JP2004163678A - 分割型リボンファイバの製造方法 - Google Patents

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Shigehisa Ishigami
茂久 石上
Koji Saito
孝司 斉藤
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Abstract

【課題】分割性を保ちながら、しごきによる2層目の被覆樹脂の剥離性や外傷性を向上させることができる分割型リボンファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】供給リール1から供給される複数本の光ファイバ素線2が、1層目被覆部4に導入され、紫外線硬化型樹脂を用いて一括被覆が行なわれ、1層目紫外線照射部5において、樹脂の硬化が行なわれて、リボンファイバユニット6が製造される。硬化工程においては、酸素が存在する雰囲気中で紫外線を照射して、1層目の極めて表面のみの硬化度を落とすようにした。ついで、複数枚のリボンファイバユニット6が2層目被覆部7に導入されて、一括被覆が行なわれ、2層目紫外線照射部8において、紫外線の照射により樹脂の硬化が行なわれて、分割型リボンファイバ9が製造され、巻取リール11に巻き取られる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分割型リボンファイバの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は、分割型リボンファイバの一例を説明するための断面図である。図中、12は光ファイバ素線、13は1層目の被覆樹脂、14はリボンファイバユニット、15は2層目の被覆樹脂、16はリボンファイバである。
【0003】
光ファイバ素線12、例えば、外径0.125mmのガラスファイバに保護被覆を施して外径を0.25mmとした光ファイバ素線12の複数本を平行に並べた状態で1層目の被覆樹脂13で一括被覆を施してテープ状にした光ファイバ心線をテープ状光ファイバ心線,テープファイバ,光ファイバテープ心線、あるいは、リボンファイバなどと呼んでいる。この明細書ではリボンファイバと呼ぶことにする。図2(A)に示す例では、2本の光ファイバ素線12でリボンファイバユニット14が構成されているが、光ファイバ素線12の本数は2本に限られるものではなく、適宜の本数でリボンファイバユニット14が構成される。このリボンファイバユニット14の複数枚を平面状に並べて2層目の被覆樹脂15で一括被覆をして、分割型リボンファイバ16が構成される。この例では、2枚のリボンファイバユニットが用いられているが、リボンファイバユニットの枚数は2枚に限られるものではなく、適宜の枚数で分割型リボンファイバ16が構成される。
【0004】
分割型リボンファイバは、図2(A)のような2層構造からなり、図2(B)に示すように、2層目の被覆樹脂15を破壊することによって、1層目の被覆樹脂13で被覆されたリボンファイバユニット14を取り出すことができる。
【0005】
このように、1層目の被覆樹脂13と2層目の被覆樹脂15で二重に被覆された分割型リボンファイバは、ケーブル化のための製造工程などで、しごきを加えることによって、2層目の被覆樹脂15が剥離したり、または、外傷を受けやすいという欠点をもっていた。これら、剥離や外傷は、光ファイバの伝送特性や強度特性など長期信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
2層目の被覆樹脂がしごきなどにより剥離や外傷を起こす主たる原因として、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂との間の密着力が弱いことが挙げられる。しかし、この密着力が強すぎ、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂とが強固に密着してしまうと、分割の際に2層目の被覆樹脂を破壊すると同時に、1層目の被覆樹脂を破壊してしまい、1層目の被覆樹脂により形成されたユニットに分割ができないといった不具合を生じさせる結果となる。
【0007】
従来の技術では、被覆樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いた場合に、1層目樹脂硬化時に1層目の被覆樹脂を完全に硬化させるため、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂との密着力が小さくなることがこの問題の原因である。
【0008】
この従来技術での応用により、この問題点を解決させようとすれば、以下の方法が考えられる。
▲1▼1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂を同一のヘッドで被覆し、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂を一括して紫外線硬化させる方法。
▲2▼1層目の被覆樹脂を硬化させる紫外線の照射パワーを落とし、1層目の被覆樹脂の硬化を遅らせて、2層目の被覆樹脂に紫外線を照射する段階で、2層目の被覆樹脂とともに、1層目の被覆樹脂の硬化の遅れた部分を一括して硬化させる方法。
【0009】
しかし、これらの方法には、以下のような欠点があり、実用的でない。すなわち、
▲1▼の方法では、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂との密着力が強固になり過ぎて、分割の際に、2層目の被覆樹脂を破壊する際に、1層目樹脂まで破壊する場合があり、分割性が劣る。
▲2▼の方法では、1層目のリボンファイバユニット全体が未硬化となるため、2層目の被覆樹脂を被覆する場合、リボンファイバユニットが接触する部分で、変形を生じるなどの危険がある。
【0010】
したがって、従来技術では、分割型リボンファイバにおける、これらの問題を容易に解決することはできなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、しごきなどにより2層目樹脂が剥離や外傷を起こすことなく、しかも、分割が容易である分割型リボンファイバの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、分割型リボンファイバの製造方法において、複数本の光ファイバ素線を紫外線硬化型樹脂でリボン状に一括被覆して雰囲気中で紫外線を照射して硬化させてリボンファイバユニットを形成する第1の工程と、前記リボンファイバユニットの複数枚を平面状に並べて紫外線硬化型樹脂でリボン状に一括被覆して雰囲気中で紫外線を照射して硬化させて分割型リボンファイバを形成する第2の工程を有する分割型リボンファイバの製造方法において、前記第1の工程における雰囲気は、酸素濃度が被覆された紫外線硬化型樹脂の極表面の硬化度を落とすことができる濃度範囲であり、前記第2の工程における雰囲気は、酸素濃度が前記第1の工程における酸素濃度よりも小さい濃度範囲であることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の分割型リボンファイバの製造方法を説明するための主要な工程を示す概略構成図である。図中、1は光ファイバ素線供給リール、2は光ファイバ素線、3はガイドローラ、4は1層目被覆部、5は1層目紫外線照射部、6はリボンファイバユニット、7は2層目被覆部、8は2層目紫外線照射部、9は分割型リボンファイバ、10はガイドローラ、11は巻取リールである。
【0014】
この製造方法で製造される分割型リボンファイバについては、図2でした説明を援用して、ここでは説明を繰り返さない。ただし、本発明においては、1層目の被覆樹脂および2層目の被覆樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いているとともに、その硬化の方法が図2で説明した従来例とは相違している。この相違については、図1を参照する製造方法で詳細に説明する。
【0015】
光ファイバ素線供給リール1から供給される単心の光ファイバ素線2が、ガイドローラ3を介して、1層目被覆部4に導入される。図では、1つの光ファイバ素線供給リール1から1本の光ファイバ素線2が、1層目被覆部4に導入されているように図示されているが、リボンファイバユニットにおける心線数の数だけ、光ファイバ素線供給リール1が用いられ、その数の光ファイバ素線2が1層目被覆部4に導入されるのであり、他の光ファイバ素線供給リール1および光ファイバ素線2については図示を省略している。
【0016】
1層目被覆部4において、導入された光ファイバ素線2に対して、紫外線硬化型樹脂を用いて一括被覆が行なわれ、ついで、1層目紫外線照射部5において、紫外線の照射により1層目の被覆樹脂の硬化が行なわれて、リボンファイバユニット6が製造される。
【0017】
ところで、紫外線硬化型樹脂の硬化工程においては、照射雰囲気中に酸素が存在すると、極表面の樹脂の硬化度が落ちるという特性を持っていることが知られている。このため、紫外線硬化型樹脂で被覆するリボンファイバを製造する場合には、窒素などの不活性ガスを充満させ、酸素濃度を落とした雰囲気中で紫外線を照射して、全体を硬化させるのが一般的である。
【0018】
そこで、本発明では、リボンファイバユニットを製造する工程においては、紫外線硬化型樹脂を硬化させる際、照射雰囲気中に酸素が存在すると、極表面の硬化度が落ちる性質を利用して、1層目の被覆樹脂の紫外線を照射する際の雰囲気の酸素濃度を上げた状態で1層目を硬化させることで、1層目の極めて表面のみの硬化度を落とすようにした。
【0019】
その際の酸素濃度は、使用する樹脂の酸素によって表面の硬化が阻害される度合いにより変化させる必要があり、対象樹脂の極表面、例えば、1μm以下の深さの極表面のみの硬化度を落とす範囲が好ましい。このようにできる酸素濃度は、0.1〜3%(体積%)の濃度範囲である。
【0020】
次に、複数枚のリボンファイバユニット6が、2層目被覆部7に導入される。図では、1枚のリボンファイバユニットが、2層目被覆部7に導入されているように図示されているが、製造する分割型リボンファイバにおけるリボンファイバユニットの枚数だけ、上述したリボンファイバユニット6を製造するための光ファイバ素線供給リール1,ガイドローラ3,1層目被覆部4,1層目紫外線照射部5が用いられて、連続した工程で、リボンファイバユニット6が2層目被覆部7に導入されるが、図では、1枚のリボンファイバユニット6を製造する工程のみを図示し、他については図示を省略している。
【0021】
連続工程で製造する代わりに、あらかじめリボンファイバユニットを製造しておいて、リールに巻きつけておき、複数のリールからリボンファイバユニット6を供給して、2層目被覆部7に導入するようにしてもよい。しかし、リボンファイバユニット6は、極表面の硬化度を落としてあるので、リールに巻き付けた状態において、硬化度を落とした状態を確保し、しかも、その状態を保ってリボンファイバユニットを供給できるように考慮をする必要がある。
【0022】
2層目被覆部7において、導入された複数枚のリボンファイバユニット6に対して、紫外線硬化型樹脂を用いて一括被覆が行なわれ、ついで、2層目紫外線照射部8において、紫外線の照射により2層目の被覆樹脂の硬化が行なわれて、分割型リボンファイバ9が製造され、ガイドローラ10を介して、巻取リール11に巻き取られる。なお、ガイドローラ3,10については、それぞれ、これを省略することもでき、また、複数のガイドローラを介在させるようにしてもよい。
【0023】
2層目被覆を硬化させる際に、2層目樹脂とともに、その1層目樹脂の極表面も一括して硬化させる。これにより1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂との密着を適度にあげ、分割性を保ちながら、しごきによる2層目の被覆樹脂の剥離性や外傷性を向上させることができる。
【0024】
1層目紫外線照射部5において、この不活性ガスや排気ガス量で酸素濃度を調整、管理することが現実的な方法である。
【0025】
一例として、N等の不活性ガスを紫外線照射装置内に供給するにあたって、その流量を流量計等により調整する方法を採用できる。ガスの供給量を調整する方法に代えて、紫外線照射装置から排気する場合の排気風量を調整してもよい。
【0026】
このように、供給ガスや排気ガスの流量を調整する方法を採用した場合、電磁弁などの開閉弁を用いることによって、製造ラインのスタート、ストップとに連動させて、自動的にガスの吸気、排気を行なうようにしてもよい。不要なガスの使用を抑えることができ、また、オペレータがガスの供給の操作を行なう必要がなく、ガスの入れ忘れなどを防止できる。また、製造線速が増加すればガスの供給流量を増加させ、製造線速が減少すればガスの供給量を減少させるように、製造線速に応じて、ガスの供給量を調整するようにしてもよい。
【0027】
紫外線硬化型樹脂を紫外線照射によって硬化させる際の雰囲気の酸素濃度の影響について説明しておく。図3は、1995年電子情報通信学会、通信ソサイエティ大会報告資料B611からの抜粋であり、ある紫外線硬化型樹脂を紫外線により硬化させる際の、紫外線照射時の酸素濃度をパラメータにして、FTIR法により評価シートの表面から0.3μmの深さまでの領域の硬化度を評価した結果を示すものである。この結果におけるアクリル基量というのが樹脂の未硬化成分の量を示しており、アクリル基量が多いほど、未硬化成分が多いことを示している。図のように、紫外線照射雰囲気に存在する酸素の濃度により、表面の硬化度が下がることがわかる。酸素濃度による硬化度降下の割合は、樹脂成分などに影響を受けるため、樹脂ごとに異なるが、本評価結果から、紫外線硬化型樹脂は酸素濃度が1%以下の領域において、表面の硬化が落ちていくことを示している。また、1%を越える領域では、さらに未硬化範囲が深層に広がると報告されている。
【0028】
本発明による効果を確認するために実施した実験結果を説明する。実験方法は、サンプルとして、1層目の被覆樹脂の硬化に使用する紫外線照射装置に供給するガスの流量をパラメータとして評価用の分割型リボンファイバを作成した。評価用の分割型リボンファイバとしては、従来条件、すなわち、1層目の被覆樹脂の硬化の際に酸素が存在しない雰囲気で紫外線照射をして製造した分割型リボンファイバのサンプルと、本発明の酸素濃度の雰囲気で紫外線照射をして製造した分割型リボンファイバのサンプルとの2種類のサンプルを用意した。
【0029】
評価方法は、図4に示すように、丸形ダイス17にサンプルの分割型リボンファイバ16を通し、一方の端に重り18を取り付け、分割型リボンファイバ16を引っ張った。この際、分割型リボンファイバ16の2層目の被覆樹脂に生じる剥離や外傷を、重りの重量を変えて、評価した。
【0030】
評価結果は、図5に示すように、本発明の条件で製造したサンプルは、従来条件で製造したサンプルに比べて、外傷が発生する荷重が大きくなり、外傷性の向上を確認できた。また、本発明の条件によるサンプルは、形状、寸法、分割性ともに問題のないことを確認できた。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、分割型リボンファイバにおいて、1層目の被覆樹脂と2層目の被覆樹脂との密着を適度にあげ、分割性を保ちながら、しごきによる2層目の被覆樹脂の剥離性や外傷性を向上させることができる分割型リボンファイバを製造することができる。
【0032】
しかも、紫外線硬化型樹脂を用いた1層目の被覆樹脂の硬化工程において、紫外線照射パワーを落として、1層目全体の硬化度を落とす方法では、ランプ自体の劣化や、照射装置の劣化により、照射パワーは連続製造において変動するものである。このため、1層目の被覆樹脂の硬化度も変化し、2層目の被覆樹脂との密着力も変化してしまう。また、全体の硬化度が落ちることによって、2層目の被覆樹脂を被覆する被覆ヘッド内など、リボンファイバユニットが接触する部分で、1層目の被覆樹脂が変形などする恐れがある。
【0033】
これに対して、本発明では、酸素濃度の調整により、その条件を安定させることが比較的容易であり、かつ1層目の被覆樹脂の極表面のみの硬化度を落とすだけであるため、変形などの心配がない。また、1層目の被覆樹脂の極表面のみを2層目の被覆樹脂の硬化の際の紫外線照射で一括硬化できるため、2層目の被覆樹脂の硬化の際の紫外線の照射パワーを従来以上に引き上げる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分割型リボンファイバの製造方法を説明するための主要な工程を示す概略構成図である。
【図2】分割型リボンファイバの一例を説明するための断面図である。
【図3】紫外線硬化型樹脂を紫外線により硬化させる際の、酸素濃度とアクリル基量との関係を示す線図である。
【図4】本発明による効果を確認するための実験方法の説明図である。
【図5】評価結果の説明図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ素線供給リール、2…光ファイバ素線、3…ガイドローラ、4…1層目被覆部、5…1層目紫外線照射部、6…リボンファイバユニット、7…2層目被覆部、8…2層目紫外線照射部、9…分割型リボンファイバ、10…ガイドローラ、11…巻取リール、12…光ファイバ素線、13…1層目の被覆樹脂、14…リボンファイバユニット、15…2層目の被覆樹脂、16…リボンファイバ。

Claims (5)

  1. 複数本の光ファイバ素線を紫外線硬化型樹脂でリボン状に一括被覆して雰囲気中で紫外線を照射して硬化させてリボンファイバユニットを形成する第1の工程と、前記リボンファイバユニットの複数枚を平面状に並べて紫外線硬化型樹脂でリボン状に一括被覆して雰囲気中で紫外線を照射して硬化させて分割型リボンファイバを形成する第2の工程を有する分割型リボンファイバの製造方法において、前記第1の工程における紫外線を照射する雰囲気の酸素濃度が、被覆された紫外線硬化型樹脂の極表面の硬化度を落とすことができる濃度範囲であり、前記第2の工程における紫外線を照射する雰囲気の酸素濃度が、前記第1の工程における酸素濃度よりも小さい濃度の範囲であることを特徴とする分割型リボンファイバの製造方法。
  2. 前記第1の工程における酸素濃度が0.1〜3%であることを特徴とする請求項1に記載の分割型リボンファイバの製造方法。
  3. 前記第1の工程における紫外線を照射する雰囲気を形成するために供給するガスの流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の分割型リボンファイバの製造方法。
  4. 前記雰囲気を形成するガスの供給を、製造ラインの作動に連動して作動される開閉弁によって行なうことを特徴とする請求項3に記載の分割型リボンファイバの製造方法。
  5. 製造線速に応じて、ガスの供給流量を調整することを特徴とする請求項3に記載の分割型リボンファイバの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019064853A (ja) * 2017-09-29 2019-04-25 株式会社フジクラ 光ファイバ素線の製造方法及び製造装置

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