JP2004155997A - 水性エマルジョン系接着剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】揮発性の高い可塑剤や有機溶剤を含まず、低い造膜温度を有し、かつ、流動性が良好で、十分な初期接着性を有する接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)成分を含有する水性エマルジョン系接着剤を用いる。
(A)所定の特徴を有するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を、上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体に対して、1〜10重量倍用いて重合することにより得られる、最低造膜温度が20℃以下の酢酸ビニル系重合体。
【選択図】 なし
【解決手段】下記(A)成分を含有する水性エマルジョン系接着剤を用いる。
(A)所定の特徴を有するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を、上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体に対して、1〜10重量倍用いて重合することにより得られる、最低造膜温度が20℃以下の酢酸ビニル系重合体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、紙加工用、木工用、及び繊維・不織布用等の接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンは、木工用、紙加工用、繊維加工用等の接着剤や塗料などに幅広く使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは最低造膜温度(以下、「MFT」と略する。)が高いため、多くの場合、揮発性を有する可塑剤、有機溶剤などの造膜助剤をエマルジョンに添加する必要がある。上記可塑剤としては、ジブチルフタレートやジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類などが使用されており、これらの可塑剤を乳化重合によるエマルジョンの製造時に添加することも知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
ところで、上記の可塑剤は、昨今の環境問題の高まりから、フタル酸エステル類が環境に対して好ましくないとの指摘もあり、安全性の高い可塑剤などへの代替が検討されている。さらに、一般的に可塑剤は、本質的にVOC成分(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)であり、特に、住宅関連に使用される接着剤では、VOC成分がシックハウス症候群の原因物質ではないかとの見方もある。
【0005】
また、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを製造する際に、グリコールエーテルを含有させることにより、造膜性を改良したことが知られている(特許文献2参照)。しかし、ここで用いられているグリコールエーテルは沸点が低く、中には、室温での蒸気圧を示すものもあり、あまり好ましくない。
【0006】
これに対し、所定のエチレン含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体をシードとして用いて酢酸ビニルを重合することにより、可塑剤を用いなくても、低い温度で造膜可能な酢酸ビニル樹脂系エマルジョンが知られている。(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−64104号公報(特許請求の範囲、第5頁〜第7頁)
【特許文献2】
特開平11−92531号公報(第3頁〜第5頁)
【特許文献3】
特開平11−92734号公報(第4頁〜第5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献3に記載の酢酸ビニル樹脂系エマルジョンは、粘度が高く、また、チクソトロピーインデックス(TI)も高いため、流動性が劣り、作業効率が悪化することがある。
【0009】
そこで、この発明は、揮発性の高い可塑剤や有機溶剤を含まず、低い造膜温度を有し、かつ、流動性が良好で、十分な初期接着性を有する接着剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、下記の(A)成分を含有する水性エマルジョン系接着剤を用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0011】
(A)下記の▲1▼、▲2▼及び▲3▼の全ての特徴を有するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を、上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体に対して、1〜10重量倍用いて重合することにより得られる、最低造膜温度が20℃以下の酢酸ビニル系重合体。
【0012】
▲1▼保護コロイド剤として平均ケン化度が90モル%以上の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有する。
▲2▼エチレン単位とカルボン酸ビニルエステル単位の構成比が、エチレン単位/カルボン酸ビニルエステル単位=1/9〜4/6(重量比)である。
▲3▼ガラス転移温度が−30〜20℃である。
【0013】
また、上記の(A)成分と、下記の(B)成分及び/又は(C)成分とを含有し、これらの混合比が、(A)成分100重量部に対して(B)成分及び/又は(C)成分の総量が3〜10重量部である水性エマルジョン系接着剤を用いることができる。
(B)炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸と、炭素数1〜4のアルコールとからなる脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル。
(C)下記の式(1)で示され、かつ、沸点が200〜400℃、及び水への溶解度(25℃)が20g/100g水以下であるグリコールエーテルエステル系化合物。
R1−O−(R2O)n−CO−R3 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
【0014】
所定のエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体をシードとして用いて重合させて得た(A)成分を用いるので、可塑剤等を加えなくても、低い造膜温度を有した接着剤を得ることができる。
【0015】
また、通常の環境において揮発性を有さない(B)成分及び/又は(C)成分を用いる場合は、VOC成分の有する問題点を生じさせることなく、初期接着性が良好で、作業適性の優れた接着剤を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この水性エマルジョン系接着剤にかかる発明は、下記の(A)成分を含有する樹脂組成物からなる接着剤である。
【0017】
上記(A)成分は、所定のシード高分子の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を重合することにより得られた酢酸ビニル系重合体である。
【0018】
上記シード高分子とは、重合場において重合の核となる高分子化合物をいい、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体を使用する。このエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル三元共重合体等があげられる。
【0019】
このシード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体は、エチレンと酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルとを常法により共重合することにより得られる。
【0020】
この共重合反応において、保護コロイド剤として、平均ケン化度が90〜98モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有させる。平均ケン化度が90モル%未満だと、得られるエマルジョンのチクソ性が強くなり、作業性が悪化する傾向にある。一方、平均ケン化度の上限は、98%である。98%を超えた場合は、エマルジョン粘度が高くなり、またその温度依存性が著しくなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0021】
また、この保護コロイド剤の添加量は、上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の全体量に対して、2〜10重量%がよく、3〜8重量%が好ましい。2重量%より少ないと、エマルジョンの機械的安定性が悪化することがある。一方、10重量%より多いと、生成エマルジョンの粘度が高くなり、作業性が劣るようになることがある。
【0022】
上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体中のエチレン単位とカルボン酸ビニルエステル単位との構成比は、エチレン単位/カルボン酸ビニルエステル単位で1/9〜4/6(重量比)であり、2/8〜3/7(重量比)が好ましい。エチレン単位が10重量%より少ないと、低温造膜性が悪化する可能性がある。一方、40重量%より多いと、耐熱性が劣る傾向がある。
【0023】
上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度は、−30〜20℃であり、−10〜10℃が好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が劣る傾向がある。一方、20℃より高いと、低温造膜性が悪化する可能性がある。
【0024】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体とは、酢酸ビニルを50重量%以上含むものをいい、酢酸ビニル単独であっても、酢酸ビニルと他のモノマーとの混合体であってもよい。上記他のモノマーとしては、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルや、炭素数3〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル等があげられる。この(メタ)アクリル酸アルキルの例としては、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等があげられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0025】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体として、酢酸ビニル及び上記の(メタ)アクリル酸アルキルを用いる場合、これらの混合比は、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキルで98/2〜60/40(重量比)がよく、95/5〜80/20が好ましい。酢酸ビニルが98重量%より多いと、低温造膜性が悪化することがある。一方、60重量%より少ないと、過度に柔軟になって、接着力が不足することがある。
【0026】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体の重合において、上記酢酸ビニルを主体とする単量体の使用量は、上記シード高分子の使用量に対して、1〜10重量倍使用し、3〜7重量倍使用するのが好ましい。1重量倍より少ないと、接着力が不足することがある。一方、10重量倍より多いと、エマルジョン粘度が上昇し、作業性が悪化することがある。
【0027】
上記シード高分子の存在下、上記酢酸ビニルを主体とする単量体を重合する条件は、特に限定されるものではなく、通常の乳化重合法を用いればよい。
【0028】
得られる上記(A)成分の最低造膜温度は、20℃以下であり、5℃以下が好ましい。20℃より高いと、常温での接着が難しくなる傾向になる。一方、この最低造膜温度の下限は、特に限定されるものではないが、測定限界から、−10℃を下限とすることができる。
【0029】
上記(A)成分のガラス転移温度は、−30〜20℃が好ましく、−20〜20℃がより好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が悪化する場合がある。一方、20℃より高いと、低温造膜性が不十分となりやすい。
【0030】
この発明にかかる水性エマルジョン系接着剤には、上記(A)成分に、必要に応じて、(B)成分及び/又は(C)成分を含有させてもよい。
上記(B)成分及び(C)成分は、いずれも、揮発性を有さないか、又は揮発性をほとんど有さない有機溶剤であり、これを用いることにより、ノニオン界面活性剤を使用することなく、得られる水性エマルジョン系接着剤のエマルジョン粒子径を安定化させることができ、初期接着性を向上させることができる。
【0031】
上記(B)成分としては、炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸と、炭素数1〜4のアルコールとからなる脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルがあげられる。上記炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸があげられる。また、炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールがあげられる。
【0032】
上記(C)成分としては、下記の式(1)で示されるグリコールエーテルエステル系化合物があげられる。
R1−O−(R2O)n−CO−R3 (1)
なお、上記式(1)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。
【0033】
上記のグリコールエーテルエステル系化合物の沸点は、200〜400℃がよい。沸点が200℃未満では、(C)成分が揮発性を有するようになるため、好ましくない。一方、400℃を超えると、柔軟性を付与する性能(可塑化能)が不十分となりやすい。
【0034】
また、上記のグリコールエーテルエステル系化合物の25℃における水への溶解度は、20g/100g水以下がよい。20g/100g水を超えると、初期接着性が悪化することがある。
【0035】
このような上記式(1)で示されるグリコールエーテルエステル系化合物の具体例としては、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート等があげられる。
【0036】
上記(A)成分と、(B)成分及び/又は(C)成分の混合比は、(A)成分100重量部に対して(B)成分又は(C)成分の総量として3〜10重量部がよく、4〜8重量部が好ましい。3重量部より少ないと、低温造膜性が劣ることがある。一方、10重量部より多いと、エマルジョンの安定性が不十分となることがある。
【0037】
上記の(B)成分や(C)成分は、それぞれ1つの化合物に限られるものではなく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。また、上記の(B)成分と(C)成分とは、それぞれ単独で使用してもよく、両成分を混合して使用してもよい。
【0038】
上記の(B)成分や(C)成分として、複数の化合物を使用する場合や、上記の(B)成分及び(C)成分を混合して使用する場合、使用する(B)成分や(C)成分の総量が上記の(B)成分又は(C)成分の使用量(3〜10重量部)の範囲内となるように使用するのが好ましい。
【0039】
この発明にかかるエマルジョン系接着剤は、上記(A)成分を重合する際に、(B)成分及び/又は(C)成分を添加して、乳化重合を行うことによって製造される。また、場合により、重合終了後、(B)成分及び/又は(C)成分を添加してもよい。
【0040】
この発明によるエマルジョン系接着剤は、紙製封筒の封緘、紙管の製造、段ボール箱の製作等、紙工用に使用することができる。また、木工用や繊維・不織布用に用いてもよい。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
まず実施例及び比較例で行った試験及び評価方法について説明する。
【0042】
[試験法及び評価法]
<ろ過性>
ナイロン網(100メッシュ)を用いて、エマルジョンをろ過した時の残渣を観察した。
○:残渣がないか、又はほとんどない
△:残渣がわずかにある
×:残渣が多く、ろ過が困難
【0043】
<最低造膜温度(MFT)>
日理商事(株)製:熱勾配試験機を用い、ASTM D2354−65Tにしたがって測定した。
【0044】
<ガラス転移温度(以下、「Tg」と略する。)>
測定対象の重合体の水性エマルジョンを80℃にて24時間乾燥して得られた皮膜を用いて、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、DSC220C)を用いて測定した。
【0045】
<粘度>
回転粘度計(TOKI SANGYO,VISCOMETER RB100)を用いて、温度25℃、10rpmにて測定した。
【0046】
<流動性>
エマルジョンを別の容器に移す際の流れやすさを目視で判定した。
○:容易に流れ,移しかえが速い
△:やや流れにくい
×:流動性に乏しく、移しかえが困難
【0047】
<初期接着強度>
(株)東京試験機製作所製:接着力試験機 ASM−1を用い、下記の測定条件下で測定した。
・ロールスピード:1.25m/sec
・引張速度 :300mm/min
・塗布時間 :0.1sec
・圧着時間 :0.1sec
・圧着温度 :60℃
・養生時間 :0.1、0.5、1.5、10sec
・試験体 :クラフト紙(坪量85g)
【0048】
[原材料]
○単量体
・酢酸ビニル…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「VAC」と略する。)
・ブチルアクリレート…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「BA」と略する。)
・アクリル酸…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「AA」と略する。)
【0049】
○触媒・添加物等
・硫酸第一鉄七水和物…和光純薬工業(株)製:試薬
・酢酸ナトリウム…和光純薬工業(株)製:試薬
・酢酸…和光純薬工業(株)製:試薬
・ロンガリット(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)…和光純薬工業(株)製:試薬
・過酸化水素水…和光純薬工業(株)製:試薬
・酒石酸…和光純薬工業(株)製:試薬
【0050】
○保護コロイド剤
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールAH−17、重合度1700、ケン化度98モル%(以下、「AH17」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールGH−17、重合度1700、ケン化度88モル%(以下、「GH17」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセファイマーC−500、重合度1700、ケン化度96モル%(以下、「C500」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…(株)クラレ製:クラレポバールPVA−105、重合度500、ケン化度98.5モル%(以下、「PVA105」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…(株)クラレ製:クラレポバールPVA−117、重合度1700、ケン化度98.5モル%(以下、「PVA117」と略する。)
・ノニオン系界面活性剤…花王(株)製:エマルゲン120(以下、「EM120」と略する。)
【0051】
○有機溶剤・可塑剤等
・コハク酸ジメチル/グルタル酸ジメチル/アジピン酸ジメチル混合物(重量比:23/56/21)…デュポン社製:DBE(以下、「DBE」と略する。)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート…和光純薬工業(株)製(以下、「BcAc」と略する。)
・フタル酸ジブチル…和光純薬工業(株)製(以下、「DBP」と略する。)
【0052】
[シード高分子の製造]
(製造例1)
耐圧容器に、水を82重量部、VACを100重量部、GH17を1.7重量部、C500を3.5重量部、硫酸第一鉄七水和物を0.002重量部、酢酸ナトリウムを0.06重量部及び酢酸0.1重量部を溶解した溶液を添加した。
次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を60℃まで昇温した後、エチレンで5MPaまで加圧し、過酸化水素水0.15重量部を含む水溶液とロンガリット0.4重量部を含む水溶液とを、耐圧容器にほぼ連続的に添加して重合を開始させ、さらに、容器内の液温を60℃に維持して5時間重合を続けた。
次いで、耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物(以下、「シード1」と称する。)を取り出した。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%で、不揮発分が55重量%、粘度が3200mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0053】
(製造例2)
使用する保護コロイド剤を、GH17を1.2重量部、C500を3.6重量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、生成物(以下、「シード2」と称する。)を得た。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%、不揮発分が55重量%、粘度が2000mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0054】
(製造例3)
使用する保護コロイド剤を、PVA105を3.5重量部、PVA117を1.5重量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、生成物(以下、「シード3」と称する。)を得た。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%、不揮発分が55重量%、粘度が3000mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0055】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応容器にシード1を55重量部(固形分30重量部)、水78重量部に、GH17を2重量部、及びAH17を5重量部溶解した水溶液を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温した。触媒として、過酸化水素水0.9重量部を含む水溶液と酒石酸0.15重量部とを、重合初期から重合中、及び熟成期にわたって添加した。
【0056】
また、VAC/BA=90/10の重量比で混合した混合液100重量部と、DBE5重量部とをそれぞれ滴下ロートにて、上記反応容器内に4時間かけて連続滴下して重合反応を行った。この間、温度は75℃に保ち、滴下終了後、80℃まで昇温し、さらに2時間熟成反応を行った。そして、反応容器を冷却して複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの不揮発分は56.1%、粘度は12400mPa・sであった。この複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。なお、表中の空欄は、添加量が「0」であることを示す。これは、以下同様である。
【0057】
(実施例2)
DBE5重量部をVAC/BA=90/10の重量比で混合した混合液100重量部に加えて混合し、これを滴下ロートに入れて、上記反応容器内に滴下した以外は、実施例1と同様にして複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
DBEの代わりにBcAcを用いた以外は、実施例2と同様にして、複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1〜4)
シード高分子として表1に記載のものを用い、表1に示す単量体、乳化剤及び溶剤を表1に示す量だけ添加した以外は、実施例2と同様にして、複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】
この発明にかかる水性エマルジョン系接着剤は、所定のエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体をシードとして用いて重合させて得た(A)成分を用いるので、可塑剤等を用いなくても、低い造膜温度を有した接着剤を得ることができる。
【0062】
また、通常の環境において揮発性を有さない(B)成分を用いる場合は、VOC成分の有する問題点を生じさせることなく、初期接着性が良好で、作業適性の優れた接着剤を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、紙加工用、木工用、及び繊維・不織布用等の接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンは、木工用、紙加工用、繊維加工用等の接着剤や塗料などに幅広く使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは最低造膜温度(以下、「MFT」と略する。)が高いため、多くの場合、揮発性を有する可塑剤、有機溶剤などの造膜助剤をエマルジョンに添加する必要がある。上記可塑剤としては、ジブチルフタレートやジオクチルフタレート等のフタル酸エステル類などが使用されており、これらの可塑剤を乳化重合によるエマルジョンの製造時に添加することも知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
ところで、上記の可塑剤は、昨今の環境問題の高まりから、フタル酸エステル類が環境に対して好ましくないとの指摘もあり、安全性の高い可塑剤などへの代替が検討されている。さらに、一般的に可塑剤は、本質的にVOC成分(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)であり、特に、住宅関連に使用される接着剤では、VOC成分がシックハウス症候群の原因物質ではないかとの見方もある。
【0005】
また、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを製造する際に、グリコールエーテルを含有させることにより、造膜性を改良したことが知られている(特許文献2参照)。しかし、ここで用いられているグリコールエーテルは沸点が低く、中には、室温での蒸気圧を示すものもあり、あまり好ましくない。
【0006】
これに対し、所定のエチレン含有量を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体をシードとして用いて酢酸ビニルを重合することにより、可塑剤を用いなくても、低い温度で造膜可能な酢酸ビニル樹脂系エマルジョンが知られている。(特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−64104号公報(特許請求の範囲、第5頁〜第7頁)
【特許文献2】
特開平11−92531号公報(第3頁〜第5頁)
【特許文献3】
特開平11−92734号公報(第4頁〜第5頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献3に記載の酢酸ビニル樹脂系エマルジョンは、粘度が高く、また、チクソトロピーインデックス(TI)も高いため、流動性が劣り、作業効率が悪化することがある。
【0009】
そこで、この発明は、揮発性の高い可塑剤や有機溶剤を含まず、低い造膜温度を有し、かつ、流動性が良好で、十分な初期接着性を有する接着剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、下記の(A)成分を含有する水性エマルジョン系接着剤を用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0011】
(A)下記の▲1▼、▲2▼及び▲3▼の全ての特徴を有するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を、上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体に対して、1〜10重量倍用いて重合することにより得られる、最低造膜温度が20℃以下の酢酸ビニル系重合体。
【0012】
▲1▼保護コロイド剤として平均ケン化度が90モル%以上の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有する。
▲2▼エチレン単位とカルボン酸ビニルエステル単位の構成比が、エチレン単位/カルボン酸ビニルエステル単位=1/9〜4/6(重量比)である。
▲3▼ガラス転移温度が−30〜20℃である。
【0013】
また、上記の(A)成分と、下記の(B)成分及び/又は(C)成分とを含有し、これらの混合比が、(A)成分100重量部に対して(B)成分及び/又は(C)成分の総量が3〜10重量部である水性エマルジョン系接着剤を用いることができる。
(B)炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸と、炭素数1〜4のアルコールとからなる脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル。
(C)下記の式(1)で示され、かつ、沸点が200〜400℃、及び水への溶解度(25℃)が20g/100g水以下であるグリコールエーテルエステル系化合物。
R1−O−(R2O)n−CO−R3 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
【0014】
所定のエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体をシードとして用いて重合させて得た(A)成分を用いるので、可塑剤等を加えなくても、低い造膜温度を有した接着剤を得ることができる。
【0015】
また、通常の環境において揮発性を有さない(B)成分及び/又は(C)成分を用いる場合は、VOC成分の有する問題点を生じさせることなく、初期接着性が良好で、作業適性の優れた接着剤を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この水性エマルジョン系接着剤にかかる発明は、下記の(A)成分を含有する樹脂組成物からなる接着剤である。
【0017】
上記(A)成分は、所定のシード高分子の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を重合することにより得られた酢酸ビニル系重合体である。
【0018】
上記シード高分子とは、重合場において重合の核となる高分子化合物をいい、エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体を使用する。このエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル三元共重合体等があげられる。
【0019】
このシード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体は、エチレンと酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルとを常法により共重合することにより得られる。
【0020】
この共重合反応において、保護コロイド剤として、平均ケン化度が90〜98モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有させる。平均ケン化度が90モル%未満だと、得られるエマルジョンのチクソ性が強くなり、作業性が悪化する傾向にある。一方、平均ケン化度の上限は、98%である。98%を超えた場合は、エマルジョン粘度が高くなり、またその温度依存性が著しくなり、作業性が悪化する傾向にある。
【0021】
また、この保護コロイド剤の添加量は、上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の全体量に対して、2〜10重量%がよく、3〜8重量%が好ましい。2重量%より少ないと、エマルジョンの機械的安定性が悪化することがある。一方、10重量%より多いと、生成エマルジョンの粘度が高くなり、作業性が劣るようになることがある。
【0022】
上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体中のエチレン単位とカルボン酸ビニルエステル単位との構成比は、エチレン単位/カルボン酸ビニルエステル単位で1/9〜4/6(重量比)であり、2/8〜3/7(重量比)が好ましい。エチレン単位が10重量%より少ないと、低温造膜性が悪化する可能性がある。一方、40重量%より多いと、耐熱性が劣る傾向がある。
【0023】
上記シード高分子を構成するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体のガラス転移温度は、−30〜20℃であり、−10〜10℃が好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が劣る傾向がある。一方、20℃より高いと、低温造膜性が悪化する可能性がある。
【0024】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体とは、酢酸ビニルを50重量%以上含むものをいい、酢酸ビニル単独であっても、酢酸ビニルと他のモノマーとの混合体であってもよい。上記他のモノマーとしては、バーサチック酸ビニル等のビニルエステルや、炭素数3〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル等があげられる。この(メタ)アクリル酸アルキルの例としては、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等があげられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0025】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体として、酢酸ビニル及び上記の(メタ)アクリル酸アルキルを用いる場合、これらの混合比は、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキルで98/2〜60/40(重量比)がよく、95/5〜80/20が好ましい。酢酸ビニルが98重量%より多いと、低温造膜性が悪化することがある。一方、60重量%より少ないと、過度に柔軟になって、接着力が不足することがある。
【0026】
上記酢酸ビニルを主体とする単量体の重合において、上記酢酸ビニルを主体とする単量体の使用量は、上記シード高分子の使用量に対して、1〜10重量倍使用し、3〜7重量倍使用するのが好ましい。1重量倍より少ないと、接着力が不足することがある。一方、10重量倍より多いと、エマルジョン粘度が上昇し、作業性が悪化することがある。
【0027】
上記シード高分子の存在下、上記酢酸ビニルを主体とする単量体を重合する条件は、特に限定されるものではなく、通常の乳化重合法を用いればよい。
【0028】
得られる上記(A)成分の最低造膜温度は、20℃以下であり、5℃以下が好ましい。20℃より高いと、常温での接着が難しくなる傾向になる。一方、この最低造膜温度の下限は、特に限定されるものではないが、測定限界から、−10℃を下限とすることができる。
【0029】
上記(A)成分のガラス転移温度は、−30〜20℃が好ましく、−20〜20℃がより好ましい。−30℃より低いと、耐熱性が悪化する場合がある。一方、20℃より高いと、低温造膜性が不十分となりやすい。
【0030】
この発明にかかる水性エマルジョン系接着剤には、上記(A)成分に、必要に応じて、(B)成分及び/又は(C)成分を含有させてもよい。
上記(B)成分及び(C)成分は、いずれも、揮発性を有さないか、又は揮発性をほとんど有さない有機溶剤であり、これを用いることにより、ノニオン界面活性剤を使用することなく、得られる水性エマルジョン系接着剤のエマルジョン粒子径を安定化させることができ、初期接着性を向上させることができる。
【0031】
上記(B)成分としては、炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸と、炭素数1〜4のアルコールとからなる脂肪族二塩基酸ジアルキルエステルがあげられる。上記炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸があげられる。また、炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールがあげられる。
【0032】
上記(C)成分としては、下記の式(1)で示されるグリコールエーテルエステル系化合物があげられる。
R1−O−(R2O)n−CO−R3 (1)
なお、上記式(1)中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。
【0033】
上記のグリコールエーテルエステル系化合物の沸点は、200〜400℃がよい。沸点が200℃未満では、(C)成分が揮発性を有するようになるため、好ましくない。一方、400℃を超えると、柔軟性を付与する性能(可塑化能)が不十分となりやすい。
【0034】
また、上記のグリコールエーテルエステル系化合物の25℃における水への溶解度は、20g/100g水以下がよい。20g/100g水を超えると、初期接着性が悪化することがある。
【0035】
このような上記式(1)で示されるグリコールエーテルエステル系化合物の具体例としては、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート等があげられる。
【0036】
上記(A)成分と、(B)成分及び/又は(C)成分の混合比は、(A)成分100重量部に対して(B)成分又は(C)成分の総量として3〜10重量部がよく、4〜8重量部が好ましい。3重量部より少ないと、低温造膜性が劣ることがある。一方、10重量部より多いと、エマルジョンの安定性が不十分となることがある。
【0037】
上記の(B)成分や(C)成分は、それぞれ1つの化合物に限られるものではなく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。また、上記の(B)成分と(C)成分とは、それぞれ単独で使用してもよく、両成分を混合して使用してもよい。
【0038】
上記の(B)成分や(C)成分として、複数の化合物を使用する場合や、上記の(B)成分及び(C)成分を混合して使用する場合、使用する(B)成分や(C)成分の総量が上記の(B)成分又は(C)成分の使用量(3〜10重量部)の範囲内となるように使用するのが好ましい。
【0039】
この発明にかかるエマルジョン系接着剤は、上記(A)成分を重合する際に、(B)成分及び/又は(C)成分を添加して、乳化重合を行うことによって製造される。また、場合により、重合終了後、(B)成分及び/又は(C)成分を添加してもよい。
【0040】
この発明によるエマルジョン系接着剤は、紙製封筒の封緘、紙管の製造、段ボール箱の製作等、紙工用に使用することができる。また、木工用や繊維・不織布用に用いてもよい。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
まず実施例及び比較例で行った試験及び評価方法について説明する。
【0042】
[試験法及び評価法]
<ろ過性>
ナイロン網(100メッシュ)を用いて、エマルジョンをろ過した時の残渣を観察した。
○:残渣がないか、又はほとんどない
△:残渣がわずかにある
×:残渣が多く、ろ過が困難
【0043】
<最低造膜温度(MFT)>
日理商事(株)製:熱勾配試験機を用い、ASTM D2354−65Tにしたがって測定した。
【0044】
<ガラス転移温度(以下、「Tg」と略する。)>
測定対象の重合体の水性エマルジョンを80℃にて24時間乾燥して得られた皮膜を用いて、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、DSC220C)を用いて測定した。
【0045】
<粘度>
回転粘度計(TOKI SANGYO,VISCOMETER RB100)を用いて、温度25℃、10rpmにて測定した。
【0046】
<流動性>
エマルジョンを別の容器に移す際の流れやすさを目視で判定した。
○:容易に流れ,移しかえが速い
△:やや流れにくい
×:流動性に乏しく、移しかえが困難
【0047】
<初期接着強度>
(株)東京試験機製作所製:接着力試験機 ASM−1を用い、下記の測定条件下で測定した。
・ロールスピード:1.25m/sec
・引張速度 :300mm/min
・塗布時間 :0.1sec
・圧着時間 :0.1sec
・圧着温度 :60℃
・養生時間 :0.1、0.5、1.5、10sec
・試験体 :クラフト紙(坪量85g)
【0048】
[原材料]
○単量体
・酢酸ビニル…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「VAC」と略する。)
・ブチルアクリレート…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「BA」と略する。)
・アクリル酸…和光純薬工業(株)製:試薬(以下、「AA」と略する。)
【0049】
○触媒・添加物等
・硫酸第一鉄七水和物…和光純薬工業(株)製:試薬
・酢酸ナトリウム…和光純薬工業(株)製:試薬
・酢酸…和光純薬工業(株)製:試薬
・ロンガリット(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)…和光純薬工業(株)製:試薬
・過酸化水素水…和光純薬工業(株)製:試薬
・酒石酸…和光純薬工業(株)製:試薬
【0050】
○保護コロイド剤
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールAH−17、重合度1700、ケン化度98モル%(以下、「AH17」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセノールGH−17、重合度1700、ケン化度88モル%(以下、「GH17」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…日本合成化学工業(株)製:ゴーセファイマーC−500、重合度1700、ケン化度96モル%(以下、「C500」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…(株)クラレ製:クラレポバールPVA−105、重合度500、ケン化度98.5モル%(以下、「PVA105」と略する。)
・部分ケン化ポリ酢酸ビニル…(株)クラレ製:クラレポバールPVA−117、重合度1700、ケン化度98.5モル%(以下、「PVA117」と略する。)
・ノニオン系界面活性剤…花王(株)製:エマルゲン120(以下、「EM120」と略する。)
【0051】
○有機溶剤・可塑剤等
・コハク酸ジメチル/グルタル酸ジメチル/アジピン酸ジメチル混合物(重量比:23/56/21)…デュポン社製:DBE(以下、「DBE」と略する。)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート…和光純薬工業(株)製(以下、「BcAc」と略する。)
・フタル酸ジブチル…和光純薬工業(株)製(以下、「DBP」と略する。)
【0052】
[シード高分子の製造]
(製造例1)
耐圧容器に、水を82重量部、VACを100重量部、GH17を1.7重量部、C500を3.5重量部、硫酸第一鉄七水和物を0.002重量部、酢酸ナトリウムを0.06重量部及び酢酸0.1重量部を溶解した溶液を添加した。
次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を60℃まで昇温した後、エチレンで5MPaまで加圧し、過酸化水素水0.15重量部を含む水溶液とロンガリット0.4重量部を含む水溶液とを、耐圧容器にほぼ連続的に添加して重合を開始させ、さらに、容器内の液温を60℃に維持して5時間重合を続けた。
次いで、耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物(以下、「シード1」と称する。)を取り出した。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%で、不揮発分が55重量%、粘度が3200mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0053】
(製造例2)
使用する保護コロイド剤を、GH17を1.2重量部、C500を3.6重量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、生成物(以下、「シード2」と称する。)を得た。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%、不揮発分が55重量%、粘度が2000mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0054】
(製造例3)
使用する保護コロイド剤を、PVA105を3.5重量部、PVA117を1.5重量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、生成物(以下、「シード3」と称する。)を得た。この生成物中の酢酸ビニル単量体の残留量は1重量%未満であった。また、その組成比は、酢酸ビニル82重量%、エチレン18重量%、不揮発分が55重量%、粘度が3000mPa・s、ガラス転移温度が0℃であった。
【0055】
(実施例1)
撹拌装置、還流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応容器にシード1を55重量部(固形分30重量部)、水78重量部に、GH17を2重量部、及びAH17を5重量部溶解した水溶液を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温した。触媒として、過酸化水素水0.9重量部を含む水溶液と酒石酸0.15重量部とを、重合初期から重合中、及び熟成期にわたって添加した。
【0056】
また、VAC/BA=90/10の重量比で混合した混合液100重量部と、DBE5重量部とをそれぞれ滴下ロートにて、上記反応容器内に4時間かけて連続滴下して重合反応を行った。この間、温度は75℃に保ち、滴下終了後、80℃まで昇温し、さらに2時間熟成反応を行った。そして、反応容器を冷却して複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの不揮発分は56.1%、粘度は12400mPa・sであった。この複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。なお、表中の空欄は、添加量が「0」であることを示す。これは、以下同様である。
【0057】
(実施例2)
DBE5重量部をVAC/BA=90/10の重量比で混合した混合液100重量部に加えて混合し、これを滴下ロートに入れて、上記反応容器内に滴下した以外は、実施例1と同様にして複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
DBEの代わりにBcAcを用いた以外は、実施例2と同様にして、複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1〜4)
シード高分子として表1に記載のものを用い、表1に示す単量体、乳化剤及び溶剤を表1に示す量だけ添加した以外は、実施例2と同様にして、複合エマルジョンを得た。得られた複合エマルジョンの初期接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】
この発明にかかる水性エマルジョン系接着剤は、所定のエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体をシードとして用いて重合させて得た(A)成分を用いるので、可塑剤等を用いなくても、低い造膜温度を有した接着剤を得ることができる。
【0062】
また、通常の環境において揮発性を有さない(B)成分を用いる場合は、VOC成分の有する問題点を生じさせることなく、初期接着性が良好で、作業適性の優れた接着剤を得ることができる。
Claims (8)
- 下記(A)成分を含有する水性エマルジョン系接着剤。
(A)下記の▲1▼、▲2▼及び▲3▼の全ての特徴を有するエチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体の存在下で、酢酸ビニルを主体とする単量体を、上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体に対して、1〜10重量倍用いて重合することにより得られる、最低造膜温度が20℃以下の酢酸ビニル系重合体。
▲1▼保護コロイド剤として平均ケン化度が90〜98モル%の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを含有する。
▲2▼エチレン単位とカルボン酸ビニルエステル単位の構成比が、エチレン単位/カルボン酸ビニルエステル単位=1/9〜4/6(重量比)である。
▲3▼ガラス転移温度が−30〜20℃である。 - 上記の(A)成分と、下記の(B)成分及び/又は(C)成分とを含有し、これらの混合比が、(A)成分100重量部に対して(B)成分及び/又は(C)成分の総量が3〜10重量部である請求項1に記載の水性エマルジョン系接着剤。
(B)炭素数1〜6のアルキレン基を有する脂肪族二塩基酸と、炭素数1〜4のアルコールとからなる脂肪族二塩基酸ジアルキルエステル。
(C)下記の式(1)で示され、かつ、沸点が200〜400℃、及び水への溶解度(25℃)が20g/100g水以下であるグリコールエーテルエステル系化合物。
R1−O−(R2O)n−CO−R3 (1)
(式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、R3は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。) - 上記エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1又は2に記載の水性エマルジョン系接着剤。
- 上記の酢酸ビニルを主体とする単量体が、酢酸ビニルと炭素数3〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルからなり、これらの混合比が、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキル=98/2〜60/40(重量比)である請求項1乃至3のいずれかに記載の水性エマルジョン系接着剤。
- 上記(メタ)アクリル酸アルキルが(メタ)アクリル酸ブチルである請求項4に記載の水性エマルジョン系接着剤。
- 上記(A)成分のガラス転移温度が−20〜20℃である請求項1乃至5のいずれかに記載の水性エマルジョン系接着剤。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の水性エマルジョン系接着剤からなる紙工用接着剤。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の水性エマルジョン系接着剤からなる木工用又は繊維・不織布用接着剤。
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