JP2004156858A - 冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法 - Google Patents

冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用い、蒸発器の周囲温度が低いときに、冷凍機油を確実に圧縮機に返油させて信頼性を向上する。
【解決手段】外気温度を検知する外気温度センサー51を有し、外気温度毎に起動時の圧縮機1から流出する冷凍機油が予め設定された時間以内で再び圧縮機1まで返油される最低冷媒流量に基づいて圧縮機最低運転周波数を設定し、運転に支障のない量の冷凍機油を圧縮機1内に滞留させるように、最低運転周波数以上で運転する。また、第1絞り装置4aの最低開度を設定し、最低開度以上で運転する。また、絞り装置4aの開度の変更量または絞り開始時期を制御する。また、圧縮機1に必要最低量の冷凍機油を滞留させてから圧縮機吐出スーパーヒートがつくように、絞り装置4aの開度を制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば空気調和装置等の冷凍サイクルを用いた冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の空気調和装置等の冷凍サイクル装置において、冷媒としてHFC系冷媒が封入され、圧縮機に充填される冷凍機油としてHFC系冷媒に対して弱相互溶解性の鉱物油やアルキルベンゼン系油を用いた場合、圧縮機より流出した冷凍機油の返油性能が悪いという問題点が生じる。このため、従来の例えば冷凍装置においては、冷却負荷が小さく圧縮機を低回転数で連続運転する必要がある場合に、圧縮機を所定時間高速運転して冷凍機油を圧縮機に返油する構成としている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−208435号公報(第4ページ、図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍装置では、圧縮機を連続して低回転数で運転する場合にのみ、所定時間高回転数で運転している。ところが、冷凍サイクル装置として例えば空気調和装置などで暖房運転を行う際、圧縮機と凝縮器を接続する高圧ガス管や蒸発器と圧縮機を接続する低圧ガス管において、ガス冷媒が冷凍機油にほとんど溶解しない。このため、冷凍機油の動粘度は、冷媒回路内を純粋な冷凍機油の動粘度と同等の状態で流動するので返油されにくい。また、外気温度が低い状態で運転起動された場合に、特に問題が生じる。外気温度が低い状態での運転起動時には、蒸発温度の低下による冷媒中への冷凍機油の溶解量の減少や、冷凍機油の動粘度がさらに大きくなり、圧縮機より流出する冷凍機油は冷媒回路内に長時間滞留して圧縮機への返油性能が悪化する。これにより、圧縮機内の冷凍機油が不足して圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付きや異常磨耗が生じるなど、運転に支障をきたすという問題があった。
【0005】
また、冷凍サイクル装置の運転停止時に蒸発器に多くのニ相冷媒が溜まった状態で停止している冷凍サイクル装置を起動すると、蒸発器に溜まりこんでいた二相冷媒は圧縮機へ流入する。そして圧縮されて高温高圧の二相冷媒として吐出管より吐出されるのであるが、この高温高圧の二相冷媒のうち液冷媒の一部は、圧縮機より吐出されずに圧縮機シェルの底に溜まり込む。弱相互溶解性油は比重の大きい液冷媒の上部に押上げられ、吐出管より冷凍サイクルへ流出しやすくなり、圧縮機内の冷凍機油が不足するという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、特に蒸発器の周囲温度が低くなる運転時に、冷凍機油を確実に圧縮機に返油させ、信頼性の高い冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
また、この発明は、冷凍サイクル装置の起動時に、圧縮機への液バックを低減して、信頼性の高い冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して前記圧縮機の周波数または前記絞り手段の開度を制御することで、前記冷凍サイクルを循環する冷媒の最低冷媒流量を確保する制御手段と、この制御手段によって前記圧縮機内に前記圧縮機の運転に支障がない量で滞留する冷凍機油と、を備えたものである。
【0008】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置において、前記制御手段は、前記温度センサーで検知した温度に対して前記圧縮機から流出した冷凍機油を予め設定した時間内で前記圧縮機に返油し得る圧縮機最低周波数を決定し、前記圧縮機を前記圧縮機最低周波数より大きな周波数で制御することを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置において、前記制御手段は、複数の蒸発器周辺温度のそれぞれに対し、前記圧縮機から流出した冷凍機油が予め設定した時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機周波数を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶したデータに基づき、前記温度センサーで検知した温度に対して前記時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機最低周波数を演算する演算部と、前記圧縮機を前記演算部で得られた圧縮機最低周波数より大きな周波数で運転する制御部と、を備えたものである。
【0010】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度と前記圧縮機の運転周波数に対して、前記冷媒状態検知手段で検知した前記圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に安定すると推定される前記絞り手段の開度を最低開度に設定し、前記絞り手段を前記最低開度より大きな開度で制御することを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記絞り手段の起動開度を前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して予め設定された時間内で返油し得る開度に設定して絞り手段起動運転を開始することを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記圧縮機内に前記圧縮機の必要最低量の冷凍機油を滞留させてから前記圧縮機の出口で圧縮機吐出スーパーヒートがつくように、前記絞り手段の開度の変更量または前記絞り手段の絞り開始時期を制御する制御手段と、を備えたものである。
【0013】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記蒸発器周辺温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記蒸発器周辺温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間より長くしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記シェル温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記シェル温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間より短くしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記絞り手段収束制御運転における蒸発器周辺温度が低いときの最大開度変更量を前記蒸発器周辺温度が高いときの最大開度変更量より小さく設定したことを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記圧縮機出口側の圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知手段と、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知手段で運転起動後に初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知した時に前記絞り手段の開度を増加させる制御手段と、を備えたものである。
【0017】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、運転停止時に、前記絞り装置の開度を停止初期開度に設定する停止初期運転と、前記停止初期運転の後に前記絞り装置の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常運転と、を行なう制御手段を備えたものである。
【0018】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、圧縮機、蒸発器、第1絞り手段、液溜め手段、第2絞り手段、凝縮器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、前記第2絞り手段の開度を第2絞り手段の起動開度に設定する第2絞り手段起動運転と、前記第2絞り手段起動運転の後に前記第2絞り手段を前記起動開度よりも小さい定常開度に設定すると共に、前記第1絞り手段の開度を所定開度大きくする収束移行運転と、前記収束移行運転の後に前記第2絞り手段の開度を増減して前記凝縮器の出口側の冷媒状態を制御する第2絞り手段収束制御運転と、を行なう制御手段を備えたものである。
【0019】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル内に液溜め手段を備えると共に、冷凍機油量に対して3倍以上の冷媒量を封入したことを特徴とするものである。
【0020】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置において、冷媒は、HFC冷媒または自然冷媒を用いることを特徴とするものである。
【0021】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置において、冷凍機油は、動粘度8〜32cStのアルキルベンゼン系油を用いることを特徴とするものである。
【0022】
また、この発明に係る冷凍サイクル装置の制御方法は、圧縮機の周波数を徐々に上げ、前記周波数に伴って絞り手段の開度を起動開度に設定する起動ステップと、前記圧縮機が負荷に応じた所定の回転数に達した後に前記絞り手段の開度を前記起動開度よりも小さく絞って増減させ、圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記起動ステップの運転時間または前記絞り手段収束ステップの前記絞り手段の開度増減幅を制御する収束時間制御ステップと、を備えたものである。
【0023】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置の制御方法は、圧縮機の運転を停止する圧縮機停止ステップと、前記圧縮機停止ステップの後に絞り手段の開度を停止初期開度に設定する停止初期ステップと、前記停止初期ステップの後に前記絞り手段の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常ステップと、を備えたものである。
【0024】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置の制御方法は、冷媒貯溜手段の上流側絞り手段を起動開度に設定して運転する上流側絞り手段起動ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップの後に前記上流側絞り手段の開度を増減させて凝縮器出口側の冷媒状態を目標状態に近づける上流側絞り手段収束ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップから前記上流側絞り手段収束ステップに移るときの前記上流側絞り手段の開度の減少による冷媒流量の減少を緩和するように前記冷媒貯溜手段の下流側絞り手段の開度を増加させる収束移行ステップと、を備えたものである。
【0025】
また、この発明に係わる冷凍サイクル装置の制御方法は、圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップと、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップで初めて前記圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知したときに絞り手段の開度を増加させる開度増加ステップと、前記絞り手段の開度を増減させて圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、を備えたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置として、例えば空気調和装置の冷凍サイクルを示す構成図である。また、図2はこの実施の形態に係る圧縮機運転周波数の制御フローチャートであり、図3はこの実施の形態に係る外気温度に対する冷媒流量と返油時間の関係を示す。
【0027】
図1において、圧縮機1、暖房時には蒸発器、冷房時には凝縮器として動作する熱交換器3、第1絞り手段である例えば第1絞り装置4a、液溜め手段である例えばレシーバ7、第2絞り手段である例えば第2絞り装置4b、暖房時には凝縮器、冷房時には蒸発器として動作する熱交換器5、暖房運転と冷房運転とで冷媒の循環方向を切換える流路切換手段例えば四方弁2を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成している。
なお、図1の冷凍サイクル装置は、例えば冷凍サイクル装置として空気調和装置の暖房運転時の状態を示しており、この実施の形態では、例えば熱交換器3を室外に設置した室外熱交換器とし、熱交換器5を室内に設置した室内熱交換器として、熱交換器3を蒸発器とし、熱交換器5を凝縮器として動作させて室内の暖房運転を行なう場合について説明する。
【0028】
室外熱交換器3を設置する場所と室内熱交換器5を設置する場所の間の距離によって、冷凍サイクルを構成する冷媒配管長が異なり、冷媒配管長に応じて充填冷媒量が異なる。例えば、図1に示す冷凍サイクルでは、配管イと配管ロの間及び配管ハと配管ニの間を延長配管で接続する。また、暖房運転と冷房運転や負荷に応じても冷凍サイクル内を循環する冷媒量の必要な量が異なる。液溜め手段であるレシーバ7は、余剰冷媒液溜め用の容器で、運転や負荷や延長配管の長さによって最適量の冷媒が冷凍サイクルを循環するように、余剰冷媒を滞留するための容器である。第1絞り装置4aは、例えば室外熱交換器3とレシーバ7との間の冷媒配管に設けられた電子膨張弁で、開度を変化させることで、この配管を流れる冷媒流量を可変にできる。同様に、第2絞り装置4bは、例えば室内熱交換器5とレシーバ7との間の冷媒配管に設けられた電子膨張弁で、開度を変化させることで、この配管を流れる冷媒流量を可変にできる。
【0029】
また、外気温度センサー51によって蒸発器として動作する室外熱交換器3の周辺の温度、例えば外気温度が検知でき、室内温度センサー52によって室内熱交換器5の周辺の温度、例えば室内温度が検知できる。制御手段である例えば制御装置11は、図4のブロック図で示すように構成され、例えば温度センサー51、52からの計測温度の入力部11aと記憶部11bと演算処理部11cを有するマイクロコンピュータ、及び圧縮機駆動回路11dであり、温度センサー51、52で検知した温度に基づいて圧縮機1の周波数を制御する。
【0030】
この冷凍サイクルに用いた冷媒は、HFC冷媒、例えばR32とR125の混合冷媒であるR410Aであり、冷凍機油は、アルキルベンゼン系油など、冷媒に対して弱相互溶解性でかつ油比重が液冷媒の比重よりも小さい冷凍機油を用いる。弱相互溶解性の冷凍機油は、不純物が多少混入しても劣化しにくく安定性が維持でき、既成配管を使えるなど、多くの利点がある。
【0031】
次に、このように構成された空気調和装置において、暖房運転初期の動作を説明する。暖房運転起動後、圧縮機1は室外熱交換器3に溜まりこんでいた二相冷媒を吸入管より吸入、圧縮し、高温高圧の二相冷媒として吐出管より吐出する。圧縮後の高温高圧の二相冷媒のうち液冷媒の一部は、圧縮機1より吐出されずに圧縮機シェルの底に溜まり込む。圧縮機1に封入されている弱相互溶解性油は比重の大きい液冷媒の上部に押上げられ、吐出管より冷凍サイクルへ流出する。なお、圧縮機1より流出する弱相互溶解性油の量は、封入されている冷媒量によって異なる。熱交換器3、5を設置する場所が離れている場合には、延長配管が長くなり必要冷媒量は多くなるが、冷凍機油の封入量はほとんど変わらないので、冷媒量が冷凍機油の量の3倍以上になることもある。特にこのように冷凍機油の封入量に対して冷媒の封入量が3倍以上に多くなるシステムにおいては、流出する弱相互溶解性油の量は極めて多くなる。
【0032】
圧縮機1から吐出された高温高圧の二相冷媒は、四方弁2を通って室内熱交換器5に入り室内空気と熱交換し、乾き度の低い二相冷媒または液冷媒まで凝縮し、室内熱交換器5から流出する。室内熱交換器5から流出した乾き度の低い二相冷媒または液冷媒は第2絞り装置4bを通って中間圧に減圧され、乾き度の小さい二相冷媒となってレシーバ7に流入する。レシーバ7に流入した乾き度の小さい二相冷媒は、レシーバ7内に挿入された圧縮機1の吸入側に接続された低圧低温の吸入配管9と熱交換する。そして、乾き度がさらに小さい二相冷媒または飽和液冷媒となってレシーバ7から流出する。レシーバ7から流出した乾き度の小さい二相冷媒または飽和液冷媒は第1絞り装置4aを通って低圧の二相冷媒となり、室外熱交換器3へ流入する。
【0033】
室外熱交換器3に流入した低圧二相冷媒は、外気と熱交換し乾き度の高い低圧二相冷媒となって室外熱交換器3から流出する。室外熱交換器3から流出した乾き度の高い低圧二相冷媒はレシーバ7に挿入された吸入配管9内を通り、レシーバ7内の中間圧冷媒と熱交換する。そして、乾き度のさらに高い低圧二相冷媒となり、四方弁2を介して圧縮機1の吸入側へ戻る。
【0034】
一方、圧縮機1より吐出された弱相互溶解性油は、上記で説明した冷媒と同じ経路を通り、再び圧縮機1の吸入側へ戻ってくる。
【0035】
以上のように、暖房運転初期は圧縮機1に封入されている弱相互溶解性油が液冷媒により押上げられて冷媒回路に流出するため、圧縮機1内の冷凍機油量が減少し、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗など信頼性が低減する可能性があった。特に弱相互溶解性油は冷媒の溶解度が小さいので、油動粘度が低下せず、さらに暖房運転の場合、蒸発温度が低温となり蒸発器3や低圧ガス配管で油動粘度が上昇する。このため、一旦圧縮機1から冷凍サイクルに流出した弱相互溶解性油が、再び圧縮機1の吸入部に返油されて圧縮機1内の冷凍機油量が回復するまでに、長い時間を要する。
【0036】
図3は、延長配管(図1のイとロの間及びハとニの間の配管長)を50m、蒸発器3のパス数を4パスとした場合の実験により得られた冷媒流量(kg/h)と返油時間(sec)の関係を示すグラフであり、横軸に冷媒流量(kg/h)、縦軸に返油時間(sec)を示す。ここで、返油時間とは、圧縮機1から冷凍機油が吐出されてから圧縮機1に返油されるまでの時間である。3本の曲線は、上側からそれぞれ外気温度がー10℃、0℃、7℃の場合の関係である。同じ冷媒流量であっても外気温度が低いほど、油の動粘度が高くなり長い返油時間を要することがわかる。
【0037】
ここで、この実施の形態に係る圧縮機運転周波数の制御の一例を図2に示す制御フローチャートに基づいて説明する。制御装置11は暖房運転起動指令を受ける(ST1)と圧縮機起動運転を行なう(ST2)。これは例えば圧縮機1を停止状態から徐々に周波数を上げていき、数分程度後には負荷に応じて周波数を増減する定常運転での周波数程度にする運転である。この後、リモコン等で設定された設定室内温度Tainsetを読み込む(ST3)。起動時の外気温度Taoを外気温度センサー51により検知し(ST4)、予め設定された返油時間を満足するのに必要な最低冷媒流量Gminを設定する(ST5)。これは、図3に示す外気温度Taoの時の冷媒流量と返油時間の関係から設定できる。次に最低冷媒流量Gminが得られるように圧縮機最低運転周波数Hzminを設定する(ST6)。例えば、必要返油時間を10分とすると、外気温度がー10℃の時には60(kg/h)程度、0℃の時には45(kg/h)程度、7℃の時には35(kg/h)程度になるような圧縮機周波数が最低運転周波数Hzminとして設定される。
【0038】
次に室内温度Tainを室内温度センサー52により検知し(ST7)、設定室内温度Tainsetとの差(Tainset― Tain)に応じて圧縮機運転周波数の変更量ΔHzを計算し(ST8)、圧縮機運転周波数Hz=Hz+ΔHzを算出する(ST9)。ここで算出した圧縮機運転周波数Hzが圧縮機最低運転周波数Hzminよりも小さいかどうか判断し(ST10)、圧縮機運転周波数Hz<圧縮機最低運転周波数Hzminと判断された場合には、圧縮機運転周波数Hzを圧縮機最低運転周波数Hzminとする(ST11)。ST7〜ST11の制御は暖房運転の間を通じて行われる。
【0039】
このように、図2に示す制御処理では、圧縮機運転周波数Hzの下限値を設け、冷媒流量が予め設定された返油時間を満足する最低冷媒流量を下回らないように運転する。この最低冷媒流量とは圧縮機1から流出した冷凍機油が予め定めた所定の時間、例えば10分程度で圧縮機1に返油されるような冷媒流量の最低値である。圧縮機1には予め冷凍機油の必要最低油量が通常は液面高さで定まっており、圧縮機1内の冷凍機油の量がこの液面よりも下がると運転に支障をきたす。返油時間は、少なくとも圧縮機1内に滞留している冷凍機油の量が必要最低油量以下にならないうちに、圧縮機1に返油されるように設定する。冷凍サイクルを循環する冷媒流量をこのように確保することで、圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性の冷凍機油は、所定時間内に再び圧縮機吸入部に返油され、圧縮機1内の冷凍機油量が長時間減少した状態になるのを防ぐことができる。従って、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付きや異常磨耗などが生じるのを防止でき、信頼性を向上できる。
なお、圧縮機1で予め定まっている冷凍機油の必要最低油量は、液面高さとして定まっており、圧縮機1内で冷凍機油の下部に液冷媒ある状態で必要最低油量に達している場合でも、液冷媒の量によるが、圧縮機1をある程度支障なく運転できることもある。
【0040】
また、従来装置では、圧縮機を低回転数で連続運転する場合に高回転数運転を行っているが、この実施の形態では、起動時の外気温度に基づいて最低運転周波数Hzminを設定し、運転中を通じて最低運転周波数Hzmin以上となるように制御する。このため、運転初期に蒸発器3に溜まった液バックが生じて冷凍機油の流出量が多くなる時、及び運転中に負荷が小さくなって圧縮機周波数が小さくなる時に、返油が可能な冷媒流速を確保できる。即ち、運転中を通して冷凍サイクル内に冷凍機油が滞留するのを防止し、確実に圧縮機1に返油できる。
【0041】
また、図2に示すような制御では、室内温度Tainを設定室内温度Tainsetに近づけるように計算した圧縮機運転周波数Hzが最低冷媒流量Gminが得られる最低周波数Hzmin以上である場合には、周波数Hzを変更しない。このように、無駄に周波数Hzを大きくしないので、能力が過大になったり必要以上に消費電力が増えることなく、効率のよい運転を行うことができる。
【0042】
また、複数の外気温度に対して予め試験などで得られたデータ(図3)に基づき、所定の返油時間が得られるように冷媒流量を設定している。これにより、圧縮機1から吐出した冷凍機油が所定時間経って確実に圧縮機1に戻ってくるので、さらに信頼性の高い冷凍サイクル装置が得られる。
【0043】
ST5、ST6で、最低冷媒流量Gmin、最低運転周波数Hzminを計算する時、例えば予め制御装置11の記憶部にテーブルで実験データまたは経験データを与え、これを参照する。この様に処理すると、暖房運転起動指令時に処理が簡単であり、短時間に計算できる。なお、テーブルでデータを記憶する代わりに演算式によって計算してもよい。
また、ST5、ST6で外気温度Taoに対してまず最低冷媒流量Gminを設定した後に最低運転周波数Hzminを設定したが、Hzmin=f(Tao)となるようにテーブルを作成してもよい。
【0044】
また、例えば外気温度Taoに対して、その温度での返油を満足する圧縮機最低運転周波数Hzminをデータとしてテーブルで与える際、そのデータ数はいくつでもよいが、少なくとも3以上の外気温度Taoに対して最低運転周波数Hzminを設定するのが好ましい。この実施の形態では、例えば外気温度が0℃よりも小さい場合に60(kg/h)、0℃〜7℃の場合に45(kg/h)、7℃以上の場合に35(kg/h)が得られるように、3つの温度範囲で最低運転周波数Hzminを設定している。外気温度に対して適切な最低運転周波数となるように設定するのが好ましいが、少なくとも3以上の外気温度に対して最低運転周波数を設定した場合、能力が過大になったり必要以上に消費電力が増えるのをある程度防止できる。例えば空気調和装置などの暖房運転を行なう場合、外気温度がー15℃〜40℃という広範囲に対して、返油を満足するように圧縮機最低周波数Hzminを決定する必要がある。これを2段階の最低運転周波数で制御しようとすると、ある温度範囲ではその温度範囲の低い方の温度の条件での圧縮機最低運転周波数Hzminで運転することになる。外気温度がその温度範囲の高い方に近い場合の運転においては、能力がある程度過大になることがあり、快適性が悪化したり、消費電力が増加する。このため、温度範囲はなるべく小さく設定するのが望ましいが、少なくとも3段階以上の温度範囲で設定するのが好ましい。このとき、図3で必要返油時間における冷媒流量の差を考慮して温度範囲を設定するとよい。また、3段階より少ないデータしか与えない場合、そのデータ間を推測して返油が満足するように圧縮機最低周波数を計算し、制御は記憶部11bのデータ数よりも多い多段階の温度範囲で行なうようにしてもよい。
【0045】
また、この実施の形態における冷凍サイクル装置は、レシーバ7を有しているので、設置場所に応じて必要冷媒量が異なる場合でも、予め見込まれる最大の必要冷媒量を充填しておけばよい。設置場所に応じて生じる余剰冷媒は、レシーバ7に貯溜された状態で運転される。このため、設置現場での手順が簡単にできる。
【0046】
図5はこの発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置として、例えば空気調和装置の冷凍サイクルの他の構成例を示す構成図である。また、図6にこの実施の形態における第1絞り装置の制御フローチャートを示す。
なお、図5において、図1と同一符号は同一、または相当部分を示している。また、暖房運転起動指令の初期の冷媒および弱相互溶解性油の動作については、図1を用いて説明した前述の内容と同じであるため、省略する。
【0047】
図5において、温度センサー53は圧縮機1の吐出部に設けられ、吐出部付近の温度、即ち吐出温度を検知する。制御手段である制御装置12の構成は図4に示す制御装置11と同様であるが、制御装置12は第1絞り装置4aの開度を制御するための駆動回路を有している。制御装置12は、例えば外気温度センサー51、吐出温度センサー53、凝縮温度センサー54からの温度入力部と記憶部と演算処理部を有するマイクロコンピュータ、及び第1絞り装置4aの駆動回路であり、温度センサー51、53、54で検知した温度に基づいて第1絞り装置4aの開度を制御する。
【0048】
以下、この実施の形態に係る第1絞り装置4aの開度の制御の一例を、図6に示す制御フローチャートに基づいて説明する。暖房運転起動指令によって圧縮機1は起動運転を行なう際、第1絞り手段である第1絞り手段4aは予め定められている起動開度に設定される。そして圧縮機1が定常運転を行なうあたりで、圧縮機1の吐出側の冷媒状態が目標状態になるように第1絞り装置4aの開度が制御される。例えば圧縮機1の吐出部付近の温度である吐出温度を、予め設定された目標吐出温度に向かって収束するように、第1絞り装置4aの開度を増減して制御する。図6に示す制御フローチャートは、この第1絞り装置4aの収束制御運転の動作に関するものである。
【0049】
制御装置12は第1絞り装置4aの収束制御運転が開始される(ST12)と、外気温度Taoを外気温度センサー51により検知する(ST13)。そして外気温度Taoに対応して予め設定された第1絞り装置最低開度P1minを設定する(ST13)。予め例えば制御装置12の記憶部に、複数の外気温度に対応して、それぞれの外気温度の時に目標吐出温度に収束する第1絞り装置4aの安定開度を第1絞り装置最低開度P1minとしてテーブルで記憶しておく。そしてST13では、外気温度センサー51により検知された外気温度Taoに対して、第1絞り装置最低開度P1minを決定する。
【0050】
次にST14〜ST20で、運転中の吐出温度Tdが目標吐出温度Tdpに近づくように収束制御を行う。即ち、吐出温度Tdを吐出温度センサー53により検知し(ST14)、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdpとの温度差ΔTdを計算する(ST15)。この温度差ΔTdをゼロにするように第1絞り装置4aの開度変更量ΔP1を計算し(ST16)、現在の第1絞り装置4aの開度を開度変更量ΔP1だけ変更して次の第1絞り装置開度P1を決定する(ST17)。ここで、決定した第1絞り装置開度P1が第1絞り装置最低開度P1minよりも小さいかどうか判断し(ST18)、小さくなった場合、第1絞り装置開度P1を第1絞り装置最低開度P1minに決定しなおす(ST19)。そして、第1絞り装置4aの開度を、ST17、ST19で決定した第1絞り装置開度P1に変更する(ST20)。
【0051】
このように、この実施の形態によれば、外気温度Taoに応じて予め目標吐出温度Tdpに収束する第1絞り装置開度P1が、第1絞り装置最低開度P1minよりも小さくなることを防止している。計測した吐出温度Tdに基づいて第1絞り装置4aの開度P1の変更を決定しているのであるが、例えば過渡的な温度センシングの遅れなどが生じると、第1絞り装置4aを必要以上に絞り込むように第1絞り装置4aの開度P1が変更される可能性がある。最低開度P1minを設けることで、第1絞り装置4aを必要以上に絞り込むのを防止でき、過渡的な吸入圧力低下、冷媒循環量の減少、蒸発温度の低下等が起こるのを防止することができる。従って、十分な油移動速度を確保し、圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性油が再び圧縮機吸入部に返油されず長時間圧縮機内の油量が減少することを防止でき、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗を防止して信頼性を向上できる。
【0052】
なお、この実施の形態における冷凍サイクル装置は、図2と図6に示した制御処理のどちらか一方を備えてもよいし、両方の制御処理を備えてもよい。
また、外気温度センサー51で外気温度を検知し、外気温度に基づいて制御を行っている。この代わりに、蒸発器3が格納されている容器内の温度や、蒸発器3の途中の冷媒配管の温度を検知する温度センサーを設け、蒸発温度を検知して蒸発温度に基づいて制御を行ってもよい。蒸発温度が低い場合に冷媒流量が多くなるように制御するのは、外気温度を用いる場合と同様である。
また、図6に示す制御では吐出温度が目標温度になるように第1絞り装置4aの開度を制御しているが、吐出温度の代わりに、圧縮機吐出スーパーヒートによって冷媒状態を目標状態に近づくように制御してもよい。この圧縮機吐出スーパーヒートは吐出温度センサー53で検知した圧縮機1の吐出温度と、凝縮温度センサー54で検知した凝縮器5の凝縮温度から演算できる。
【0053】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置として、例えば空気調和装置の冷凍サイクルを示す構成図である。なお、図7の冷凍サイクルは暖房運転時の状態を示しており、図8はこの実施の形態に係る第1絞り装置4aの制御フローチャートである。なお、図7中、図1に示す各部と同一符号は、同一または相当部分であり、ここではその説明を省略する。
【0054】
図7において、制御手段である制御装置13の構成は図4に示す制御装置11と同様であるが、制御装置13は第1絞り装置4aの開度を制御するための駆動回路を有している。制御装置13は、例えば外気温度センサー51、凝縮温度センサー54、圧縮機シェル温度センサー55で検知した温度を入力する温度入力部と記憶部と演算処理部を有するマイクロコンピュータ、及び第1絞り装置4aの駆動回路であり、外気温度センサー51で検知した外気温度に基づいて第1絞り装置4aの開度を制御する。また、凝縮器5の配管に設けた凝縮温度センサー54で凝縮温度を検知でき、圧縮機1の吐出部設けた吐出温度センサー53で圧縮機1の吐出温度を検知できる。検知した凝縮温度及び吐出温度は制御装置13の入力部に入力される。
【0055】
以下、この実施の形態に係る第1絞り手段である第1絞り装置4aの開度の制御の一例を、図8の制御フローチャートに基づいて説明する。冷凍サイクルを動作させる際、第1絞り手段である第1絞り装置4aは、第1絞り装置起動運転と第1絞り装置収束制御運転の2種類の制御運転を行なう。即ち、第1絞り装置起動運転は、暖房起動後予め設定された時間、例えば数分間の間、予め定められている起動開度に設定する運転である。次の収束制御運転における定常的な開度を定常開度と称し、起動運転における起動開度は定常開度よりも開度を大きく設定される。また、第1絞り装置収束制御運転は、例えば図6に示したように、第1絞り装置起動運転終了後に吐出温度センサー53で検知した圧縮機吐出温度が予め設定された目標値に近づくように、開度を定常開度から増減して調整する制御運転である。図8に示す制御フローチャートは、この第1絞り装置起動運転において、第1絞り装置4aに設定する起動開度に関するものである。
【0056】
第1絞り装置起動運転において、制御装置13は暖房運転起動指令を受けた(ST21)後、外気温度センサー51により外気温度Taoを検知する(ST22)。そして、外気温度Taoと予め設定された第1の基準値の値を比較し(ST23)、第1の基準値を下回った場合は、第1絞り装置4aの起動開度Pを第1設定開度P1とする(ST24)。一方、外気温度Taoが予め設定された第1の基準値以上の場合は、第1絞り装置4aの起動開度Pを第2設定開度P2とする(ST25)。ST24、ST25で第1絞り装置4aの開度が設定された後、第1絞り装置4aの起動運転を開始する(ST26)。第1絞り装置起動運転は、ST24、ST25で設定された第1絞り装置4aの起動開度Pで、所定時間、例えば数分程度の間、第1絞り装置4aの開度Pを一定とするか、または圧縮機周波数を上げるにつれて、第1絞り装置4aの開度Pを徐々に大きくする。どちらにしても、第1絞り装置収束制御運転における第1絞り装置4aの定常開度よりも大きく設定されている。ST26で第1絞り手段起動運転を開始した後、数分経ってから、例えば図6に示したように吐出温度に応じて開度を増減させる第1絞り装置収束制御運転となる。
【0057】
ST24で設定した第1絞り装置4aの第1設定開度P1は、ST25で設定した第1絞り装置4aの第2設定開度P2よりも大きく設定する。図9は外気温度に対して、ある予め設定した所定の返油時間、例えば10分程度で返油されるために必要な冷媒流量を示すグラフであり、横軸に外気温度(℃)、縦軸に冷媒流量(kg/h)を示している。外気温度が低くなるほど弱相互溶解性油の油動粘度が増加し、冷媒流量を大きくする必要がある。この実施の形態によれば、外気温度Taoが予め設定された第1の基準値を下回った場合、第1絞り装置4aの起動開度を大きく設定するため、外気温度が低い場合に大きな冷媒流量が得られる。例えば、ST23で比較する第1の基準値を0℃とし、外気温度が0℃よりも小さくなったときには、60kg/h程度の冷媒流量が得られるように開度を設定し、0℃以上の時には、43kg/h程度の冷媒流量が得られるように開度を設定すればよい。
【0058】
第1絞り装置4aの開度Pをこのように外気温度Taoに対して所定の時間で返油するように設定することにより、起動時に冷凍サイクルを循環する最低冷媒流量を確保できる。この最低冷媒流量とは圧縮機1から流出した冷凍機油が予め定めた所定の時間、例えば10分程度で圧縮機1に返油されるような冷媒流量の最低値である。冷凍サイクルを循環する冷媒流量をこのように確保することで、圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性油が再び圧縮機吸入部に返油されず長時間圧縮機内の油量が減少することを防止でき、圧縮機1内の冷凍機油量を必要最低油量以上に維持して、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性を向上できる。
【0059】
また、第1の基準値を0℃とした場合の処理について記載したが、これに限るものではない。冷媒流量の幅が均等になるように第1の基準値を設定するのが好ましい。例えば、図9のような関係がある場合には、冷媒流量が均等になる温度であるー4℃程度を設定すると、外気温度によっては能力がある程度過大になるのを低減でき、快適性の悪化及び消費電力の増加を低減できるので好ましい。
【0060】
図8に示す制御処理では、起動開度をP1とP2の2つの開度のどちらかに設定する構成としたが、これに限るものではなく、外気温度に対して2つ以上の開度のいずれかに設定するようにすればよい。外気温度に対する起動開度のデータを多くすることで、能力が過大になるのをさらに低減でき、快適性の悪化及び消費電力の増加を低減できるので好ましい。
【0061】
また、この発明の実施の形態2に係る他の構成例について説明する。図10はこの実施の形態に係る制御フローチャートである。冷凍サイクル装置の構成は図7と同様である。
以下、この実施の形態に係る制御の一例を、図10の制御フローチャートに基づいて説明する。ここで説明する制御処理は、主に起動後予め設定された時間まで行う起動運転に関するものである。特に空気調和装置で暖房運転指令がなされた場合、定常開度よりも開度を大きく設定する第1絞り装置起動運転を開始してから、第1絞り装置収束制御運転に移行するまでの移行時間ts、即ち絞り開始時期を制御している。
【0062】
第1絞り装置起動運転において、制御装置13は暖房運転起動指令を受けた(ST31)後、外気温度センサー51により外気温度Taoを検知する(ST32)。そして、外気温度Taoと予め設定された第2の基準値の値を比較し(ST33)、第2の基準値を下回った場合は、第1絞り装置収束制御運転への移行時間tsを第1設定時間αとする(ST34)。一方、外気温度Taoが予め設定された第2の基準値を上回った場合は、第1絞り装置収束制御運転への移行時間tsを第2設定時間βとする(ST35)。ST34、ST35で第1絞り装置収束制御運転への移行時間ts設定後、第1絞り装置4aの起動運転(起動ステップ)を行なう(ST36)。
【0063】
ST36での第1絞り装置4aの起動開度は、例えば収束制御運転における第1絞り装置4aの定常開度よりも大きな開度に設定する。ST37で数分程度に設定された移行時間tsの間、第1絞り装置起動運転(ST36)を行い、移行時間ts経過した後、第1絞り装置収束制御運転(収束ステップ)を開始する(ST38)。
【0064】
ST34で設定した第1設定時間αは、ST35で設定した第2設定時間βよりも長く設定する。図11は外気温度に対して、ある冷媒流量とした時の返油時間を示すグラフであり、横軸に外気温度(℃)、縦軸に冷媒流量(kg/h)を示している。外気温度が低くなるほど弱相互溶解性油の油動粘度が増加し、返油時間は長くなる。この実施の形態によれば、外気温度Taoが予め設定された第2の基準値を下回った場合、第1絞り装置4aの起動運転から収束制御運転への移行時間tsを長く設定して収束制御運転を遅延させる。このため、暖房起動時に圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性油が圧縮機1まで十分返油された状態で、第1絞り装置4aの収束制御運転に移行することが可能となる。例えば、ST33で比較する第2の基準値を0℃とし、外気温度が0℃よりも小さくなったときには、650sec程度の移行時間tsを設定し、0℃以上の時には、450sec程度の移行時間tsを設定すればよい。
【0065】
このように絞り装置4aの開度を大きくする起動運転を外気温度Taoに対応した時間だけ行なうように起動運転の運転時間を制御することで、外気温度が低いときに外気温度が高いときよりも収束制御運転を遅延させている(収束時間制御ステップ)。このため、外気温度が低くて冷凍機油の動粘度が大きい時でも、絞り装置収束制御運転開始時には冷凍機油の大部分が返油され、圧縮機1の運転に支障をきたさない油量、即ち圧縮機1の必要最低油量以上の冷凍機油が圧縮機1内に滞留する。この状態で絞り装置4aの収束制御を開始すると、しばらくすると圧縮機吐出スーパーヒートがつき、冷媒は圧縮機1からガス冷媒となって吐出され、圧縮機1内の液冷媒量はほとんどない。また、移行時間tsを十分長く取ると、第1絞り装置4aの収束制御運転への移行時点では、圧縮機シェル温度が上昇しており、圧縮機シェル温度が上昇した状態では、シェル内で液冷媒のほとんどが蒸発して吐出されるので圧縮機1内の液冷媒量はほとんどない。従って、運転起動時のように圧縮機1内の冷凍機油が液冷媒の上部に押し上げられて冷凍サイクルへ流出することはなく、十分な圧縮機油量を確保することができる。このため、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性を向上できる。
【0066】
ここで、圧縮機吐出スーパーヒートがつく状態とは、圧縮機1より吐出される冷媒が過熱ガスとなる状態であり、吐出温度センサー53により検知される吐出温度と、凝縮器5に設置された凝縮温度センサー54により検知される凝縮温度との差で演算される圧縮機吐出スーパーヒートが正の値となった状態である。前述のように圧縮機吐出スーパーヒートがつくと、冷凍機油は圧縮機1から冷凍サイクルにほとんど流出することはなくなる。また、圧縮機1内に液冷媒が滞留することがないので、圧縮機1内に圧縮機1の必要最低量の冷凍機油を滞留させてから圧縮機吐出スーパーヒートがつくように制御する。
【0067】
また、第2の基準値を0℃とした場合の処理について記載したが、これに限るものではない。返油時間の幅が均等になるように第2の基準値を設定するのが好ましい。例えば、図11のような関係がある場合には、返油時間が均等になる温度であるー5℃程度を設定すると、外気温度によって能力がある程度過大になるのを低減でき、快適性の悪化及び消費電力の増加を低減できるので好ましい。
【0068】
また、図10の処理工程では、移行時間をαとβの2つの時間のどちらかに設定する構成としたが、これに限るものではなく、外気温度に応じて2つ以上の移行時間のいずれかに設定するようにすればよい。
また、図10のST36における第1絞り装置4aの開度は所定開度に設定してもよいし、図8で示したように、外気温度に応じて異なる開度になるように設定してもよい。
【0069】
また、この発明の実施の形態2に係るさらに他の構成例について説明する。図12はこの実施の形態に係る第1絞り装置4aの制御フローチャートである。冷凍サイクル装置の構成は図7と同様である。
ここで説明する制御処理は、主に第1絞り装置起動運転終了後、吐出温度などを予め設定された目標値に収束するように、開度を定常開度から増減して調整する第1絞り装置収束制御運転に関するものである。特に、空気調和装置で暖房運転を行う際の第1絞り装置収束制御運転(収束ステップ)において、第1絞り装置開度変更量ΔPを制御している。
【0070】
第1絞り手段収束制御運転において、制御装置13は第1絞り収束制御運転を開始する(ST41)際、外気温度センサー51により外気温度Taoを検知する(ST42)。そして、外気温度Taoが予め設定された第3の基準値の値を比較し(ST43)、第3の基準値を下回った場合は、第1絞り装置4aの最大開度変更量ΔPmaxを第1最大変更量P3とする(ST44)。一方、外気温度Taoが予め設定された第3の基準値以上の場合は、第1絞り装置4aの最大開度変更量ΔPmaxを第2最大変更量P4とする(ST45)。ST44、ST45で第1絞り装置4aの最大開度変更量ΔPmaxが外気温度に対応した最大開度変更量に設定される。
【0071】
この後、吐出温度センサー53により吐出温度Tdを検知し(ST46)、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdpの差ΔTdを計算する(ST47)。この吐出温度差ΔTdに対して、目標吐出温度Tdpに近づくように第1絞り装置開度変更量ΔPを計算する(ST48)。ここで計算した第1絞り装置開度変更量ΔPと、先に設定した第1絞り装置の最大開度変更量ΔPmaxとを比較し(ST49)、開度変更量ΔPが最大開度変更量ΔPmaxよりも大きい場合は、第1絞り装置開度変更量ΔPを最大開度変更量ΔPmaxとする(ST50)。ST51では、設定された開度ΔPに従って第1絞り装置4aの開度を変更する。この後、ST46〜ST51を繰り返すことで、第1絞り手段4aは目標吐出温度が得られる開度に収束する。
【0072】
図12に示す制御処理により、外気温度Taoが予め設定された温度である第3の基準値を下回った場合、最大開度変更量ΔPを小さく設定する。即ち、ST44、ST45で第1絞り装置4aの最大開度変更量ΔPmaxを設定する際、第1絞り装置4aの第1最大変更量P3は第2最大変更量P4よりも小さく設定する。即ち第1絞り装置4aの開度増減幅を制御することで収束時間を制御している(収束時間制御ステップ)。このため、外気温度が低い時には収束制御運転を開始してから吐出温度となるまでの時間を長く取ることになる。従って、圧縮機吐出スーパーヒートがつく時点または圧縮機シェル温度が上昇する時点では、起動時に圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性油が圧縮機1まで十分返油された状態となる。図10に示した移行時間を長く設定した場合と同様、圧縮機吐出スーパーヒートがついてまたは圧縮機シェル温度が上昇し、圧縮機1内の液冷媒がほとんど蒸発しても、十分な圧縮機油量を確保することができる。このため、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性を向上できる。
【0073】
例えば、ST43で比較する第3の基準値を0℃とし、P4を450sec程度で吐出温度になるような最大開度変更量に設定しておき、外気温度が0℃よりも小さくなったときには、P3をP4の0.7倍程度に設定すると、P3の最大開度変更量で運転した時には650sec程度で吐出温度になる。
また、第3の基準値を0℃とした場合の処理について記載したが、これに限るものではない。返油時間の幅が均等になるように第3の基準値を設定するのが好ましい。例えば、図11のような関係がある場合には、返油時間が均等になる温度であるー5℃程度を設定すると、外気温度によって能力がある程度過大になるのを低減でき、快適性の悪化及び消費電力の増加を低減できるので好ましい。
【0074】
図12の処理工程では、第1絞り装置4aの最大開度変更量ΔPをP3とP4のどちらかに設定する構成としたが、これに限るものではなく、外気温度に応じて2つ以上の最大開度変更量ΔPのいずれかに設定するようにすればよい。
【0075】
また、この発明の実施の形態2に係るさらに他の構成例について説明する。図13はこの実施の形態に係る制御フローチャートである。冷凍サイクル装置の構成は図7と同様である。
以下、この実施の形態に係る制御の一例を、図13の制御フローチャートに基づいて説明する。ここで説明する制御処理は、図10に示した処理と同様、主に起動後予め設定された時間まで行う起動運転に関するものである。特に空気調和装置で暖房運転指令がなされた場合、暖房運転起動後に、起動開度に設定して第1絞り装置起動運転を行ってから、第1絞り装置収束制御運転に移行するまでの移行時間ts、即ち絞り開始時期を制御している。
【0076】
第1絞り装置起動制御において、制御装置13は暖房運転起動指令を受けた(ST61)後、圧縮機シェル温度センサー55により圧縮機シェル温度Tshellを検知する(ST62)。そして、圧縮機シェル温度Tshellと予め設定された第4の基準値の値を比較し(ST63)、第4の基準値を下回った場合は、第1絞り装置収束制御運転への移行時間tsを第3設定時間γとする(ST64)。一方、圧縮機シェル温度Tshellが予め設定された第4の基準値以上の場合は、第1絞り装置収束制御運転への移行時間tsを第4設定時間φとする(ST65)。ST64、ST65で第1絞り装置収束制御運転への移行時間tsが圧縮機シェル温度に対応して設定された後、第1絞り装置4aの起動制御(起動ステップ)を行なう(ST66)。
【0077】
ST66での第1絞り装置4aの起動開度は、例えば収束制御運転における第1絞り装置4aの定常開度よりも大きな所定の値を設定する。ST67で設定された移行時間tsの間、第1絞り装置起動運転(ST66)を行い、移行時間ts経過した後、第1絞り装置収束制御運転(収束ステップ)を開始する(ST68)。
【0078】
ここで、ST64で設定した第3設定時間γは、ST65で設定した第4設定時間φよりも長く設定する。即ち圧縮機シェル温度Tshellが予め設定された第4の基準値を下回った場合、第1絞り装置4aの起動運転から収束制御運転への移行時間tsを長く設定する。逆に圧縮機シェル温度Tshellが予め設定された第4の基準値以上の場合、第1絞り装置4aの収束制御運転への移行時間を短くする。このため、例えば、圧縮機シェル温度Tshellが低い初期起動の場合は第1絞り装置収束制御運転への移行時間を長くし、暖房起動時に圧縮機1より冷媒回路に流出した弱溶解性油が圧縮機まで十分返油された状態で、圧縮機シェル温度を上昇させることになる。例えば、ST63で比較する第4の基準値を30℃程度とし、圧縮機シェル温度が30℃よりも小さいときには、650sec程度の移行時間tsを設定し、30℃以上の時には、300sec程度の移行時間tsを設定すればよい。
【0079】
このように絞り装置4aの開度を大きくする起動運転を圧縮機シェル温度Tshellに応じた時間行なって収束時間を制御する(収束時間制御ステップ)ことで、第1絞り装置4aの収束制御運転を開始した時点では、圧縮機1より冷媒回路に流出した弱溶解性油が圧縮機1まで十分返油された状態で圧縮機吐出スーパーヒートがつき、圧縮機シェル温度が上昇する。この状態では、圧縮機1内で液冷媒のほとんどが蒸発して吐出されるので圧縮機1内の液冷媒量はほとんどなく、運転起動時のように圧縮機1内の冷凍機油が液冷媒の上部に押し上げられて冷凍サイクルへ流出するのを低減され、十分な圧縮機油量を確保することができる。従って、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性を向上できる。
【0080】
このように、図13に示す制御処理では、圧縮機シェル温度が低い場合に、圧縮機1内に十分量の冷凍機油を確保した後に、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗など信頼性上の問題を防止することができる。一方、サーモオンオフ運転の場合のように、圧縮機シェル温度が高く、起動時に液冷媒が吸入されても圧縮機シェル内に液冷媒が溜まり込むことなく、大量の油吐出が生じない場合には、第1絞り装置4aの収束制御への移行時間を短くすることにより、早めに吐出温度を目標温度に収束させることが可能となり、立上り性能を向上させることができる。
【0081】
また、第4の基準値を30℃とした場合の処理について記載したが、これに限るものではない。
また、図13の処理工程では、移行時間をγとφの2つの時間のどちらかに設定する構成としたが、これに限るものではなく、圧縮機シェル温度に応じて2つ以上の移行時間のいずれかに設定するようにすればよい。また、図13におけるST66における第1絞り装置4aの起動開度は所定開度に設定してもよいし、図8で示したように、蒸発器3の周辺温度に応じて異なる開度に設定してもよい。
【0082】
ここで、図8のST22、ST23、図10のST32、ST33、図12のST42、ST43において、外気温度を検知して外気温度に対して起動開度、移行時間、開度変更量を設定したが、外気温度に限るものではない。蒸発器周辺温度センサーによって蒸発器周辺の空気の温度を検知して、この温度に対して各値を設定すればよい。例えば空気調和装置の冷房運転や冷凍機の場合には、冷房空間や冷却容器内の空気の温度となる。またこれらの温度の代わりに蒸発温度を用いてもよい。蒸発温度は、蒸発器の冷媒配管の温度を温度センサーで検知できる。蒸発温度が低い場合に冷媒流量が多くなるように制御したり、移行時間を長くしたり最大開度変更量を小さくして収束制御運転を遅延させるのは、外気温度を用いる場合と同様である。
【0083】
実施の形態3.
図14はこの発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置として、例えば空気調和装置の冷凍サイクルを示す構成図である。なお、図14の冷凍サイクルは暖房運転時の状態を示しており、図15にこの実施の形態に係る第1絞り装置4aおよび第2絞り装置4bの制御フローチャートを示す。なお、図14中、図1に示す各部と同一符号は、同一または相当部分であり、ここではその説明を省略する。図14において、制御手段である制御装置14は第1、第2絞り装置4a、4bの開度を制御するための駆動回路を有する。
【0084】
この実施の形態において、凝縮器5を室内、蒸発器3を室外に設置し、室内を暖房する暖房運転について説明する。上流側絞り手段である第2絞り装置4bは凝縮器5と冷媒貯溜手段であるレシーバ7の間の冷媒配管に配置され、下流側絞り手段である第1絞り装置4aはレシーバ7と蒸発器3の間の冷媒配管に配置される。制御装置11は第1絞り装置4aの開度を制御すると共に第2絞り装置4bの開度を制御する。他の各機器の動作は実施の形態1と同様である。
【0085】
第1絞り装置4aは、第1絞り装置起動運転と第1絞り装置収束制御運転の2種類の制御運転を有する。即ち、第1絞り装置起動運転は、暖房起動後予め設定された時間、数分間の間、定常開度よりも開度の大きい起動開度に設定する制御運転である。この定常開度とは、次の収束制御運転における定常的な開度である。また、第1絞り装置収束制御運転は、例えば図6に示したような第1絞り装置起動運転終了後、圧縮機吐出側の冷媒状態、即ち圧縮機吐出スーパーヒートを予め設定された目標値に収束するように、開度を定常開度から増減して調整する制御運転である。この時の圧縮機吐出スーパーヒートは、例えば温度センサー53、54で検知した吐出温度と凝縮温度から演算できる。
第1絞り装置4aと同様、第2絞り装置4bは、第2絞り装置起動運転と第2絞り装置収束制御運転の2種類の制御運転を有する。即ち、第2絞り装置起動運転は、暖房起動後予め設定された時間、数分間の間、定常開度よりも開度の大きい起動開度に設定する制御運転である。この定常開度とは、次の収束制御運転における定常的な開度である。また、第2絞り装置収束制御運転は、第2絞り装置起動運転終了後、凝縮器5の出口側冷媒状態、即ち凝縮器サブクールを予め設定された目標値に収束するように、開度を定常開度から増減して調整する制御運転である。この時の凝縮器サブクールは、例えば温度センサー54で検知した凝縮温度から演算できる。
【0086】
ここで、この実施の形態における第1絞り装置4aと第2絞り装置4bの開度制御の一例を図15の制御フローチャートを用いて説明する。第1絞り装置4aに関しては実施の形態2で述べたのと同様であり、ここでは第2絞り装置4bについて主に説明する。制御装置14は暖房運転起動指令を受けた(ST71)後、第2絞り装置4bの開度P2を起動開度P2sに設定し(ST72)、例えば数分の間(ST73)、第2絞り装置起動運転(起動ステップ)を行なう。ここで開度P2sは第2絞り装置収束制御運転における定常開度よりも開度を大きく設定する。起動開度P2sで一定時間保留した(ST73)後、第2絞り装置収束制御運転(収束ステップ)に移行するため、第2絞り装置4bの開度P2を定常開度P2teiに絞る。ここで、定常開度P2teiは起動開度P2sよりも小さい開度である。
【0087】
ST75で、制御装置14は収束移行運転(収束移行ステップ)を行う。これは、その時点の圧縮機運転周波数Hzに応じて、第1絞り装置4aの開度変更量ΔP1Hzを算出し、第1絞り装置4aの開度をP1からP1+ΔP1Hzにする。即ち、第2絞り装置4bを起動開度P2sから定常開度P2teiに絞ることに同期して、第2絞り装置4bを絞ったことによる冷媒流量の減少を緩和するように第1絞り装置4aの開度を増加させる。例えば第1絞り装置4aを圧縮機運転周波数に応じた開度変更量分ΔP1Hz大きくする。そして、ST74、ST75で、第1、第2絞り装置4a、4bの定常開度が設定された後、第1、第2絞り装置を共に収束制御運転する(ST76)。
【0088】
このように制御することにより、第2絞り装置4bが起動運転から収束制御運転に移行する際に過渡的に圧縮機1の吸入圧力が低下するのを緩和でき、冷媒循環量の低下による相互弱溶解性油の返油が悪化することを防ぐことができる。従って、十分な圧縮機油量を確保して圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性を向上できる。
【0089】
例えば、第2絞り装置4bの起動開度を定常開度の1.5倍程度とした場合、起動運転から収束制御運転に移行する際、第2絞り装置4bの開度は2/3に絞ることになるが、これに同期して、第1絞り装置4aの開度を増加させる。この増加量は圧縮機周波数に応じて設定されているが、例えば第2絞り装置4bで絞った開度の半分程度多く開くようにする。第2絞り装置4bを2/3程度に絞ると、過渡的に圧縮機1の吸入圧力が急激に低下するが、第1絞り装置4aの開度を大きくすることで、冷媒流量の急激な減少を緩和して圧縮機1の吸入圧力が急激に低下するのを防止できる。
【0090】
実施の形態4.
図16はこの発明の実施の形態4に係る冷凍サイクル装置の第1絞り装置4aの制御フローチャートを示す。ここで、冷凍サイクル装置の構成は、実施の形態1〜実施の形態3のいずれかと同様であり、ここではその説明を省略する。この実施の形態は、冷凍サイクル装置として、例えば空気調和装置の暖房暖房停止時の第1絞り装置4aの開度の制御に関するものであり、例えば暖房運転停止時の制御について、図16に基づいて説明する。
【0091】
暖房運転停止指令が指示される(ST81)と、圧縮機1及び熱交換器3、5のファンを停止する(ST82)。そして、制御装置11は停止初期制御を行ない、第1絞り装置4aの開度を停止初期開度P1tei1に設定する(ST83)。この停止初期開度P1tei1は全閉または非常に小さい開度である。この開度を所定時間、例えば数分程度保持し(ST84)、所定時間経過後、停止定常制御に移行して第1絞り装置4aの開度を停止定常開度P1tei2になるように大きくする(ST85)。
【0092】
通常は暖房運転停止指令が指示されると、高圧側と低圧側の圧力差が均一になるように、第1絞り装置4aは全開、またはある程度の開度に保っていた。ところが圧縮機1を停止した時点では、冷凍サイクルには圧力差がついており、高圧側から低圧側に気液ニ相冷媒が急激に流れ込む。低圧側の蒸発器3に気液ニ相冷媒が滞留して停止した状態で、冷凍サイクルを再起動すると、圧縮機1に蒸発器3に滞留していた気液ニ相冷媒が急激に流入することになり、圧縮機1内からは多量の冷凍機油が冷媒回路に吐出されることになる。
【0093】
そこで、この実施の形態に示すように第1絞り装置4aの開度を制御して、暖房運転停止時にまず第1絞り装置4aの開度を全閉または非常に小さい開度である停止初期開度P1tei1として停止初期運転(停止初期ステップ)を行い、高圧側の液冷媒が差圧によって急激に蒸発器3に流入することを防止する。さらに所定時間後に、開度を開いて停止定常開度P1tei2に設定して停止定常運転を行うことで、高圧側と低圧側は均圧な状態で停止する。停止初期制御運転を行った後、所定時間保留する間に差圧はある程度小さくなるので、第1絞り装置4aの開度を停止定常開度P1tei2になるように大きくしても、高圧側から低圧側に流入する液冷媒の量は、圧縮機1停止と同時に第1絞り装置4aの開度を停止定常開度P1tei2に設定するよりも少ない。これにより低圧側である蒸発器3に滞留する液冷媒の量を低減し、運転再起動時に蒸発器3から圧縮機1の吸入側への液バックを低減できる。このため、運転起動時に圧縮機1から液冷媒と共に流出する冷凍機油の量を低減できるので、圧縮機1内に十分な冷凍機油量を確保でき、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付きや異常磨耗などを防止して信頼性を向上できる。
【0094】
ST84における所定時間は、上記では数分程度としたが、これに限るものではない。液冷媒が差圧によって蒸発器3に急激に流入するのを防ぐように、高圧側と低圧側の差圧がある程度小さくなるまでの時間を設定すればよい。
通常、圧縮機1にはその運転条件として再起動禁止時間が設定されており、この再起動禁止時間の範囲で高圧側と低圧側が均圧されるように、かつ、ST84における所定時間をできるだけ長く設定すればよい。
なお、ここでは暖房運転停止時の制御について述べたが、蒸発器3を利用して空間の冷房や冷却を行ったりする場合の冷房運転停止時も同様である。
また、この実施の形態に、実施の形態1〜実施の形態3のいずれか1つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0095】
実施の形態5.
図17はこの発明の実施の形態5に係る制御フローチャートを示す。ここで、冷凍サイクル装置の基本的な構成は、図5と同様である。
この実施の形態による第1絞り装置4aの開度の制御について、図17に基づいて説明する。ここで説明する制御処理は、第1絞り装置4aの開度を起動開度に設定して所定時間運転する第1絞り装置起動運転終了後、吐出温度などを予め設定された目標値に収束するように、開度を定常開度から増減して調整する第1絞り装置収束制御運転に関するものである。暖房運転起動後、第1絞り装置収束制御運転の開始時には、まだ起動後の過渡的な運転であり、第1絞り装置4aの変化に対しても冷凍サイクルの変化に遅れが発生し、また、吐出温度センサー53のセンシングに遅れもある。この時に第1絞り装置4aを必要以上に絞り込んでしまうと、過渡的な吸入圧力低下、冷媒循環量の減少、蒸発温度の低下等が起こる。ここでは、空気調和装置で暖房運転を行う際の第1絞り装置収束制御運転において、第1絞り装置開度変更量ΔPを制御している。
【0096】
第1絞り手段収束制御運転において、制御装置12は第1絞り収束制御運転を開始する(ST91)際、吐出温度センサー53により吐出温度Tdを検知する(ST92)。そして、凝縮温度センサ−54により凝縮温度Tcを検知し(ST93)、圧縮機吐出スーパーヒートSHdを計算する(ST94)。圧縮機吐出スーパーヒートSHdは吐出温度Td−凝縮温度Tcで計算される(圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップ)。
第1絞り手段収束制御運転が開始された時点では、気液ニ相状態の冷媒が圧縮機1から吐出されるので、圧縮機吐出スーパーヒートSHdはゼロである。ST95で、初めて圧縮機吐出スーパーヒートSHd>0になるまで、ST97〜ST99で、運転中の吐出温度Tdが目標吐出温度Tdpに近づくように収束制御を行う(収束ステップ)。即ち、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdpとの温度差ΔTdを計算する(ST97)。そして、この温度差ΔTdをゼロにするように第1絞り装置4aの開度変更量ΔP1を計算し(ST98)、現在の第1絞り装置4aの開度を開度変更量ΔP1だけ変更した開度P1(=P1+ΔP1)に変更する(ST99)。
【0097】
ST97〜ST99で、運転中の吐出温度Tdが目標吐出温度Tdpに近づくように収束制御を行なう(収束ステップ)ことで、第1絞り装置4aの開度は徐々に絞られ、圧縮機1から吐出される気液ニ相冷媒は乾き度が徐々に高くなる。即ち、第1絞り装置収束制御運転を開始してしばらくの間は、圧縮機吐出スーパーヒートSHd=0である。そしてある時点で圧縮機吐出スーパーヒートSHd>0となって圧縮機1から吐出される冷媒は過熱ガスとなる。ST95の判断では、この過熱ガスが圧縮機1から吐出される時点を圧縮機吐出スーパーヒートSHdの値で検知する。そして、初めて圧縮機吐出スーパーヒートSHd>0となった時に、ST96で第1絞り装置4aの開度変更量ΔP1をω(ω>0)に設定(開度増加ステップ)して、現在の第1絞り装置4aの開度を開度変更量ΔP1だけ変更した開度P1(=P1+ΔP1)に変更する(ST99)。
【0098】
ST96におけるωは、正の値で、例えば全開の1/20程度の開度を設定しているが、これに限るものではない。ST95の判断において、初めて圧縮機吐出スーパーヒートSHd>0にならないときは、ΔP1には負の値が設定され、第1絞り装置4aの開度は絞るように制御されている。初めて圧縮機吐出スーパーヒートSHd>0になったときに、ΔP1に正の値を設定し、第1絞り装置4aの開度を一時的に増加させる。
【0099】
このように、この実施の形態によれば、第1絞り装置収束制御運転で初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知し、それまで減少していた第1絞り装置4aの開度を一時的に増加させる。計測した吐出温度Tdに基づいて第1絞り装置4aの開度P1の変更を決定しているのであるが、例えば過渡的な温度センシングの遅れなどが生じると、第1絞り装置4aを必要以上に絞り込むように第1絞り装置4aの開度P1が変更される可能性がある。特に圧縮機起動後に最初に圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知した段階では、すでに第1絞り装置4aが絞り過ぎの状態となる。この時に、第1絞り装置4aの開度を一時的に増加することで、第1絞り装置4aを必要以上に絞り込むのを防止でき、過渡的な吸入圧力低下、冷媒循環量の減少、蒸発温度の低下等が起こるのを防止することができる。従って、十分な油移動速度を確保し、圧縮機1より冷媒回路に流出した弱相互溶解性油が再び圧縮機吸入部に返油されず長時間圧縮機内の油量が減少することを防止でき、圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗を防止して信頼性を向上できる。
【0100】
ST96で運転起動後初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知し、それまで減少していた第1絞り装置4aの開度を一時的に増加させると、圧縮機吐出スーパーヒートがつく前の冷媒状態に戻り、その後、第1絞り装置4aを吐出温度に基づいて収束させることで、再び圧縮機吐出スーパーヒートがつくことを検知する。この時は、運転起動後初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたのではないので、そのままST97、ST98で開度変更幅を設定する。
即ち、一度は圧縮機吐出スーパーヒートがつくが、初回の場合には圧縮機1内に必要最低量の冷凍機油が滞留していない可能性が高いので、第1絞り手段4aの開度の変更量を制御し、圧縮機1内に必要最低量の冷凍機油が滞留してから圧縮機吐出スーパーヒートがつくように運転している。
【0101】
また、ST95の判断で、検知した圧縮機吐出スーパーヒートが正の値になった時に圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知したが、計測の誤差を考慮して検知した圧縮機吐出スーパーヒート>1〜3℃程度となった時に圧縮機吐出スーパーヒートがついたと判断してもよい。
また、図17の制御フローチャートでは第1絞り装置4aの開度を一時的に増加させるために、開度変更量ΔP1にω(ω>0)を設定したが、一時的に目標吐出温度Tdpを下げることで第1絞り装置4aの開度を一時的に増加させてもよい。
また、開度変更量ωを外気温度や蒸発温度に対応して設定してもよい。この場合、外気温度や蒸発温度が低い場合には、高い場合に比べて開度変更量ωを大きく設定すればよい。
【0102】
また、図17に示す収束制御では吐出温度が目標温度になるように第1絞り装置4aの開度を制御しているが、吐出温度の代わりに、圧縮機吐出スーパーヒートによって冷媒状態を目標状態に近づくように第1絞り装置4aの開度を制御してもよい。
また、吐出温度センサー53と凝縮温度センサー54で検知した吐出温度と凝縮温度とから圧縮機吐出スーパーヒートを検知しているが、他の検知手段で検知するようにしてもよい。
また、この実施の形態に、実施の形態1〜実施の形態4のいずれか1つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0103】
実施の形態1〜実施の形態5のいずれかにおいて、冷凍サイクルの冷媒として、HFC冷媒、例えばR32、R134a、R410A,R407C、R407E、R404Aなど、または自然冷媒、例えばR290、R600aなどのHC冷媒や、R744、二酸化炭素、水、空気、アンモニアなどを用いると、オゾン層破壊など地球環境に悪影響を与えず、地球環境を保全できる冷凍サイクル装置を提供できる。
【0104】
また、冷凍サイクル装置で使用する冷凍機油としては、上記の冷媒に弱相溶解性を示すものなら何でもよいが、安定性の点から動粘度8〜32cStのアルキルベンゼン系油を用いるのが好ましい。
冷媒に対して弱相溶解性の冷凍機油は、非常に安定性が高く、不純物の混入に対して劣化が少なく、このために既設配管を使えるなど、多大な利点がある。例えば、冷媒に対して弱相互溶解性のアルキルベンゼン油は、非常に安定性が高い油として知られており、水分などの異物が混入しても分解することなくスラッジの発生により冷媒回路が閉塞したりする危険性が小さい。このため、設置工事などの際、異物が混入してもシステムに故障を起こす危険性が少なく高い信頼性を確保することができる。
また、動粘度8〜32cStの弱溶解性油は通常の空気調和機の使用温度範囲において十分な流動性を有しており、圧縮機シェル内の油枯渇を防止し圧縮機摺動部の潤滑不良による焼付き、異常磨耗などを防止でき、信頼性の向上を図ることができる。
【0105】
冷凍サイクルに充填される冷媒の量が、冷凍機油の量に比べて、例えば3倍程度に多くなると、暖房起動時に圧縮機1に吸入される液冷媒量が多くなり、圧縮機1から流出する冷凍機油の量が多くなる。従って、実施の形態1〜実施の形態5のそれぞれを適用することで、さらにこの発明のそれぞれの効果が有効となる。冷凍サイクル装置に、冷凍機油の量に比べて例えば3倍程度以上に多くなる冷媒の量を予め充填しておくと、設置場所が広い範囲でも対応でき、さらに据え付け時にその場所に応じた作業工程を少なくできる。また、液溜め手段であるレシーバは必ずしも設けなくてもよいが、レシーバを備えていると、冷房機能と暖房機能を有する空気調和装置などで運転によって生じる余剰冷媒を貯留できるので、効率良く運転できる。
【0106】
実施の形態1〜実施の形態5のそれぞれにおいては空気調和装置について説明したが、この発明のそれぞれは空気調和装置に限るものではなく、冷凍機や冷凍冷蔵庫などの冷凍サイクル装置にも適用でき、同様の効果を奏する。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の冷凍サイクル装置によれば、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して前記圧縮機の周波数または前記絞り手段の開度を制御することで、前記冷凍サイクルを循環する冷媒の最低冷媒流量を確保する制御手段と、この制御手段によって前記圧縮機内に前記圧縮機の運転に支障がない量で滞留する冷凍機油と、を備えたことにより、長時間圧縮機内の冷凍機油量が減少することを防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0108】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記制御手段は、前記温度センサーで検知した温度に対して前記圧縮機から流出した冷凍機油を予め設定した時間内で前記圧縮機に返油し得る圧縮機最低周波数を決定し、前記圧縮機を前記圧縮機最低周波数より大きな周波数で制御することにより、長時間圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0109】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記制御手段は、複数の蒸発器周辺温度のそれぞれに対し、前記圧縮機から流出した冷凍機油が予め設定した時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機周波数を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶したデータに基づき、前記温度センサーで検知した温度に対して前記時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機最低周波数を演算する演算部と、前記圧縮機を前記演算部で得られた圧縮機最低周波数より大きな周波数で運転する制御部と、を備えたことにより、長時間圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0110】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度と前記圧縮機の運転周波数に対して、前記冷媒状態検知手段で検知した前記圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に安定すると推定される前記絞り手段の開度を最低開度に設定し、前記絞り手段を前記最低開度より大きな開度で制御することにより、長時間圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0111】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記絞り手段の起動開度を前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して予め設定された時間内で返油し得る開度に設定して絞り手段起動運転を開始することにより、起動運転で長時間圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0112】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記圧縮機内に前記圧縮機の必要最低量の冷凍機油を滞留させてから前記圧縮機の出口で圧縮機吐出スーパーヒートがつくように、前記絞り手段の開度の変更量または前記絞り手段の絞り開始時期を制御する制御手段と、を備えたことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0113】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記蒸発器周辺温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記蒸発器周辺温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間より長くしたことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0114】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記シェル温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記シェル温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間より短くしたことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、効率良く運転できると共に信頼性を向上できる効果がある。
【0115】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記絞り手段収束制御運転における蒸発器周辺温度が低いときの最大開度変更量を前記蒸発器周辺温度が高いときの最大開度変更量より小さく設定したことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0116】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記圧縮機出口側の圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知手段と、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知手段で運転起動後に初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知した時に前記絞り手段の開度を増加させる制御手段と、を備えたことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを確実に防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0117】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、運転停止時に、前記絞り装置の開度を停止初期開度に設定する停止初期運転と、前記停止初期運転の後に前記絞り装置の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常運転と、を行なう制御手段を備えたことにより、起動時の蒸発器から圧縮機吸入側への液バック量を減少して圧縮機から流出する冷凍機油量を低減し、圧縮機内の冷凍機油量を確保でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0118】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、圧縮機、蒸発器、第1絞り手段、液溜め手段、第2絞り手段、凝縮器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、前記第2絞り手段の開度を第2絞り手段の起動開度に設定する第2絞り手段起動運転と、前記第2絞り手段起動運転の後に前記第2絞り手段を前記起動開度よりも小さい定常開度に設定すると共に、前記第1絞り手段の開度を所定開度大きくする収束移行運転と、前記収束移行運転の後に前記第2絞り手段の開度を増減して前記凝縮器の出口側の冷媒状態を制御する第2絞り手段収束制御運転と、を行なう制御手段を備えたことにより、第2絞り手段が起動運転から定常制御運転に移行する際に過渡的に圧縮機吸入圧力が低下するのを防止し、十分な圧縮機油量を確保でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0119】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、冷凍サイクル内に液溜め手段を備えると共に、冷凍機油量に対して3倍以上の冷媒量を封入したことにより、据え付け工程が容易にでき、かつ、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを防止でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0120】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、冷媒は、HFC冷媒または自然冷媒を用いることにより、オゾン層破壊など地球環境への悪影響を低減し、地球環境を保全できる効果がある。
【0121】
また、この発明の冷凍サイクル装置によれば、冷凍機油は、動粘度8〜32cStのアルキルベンゼン系油を用いることにより、劣化しにくく安定性が高く使用温度範囲で十分な流動性を有する冷凍機油を用い、信頼性を向上できる効果がある。
【0122】
また、この発明の冷凍サイクル装置の制御方法によれば、圧縮機の周波数を徐々に上げ、前記周波数に伴って絞り手段の開度を起動開度に設定する起動ステップと、前記圧縮機が負荷に応じた所定の回転数に達した後に前記絞り手段の開度を前記起動開度よりも小さく絞って増減させ、圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記起動ステップの運転時間または前記絞り手段収束ステップの前記絞り手段の開度増減幅を制御する収束時間制御ステップと、を備えたことにより、圧縮機内の冷凍機油量が減少することを防止し、信頼性を向上できる効果がある。
【0123】
また、この発明の冷凍サイクル装置の制御方法によれば、圧縮機の運転を停止する圧縮機停止ステップと、前記圧縮機停止ステップの後に絞り手段の開度を停止初期開度に設定する停止初期ステップと、前記停止初期ステップの後に前記絞り手段の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常ステップと、を備えたことにより、起動時の蒸発器から圧縮機吸入側への液バック量を減少しして圧縮機から流出する冷凍機油量を低減し、圧縮機内の冷凍機油量を確保でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0124】
また、この発明の冷凍サイクル装置の制御方法によれば、冷媒貯溜手段の上流側絞り手段を起動開度に設定して運転する上流側絞り手段起動ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップの後に前記上流側絞り手段の開度を増減させて凝縮器出口側の冷媒状態を目標状態に近づける上流側絞り手段収束ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップから前記上流側絞り手段収束ステップに移るときの前記上流側絞り手段の開度の減少による冷媒流量の減少を緩和するように前記冷媒貯溜手段の下流側絞り手段の開度を増加させる収束移行ステップと、を備えたことにより、を備えたことにより、第2絞り手段が起動運転から定常制御運転に移行する際に過渡的に圧縮機吸入圧力が低下するのを防止し、圧縮機内に十分な冷凍機油量を確保でき、信頼性を向上できる効果がある。
【0125】
また、この発明の冷凍サイクル装置の制御方法によれば、圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップと、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップで初めて前記圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知したときに絞り手段の開度を増加させる開度増加ステップと、前記絞り手段の開度を増減させて圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、を備えたことにより、圧縮機内に十分な冷凍機油量を確実に確保でき、信頼性を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置を示す構成図である。
【図2】実施の形態1に係る制御フローチャートである。
【図3】実施の形態1に係り、外気温度に対する冷媒流量と返油時間の関係を示すグラフである。
【図4】実施の形態1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の他の構成例を示す構成図である。
【図6】実施の形態1の他の構成例に係る制御フローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置を示す構成図である。
【図8】実施の形態2に係る制御フローチャートである。
【図9】実施の形態2に係り、外気温度に対して同じ返油時間を確保するのに必要な冷媒流量を示すグラフである。
【図10】実施の形態2の他の構成例に係る制御フローチャートである。
【図11】実施の形態2に係り、冷媒流量に対する外気温度と返油時間の関係を示すグラフである。
【図12】実施の形態2のさらに他の構成例に係る制御フローチャートである。
【図13】実施の形態2のさらに他の構成例に係る制御フローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態3に係る冷凍サイクル装置を示す構成図である。
【図15】実施の形態3に係る制御フローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態4に係る制御フローチャートである。
【図17】この発明の実施の形態5に係る制御フローチャートである。
【符号の説明】
1 圧縮機、2 四方弁、3 蒸発器、4 絞り装置、4a 第1絞り手段(下流側絞り手段)、4b 第2絞り手段(上流側絞り手段)、5 凝縮器、7 液溜め手段、9 吸入配管、11、12、13、14 制御手段、51 外気温度センサー、52 室内温度センサー、53 吐出温度センサー、54 凝縮温度センサー、55 圧縮機シェル温度センサー。

Claims (19)

  1. 圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して前記圧縮機の周波数または前記絞り手段の開度を制御することで、前記冷凍サイクルを循環する冷媒の最低冷媒流量を確保する制御手段と、この制御手段によって前記圧縮機内に前記圧縮機の運転に支障がない量で滞留する冷凍機油と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
  2. 前記制御手段は、前記温度センサーで検知した温度に対して前記圧縮機から流出した冷凍機油を予め設定した時間内で前記圧縮機に返油し得る圧縮機最低周波数を決定し、前記圧縮機を前記圧縮機最低周波数より大きな周波数で制御することを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  3. 前記制御手段は、複数の蒸発器周辺温度のそれぞれに対し、前記圧縮機から流出した冷凍機油が予め設定した時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機周波数を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶したデータに基づき、前記温度センサーで検知した温度に対して前記時間内で前記圧縮機へ返油し得る圧縮機最低周波数を演算する演算部と、前記圧縮機を前記演算部で得られた圧縮機最低周波数より大きな周波数で運転する制御部と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の冷凍サイクル装置。
  4. 前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度と前記圧縮機の運転周波数に対して、前記冷媒状態検知手段で検知した前記圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に安定すると推定される前記絞り手段の開度を最低開度に設定し、前記絞り手段を前記最低開度より大きな開度で制御することを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  5. 前記蒸発器の周辺温度を検知する温度センサーと、前記圧縮機吐出側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記絞り手段の起動開度を前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度に対して予め設定された時間内で返油し得る開度に設定して絞り手段起動運転を開始することを特徴とする請求項1記載の冷凍サイクル装置。
  6. 圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーで検知した蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記圧縮機内に前記圧縮機の必要最低量の冷凍機油を滞留させてから前記圧縮機の出口で圧縮機吐出スーパーヒートがつくように、前記絞り手段の開度の変更量または前記絞り手段の絞り開始時期を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
  7. 前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記蒸発器周辺温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記蒸発器周辺温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間より長くしたことを特徴とする請求項6記載の冷凍サイクル装置。
  8. 前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定して運転する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記シェル温度が高いときの前記絞り手段起動運転の時間を前記シェル温度が低いときの前記絞り手段起動運転の時間より短くしたことを特徴とする請求項6記載の冷凍サイクル装置。
  9. 前記圧縮機出口側の冷媒状態を検知する冷媒状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記絞り手段を圧縮機運転周波数に応じた起動開度に設定する絞り手段起動運転と、前記絞り手段起動運転の後に、前記冷媒状態検知手段で検知した圧縮機吐出側の冷媒状態が目標状態に近づくように前記絞り手段の開度を増減させる絞り手段収束制御運転と、を行なうと共に、前記絞り手段収束制御運転における蒸発器周辺温度が低いときの最大開度変更量を前記蒸発器周辺温度が高いときの最大開度変更量より小さく設定したことを特徴とする請求項6記載の冷凍サイクル装置。
  10. 圧縮機、凝縮器、絞り手段、蒸発器を接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルと、前記圧縮機出口側の圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知手段と、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知手段で運転起動後に初めて圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知した時に前記絞り手段の開度を増加させる制御手段と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置。
  11. 圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、運転停止時に、前記絞り装置の開度を停止初期開度に設定する停止初期運転と、前記停止初期運転の後に前記絞り装置の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常運転と、を行なう制御手段を備えたこと特徴とする冷凍サイクル装置。
  12. 圧縮機、蒸発器、第1絞り手段、液溜め手段、第2絞り手段、凝縮器を順次接続して冷媒を循環させる冷媒回路を有し、前記冷媒に対して弱相互溶解性の冷凍機油を用いた冷凍サイクルにおいて、前記第2絞り手段の開度を第2絞り手段の起動開度に設定する第2絞り手段起動運転と、前記第2絞り手段起動運転の後に前記第2絞り手段を前記起動開度よりも小さい定常開度に設定すると共に、前記第1絞り手段の開度を所定開度大きくする収束移行運転と、前記収束移行運転の後に前記第2絞り手段の開度を増減して前記凝縮器の出口側の冷媒状態を制御する第2絞り手段収束制御運転と、を行なう制御手段を備えたこと特徴とする冷凍サイクル装置。
  13. 冷凍サイクル内に液溜め手段を備えると共に、冷凍機油量に対して3倍以上の冷媒量を封入したことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
  14. 冷媒は、HFC冷媒または自然冷媒を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
  15. 冷凍機油は、動粘度8〜32cStのアルキルベンゼン系油を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
  16. 圧縮機の周波数を徐々に上げ、前記周波数に伴って絞り手段の開度を起動開度に設定する起動ステップと、前記圧縮機が負荷に応じた所定の回転数に達した後に前記絞り手段の開度を前記起動開度よりも小さく絞って増減させ、圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、蒸発器周辺温度または圧縮機シェル温度に対して、前記起動ステップの運転時間または前記絞り手段収束ステップの前記絞り手段の開度増減幅を制御する収束時間制御ステップと、を備えた冷凍サイクル装置の制御方法。
  17. 圧縮機の運転を停止する圧縮機停止ステップと、前記圧縮機停止ステップの後に絞り手段の開度を停止初期開度に設定する停止初期ステップと、前記停止初期ステップの後に前記絞り手段の開度を前記停止初期開度よりも大きく設定する停止定常ステップと、を備えた冷凍サイクル装置の制御方法。
  18. 冷媒貯溜手段の上流側絞り手段を起動開度に設定して運転する上流側絞り手段起動ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップの後に前記上流側絞り手段の開度を増減させて凝縮器出口側の冷媒状態を目標状態に近づける上流側絞り手段収束ステップと、前記上流側絞り手段起動ステップから前記上流側絞り手段収束ステップに移るときの前記上流側絞り手段の開度の減少による冷媒流量の減少を緩和するように前記冷媒貯溜手段の下流側絞り手段の開度を増加させる収束移行ステップと、を備えた冷凍サイクル装置の制御方法。
  19. 圧縮機吐出スーパーヒートを検知する圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップと、前記圧縮機吐出スーパーヒート検知ステップで初めて前記圧縮機吐出スーパーヒートがついたことを検知したときに絞り手段の開度を増加させる開度増加ステップと、前記絞り手段の開度を増減させて圧縮機出口側の冷媒状態を目標状態に近づける絞り手段収束ステップと、を備えた冷凍サイクル装置の制御方法。
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