JP2004160734A - インクジェット記録媒体用保存性向上剤及びこれを用いたインクジェット記録媒体、並びにその製造方法 - Google Patents

インクジェット記録媒体用保存性向上剤及びこれを用いたインクジェット記録媒体、並びにその製造方法 Download PDF

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Tetsuo Kawakami
哲郎 川上
Ryuichi Yamamoto
隆一 山本
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Abstract

【課題】インクジェット記録媒体に含有させることにより、インク吸収性が高く、印字濃度、鮮明性に優れると共に、耐光性および耐酸化性ガス劣化性に優れるため印刷物を長期間保存した後でもインクの変色や退色がなく、良好な印字特性を保持することができ、しかも塗工液の乾燥性を改善することのできるインクジェット記録媒体用保存性向上剤、及びこれを用いたインクジェット記録媒体、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)でベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を乳化重合して得られる共重合体微粒子中および/または共重合体微粒子表面に、酸化性ガス劣化防止剤を含有あるいは吸着するインクジェット記録媒体用保存性向上剤。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録媒体の光沢層やインキ受理層に配合することで、印刷物の保存性を向上させることができるインクジェット記録媒体用保存性向上剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録が広く用いられており、本方式の印刷は最近ハードの進歩により写真画質となっている。インクジェット記録の場合、ハードの制限から記録インキに染料を使用する場合が多く、これが原因でインクジェット方式にて印刷した印刷物は、太陽光(特に紫外線の影響)の光や空気中のオゾンの影響により次第に染料が劣化し、印刷物の退色を引き起こすため、インクジェット印刷方式が写真画質に達した今、インクジェット印刷において光やオゾン等の酸化性ガスによる印刷物の劣化をどのように改善するかが大きな課題となっている。
【0003】
染料の光による退色を改善する方法として、インクジェット記録用インキに紫外線吸収剤等を添加して染料の劣化を防止する方法が提案されているが(特開2000−160072号公報、特開平11−158430号公報、特開平8−60059号公報等)、印刷物の退色を防ぐという課題を十分解決するに至っていない。一方、インクジェット記録シートのインク受理層に紫外線吸収剤を配合し、印刷物の耐光性を改善する方法も提案されている。
【0004】
例えば、特開昭57−74192号公報には、インクジェット記録シートに、フェノール誘導体やビスフェノール誘導体等のフェノール性色素退色防止剤と、2−ヒドロキシフェニル置換−ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤とを添加することにより、記録シートの色素画像および非印刷面の退色と変色を防止することが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特開昭57−74193号公報には、水性インクジェット用インキを用い、紫外線吸収剤を含有する顔料塗布層を有する記録シートにインクジェットすることにより、着色濃度が高く、解像力が優れ、高度の耐光性を有するインクの退色が抑制された多色記録画像を形成できることが提案されている。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の各種低分子量の紫外線吸収剤が使用されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、特開昭57−87988号公報には、インクジェット記録物の耐光性を向上させる目的で、少なくとも一成分として紫外線吸収剤を含むインクジェット記録用紙が提案され、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンや2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤を、塗布材に対し0.1〜10%添加することにより、印刷物の耐光性が向上することが記載されている(特許文献3参照)。
【0007】
特開昭61−163886号公報には、インクジェット記録媒体上にチオ尿素系化合物を含有させることで、媒体上に記録された画像や文字の濃度が高く、吸収性および耐光性に優れ、記録画像の保存性に優れた記録媒体が得られることが提案されている。具体的には、ポリビニルアルコール、ホワイトカーボン及びチオ尿素を所定量含有するサイズプレス液を調製し、これを湿紙に付着させた後、乾燥させて記録紙を得ている。その結果、水溶性黒色染料や水溶性マゼンタ染料の耐光性、耐変色性が改善されることが記載されている(特許文献4参照)。
【0008】
さらに、特開2001−26178号公報には、インクジェット記録媒体に、ベンゾフェノン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物等の低分子量の紫外線吸収剤と、チオエーテル系化合物等の酸化防止剤とを含有させることにより、記録媒体の耐光性、室内保存性が向上することが提案されている(特許文献5参照)。
【0009】
しかしながら、上記従来技術においては、紫外線吸収剤やチオ尿素系化合物を単独あるいは併用することにより、インクジェット記録媒体の色素画像の変退色を防止しているが、記録媒体の保存性を高めることのできる化合物の多くは、疎水性化合物である。従って、インク受理層の構成成分(非晶質シリカ、ポリビニルアルコール、カチオン樹脂等)を含有する水系塗料との相溶性を考慮すると、含有量等に制限があるため、その効果は十分なものとは言えなかった。さらに、これらの化合物を含有したインク受理層は、インク吸収性が悪いため、乾燥性低下や印字むらの原因となっていた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭57−74192号公報(第7頁左上欄第10行〜第20行、第10頁左下欄第1行〜第8行)
【特許文献2】
特開昭57−74193号公報(第3頁左上欄第3行〜第10行、第9頁右上欄第11行〜第11頁左上欄第8行)
【特許文献3】
特開昭57−87988号公報(第1頁特許請求項の範囲、第2頁右下欄第11行〜第20行、第3頁左上欄表2、第3頁右下欄第1行〜第8行)
【特許文献4】
特開昭61−163886号公報(第1頁左欄特許請求の範囲、第2頁右下欄下8行〜下4行、第3頁左下欄第10行〜第13行、第7頁左下欄第10行〜右下欄第1行、第8頁表1)
【特許文献5】
特開2000−26178号公報(特許請求の範囲請求項3、段落0060等)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェット記録媒体に含有させることにより、インク吸収性が高く、印字濃度、鮮明性に優れると共に、耐光性および耐酸化性ガス劣化性(特に、耐オゾン劣化性)に優れるため印刷物を長期間保存した後でもインクの変色や退色がなく、良好な印字特性を保持することができ、しかも塗工液の乾燥性を改善することのできるインクジェット記録媒体用保存性向上剤、及びこれを用いたインクジェット記録媒体、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、紫外線吸収モノマーとこれと共重合可能なビニルモノマーとを乳化重合して得られる共重合体微粒子中に酸化性ガス劣化防止剤(特に、オゾン劣化防止剤)を含有するものを、インクジェット記録媒体に塗工することにより、耐光性および耐酸化性ガス劣化性(特に、耐オゾン劣化性)に優れたインクジェット記録媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を乳化重合して得られる共重合体微粒子中および/または共重合体微粒子表面に、酸化性ガス劣化防止剤を含有あるいは吸着していることを特徴とするインクジェット記録媒体用保存性向上剤を提供するものである。
【0014】
【化6】
Figure 2004160734
【0015】
(式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0016】
【化7】
Figure 2004160734
【0017】
(式(2)中、R21は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を示す。R22は水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。R23は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m21は0又は1を示す。R24は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、m22は0又は1を示す。R25は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0018】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤においては、前記オゾン劣化防止剤が、下記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物(c)であることが好ましい。
【化8】
Figure 2004160734
【0019】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、例えば、乳化重合の段階で構成モノマーにチオ尿素系化合物等の酸化性ガス劣化防止剤を溶解させ、該チオ尿素系化合物等の存在下で乳化重合を行う等の方法により容易に得ることができる。従って、チオ尿素系化合物等を塗工液に添加する方法に比べて、チオ尿素系化合物等を乳化分散あるいはマイクロカプセル化する工程が不要で、製造が容易であると共に、安定な重合体微粒子が形成される利点がある。
【0020】
また、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、酸化性ガス劣化防止剤を重合反応系に添加する方法で容易に得ることができるため、水溶性のものから油溶性のものまで広範な特性を有する前記劣化防止剤を微粒子に含有および吸着させることができる。さらに、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、乳化重合後のエマルジョン状態で使用可能であるため、前述したインク受理層の構成成分を含有する水系塗料との相溶性が良好であり、多量に含有させてもインク吸収性や印字特性、乾燥性を損なうことがないため、従来にも増して耐光性および耐オゾン劣化性に優れたインクジェット記録媒体が得られる。
【0021】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤においては、前記共重合体が、紫外線吸収モノマー(a)を20〜80質量%、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を80〜20質量%共重合して得られる共重合体であり、かつ前記酸化性ガス劣化防止剤(c)の含有あるいは吸着量が0.1〜80質量%であることが好ましい。
【0022】
また、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤においては、前記共重合体微粒子の平均粒子径が10nm〜100nmであることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、前記のインクジェット記録媒体用保存性向上剤を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体を提供するものである。
【0024】
またさらに、本発明は、下記式(1)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を、酸化性ガス劣化防止剤の存在下で乳化重合することを特徴とするインクジェット記録媒体用保存性向上剤の製造方法を提供するものである。特に、[酸化性ガスによる印刷物の劣化防止]の点より、下記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物の存在下で乳化重合するのが好ましい。
【0025】
【化9】
Figure 2004160734
【0026】
(式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0027】
【化10】
Figure 2004160734
【0028】
(式(2)中、R21は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を示す。R22は水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。R23は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m21は0又は1を示す。R24は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、m22は0又は1を示す。R25は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0029】
【化11】
Figure 2004160734
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、前記式(1)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び前記式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を乳化重合して得られる共重合体微粒子中および/または共重合体微粒子表面に、酸化性ガス劣化防止剤(c)(好ましくはオゾン劣化防止剤、特に好ましくは、前記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物)を含有あるいは吸着するものである。ここで、酸化性ガスとしては、オゾン、二酸化硫黄、二酸化窒素等が挙げられる。
【0031】
本発明において、共重合体微粒子には紫外線吸収モノマーが共重合されているので、本発明の保存性向上剤をインクジェット記録媒体に含有させることにより、該記録媒体の耐光性を向上させることができると共に、前記共重合体微粒子には酸化性ガス劣化防止性能を有する化合物が含有あるいは吸着されているため、耐光性と酸化性ガス劣化防止性を同時に向上させることが可能となる。
【0032】
以下、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤の詳細を説明する。
【0033】
本発明で用いる紫外線吸収モノマー(a)としては、前記式(1)で示されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び前記式(2)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選択された少なくとも一種が用いられる。
【0034】
式(1)において、炭素数1〜6のアルキル基(R11)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4(さらに好ましくは1〜2)のアルキル基が挙げられる。また、炭素数1〜6のアルコキシル基(R11)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜4(さらに好ましくは1〜2)のアルコキシル基が挙げられる。R11としては水素原子が好ましい。
【0035】
11は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環において、どの部位に置換していてもよく、好ましいR11の置換位置は3位又は5位である。
【0036】
また、式(1)及び/又は式(2)において、炭素数1〜10のアルキレン基(R12、R23)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基(さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基)が挙げられる。炭素数1〜10のオキシアルキレン基(R12、R23)としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基などが挙げられる。
【0037】
12は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環において、どの部位に置換していてもよく、好ましいR12の置換位置は4位又は5位であり、特に4位が好ましい。また、R23は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環においてどの部位に置換していてもよい。好ましいR23の置換位置は5位である。
【0038】
低級アルキル基(R13、R25)としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には、前記例示のアルキル基のうち炭素数が1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0039】
ハロゲン原子(R21)としては、例えば、フッソ原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。R21がハロゲン原子又はメチル基の場合、R21はベンゼン環において、どの部位に置換していてもよい。好ましいR21としては水素原子が挙げられる。
【0040】
炭素数1〜6の炭化水素基(R22)において、炭化水素基としてはアルキル基が好適に用いられる。このようなアルキル基には、前記例示のアルキル基のうち炭素数が1〜6のものが含まれる。R22は、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環において、どの部位に置換していてもよく、好ましいR22の置換位置は3位である。
【0041】
炭素数1〜8のアルキレン基(R24)としては、例えば、前記例示のアルキレン基のうち炭素数が1〜8のアルキレン基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4(さらに好ましくは1〜2)のアルキレン基が挙げられる。また、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、前記例示のアルキレン基に、アミノ基又はヒドロキシル基が置換しているものが挙げられる。
【0042】
、Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示しており、具体的には、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−O−、−NHCOO−、−COONH−などである。
【0043】
、m21、m22は0又は1を示しており、例えば、mが0の場合は、Xが、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環に、R12を介さず、直接結合していることを意味している。また、m21が0の場合は、Xが、ヒドロキシル基が置換しているベンゼン環に、R23を介さず、直接結合していることを意味しており、m22が0の場合は、Xが、R25が結合している炭素原子に、R24を介さず、直接結合していることを意味している。すなわち、m、m21またはm22が0の場合は、R12、R23又はR24が存在していないことを意味している。一方、m、m21又はm22が1の場合は、R12、R23又はR24が存在していることを意味し、例えば、XがR12と結合していることを意味している。
【0044】
前記式(1)で示されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0045】
また、前記式(2)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーとしては、例えば、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−(アクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−メチル−5´−(アクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(アクリロイルオキシブチル)フェニル]−5−メチルベンゾトリアゾール、[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(アクリロイルオキシエトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0046】
紫外線吸収モノマー(a)は、2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格又は2−ヒドロキシベンゾトリアゾール骨格、および官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有する紫外線吸収性化合物と、官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有する共重合性ビニル化合物(アクリル酸やメタクリル酸など)とを、反応させて結合させること(エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合など)により調製することができる。
【0047】
紫外線吸収モノマー(a)の共重合量は、モノマー成分全量に対して、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%である。このように共重合量を限定するのは、20質量%未満では紫外線吸収特性を発現させるために、インクジェット記録媒体用保存性向上剤を多く添加しなければならず、その結果、記録媒体の印字解像度及びインク吸収性が低下するからであり、また80質量%を超えると平均粒子径が10nm〜100nmの乳化物とならないため、その結果、インク吸収性及び印字解像度が低下するからである。
【0048】
前記紫外線吸収モノマー(a)は、単独で又は二種以上組合わせて使用することができる。
【0049】
本発明で用いる共重合可能なビニルモノマー(b)としては、特に制限されず、例えば、スチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0050】
共重合可能なビニルモノマー(b)は、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができるが、例えばその共重合量は、モノマー成分全量に対して、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%であるのがよい。このように共重合量を限定するのは、20質量%未満では平均粒子径が10nm〜100nmの乳化物とならないため、その結果、インク吸収性及び印字解像度が低下するからであり、また80質量%を超えると紫外線吸収特性を発現させるために、上記高分子紫外線吸収剤を多く添加しなければならず、その結果、印字解像度及びインク吸収性が低下するからである。
【0051】
本発明で用いることができる共重合可能なビニルモノマー(b)の例を挙げると、スチレン、アルキルスチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸ベンジル、酢酸ビニル、α,β−不飽和多塩基性酸モノアルキルエステル、α,β−不飽和多塩基性酸ジアルキルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニルモノマーがある。これらのモノマーを共重合させることにより、造膜性を向上させ粒子を均一化させることができる。なかでも、粒子の均一化の点でスチレン、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0052】
ここでビニルモノマーとして用いることができるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの例を挙げると、メチルアクリレート、エチルアクリレートなどのアクリル酸−C1−2アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなどのメタクリル酸−C1−2アルキルエステルなどがある。アルキルビニルエーテルの例を挙げると、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのC1−2アルキルビニルエーテルなどがある。アルキルビニルエステルの例を挙げると、酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、酪酸ビニルエステルなどのC1−3アルキルビニルエステルなどがある。
【0053】
また、前記の紫外線吸収モノマー(a)や共重合可能なビニルモノマー(b)に、α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸、不飽和スルホン酸及びそれらの塩類からなる群から選ばれた少なくとも一種のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのモノマーを共重合させることにより、エマルジョンの乳化安定性を向上させることができる。これらのモノマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で使用することができるが、例えばその共重合量は、モノマー成分全量に対して、0〜20質量%、好ましくは0.001〜15質量%であり、特に好ましくは0.01〜10質量%とするのが適当である。
【0054】
ここでビニルモノマーとして用いることができるα,β−不飽和モノカルボン酸及びそれらの塩類の例を挙げると、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などがあり、また、α,β−不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩類の例を挙げると、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などがあり、不飽和スルホン酸及びそれらの塩類の例を挙げると、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルアルキルスルホサクシネート及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などがある。
【0055】
本発明で用いる酸化性ガス劣化防止剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えばキノリン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、チオ尿素系化合物等を挙げることができる。なかでも、インクジェット記録媒体への着色性の観点より、下記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物が好ましく用いられる。これらの化合物は、特に耐オゾン劣化性に優れている。
【0056】
【化12】
Figure 2004160734
【0057】
本発明でいう上記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物としては、下記一般式(4)で表されるチオ尿素誘導体、下記一般式(5)で表されるチオセミカルバジド誘導体、および下記一般式(6)で表されるチオカルボヒドラジド誘導体等が挙げられる。なかでも、酸化性ガス劣化防止性能に優れ、インクジェット記録媒体へ多く配合したときの印字特性(滲み等)への影響度が少ない点より、チオカルボヒドラジド誘導体が好ましい。
【0058】
【化13】
Figure 2004160734
(式中、R31、R32、R33、R34は、水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基であり、R31、R32、R33、R34はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0059】
【化14】
Figure 2004160734
(式中、R31、R32、R33、R34は、水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基であり、R31、R32、R33、R34はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0060】
【化15】
Figure 2004160734
(式中、R31、R32、R33、R34は、水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基であり、R31、R32、R33、R34はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0061】
上記式(4)〜式(6)において、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられるが、好ましくは炭素数1〜4、さらに好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。
【0062】
本発明のチオ尿素系化合物(c)の具体例としては、例えば、チオ尿素、N−メチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、ビス(ジメチルアミノアルキル)チオ尿素、トリブチルチオ尿素、チオセミカルバジド、アセトチオセミカルバゾン等が挙げられる。なかでも、酸化性ガス劣化防止性能に優れ、インクジェット記録媒体へ多く配合したときの印字特性(滲み等)への影響が少ない点より、ビス(ジメチルアミノアルキル)チオ尿素が好ましく、特にビス(ジメチルアミノプロピル)チオ尿素が好ましい。
【0063】
酸化性ガス劣化防止剤は、共重合体微粒子中や共重合体微粒子表面に、0.1〜80質量%(共重合体微粒子全体を100とする)含有あるいは吸着されているのがよい。含有(吸着)量が0.1質量%未満の場合は、目標とする酸化性ガス劣化防止性能が得られなくなり、含有(吸着)量が80質量%を超える場合は、印字特性および耐水性が著しく低下するからである。ここで、酸化性ガス劣化防止剤が共重合体微粒子中およびその表面に含有されているとは、酸化性ガス劣化防止剤が共重合体中に何らかの形態で含まれていることを言い、例えば、酸化性ガス劣化防止剤が重合過程で共重合体微粒子中に取り込まれていてもよく、共重合体微粒子の表面に吸着(付着)あるいは結合していてもよい。酸化性ガス劣化防止剤の含有(吸着)量は、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%の範囲であるのがよい。酸化性ガス劣化防止剤は、重合条件により、共重合体微粒子中に含有または共重合体微粒子表面に吸着する。
【0064】
本発明の共重合体は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など従来から公知の重合方法で製造することができるが、なかでも、ポリマーの粒子径を均一に調製することができるため、プリンターの持つ解像度を損なわない点から、乳化重合法で得られる共重合体微粒子が好ましい。乳化重合法で得られるエマルジョンは、そのポリマー平均粒子径が10nm〜100nmの範囲が好ましく、印字特性をより高める観点より、特に30nm〜80nmの範囲が好ましい。平均粒子径が10nm未満の場合はインク吸収性が低下し、100nmを超える場合は印字解像度が低下するため、かかる範囲にすることにより、粒子間間隙が細密になり、インクジェット記録シートの解像度、インク吸収性が向上する。また、共重合体の質量平均分子量は、特に制限されないが、10,000〜1,000,000が好ましい。
【0065】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤を乳化重合法により調製する場合は、例えば、常法の乳化重合方法により20〜60重量%の濃度で製造できる。具体的には、水に乳化剤を溶解し、前記モノマー(a)および(b)の共重合成分に、前記酸化性ガス劣化防止剤(c)を加えて乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて同時反応により乳化重合を行う方法が挙げられる。この他、連続滴下、分割仕込み等の方法により、前記の共重合成分、酸化性ガス劣化防止剤あるいはラジカル重合開始剤を反応系に供給する方法が挙げられる。また、前記の共重合成分と酸化性ガス劣化防止剤を乳化剤を用いて乳化させた状態で、反応系に供給する方法も可能である。なお、重合温度は40℃〜100℃の範囲が望ましい。また、前記酸化性ガス劣化防止剤には、酸化防止剤等を併用することもできる。
【0066】
製造に使用する乳化剤は、特に制限するものではなく、公知の乳化剤が使用可能である。例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アリルアルキルスルホサクシネート塩等のアニオン性乳化剤があげられる。また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル等のノニオン性乳化剤も使用可能である。また、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコールのスルホン化物、ポリエチレングリコール等の高分子乳化剤も使用可能である。乳化剤は、通常、モノマー成分全量に対して1〜10質量%使用する。
【0067】
製造に使用するラジカル重合開始剤は、特に制限はされず、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、これらの過酸化物との組み合わせで通常使用される各種のレドックス開始剤、または、2,2−アゾビス(アミジノプロパン)塩酸塩のようなアゾ系開始剤がいずれも使用可能である。また、必用に応じて、ドデシルメルカプタン、ジアルキルアミン、アリルアルコール等の分子量調整剤を併用しても差し支えない。ラジカル重合開始剤は、通常、モノマー成分全量に対して0.1〜1.0質量%使用する。
【0068】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、前記酸化性ガス劣化防止剤を含有する共重合体微粒子を主成分とするものである。この割合は、ポリマー固形分として、塗工剤全体に対し、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%であるのがよい。本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、単独で使用しても優れた効果を発揮するが、用途に応じて他の添加剤と併用して塗工することもできる。添加剤としては、紙加工などで一般に使用されている表面紙力剤、表面サイズ剤、帯電防止剤、粘度調節剤、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、防黴剤、防滑剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合割合は、前記インクジェット記録媒体用保存性向上剤の機能を阻害しない範囲であれば、特に制限されないが、塗工剤全体に対し、通常、0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%であることが、退色性を改良する点から好ましい。
【0069】
また、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、インクジェット記録媒体の光沢層に用いることができるだけでなく、インク受理層に添加してもよく、微粒子であるため紫外線吸収効果をもつ表面積も大きく、かつインク受理層のインク受理特性を損なうことがない。
【0070】
本発明の適用の対象となるインクジェット記録媒体は、インクジェット記録に適するものであれば特に制限されず、天然パルプ紙、顔料塗工紙、合成紙が使用でき、この他に、布や、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム、シートも使用できる。
【0071】
本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤の塗工割合は、前記共重合体(固形分として)の記録媒体に対する割合で、通常、0.1〜25g/mであり、好ましくは1〜20g/mである。また、塗工方法は、従来公知のコーティング法が特に制限なく使用可能であり、エアードクターコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーなどを用い、共重合体を適当な濃度に水で希釈して塗工できる。なお、記録媒体として、紙を使用する場合は、塗工に先立ち、シリカまたはアルミナ等を原紙に塗工し、この上に本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤を塗工してもよい。
【0072】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」及び「質量部」は、それぞれ「%」及び「部」と略記する。
【0073】
(製造例1)
ジムロート、滴下ロート、温度計、窒素導入管および攪拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、イオン交換水100部、重合用乳化剤としてアクアロンHS−20(第一工業製薬(株)製)5部を加え、窒素導入管から窒素を吹き込みながら、70℃まで昇温させた。次に、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)フェニル]ベンゾトリアゾール30部、スチレン65部、メタクリル酸5部、オゾン劣化防止剤((1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−チオ尿素(ノクラックNS−10:大内新興化学工業製))、アクアロンHS−20 5部、イオン交換水80部からなるモノマー混合物を調製し、このうち混合物の1%と重合開始剤として、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩(V−50:和光純薬(株)製)0.2部をイオン交換水18.5部に溶解した水溶液を前記反応容器に添加し、70℃で30分間維持した。モノマー混合物の残りとV−50 0.2部をイオン交換水18.5部に溶解した水溶液を2時間かけて反応容器内に滴下し、70℃で90分間熟成し、高分子エマルションを得た。このエマルションの粒子径は50nmであった。
【0074】
[インクジェット光沢フィルムの作製]
(実施例1)
(インク受容層の調製)基材が透明性を有し、厚みが100μmのPETフィルム(東レ(株)製:ルミラーS10)を使用し、この基材上にインク受容層を形成するために、下記の方法で塗工液を作製した。
【0075】
まず、部分ケン化ポリビニルアルコール(PVA−235:クラレ製)の10%水溶液60部、シリカ微粒子(ミズカシルP−78A:水澤化学工業(株)製)7.5部、カチオン樹脂(アデカカチオエースDM−50:旭電化工業(株)製)3.75部、蛍光増白剤(Tinopal CBS−X:チバスペシャルティケミカルズ製)0.045部、消泡剤(IPデフォーマU−510:一方社油脂工業(株)製)0.01部、抗菌剤(スラオフAY:武田薬品工業(株)製)0.015部を配合し、塗液濃度を15%で調整した。乾燥膜厚が30μmとなるようにドクターブレードを用いて基材に塗工し、105℃の熱風乾燥機中に5分間乾燥熱処理して、インク受容層を得た。
【0076】
(光沢層の調製)前記インク受容層上に光沢層を形成するために、下記の方法で塗工液を作製した。
【0077】
まず、光沢剤(コロイダルシリカ)100部に対して、製造例1で得られた高分子エマルション10部を配合した。膜厚が3μmとなるようにマイヤーバーを用いてインク受容層上に塗工し、105℃の熱風乾燥機中に30秒間乾燥熱処理して、インクジェット光沢フィルムを得た。
【0078】
(比較例1)
オゾン劣化防止剤を除いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクジェット光沢フィルムを得た。
【0079】
(比較例2)
高分子エマルションを除いた以外は、実施例1と同様にして比較例2のインクジェット光沢フィルムを得た。
【0080】
[評価方法]
実施例及び比較例の各々の記録媒体の評価を以下に示す方法により行った。なお、インクジェット記録評価に際しては、市販のインクジェットプリンター(BJ−F870:キヤノン製)を用いた。
【0081】
(耐光性試験)
キセノンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いて、照射エネルギー90W/m、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で6時間照射した。前記と同じプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのベタ画像を印字した後、L、a、bを測定し、試験前と試験後の値の差からΔEをそれぞれ求め、下記評価基準により評価した。評価基準は、○:ΔEが3未満、△:ΔEが3以上10未満、×:ΔEが10以上、とした。
【0082】
(耐ガス性試験)
ガス腐食試験機を用いて、混合ガス(O、SO、NO)、相対湿度50%で2時間放置した。前記と同じプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのベタ画像を印字した後、L、a、bを測定し、試験前と試験後の値の差からΔEをそれぞれ求め、下記評価基準により評価した。評価基準 は、○:ΔEが3未満、△:ΔEが3以上10未満、×:ΔEが10以上、とした。
【0083】
(実曝試験)
前記と同じプリンターを用いて印字したベタ画像のL、a、bを測定し、暴露前と2ヶ月暴露後の値の差からΔEをそれぞれ求め、下記評価基準により評価した。評価基準は、○:ΔEが3未満、△:ΔEが3以上10未満、×:ΔEが10以上、とした。
【0084】
以上の評価結果を表1にまとめて示す。
【0085】
【表1】
Figure 2004160734
【0086】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、インクジェット記録媒体の光沢層やインク受理層に、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤を含有させることにより、耐光性および耐酸化性ガス劣化性(特に耐オゾン劣化性)に優れ、印刷記録媒体を長期間保存した場合でも、退色や変色のない保存安定性に優れたインクジェット記録媒体が得られる。
【0087】
また、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、チオ尿素系化合物等の酸化性ガス劣化防止剤の存在下で乳化重合を行う等の方法により容易に得ることができるため、水溶性から油溶性まで広範な特性を有する酸化性ガス劣化防止剤を共重合体微粒子に含有あるいは吸着させることができ、記録媒体の種類や用途に応じて最適の薬剤を選択することが可能となる。
【0088】
さらに、本発明のインクジェット記録媒体用保存性向上剤は、乳化重合後のエマルジョン状態で使用可能であるため、前述したインク受理層の構成成分を含有する水系塗料との相溶性が良好であり、多量に含有させてもインク吸収性や乾燥性を損なうことがない。また、乳化重合法で得られる共重合体は、平均粒子径が均一であるため、プリンターの持つ解像度を損なわず、印字が鮮明でインク濃度が高く印字特性に優れたインクジェット記録媒体を提供できる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を乳化重合して得られる共重合体微粒子中および/または共重合体微粒子表面に、酸化性ガス劣化防止剤(c)を含有あるいは吸着していることを特徴とするインクジェット記録媒体用保存性向上剤。
    Figure 2004160734
    (式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
    Figure 2004160734
    (式(2)中、R21は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を示す。R22は水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。R23は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m21は0又は1を示す。R24は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、m22は0又は1を示す。R25は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
  2. 前記酸化性ガス劣化防止剤が、下記式(3)で表される構造を分子中に1個以上有するチオ尿素系化合物である、請求項1に記載のインクジェット記録媒体用保存性向上剤。
    Figure 2004160734
  3. 前記共重合体が、紫外線吸収モノマー(a)を20〜80質量%、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を80〜20質量%共重合して得られる共重合体であり、かつ前記酸化性ガス劣化防止剤(c)の含有あるいは吸着量が0.1〜80質量%である、請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体用保存性向上剤。
  4. 前記共重合体微粒子の平均粒子径が10nm〜100nmである、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録媒体用保存性向上剤。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録媒体用保存性向上剤を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
  6. 下記式(1)で表されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー及び下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマーから選ばれる少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(a)と、(a)と共重合可能なビニルモノマー(b)を、酸化性ガス劣化防止剤の存在下で乳化重合することを特徴とするインクジェット記録媒体用保存性向上剤の製造方法。
    Figure 2004160734
    (式(1)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、mは0又は1を示す。R13は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
    Figure 2004160734
    (式(2)中、R21は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を示す。R22は水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。R23は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m21は0又は1を示す。R24は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、m22は0又は1を示す。R25は水素原子、又は低級アルキル基を示す。Xはエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
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JP2008138163A (ja) * 2006-11-10 2008-06-19 Nippon Shokubai Co Ltd 水分散型紫外線吸収性ポリマー組成物

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