JP2004168913A - 紫外線吸収性複合粉体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた紫外線吸収能を有し、かつ、透明性に優れた、シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤を用いた、紫外線遮蔽基剤を提供すること。
【解決手段】下記の成分(1)および(2)が複合化された複合粉体粒子からなる、紫外線吸収性複合粉体を提供し、これを化粧料等において用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見いだした。
(1)シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤(以下、不溶性紫外線吸収剤ともいう)。
(2)下記(a)および/または(b)
(a)有機溶媒に可溶な高分子
(b)一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧料等の外用組成物の原料、及び、これを含有する外用組成物に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
現在、多くの種類の紫外線吸収剤が、化粧品等において用いられている。しかも、太陽からの紫外線の有害性がクローズアップされており、一層、紫外線吸収剤の化粧品の分野における需要が高まりつつある。
【0003】
しかしながら、常温で固体の紫外線吸収剤の多くが、化粧品等に用いられる油分、特に、化粧品原料として汎用性の高い、シリコーン油等に、難溶または不溶であるため、これらの紫外線吸収剤の化粧品等への配合量が限定されていた。
【0004】
このような状況下、常温で固体の紫外線吸収剤の粒子を、さらに微細化し、紫外線防御能を向上させる試みもなされており、例えば、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕の平均粒子径を、200nmまで微細化したものが提供されている[例えば、チノソーブM(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)。
【0005】
しかしながら、このような改善を行っているにもかかわらず、例えば、紫外線吸収剤に不透明感が伴い、これを多量配合した化粧品を使用すると、白く、不自然な仕上がりになってしまう傾向等が認められている。
【0006】
ここに列挙する文献のうち、特許文献1は、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕についての基本的な文献であり、特許文献2は、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕の水分散体と他の紫外線吸収剤を配合したサンスクリーン基剤についての文献であり、特許文献3は、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕の結晶を非晶質化して、製品への配合を容易化した技術についての文献である。
【0007】
また、特許文献4は、特定の分散剤を用いた、樹脂練り込み型紫外線防御粉末についての文献であり、特許文献5は、透明性と、耐紫外線性に優れたプラスチック折板波板についての文献であり、特許文献6は、防汚性と耐久性に優れ、紫外線遮蔽性も有する複合フィルムに関する文献である。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−290877号公報
【特許文献2】
特開平11−100317号公報
【特許文献3】
特表2001−526711号公報
【特許文献4】
特開平1−74284号公報
【特許文献5】
特開平9−57881号公報
【特許文献6】
特開平8−150681号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、優れた紫外線吸収能を有し、かつ、透明性に優れた、シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤を用いた、紫外線遮蔽基剤を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この課題の解決手段として、シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤を、特定の結合成分と複合化して、微粒子粉末化すれば、シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤を用いつつ、優れた紫外線吸収能を有し、かつ、透明性に優れる紫外線遮蔽基剤を提供することが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の成分(1)および(2)が複合化された複合粉体粒子からなる、紫外線吸収性複合粉体(以下、本複合粉体ともいう)を提供する発明である。
(1)シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤(以下、不溶性紫外線吸収剤ともいう)。
(2)下記(a)および/または(b)
(a)有機溶媒に可溶な、高分子(以下、可溶性高分子ともいう)
(b)一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物(以下、特定微粒子金属等ともいう)
また、本発明は、本複合粉体を含有する外用組成物(以下、本外用組成物ともいう)を提供する発明でもある。
【0012】
なお、本発明において、外用組成物とは、外皮(頭皮・頭髪を含む)において使用する組成物を意味するものであり、その限りで、化粧料、医薬品、医薬部外品等の薬事法上の分類に限定されるものではない。また、本発明で常温とは、概ね0〜40℃である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
不溶性紫外線吸収剤
不溶性紫外線吸収剤としては、化粧料において用いられる油分、特に、シリコーン油に不溶な性質を有するものを選択することが好適である。例えば、パラメトキシ桂皮酸2−エトキシエチルのように、常温で液体であって、かつ、シリコーン油との相溶性が認められるものは、そのまま、化粧料の配合成分として用いることで、その紫外線吸収剤本来の紫外線遮蔽効果を発揮させることが可能であるため、本発明を積極的に適用する必要性に乏しい。
【0014】
不溶性紫外線吸収剤としては、例えば、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス−[{4−(2−エチルヘキソロキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル]−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(3‘−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5‘−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を挙げることができる。また、下記(I)で表されるベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤のうち、常温で固体であり、シリコーン油に不溶で、有機溶媒に可溶な化合物も、本発明の好適な対象となり得る。
【0015】
【化1】
Figure 2004168913
【0016】
〔式中、R およびR は、同一でも異なってもよく、炭素原子数が1〜4のアルキル基、同5〜12のシクロアルキル基、および、アリール基から選ばれる1または2以上の基で置換されていることがある、炭素原子数が1〜18のアルキル基である〕
【0017】
このベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤(I)は、既に既知の、メチレンビス(ヒドロキシフェニル−ベンゾトリアゾール)誘導体である(米国特許第5237071号、同5166355号等)。
【0018】
式(I)において、R とR がとり得る、炭素原子数が1〜18のアルキル基は、直鎖状または分枝状であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソ−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、テトラメチルブチル基、テトラデシル基、ヘキシルデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、これらの炭素原子数が1〜18のアルキル基が置換されることがある、炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられ、また、同アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、R とR が、同一であり、かつ、これらの基が、共に、メチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、または、tert−ブチル基であることが好適であり、R とR が、共に、1,1,3,3−テトラメチルブチル基であることが、極めて好適である。この極めて好適な、ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤(I)、すなわち、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕は、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社から、チノソーブ(TINOSORB)M、として、平均粒径200nm程度に微細化された水分散体の形態で市販されており、本発明においては、この水分散体から有効成分である、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕を抽出して用いることができる。このチノソーブMからの有効成分の抽出は、常法に従って行うことができる。例えば、チノソーブMに、質量比で10倍量程度のイソプロピルアルコールを添加し、超音波で分散させた後、濾過行程を5回程度行い、有効成分を固形分として分離する等により、有効成分の抽出を行うことができる。
【0020】
不溶性紫外線吸収剤は、本複合粉体の製造工程においては、通常、有機溶媒に溶解させて用いることが好適である。かかる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸、ピリジン等の、一般的な有機溶媒の1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
有機溶媒における不溶性紫外線吸収剤の溶解量は、特に限定されないが、少なくとも有機溶媒の1質量%以上であることが好適である。有機溶媒の1質量%未満であると、不溶性紫外線吸収剤の溶媒の容積当たりの量が少なく、効率的に本複合粉体を製造することが困難となる。また、不溶性紫外線吸収剤の溶解量の最大値は、用いる有機溶媒に対する不溶性紫外線吸収剤の飽和量まで、自由に選択することが可能であるが、通常は、有機溶媒の50質量%以下であることが好適である。
【0022】
特定マトリクス成分との均一分散混合物
本複合粉体の製造工程において、特定マトリクス成分(a)および/または(b)は、通常、不溶性紫外線吸収剤が溶解している、上記の有機溶媒中に添加されて用いられる。よって、特定マトリクス成分の選択に際しては、少なくとも、不溶性紫外線吸収剤を溶解させた溶媒に可溶な成分を選択することが好適である。すなわち、好適には、かかる有機溶媒に対する溶解性の条件に従いつつ、特定マトリクス成分(a)および(b)から、1種、または、2種以上[特定マトリクス成分(a)および(b)の各々から、2種以上の特定マトリクス成分を選択することも可能である]を選択して、本発明において用いることができる。
【0023】
(a)可溶性高分子
可溶性高分子としては、例えば、PMMA、スチレン、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートイソブチレート、ポリエチレン、酢酸ビニル、PVC等の、上記の有機溶媒に易溶または可溶なものを挙げることが可能であり、これらの可溶性高分子は、1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの可溶性高分子の中でも、PMMA,セルロースアセテートイソブチレートが、多種類の有機溶媒に可溶であり、また、生体への親和性に優れる高分子である故に好適である。
【0024】
これに対して、例えば、ポリエチレンテレフタートのような、ほとんど全ての有機溶媒に不溶な高分子は、好ましくない。
また、用いる不溶性紫外線吸収剤と可溶性高分子の溶解度パラメーターが、可溶性高分子を選択する際の重要な要素の一つとなる。
【0025】
すなわち、不溶性紫外線吸収剤と可溶性高分子の溶解度パラメーターは、可能な限り一致することが好適である。具体的には、不溶性紫外線吸収剤と可溶性高分子の溶解度パラメーターの差の絶対値が、1.0以下であることが好適であり、同0.5以下であることが特に好適である。
【0026】
溶解度パラメーターとは、一般的には、下記式
【0027】
【数1】
Figure 2004168913
【0028】
で表される、固体および液体の凝集性から求められる因子であり、近似した溶解度パラメーターの固体と液体は、凝集性と分散性が類似しているため、お互いに混和しやすい傾向があることが知られている(例えば、栗原福次著「高分子材料大百科」(1999年)日刊工業新聞社等)。
【0029】
本発明においては、不溶性紫外線吸収剤と可溶性高分子の溶解度パラメーターを近似した値とすることにより、これらを均一に混和することが容易となり、不溶性紫外線吸収剤と可溶性高分子が、稠密に混ざり合いつつ複合化した本複合粉体を製造することが可能となる。このような基準により好適な態様で製造した本複合粉体は、紫外線遮蔽効果に優れ、かつ、可視光線の透過性にも優れているので、透明性が高い傾向が認められる。
【0030】
例えば、不溶性紫外線吸収剤として、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕を用いる場合、この不溶性紫外線吸収剤の溶解度パラメーターは、9.9で近似されるから、同10.0で近似されるヒドロキシプロピルセルロース、同9.5で近似されるセルロースアセテートイソブチレート、同9.3で近似されるPMMA、同9.0で近似されるポリスチレン等を可溶性高分子として選択することが好適であり、特に、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートイソブチレートは、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕との組み合わせにおいて好適な可溶性高分子である。
【0031】
特定マトリクス成分として、可溶性高分子を用いると、有機溶媒を揮発させる際、高分子マトリクス内に、不溶性紫外線吸収剤が、非常に微細な形で取り込まれたまま粉末化され、この可溶性高分子と不溶性紫外線吸収剤が複合化されることにより、優れた紫外線防御能を有し、透明性にも優れる紫外線防御粉末を得ることが可能となる。また、不溶性紫外線吸収剤を、化粧料の油剤に溶解させる際に懸念される、経時での結晶の成長や析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
(b)特定微粒子金属等
特定微粒子金属等としては、ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、または、酸化アルミニウムを素材とした、一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属酸化物が挙げられ、これらの中から、1種、または、2種以上が選択されて、本発明において用いられ得る。
【0033】
なお、特定微粒子金属等の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、板状、不定形、花びら状等、いずれの形状であってもよいが、一次粒子径(粒子体積を球換算した場合の平均粒子径)は、上述のように、1〜1000nmであることが必要であり、好適には、1〜100nm、さらに好適には、5〜60nmである。この一次粒子径が、1nm未満となるほど小さすぎても、1000nmを超えるほど大きすぎても、上記の有機溶媒中の不溶性紫外線吸収剤を均一に分散させることが困難であり、結果として、巨大な不溶性紫外線吸収剤や特定微粒子金属等の凝集物が生成されることになり、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0034】
また、用いる特定微粒子金属等の具体的な形態としては、例えば、粉末状、スラリー状等の形態に調製された特定微粒子金属等であってもよいが、溶媒分散物として調製された特定微粒子金属等であってもよい。この特定微粒子金属等の溶媒分散物の特に好適な態様として、ゾル、すなわち、特定微粒子金属等のゾルを挙げることができる。なお、ここで「ゾル」とは、コロイド粒子が溶媒中に分散していて流動性を示す溶媒分散物である。
【0035】
特定微粒子金属等は、所望する粒径や形態のものを、常法により合成または調製して用いることも可能であり、市販品を用いることも可能である。
なお、本複合粉体の製造工程において、通常、特定金属微粒子等は、不溶性紫外線吸収剤との混和系において均一に分散させるために、予め、溶媒中に混和して、かかる混和物を、上記の不溶性紫外線吸収剤を溶解させた溶媒に添加を行う。この金属微粒子等を混和する溶媒は、特に限定されず、水であっても、上記の有機溶媒であってもよいが、不溶性紫外線吸収剤を溶解させた有機溶媒との混和性を考慮すると、この不溶性紫外線吸収剤を溶解させた有機溶媒と同一の溶媒であることが好適である。
【0036】
なお、特定金属微粒子等を、いっそう、不溶性紫外線吸収剤との混和系において均一に分散させるために、分散剤、例えば、シリコーン油、グリコール類、イオン性または非イオン性界面活性剤等を用いることも可能である。このような分散剤は、特定金属微粒子等と不溶性紫外線吸収剤の混和後に添加することも可能であり、予め、特定微粒子金属等の溶媒、および/または、不溶性紫外線吸収剤の有機溶媒中に混和しておくことも可能である。かかる分散剤の添加量は、用いる分散剤と、溶媒や微粒子金属酸化物等の種類に応じて自由に選択することが可能であり、特に限定されるものではない。
【0037】
特定マトリクス成分として、特定微粒子金属等を用いると、微粒子金属等同士が形成する構造の空隙に、不溶性紫外線吸収剤溶液が封じ込められ、有機溶媒が揮発する際に、微細な不溶性紫外線吸収剤の粒子として生成することにより、この特定微粒子金属等と不溶性紫外線吸収剤が複合化され、優れた紫外線防御能を有する複合粉体の製造を行うことができる。また、特定微粒子金属等として、酸化亜鉛、酸化チタン等の、自ら紫外線防御能を有する素材のものとすることにより、不溶性紫外線吸収剤と特定微粒子金属等の、双方の紫外線防御効果を本複合粉体に付与することが可能である。
【0038】
なお、本複合粉体の製造工程において、特定微粒子金属等と特定紫外線吸収剤との混合物の固化工程を行うことが好適である。かかる固化工程は、常法に従い、例えば、酸、塩基、あるいは、多価金属塩等を添加することによる溶液をゲル化することや、液体窒素等による急速冷凍等により行うことができる。
【0039】
(c)特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分の均一分散混合物における質量比
上述のようにして調製される、特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分の均一分散混合物における、特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分の質量比は、特定不溶性紫外線吸収剤:特定マトリクス成分=90:10〜5:95であることが好適であり、同60:40〜15:85であることが、特に好適である。この質量比が、特定不溶性紫外線吸収剤:特定マトリクス成分=5:95よりも、特定不溶性紫外線吸収剤の割合が少ないと、本複合粉体の紫外線吸収能が不十分な傾向が強く、逆に、同90:10よりも、特定不溶性紫外線吸収剤の割合が多いと、紫外線吸収剤同士が凝集する傾向が強くなり過ぎ、結果として得られる本複合粉体の紫外線吸収能が低下する傾向が認められる。
【0040】
なお、この均一分散混合物中に、特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分以外の成分、例えば、後述する本外用組成物における含有成分の一部または全部を、その成分が、最終製品において所望する機能を発揮する限度内において含有させることも可能である。
【0041】
乾燥・粉砕工程
さらに、上述のようにして調製される、特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分の均一分散混合物を、乾燥後、粉砕を行うことにより、本複合粉体を得ることができる。
【0042】
乾燥手段は、特に限定されず、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等を行うことができる。
また、粉砕手段は、乾燥工程により得られた、特定不溶性紫外線吸収剤と特定マトリクス成分の均一分散混合物の乾燥物を、所望する粒子径、具体的には、1〜30μmが好適であり、特に好適には、1〜10μmとすることが可能な手段であれば、特に限定されず、例えば、好適には、予め、機械的な予備粉砕を行った予備粉砕物を、本複合粉体を溶解しない溶媒、例えば、水、グリセリン、シリコーン油等に分散後、OBミルやディスパマット等のような分散機で処理することにより、所望する粒径の本複合粉体を製造することができる。
【0043】
このようにして得られる本複合粉体は、複合粉体中粒子中に、特定不溶性紫外線吸収剤が、微粒子の形態で存在し、かつ、マトリクス中に強固に保持されており、紫外線吸収剤同士の再凝集がなされない状態となっており、例えば、分散状態維持のために用いられる界面活性剤の使用量を減ずることが可能である。
【0044】
なお、本複合粉体は、粒子表面に疎水化処理を施した疎水化処理粉末とすることが可能である。
この疎水化処理粉末を製造するための疎水化剤としては、シリコーン処理剤、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン処理剤としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの各種のシリコーンオイルや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどの各種のアルキルシランや、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシランなどが挙げられる。また、脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12―ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。また、脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12―ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。また、脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの疎水化剤のうち、1種または2種以上を用いて、常法に従い、本複合粉末の疎水化処理を行うことができる。
【0045】
本外用組成物
本複合粉体は、化粧料や皮膚外用剤等の外用組成物に含有させることにより、これらの外用組成物において、透明性を維持しつつ、優れた紫外線遮蔽効果を実現することが可能である。
【0046】
本複合粉体を含有する、本外用組成物の剤形や製品形態は、特に限定されず、例えば、水溶液系、可溶化系、乳化系、ゲル系、ペースト系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、様々な剤形に、本複合粉体を用いることができる。
【0047】
また、例えば、基礎化粧料であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、パック等の製品形態に、メーキャップ化粧料であれば、ファンデーション、マスカラ、ネールエナメル、口紅、ほほ紅、白粉等の製品形態に、毛髪化粧料であれば、シャンプー、リンス、養毛剤等の製品形態に、本複合粉体を用いることが可能である。
【0048】
本外用組成物における本複合粉体の含有量は、外用組成物の具体的な用途、剤形、製品形態等によって自由に選択することが可能であり、特に限定するものではなく、通常は、組成物に対して0.1〜90質量%程度の範囲で含有させることが可能である。
【0049】
本外用組成物における、本複合粉体以外の含有成分は、通常、外用組成物の技術分野で、目的とする剤形や製品形態において用いられ得る一般成分を、好適には、本複合粉体を含有させた効果を損なわない限度内で用いることが可能である。
【0050】
具体的には、油分、粉末成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて、本外用組成物を、常法により製造することが出来る。
【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明の範囲が、この実施例により限定されるものではない。
実施例1
2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分50gを、トルエン1500g中に分散させ、さらに80℃に加温して、この紫外線吸収剤を溶解した。
【0052】
この溶解液に、イソプロパノール分散型シリカゾル(シリカ含有量30%)(IPA−ST:日産化学製)650gを、2ml/minの滴下速度で滴下、混合し、均一な分散液を調製した。この分散液を、液体窒素を用いて凍結後、凍結乾燥を、常法に従い行った。得られた乾燥物を、ジェットミル(CO−JET Systemα−mkII:セイシン企業社)を用いて粉砕し、粉体粒子の粒子径を、平均粒径5μm程度に調整し、実施例1の本複合粉体を得た。
【0053】
実施例2
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン60gを、エタノール1000gに溶解させた。この溶解液の中に、ヒドロキシプロピルセルロース90gを加え、これを、攪拌しつつ、溶解させた。これにより得られた混合溶液を、マイクロミストドライヤー(MDL−050:藤崎電機株式会社)を用い、平均粒径5μmの球形粒子として乾燥を行うことで、実施例2の本複合粉体を得た。
【0054】
実施例3
2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分50gを、テトラヒドロフラン1500gに溶解させた。この溶解液の中に、PMMA(重合度 6000)200gを加え、これを、攪拌しつつ、溶解させた。これにより得られた混合溶液を、エバポレーターで乾燥させ、粉砕機(SK−M型サンプルミル:協立理工株式会社)を用いて、フレーク状に粉砕した。この粉砕物に水を加え、40%の水分散体としたものを、ドライスヴェルケパールミル(PM−DCP−2:ドライズヴェルケ社)で、ペースト状になるまで粉砕した。このようにして得られたペースト状の分散体を、実施例3の分散体とした。
【0055】
実施例4
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン90gを、エタノール6000gに溶解させた。この溶解液の中に、中性チタニアゾルエタノール分散体(MPT−521:石原産業;酸化チタン濃度10%)2100gを、10ml/minの滴下速度で滴下、混合し、得られた混合溶液を、マイクロミストドライヤー(MDL−050:藤崎電機株式会社)を用い、平均粒径10μmの球形粒子として乾燥を行うことで、実施例2の本複合粉体を得た。
【0056】
実施例5
2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分50gを、ベンゼン1500gに溶解させた。この溶解液の中に、セルロースアセテートプロピオネート150gを添加して、溶解した。このようにして得られた溶解液を、液体窒素を用いて凍結させ、さらに、凍結乾燥機で乾燥させた。得られた固形物を、粉砕機(SK−M型サンプルミル:協立理工株式会社)で粉砕後、ジェットミル(CO−JET Systemα−mkII:セイシン企業社)を用いて、仕上げ粉砕し、粉体粒子の粒子径を、平均粒径10μm程度に調製し、実施例5の本複合粉体を得た。
【0057】
実施例6
ジメトキシ桂皮酸オクタン酸グリセリル35gを、テトラヒドロフラン1500gの中に分散させ、60℃に加温して溶解させた。この溶解液の中に、セルロースアセテートプロピオネート150gを添加して、溶解した。このようにして得られた溶解液を、ディスパマット(DISPERMATAE:VMA−Getzmann社)で分散させながら、水を、2ml/minの滴下速度で、1000ml滴下し、紫外線吸収剤/セルロースアセテートプロピオネート複合体を、析出させた。このようにして得られた、ペースト状の分散体を80℃で乾燥させ、粉砕機(SK−M型サンプルミル:協立理工株式会社)を用いて粉砕を行うことにより、平均粒径10μmの粉末粒子を有する、実施例6の本複合粉体を得た。
【0058】
比較例1
イソプロパノール分散型シリカゾル(シリカ含有量30%)(IPA−ST:日産化学製)650gを、80℃で乾燥し、得られた固形物を粉砕機(SK−M型サンプルミル:協立理工株式会社)で粉砕した。この中に、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分50gを加え、再度、粉砕機で、混合粉砕した。これを、比較例1の粉体とした。
【0059】
比較例2
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン60gを、エタノール1000gに溶解させた。この溶解液の中に、球状セルロース粉末(セルロフローC−25:チッソ社)を45g加えて分散した。これを、ニーダーで、60℃に加熱し、攪拌混合しながら乾燥し、球状セルロース粉末粒子に、紫外線吸収剤が被覆された粉体を得た。これを、比較例2の粉体とした。
【0060】
比較例3
2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分750gに、水を150g加え、ホモミキサーで攪拌混合することで、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕が、40%含まれる分散体を得た。これを、比較例3の分散体とした。
【0061】
比較例4
実施例4において、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン溶液を抜去し、中性チタニアゾルエタノール分散体(MTP−521:石原産業;酸化チタン濃度10%)のみに対して、実施例4と同様のマイクロミストドライヤー(MDL−050:藤崎電機株式会社)を行って、比較例4の粉体を得た。
【0062】
試験例1
実施例1と比較例1の粉体を、それぞれ、粉体:ソルビタンモノパルミテート:イソオクタン酸トリグリセリドの割合が、質量比で、1:1:8となるように混合し、粉末の油分散体を調製した。各スラリーを、乳鉢で十分に混練した後、5μm厚のアプリケーターで、石英板上に塗膜を形成し、その塗膜の紫外線透過率を、分光光度計(U−3410:日立製作所)を用いて測定した。
【0063】
第1図は、この試験例1における測定結果を示す図面である。第1図の結果から、実施例1の本複合粉体は、可視部の透過率に関しては、比較例1の粉体と同程度であるものの、280〜480nmのUVAおよびUVBに対する紫外線遮蔽能は、比較例1の粉体に比べて、全般的に高く、同等の透明性を有しつつ、紫外線遮蔽能に優れていることが明らかとなった。
【0064】
試験例2
不溶性紫外線吸収剤として、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕の水分散体[チノソーブ(TINOSORB)M:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社]の有効成分[溶解度パラメーター9.9(上述した計算式により、δを計算)]を用い、種々の溶解度パラメーターの可溶性高分子との組み合わせで、本複合粉体を調製して、その光学的性質を比較した。
【0065】
すなわち、上記不溶性紫外線吸収剤15gを、テトラヒドロフラン(THF)500gに溶解させた。この溶解液の中に、下記可溶性高分子35gを加え、これを、攪拌しつつ、溶解させた。これにより得られた混合溶液を、エバポレーターで乾燥させ、粉砕機(SK−M型サンプルミル:協立理工株式会社)を用いて、フレーク状に粉砕した。この粉砕物に、ソルビタンモノパルミテート:イソオクタン酸トリグリセリド=1:8(質量比)の混合物を加え、20%の油分散体としたものを、三本ローラーミル(EXAKT M−50:オットハーマン社)で、ペースト状になるまで混練した。このようにして得られたペースト状の分散体の光学的的性質を検討した。
【0066】
a)用いた可溶性高分子
トリメチルシロキシケイ酸(BY11−018:東レダウコーニング社)
溶解度パラメーター7.3(前記式によりδを算出)
セルロースアセテートイソブチレート
溶解度パラメーター9.5(前記式によりδを算出)
ヒドロキシプロピルセルロース
溶解度パラメーター10.0(前記式によりδを算出)
ポリスチレン
溶解度パラメーター9.0(前記式によりδを算出)
PMMA
溶解度パラメーター9.3(前記式によりδを算出)
【0067】
b)光学的性質のパラメーター(F)
各ペースト状分散体は、サージカルトランスポアテープ(住友3M社)に、2mg/cmの厚みに塗布し、分光光度計(U−3410:日立製作所)を用いて、塗膜の光透過率の測定を行い、下記式に従い、光学的性質のパラメーター(F)を算出した。
F=550nmにおける透過率/360nmにおける透過率
【0068】
ここで、550nmにおける透過率は、可視光線の透過率を示す。なお、上記不溶性紫外線吸収剤は、410nmより短波長の光に対する吸収性が認められている。また、360nmにおける透過率は、上記不溶性紫外線吸収剤の紫外線に対する最大吸収波長である。
【0069】
すなわち、パラメーターFが大きいほど、試料が、紫外線遮蔽能と可視光線の透過能に優れていることとなる。
【0070】
第2図は、この試験例2の結果を示したグラフであり、縦軸にパラメーターFの値(550nm透過率/360nm透過率)をとり、横軸に溶解度パラメーターをとっている。また、溶解度パラメーター9.9を示す点線は、上記不溶性紫外線吸収剤の溶解度パラメーターを示している。
【0071】
この結果から、可溶性高分子の溶解度パラメーターが、不溶性紫外線吸収剤の溶解度パラメーターに近似するほど、パラメーターFの値が大きくなり、紫外線遮蔽能と透明性に優れた本複合粉体が得られることが明らかになった。
【0072】
試験例4
実施例2と比較例2の粉体を、それぞれ用いて、以下の処方のO/W乳液型サンスクリーンを調製した。
【0073】
<O/W乳液型サンスクリーン:処方例1、比較処方例1>
Figure 2004168913
(「適量」含有成分は、含有量の100%換算量からは除外する)
【0074】
<製造方法>
12に、10を加え、加熱溶解後、さらに、11を加え、ホモミキサーで、均一に分散させ、70℃に保ち、これを水相とする。また、3〜9、および、13、14を混合して、加熱溶解して、70℃に保ち、これを油相とする。前記水相に、1(実施例2の本複合粉体)および2の粉末を添加し、ホモミキサーで分散させる。この分散物に、前記油相を添加し、乳化後、攪拌しながら、35℃まで冷却する。このようにして得られた、O/W乳液型サンスクリーンを、処方例1のサンスクリーンとした。
【0075】
また、1として、比較例2の粉体を用いて調製した、O/W乳液型サンスクリーンを、比較処方例1のサンスクリーンとした。
かかる処方例1と比較処方例1のサンスクリーンを、専門パネル5名の肌上に塗布し、塗布直後の「白さの目立ち」を、以下の評価基準で、専門パネル自身の目視にて判定した。
【0076】
<評価基準>
○:専門パネルの5名全員が、透明性があると判定した。
△:専門パネルのうち、1名以上が、多少白さが目立ち、透明性が少ないと判定した。
×:専門パネルのうち、1名以上が、白さが目立ち、透明性が認められないと判定した。
【0077】
実施例1の本複合粉体を含有する、処方例1のサンスクリーンは、透明性に優れ、白さが目立たず、仕上がりがきれいであり、この試験の結果も、処方例1のサンスクリーンについては、「○」と判定された。これに対し、比較処方例1のサンスクリーンは、塗布時に、若干白さが目立ち、この試験の結果も、比較処方例1のサンスクリーンについては、「△」と判定された。
【0078】
試験例5
実施例3と比較例3の分散体を、それぞれ用いて、以下の処方のO/W乳液型サンスクリーンを調製した。
【0079】
<O/W乳液型サンスクリーン:処方例2,比較処方例2>
Figure 2004168913
(「適量」含有成分は、含有量の100%換算量からは除外する)
【0080】
<製造方法>
12に、10を加え、加熱溶解後、さらに、11を加え、ホモミキサーで、均一に分散させ、70℃に保ち、これを水相とする。また、3〜9、および、13、14を混合して、加熱溶解して、70℃に保ち、これを油相とする。前記水相に、1(実施例3の本複合粉体)および2の粉末を添加し、ホモミキサーで分散させる。この分散物に、前記油相を添加し、乳化後、攪拌しながら、35℃まで冷却する。このようにして得られた、O/W乳液型サンスクリーンを、処方例2のサンスクリーンとした。
【0081】
また、1として、比較例3の粉体を用いて調製した、O/W乳液型サンスクリーンを、比較処方例2のサンスクリーンとした。
処方例2と比較処方例2のサンスクリーンを、サージカルトランスポアテープ(住友3M社)に、2mg/cmの厚みに塗布し、塗膜の紫外線透過率を、分光光度計(U−3410:日立製作所)を用いて測定した。
【0082】
第3図は、この試験例3における分光反射率の測定結果を示す図面である。第3図に示された結果から、処方例2は、280〜400nmのUVAおよびUVBに対する紫外線遮蔽能に関しては、比較処方例2と同程度であるものの、可視部の透過率が、比較処方例2に比べ全般的に高く、透明性に優れることが明らかになった。
【0083】
試験例4
実施例4および比較例4で得られた粉体を、それぞれ、粉体:ソルビタンモノパルミテート:イソオクタン酸トリグリセリドの割合が、質量比で、1:1:8となるように混合し、粉末の油分散体を調製した。各スラリーを、乳鉢で十分に混練した後、5μm厚のアプリケーターで、石英板上に塗膜を形成し、その塗膜の紫外線透過率を、分光光度計(U−3410:日立製作所)を用いて測定した。
【0084】
第4図は、この試験例4における測定結果を示す図面である。第4図の結果から、実施例4の本複合粉体は、通常の酸化チタン粉末では認められない、UVA領域における吸収が認められることがわかる。また、実施例4の本複合粉体は、比較例4の粉体に比べ、透明性が向上していることがわかった。
【0085】
第5図に、実施例5の本複合粉体の、電子顕微鏡(SEM)像(50000倍)を示す。この図面により、30〜50nm前後の粒子となった紫外線吸収剤が、この本複合粉体の粒子の内部に保持されていることがわかる。このように、微細なレベルで、紫外線吸収剤の粒子が、マトリックス成分によって保持されるため、本複合粉末が、上述したような、優れた特徴を具備しているものと考えられる。
【0086】
以下、さらに、本外用組成物の処方例を示す。これらの処方例において、上記の目視による透明性についての試験(試験例2参照)を行ったところ、いずれの処方例においても「○」の評価が認められた。なお、以下の処方例における、「適量」含有成分は、含有量の100%換算量からは除外する。
【0087】
Figure 2004168913
【0088】
<製造方法>
9〜15を、85℃で溶解し、これを、十分に混合された粉末部を、攪拌しながら添加する。次に、この混合物を、コロイドミルで磨砕分散する。これに、16を加え、脱気後、70℃で容器に流し込み、冷却して、油性スティックファンデーションを得た。
【0089】
Figure 2004168913
【0090】
(*)ステアリン酸処理微粒子酸化亜鉛粉末の製造
エタノール100部に対し、ステアリン酸5部を添加し、溶解させる。この中に、酸化亜鉛粉末を20部加え、混合して、内容物を分散させる。この分散物を、90℃以上で加熱攪拌しながら、溶媒を留去し、ステアリン酸処理微粒子酸化亜鉛が得られる。
【0091】
<製造方法>
4〜8を、70℃で加熱混合し、これを油相とする。これとは別個に、9中に、10、11を溶解し、これを水相とする。油相中に、1〜3の粉末を加え、ホモミキサーで分散させた。この中に、水相を添加し、ホモミキサーで分散した。この中に、先の水相を添加し、ホモミキサーで乳化した。これに、さらに12を添加して、2層タイプW/Oサンスクリーンを得た。
【0092】
Figure 2004168913
【0093】
<製造方法>
10〜15を加熱溶解し、これを油相とした。また、11に、12および13を溶解して、これを水相とした。1〜7を混合し、これを、前記油相に加え、ホモミキサーで混合した。さらに、この混合物に、1〜9を、ブレンダーで混合し、さらに、16を噴霧して均一に混合した。これを、粉砕機で粉砕し中皿で成形圧縮して、固形粉末ファンデーションを得た。
【0094】
Figure 2004168913
【0095】
<製造方法>
8〜10を、70〜80℃で加熱溶解して、これを油相とする。また、11 に、12および13を溶解して、これを水相とする。1〜7を混合し、これに前記油相を添加し、ホモミキサーで混合し、さらに、14を添加して混合した後、これに前記水相を加えて、乳化を行い、容器に充填して、W/O型ファンデーションを得た。
【0096】
Figure 2004168913
【0097】
<製造方法>
1〜3を、10の一部と混合し、ローラー処理を行い、これを顔料部とする。4を、10の一部に溶解し、これを染料部とする。5〜13を混合し、加熱溶解した後、これに、顔料部と染料部を添加し、ホモミキサーで、均一に混合する。これを、型に押し込み、急冷して、スティック状に成形して、口紅を得た。
【0098】
【発明の効果】
本発明により、優れた紫外線吸収能を有し、かつ、透明性に優れた、シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤を用いた、紫外線遮蔽基剤と、これを含有する外用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1における測定結果を示す図面である。
【図2】試験例2における複合粉体の光学的特性の検討結果を示す図面である。
【図3】試験例3における分光反射率の測定結果を示す図面である。
【図4】試験例4における測定結果を示す図面である。
【図5】実施例5の本複合粉体の、電子顕微鏡像を示す図面である。

Claims (7)

  1. 下記の成分(1)および(2)が複合化された複合粉体粒子からなる、紫外線吸収性複合粉体。
    (1)シリコーン油に不溶であり、有機溶媒に可溶である、常温で固体の紫外線吸収剤。
    (2)下記(a)および/または(b)
    (a)有機溶媒に可溶な、高分子
    (b)一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物
  2. 成分(1)の溶解度パラメーターと、成分(2)の有機溶媒に可溶な高分子の溶解度パラメーターの差の絶対値が、1.0以下である、請求項1記載の紫外線吸収性複合粉体。
  3. 成分(1)の溶解度パラメーターと、成分(2)の有機溶媒に可溶な高分子の溶解度パラメーターの差の絶対値が、0.5以下である、請求項1記載の紫外線吸収性複合粉体。
  4. 成分(1)を溶解させた有機溶媒と成分(2)を混合して得られる混合物を、乾燥後、粉砕して、成分(1)と(2)が複合化された複合化粒子を調製することにより製造される、請求項1記載の紫外線吸収性複合粉体。
  5. 成分(1)を溶解させた有機溶媒と成分(2)を混合して得られる混合物における成分(2)の、一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物が、当該微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物の溶媒分散物である、請求項4記載の紫外線吸収性複合粉体。
  6. 一次粒子径が1〜1000nmの微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物の分散物が、当該微粒子金属、若しくは、微粒子金属の酸化物のゾルである、請求項5記載の紫外線吸収性複合粉体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線吸収性複合粉体を含有する、外用組成物。
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