JP2004155835A - 水性塗料組成物及びアルコール飲料用缶 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アルコール飲料中のフレーバー成分が吸着し難い塗膜を形成し、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても耐性を有する水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と特定のエポキシ樹脂(A2)とをエステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びビスフェノールAもしくはビスフェノールFのレゾール型フェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と特定のエポキシ樹脂(A2)とをエステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びビスフェノールAもしくはビスフェノールFのレゾール型フェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性塗料組成物に関する。詳しくは、金属素材に直接又は下地塗料上に塗工される水性塗料組成物であって、殊に金属缶内面被覆に好適に用いられる水性塗料組成物である。さらに詳しくは、アルコール飲料を収容する金属缶の内面被覆に好適に用いられる水性塗料組成物である。
【0002】
【従来の技術】
従来から金属罐は、ブリキ、ティンフリースチール、アルミ等の金属素材が内容物に直接接触し腐食するのを防ぐために、通常薄い合成樹脂保護被膜を施されている。
【0003】
内面被覆用の水性塗料組成物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリル系樹脂とが部分的に結合している状態にあるいわゆる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とを水性媒体中に溶解ないし分散させた塗料組成物が知られている。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する水性塗料組成物は、例えば下記(1)〜(3)等に示す方法によって得ることができる。
(1)エステル化法
ビスフェノール型エポキシ樹脂を、カルボキシル基を含有するアクリル系樹脂にてエステル化し、塩基で中和して水性媒体中に分散等させる(特許文献1:特公昭59−37026号公報参照)。
(2)グラフト法
アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有重合性モノマーを必須成分とするアクリル系モノマー混合物を、フリーラジカル発生剤を用いてビスフェノール型エポキシ樹脂にグラフトさせ、上記同様の方法で水性媒体中に分散等させる(特許文献2:特公昭63−17869号公報参照)。
(3)直説法(変形エステル化法)
ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部にアクリル酸やメタクリル酸を反応せしめ、(メタ)アクロイル基を有すエポキシ樹脂を得、次いで該エポキシ樹脂と、アクリル酸やメタクリル酸を含有するアクリル系モノマーとを共重合し、得られた共重合体を上記同様の方法で水中に分散等させる(特許文献3:特公昭62−7213号公報参照)。
【0004】
また、塗膜の加工性向上を目的として、エポキシ樹脂の他にフェノキシ樹脂を併用し、両樹脂とアクリル系樹脂部分との結合物を含有する水性塗料組成物が、特許文献4:特開平06−1455936号公報に記載されている。
【0005】
さらに、食品中の香気性成分の吸着防止を目的として、特定組成のアクリル系樹脂部分とエポキシ樹脂との結合物を含有する水性塗料組成物が、特願2002−102163号に提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特公昭59−37026号公報
【特許文献2】
特公昭63−17869号公報
【特許文献3】
特公昭62−7213号公報
【特許文献4】
特開平06−1455936号公報
【0007】
上記特許文献等に提案される水性塗料組成物は、いずれも塗膜形成成分である樹脂自身が、それ自体水性媒体に溶解ないし分散し得るので、得られる塗膜の化学的性能、耐水性等が優れていた。
しかし、これら従来の自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物から形成される塗膜は、化学的性能、耐水性等には優れるが、アルコール飲料中のフレーバー成分が缶内面塗膜に吸着され易かったので、アルコール飲料の風味が変化し易く、アルコール飲料を内容物として収容する缶の内面被覆には適さなかった。
またアルコール飲料の中でもワイン等の果実醗酵酒には一般に酸化防止剤として、非常に腐蝕性の強いメタ重亜硫酸カリウムが含まれる。従来のビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物から形成される塗膜は、このようなメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料によって腐食されやすく、経時で劣化が生じる。従って、従来のビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物は、このようなメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料用の缶の内面被覆には使用する事が出来なかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルコール飲料中のフレーバー成分が吸着し難い塗膜を形成し、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても耐性を有する水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水性塗料組成物とアルコール飲料中のフレーバー成分吸着について検討を重ね、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する耐性試験を重ねた結果、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂と、特定組成のカルボキシル基含有アクリル系共重合体とが結合してなる、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂に、ビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂を組み込む事により、アルコール飲料中のフレーバー成分の吸着量を低減することができ、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても耐性を有することを見いだしたものである。
【0010】
フレーバー成分吸着量低減検討においてはアルコール飲料の風味に影響が大きいエステル化合物系フレーバー成分に注目し、塗膜への吸着量低減に努めた。また更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しては浸漬試験を重ね、塗膜劣化が生じない組成を見いだし本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、第1の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって、
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と、
エポキシ当量1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)とを、
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比で、エステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0012】
第2の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で含むラジカル重合性モノマー(b1)を、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)に、フリーラジカル発生剤を用いて、(b1)/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の条件下にグラフトせしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)であり、フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0013】
第3の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)が、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)の一部にアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを含むラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合してなる共重合体(C)であって、
アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)+(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートが66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)であり、
該共重合体(C)の構成に供されたアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)、ラジカル重合性モノマー(c4)、エポキシ樹脂(A2)が、[(c1)+(c4)]/(A2)=30/70〜10/90(重量比)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0014】
第4の発明は、エポキシ樹脂(A2)が、エポキシ当量が6000以上のビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を含む第1ないし第3の発明のいずれかに記載の水性塗料組成物である。
【0015】
第5の発明は、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)及びビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の重量比が、(A2−1)/(A2−2)=25/75〜95/5である第4の発明に記載の水性塗料組成物である。
【0016】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかに記載の水性塗料組成物を含む塗料で内面を被覆してなることを特徴とするアルコール飲料用缶である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の水性塗料組成物は、上記したように自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)〜(C)のうち1種及びフェノール樹脂(D)をそれぞれ含有するものであって、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)〜(C)の形成方法の違いによって3つの態様がある。
【0018】
まず、第1の発明について説明する。
第1の発明は、いわゆるエステル化法によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を含有する場合である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)中のカルボキシル基の一部と、
ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)中のエポキシ基又は水酸基の一部とを、
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比で、エステル化反応せしめてなるものであり、25/75〜15/85の重量比でエステル化反応せしめることが好ましい。
疎水性樹脂であるエポキシ樹脂(A2)に比して親水性樹脂であるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)が過量になると、エポキシ樹脂とアクリル樹脂のエステル反応が進みにくくなり、安定した水性樹脂分散体が得にくくなる。さらにエポキシ樹脂(A2)に比してアクリル系共重合体(A1)が過量の場合、生成する自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の親水性が高くなり過ぎて、塗膜性能において耐水性が劣る問題が生じる。
他方、エポキシ樹脂(A2)に比してカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)が少なすぎると、生成される自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の親水性が低くなり過ぎて水中で安定した分散体とならず、経時で上記樹脂(A)が沈降してしまう問題が生じる。
【0019】
エステル化の際には、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、モルホリン等の揮発性アミン等をエステル化触媒として用いることができる。
【0020】
エステル化反応後、残存しているカルボキシル基の少なくとも一部をアミンもしくはアンモニアで中和することによって自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に分散せしめることができる。
用いられるアミンとしては、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、モルホリン等の揮発性アミン等が挙げられる。
【0021】
本発明における水性媒体とは、少なくとも50容積%以上、好ましくは80容積%以上が水である、水と親水性溶剤との混合物である。親水性溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール等のアルコール系溶剤の他、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物等が挙げられる。
【0022】
次に自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する成分の1つである、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)について説明する。
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)は、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるものである。
アルコール飲料中のフレーバー成分のうち、特に官能評価においてフレーバー変化を感知し易いエステル化合物の吸着量を低減するという点から、アクリル酸もしくはメタクリル酸を66〜80重量%とかなり多く共重合させ、かつスチレンとメチルメタクリレートとを併用することが本発明の特徴の1つである。
【0023】
アクリル酸もしくはメタクリル酸の共重合比が66重量%よりも小さいと、塗膜の架橋密度がアルコール飲料用途には十分ではなく、フレーバー成分の吸着量を低減させる事が出来ない上、メタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する耐蝕性も確保されない。
一方、80重量%よりも大きいとアクリル樹脂の共重合性が不均一になり、アクリル酸もしくはメタクリル酸のホモポリマー量が増加し耐水性が劣るのみならず、エポキシ樹脂とのエステル化反応においても反応が不均一になり、反応中のゲル化が生じ易くなり、塗料の粘度増加等、塗料化時及び経時での粘度挙動も不安定になる。
【0024】
スチレン及びメチルメタクリレートは、それぞれ同程度のガラス転移温度を示すホモポリマーを生成し得る。詳細な理由はまだ解明されてはいないが、同程度のガラス転移温度を呈するモノマーであるスチレン及びメチルメタクリレートを併用する事は、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)の共重合性、更には該アクリル系共重合体(A1)及び自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の結晶性に好ましい影響を与え、どちらか一方のみを使用する場合に比してエステル化合物の吸着量が著しく低下する。
そして、後述するエポキシ樹脂(A2)と反応した後に水性化させるという観点、形成される塗膜の加工性等の観点から、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)は、上記のような共重合比で共重合されたものであることが重要である。
【0025】
共重合の際には、常法に従いアゾビス系の重合開始剤、過酸化物系の重合開始剤等を適宜用いることができる。
アゾビス系の重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等が、過酸化物系の重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
また、共重合に際しては、アルキルアルコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等の有機溶剤を適宜用いることができる。
【0026】
次に自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する成分の他の1つである、エポキシ樹脂(A2)について説明する。
エポキシ樹脂(A2)は、エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須とするものである。ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)は、数平均分子量が3000〜7000であることが好ましく、エポキシ当量が2000〜4000、数平均分子量が4000〜6000であることがより好ましい。
エポキシ当量が1500より小さいビスフェノール型エポキシ樹脂を用いた場合、塗膜の加工性が低下し耐蝕性が劣化する。一方、エポキシ当量が5000を越えると、得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の反応性が低下し、焼付乾燥後の塗膜架橋レベルが低くなり、缶内面塗料として使用した場合、缶内容物中への抽出物量が増加し、フレーバーや衛生性が劣化する問題が発生する。また製造中の自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の樹脂溶液粘度が高くなり製造が困難になる、塗工に適する塗料粘度、固形分の塗料樹脂組成物が得られなくなる等の問題が生じるため好ましくない。
【0027】
ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂は、工業用に製造されているものであって、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類とエピクロルヒドリンとを強アルカリの存在下で反応せしめる一段法、あるいは、この一段法により製造されたエポキシ樹脂にさらにビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類を付加重合せしめる二段法で得られるものである。
【0028】
ビスフェノール型エポキシ樹脂として、例えば下式(1)で示される構造のビスフェノールA型の他、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型等が挙げられる。
【0029】
【化1】
(ただし、nは、0以上の整数。)
【0030】
このようなビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂としては、通常市販されているビスフェノール型エポキシ樹脂、例えばエピコート1007(エポキシ当量(以下、Eeqという)=2000、重量平均分子量(以下、Mwという)=5000、数平均分子量(以下、Mnという)=2600)、エピコート1009(Eeq=2900、Mw=10000、Mn=3700)、エピコート1010(Eeq=4000、Mw=14000、Mn=4900)(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、AER−6017(Eeq=1900、Mw=5500、Mn=2700)、AER−6019(Eeq=2500、Mw=11000、Mn=3900)(以上、旭化成エポキシ(株)製)等がある。
【0031】
本発明においては、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを反応させて自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する際に、エポキシ樹脂(A2)中にビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)の他にビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を含有させることもできる。
【0032】
ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)は、一般にはフェノキシ樹脂とも呼ばれる樹脂であり、エポキシ当量6000以上であり、実質的にエポキシ基が含まれない樹脂も用いることができる。また、重量平均分子量は15,000〜70,000であることが好ましく、16,000〜50,000であることがより好ましい。数平均分子量は、8000〜30000であることが好ましく、数平均分子量が9000〜20000であることがより好ましい。
例えば、Union Carbide Chem. 社製品名PKHH(Eeq=50000以上(実質的にエポキシ基は含まれない)、Mw=16000、Mn=4800)、ジャパンエポキシレジン(株)製品名エピコート1256(Eeq=8000、Mw=29000、Mn=6200)、東都化成(株)製品名エポトートYP−50S(Eeq=20000、Mw=44000、Mn=8100)等が好適に用いられる。
【0033】
このようなビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を上記ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)と併用して、上述のアクリル系共重合体(A1)と反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)においては、更なるフレーバー成分の吸着量低減が望め、加工性、耐蝕性の向上も図れるため、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)とビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)とを併用することが好ましい。
【0034】
このようなビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)とビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)と併用する場合、その比率は、(A2−1)/(A2−2)=75/25〜95/5(重量比)であることが好ましく、50/50〜90/10であることがより好ましい。
ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の量がこれより多い場合、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)との反応性が低下し、反応中溶液粘度が増加する。さらに得られる塗料組成物製品においては塗工に適する塗料粘度、固形分の塗料が得られない問題が生じる。またビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の量がこれより少ない場合、併用の効果がほとんど期待出来ない。
【0035】
本発明の水性塗料組成物は、上記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)に対して、硬化剤としてフェノール樹脂(D)を含有する必要がある。
フェノール樹脂(D)は、ビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとし、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させたレゾール型フェノール樹脂或いは、それらをアルコール類と反応させてなるアルキルエーテル化物を使用することが好ましい。ビスフェノールAまたはビスフェノールFの様な反応性に優れた4官能のフェノールモノマーを使用しレゾール型フェノール樹脂を調製することにより、フェノール樹脂(D)中のメチロール基或いはアルコキシル化メチル基濃度を高くすることができ、焼付塗膜の緻密性を向上させることにより、衛生性を低下させることなく塗膜の耐水性を向上させることができる。また耐蝕性も向上されメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても十分な耐性を確保する事ができる。
【0036】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)の比率は90/10〜99/1(重量比)であることが好ましく、1重量部よりも少ないとフェノール樹脂(D)の硬化への寄与が認めにくく効果が十分に発揮されず、10重量部を越えると塗膜の加工性が低下することがあるので好ましくない。
【0037】
次に、第2の発明について説明する。
第2の発明は、いわゆるグラフト法によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を含有する水性塗料組成物であって、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の代わりに自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を用いる点を除き、上記第1の発明と同様である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)は、フリーラジカル発生剤を用いて、エポキシ樹脂(A2)に、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で含有するラジカル重合性モノマー(b1)をグラフトせしめてなるものである。一般にエポキシ樹脂(A2)中の2級の炭素にラジカル重合性モノマー(b1)がグラフトする。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)の形成に供されるエポキシ樹脂(A2)、及び該エポキシ樹脂(A2)を構成するエポキシ樹脂(A2−1)、(A2−2)、並びにその割合については、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の場合と同様である。
また、フリーラジカル発生剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示した重合開始剤のうち、有機過酸化物が好適であり、特にベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
さらにグラフト反応の際に使用される有機溶剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものが同様に挙げられる。
【0038】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)は形成のプロセスが自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)とは異なるが、結果として、エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸やメタクリル酸を必須とするラジカル重合性のモノマーに由来する部分とが結合してなるものである。
従って、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を構成しているエポキシ樹脂(A2)とラジカル重合性のモノマー(b1)に由来する部分との比は、自己乳化性エポキシ樹脂(A)の場合と同様であることが重要である。即ち、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを特定の組成比で含有するラジカル重合性モノマー(b1)をエポキシ樹脂(A2)に、(b1)/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の割合でグラフトせしめることが重要である。
【0039】
次に、第3の発明について説明する。
第3の発明は、いわゆる直接法(変形エステル化法)によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を含有する水性塗料組成物であって、自己乳化型エポキシ樹脂(A)、(B)の代わりに自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を用いる点を除き、上記第1の発明、第2の発明と同様である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)は、エポキシ樹脂(A2)の一部に、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)を得、次いで該エポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを含有するラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合してなる共重合体(C)である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)の形成に供されるエポキシ樹脂(A2)、及び該エポキシ樹脂(A2)を構成するエポキシ樹脂(A2−1)、(A2−2)、並びにその割合については、自己乳化性エポキシ樹脂(A)、(B)の場合と同様である。
エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)との反応の際に用い得るエステル化触媒としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を形成する際に用い得るエステル化触媒を同様に例示できる。
また、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)を必須成分として含むラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合する際に用いられる重合開始剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものを同様に例示できる。
さらに直接法の際に使用される有機溶剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものが同様に挙げられる。
【0040】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)は形成のプロセスが自己乳化性エポキシ樹脂(A)や(B)とは異なるが、結果として、エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸もしくはメタクリル酸を必須とする特定組成のラジカル重合性のモノマーに由来する部分とが結合してなるものである。
従って、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を構成しているエポキシ樹脂(A2)とラジカル重合性のモノマーに由来する部分との比は、自己乳化性エポキシ樹脂(A)、(B)の場合と同様であることが重要である。即ち、エステル化の際に用いるアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)と、共重合の際に使用するアクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)を必須成分として含有するラジカル重合性モノマー(c4)との合計量(c1)+(c4)は、エポキシ樹脂(A2)と、[(c1)+(c4)]/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の関係にあることが重要である。
また、ラジカル重合性のモノマーに由来する部分も、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)+(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートが66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)であることが重要である。
【0041】
本発明の水性塗料組成物は、そのままで、または必要に応じて塗工性を改良するための界面活性剤、消泡剤などを添加して、塗料、特に缶の内面用の塗料として用いることができる。
【0042】
本発明の水性塗料組成物が適用される基材としては、未処理鋼板、処理鋼板、亜鉛鉄板、ブリキ板、アルミ板などの金属板が適しており、塗装方法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレーなどのスプレー塗装や浸漬塗装ロールコーター塗装、電着塗装なども可能である。
基材上に塗膜を定着させる焼付条件は、温度150℃〜230℃、時間としては10秒〜30分の範囲から選ぶことができる。
本発明のアルコール飲料用缶は、上記のような本発明の水性塗料組成物で内面を被覆したもので、所定の工程により、缶内へアルコール飲料を充填した後、保管中に該塗料の塗膜が、アルコール飲料中のフレーバー成分、特にエステル化合物を吸着しにくいため、アルコール飲料のフレーバー保持性が優れている。
尚、本発明でいうアルコール飲料中のエステル化合物としては、「醸造成分一覧(財団法人日本醸造協会編集)」にも記載されるように、酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられる。
またメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料については、高濃度(500ppm)のメタ重亜硫酸カリウム及び1%のクエン酸を含む10%エタノール水溶液中を用い浸漬試験を行い耐蝕性を評価した。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
製造例1〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液の製造〕
1)ブチルセロソルブ 400部、2)n−ブタノール 300部、3)メタクリル酸 200部、4)スチレン 40部、5)エチルアクリレート 20部、6)メチルメタクリレート 40部、7)過酸化ベンゾイル 5部
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、ブチルセロソルブ 400部、n−ブタノール 300部、及び3)〜7)のモノマー及び重合開始剤混合液の1/4を仕込んだ。次に100℃に加熱して30分攪拌後、100℃を保ちながらモノマー及び重合開始剤混合液の残りの3/4を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃を保ち2時間攪拌し、冷却、取り出す事で固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−1)溶液を得た。
【0044】
製造例2〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−2)溶液の製造〕
上記製造例1と同様にして、使用するアクリルモノマーの混合比率を、3)メタクリル酸 240部、スチレン 20部、エチルアクリレート 20部、メチルメタクリレート 20部に変更し、固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−2)溶液を得た。
【0045】
製造例3〔フェノール樹脂(D−1)溶液の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、1)イオン交換水 60部、2)20%水酸化ナトリウム水溶液 60部、3)ビスフェノールA 50部、4)ビスフェノールF 50部、5)37%ホルマリン 300部を仕込み、60℃で3時間反応させたところ赤褐色透明な溶液を得た。次いで40℃まで冷却してからこの赤褐色透明溶液に、6)20%塩酸 55部を加え攪拌したところ、10分程度で上層が無色透明な水層、下層が赤褐色の有機層に分離した。上層をデカンテーションにより分離・除去したのち、7)n−ブタノール140を加え、固形分50%のフェノール樹脂(D−1)溶液を得た。
【0046】
製造例4〜5〔フェノール樹脂(D−2)及び(D−3)溶液の製造〕
上記製造例3と同様にして、ビスフェノールA50部及びビスフェノールF 50部を用いる代わりに、ビスフェノールAを単独で100部を用いる事で、固形分50%のフェノール樹脂(D−2)溶液を得た。同じくビスフェノールFを単独で100部を用いる事で、固形分50%のフェノール樹脂(D−3)溶液を得た。
【0047】
実施例1〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部、ブチルセロソルブ70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液160部、上記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し2時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下し、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0048】
実施例2〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にして上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液に代り、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−2)溶液を用い製造し、実施例2の水性塗料組成物を得た。
【0049】
実施例3〜4〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にして上記フェノール樹脂(D−1)溶液に代り、前記フェノール樹脂(D−2)または(D−3)を用い製造し、実施例3または4の水性塗料組成物を得た。
【0050】
実施例5〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にしてエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部に代り、エピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製) 100部及びPKHH(Union Carbide Chem.社製)60部を用い製造し、実施例5の水性塗料組成物を得た。
【0051】
実施例6〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにAER−6017(旭化成エポキシ(株)製)160部、ブチルセロソルブ80部、n−ブタノール80部を仕込み120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
フラスコ内を120℃に保持した状態でメタクリル酸35部、スチレン5部、エチルアクリレート5部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル3部を混合したアクリルモノマー及び重合開始剤溶液を1時間にて滴下した。滴下終了後120℃にて更に1時間保持した後、60℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール15部を添加した。つづけてイオン交換水592部を1時間かけて滴下した後、前記フェノール樹脂(D−1)溶液20部を加え、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0052】
実施例7〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1009(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、エピコート1256(ジャパンエポキシレジン(株)製)70部、ブチルセロソルブ80部、n−ブタノール80部を仕込み、125℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
フラスコ内を125℃に保持した状態でメタクリル酸1.0部、ハイドロキノン0.005部を仕込み、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液0.2部を仕込み3時間反応させた。
90℃まで冷却した後、その温度を保持しメタクリル酸30部、スチレン5部、エチルアクリレート3部、メチルメタクリレート7部、N,N−アゾビスイソブチロニトリル1部を混合したアクリルモノマー及び重合開始剤溶液を1時間かけて滴下した。更に90℃にて1時間保持した後、60℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール10部を添加した。続けてイオン交換水603部を1時間かけて滴下した後、フェノール樹脂(D−1)溶液10部を加え、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0053】
製造例6〜9〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−3〜A1−6)の製造〕
前記製造例1と同様にして表1に示すモノマー混合液から固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−3)〜(A1−6)溶液を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
製造例10〔フェノール樹脂(D−4)溶液の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、1)イオン交換水 60部、2)20%水酸化ナトリウム水溶液 60部、3)p−クレゾール 100部、4)37%ホルマリン 300部を仕込み、80℃で3時間反応させたところ褐色透明な溶液を得た。次いで40℃まで冷却してからこの褐色透明溶液に、5)20%塩酸55部を加え攪拌したところ、10分程度で上層が無色透明な水層、下層が褐色の有機層に分離した。上層をデカンテーションにより分離・除去したのち、6)n−ブタノール140を加え、固形分50%のフェノール樹脂(D−4)溶液を得た。
【0056】
比較例1〜4〔水性塗料組成物の製造〕
前記実施例1と同様にしてカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)に代り、上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−3)〜(A1−6)溶液を用い製造し、比較例1〜4の水性塗料組成物を得た。
【0057】
比較例5〔水性塗料組成物の製造〕
前記実施例1と同様にしてフェノール樹脂(D−1)に代り上記フェノール樹脂(D−4)溶液を用い製造し、比較例5の水性塗料組成物を得た。
【0058】
比較例6〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱・攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液360部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し1時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水435部を1時間かけて徐々に滴下し、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0059】
比較例7〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)190部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液60部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し1時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下したが、安定した水性塗料組成物は得られず、経時で樹脂が沈降、分離してしまった。
【0060】
比較例8〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1256(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液160部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加したところ樹脂溶液の粘度は著しく増加した、反応30分後、60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下したが安定した水性塗料組成物は得られず、経時で樹脂が沈降、分離してしまった。
【0061】
(塗膜性能試験パネル作製)
上記実施例1〜7及び比較例1〜6(比較例7及び8は塗料とならなかった為、塗膜性能評価は行えなかった)で得られた水性塗料組成物を焼付乾燥後の塗膜厚が5μmになる様に0.1mm厚のアルミ板上に塗装し、200℃×2分の焼付乾燥を行い試験用パネルを作製した。各試験パネルを用い、以下の内容の塗膜性能評価を行い、表2に試験結果を表記した。
【0062】
(試験項目)
以下に示す方法で(1)フレーバー成分吸着率、(2)水フレーバー、(3)過マンガン酸カリウム消費量、(4)耐蝕性について試験を行った。
(1)アルコール飲料中には種々のフレーバー物質が含まれるが、特に含有量の多さと官能的閾値の低さからエステル化合物が重要と考えられる。本発明でいうアルコール飲料中のエステル化合物としては、「醸造成分一覧(財団法人日本醸造協会編集)」にも記載されるように、酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられ、これらの物質をフレーバー標準物質として使用した。標準物質の吸着率が低い程、フレーバー保持性が優れていると言える。
(2)水フレーバーは内容物に対する味覚変化を評価したものであり、変化が少ない程、缶内面塗料として良好な性能を有していると言える。
(3)過マンガン酸カリウム消費量は一般的な水質検査であるCODに相当する試験法であり、測定値が低い程、衛生性が優れていると言える。
(4)耐蝕性は各種内容物に対する塗膜の腐蝕の有無を評価したものであり、塗膜変化が生じにくい程、缶内面塗料として優れていると言える。メタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する腐蝕性を評価するため、より厳しい試験条件を求め、一般に使用されるよりも高濃度(500ppm)のメタ重亜硫酸カリウム及び1%のクエン酸を含む10%エタノール水溶液中を用い試験を行った。
【0063】
(試験方法)
(1)フレーバー成分吸着量;各試験パネル500cm2を、各種フレーバー標準物質(酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチルの5種類)各5ppmを含む5%エタノール水溶液500ccに浸漬し、密栓したのち50℃−30日経過させた。30日経過後の各試験パネルを取り出し、蒸留水で水洗した後、ジエチルエーテル100ccに塗膜を再浸漬し、試験パネルに吸着した各フレーバー標準物質を抽出し、吸着量をガスクロマトグラフィーにて定量した。各フレーバー物質は浸漬液(500cc)中に0.0025gずつ含まれるが、この量を100%として、塗膜に吸着した量から各フレーバー成分の吸着率を計算し、以下の基準に従って評価した。
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 3%以下・・・・・・・○
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 3〜10%・・・・・・△
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 10%以上・・・・・・×
【0064】
(2)水フレーバー;各試験パネル500cm2を、活性炭処理水500ccに浸漬し、密栓したのち125℃−30分の加熱処理を行った。塗装板を浸漬しないで同様の処理を行った活性炭処理水を標準として、以下の基準にしたがって各処理水の味覚を評価した。
味覚に変化なし・・・・・・・・○
かすかに味覚に変化あり・・・・△
味覚に変化あり・・・・・・・・×
【0065】
(3)過マンガン酸カリウム消費量;各試験パネル500cm2を、蒸留水500ccに浸漬し、密栓したのち125℃−30分の加熱処理を行った。各処理水の過マンガン酸カリウム消費量を測定し、以下の基準に従って評価した。
過マンガン酸カリウム消費量 3ppm以下・・・・・○
過マンガン酸カリウム消費量 3〜6ppm・・・・・△
過マンガン酸カリウム消費量 6ppm以上・・・・・×
【0066】
(4)耐蝕性;各試験パネルを、メタ重亜硫酸カリウム500ppm及びクエン酸1%を含む10%エタノール水溶液に浸漬し、50℃−1カ月経過させた後の塗膜の表面状態を観察し、以下の基準に従って評価した。
塗膜表面状態変化無し・・・・・・・・・○
塗膜表面に僅かな曇りが生じる・・・・・△
塗膜表面がマット状になる・・・・・・・×
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明によればアルコール飲料におけるフレーバー成分の吸着量が少なく、極めて風味保持性に優れ、メタ重亜硫酸カリウムを含む非常に腐蝕性の強い内容物に対しても良く耐性を有する、フレーバーや衛生性に優れた塗膜を形成し得る水性塗料組成物及び塗料組成物を含む塗料で内面を被覆したアルコール飲料用缶が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性塗料組成物に関する。詳しくは、金属素材に直接又は下地塗料上に塗工される水性塗料組成物であって、殊に金属缶内面被覆に好適に用いられる水性塗料組成物である。さらに詳しくは、アルコール飲料を収容する金属缶の内面被覆に好適に用いられる水性塗料組成物である。
【0002】
【従来の技術】
従来から金属罐は、ブリキ、ティンフリースチール、アルミ等の金属素材が内容物に直接接触し腐食するのを防ぐために、通常薄い合成樹脂保護被膜を施されている。
【0003】
内面被覆用の水性塗料組成物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリル系樹脂とが部分的に結合している状態にあるいわゆる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂と、フェノール樹脂とを水性媒体中に溶解ないし分散させた塗料組成物が知られている。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する水性塗料組成物は、例えば下記(1)〜(3)等に示す方法によって得ることができる。
(1)エステル化法
ビスフェノール型エポキシ樹脂を、カルボキシル基を含有するアクリル系樹脂にてエステル化し、塩基で中和して水性媒体中に分散等させる(特許文献1:特公昭59−37026号公報参照)。
(2)グラフト法
アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有重合性モノマーを必須成分とするアクリル系モノマー混合物を、フリーラジカル発生剤を用いてビスフェノール型エポキシ樹脂にグラフトさせ、上記同様の方法で水性媒体中に分散等させる(特許文献2:特公昭63−17869号公報参照)。
(3)直説法(変形エステル化法)
ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部にアクリル酸やメタクリル酸を反応せしめ、(メタ)アクロイル基を有すエポキシ樹脂を得、次いで該エポキシ樹脂と、アクリル酸やメタクリル酸を含有するアクリル系モノマーとを共重合し、得られた共重合体を上記同様の方法で水中に分散等させる(特許文献3:特公昭62−7213号公報参照)。
【0004】
また、塗膜の加工性向上を目的として、エポキシ樹脂の他にフェノキシ樹脂を併用し、両樹脂とアクリル系樹脂部分との結合物を含有する水性塗料組成物が、特許文献4:特開平06−1455936号公報に記載されている。
【0005】
さらに、食品中の香気性成分の吸着防止を目的として、特定組成のアクリル系樹脂部分とエポキシ樹脂との結合物を含有する水性塗料組成物が、特願2002−102163号に提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特公昭59−37026号公報
【特許文献2】
特公昭63−17869号公報
【特許文献3】
特公昭62−7213号公報
【特許文献4】
特開平06−1455936号公報
【0007】
上記特許文献等に提案される水性塗料組成物は、いずれも塗膜形成成分である樹脂自身が、それ自体水性媒体に溶解ないし分散し得るので、得られる塗膜の化学的性能、耐水性等が優れていた。
しかし、これら従来の自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物から形成される塗膜は、化学的性能、耐水性等には優れるが、アルコール飲料中のフレーバー成分が缶内面塗膜に吸着され易かったので、アルコール飲料の風味が変化し易く、アルコール飲料を内容物として収容する缶の内面被覆には適さなかった。
またアルコール飲料の中でもワイン等の果実醗酵酒には一般に酸化防止剤として、非常に腐蝕性の強いメタ重亜硫酸カリウムが含まれる。従来のビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物から形成される塗膜は、このようなメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料によって腐食されやすく、経時で劣化が生じる。従って、従来のビスフェノール型エポキシ樹脂系水性塗料組成物は、このようなメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料用の缶の内面被覆には使用する事が出来なかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルコール飲料中のフレーバー成分が吸着し難い塗膜を形成し、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても耐性を有する水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水性塗料組成物とアルコール飲料中のフレーバー成分吸着について検討を重ね、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する耐性試験を重ねた結果、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂と、特定組成のカルボキシル基含有アクリル系共重合体とが結合してなる、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂に、ビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂を組み込む事により、アルコール飲料中のフレーバー成分の吸着量を低減することができ、更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても耐性を有することを見いだしたものである。
【0010】
フレーバー成分吸着量低減検討においてはアルコール飲料の風味に影響が大きいエステル化合物系フレーバー成分に注目し、塗膜への吸着量低減に努めた。また更にはメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しては浸漬試験を重ね、塗膜劣化が生じない組成を見いだし本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、第1の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって、
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と、
エポキシ当量1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)とを、
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比で、エステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0012】
第2の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で含むラジカル重合性モノマー(b1)を、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)に、フリーラジカル発生剤を用いて、(b1)/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の条件下にグラフトせしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)であり、フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0013】
第3の発明は、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)が、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)の一部にアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを含むラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合してなる共重合体(C)であって、
アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)+(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートが66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)であり、
該共重合体(C)の構成に供されたアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)、ラジカル重合性モノマー(c4)、エポキシ樹脂(A2)が、[(c1)+(c4)]/(A2)=30/70〜10/90(重量比)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0014】
第4の発明は、エポキシ樹脂(A2)が、エポキシ当量が6000以上のビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を含む第1ないし第3の発明のいずれかに記載の水性塗料組成物である。
【0015】
第5の発明は、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)及びビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の重量比が、(A2−1)/(A2−2)=25/75〜95/5である第4の発明に記載の水性塗料組成物である。
【0016】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかに記載の水性塗料組成物を含む塗料で内面を被覆してなることを特徴とするアルコール飲料用缶である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の水性塗料組成物は、上記したように自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)〜(C)のうち1種及びフェノール樹脂(D)をそれぞれ含有するものであって、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)〜(C)の形成方法の違いによって3つの態様がある。
【0018】
まず、第1の発明について説明する。
第1の発明は、いわゆるエステル化法によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を含有する場合である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)は、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)中のカルボキシル基の一部と、
ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)中のエポキシ基又は水酸基の一部とを、
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比で、エステル化反応せしめてなるものであり、25/75〜15/85の重量比でエステル化反応せしめることが好ましい。
疎水性樹脂であるエポキシ樹脂(A2)に比して親水性樹脂であるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)が過量になると、エポキシ樹脂とアクリル樹脂のエステル反応が進みにくくなり、安定した水性樹脂分散体が得にくくなる。さらにエポキシ樹脂(A2)に比してアクリル系共重合体(A1)が過量の場合、生成する自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の親水性が高くなり過ぎて、塗膜性能において耐水性が劣る問題が生じる。
他方、エポキシ樹脂(A2)に比してカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)が少なすぎると、生成される自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の親水性が低くなり過ぎて水中で安定した分散体とならず、経時で上記樹脂(A)が沈降してしまう問題が生じる。
【0019】
エステル化の際には、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、モルホリン等の揮発性アミン等をエステル化触媒として用いることができる。
【0020】
エステル化反応後、残存しているカルボキシル基の少なくとも一部をアミンもしくはアンモニアで中和することによって自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に分散せしめることができる。
用いられるアミンとしては、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類、モルホリン等の揮発性アミン等が挙げられる。
【0021】
本発明における水性媒体とは、少なくとも50容積%以上、好ましくは80容積%以上が水である、水と親水性溶剤との混合物である。親水性溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、ペンタノール等のアルコール系溶剤の他、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物等が挙げられる。
【0022】
次に自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する成分の1つである、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)について説明する。
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)は、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるものである。
アルコール飲料中のフレーバー成分のうち、特に官能評価においてフレーバー変化を感知し易いエステル化合物の吸着量を低減するという点から、アクリル酸もしくはメタクリル酸を66〜80重量%とかなり多く共重合させ、かつスチレンとメチルメタクリレートとを併用することが本発明の特徴の1つである。
【0023】
アクリル酸もしくはメタクリル酸の共重合比が66重量%よりも小さいと、塗膜の架橋密度がアルコール飲料用途には十分ではなく、フレーバー成分の吸着量を低減させる事が出来ない上、メタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する耐蝕性も確保されない。
一方、80重量%よりも大きいとアクリル樹脂の共重合性が不均一になり、アクリル酸もしくはメタクリル酸のホモポリマー量が増加し耐水性が劣るのみならず、エポキシ樹脂とのエステル化反応においても反応が不均一になり、反応中のゲル化が生じ易くなり、塗料の粘度増加等、塗料化時及び経時での粘度挙動も不安定になる。
【0024】
スチレン及びメチルメタクリレートは、それぞれ同程度のガラス転移温度を示すホモポリマーを生成し得る。詳細な理由はまだ解明されてはいないが、同程度のガラス転移温度を呈するモノマーであるスチレン及びメチルメタクリレートを併用する事は、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)の共重合性、更には該アクリル系共重合体(A1)及び自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の結晶性に好ましい影響を与え、どちらか一方のみを使用する場合に比してエステル化合物の吸着量が著しく低下する。
そして、後述するエポキシ樹脂(A2)と反応した後に水性化させるという観点、形成される塗膜の加工性等の観点から、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)は、上記のような共重合比で共重合されたものであることが重要である。
【0025】
共重合の際には、常法に従いアゾビス系の重合開始剤、過酸化物系の重合開始剤等を適宜用いることができる。
アゾビス系の重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等が、過酸化物系の重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
また、共重合に際しては、アルキルアルコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等の有機溶剤を適宜用いることができる。
【0026】
次に自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する成分の他の1つである、エポキシ樹脂(A2)について説明する。
エポキシ樹脂(A2)は、エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須とするものである。ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)は、数平均分子量が3000〜7000であることが好ましく、エポキシ当量が2000〜4000、数平均分子量が4000〜6000であることがより好ましい。
エポキシ当量が1500より小さいビスフェノール型エポキシ樹脂を用いた場合、塗膜の加工性が低下し耐蝕性が劣化する。一方、エポキシ当量が5000を越えると、得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の反応性が低下し、焼付乾燥後の塗膜架橋レベルが低くなり、缶内面塗料として使用した場合、缶内容物中への抽出物量が増加し、フレーバーや衛生性が劣化する問題が発生する。また製造中の自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の樹脂溶液粘度が高くなり製造が困難になる、塗工に適する塗料粘度、固形分の塗料樹脂組成物が得られなくなる等の問題が生じるため好ましくない。
【0027】
ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂は、工業用に製造されているものであって、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類とエピクロルヒドリンとを強アルカリの存在下で反応せしめる一段法、あるいは、この一段法により製造されたエポキシ樹脂にさらにビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類を付加重合せしめる二段法で得られるものである。
【0028】
ビスフェノール型エポキシ樹脂として、例えば下式(1)で示される構造のビスフェノールA型の他、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型等が挙げられる。
【0029】
【化1】
(ただし、nは、0以上の整数。)
【0030】
このようなビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂としては、通常市販されているビスフェノール型エポキシ樹脂、例えばエピコート1007(エポキシ当量(以下、Eeqという)=2000、重量平均分子量(以下、Mwという)=5000、数平均分子量(以下、Mnという)=2600)、エピコート1009(Eeq=2900、Mw=10000、Mn=3700)、エピコート1010(Eeq=4000、Mw=14000、Mn=4900)(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、AER−6017(Eeq=1900、Mw=5500、Mn=2700)、AER−6019(Eeq=2500、Mw=11000、Mn=3900)(以上、旭化成エポキシ(株)製)等がある。
【0031】
本発明においては、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを反応させて自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を生成する際に、エポキシ樹脂(A2)中にビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)の他にビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を含有させることもできる。
【0032】
ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)は、一般にはフェノキシ樹脂とも呼ばれる樹脂であり、エポキシ当量6000以上であり、実質的にエポキシ基が含まれない樹脂も用いることができる。また、重量平均分子量は15,000〜70,000であることが好ましく、16,000〜50,000であることがより好ましい。数平均分子量は、8000〜30000であることが好ましく、数平均分子量が9000〜20000であることがより好ましい。
例えば、Union Carbide Chem. 社製品名PKHH(Eeq=50000以上(実質的にエポキシ基は含まれない)、Mw=16000、Mn=4800)、ジャパンエポキシレジン(株)製品名エピコート1256(Eeq=8000、Mw=29000、Mn=6200)、東都化成(株)製品名エポトートYP−50S(Eeq=20000、Mw=44000、Mn=8100)等が好適に用いられる。
【0033】
このようなビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を上記ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)と併用して、上述のアクリル系共重合体(A1)と反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)においては、更なるフレーバー成分の吸着量低減が望め、加工性、耐蝕性の向上も図れるため、ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)とビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)とを併用することが好ましい。
【0034】
このようなビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)とビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)と併用する場合、その比率は、(A2−1)/(A2−2)=75/25〜95/5(重量比)であることが好ましく、50/50〜90/10であることがより好ましい。
ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の量がこれより多い場合、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)との反応性が低下し、反応中溶液粘度が増加する。さらに得られる塗料組成物製品においては塗工に適する塗料粘度、固形分の塗料が得られない問題が生じる。またビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の量がこれより少ない場合、併用の効果がほとんど期待出来ない。
【0035】
本発明の水性塗料組成物は、上記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)に対して、硬化剤としてフェノール樹脂(D)を含有する必要がある。
フェノール樹脂(D)は、ビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとし、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させたレゾール型フェノール樹脂或いは、それらをアルコール類と反応させてなるアルキルエーテル化物を使用することが好ましい。ビスフェノールAまたはビスフェノールFの様な反応性に優れた4官能のフェノールモノマーを使用しレゾール型フェノール樹脂を調製することにより、フェノール樹脂(D)中のメチロール基或いはアルコキシル化メチル基濃度を高くすることができ、焼付塗膜の緻密性を向上させることにより、衛生性を低下させることなく塗膜の耐水性を向上させることができる。また耐蝕性も向上されメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対しても十分な耐性を確保する事ができる。
【0036】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)の比率は90/10〜99/1(重量比)であることが好ましく、1重量部よりも少ないとフェノール樹脂(D)の硬化への寄与が認めにくく効果が十分に発揮されず、10重量部を越えると塗膜の加工性が低下することがあるので好ましくない。
【0037】
次に、第2の発明について説明する。
第2の発明は、いわゆるグラフト法によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を含有する水性塗料組成物であって、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の代わりに自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を用いる点を除き、上記第1の発明と同様である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)は、フリーラジカル発生剤を用いて、エポキシ樹脂(A2)に、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で含有するラジカル重合性モノマー(b1)をグラフトせしめてなるものである。一般にエポキシ樹脂(A2)中の2級の炭素にラジカル重合性モノマー(b1)がグラフトする。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)の形成に供されるエポキシ樹脂(A2)、及び該エポキシ樹脂(A2)を構成するエポキシ樹脂(A2−1)、(A2−2)、並びにその割合については、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の場合と同様である。
また、フリーラジカル発生剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示した重合開始剤のうち、有機過酸化物が好適であり、特にベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
さらにグラフト反応の際に使用される有機溶剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものが同様に挙げられる。
【0038】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)は形成のプロセスが自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)とは異なるが、結果として、エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸やメタクリル酸を必須とするラジカル重合性のモノマーに由来する部分とが結合してなるものである。
従って、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)を構成しているエポキシ樹脂(A2)とラジカル重合性のモノマー(b1)に由来する部分との比は、自己乳化性エポキシ樹脂(A)の場合と同様であることが重要である。即ち、アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを特定の組成比で含有するラジカル重合性モノマー(b1)をエポキシ樹脂(A2)に、(b1)/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の割合でグラフトせしめることが重要である。
【0039】
次に、第3の発明について説明する。
第3の発明は、いわゆる直接法(変形エステル化法)によって得られる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を含有する水性塗料組成物であって、自己乳化型エポキシ樹脂(A)、(B)の代わりに自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を用いる点を除き、上記第1の発明、第2の発明と同様である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)は、エポキシ樹脂(A2)の一部に、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)を得、次いで該エポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを含有するラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合してなる共重合体(C)である。
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)の形成に供されるエポキシ樹脂(A2)、及び該エポキシ樹脂(A2)を構成するエポキシ樹脂(A2−1)、(A2−2)、並びにその割合については、自己乳化性エポキシ樹脂(A)、(B)の場合と同様である。
エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)との反応の際に用い得るエステル化触媒としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)を形成する際に用い得るエステル化触媒を同様に例示できる。
また、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)を必須成分として含むラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合する際に用いられる重合開始剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものを同様に例示できる。
さらに直接法の際に使用される有機溶剤としては、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)の形成に用いたアクリル系共重合体(A1)を得る際に例示したものが同様に挙げられる。
【0040】
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)は形成のプロセスが自己乳化性エポキシ樹脂(A)や(B)とは異なるが、結果として、エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸もしくはメタクリル酸を必須とする特定組成のラジカル重合性のモノマーに由来する部分とが結合してなるものである。
従って、自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)を構成しているエポキシ樹脂(A2)とラジカル重合性のモノマーに由来する部分との比は、自己乳化性エポキシ樹脂(A)、(B)の場合と同様であることが重要である。即ち、エステル化の際に用いるアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)と、共重合の際に使用するアクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)を必須成分として含有するラジカル重合性モノマー(c4)との合計量(c1)+(c4)は、エポキシ樹脂(A2)と、[(c1)+(c4)]/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の関係にあることが重要である。
また、ラジカル重合性のモノマーに由来する部分も、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)+(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートが66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)であることが重要である。
【0041】
本発明の水性塗料組成物は、そのままで、または必要に応じて塗工性を改良するための界面活性剤、消泡剤などを添加して、塗料、特に缶の内面用の塗料として用いることができる。
【0042】
本発明の水性塗料組成物が適用される基材としては、未処理鋼板、処理鋼板、亜鉛鉄板、ブリキ板、アルミ板などの金属板が適しており、塗装方法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレーなどのスプレー塗装や浸漬塗装ロールコーター塗装、電着塗装なども可能である。
基材上に塗膜を定着させる焼付条件は、温度150℃〜230℃、時間としては10秒〜30分の範囲から選ぶことができる。
本発明のアルコール飲料用缶は、上記のような本発明の水性塗料組成物で内面を被覆したもので、所定の工程により、缶内へアルコール飲料を充填した後、保管中に該塗料の塗膜が、アルコール飲料中のフレーバー成分、特にエステル化合物を吸着しにくいため、アルコール飲料のフレーバー保持性が優れている。
尚、本発明でいうアルコール飲料中のエステル化合物としては、「醸造成分一覧(財団法人日本醸造協会編集)」にも記載されるように、酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられる。
またメタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料については、高濃度(500ppm)のメタ重亜硫酸カリウム及び1%のクエン酸を含む10%エタノール水溶液中を用い浸漬試験を行い耐蝕性を評価した。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量%」を示す。
製造例1〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液の製造〕
1)ブチルセロソルブ 400部、2)n−ブタノール 300部、3)メタクリル酸 200部、4)スチレン 40部、5)エチルアクリレート 20部、6)メチルメタクリレート 40部、7)過酸化ベンゾイル 5部
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、ブチルセロソルブ 400部、n−ブタノール 300部、及び3)〜7)のモノマー及び重合開始剤混合液の1/4を仕込んだ。次に100℃に加熱して30分攪拌後、100℃を保ちながらモノマー及び重合開始剤混合液の残りの3/4を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃を保ち2時間攪拌し、冷却、取り出す事で固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−1)溶液を得た。
【0044】
製造例2〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−2)溶液の製造〕
上記製造例1と同様にして、使用するアクリルモノマーの混合比率を、3)メタクリル酸 240部、スチレン 20部、エチルアクリレート 20部、メチルメタクリレート 20部に変更し、固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−2)溶液を得た。
【0045】
製造例3〔フェノール樹脂(D−1)溶液の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、1)イオン交換水 60部、2)20%水酸化ナトリウム水溶液 60部、3)ビスフェノールA 50部、4)ビスフェノールF 50部、5)37%ホルマリン 300部を仕込み、60℃で3時間反応させたところ赤褐色透明な溶液を得た。次いで40℃まで冷却してからこの赤褐色透明溶液に、6)20%塩酸 55部を加え攪拌したところ、10分程度で上層が無色透明な水層、下層が赤褐色の有機層に分離した。上層をデカンテーションにより分離・除去したのち、7)n−ブタノール140を加え、固形分50%のフェノール樹脂(D−1)溶液を得た。
【0046】
製造例4〜5〔フェノール樹脂(D−2)及び(D−3)溶液の製造〕
上記製造例3と同様にして、ビスフェノールA50部及びビスフェノールF 50部を用いる代わりに、ビスフェノールAを単独で100部を用いる事で、固形分50%のフェノール樹脂(D−2)溶液を得た。同じくビスフェノールFを単独で100部を用いる事で、固形分50%のフェノール樹脂(D−3)溶液を得た。
【0047】
実施例1〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部、ブチルセロソルブ70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液160部、上記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し2時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下し、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0048】
実施例2〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にして上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液に代り、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−2)溶液を用い製造し、実施例2の水性塗料組成物を得た。
【0049】
実施例3〜4〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にして上記フェノール樹脂(D−1)溶液に代り、前記フェノール樹脂(D−2)または(D−3)を用い製造し、実施例3または4の水性塗料組成物を得た。
【0050】
実施例5〔水性塗料組成物の製造〕
上記実施例1と同様にしてエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部に代り、エピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製) 100部及びPKHH(Union Carbide Chem.社製)60部を用い製造し、実施例5の水性塗料組成物を得た。
【0051】
実施例6〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにAER−6017(旭化成エポキシ(株)製)160部、ブチルセロソルブ80部、n−ブタノール80部を仕込み120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
フラスコ内を120℃に保持した状態でメタクリル酸35部、スチレン5部、エチルアクリレート5部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル3部を混合したアクリルモノマー及び重合開始剤溶液を1時間にて滴下した。滴下終了後120℃にて更に1時間保持した後、60℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール15部を添加した。つづけてイオン交換水592部を1時間かけて滴下した後、前記フェノール樹脂(D−1)溶液20部を加え、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0052】
実施例7〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1009(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、エピコート1256(ジャパンエポキシレジン(株)製)70部、ブチルセロソルブ80部、n−ブタノール80部を仕込み、125℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
フラスコ内を125℃に保持した状態でメタクリル酸1.0部、ハイドロキノン0.005部を仕込み、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液0.2部を仕込み3時間反応させた。
90℃まで冷却した後、その温度を保持しメタクリル酸30部、スチレン5部、エチルアクリレート3部、メチルメタクリレート7部、N,N−アゾビスイソブチロニトリル1部を混合したアクリルモノマー及び重合開始剤溶液を1時間かけて滴下した。更に90℃にて1時間保持した後、60℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール10部を添加した。続けてイオン交換水603部を1時間かけて滴下した後、フェノール樹脂(D−1)溶液10部を加え、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0053】
製造例6〜9〔カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−3〜A1−6)の製造〕
前記製造例1と同様にして表1に示すモノマー混合液から固形分30.0%のアクリル系共重合体(A1−3)〜(A1−6)溶液を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
製造例10〔フェノール樹脂(D−4)溶液の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコに、1)イオン交換水 60部、2)20%水酸化ナトリウム水溶液 60部、3)p−クレゾール 100部、4)37%ホルマリン 300部を仕込み、80℃で3時間反応させたところ褐色透明な溶液を得た。次いで40℃まで冷却してからこの褐色透明溶液に、5)20%塩酸55部を加え攪拌したところ、10分程度で上層が無色透明な水層、下層が褐色の有機層に分離した。上層をデカンテーションにより分離・除去したのち、6)n−ブタノール140を加え、固形分50%のフェノール樹脂(D−4)溶液を得た。
【0056】
比較例1〜4〔水性塗料組成物の製造〕
前記実施例1と同様にしてカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)に代り、上記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−3)〜(A1−6)溶液を用い製造し、比較例1〜4の水性塗料組成物を得た。
【0057】
比較例5〔水性塗料組成物の製造〕
前記実施例1と同様にしてフェノール樹脂(D−1)に代り上記フェノール樹脂(D−4)溶液を用い製造し、比較例5の水性塗料組成物を得た。
【0058】
比較例6〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱・攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液360部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し1時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水435部を1時間かけて徐々に滴下し、固形分22.0%の水性塗料組成物を得た。
【0059】
比較例7〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1010(ジャパンエポキシレジン(株)製)190部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液60部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加し1時間反応させた。その後60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下したが、安定した水性塗料組成物は得られず、経時で樹脂が沈降、分離してしまった。
【0060】
比較例8〔水性塗料組成物の製造〕
窒素ガス置換した4ッ口フラスコにエピコート1256(ジャパンエポキシレジン(株)製)160部、ブチルセロソルブ 70部を仕込み、120℃まで加熱、攪拌しエポキシ樹脂を完全に溶解させた。
その後、80℃まで冷却し、前記カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1−1)溶液160部、前記フェノール樹脂(D−1)溶液24部を仕込んだ。次に80℃を保持した状態においてジメチルアミノエタノール11部を添加したところ樹脂溶液の粘度は著しく増加した、反応30分後、60℃まで冷却したのち、イオン交換水575部を1時間かけて徐々に滴下したが安定した水性塗料組成物は得られず、経時で樹脂が沈降、分離してしまった。
【0061】
(塗膜性能試験パネル作製)
上記実施例1〜7及び比較例1〜6(比較例7及び8は塗料とならなかった為、塗膜性能評価は行えなかった)で得られた水性塗料組成物を焼付乾燥後の塗膜厚が5μmになる様に0.1mm厚のアルミ板上に塗装し、200℃×2分の焼付乾燥を行い試験用パネルを作製した。各試験パネルを用い、以下の内容の塗膜性能評価を行い、表2に試験結果を表記した。
【0062】
(試験項目)
以下に示す方法で(1)フレーバー成分吸着率、(2)水フレーバー、(3)過マンガン酸カリウム消費量、(4)耐蝕性について試験を行った。
(1)アルコール飲料中には種々のフレーバー物質が含まれるが、特に含有量の多さと官能的閾値の低さからエステル化合物が重要と考えられる。本発明でいうアルコール飲料中のエステル化合物としては、「醸造成分一覧(財団法人日本醸造協会編集)」にも記載されるように、酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられ、これらの物質をフレーバー標準物質として使用した。標準物質の吸着率が低い程、フレーバー保持性が優れていると言える。
(2)水フレーバーは内容物に対する味覚変化を評価したものであり、変化が少ない程、缶内面塗料として良好な性能を有していると言える。
(3)過マンガン酸カリウム消費量は一般的な水質検査であるCODに相当する試験法であり、測定値が低い程、衛生性が優れていると言える。
(4)耐蝕性は各種内容物に対する塗膜の腐蝕の有無を評価したものであり、塗膜変化が生じにくい程、缶内面塗料として優れていると言える。メタ重亜硫酸カリウムを含むアルコール飲料に対する腐蝕性を評価するため、より厳しい試験条件を求め、一般に使用されるよりも高濃度(500ppm)のメタ重亜硫酸カリウム及び1%のクエン酸を含む10%エタノール水溶液中を用い試験を行った。
【0063】
(試験方法)
(1)フレーバー成分吸着量;各試験パネル500cm2を、各種フレーバー標準物質(酢酸エチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸2−フェニルエチルの5種類)各5ppmを含む5%エタノール水溶液500ccに浸漬し、密栓したのち50℃−30日経過させた。30日経過後の各試験パネルを取り出し、蒸留水で水洗した後、ジエチルエーテル100ccに塗膜を再浸漬し、試験パネルに吸着した各フレーバー標準物質を抽出し、吸着量をガスクロマトグラフィーにて定量した。各フレーバー物質は浸漬液(500cc)中に0.0025gずつ含まれるが、この量を100%として、塗膜に吸着した量から各フレーバー成分の吸着率を計算し、以下の基準に従って評価した。
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 3%以下・・・・・・・○
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 3〜10%・・・・・・△
5種類のフレーバー物質吸着率平均値 10%以上・・・・・・×
【0064】
(2)水フレーバー;各試験パネル500cm2を、活性炭処理水500ccに浸漬し、密栓したのち125℃−30分の加熱処理を行った。塗装板を浸漬しないで同様の処理を行った活性炭処理水を標準として、以下の基準にしたがって各処理水の味覚を評価した。
味覚に変化なし・・・・・・・・○
かすかに味覚に変化あり・・・・△
味覚に変化あり・・・・・・・・×
【0065】
(3)過マンガン酸カリウム消費量;各試験パネル500cm2を、蒸留水500ccに浸漬し、密栓したのち125℃−30分の加熱処理を行った。各処理水の過マンガン酸カリウム消費量を測定し、以下の基準に従って評価した。
過マンガン酸カリウム消費量 3ppm以下・・・・・○
過マンガン酸カリウム消費量 3〜6ppm・・・・・△
過マンガン酸カリウム消費量 6ppm以上・・・・・×
【0066】
(4)耐蝕性;各試験パネルを、メタ重亜硫酸カリウム500ppm及びクエン酸1%を含む10%エタノール水溶液に浸漬し、50℃−1カ月経過させた後の塗膜の表面状態を観察し、以下の基準に従って評価した。
塗膜表面状態変化無し・・・・・・・・・○
塗膜表面に僅かな曇りが生じる・・・・・△
塗膜表面がマット状になる・・・・・・・×
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明によればアルコール飲料におけるフレーバー成分の吸着量が少なく、極めて風味保持性に優れ、メタ重亜硫酸カリウムを含む非常に腐蝕性の強い内容物に対しても良く耐性を有する、フレーバーや衛生性に優れた塗膜を形成し得る水性塗料組成物及び塗料組成物を含む塗料で内面を被覆したアルコール飲料用缶が得られる。
Claims (6)
- 自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって、
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で共重合してなるカルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)と、
エポキシ当量1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)とを、
カルボキシル基含有アクリル系共重合体(A1)/エポキシ樹脂(A2)=30/70〜10/90の重量比で、エステル化反応せしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。 - 自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)が、
アクリル酸もしくはメタクリル酸/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)の組成で含むラジカル重合性モノマー(b1)を、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)に、フリーラジカル発生剤を用いて、(b1)/(A2)=30/70〜10/90(重量比)の条件下にグラフトせしめてなる自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(B)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。 - 自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)及びフェノール樹脂(D)をアミンもしくはアンモニアの存在下に水性媒体中に分散して含む水性塗料組成物であって
前記自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(C)が、
エポキシ当量が1500〜5000のビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)を必須成分として含むエポキシ樹脂(A2)の一部にアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)を反応させてなる(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂(c2)と、アクリル酸もしくはメタクリル酸(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートを含むラジカル重合性モノマー(c4)とを共重合してなる共重合体(C)であって、
アクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)+(c3)/スチレン/メチルメタクリレート/エチルアクリレートが66〜80/1〜20/1〜20/1〜20(重量%)であり、
該共重合体(C)の構成に供されたアクリル酸もしくはメタクリル酸(c1)、ラジカル重合性モノマー(c4)、エポキシ樹脂(A2)が、[(c1)+(c4)]/(A2)=30/70〜10/90(重量比)であり、
フェノール樹脂(D)がビスフェノールAまたは/およびビスフェノールFをモノマーとするレゾール型フェノール樹脂であり、
自己乳化性ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)/フェノール樹脂(D)=90/10〜99/1(重量比)であることを特徴とする水性塗料組成物。 - エポキシ樹脂(A2)が、エポキシ当量が6000以上のビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)を含む請求項1ないし3いずれか記載の水性塗料組成物。
- ビスフェノール型低分子量エポキシ樹脂(A2−1)及びビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂(A2−2)の重量比が、(A2−1)/(A2−2)=25/75〜95/5である請求項4記載の水性塗料組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか記載の水性塗料組成物を含む塗料で内面を被覆してなることを特徴とするアルコール飲料用缶。
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-
2002
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