は、(A)〜(E)の合計100重量部に対して0.5〜5重量部配合することが好ましく、1〜3重量部配合することがより好ましい。
【0053】
本発明の塗料組成物は、各種基材、例えば金属板、プラスチックフィルム、又は金属板にプラスチックフィルムを積層してなるもの等に、ロールコート、コイルコート、スプレー、刷毛塗り等公知の手段により塗装することができる。金属板としては、電気メッキ錫鋼板、アルミニウム鋼板、ステンレス鋼板が挙げられ、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のプラスチックのフィルムが挙げられる。
【0054】
尚、本発明にいう数平均分子量とは、ゲルパーミュエイションクロマトグラフィー(以下、GPCという)における標準ポリスチレン換算の値であり、Tgはプローブ接触進入型の熱分析装置(TMA)で測定された塗膜のガラス転移点(℃)の数値を示す。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。例中、「部」とは重量部、「%」とは重量%をそれぞれ示す。
【0056】
合成例1(ポリエステル樹脂(A−1)溶液の調整)
東洋紡績(株)社製のポリエステル樹脂「バイロン220」(数平均分子量3000、水酸基価50mgKOH/g、酸価2以下)をソルベッソ#150/ブチルセロソルブ=50/50の混合溶剤にて希釈して固形分60%のポリエステル樹脂(A−1)溶液を得た。
【0057】合成例2〜3
合成例1と同様に表1に示すポリエステル樹脂(A−2)〜(A−3)溶液を調整した。
【0058】
合成例4〜7
合成例1と同様に表1に示すポリエステル樹脂(B−1)〜(B−4)溶液を調整した。
【0059】
【表1】
【0060】合成例8(アクリル樹脂C−1の製造)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽、温度計、窒素ガス導入管を具備した容量1リットルの四ツ口フラスコに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル141部、N−ブタノール42部、ソルベッソ#150を233部を仕込み、110℃まで昇温した。同温を保持しつつ、滴下槽から、アクリル酸27部、アクリル酸ブチル 219部、スチレン219部、N−メトキシメチルメタアクリルアミド82部、過酸化ベンゾイル10部の混合液を4時間に亘って連続滴下した。滴下終了1時間後に過酸化ベンゾイル3部を添加し、更に2時間反応を行った。生成溶液を80℃まで冷却し、ソルベッソ#150を19部添加し混合して、数平均分子量10000、Tgが9℃の透明なアクリル樹脂(C−1)溶液を得た(不揮発分55.0%、粘度W)。
【0061】合成例9〜10
合成例8と同様にして表2に示すアクリル樹脂(C−2)〜(C−3)を合成した。
【0062】比較合成例1〜5(アクリル樹脂C−4〜C−8の製造)
合成例8と同様にして表2に示すアクリル樹脂(C−4)〜(C−8)を合成した。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例1〜12及び比較例1〜14)
合成例1〜10、比較合成例1〜14で得られたポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂とを表3、4に示す割合で配合し、さらに傷付き防止のために潤滑性付与剤(動植物物系ワックス溶剤分散体、合成ワックス溶剤分散体、シリコン樹脂溶液)を表3、4に示す割合で配合し、これにソルベッソ#150とブチルセロソルブの混合溶剤で希釈して不揮発分55%のクリアー塗料を調整した。
【0065】
(参考例)
参考例として、特許文献5に提案された塗料組成物(実施例5)を参考にしたクリアー塗料を調整し、塗料ミスト飛散試験及びインキ色相差試験に供試した。
【0066】
得られたクリアー塗料を用いて2種類の試験片を得、以下に示す試験を行った。結果を表3、4に示す。
<試験片1>:厚さ0.28mmのアルミ板にポリエステル系のサイズコーティング塗料を乾燥後膜厚が2μmとなるように塗布し、雰囲気温度190℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥させた。この上に乾性油アルキッド樹脂またはポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とするインキを印刷し(1.5μm)、インキが未乾燥の状態で上記のクリアー塗料を乾燥後膜厚が5μmとなるように塗布し、雰囲気温度200℃のガスオーブンで1分間加熱乾燥した。さらに内面塗装のために雰囲気温度200℃のガスオーブンで3分間追加で加熱乾燥を行った。
<試験片2>:インキ層を設けなかった以外は、試験片1と同様にして試験片2を得た。
【0067】
<加工性試験>
試験片2を用いて、四変缶打抜き加工したもの(底面の形状:約33mm×35mm×35mm×37mm、4つの角のアールがそれぞれ異なる四辺形、高さ約20mm)を30分間煮沸処理し、塗膜の剥離と割れの程度を下記基準により目視で判定した。
◎:優良 ○:良好 △:やや不良 ×:不良
【0068】
<耐衝撃性試験>
試験片1について、デュポン衝撃試験機を用いて、下記条件にて耐衝撃性試験を行い、衝撃部の塗膜の剥離状態を目視で評価した。
撃芯径:1/2インチ、荷重:300g、落下高さ:30cm
評価基準:(剥離なし)5点−1点(衝撃部全て剥離)。4点以上が実用レベル。
【0069】
<光沢性>
試験片1を用いて、グロスメーターΣー80、VG−1D(日本電色工業(株)製)にて光源入射角度60°条件でのグロスを測定した。
5:90以上
4:85以上90未満
3:80以上85未満
2:75以上80未満
1:75未満
【0070】
<ウエットインキ適性>
試験片1の塗装面を10倍ルーペで観察し、インキ層のにじみ、凝集及びへこみ等の有無を以下の判断基準で判定した。
◎:優良 ○:良好 △:やや不良 ×:不良
【0071】
<密着性試験>
試験片1を30分間煮沸(ボイル)処理した後、塗膜にカッターを使用して碁盤目上に切り込みを入れ、セロハンテープを貼着した後、セロハンテープを剥離する際に剥離した面積%で密着性を評価した。
「0%」が最も良好(剥離なし)であり、全く剥離しないことを示す。
【0072】
<耐沸水性試験>
試験片1を30分間煮沸(ボイル)処理した後、塗膜の白化程度を目視で評価した。
評価基準:(良好)5点−1点(全面白化)。4点以上が実用レベルである。
【0073】
<ラビング性>
メチルエチルケトン(MEK)で湿らせたガーゼで試験片1の塗膜を擦り、塗膜が剥がれる時点の往復回数を調べた。
◎:50回以上 ○:21〜49回 △:6〜20回 ×:0〜5回
【0074】
<湯中鉛筆硬度>
試験片1を80℃の湯中に浸漬し、湯中での鉛筆硬度を測定した。
判断基準:塗膜に傷が付かない最も硬い硬度で表示。H以上が実用レベル。
【0075】
<耐傷付き性試験>
新東科学(株)製トライボギアHEIDON−22H型試験機にて、ダイヤ針に一定の荷重をかけて、試験片1の塗膜表面を往復磨耗させ、塗膜に傷が発生するまでの往復磨耗回数を測定した。
測定条件 :一定荷重方式
引っ掻き速度 :200mm/分
引っ掻き針 :ダイヤ針 200ミクロン
測定温度 :25℃
荷重 :80g
◎:100回以上 ○:70〜100回 △:50〜70回 ×:50回以下
【0076】
<塗料ミスト飛散量試験>
(A)インコメーター試験機
(株)東洋精機製作所社製デジタルインコメーターにて、メタルロール(直径76.2mm)とバイブレーションロール(NBRゴム、直径50.8mm)の間に試験塗料1gをスポイトで添加し、メタルロールを1500rpm(周速度360m/min)及び2500rpm(周速度595m/min)でそれぞれ回転し、両ロール下においたアルミ板上に飛散した塗料量(ウエット重量)を測定し、以下の基準で評価した。
5:飛散量5mg以下(良好)、
4:飛散量10mg以下、
3:飛散量20mg以下、
2:飛散量50mg以下、
1:飛散量50mg以上(劣る)
【0077】
<シングルコート部とダブルコート部との色相差試験>
シングルコート(1回塗布)の試験片:試験片1の場合と同様にして、サイズコーティング塗膜上に乾性油アルキッド樹脂またはポリエステル樹脂をビヒクルの主成分とするインキを印刷し(1.5μm)、インキが未乾燥の状態で上記のクリアー塗料を乾燥後膜厚が5μmとなるように塗布し、加熱乾燥した。
ダブルコート(2回塗布)の試験片:インキが未乾燥の状態で上記のクリアー塗料を2回ウェット オン ウェットにて塗布し乾燥後膜厚が7.5μm(シングルコートの約1.5倍量の膜厚)となるようにした以外は、上記シングルコートの場合と同様にして、試験片を得た。
シングルコートの試験片とダブルコートの試験片とのインキ層の色相差を目視にて評価した。
◎:差が全くない。 ○:差がない。 △:差がややある。 ×:差が顕著。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
表3,4に示した略号1)〜4)は以下を表わす。
1)ベンゾグアナミン系アミノ樹脂:日立化成工業(株)社製メラン310XK−IB(不揮発分72%)
2)ベンゾグアナミン/メラミン共縮合系アミノ樹脂:日立化成工業(株)社製メラン3270(不揮発分72%)
3)エポキシ樹脂:エピコート1001(数平均分子量:900、エポキシ当量:450〜500、ジャパンエポキシレジン(株)製)ブチルセロソルブ溶液;不揮発分60%)
4)潤滑性付与剤:
動植物系ワックス分散体;ハイディスパーBC−8PC((株)岐阜セラック製造所製)/合成系ワックス分散体:ハイフラットBC−10P2((株)岐阜セラック製造所製)、ハイディスパー3050((株)岐阜セラック製造所製)/シリコーン変性樹脂:BYK−370(ビックケミー(株)製)=50/35/10/5で配合したもの。
5)酸触媒:リン酸系触媒 NACURE4054(KINGインダストリーズ社製)
6)溶剤:ブチルセロソルブ/ソルベッソ#150=50/50の割合で配合。
【0081】
【発明の効果】
本発明による絞り加工缶用クリアー外面塗料組成物は、高加工性を要求される絞り加工缶に好適であり、同時に生産効率向上を狙った高速塗装性に優れており、かつ飲料缶の上塗り外面クリアー塗料に必須となる光沢性、塗膜硬度、硬化性、耐水性、傷付き性に優れる塗膜を形成し得るものである。
Claims (6)
- (A)〜(E)合計100重量%中に、
数平均分子量1000〜3000、水酸基価が50mgKOH/g以上、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上であるポリエステル樹脂(A):5〜20重量%、
数平均分子量3000以上6000未満、ガラス転移温度(Tg)が0〜30℃であるポリエステル樹脂(B):10〜40重量%、
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド系モノマーを5〜20重量%含有するアクリル系モノマーを共重合させてなるアクリル樹脂であって、ガラス転移点Tgが−20〜50℃、数平均分子量が5000〜15000であるアクリル樹脂(C):5〜10重量%、
アミノ樹脂(D):35〜60重量%、
数平均分子量300〜1500、エポキシ当量180〜1000である低分子エポキシ樹脂(E):1〜10重量%
を必須成分として含有することを特徴とする絞り加工缶用外面塗料組成物。 - ポリエステル樹脂(A)の水酸基価が、50〜200mgKOH/gであり、ポリエステル樹脂(B)の水酸基価が、5〜30mgKOH/gであることを特徴とする請求項1記載の絞り加工缶用外面塗料組成物。
- アミノ樹脂(D)が、ベンゾグアナミン樹脂及び/またはベンゾグアナミンとメラミンとの共縮合樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の絞り加工缶用外面塗料組成物。
- 潤滑性付与剤を含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の絞り加工缶用外面塗料組成物。
- 一方の端が開口している有底円筒状金属の円筒部外面に下塗り層を設け、該下塗り層上に請求項1ないし4いずれか記載の絞り加工缶用上塗り外面塗料組成物から形成される上塗り層を設けてなることを特徴とする外面被覆有底円筒状金属。
- 下塗り層と上塗り層との間に、中塗り層及び印刷層、又は印刷層が設けられてなることを特徴とする請求項5記載の外面被覆有底円筒状金属。
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