JP2004186280A - ウエハ貼着用粘着シート及び半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上に形成された刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなるウエハ貼着用粘着シート。
【選択図】 なし
【解決手段】基材と、前記基材上に形成された刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなるウエハ貼着用粘着シート。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウエハは大径の状態で製造され、このウエハは素子小片(ICチップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移されている。この際、半導体ウエハはあらかじめ粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される。
【0003】
このような半導体ウエハのダイシング工程からピックアップ工程に至る工程で用いられる粘着シートとしては、ダイシング工程から乾燥工程まではウエハチップに対して充分な接着力を有しており、ピックアップ時にはウエハチップに粘着剤が付着しない程度の接着力を有しているものが望まれている。
【0004】
ピックアップされたチップは、ダイボンディング工程において、エポキシ接着剤等のダイ接着用接着剤を介してリードフレーム等の支持部材に接着され、半導体装置が製造されている。
【0005】
しかしながら、チップが非常に小さな場合には、適量の接着剤を塗布することが困難であり、ICチップから接着剤がはみ出したり、あるいはICチップが大きい場合には、接着剤量が不足したりする等、充分な接着力を有するように接着を行うことができない等の問題点があった。またこのようなダイ接着用接着剤の塗布作業は煩雑でもあり、プロセスを簡略化するためにも改善が要求されている。
【0006】
このような問題点を解決するために、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた、ウエハ貼着用粘着シートが種々提案されている。
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、光重合性低分子化合物、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤及び光重合開始剤よりなる組成物から形成される粘接着層と、基材とからなる粘接着テープが開示されている。この粘接着層は、ウエハダイシング時には、ウエハを固定する機能を有し、ダイシング終了後、エネルギー線を照射すると硬化し、基材との間の接着力が低下する。したがって、チップのピックアップを行うと、粘接着層は、チップとともに剥離する。粘接着層を伴ったICチップをリードフレームに載置し、加熱すると、粘接着層が接着力を発現し、ICチップとリードフレームとの接着が完了する。
【0007】
また、特許文献2には、剥離層が実質的に存在しない表面を有する重合体支持フィルムと、導電性接着剤とからなるダイシング用フィルムが教示されている。この導電性接着剤は、上記の粘接着層と略同等の機能を有する。
【0008】
更に、特許文献3には、支持基材上に設けられた加熱発泡粘着層の上に、ダイ接着用の接着剤層が設けられており、加熱により接着剤層と加熱発泡粘着層とが剥離可能となる、半導体ウエハの分断時の支持機能を兼ね備えたダイ接着用シートが教示されている。
【0009】
これらのウエハ貼着用粘着シートは、いわゆるダイレクトダイボンディングを可能にし、ダイ接着用接着剤の塗布工程を省略できるようにするものである。しかしながら、実際には、粘接着層の接着力を低下させることには限界があり、ICチップをピックアップする際に、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたり、ピックアップ自体が不可能であることがあるという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−32181号公報
【特許文献2】
特公平3−34853号公報
【特許文献3】
特開平3−268345号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材と、前記基材上に形成された刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなることを特徴とするウエハ貼着用粘着シートである。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、基材と、該基材上に形成された粘着剤層と、該粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなるものである。
本発明のウエハ貼着用粘着シートの形状としては特に限定されず、使用機器、使用方法又は用途に応じて、テープ状、ラベル状、シート状等あらゆる形状をとりうる。テープ状のものは取り扱いの容易さの点で芯材に巻き取った形のものが好ましく、ラベル状、シート状のものは適切な大きさのシートとする又は芯材に巻き取った形とすることが製造及び取り扱いの容易さの点で好ましい。
【0014】
上記基材としては特に限定されないが、粘着剤層に含有される気体発生剤から気体を発生させる刺激が光による刺激である場合には、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0015】
上記基材の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。10μm未満であると、シートの自立性が不足しハンドリングが困難になることがあり、300μmを超えると、ダイシング時のエキスパンディングが良好になされないためにピックアップに不具合が生じることがある。
【0016】
上記粘着剤層は、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する。
上記気体発生剤から気体を発生させる刺激としては、例えば、光、熱、超音波による刺激が挙げられる。なかでも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、気体発生剤を含有する粘着剤層は、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。また、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激が熱である場合には、気体発生剤は、ダイ接着用接着剤のガラス転移温度以下の温度に加熱することにより気体を発生することが好ましい。ダイ接着用接着剤のガラス転移温度を超える温度をかけると、上記粘着剤層とダイ接着用接着剤層とがうまく剥離できないことがある。
【0017】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物が好適に用いられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等の下記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物が好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ低級アルキル基を表し、R3は、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、R1とR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、熱分解温度が高いことから、ICチップの製造において必要に応じて行われる高温処理が可能であり、後述するアクリル酸アルキルエステルポリマー等の粘着性を有するポリマーへの溶解性にも優れている。
【0021】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド等や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0022】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによってウエハが損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないためウエハを損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。従って、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0023】
上記気体発生剤を含有することにより、上記粘着剤層に刺激を与えると気体発生剤から発生した気体が、上記粘着剤層とダイ接着用接着剤との接着面の少なくとも一部を剥がすことにより、粘着力が低下して粘着剤層とダイ接着用接着剤とを容易に剥離することができる。
【0024】
上記気体発生剤は上記粘着剤層全体に含有されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤層全体に含有させておくと、粘着剤層全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、粘着剤層をうまく剥がせなくなるおそれがある。従って、上記気体発生剤は、表面部分にのみ含有されていることが好ましい。表面部分にのみ含有させておけば、粘着剤層全体が発泡体とならずに、被着体との接着面で気体発生剤から気体が発生することにより接着面積を減少させ、なおかつ気体が、被着体と粘着剤層との接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
なお、上記表面部分とは、粘着剤層の厚さによるが、粘着剤の表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表面部分にのみ含有されるとは、例えば、粘着剤表面に付着した気体発生剤が粘着剤と相溶して粘着剤層に吸収された態様、粘着剤の表面に気体発生剤が均一に付着している態様等が挙げられる。
【0025】
上記表面部分にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、上記粘着剤層の最外層に1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する粘着剤を塗工する方法や、予め作製した粘着剤層の表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。なお、表面に気体発生剤を付着させる場合には、粘着剤と相溶性に優れた気体発生剤を付着させることが好ましい。即ち、粘着剤の表面に気体発生剤を多量に付着させると粘着力が低くなるが、気体発生剤が粘着剤と相溶する場合は、付着した気体発生剤は粘着剤層に吸収され粘着力が低下することがなく、気体発生剤が拡散することにより被着体との接触面全体に対してより均一に気体を発生させることができる。また、気体発生剤を含有する表面部分とそれ以外とは、異なる組成の樹脂成分からなることが好ましく、なかでも、異なる極性を有する樹脂成分からなることがより好ましい。これにより、表面部分の気体発生剤がそれ以外に移行することを防止するか、移行しにくくすることができる。
【0026】
上記気体発生剤は、粒子として存在しないことが好ましい。なお、本明細書において、気体発生剤が粒子として存在しないとは、電子顕微鏡により気体発生剤を含有する粘着剤層の断面を観察したときに気体発生剤を確認することができないことを意味する。上記粘着剤層中に気体発生剤が粒子として存在すると、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、上記粘着剤層の表面平滑性が悪くなったりすることがある。
【0027】
上記気体発生剤を粒子として存在しないようにするには、通常、粘着剤中に溶解する気体発生剤を選択するが、粘着剤中に溶解しない気体発生剤を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤中に気体発生剤を微分散させる。
【0028】
また、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましい。更に、これらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いて必要に応じてより細かい微粒子とすることが好ましい。すなわち、電子顕微鏡により本発明の接着性物質を観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0029】
上記粘着剤層は、上記気体発生剤としてアジド化合物又はアゾ化合物等の光による刺激により気体を発生する気体発生剤を用いる場合には、更に光増感剤も含有することが好ましい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、被着体がポリエチレンテレフタレート等のアジド化合物又はアゾ化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、被着体越しに光を照射して気体を発生させることができ被着体の選択の幅が広がる。
上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。なお、チオキサントン増感剤は、光重合開始剤としても用いることができる。
【0030】
上記粘着剤層は、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することが好ましい。刺激を与えて上記架橋性樹脂成分を架橋させることにより、上記粘着剤層の弾性率が上昇し粘着力が低減する。更に、弾性率の上昇した硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。上記架橋性樹脂成分を架橋させる刺激は、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
このような架橋性樹脂成分としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0032】
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0033】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0034】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0035】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0036】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0037】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記後硬化型粘着剤には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
【0041】
上記粘着剤層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は50μmである。3μm未満であると、接着力が不足しダイシング時にチップとびが発生することがあり、50μmを超えると、接着力が高すぎるために剥離性が低下し、良好なピックアップが実現できなくなることがある。
【0042】
上記ダイ接着用接着剤としては特に限定されず、従来公知のダイ接着用接着剤を用いることができ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂主成分とする接着剤、アクリル樹脂、ゴム系ポリマー、フッ素ゴム系ポリマー、フッ素樹脂等を主成分とする接着剤等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記ダイ接着用接着剤層は、更に、必要に応じてフィラーを含有していてもよい。このようなフィラーとしては、例えば、導電性の付与を目的とした導電性フィラー、熱伝導性の付与を目的とした熱伝導性フィラー等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記導電性フィラーとしては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、又は、ニッケル、アルミニウム等を銀で被覆したもの等が挙げられる。また、上記熱伝導性フィラーとしては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等が挙げられる。
【0045】
上記フィラーの含有量としては特に限定されないが、ダイ接着用接着剤100重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は4000重量部である。10重量部未満であると、所望する特性が得られないことがあり、4000重量部を超えると、接着強度が低下することがある。
【0046】
上記ダイ接着用接着剤層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は100μmである。3μm未満であると、ダイ接着力が不足することがあり、100μmを超えると、粘着剤層との接着力が大きくなりすぎるため、ピックアップに不具合をきたすことがある。
【0047】
本発明のウエハ貼着用粘着シートを製造する方法としては特に限定されず、例えば、まず上記基材上に上記粘着剤層を形成させた後、形成された粘着剤層上にダイ接着用接着剤層を形成する方法等が挙げられる。
上記基材上に上記粘着剤層を形成させる方法としては特に限定されず、例えば、バインダー樹脂と上記気体発生剤とを混練した粘着剤組成物を上記基材上に流延して固化させる方法等が挙げられる。
しかしながら、バインダー樹脂と気体発生剤とを混練する際に生じる熱により気体発生剤の分解が起こることがあり、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を製造することが困難な場合がある。このような場合には、気体発生剤、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーを主成分とする重合性原料、及び、気体発生剤の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光を照射されることで活性化する光重合開始剤等を含有する原料に、気体発生剤の感光波長の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光波長の光を照射して光重合開始剤を活性化して重合性原料を重合させて粘着剤組成物を得る方法が好適に用いられる。この方法によれば、接着樹脂と気体発生剤とを混練する必要がなく、熱により気体発生剤の分解が始まるおそれがない。また、粘着剤組成物の製造を1回の反応で完了することができ、溶剤を使用する必要もないので、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を安全かつ容易に製造できる。
【0048】
上記粘着剤層上にダイ接着用接着剤層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、離型処理が施されたシート上にダイ接着用接着剤の原料を塗布、乾燥してダイ接着用接着剤層を形成させた後、得られたダイ接着用接着剤層を基材上に形成された粘着剤層上に重ねる方法;予め成形されたダイ接着用接着剤からなるシート上記粘着剤層上に積層する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、上述の構成よりなることから、ウエハを貼り付けてダイシングを行う前後に、粘着剤層に気体発生剤から気体を発生させる刺激を与えれば発生した気体により上記粘着剤層とダイ接着用接着剤層とが剥離して、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易にダイ接着用接着剤層が形成されたICチップを得ることができる。
【0050】
本発明のウエハ貼着用粘着シートを用いて半導体装置の製造方法としては、例えば、少なくとも、粘着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、ウエハ貼着用粘着シートに貼り付けた半導体ウエハをダイシングしてICチップとする工程と、ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する方法が好適である。
このような半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0051】
本発明の半導体装置の製造方法では、まず、ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける。
上記半導体ウエハとしては特に限定されず、例えば、高純度なシリコン単結晶やガリウム砒素単結晶等をスライスし、表面に所定の回路パターンが形成されたものが挙げられる。
【0052】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、ウエハ貼着用粘着シートに貼り付けた半導体ウエハをダイシングしてICチップとする。次いで、本発明のウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させると、気体発生剤から発生した気体が粘着剤層とダイ接着用接着剤層との接着面の少なくとも1部を剥がして接着力を低下させることから、粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを容易に剥離させることができる。これにより、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、得られたダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着することにより半導体装置を作製する。
【0053】
また、ダイシングを行う前にウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてもよい。この場合、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハが得られるので、これをダイシングすればダイ接着用接着剤層が付着したICチップが得られる。
本発明のウエハ貼着用粘着シートを用いる半導体装置の製造方法であって、少なくとも、ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハをダイシングしてダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
<粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部、光重合開始剤(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)0.5重量部、ポリイソシアネート1.5重量部を混合し粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.02重量部
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)100重量部混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(2)を調製した。
【0056】
<ウエハ貼着用粘着シートの作製>
粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施した厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
次いで、離型処理が施されたPETフィルムを剥がし、粘着剤(2)層の表面に厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルムを貼り付けて、ウエハ貼着用粘着シートを得た。
【0057】
<半導体装置の製造>
得られたウエハ貼着用粘着シートのポリイミド樹脂フィルム面とシリコンウエハとを重ね、100℃、10N/cm2で10秒熱圧着してウエハ貼着用粘着シートとシリコンウエハとを貼り合わせた。次いで、シリコンウエハを10mm×10mmにダイシングしてICチップを得た。
透明PETフィルム側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をPETフィルム表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節して2分間照射した。これによりICチップはポリイミド樹脂フィルムが付着した状態で容易にピックアップできた。
【0058】
ポリイミド樹脂フィルムが付着したICチップを、銅リードフレームのダイパッド上に、200℃、200N/cm2で20秒間熱圧着することでダイレクトマウントした。得られたICチップ付きリードフレームを、200℃で3時間加熱硬化した。このようにして得られたサンプルは、シリコンチップがリードフレームに強固に接着されたものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン、ガリウムヒ素等の半導体ウエハは大径の状態で製造され、このウエハは素子小片(ICチップ)に切断分離(ダイシング)された後に次の工程であるマウント工程に移されている。この際、半導体ウエハはあらかじめ粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される。
【0003】
このような半導体ウエハのダイシング工程からピックアップ工程に至る工程で用いられる粘着シートとしては、ダイシング工程から乾燥工程まではウエハチップに対して充分な接着力を有しており、ピックアップ時にはウエハチップに粘着剤が付着しない程度の接着力を有しているものが望まれている。
【0004】
ピックアップされたチップは、ダイボンディング工程において、エポキシ接着剤等のダイ接着用接着剤を介してリードフレーム等の支持部材に接着され、半導体装置が製造されている。
【0005】
しかしながら、チップが非常に小さな場合には、適量の接着剤を塗布することが困難であり、ICチップから接着剤がはみ出したり、あるいはICチップが大きい場合には、接着剤量が不足したりする等、充分な接着力を有するように接着を行うことができない等の問題点があった。またこのようなダイ接着用接着剤の塗布作業は煩雑でもあり、プロセスを簡略化するためにも改善が要求されている。
【0006】
このような問題点を解決するために、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた、ウエハ貼着用粘着シートが種々提案されている。
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、光重合性低分子化合物、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤及び光重合開始剤よりなる組成物から形成される粘接着層と、基材とからなる粘接着テープが開示されている。この粘接着層は、ウエハダイシング時には、ウエハを固定する機能を有し、ダイシング終了後、エネルギー線を照射すると硬化し、基材との間の接着力が低下する。したがって、チップのピックアップを行うと、粘接着層は、チップとともに剥離する。粘接着層を伴ったICチップをリードフレームに載置し、加熱すると、粘接着層が接着力を発現し、ICチップとリードフレームとの接着が完了する。
【0007】
また、特許文献2には、剥離層が実質的に存在しない表面を有する重合体支持フィルムと、導電性接着剤とからなるダイシング用フィルムが教示されている。この導電性接着剤は、上記の粘接着層と略同等の機能を有する。
【0008】
更に、特許文献3には、支持基材上に設けられた加熱発泡粘着層の上に、ダイ接着用の接着剤層が設けられており、加熱により接着剤層と加熱発泡粘着層とが剥離可能となる、半導体ウエハの分断時の支持機能を兼ね備えたダイ接着用シートが教示されている。
【0009】
これらのウエハ貼着用粘着シートは、いわゆるダイレクトダイボンディングを可能にし、ダイ接着用接着剤の塗布工程を省略できるようにするものである。しかしながら、実際には、粘接着層の接着力を低下させることには限界があり、ICチップをピックアップする際に、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたり、ピックアップ自体が不可能であることがあるという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−32181号公報
【特許文献2】
特公平3−34853号公報
【特許文献3】
特開平3−268345号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材と、前記基材上に形成された刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなることを特徴とするウエハ貼着用粘着シートである。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、基材と、該基材上に形成された粘着剤層と、該粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなるものである。
本発明のウエハ貼着用粘着シートの形状としては特に限定されず、使用機器、使用方法又は用途に応じて、テープ状、ラベル状、シート状等あらゆる形状をとりうる。テープ状のものは取り扱いの容易さの点で芯材に巻き取った形のものが好ましく、ラベル状、シート状のものは適切な大きさのシートとする又は芯材に巻き取った形とすることが製造及び取り扱いの容易さの点で好ましい。
【0014】
上記基材としては特に限定されないが、粘着剤層に含有される気体発生剤から気体を発生させる刺激が光による刺激である場合には、光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0015】
上記基材の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。10μm未満であると、シートの自立性が不足しハンドリングが困難になることがあり、300μmを超えると、ダイシング時のエキスパンディングが良好になされないためにピックアップに不具合が生じることがある。
【0016】
上記粘着剤層は、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する。
上記気体発生剤から気体を発生させる刺激としては、例えば、光、熱、超音波による刺激が挙げられる。なかでも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、気体発生剤を含有する粘着剤層は、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。また、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激が熱である場合には、気体発生剤は、ダイ接着用接着剤のガラス転移温度以下の温度に加熱することにより気体を発生することが好ましい。ダイ接着用接着剤のガラス転移温度を超える温度をかけると、上記粘着剤層とダイ接着用接着剤層とがうまく剥離できないことがある。
【0017】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物が好適に用いられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
なかでも、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルエチル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−プロピル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−エチル−2−メチルプロピオンアミド)等の下記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物が好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ低級アルキル基を表し、R3は、炭素数2以上の飽和アルキル基を表す。なお、R1とR2は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0020】
上記一般式(1)で表されるアゾアミド化合物は、熱分解温度が高いことから、ICチップの製造において必要に応じて行われる高温処理が可能であり、後述するアクリル酸アルキルエステルポリマー等の粘着性を有するポリマーへの溶解性にも優れている。
【0021】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド等や、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0022】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによってウエハが損傷することがあるという問題もある。このような問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないためウエハを損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。従って、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0023】
上記気体発生剤を含有することにより、上記粘着剤層に刺激を与えると気体発生剤から発生した気体が、上記粘着剤層とダイ接着用接着剤との接着面の少なくとも一部を剥がすことにより、粘着力が低下して粘着剤層とダイ接着用接着剤とを容易に剥離することができる。
【0024】
上記気体発生剤は上記粘着剤層全体に含有されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤層全体に含有させておくと、粘着剤層全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、粘着剤層をうまく剥がせなくなるおそれがある。従って、上記気体発生剤は、表面部分にのみ含有されていることが好ましい。表面部分にのみ含有させておけば、粘着剤層全体が発泡体とならずに、被着体との接着面で気体発生剤から気体が発生することにより接着面積を減少させ、なおかつ気体が、被着体と粘着剤層との接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
なお、上記表面部分とは、粘着剤層の厚さによるが、粘着剤の表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表面部分にのみ含有されるとは、例えば、粘着剤表面に付着した気体発生剤が粘着剤と相溶して粘着剤層に吸収された態様、粘着剤の表面に気体発生剤が均一に付着している態様等が挙げられる。
【0025】
上記表面部分にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、上記粘着剤層の最外層に1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する粘着剤を塗工する方法や、予め作製した粘着剤層の表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。なお、表面に気体発生剤を付着させる場合には、粘着剤と相溶性に優れた気体発生剤を付着させることが好ましい。即ち、粘着剤の表面に気体発生剤を多量に付着させると粘着力が低くなるが、気体発生剤が粘着剤と相溶する場合は、付着した気体発生剤は粘着剤層に吸収され粘着力が低下することがなく、気体発生剤が拡散することにより被着体との接触面全体に対してより均一に気体を発生させることができる。また、気体発生剤を含有する表面部分とそれ以外とは、異なる組成の樹脂成分からなることが好ましく、なかでも、異なる極性を有する樹脂成分からなることがより好ましい。これにより、表面部分の気体発生剤がそれ以外に移行することを防止するか、移行しにくくすることができる。
【0026】
上記気体発生剤は、粒子として存在しないことが好ましい。なお、本明細書において、気体発生剤が粒子として存在しないとは、電子顕微鏡により気体発生剤を含有する粘着剤層の断面を観察したときに気体発生剤を確認することができないことを意味する。上記粘着剤層中に気体発生剤が粒子として存在すると、気体を発生させる刺激として光を照射したときに粒子の界面で光が散乱して気体発生効率が低くなってしまったり、上記粘着剤層の表面平滑性が悪くなったりすることがある。
【0027】
上記気体発生剤を粒子として存在しないようにするには、通常、粘着剤中に溶解する気体発生剤を選択するが、粘着剤中に溶解しない気体発生剤を選択する場合には、例えば、分散機を用いたり、分散剤を併用したりすることにより粘着剤中に気体発生剤を微分散させる。
【0028】
また、気体発生剤は、微小な粒子であることが好ましい。更に、これらの微粒子は、例えば、分散機や混練装置等を用いて必要に応じてより細かい微粒子とすることが好ましい。すなわち、電子顕微鏡により本発明の接着性物質を観察したときに気体発生剤を確認することができない状態まで分散させることがより好ましい。
【0029】
上記粘着剤層は、上記気体発生剤としてアジド化合物又はアゾ化合物等の光による刺激により気体を発生する気体発生剤を用いる場合には、更に光増感剤も含有することが好ましい。上記光増感剤は、上記気体発生剤への光による刺激を増幅する効果を有することから、より少ない光の照射により気体を放出させることができる。また、より広い波長領域の光により気体を放出させることができるので、被着体がポリエチレンテレフタレート等のアジド化合物又はアゾ化合物から気体を発生させる波長の光を透過しないものであっても、被着体越しに光を照射して気体を発生させることができ被着体の選択の幅が広がる。
上記光増感剤としては特に限定されないが、例えば、チオキサントン増感剤等が好適である。なお、チオキサントン増感剤は、光重合開始剤としても用いることができる。
【0030】
上記粘着剤層は、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することが好ましい。刺激を与えて上記架橋性樹脂成分を架橋させることにより、上記粘着剤層の弾性率が上昇し粘着力が低減する。更に、弾性率の上昇した硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。上記架橋性樹脂成分を架橋させる刺激は、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
このような架橋性樹脂成分としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0032】
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、弾性率の上昇した硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0033】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
【0034】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0035】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0036】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0037】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下でかつ分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜20個のものである。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。その他、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート、上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記後硬化型粘着剤には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を加えることもできる。
【0041】
上記粘着剤層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は50μmである。3μm未満であると、接着力が不足しダイシング時にチップとびが発生することがあり、50μmを超えると、接着力が高すぎるために剥離性が低下し、良好なピックアップが実現できなくなることがある。
【0042】
上記ダイ接着用接着剤としては特に限定されず、従来公知のダイ接着用接着剤を用いることができ、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂主成分とする接着剤、アクリル樹脂、ゴム系ポリマー、フッ素ゴム系ポリマー、フッ素樹脂等を主成分とする接着剤等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記ダイ接着用接着剤層は、更に、必要に応じてフィラーを含有していてもよい。このようなフィラーとしては、例えば、導電性の付与を目的とした導電性フィラー、熱伝導性の付与を目的とした熱伝導性フィラー等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記導電性フィラーとしては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、又は、ニッケル、アルミニウム等を銀で被覆したもの等が挙げられる。また、上記熱伝導性フィラーとしては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等が挙げられる。
【0045】
上記フィラーの含有量としては特に限定されないが、ダイ接着用接着剤100重量部に対して、好ましい下限は10重量部、好ましい上限は4000重量部である。10重量部未満であると、所望する特性が得られないことがあり、4000重量部を超えると、接着強度が低下することがある。
【0046】
上記ダイ接着用接着剤層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は100μmである。3μm未満であると、ダイ接着力が不足することがあり、100μmを超えると、粘着剤層との接着力が大きくなりすぎるため、ピックアップに不具合をきたすことがある。
【0047】
本発明のウエハ貼着用粘着シートを製造する方法としては特に限定されず、例えば、まず上記基材上に上記粘着剤層を形成させた後、形成された粘着剤層上にダイ接着用接着剤層を形成する方法等が挙げられる。
上記基材上に上記粘着剤層を形成させる方法としては特に限定されず、例えば、バインダー樹脂と上記気体発生剤とを混練した粘着剤組成物を上記基材上に流延して固化させる方法等が挙げられる。
しかしながら、バインダー樹脂と気体発生剤とを混練する際に生じる熱により気体発生剤の分解が起こることがあり、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を製造することが困難な場合がある。このような場合には、気体発生剤、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーを主成分とする重合性原料、及び、気体発生剤の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光を照射されることで活性化する光重合開始剤等を含有する原料に、気体発生剤の感光波長の感光波長よりも長波長の紫外線又は可視光波長の光を照射して光重合開始剤を活性化して重合性原料を重合させて粘着剤組成物を得る方法が好適に用いられる。この方法によれば、接着樹脂と気体発生剤とを混練する必要がなく、熱により気体発生剤の分解が始まるおそれがない。また、粘着剤組成物の製造を1回の反応で完了することができ、溶剤を使用する必要もないので、多量の気体発生剤を含有する粘着剤組成物を安全かつ容易に製造できる。
【0048】
上記粘着剤層上にダイ接着用接着剤層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、離型処理が施されたシート上にダイ接着用接着剤の原料を塗布、乾燥してダイ接着用接着剤層を形成させた後、得られたダイ接着用接着剤層を基材上に形成された粘着剤層上に重ねる方法;予め成形されたダイ接着用接着剤からなるシート上記粘着剤層上に積層する方法等が挙げられる。
【0049】
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、上述の構成よりなることから、ウエハを貼り付けてダイシングを行う前後に、粘着剤層に気体発生剤から気体を発生させる刺激を与えれば発生した気体により上記粘着剤層とダイ接着用接着剤層とが剥離して、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易にダイ接着用接着剤層が形成されたICチップを得ることができる。
【0050】
本発明のウエハ貼着用粘着シートを用いて半導体装置の製造方法としては、例えば、少なくとも、粘着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、ウエハ貼着用粘着シートに貼り付けた半導体ウエハをダイシングしてICチップとする工程と、ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する方法が好適である。
このような半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0051】
本発明の半導体装置の製造方法では、まず、ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける。
上記半導体ウエハとしては特に限定されず、例えば、高純度なシリコン単結晶やガリウム砒素単結晶等をスライスし、表面に所定の回路パターンが形成されたものが挙げられる。
【0052】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、ウエハ貼着用粘着シートに貼り付けた半導体ウエハをダイシングしてICチップとする。次いで、本発明のウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させると、気体発生剤から発生した気体が粘着剤層とダイ接着用接着剤層との接着面の少なくとも1部を剥がして接着力を低下させることから、粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを容易に剥離させることができる。これにより、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得ることができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、得られたダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着することにより半導体装置を作製する。
【0053】
また、ダイシングを行う前にウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてもよい。この場合、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハが得られるので、これをダイシングすればダイ接着用接着剤層が付着したICチップが得られる。
本発明のウエハ貼着用粘着シートを用いる半導体装置の製造方法であって、少なくとも、ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハをウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させてウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハをダイシングしてダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する半導体装置の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
<粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2−イソシアナトエチルメタクリレート3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部、光重合開始剤(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)0.5重量部、ポリイソシアネート1.5重量部を混合し粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.02重量部
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)100重量部混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(2)を調製した。
【0056】
<ウエハ貼着用粘着シートの作製>
粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を、コロナ処理を施した厚さ25μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
次いで、離型処理が施されたPETフィルムを剥がし、粘着剤(2)層の表面に厚さ25μmのポリイミド樹脂フィルムを貼り付けて、ウエハ貼着用粘着シートを得た。
【0057】
<半導体装置の製造>
得られたウエハ貼着用粘着シートのポリイミド樹脂フィルム面とシリコンウエハとを重ね、100℃、10N/cm2で10秒熱圧着してウエハ貼着用粘着シートとシリコンウエハとを貼り合わせた。次いで、シリコンウエハを10mm×10mmにダイシングしてICチップを得た。
透明PETフィルム側から超高圧水銀灯を用いて、365nmの紫外線をPETフィルム表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節して2分間照射した。これによりICチップはポリイミド樹脂フィルムが付着した状態で容易にピックアップできた。
【0058】
ポリイミド樹脂フィルムが付着したICチップを、銅リードフレームのダイパッド上に、200℃、200N/cm2で20秒間熱圧着することでダイレクトマウントした。得られたICチップ付きリードフレームを、200℃で3時間加熱硬化した。このようにして得られたサンプルは、シリコンチップがリードフレームに強固に接着されたものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、ICチップを破損したり、欠けを生じさせたりすることなく容易に接着剤層が形成されたICチップを得ることができるウエハ貼着用粘着シート及びこれを用いた半導体装置の製造方法を提供できる。
Claims (6)
- 基材と、前記基材上に形成された刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤層と、前記粘着剤層上に形成されたダイ接着用接着剤層とからなることを特徴とするウエハ貼着用粘着シート。
- 気体発生剤から気体を発生させる刺激は、光又は熱であることを特徴とする請求項1記載のウエハ貼着用粘着シート。
- 気体発生剤は、ダイ接着用接着剤のガラス転移温度以下の温度に加熱することにより気体を発生することを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ貼着用粘着シート。
- 前記粘着剤層は、刺激により架橋する架橋性樹脂成分を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のウエハ貼着用粘着シート。
- 請求項1、2、3又は4記載のウエハ貼着用粘着シートを用いる半導体装置の製造方法であって、少なくとも、
ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハを前記ウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、
前記ウエハ貼着用粘着シートに貼り付けた半導体ウエハをダイシングしてICチップとする工程と、
前記ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させて前記ウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、
前記ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項1、2、3又は4記載のウエハ貼着用粘着シートを用いる半導体装置の製造方法であって、少なくとも、
ダイ接着用接着剤層を介して半導体ウエハを前記ウエハ貼着用粘着シートに貼り付ける工程と、
前記ウエハ貼着用粘着シートに刺激を与えて気体発生剤から気体を発生させて前記ウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層とダイ接着用接着剤層とを剥離させ、ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハを得る工程と、
前記ダイ接着用接着剤層が付着した半導体ウエハをダイシングしてダイ接着用接着剤層が付着したICチップを得る工程と、
前記ダイ接着用接着剤層が付着したICチップを支持部材上にダイ接着用接着剤層を介して接着する工程を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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