JP3965055B2 - Icチップの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエハを厚さ50μm程度まで極めて薄くした場合においても、ウエハの破損等を防止し、取扱い性を改善し、良好にICチップへの加工が行えるICチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路(ICチップ)は、通常高純度半導体単結晶等をスライスしてウエハとした後、フォトレジストを利用してウエハ表面に所定の回路パターンを形成し、次いでウエハ裏面を研磨機により研磨して、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより、製造されている。
【0003】
ここで、上記研磨時には、ウエハ表面に粘着シート類(研磨用テープ)を貼り付けて、ウエハの破損を防止したり、研磨加工を容易にしており、上記ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類(ダイシングテープ)を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されたチップをダイシングテープのフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
【0004】
近年、ICチップの用途が広がるにつれて、ICカード類に用いたり、積層して使用したりすることができる厚さ50μm程度の極めて薄いウエハも要求されるようになってきた。しかしながら、厚さが50μm程度のウエハは、厚さが100〜600μm程度の従来のウエハに比べて、反りが大きく衝撃により割れやすいので、従来のウエハと同様に加工した場合、衝撃を受けやすい研磨工程やダイシング工程及びICチップの電極上にバンプを作製する際にウエハの破損が生じやすく、歩留まりが悪かった。このため、厚さ50μm程度のウエハからICチップを製造する過程におけるウエハの取扱性の向上が重要な課題となっていた。
【0005】
これに対して、支持テープを介してウエハを支持板に貼り付け、支持板に固定した状態で研磨を行う方法が提案されている。この方法によれば、ウエハの強度及び平面性を支持板により確保でき、取扱性が向上する。
【0006】
しかしながら、この方法においても、厚さ50μm程度のウエハでは強度が弱いために支持板や支持テープから剥離する際の負荷により、破損や変形を生じることがあるという問題点があった。また、厚さ50μm程度の極めて薄いウエハは、厚さが100〜600μm程度の従来のウエハに比べてより多くの層を積層することができる一方、多くの層を積層するためにより厳密な平面性がウエハに必要であるという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ウエハを厚さ50μm程度まで極めて薄くした場合においても、ウエハの破損等を防止し、取扱い性を改善し、良好にICチップへの加工が行えるICチップの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定した状態で研磨する工程、研磨した前記ウエハにダイシングテープを貼り付ける工程、前記粘着剤(A)層に刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程、及び、前記ウエハのダイシングを行う工程を有するICチップの製造方法であって、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定する工程において、前記粘着剤(A)層からなる面と前記ウエハとを貼り合わせ、前記粘着剤(B)層からなる面と前記支持板とを貼り合わせるものであり、前記粘着剤(A)層に刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程において、前記ウエハ全体を前記ダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、前記ウエハから前記支持テープを剥離するICチップの製造方法である。以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明のICチップの製造方法は、少なくとも、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程を有するものである。
【0010】
上記支持テープは、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有するものであれば、両面に粘着剤層を有する粘着性ノンサポートテープであっても、基材の両面に粘着剤層が形成されてなる両面粘着テープであってもよい。
本明細書において、ノンサポートテープとは、基材を有さない粘着剤層のみからなるものをいい、1層のみの粘着剤層からなるものであっても、複数の層からなるものであってもよい。上記ノンサポートテープが1層のみの粘着剤層からなる場合とは、例えば、粘着剤(A)層と粘着剤(B)層とが同一の場合である。
【0011】
上記基材を用いる場合であって、粘着剤(A)層の粘着力を低下させる刺激が光による刺激である場合には、上記基材としては光を透過又は通過するものであることが好ましく、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0012】
上記支持テープは、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面を有するものである。
上記刺激としては、例えば、光、熱、超音波による刺激が挙げられる。中でも光又は熱による刺激が好ましい。上記光としては、例えば、紫外線や可視光線等が挙げられる。上記刺激として光による刺激を用いる場合には、上記粘着剤(A)は、光が透過又は通過できるものであることが好ましい。
【0013】
上記刺激により気体を発生する気体発生剤としては特に限定されないが、例えば、アゾ化合物、アジド化合物が好適に用いられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]ジサルフェイトジハイドロレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾイリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾイリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミダイン)ハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシアシル)−2−メチル−プロピオンアミダイン]、2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミダイン]プロパン}、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアンカルボニックアシッド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
ICチップの製造においては、必要に応じて高温処理を行う工程が入ることから、これらのなかでも熱分解温度の高い2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)が好適である。
これらのアゾ化合物は、光、熱等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0014】
上記アジド化合物としては、例えば、3−アジドメチル−3−メチルオキセタン、テレフタルアジド、p−tert−ブチルベンズアジド;3−アジドメチル−3−メチルオキセタンを開環重合することにより得られるグリシジルアジドポリマー等のアジド基を有するポリマー等が挙げられる。
これらのアジド化合物は、光、熱及び衝撃等による刺激により窒素ガスを発生する。
【0015】
これらの気体発生剤のうち、上記アジド化合物は衝撃を与えることによっても容易に分解して窒素ガスを放出することから、取り扱いが困難であるという問題がある。更に、上記アジド化合物は、いったん分解が始まると連鎖反応を起こして爆発的に窒素ガスを放出しその制御ができないことから、爆発的に発生した窒素ガスによってウエハが損傷することがあるという問題もある。かかる問題から上記アジド化合物の使用量は限定されるが、限定された使用量では充分な効果が得られないことがある。
一方、上記アゾ化合物は、アジド化合物とは異なり衝撃によっては気体を発生しないことから取り扱いが極めて容易である。また、連鎖反応を起こして爆発的に気体を発生することもないためウエハを損傷することもなく、光の照射を中断すれば気体の発生も中断できることから、用途に合わせた接着性の制御が可能であるという利点もある。したがって、上記気体発生剤としては、アゾ化合物を用いることがより好ましい。
【0016】
上記気体発生剤を含有することにより、上記粘着剤(A)層に刺激を与えると粘着剤(A)層の気体発生剤から気体が発生して、粘着力が低下して被着体を容易に剥離することができる。
【0017】
上記気体発生剤は粘着剤(A)層に分散されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤(A)層に分散させておくと粘着剤(A)層全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、粘着剤層をうまく剥がせなくなるおそれがある。したがって、支持板と接する粘着剤(A)の表層部分にのみ含有させておくことが好ましい。
表層部分にのみ含有させておけば、支持板と接する粘着剤の表層部分では気体発生剤から気体が発生して界面の接着面積が減少し、なおかつ気体が、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0018】
上記粘着剤層の表層部分にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、支持テープの粘着剤(A)層の上に、1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する粘着剤(A)を塗工する方法や、あらかじめ作製した支持テープの粘着剤(A)層の表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、粘着剤表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。
粘着剤表面に気体発生剤を付着させる場合は、粘着剤と相溶性に優れた気体発生剤を付着させることが好ましい。すなわち、粘着剤表面に気体発生剤を多量に付着させると粘着力が低下するが、気体発生剤が粘着剤と相溶する場合は、付着した気体発生剤は粘着剤層に吸収され粘着力が低下することがない。
なお、上記表層部分は、粘着剤層の厚さによるが、粘着剤表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表層部分には粘着剤表面に気体発生剤が均一に付着していている態様や粘着剤表面に付着した気体発生剤が粘着剤と相溶し粘着剤層に吸収された態様を含む。
【0019】
上記粘着剤(A)は、刺激により弾性率が上昇するものであることが好ましい。粘着剤(A)の弾性率を上昇させる刺激は、上記気体発生剤から気体を発生させる刺激と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
かかる上記粘着剤(A)としては、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、必要に応じて光重合開始剤を含んでなる光硬化型粘着剤や、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを主成分とし、熱重合開始剤を含んでなる熱硬化型粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0020】
このような光硬化型粘着剤又は熱硬化型粘着剤等の後硬化型粘着剤は、光の照射又は加熱により粘着剤層の全体が均一にかつ速やかに重合架橋して一体化するため、重合硬化による弾性率の上昇が著しくなり、粘着力が大きく低下する。また、硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体と粘着剤との接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0021】
上記重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を持った(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーという)をあらかじめ合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物という)と反応させることにより得ることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味するものとする。
【0022】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、常温で粘着性を有するポリマーとして、一般の(メタ)アクリル系ポリマーの場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にあるアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、これと官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られるものである。上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は通常20万〜200万程度である。
【0023】
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸イソシアネートエチル、メタクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;アクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0024】
上記共重合可能な他の改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般の(メタ)アクリル系ポリマーに用いられている各種のモノマーが挙げられる。
【0025】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーに反応させる官能基含有不飽和化合物としては、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に応じて上述した官能基含有モノマーと同様のものを使用できる。例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がヒドロキシル基の場合はイソシアネート基含有モノマーが用いられ、同官能基がエポキシ基の場合はカルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが用いられ、同官能基がアミノ基の場合はエポキシ基含有モノマーが用いられる。
【0026】
上記多官能オリゴマー又はモノマーとしては、分子量が1万以下であるものが好ましく、より好ましくは加熱又は光の照射による粘着剤層の三次元網状化が効率よくなされるように、その分子量が5,000以下であり、かつ、その分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数の下限が2個、上限が20個である。このようなより好ましい多官能オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート又は上記同様のメタクリレート類等が挙げられる。これらの多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記光重合開始剤としては、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、このような光重合開始剤としては、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記熱重合開始剤としては、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、具体的には例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適である。これらの熱重合開始剤のうち市販されているものとしては特に限定されないが、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(以上いずれも日本油脂製)等が好適である。これら熱重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記後硬化型粘着剤には、以上の成分のほか、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で、所望によりイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の一般の粘着剤に配合される各種の多官能性化合物を適宜配合してもよい。また、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0030】
上記支持テープは、粘着剤(A)層からなる面以外に、粘着剤(B)層からなる面を有するものである。
上記粘着剤(B)としては特に限定されないが、本発明のICチップの製造方法において、研磨工程とダイシング工程の間で、ウエハから支持テープを剥離する工程を行う前に、予め支持板を支持テープから剥離する場合には、上記粘着剤(B)は、刺激により粘着力が低下する性質を有することが好ましい。かかる粘着剤(B)としては、前述の粘着剤(A)に用いられる、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなるアクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと、ラジカル重合性の多官能オリゴマーとを主成分として含んでなる後硬化型粘着剤等を用いることができる。
ウエハから支持テープを剥離する前に、予め支持板を支持テープから剥離しておけば、可とう性を有する支持テープをめくるようにして、より容易にウエハから剥離することができる。
【0031】
また、この場合、上記粘着剤(B)は刺激により気体を発生する気体発生剤を含有していることがより好ましい。上記気体発生剤を含有することにより、上記粘着剤(B)層に刺激を与えると粘着剤(B)層の気体発生剤から気体が発生して、粘着力が低下して被着体を更に容易に剥離することができる。
また、上記粘着剤(B)が後硬化型粘着剤等からなる場合には、刺激を与える前は優れた粘着性を有しており、刺激を与えることにより架橋反応が進行し硬化物となるので、支持テープを剥離するまでの間は優れた粘着性を有する粘着剤でありながら、支持テープを剥離する際には硬い硬化物とすることができる。硬い硬化物中で気体発生剤から気体を発生させると、発生した気体の大半は外部に放出され、放出された気体は、被着体から粘着剤の接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0032】
上記気体発生剤は粘着剤(B)層に分散されていてもよいが、気体発生剤を粘着剤(B)層に分散させておくと粘着剤(B)層全体が発泡体となるため柔らかくなりすぎ、粘着剤層をうまく剥がせなくなるおそれがある。したがって、支持板と接する粘着剤(B)の表層部分にのみ含有させておくことが好ましい。
表層部分にのみ含有させておけば、刺激により粘着剤(B)層を充分に柔らかくすることができるとともに、支持板と接する粘着剤の表層部分では気体発生剤から気体が発生して界面の接着面積が減少し、なおかつ気体が、被着体と粘着剤との接着面の少なくとも一部を剥がし接着力を低下させる。
【0033】
上記粘着剤層の表層部分にのみ気体発生剤を含有させる方法としては、例えば、支持テープの粘着剤(B)層の上に、1〜20μm程度の厚さで気体発生剤を含有する粘着剤(B)を塗工する方法や、あらかじめ作製した支持テープの粘着剤(B)層の表面に、気体発生剤を含有する揮発性液体を塗布するかスプレー等によって吹き付けることにより、粘着剤表面に気体発生剤を均一に付着させる方法等が挙げられる。
粘着剤表面に気体発生剤を付着させる場合は、粘着剤と相溶性に優れた気体発生剤を付着させることが好ましい。すなわち、粘着剤表面に気体発生剤を多量に付着させると粘着力が低くなるが、気体発生剤が粘着剤と相溶する場合は、付着した気体発生剤は粘着剤層に吸収され粘着力が低下することがない。
なお、上記表層部分は、粘着剤層の厚さによるが、粘着剤表面から20μmまでの部分であることが好ましい。また、ここでいう表層部分には粘着剤表面に気体発生剤が均一に付着している態様や粘着剤表面に付着した気体発生剤が粘着剤と相溶し粘着剤層に吸収された態様を含む。
【0034】
上記粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハは支持板に固定される。
上記ウエハとしては、例えば、シリコン、ガリウム、砒素等からなる高純度半導体単結晶をスライスしたもの等が挙げられる。上記ウエハの厚さとしては特に限定されないが、一般に500μm〜1mm程度である。なお、上記ウエハは支持板に固定される前にその表面に所定の回路パターンが形成される。
【0035】
上記支持板としては特に限定されないが、粘着剤(A)層の粘着力を低下させる刺激が光による刺激である場合にあっては透明であることが好ましく、例えば、ガラス板;アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、PET、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の樹脂からなる板状体等が挙げられる。
上記支持板の厚さの好ましい下限は500μm、上限は3mmであり、より好ましい下限は1mm、上限は2mmである。また、上記支持板の厚さのばらつきは1%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明のICチップの製造方法は、上記支持テープを介して上記支持板に上記ウエハを固定する工程において、上記粘着剤(A)層と上記ウエハとを貼り合わせ、上記粘着剤(B)層と上記支持板とを貼り合わせる。
この際、ウエハの回路パターンが形成されている面と粘着剤(A)層とを貼り合わせる。
【0037】
上記支持テープを介して支持板にウエハを固定することにより、ウエハを補強し、その取扱性を向上させることができるので、厚さ50μm程度の非常に薄いウエハであっても搬送や加工の際に欠けたり割れたりすることがなく、カセット等への収納性もよい。なお、上記支持テープは、ICチップを製造する一連の工程の終了後に刺激を与えることにより、ICチップから容易に剥離できる。
【0038】
本発明のICチップの製造方法は、少なくとも、上記支持テープを介して上記ウエハを上記支持板に固定した状態で研磨する工程を有する。
研磨後のウエハの厚さとしては特に限定されないが、ウエハを薄く加工する場合ほど破損防止の効果は発揮されやすく、研磨後の厚さを50μm程度、例えば、20〜80μmとした場合には、優れた破損防止の効果が発揮される。
【0039】
本発明のICチップの製造方法は、少なくとも、研磨した上記ウエハにダイシングテープを貼り付ける工程を有する。
なお、ダイシングテープを貼り付ける前に、予め絶縁性基板としてポリイミドフイルムをウエハに貼り付けてもよい。上記ポリイミドフイルムをウエハに貼り付ける際には、加熱する必要がある。したがって、上記粘着剤(A)層が熱による刺激により粘着力を低下させる場合、及び、上記粘着剤(A)が熱による刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する場合にあっては、粘着剤(A)の粘着力を低下させる温度又は気体を発生させる温度について、上記ポリイミドフイルムをウエハに貼り付ける際の温度よりも高いものを選択しておく必要がある。
【0040】
上記ダイシングテープとしては特に限定されないが、公知の光硬化性粘着テープを用いることができ、例えば、Adwill(登録商標)D−シリーズや、日東電工社製のエレップホルダー(登録商標)UEシリーズ等のテープが挙げられる。
【0041】
本発明のICチップの製造方法は、少なくとも、上記粘着剤(A)層に刺激を与えて上記ウエハから上記支持テープを剥離する工程を有し、この工程において、上記ウエハ全体を上記ダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、上記ウエハから上記支持テープを剥離する。
具体的には、例えば、通気性のある平滑な固定板と、真空ポンプ等の減圧装置とを備えた設備を用い、ウエハが貼り付けられたダイシングテープを通気性のある平滑な固定板上に置いて、平滑な固定板の反対側から減圧吸引しながら、上記粘着剤(A)層に刺激を与える。
粘着剤(A)層に含有される気体発生剤から気体が発生し、発生した気体の圧力でウエハと粘着剤(A)層との粘着力が低下するので支持テープの剥離が容易となる。しかし、厚さ50μm程度の極めて薄いウエハでは、厚さが100〜600μm程度の従来のウエハに比べて強度が弱く、気体発生剤から気体が局所的に発生し一部に強い圧力がかかることでウエハが変形して破損してしまうことがある。そこで、ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引してウエハ全体を固定することにより、ウエハと固定板とが一体となり、ウエハが補強されるので、不均一に局所的に発生した気体によっても、ウエハが極度に変形することを防止でき、破損してしまうことを防止できる。
更にウエハから支持テープを剥離する際にも、ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引してウエハ全体を固定することにより、ウエハが補強されるので、支持テープを剥離しようとする力でウエハが変形したり破損したりすることを防止できる。
【0042】
上記通気性のある平滑な固定板としては、例えば、樹脂等からなる板に微細な貫通孔を形成したものやセラミック多孔質板のような多孔質の材料からなる板等が挙げられる。上記通気性のある平滑な固定板は、ウエハの平面性を担保するためにできるだけ平坦であり、かつ、吸引時に変形しない強度を有することが好ましい。
上記貫通孔は、上記平滑な固定板の全面に均一に形成されていることが好ましく、その孔径は、減圧吸引によりウエハの平面性が逆に損なわれるほど大きくてはならないが、ウエハの生産性又は平面性が低下しないように速やかに充分な減圧吸引が行える大きさである必要がある。
【0043】
また、ウエハから支持テープを剥離する工程を行う前に、ウエハ全体を上記ダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、予め上記支持テープから支持板を剥離してもよい。
上記粘着剤(B)として刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤を用いた場合には、粘着剤(B)層に刺激を与え粘着力を低下させたうえで、上述したようにウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引しながら、支持テープから支持板を剥離すれば、可とう性を有する支持テープはめくりながら剥離でき、より一層効果的にウエハの破損や変形を防止できる。なお、工程数が増えるので表面に壊れやすい回路が形成されているウエハからICチップを製造する場合に行うことが好ましい。
【0044】
本発明のICチップの製造方法は、少なくとも、ウエハのダイシングを行う工程を有する。この工程により、表面に回路が形成されたウエハは、ダイヤモンドカッターによりチップに切り分けられる。その大きさは、通常1辺、数100μm〜数10mmである。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
<粘着剤の調製>
下記の化合物を酢酸エチルに溶解させ、紫外線を照射して重合を行い、重量平均分子量70万のアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体を含む酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、メタクリル酸2−イソシアネートエチル3.5重量部を加えて反応させ、更に、反応後の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部、光重合開始剤(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)0.5重量部、ポリイソシアネート1.5重量部を混合し粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を調製した。
ブチルアクリレート 79重量部
エチルアクリレート 15重量部
アクリル酸 1重量部
2ーヒドロキシエチルアクリレート 5重量部
光重合開始剤 0.2重量部
(イルガキュア651、50%酢酸エチル溶液)
ラウリルメルカプタン 0.02重量部
【0047】
更に、粘着剤(1)の酢酸エチル溶液の樹脂固形分100重量部に対して、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)100重量部を混合して、気体発生剤を含有する粘着剤(2)を調製した。
【0048】
<支持テープの作製>
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を、両面にコロナ処理を施した厚さ100μmの透明なPETフィルムの片面に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(1)層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(1)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。
【0049】
粘着剤(1)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約15μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(1)層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(1)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。
【0050】
次いで、粘着剤(1)層を設けたコロナ処理を施したPETフィルムの粘着剤(1)層のない面と、粘着剤(1)層を設けた離型処理が施されたPETフィルムの粘着剤(1)層の面とを貼り合わせた。これにより両面に粘着剤層が設けられ、離型処理が施されたPETフィルムで表面を保護された支持テープ1を得た。
【0051】
別に、粘着剤(2)の酢酸エチル溶液を、表面に離型処理が施されたPETフィルムの上に乾燥皮膜の厚さが約10μmとなるようにドクターナイフで塗工し110℃、5分間加熱して溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させた。乾燥後の粘着剤(2)層は乾燥状態で粘着性を示した。次いで、粘着剤(2)層の表面に離型処理が施されたPETフィルムを貼り付けた。
【0052】
支持テープ1の片側の粘着剤(1)層を保護する表面に離型処理が施されたPETフィルムを剥がし、粘着剤(2)層が形成された表面に離型処理が施されたPETフィルムの粘着剤(2)層と貼り合わせた。その後、40℃、3日間静置養生を行った。
これにより一方の面に粘着剤(1)層を、他方の面に粘着剤(1)層の表層部分に粘着剤(2)からなるプライマー層を有し、粘着剤層が表面に離型処理が施されたPETフィルムで保護された支持テープ2を得た。
【0053】
(研磨工程)
支持テープ2の粘着剤(2)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cm、厚さ約750μmのシリコンウエハに貼り合わせた。次に、粘着剤(1)層を保護するPETフィルムを剥がし、直径20.4cmのガラス板に減圧環境の下で貼り合わせた。支持テープ2を介してシリコンウエハと接着させたガラス板を研磨装置に取り付け、シリコンウエハの厚さが約50μmになるまで研磨した。研磨終了後、シリコンウエハが接着されているガラス板を研磨装置から取り外し、ダイシングテープをシリコンウエハの上に貼り付けた。
【0054】
(ウエハの剥離工程)
セラミック多孔質板(平均孔径40μm)からなる固定板と真空ポンプとを備え、真空ポンプを作動させることによりウエハ全体を吸引固定できる紫外線照射装置を用い、セラミック多孔質板上に、シリコンウエハを貼り付けたダイシングテープを置き、減圧吸引を行いながら、ガラス板側から超高圧水銀灯を用いて、ガラス板表面への照射強度が40mW/cm2となるよう照度を調節した365nmの紫外線を2分間照射した後、減圧吸引を行いながらガラス板を真上に引っ張って支持テープ2をシリコンウエハから剥がした。
【0055】
(ダイシング工程)
続いて、ダイシングテープで補強されたシリコンウエハをダイシング装置に取りつけ、ウエハ側からカッター刃を切り入れシリコンウエハをICチップの大きさに切断した。次いで、ダイシングテープを剥がしICチップを得た。
【0056】
支持テープ2を用いることにより、ICチップと支持板とを高い接着強度で接着することができ、この状態で研磨することによりウエハを破損することなく約50μmの厚さに研磨することができた。研磨後には紫外線を照射して気体発生剤から気体を発生させることにより、支持テープの粘着力が著しく低下し、容易にウエハを剥離することができた。また、この際ウエハ全体をダイシングテープ側から均一に減圧吸引したことにより、発生した気体の圧力によりウエハが破損したり、変形したりすることもなかった。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ウエハを厚さ50μm程度まで極めて薄くした場合においても、ウエハの破損等を防止し、取扱い性を改善し、良好にICチップへの加工が行える。
Claims (1)
- 厚さ20〜80μmのICチップを製造する方法であって、少なくとも、刺激により気体を発生する気体発生剤を含有する粘着剤(A)層からなる面と粘着剤(B)層からなる面とを有する支持テープを介して、ウエハを支持板に固定する工程、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定した状態で研磨する工程、研磨した前記ウエハにダイシングテープを貼り付ける工程、前記粘着剤(A)層に前記刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程、及び、前記ウエハのダイシングを行う工程を有するICチップの製造方法であって、前記支持テープを介して前記ウエハを前記支持板に固定する工程において、前記粘着剤(A)層からなる面と前記ウエハとを貼り合わせ、前記粘着剤(B)層からなる面と前記支持板とを貼り合わせるものであり、前記粘着剤(A)層に刺激を与えて前記ウエハから前記支持テープを剥離する工程において、通気性のある平滑な固定板と減圧装置とを備えた設備を用い、前記ウエハが貼り付けられたダイシングテープを前記通気性のある平滑な固定板上に置いて前記ウエハ全体を前記通気性のある平滑な固定板の反対側から減圧吸引しながら上記粘着剤(A)層に刺激を与えた後、減圧吸引しながら前記支持板を真上に引っ張って、前記ウエハから前記支持テープと支持板とを同時に剥離することを特徴とするICチップの製造方法。
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