JP2004153226A - 半導体チップの製造方法及びダイシング用粘着テープ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体ウェーハ1にダイシング用粘着テープ2を貼付し、ダイシングし、個々の半導体チップ1Aに分割した後に、光などの刺激を付与することにより、ダイシング用粘着テープ2の1つの半導体チップ1Aが貼付されている部分に、粘着力が相対的に高い第1の領域6Aと、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱い、あるいは粘着力を有しない第2の領域6Bとを形成し、半導体チップ1Aをダイシング用粘着テープ2から剥離する、半導体チップの製造方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェーハをダイシングすることにより多数の半導体チップを製造する方法に関し、より詳細には、ダイシング用粘着テープに半導体ウェーハが貼付された状態でダイシングが行われ、次に半導体チップが取り出される半導体チップの製造方法及び該ダイシング用粘着テープに関する。
【0002】
【従来の技術】
ICやLSIなどの半導体チップの製造に際しては、表面に多数の半導体チップ用回路が形成された半導体ウェーハが用意される。次に、半導体ウェーハの裏面が研磨されて所定の厚みとされた後に、半導体ウェーハがダイシング用粘着テープに貼付される。次に、ダイシング用粘着テープに貼付された半導体ウェーハが縦方向及び横方向にダイシングされ、多数の半導体チップに分割される。しかる後、ダイシング用粘着テープから半導体チップが剥離され、取り出される。このような半導体チップ製造方法の一例は、例えば下記の特許文献1に開示されている。この先行技術に記載の製造方法では、ダイシングに際して半導体ウェーハの位置ずれを防止するために、ダイシング用粘着テープに半導体ウェーハがダイシング用粘着テープの粘着力により粘着されており、かつダイシング後に光を照射することによりダイシング用粘着テープの粘着剤層の粘着力が低められ、それによって、半導体チップがダイシング用粘着テープから容易に剥離される。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−78793号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先行技術に記載の方法のように、ダイシング後に光を照射した場合、全ての半導体チップの粘着力が一様に低下し、1つの半導体チップを吸着パッドなどにより取り出す際の振動や衝撃等により、隣接する半導体チップの位置ずれを生じることがあった。また、半導体チップの取り出し不良が生じることがあった。
【0005】
他方、上記ダイシング用粘着テープに半導体ウェーハを貼付し、ダイシングを行う場合、ダイシング用粘着テープの粘着力がある程度高いことが必要である。粘着力が十分に高くなければ、ダイシングに際して半導体ウェーハの位置ずれが生じ、半導体ウェーハを高精度にダイシングすることができなくなる。
【0006】
しかしながら、光の照射により粘着力が低下する粘着剤を用いた上記先行技術に記載の方法では、上記粘着力を高めた場合、ダイシング後に光を照射しても、粘着力が十分低くならないことがあった。そのため、半導体チップをダイシング用粘着テープから剥離するために、突き上げピンや、吸着パッドを用いて半導体チップを取り出す際に、半導体チップの割れや欠けが生じることがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、ダイシング後に半導体チップを取り出すに際し、ダイシング用粘着テープによる粘着力が十分に低められているだけでなく、ダイシング後の半導体チップの位置ずれ及びダイシングの際の半導体ウェーハの位置ずれが生じ難い、半導体チップの製造方法、並びに該製造方法に用いられるダイシング用粘着テープを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の発明は、半導体ウェーハから多数の半導体チップを製造方法する方法であって、半導体ウェーハを用意する工程と、前記半導体ウェーハにダイシング用粘着テープを貼付する工程と、前記ダイシング用粘着テープに貼付された半導体ウェーハをダイシングし、個々の半導体チップに分割する工程と、刺激を付与することにより、前記ダイシング用粘着テープの1つの半導体チップが貼付されている部分に、粘着力が相対的に高い第1の領域と、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱い、あるいは粘着力を有しない第2の領域とを形成する工程と、前記半導体チップを前記ダイシング用粘着テープから剥離する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
第1の発明の特定の局面では、前記ダイシング用粘着テープを構成している粘着剤が、刺激の付与により硬化し粘着力が低下する粘着剤により構成されており、前記第2の領域のみに前記刺激が付与される。すなわち、第2の領域のみに刺激を付与することにより、相対的に粘着力が高い第1の領域と、相対的に粘着力が弱い、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが形成される。
【0010】
好ましくは、上記刺激として光が用いられ、刺激を付与する工程において、第1の領域に光が照射されず、第2の領域のみに光が照射される。
第1の発明のさらに他の特定の局面では、前記ダイシング用粘着テープが表面に凹凸が付与されている基材を有し、該基材表面の凹凸の凸部を超えるように硬化型粘着剤層が形成されており、該粘着剤層が、刺激の付与により該粘着剤層を硬化させた場合に、硬化収縮により凸部間の凹部において粘着剤層が半導体チップから隔てられる硬化型粘着剤により構成されており、前記凸部が第1の領域を、前記凸部間の凹部が前記第2の領域を構成している。この場合には、硬化収縮により、粘着力が相対的に高い第1の領域と、粘着力が相対的に弱い、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが構成される。
【0011】
硬化収縮により第1,第2の領域が構成される場合の刺激については、特に限定されず、例えば光や熱が用いられる。
第1の発明の別の特定の局面では、前記ダイシング用粘着テープの粘着剤が、刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含む。この場合には、刺激の付与により、ダイシング用粘着テープと半導体チップとの界面にガスが発生し、ダイシング用粘着テープに対する半導体チップの粘着力をより一層低減することができる。
【0012】
本願の第2の発明は、半導体ウェーハに貼付され、半導体ウェーハをダイシングした後に半導体チップを剥離するのに用いられるダイシング用粘着テープであって、刺激の付与により、その半導体チップが貼付される部分において、粘着力が相対的に高い第1の領域と、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱く、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが形成されるように構成されている。
【0013】
第2の発明の特定の局面では、少なくとも第2の領域が、刺激により粘着力が低下する硬化型粘着剤により構成されている。
第2の発明において、好ましくは、上記刺激として光が用いられ、この場合、第1の領域に光が照射されないように第1の領域への光の照射を阻害する遮光部が設けられる。
【0014】
第2の発明の別の特定の局面では、表面に凹凸を有する基材を備え、基材の凹凸が設けられている表面に前記凹凸の凸部を超える厚みに硬化型粘着剤層が形成されており、該粘着剤層が前記刺激の付与により硬化された際の硬化収縮により凸部間の凹部において粘着剤が半導体チップから隔てられるように構成されており、それによって凸部が第1の領域を、凸部間の凹部が前記第2の領域を構成する。
【0015】
第2の発明においても、上記粘着剤は、好ましくは、刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含み、その場合、半導体チップとダイシング用粘着テープとの間にガスが発生することにより、ダイシング用粘着テープの半導体チップに対する粘着力がより一層低められる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
本発明の第1の実施形態では、図2に示す半導体ウェーハ1が用いられる。半導体ウェーハ1では、表面1a上に、ストリートによって区画された各領域に個々の半導体チップを構成するための回路が形成されている。なお、図2では、具体的な回路の図示は省略していることを指摘しておく。
【0018】
半導体ウェーハ1は、略円盤状の形状を有する。半導体ウェーハ1では、表面1aに上記回路を構成した後に、裏面1b側が研磨され、半導体ウェーハ1が所定の厚みとされる。
【0019】
本実施形態では、このようにして所定の厚みとされた半導体ウェーハ1が先ず用意される。上記半導体ウェーハは、例えばシリコンなどの半導体材料により構成されており、厚みは、通常、研磨後の状態で数十μm〜150μm程度である。次に、半導体ウェーハ1の裏面1bに、図2に示すようにダイシング用粘着テープ2が貼付される。
【0020】
図1(a)は、上記のようにしてダイシング用粘着テープ2に半導体ウェーハ1が貼り合わされた構造を示す模式的断面図である。ダイシング用粘着テープ2は、図示のように、基材3の片面に粘着剤層4を形成することにより構成されている。
【0021】
基材3としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムが好適に用いられる。特に、後述する刺激が光の場合には、透光性の樹脂フィルムが基材として好ましく用いられる。
【0022】
上記粘着剤層4は、本実施形態では、光の照射により弾性率が上昇し、粘着力が低下する光硬化型粘着剤により構成されている。このような粘着剤としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/またはメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤が挙げられる。
【0023】
このような光硬化型粘着剤は、光の照射により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。
【0024】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)を予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物)と反応させることにより得ることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
【0025】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/またはメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、さらに必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20〜200万程度である。
【0026】
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0027】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0028】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、官能基含有(メタ)アクリルポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0029】
上記多官能オリゴマーまたはモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱または光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5000以下であり、かつ、その分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数の下限が2個、上限が20個である。このようなより好ましい多官能オリゴマーまたはモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートまたは上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマーまたはモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、べンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記硬化型粘着剤には、以上の成分の他、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑性、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0032】
好ましくは、上記粘着剤層4を構成する粘着剤として、光や熱などの刺激の付与によりガスを発生させるガス発生剤が含有されているものが用いられる。この場合には、後述する光の照射により、第2の領域の粘着力が硬化により低下すると共に、刺激の付与により発生したガスが半導体チップとダイシング用粘着テープとの界面に移行し、第2の領域の粘着力がより一層低下する。従って、半導体チップを無理なくダイシング用粘着テープから剥離することができる。
【0033】
上記ガス発生剤としては特に限定はされないが、例えばアゾ化合物、アジド化合物が好適に用いられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2′−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2′−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2イミダゾイリン−2−イル]プロパン]ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン、2,2′−アゾビス[2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン]、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2′−アゾビスイソブチレート、4,4′−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0034】
これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
また、アジド化合物としては、例えば3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0035】
上記ガス発生剤のうち、アジド化合物は、衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出する。従って、取扱いが困難であるという難点がある。さらにアジド化合物は、一端分解が始まると連鎖反応を起こし、爆発的に窒素ガスを放出し、その制御が容易でない。従って、爆発的に発生した窒素ガスにより半導体ウェーハが損傷するおそれがある。従って、アジド化合物を用いる場合、その使用量を少なくすることが望ましい。
【0036】
これに対して、アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり、衝撃によって気体を発生しない。従って、取扱いが極めて容易である。また、アゾ化合物は連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもない。従って、半導体ウェーハの損傷が生じ難い。加えて、光の照射を中断した場合には、気体の発生も中断させることがある。従って、アゾ化合物を用いた場合には、用途に応じて接着性の制御が容易に行われ得る。よって、ガス発生剤としては、アゾ化合物を用いることが好ましい。
【0037】
粘着剤100重量部当たり、ガス発生剤は5重量部〜50重量部の割合で含有されることが望ましい。5重量部を下回る場合には、ガス発生量が不足し、所望の剥離性が得られないことがある。また、50重量部を上回る場合には、溶解性が悪化し、ブリード等の不具合が発生することがある。
【0038】
なお、ガス発生剤は、粘着剤層4に分散されるが、その場合には、粘着剤層4全体が発泡体となり、柔らかくなりすぎるおそれがある。従って、好ましくは、少なくとも第2の領域において、半導体ウェーハに粘着される表層部分、すなわち表面から1〜20μm程度の厚みの部分にガス発生剤を偏在させておくことが望ましく、より望ましくは、半導体ウェーハに貼り合わされる部分のみにガス発生剤を含有させることが好ましい。
【0039】
少なくとも第2の領域を構成している粘着剤の半導体ウェーハに粘着される表層部分にガス発生剤を偏在させておくことにより、ダイシング後に光を照射した場合、ガス発生剤から発生したガスが第の領域の粘着剤と半導体チップとの接着界面に確実に移行する。従って、両者の接着面積が減少し、なおかつ気体が半導体チップを第2の領域において粘着面から剥離するように作用し、それによって半導体チップと第2の領域を構成している粘着剤との粘着力が急激に低下する。
【0040】
なお、上記表層部分にガス発生剤を含有させた態様とは、粘着剤の表面にガス発生剤が均一に付着している態様や、粘着剤の表面に付着したガス発生剤が粘着剤と相溶し、粘着剤に吸収されている態様も含むものとする。
【0041】
表層部分にのみガス発生剤を含有させる方法としては、例えば、粘着剤層上に1〜20μm程度の厚みでガス発生剤を含有する粘着剤を塗工する方法や、予め作製された粘着剤層表面にガス発生剤を含有する揮発性液体不透過性フィルムを塗布あるいはスプレーなどにより形成する方法などが挙げられる。
【0042】
上記表層部分の厚みは、粘着剤層全体の厚みによっても異なるが、粘着剤の表面から20μmまでの深さ部分であることが好ましい。
なお、粘着剤層4の表面に気体発生剤を付着させる場合には、粘着剤と相溶性に優れた気体発生剤を付着させることが好ましい。すなわち、粘着剤の表面に気体発生剤を多量に付着させると粘着力が低くなるが、気体発生剤が粘着剤と相溶する場合は、付着した気体発生剤は粘着剤層に吸収され粘着力が低下することがなく、気体発生剤が拡散することにより被着体との接触面全体に対してより均一に気体を発生させることができる。また、気体発生剤を含有する表面部分とそれ以外とは、異なる組成の樹脂成分からなることが好ましく、なかでも、異なる極性を有する樹脂成分からなることがより好ましい。これにより、表面部分の気体発生剤がそれ以外に移行することを防止するか、移行しにくくすることができる。
【0043】
本実施形態では、ダイシング用粘着テープ2に半導体ウェーハ1が貼付された場合、粘着剤層4により半導体ウェーハ1の裏面1bの全体が強く貼り合わされる。従って、その状態で、公知の方法に従って、半導体ウェーハ1を高精度にダイシングすることができる。図1(a)の線Xはダイシングにより切断された部分を示す。ダイシングは、公知の方法により行われ、半導体ウェーハ1が、図1(b)に示すように、多数の半導体チップ1Aに分割される。
【0044】
次に、本実施形態では、ダイシング用粘着テープ2の基材3の粘着剤層4が設けられている側とは反対側の面にマスク5が配置される。マスク5は、複数の開口部5aを有する。開口部5aは、1つの半導体チップ1Aがダイシング用粘着テープ2に貼付されている領域の少なくとも一部に位置するように設けられている。なお、図1(b)では、1つの半導体チップ1Aが貼付されている部分において、1つの開口部5aが配置されているが、1つの半導体チップ1Aが貼付されている領域において、複数の開口部5aが配置されていてもよい。
【0045】
上記マスク5は、遮光性部材からなる。このような遮光性部材としては、金属あるいは着色された樹脂などの適宜の材料を用いることができる。
マスク5を配置した状態で、矢印Aで示すように光を照射する。この光は、上記粘着剤層4を硬化させる波長の光である。すなわち、光が粘着剤層4を硬化させる刺激として用いられる。
【0046】
上記光の照射により、開口部5aと重なり合っている粘着剤層部分が硬化し、粘着力が低下する。従って、開口部5aに重なり合っていない領域には光が照射されないため、光が照射されない領域においては当初の粘着力が維持され、第1の領域6Aが構成される。他方、残りの領域、すなわち開口部5aに重なり合っている領域では粘着剤層に光が照射され、硬化し、弾性率が高められる。従って、開口部5aに重なり合っている領域が本発明における第2の領域6Bを構成する。
【0047】
図3は、1つの半導体チップが貼付されている粘着剤層部分の模式的平面図である。すなわち、第1の領域6Aの周囲の領域が第2の領域6Bを構成している。マスク5の開口部5aは第2の領域6Bを構成するために設けられている。
【0048】
この場合、好ましくは、上述したように、粘着剤層4にガス発生剤が含有されている。ガス発生剤が含有されている場合には、ガスを発生させるための刺激を付与することにより、図4において矢印Bで示すようにガスが第2の領域6Bと半導体チップ1Aとの界面に移行し、第2の領域6Bの半導体チップに対する粘着力がより一層急激に低められる。
【0049】
なお、本実施形態では、ガス発生剤を分解するための刺激として、光が用いられる。すなわち、上述した矢印Aで示した光の照射により、粘着剤層4が硬化するだけでなく、上記ガス発生剤が分解され、ガスが発生するように構成されている。もっとも、ガス発生剤を分解するための刺激については、上述した粘着剤層4を硬化させるための光と異なる光を用いてもよく、あるいは光以外の熱などを用いてもよい。すなわち、ガス発生剤を分解するための刺激については、粘着剤層4を硬化させる刺激と同一であってもよく、異なっていてもよい。もっとも、同一の刺激を用いることにより、一度の工程で粘着剤層4の硬化及びガスの発生の双方を果たし得る。
【0050】
本実施形態では、上記のように、光の照射により、粘着剤層4が第2の領域6Bにおいて硬化し、第2の領域における半導体チップ1Aを粘着する力が低下する。従って、半導体チップ1Aをダイシング用粘着テープ2から吸着パッドなどを用いて容易に剥離することができる。しかも、第1の領域6Bでは、当初の粘着力が維持されているため、吸着パッドによる取り出しに際し、半導体チップ1Aが位置ずれを生じ難い。特に、全ての半導体チップ1Aが貼付されている領域にマスク5を介して一度に光を照射した場合には、全ての半導体チップが貼付されている部分において第2の領域の粘着力が低下するが、この場合においても、全ての半導体チップ1Aが第1の領域6Aにおいてダイシング用粘着テープ2に確実に粘着されている。従って、半導体チップ1Aを取り出した際、その衝撃や振動により隣接する半導体チップ1Aの位置ずれが生じ難い。
【0051】
よって、半導体チップ1Aをダイシング後に吸着パッドなどを用いて安定に取り出すことができ、取り出し不良を確実に抑制することができる。
なお、光の照射は、取り出そうとする半導体チップ毎に行ってもよい。
【0052】
上述した実施形態では、マスク5を用いることにより、第1,第2の領域6A,6Bを構成したが、マスク5を用いる方法に代えて、基材3に予め遮光部を設けておいてもよい。すなわち、図5に模式的断面図で示すように、ダイシング用粘着テープ2の基材3の粘着剤層4が設けられている側とは反対側の面に、遮光部3aを形成しておいてもよい。遮光部3aは、上述したマスク5の開口部5a間の領域に相当する部分に設けられる。基材3に遮光部3aを設けることにより、光の照射により遮光部3aの上方の粘着剤層領域が第1の領域を構成し、遮光部3aを設けられていない部分の上方の粘着剤層領域が第2の領域を構成することになる。
【0053】
上記遮光部3aは、基材3の片面に遮光性材料をコーティングすることにより形成することができる。あるいは、基材3の片面に遮光性部材を貼り付けることにより遮光部3aを構成してもよい。また、基材3の一部を遮光性材料で構成することにより遮光部3aを構成してもよい。
【0054】
基材3に遮光部3aを設ける方法の場合、予め1つの半導体チップの平面形状よりも遥かに小さい多数の遮光部をランダムに形成しておいてもよい。その場合には、様々な形状及び寸法の半導体チップに容易に適用することができる。すなわち、半導体チップの寸法に比べて小さい多数の遮光部3aをランダムに設けておけば、ダイシングにより得られた半導体チップが貼付されている領域の平面形状や寸法の如何にかかわらず、1つの半導体チップが貼付されている粘着剤層部分の一部に、確実に第1の領域を形成することができる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様にして、半導体ウェーハ1の裏面にダイシング用粘着テープ2が貼付される。第2の実施形態におけるダイシング用粘着テープ2を図6(a)に略図的に示す。ダイシング用粘着テープ2は、基材13と、基材13の一方面に形成された粘着剤層14と、他方面に形成された粘着剤層15とを有する。
【0056】
基材13を構成する材料としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムが好適に用いられる。特に、硬化型粘着剤を硬化させるための刺激及び/またはガス発生剤からガスを発生させるための刺激が光である場合には、透光性の樹脂フィルムが基材として好ましく用いられる。
【0057】
基材13の上面13aには、全面に凹凸が付与されている。すなわち、凸部13bが凹部13cを介して隔てられて分散されている。上面13aにおいては、粘着剤層14は、凸部13bを越える厚みに形成されており、かつ粘着剤層14の上面は平坦とされている。粘着剤を溶剤に溶かして塗工したり溶融塗工することにより粘着剤層14の上面は容易に平坦化される。
【0058】
従って、半導体ウェーハ1を貼り合わせた場合、半導体ウェーハ1の裏面1bの全面が粘着剤層14に貼付される。
粘着剤層14を構成する粘着剤は刺激により反応して硬化する反応硬化型粘着剤である。ここで、粘着剤層14を硬化させる刺激としては、特に限定されず、光や熱など任意の刺激が挙げられる。
【0059】
第2の実施形態では、上記のようにして、まず、半導体ウェーハ1がダイシング用粘着テープ2の粘着剤層14に貼り合わされ、その状態で粘着剤層5を用いてダイシングステージ上に貼り付けられる。しかる後、第1の実施形態と同様に公知の方法に従ってダイシングが行われる。
【0060】
ダイシングに際しては、粘着剤層14の粘着力によりダイシング用粘着テープ2に半導体ウェーハ1が確実に固定されているため、高精度にダイシングが行われる。
【0061】
次に、光や熱などの刺激を付与することにより、粘着剤層14が、架橋・硬化し、硬化収縮を起こす。そのため、図6(b)に示すように、硬化収縮後には、凹部13cにおいて粘着剤層14の上面が半導体チップ1Aの下面から隔てられる。粘着剤層14は、このように硬化収縮する厚みに形成されている。硬化型粘着剤は、多かれ少なかれ硬化により収縮するが、本実施形態では、硬化後に凹部13cにおいて半導体チップ1Aから分離されるように、硬化型粘着剤の収縮量に応じて、粘着剤層14の厚みが設定されている。なお、粘着剤層4の図6(a)における凸部13bと粘着剤層14の上面14aとの間の厚みは、硬化収縮量に応じて定められ、硬化型粘着剤の種類によって異なるため、一義的には定め得ない。
【0062】
上記硬化型粘着剤としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/またはメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/またはメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマーまたはモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0063】
このような光硬化型粘着剤または熱硬化型粘着剤等の硬化型粘着剤は、光の照射または加熱により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。なお、上記重合性ポリマー、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマー、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物及び光重合開始剤などについては、第1の実施形態において示したものを用いることができるため、第2の実施形態の説明においても援用することとする。
【0064】
なお、上記硬化型粘着剤として、熱硬化型粘着剤を用いる場合、上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−tブチルパーオキサイド等が挙げられる。中でも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
また、上記粘着剤層14においては、第1の実施形態の場合と同様に、粘着剤層14にガス発生剤が含有されていてもよい。このガス発生剤及びガス発生剤を分解してガスを発生させるための刺激についても、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態の説明を援用することとする。
【0066】
図6(b)に戻り、基材13の半導体ウェーハ1が貼付される側とは反対側の面には、粘着剤層15が形成されている。粘着剤層15は、ダイシング用粘着テープ2をダイシング用ステージに貼り合わせるために設けられている。粘着剤層15は必ずしも設けずともよい。すなわち、ダイシング用粘着テープ2をステージに固定し得る限り、他の手段を用いてもよい。粘着剤層15は、ダイシング用ステージにダイシング用粘着テープ2を貼付するために設けられているため、十分な接着強度を有する適宜の粘着剤で構成され得る。このような粘着剤としては、アクリル系粘着剤などの一般的な粘着剤を用いることができる。
【0067】
第2の実施形態では、上記のようにダイシング後に光や熱などの刺激を付与することにより、粘着剤層14が硬化し、収縮する。前述したように、硬化収縮により凸部3b間では、粘着剤が後退するように粘着剤層14の塗布厚みが設定されていたため、硬化収縮により凹部13cでは粘着剤層14が半導体チップ1Aから分離される。従って、硬化収縮後には、半導体チップ1Aと粘着剤層14との接着面積が低下する。言い換えれば、凹部13cでは、粘着剤層が半導体チップ1Aから隔てられるので、半導体チップ1Aはその下面において部分的にダイシング用粘着テープ2に接着されていることになる。従って、半導体チップ1Aを吸着パッドなどを用いて容易にダイシング用粘着テープ2から剥離することができる。
【0068】
すなわち、第2の実施形態では、凸部13b及びその近傍においてのみ半導体チップ1Aが粘着剤層14に貼付された状態となるため、凸部13b及びその近傍部分が第1の領域を構成し、硬化収縮により半導体チップ1Aから分離された粘着剤層部分が第2の領域を構成することになる。すなわち、凸部13b,13b間の凹部13cが本発明の第2の領域を構成することになる。従って、第1の実施形態の場合と同様に、半導体チップ1Aをダイシング用粘着テープ2から容易に剥離することができるだけでなく、第1の領域においては半導体チップ1Aが粘着剤層14に粘着されているため、取り出しに際しての振動や衝撃により半導体チップ1Aの位置ずれが生じることがない。
【0069】
さらに、好ましくは、粘着剤層14が刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含んでいる場合、ガスを発生させるための刺激を付与すれば、粘着剤層14内において生じたガスが粘着剤層14と半導体チップ1Aとの界面に移行し、界面における粘着力が大幅に低下する。従って、半導体チップ1Aをより一層無理なく剥離することができる。
【0070】
なお、図6(b)では、1つの半導体チップ1Aの下面に1つの凸部13bが位置するように凸部13bが設けられているが、1つの半導体チップ1Aの下面に複数の凸部が最終的に接触するように複数の凸部が基材13の上面に形成されていてもよい。また、凸部の平面形状についても特に限定されない。また、凸部の上部が平坦である必要は必ずしもなく、円錐状あるいは角錐状の凸部が形成されていてもよい。
【0071】
基材13に上記のような凸部13bや凹部13cを形成する方法についても特に限定されず、上記凸部及び凹部を有するように基材13を構成する樹脂フィルムを成形したり、あるいは平坦な樹脂フィルムを得た後に表面を荒らすことにより凹部や凸部を形成してもよい。
【0072】
【発明の効果】
第1の発明の半導体チップの製造方法によれば、ダイシング用粘着テープに貼付された半導体ウェーハをダイシングし、個々の半導体チップに分割した後に、刺激を付与することにより、1つの半導体チップが貼付されている部分において、粘着力が相対的に高い第1の領域と、粘着力が相対的に弱く、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが構成される。従って、個々の半導体チップをダイシング用粘着テープから容易に剥離することができる。加えて、第1の領域では半導体チップがダイシング用粘着テープに十分な粘着力で貼付されているため、半導体チップの取り出しに際しての衝撃や振動により半導体チップの位置ずれが生じ難い。従って、半導体チップの取り出し不良の発生を抑制することができる。
【0073】
また、ダイシング時には、半導体ウェーハが上記粘着剤層によりダイシング用粘着テープに強固に粘着されているため、ダイシングに際しての半導体ウェーハの位置ずれも生じ難い。
【0074】
第1の発明において、粘着剤が刺激の付与により硬化し、粘着力が低下する粘着剤により構成されており、第2の領域のみに刺激が付与される場合には、刺激として光や熱などを用いることにより、容易に第1,第2の領域を構成することができる。特に、刺激が光であり、刺激を付与する工程において、第1の領域に光を照射せず、第2の領域のみに光を照射する場合には、半導体チップの変質等を招くことなくかつ容易に第1,第2の領域を構成することができる。
【0075】
ダイシング用粘着テープが、表面に凹凸が付与されている基材を有し、該基材表面の凹凸の凸部を超えるように粘着剤層が形成されており、刺激の付与により粘着剤を硬化させた場合に、硬化収縮により粘着剤層が凹部において半導体チップから分離される硬化型粘着剤により構成されている場合には、凸部が第1の領域を、凹部が第2の領域を構成することになる。この場合においても、半導体チップが凹部において粘着剤層から分離されるため、半導体チップをダイシング用粘着テープから容易に剥離することができる。また、凸部上においては半導体チップが粘着されているため、取り出しに際しての振動や衝撃により半導体チップの位置ずれが生じ難い。
【0076】
第1の発明において、ダイシング用粘着テープの粘着剤が、刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含む場合には、ガスが第2の領域において粘着剤層表面に移行するため、半導体チップをダイシング用粘着テープからより一層容易に剥離することができる。
【0077】
第2の発明に係るダイシング用粘着テープは、刺激の付与により、半導体チップが貼付される部分において、粘着力が相対的に高い第1の領域と、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱く、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが形成されるように構成されているため、第1の発明に係る半導体チップの製造方法に好適に用いることができる。すなわち、半導体チップの製造に際し、ダイシング用粘着テープから半導体チップを容易に剥離することができると共に、剥離に際しての半導体チップの位置ずれを効果的に抑制することができる。また、ダイシング時には、半導体ウェーハがダイシング用粘着テープに確実に粘着されるため、ダイシングに際しての半導体ウェーハの位置ずれも確実に抑制することができる。
【0078】
第2の発明において、少なくとも第2の領域が、刺激により粘着力が低下する粘着剤により構成されている場合には、刺激の付与により、容易に第1,第2の領域を構成することができる。特に、刺激が光であり、第1の領域に光が照射されないように、第1の領域への光の照射を阻害する遮光部が設けられている場合には、光の照射により、第1,第2の領域を容易に形成することができる。
【0079】
また、表面に凹凸を有する基材の該表面に凸部を超える厚みに粘着剤層が形成されており、該粘着剤層が刺激の付与により硬化された際の硬化収縮により凹部において半導体チップから隔てられるように粘着剤が後退するように構成されている場合には、凸部が第1の領域を、凸部間の凹部が第2の領域を構成することになる。従って、刺激の付与により、容易に第1,第2の領域を形成することができる。第2の発明においても、粘着剤が刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含む場合には、半導体チップのダイシング用粘着テープからの剥離をより一層容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態において、半導体ウェーハをダイシング用粘着テープに貼付する工程を説明するための斜視図。
【図2】(a)及び(b)は、第1の実施形態においてダイシング用粘着テープに半導体ウェーハを貼り合わせた状態を示す模式的断面図及びダイシング後に光を照射することにより第1,第2の領域を形成する工程を説明するための模式的断面図。
【図3】第1,第2の領域の平面形状を説明するための模式的平面図。
【図4】第1の実施形態において、第1の領域にガス発生剤が含有されている場合の発生したガスの作用を説明するための模式的断面図。
【図5】第1の実施形態の変形例において、基材に遮光部が設けられている構造を説明するための模式的断面図。
【図6】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態において、ダイシング用粘着テープに半導体ウェーハを貼り合わせた状態、並びにダイシング後に刺激を与えて粘着剤を硬化収縮させた状態を示す各部分切欠断面図。
【符号の説明】
1…半導体ウェーハ
1A…半導体チップ
2…ダイシング用粘着テープ
3…基材
3a…遮光部
4…粘着剤層
5…マスク
6A…第1の領域
6B…第2の領域
13…基材
13a…上面
13b…凸部
13c…凹部
14…粘着剤層
14a…上面
15…粘着剤層
Claims (12)
- 半導体ウェーハから多数の半導体チップを製造方法する方法であって、
半導体ウェーハを用意する工程と、
前記半導体ウェーハにダイシング用粘着テープを貼付する工程と、
前記ダイシング用粘着テープに貼付された半導体ウェーハをダイシングし、個々の半導体チップに分割する工程と、
刺激を付与することにより、前記ダイシング用粘着テープの1つの半導体チップが貼付されている部分に、粘着力が相対的に高い第1の領域と、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱い、あるいは粘着力を有しない第2の領域とを形成する工程と、
前記半導体チップを前記ダイシング用粘着テープから剥離する工程とを備える半導体チップの製造方法。 - 前記ダイシング用粘着テープを構成している粘着剤が、刺激の付与により硬化し粘着力が低下する粘着剤により構成されており、前記第2の領域のみに前記刺激が付与される、請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
- 前記刺激が光であり、前記刺激を付与する工程において、第1の領域に光を照射せず、第2の領域のみに光を照射する、請求項2に記載の半導体チップの製造方法。
- 前記ダイシング用粘着テープが表面に凹凸が付与されている基材を有し、該基材表面の凹凸の凸部を超えるように硬化型粘着剤層が形成されており、該粘着剤層が、刺激の付与により該粘着剤層を硬化させた場合に、硬化収縮により粘着剤層が凸部間の凹部において半導体チップから隔てられる硬化型粘着剤により構成されており、前記凸部が第1の領域を、前記凸部間の凹部が前記第2の領域を構成している、請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
- 前記刺激が光であり、前記硬化型粘着剤が光硬化型粘着剤である請求項4に記載の半導体チップの製造方法。
- 前記刺激が熱であり、前記硬化型粘着剤が熱硬化型粘着剤である、請求項4に記載の半導体チップの製造方法。
- 前記ダイシング用粘着テープの粘着剤が、刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体チップの製造方法。
- 半導体ウェーハに貼付され、半導体ウェーハをダイシングした後に半導体チップを剥離するのに用いられるダイシング用粘着テープであって、刺激の付与により、その半導体チップが貼付される部分において、粘着力が相対的に高い第1の領域と、残りの領域であって、粘着力が相対的に弱く、あるいは粘着力を有しない第2の領域とが形成されるように構成されていることを特徴とするダイシング用粘着テープ。
- 少なくとも第2の領域が、刺激により粘着力が低下する硬化型粘着剤により構成されている、請求項8に記載のダイシング用粘着テープ。
- 前記刺激が光であり、前記第1の領域に光が照射されないように第1の領域への光の照射を阻害する遮光部が設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のダイシング用粘着テープ。
- 表面に凹凸を有する基材を備え、基材の凹凸が設けられている表面に前記凹凸の凸部を超える厚みに硬化型粘着剤層が形成されており、該粘着剤層が前記刺激の付与により硬化された際の硬化収縮により凸部間の凹部において半導体チップから隔てられるように構成されており、それによって凸部が第1の領域を、凸部間の凹部が前記第2の領域を構成する、請求項8に記載のダイシング用粘着テープ。
- 前記粘着剤が刺激によりガスを発生させるガス発生剤を含む、請求項8〜11のいずれかに記載のダイシング用粘着テープ。
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