JP2004152449A - 磁気メモリ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外部磁場に応じて磁化の向きを変える記憶層を有する磁気抵抗効果素子を備えているメモリセルと、磁場を発生し、前記磁気抵抗効果素子の磁化方向を反転させる場合に、前記記憶層の磁化方向を基準にして0度より大きく90度より小さい第1角度を有する第1磁場を記憶層に作用させ、さらに第1角度より大きい第2角度を有する第2磁場を記憶層に作用させる磁場発生機構と、を備えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気メモリに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、メモリセルに、巨大磁気抵抗効果を示す磁気抵抗効果素子を用いた磁気メモリが提案されており、特に、磁気抵抗効果素子として強磁性トンネル接合を有する強磁性トンネル接合素子を用いた磁気メモリに注目が集まっている。
【0003】
強磁性トンネル接合は、主に第1強磁性層/絶縁層/第2強磁性層の3層膜で構成され、絶縁層をトンネルして電流が流れる。この場合、接合抵抗値は第1および第2強磁性層の磁化の相対角の余弦に比例して変化する。したがって、抵抗値は、第1および第2強磁性層の磁化が平行のときに極小値、反平行のときに極大値をとる。これはトンネル磁気抵抗(TMR)効果と呼ばれている。TMR効果による抵抗値変化は室温において49.7%にもなることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
メモリセルとして強磁性トンネル接合素子を含む磁気メモリにおいては、第1および第2強磁性層の一方の強磁性層の磁化を固定して磁化基準層とし、他の強磁性層を磁化記憶層とする。このセルにおいて、磁化基準層と磁化記憶層の磁化の配置が平行または反平行に対し2進情報“0”、“1”を対応づけることで情報が記憶される。記録情報の書き込みは、このメモリセルに対し別に設けた書き込み配線に電流を流して発生する磁場により磁化記憶層の磁化を反転させる。また、読み出しは、強磁性トンネル接合素子に電流を流し、TMR効果による抵抗変化を検出することで行われる。磁気メモリは、このようなメモリセルを多数配置することで大容量のメモリとして構成される。
【0005】
実際の構成については、任意のひとつのセルを選択できるように、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)と同様に各セルに対しスイッチングトランジスタを配置し、周辺回路を組み込んで構成される。また、ワード線とビット線が交差する位置にダイオードとあわせて強磁性トンネル接合素子を組み込む方式も提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
さて、強磁性トンネル接合素子をメモリセルとして用いる磁気メモリを高集積化する場合を考えると、メモリセルの大きさは小さくなり、メモリセルを構成する強磁性トンネル接合素子の強磁性層の大きさも必然的に小さくなる。このような有限の大きさの磁性薄膜においては、一般に、磁気的状態として複数の磁区からなる複雑な磁区構造をとる。特に、記憶層が長方形の形状のメモリセルの場合、その長軸方向の端部の領域に中央部とは異なる方向に向いた磁化をもつ、いわゆるエッジドメインがあることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。このようなエッジドメイン領域があると、メモリセル全体の磁化が低下し、その結果、TMR効果の抵抗変化率が低下することになる。また、磁化反転における磁気的構造パターンの変化が複雑になるため、ノイズの発生原因となるばかりでなく、保磁力が大きくなり、スイッチング磁場が増大する。
【0007】
複雑な磁区構造となるのを防止するために、記憶層の形状が、磁化容易軸に対して非対称になっている、特に平行四辺形であるメモリセルが提案されている(特許文献3参照)。このような形状の記憶層をメモリセルが有すると、エッジドメインの領域が小さくなり、メモリセル全体にわたってほぼ単一の磁区を形成するようになる。
【0008】
一方、上述の磁化反転における複雑な磁気的構造パターンの変化が生じることをできるだけ防ぐ方法として、メモリセル端部にハードバイアスをかけるような構造を付加してエッジドメインを固定することが考えられている(例えば、特許文献4、5参照)。
また、セルの磁化容易軸に対して垂直方向に突き出した部分を備えた“H”または“I”型の形状を持たせることにより、エッジドメインを安定化するとともに、複雑な磁区を構成することを避けることが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0009】
また、強磁性トンネル接合素子をメモリセルとして用いる磁気メモリを高集積化すると、メモリセルの大きさは小さくなり、メモリセルを構成する強磁性体の大きさも必然的に小さくなる。一般に、強磁性体が小さくなると、その保磁力は大きくなる。保磁力の大きさは磁化を反転するために必要なスイッチング磁場の大きさの目安となるので、これはスイッチング磁場の増大を意味する。よって、ビット情報を書き込む際には、より大きな電流を書き込み配線に流さなければならなくなり、消費電力の増加、配線寿命の短命化など、好ましくない結果をもたらす。従って、磁気メモリのメモリセルに用いられる強磁性体の保磁力を低減することは高集積化磁気メモリの実用化において重要な課題である。
【0010】
保持力を低減するために、記憶層として、少なくとも二つの強磁性層を含み、それらの間に介在する非磁性層からなる多層膜において、上記の強磁性層の間に反強磁性結合を含むものを用いることが提案されている(特許文献7、8、9参照)。この場合、二つの強磁性層は、その磁気モーメントまたは厚さが異なっており、反強磁性的結合により磁化が逆方向を向いている。このため、実効的に互いに磁化が相殺し、記憶層全体としては、磁化容易軸方向に小さな磁化を持った強磁性体と同等と考えることができる。この記憶層のもつ磁化容易軸方向の小さな磁化の向きと逆向きに磁場を印加すると、各強磁性層の磁化は、反強磁性結合を保ったまま反転する。このため、磁力線が閉じていることから反磁場の影響が小さく、記憶層のスイッチング磁場は、各強磁性層の保磁力により決まるので、小さなスイッチング磁場によって記憶層の磁化の反転が可能になる。
【0011】
なお、磁性層の間に層間結合がない場合は、磁性層からの洩れ磁場による静磁結合による相互作用が存在するが、この場合については、上記層間結合がある場合と同様にスイッチング磁場が低減することが知られている(非特許文献3参照)。しかし、磁性層間の層間結合がなく、静磁結合のみが存在する場合には、磁化のつくる磁気的構造が不安定であり、また、ヒステリシス曲線または磁気抵抗曲線における角型比が小さく、大きな磁気抵抗比を得ることが困難であり、磁気抵抗効果素子として用いるのは好ましくない。
【0012】
【非特許文献1】
Appl. Phys. Lett. 77、 283 (2000)
【特許文献1】
米国特許第5,640,343号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,650,958号明細書
【非特許文献2】
J.App.Phys.81、5471(1997)
【特許文献3】
特開平11−26344号公報
【特許文献4】
米国特許第5,748,524号明細書
【特許文献5】
特開2000−100153号公報
【特許文献6】
米国特許第6,205,053号明細書
【特許文献7】
特開平9−25162号公報
【特許文献8】
特願2001−156358号公報
【特許文献9】
米国特許第5,953,248号明細書
【非特許文献3】
第24回日本応用磁気学会学術講演会12aB−3、12aB−7、第24回日本応用磁気学会学術講演概要集p.26、27
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、記憶層の磁区が複雑化することを避け、エッジドメインを安定化することは、大きくてノイズの少ない出力信号を得るために必要不可欠な要素である。しかしながら、一般に、記憶層の形状が平行四辺形の場合においては、磁区構造が簡単になり、ほぼ単一磁区となるため、保磁力またはスイッチング磁場が大きくなる。
【0014】
メモリセルの端部にエッジドメインを固定するためにハードバイアス構造を付加することにより、磁化反転の際の磁気的構造パターンの変化が複雑になることを抑制できるが、この場合も保磁力が増加する。同時に、エッジドメインを固定するために別の構造を付加する必要があり、大容量メモリなどに要求される高密度化には適さない。
【0015】
また、記憶層の形状が“H”または“I”型の場合においては、突き出し形状の効果を有効にするためには突き出し部分を大きくする必要がある。この場合、メモリセルの占める面積が実質的に増加してしまい、やはり大容量メモリなどに要求される高集積化が困難となる。
【0016】
上記のように、記憶層の磁化を反転するのに必要なスイッチング磁場を低減することは、磁気メモリの実現において必要不可欠な要素である。このスイッチング磁場を低減するために、記憶層として、非磁性金属層を介した反強磁性結合を含む多層膜を用いることが提案されている。しかしながら、高集積化磁気メモリに用いられるような小さなメモリセル内におかれる微小な強磁性体においては、例えば、その短軸の幅が数ミクロンからサブミクロン程度になると、磁化領域の端部においては反磁場の影響により、磁性体の中央部分の磁気的構造とは異なる磁気的構造が生じることが知られている。このような端部の磁気的構造は、エッジドメインと呼ばれている(例えば、J. App. Phys. 81、 5471 (1997) 参照)。このような磁気構造の一例は、図15に示されており、磁化領域の中央部分においては磁気異方性に従った方向に磁化が生じるが、両端部においては、中央部分と異なる方向に磁化が生じる。微小強磁性体40の磁気的構造は、図15(a)に示すC型構造と、図15(b)に示すS型構造がある。
【0017】
上述したように、高集積化磁気メモリのメモリセルに用いられる微小な磁性体においては、その端部に生じるエッジドメインの影響が大きく、磁化反転における磁気的構造パターンの変化が複雑になる。その結果、保磁力が大きくなり、またスイッチング磁場が増大する。このため、安定な磁化反転が得られず、ない。
【0018】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことのできる磁気メモリを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様による磁気メモリは、外部磁場に応じて磁化の向きを変える記憶層を有する磁気抵抗効果素子を備えているメモリセルと、磁場を発生し、前記磁気抵抗効果素子の磁化方向を反転させる場合に、前記記憶層の磁化方向を基準にして0度より大きく90度より小さい第1角度を有する第1磁場を記憶層に作用させ、さらに前記第1角度より大きい第2角度を有する第2磁場を記憶層に作用させる磁場発生機構と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
なお、前記第1角度は45度以上90度未満であることが好ましい。
【0021】
なお、前記第2角度は90度より大きく180度より小さいことが好ましい。
【0022】
なお、前記磁場発生機構から発生される前記第1および第2磁場は、前記磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向に配置された第1配線と前記磁気抵抗効果素子の磁化困難軸方向に配置された第2配線に流れる電流によって生じる電流磁場であり、前記第1および第2配線のうちの一方の配線に流れる電流が一定とされ、他方の配線に流れる電流の向きが変化することが好ましい。
【0023】
なお、前記磁場発生機構から発生される前記第1および第2磁場は、前記磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向に配置された第1配線と前記磁気抵抗効果素子の磁化困難軸方向に配置された第2配線に流れる電流によって生じる電流磁場であり、前記電流が零から負極性または正極性の一方の極値に到達するまでの遷移時間、前記一方の極値から他方の極値に到達するまでの遷移時間、および前記他方の極値から零に到達するまでの遷移時間は、いずれも1nsec以上であることが好ましい。
【0024】
なお、前記磁気抵抗効果素子の前記記憶層は、非磁性層を介して第1および第2強磁性層が積層された構造を有していても良い。
【0025】
前記磁場発生機構から発生される磁場は連続した曲線に沿って変化するように構成しても良い。
【0026】
なお、前記磁気抵抗効果素子は、強磁性トンネル接合素子であっても良い。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による磁気メモリを、図1乃至図7を参照して説明する。
【0029】
本実施形態による磁気メモリの構成を図3に示す。この実施形態による磁気メモリは、マトリクス状に配置されたメモリセル2と、複数の書き込み用ビット線BLと、複数の読み出し用ビット線BLRと、複数の書き込み用ワード線WLと、複数の読み出し用ワード線WLRと、ビット線駆動回路21と、ワード線駆動回路23と、センスアンプ25とを備えている。メモリセル2は、磁気抵抗効果素子3と、選択トランジスタ6を備えている。各メモリセル2の磁気抵抗効果素子3は、一端が対応する書き込みビット線BLに接続され、他端が選択トランジスタ3のソース・ドレインの一方に接続される。また各メモリセル2の選択トランジスタ6は、対応する読み出し用ワード線WLRによって選択され、ソース・ドレインの他方が読み出し用ビット線BLRに接続される。ビット線駆動回路21は書き込み時に書き込み用ビット線BLに電流を流し、読み出し時に読み出し用ビット線BLRおよび書き込み用ビット線BLに電圧を印加する。ワード線駆動回路23は書き込み時に書き込み用ワード線WLに電流を流し、読み出し時に読み出し用ワード線WLRに所定の電圧を印可することによりこのワード線WLRに接続された選択トランジスタ6をONさせる。また、センスアンプ25は、メモリセルに記憶されたデータの読み出し時に、読み出し用ビット線BLRおよび書き込み用ビット線BL間に流れる電流を測定する。
【0030】
本実施形態によるメモリセル2の詳細な構成を図2に示す。このメモリセル2は、対応する書き込みビット線BLと対応する書き込みワード線WLとの交差点に設けられた磁気抵抗効果素子3と、読み出し時に上記磁気抵抗効果素子3を選択するための選択トランジスタ6とを備えている。磁気抵抗効果素子3の一端が対応する書き込みビット線BLに接続され、他端が引き出し電極4および接続プラグ5を介して選択トランジスタ6のソース・ドレインの一方に接続されている。選択トランジスタ6のゲートは読み出し用ワード線WLRを兼ねている。また、選択トランジスタ6のソース・ドレインの他方には図2には示していない読み出し用ビット線BLRに接続される。
【0031】
また、本実施形態に用いられる磁気抵抗効果素子3は、図4に示すように、磁化の方向が固定された、記憶層となる強磁性層3a、絶縁層3b、基準層となる強磁性層3cが積層された強磁性トンネル接合構造を有している強磁性トンネル接合素子である。なお、磁気抵抗効果素子3として、図5に示すように、2重の強磁性トンネル接合、すなわち記憶層となる強磁性層3aの両側に絶縁層3b1、3b2を介して基準層となる強磁性層3c1、3c2が積層された2重強磁性トンネル接合構造を有している強磁性トンネル接合素子を用いても良いし、通常の磁気抵抗効果素子を用いても良い。
【0032】
次に、本実施形態による磁気メモリの記憶層3aの磁化反転方法を説明する前に、まず、比較的単純なモデルを用いて、磁化容易軸方向を向いている記憶層3aに磁場を印加したときに発生するトルクについて説明する。
【0033】
本実施形態に用いられる磁気抵抗効果素子の中で、記憶層となる強磁性層に注目する。この強磁性層は、大きさとして例えば幅が0.1μm〜1.0μm、長さが0.1μm〜3.0μm、厚さが1.0nm〜10nmである。この程度の大きさの強磁性薄膜では、磁化は大部分が磁化容易軸方向を向いていると考えても良い。従って、強磁性層全体が単一の磁区を形成しており、磁化をひとつのベクトルで表現する単磁区モデルを用いることができる。実際には、強磁性層の材料、構造、形状、磁性で大きく変化する場合もあるが、その場合に対しても、単磁区モデルは基本となるモデルとして扱うことが可能である。
【0034】
さて、一軸異方性をもつ単磁区モデルの自由エネルギーEは以下のように表される。
【0035】
【数1】
ここで、Kuは異方性エネルギー、θは強磁性薄膜の飽和磁化Msと磁化容易軸とのなす角度、αは印加磁場Hと磁化容易軸のなす角度である。実現する磁化方向は、自由エネルギーEを最小にするように決定される。その結果、アステロイド曲線により磁化方向の変化が表される。さらに、磁化ベクトルに作用するトルクが−∂E/∂θで決められる。シミュレーションによって計算したトルクの特性グラフを図6に示す。図6において、横軸は角度αを表し、縦軸は最大トルクによって正規化されたトルクを表している。図6に示すトルク曲線は、印加磁場Hを異方性磁場Hk(=2Ku/Ms)で正規化した磁場h(=H/Hk)の大きさをパラメータとして表したものである。パラメータhが十分大きいときは異方性エネルギーが小さい場合に対応し、無限大では異方性がない。パラメータhが無限大の場合のトルク曲線は正弦関数で表され、印加磁場の磁化容易軸とのなす角度αが45度と135度のときに極値を取ることが図6からわかる。すなわち、この場合に磁化ベクトルは最大のトルクを受けているため、磁化の反転に最も効果的である。パラメータhが小さくなると、最大トルクを与える印加磁場の磁化容易軸とのなす角度は、45度より大きい角度と135度より小さい角度でそれぞれ極値を取る。パラメータhが更に小さくなってhが0.5より小さくなると、最大トルクを与える印加磁場の磁化容易軸とのなす角度は一つになり、例えば、h=0.3のときに120度近傍に現れることが分かる。
【0036】
次に、本実施形態による磁気メモリの記憶層3aの磁化反転方法を、図1(a)、(b)を参照して説明する。
【0037】
図1(a)は、本実施形態に用いられる磁気抵抗効果素子の記憶層である強磁性層3aの上面図である。図2で説明したように、記憶層3aの下側に書き込みワード線WLが配置され、上側に書き込みビット線BLが配置された構成となっている。そして、書き込みワード線WLは記憶層3aの磁化容易軸方向に配置され、書き込みビット線BLは磁化困難軸方向に配置されている。
【0038】
記憶層3a初期状態では、記憶層3aの磁化は図1(a)に示すように、磁化容易軸方向であってかつ右を向いているとする。本実施形態においては、この記憶層3aの磁化方向を反転させる印加磁場として、まず、記憶層3aの上記磁化方向を基準にして第1角度θ1を有する第1磁場Hext1を作用させて記憶層3aの磁化を第1磁場Hext1の方向に回転させ、その後に、記憶層3aの最初の磁化方向(図1(a)に示す右方向)を基準にして第2角度θ2を有する第2磁場Hext2を作用させ記憶層3aの磁化を第2磁場Hext2の方向に回転させ、その後、第2磁場Hext2を零にすることにより、記憶層3aの磁化を反転させるものである。
【0039】
このとき、第1角度θ1としては、図6のトルク曲線から分かるように、0度より大きく90度よりも小さい角度であれば、負のトルク、すなわち図1(a)に示す記憶層3aの磁化が第1磁場Hext1に向かって反時計方向に回転するトルクが発生し、90度よりも大きく180度よりも小さい角度で有れば、正のトルク、すなわち記憶層3aの磁化が第1磁場Hext1に向かって時計方向に回転するトルクが発生する。すなわち、第1角度θ1が、0度より大きく90度よりも小さい角度であっても、90度よりも大きく180度よりも小さい角度であっても、記憶層3aの磁化を回転させるトルクは発生する。
【0040】
第1角度θ1が0度より大きく90度よりも小さい角度の場合は、第1角度θ1が90度より大きく180度よりも小さい角度の場合に比べて、記憶層3aの磁化の回転角度が小さいので、記憶層3aの初期ドメインを大きく変形させることなく磁化回転することが可能となる。しかし、第1角度θ1が90度より大きく180度よりも小さい角度の場合は、記憶層3aの磁化の回転角度が大きいため、磁化の回転に伴い、記憶層3aの中央部分のドメインとエッジドメインの境界領域付近に新たなドメインウォールが生じやすくなり、安定した磁化反転を行うことができない。そして、ドメインウォールが生じて残留すると、磁気抵抗効果素子のMR比が悪化するという問題が発生する。
したがって、本実施形態においては、安定した磁化反転を行うために、第1角度θ1としては0度より大きく90度よりも小さい角度が選択される。また、第2磁場Hext2を印加するときの記憶層3aの磁化は、第1磁場Hext1と磁気異方性のかねあいで釣り合った位置で安定化しているので、第1磁場Hext1と磁気異方性の方向(初期磁化方向)の間にある。このため、第2磁場Hext2を印加する場合は、上述したことから、第2角度θ2と記憶層3aの磁化方向との差が0度より大きく90度よりも小さい角度が選択される。例えば、第2角度θ2としては、90度よりも大きく180度よりも小さい角度が選択される。なお、図6のトルク曲線から分かるように、トルクが最大になるのは記憶層3aの磁化方向と印加磁場とのなす角度が45度以上90度未満の場合であるので、第1角度θ1としては、45度以上90度未満であることが好ましい。
【0041】
このような第1磁場Hext1および第2磁場Hext2を発生させるには、ビット線BLおよびワード線WLに図1(b)に示す電流を流せば良い。なお、ビット線BLおよびワード線WLに流れる電流の向きは、図1(a)に示す矢印の方向を正とする。図1(b)に示すように、まず、ビット線BLに負の所定電流を流すとともにワード線WLに正の所定電流を流す。すると、上記電流によって発生する電流磁場が合成された上記第1磁場Hext1が発生する。その後、ビット線BLの電流の向きを変えて、負の所定電流から正の所定電流に変化させる。すると、ビット線BLおよびワード線WLに流れる上記電流による電流磁場が合成された上記第2磁場Hext2が発生する。
【0042】
図1(b)に示すように、本実施形態においては、ワード線WLに単極パルス、ビット線BLには双極パルスを印加している。この電流パルスパターンにおいて、ワード線とビット線のそれぞれのパルス高さはそれぞれによって発生される磁場が合成されたときの方向を決めており、ワード線WLとビット線BLのパルスのそれぞれの高さをそれぞれIw1、Ib1とすると、合成磁場の角度θは磁化容易軸からみて関係式
tanθ=|Iw1|/|Ib1|
で決められる。これらのパルス高さは同じであっても良く、同じでなくとも良い。
【0043】
図7は図1(a)に示した書き込み電流パターンによる磁化反転の様子を示した特性曲線である。この特性曲線は、LLG(Landau−Lifshitz−Gilbert)方程式に基づいて数値計算をしたものである。この計算では、記憶層として、幅が0.4μm、長さが0.8μm、厚さが3nmのNiFe薄膜(Ms=800emu/cm2、Ku=1.0×104erg/cm3)が用いられている。
【0044】
ここでは、磁化容易軸から45°方向に初期磁場を3.0nsecの時間だけ印加し、続いて3.0nsecの時間だけ135°方向に印加した場合を示しており、印加磁場の大きさが20、30、40Oeの3通りの場合をそれぞれ特性グラフg1、g2、g3に示す。この特性グラフから分かるように印加磁場の大きさが20Oeでは記憶層3aの磁化が反転せず、印加磁場の大きさが30Oe以上では記憶層3aの磁化が反転している。より詳細に計算すると、磁化反転するのに必要な最小の印加磁場は約28Oeであった。したがって、本実施形態による磁気メモリの記憶層3aの磁化を反転させるには、大きさがかなり小さいスイッチング磁場でも良く、このため、少ない電流でも良いことが分かる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶層3aの磁化方向を基準にして0度より大きく90度未満の第1角度を有する第1磁場を作用させ、その後90度より大きく180度以下の第2角度を有する第2磁場を作用させることにより、磁気メモリを高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことができる。また、スイッチング磁場が小さいため、省電力化を達成することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、メモリセルが磁気抵抗効果素子と選択トランジスタから構成された磁気メモリであったが、図8に示すように、ダイオード付き単純クロスポイント型のメモリセルであっても良い。すなわち、ワード線WL上にダイオード8と磁気抵抗効果素子3からなるセルを積層して形成し、磁気抵抗効果素子3上にビット線BLを配置して形成した構成としても良い。この場合、ワード線WLおよびビット線BLは、書き込み時ばかりでなく読み出し時にも用いられる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による磁気メモリを図9(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の磁気メモリは、書き込みビット線BLに流す電流が異なる以外は、第1実施形態の磁気メモリと同じ構成となっている。図9(a)に本実施形態において、書き込みビット線BLおよび書き込みワード線WLに流す電流の波形図を示し、このとき発生する電流磁場による合成磁場を図9(b)に示す。ワード線WLに単パルス、ビット線BLには三角双極パルスを印加したものである。この電流パルスのパターンにおいて、ワード線WLとビット線BLのそれぞれのパルス高さが、それぞれによって発生される磁場が合成されたときの方向を決めており、ワード線WLとビット線BLの電流パルスのそれぞれの高さを|Iw1|、|Ib1|とすると,合成磁場の角度は磁化容易軸からみて関係式
tanθ=|Iw1|/|Ib1|
で決められる。これらのパルス高さは同じであっても良く、同じでなくとも良い。ただし、|Iw1|は一定であることが特徴である。
【0048】
本実施形態においては、図9(a)に示す電流パルスがビット線BLおよびワード線WLに印加されるので、図9(b)に示すように、まず、記憶層3aに第1角度θ1を有する第1磁場Hext1を作用させて、記憶層3aの磁化を第1磁場Hext1の方に回転させ、その後、第2角度θ2を有する第2磁場Hext2を作用させて記憶層3aの磁化を第2磁場Hext2の方向に回転させた後、第2磁場Hext2を零にするものである。ここで、第1実施形態と同様に、安定した磁化反転を行うために、第1角度θ1としては0度より大きく90度よりも小さい角度が選択され、第2角度θ2としては、90度よりも大きく180度よりも小さい角度が選択される。なお、第1実施形態と同様に、第1角度θ1としては、45度以上90度未満であることが好ましい。
【0049】
また、ビット線BLが負から正に直線的に遷移するので、第1磁場Hext1から第2磁場Hext2に変化するときに、ビット線BLに流れる電流による電流磁場が零になる磁化困難軸方向に向く磁場Hextが現れる。そして、第1磁場Hext1から第2磁場Hext2に変化するときには、ワード線WLに流れる電流は一定であるので、ワード線WLによる電流磁場は一定となる。このため、磁場Hext1、Hext2、Hextの磁化困難軸方向の成分は一定となり、図9に示すように、磁場Hext1、Hext2、Hextを示す矢印の先端は、破線で示す直線30に沿って動くことになる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶層3aの磁化方向を基準にして0度より大きく90度未満の第1角度を有する第1磁場を作用させ、その後90度より大きく180度以下の第2角度を有する第2磁場を作用させることにより、磁気メモリを高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことができる。また、スイッチング磁場が小さいため、省電力化を達成することができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による磁気メモリを図10を参照して説明する。本実施形態の磁気メモリは、書き込みビット線BLに流す電流が異なる以外は、第1実施形態の磁気メモリと同じ構成となっている。図10に本実施形態において、書き込みビット線BLおよび書き込みワード線WLに流す電流の波形図を示す。ビット線BLに流れる電流パルスは、その極性を変えるときには1nsec以上の遷移時間幅をもって値を徐々に変えている。また、図10の点線で示されているように、ワード線WLの電流パルスが切れた後、しばらくしてビット線BLの電流パルスが切れている。これは、電流パルスにより引き起こされた記憶層3aの磁化反転を安定的に終了するためである。
【0052】
なお、本実施形態においても、図10に示す電流パルスから分かるように、まず、記憶層3aに第1角度を有する第1磁場を作用させて、記憶層3aの磁化を第1磁場の方に回転させ、その後、第2角度を有する第2磁場を作用させて記憶層3aの磁化を第2磁場の方向に回転させた後、第2磁場を零にするものである。ここで、第1実施形態と同様に、安定した磁化反転を行うために、第1角度としては0度より大きく90度よりも小さい角度が選択され、第2角度としては、90度よりも大きく180度よりも小さい角度が選択される。なお、第1実施形態と同様に、第1角度としては、45度以上90度未満であることが好ましい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶層3aの磁化方向を基準にして0度より大きく90度未満の第1角度を有する第1磁場を作用させ、その後90度より大きく180度以下の第2角度を有する第2磁場を作用させることにより、磁気メモリを高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことができる。また、スイッチング磁場が小さいため、省電力化を達成することができる。
【0054】
なお、ビット線BLに流れる電流については、ビット線BLに電流パルスが流れてから負極性の極値に到達するまでの遷移時間(以下、立ち上がり時間とも云う)t1(図11(a)参照)、負極性の極値から正極性の極値に到達するまでの遷移時間t2(図11(b)参照)、正極性の極値から零に到達する遷移時間(立ち下がり時間とも云う)t3(図11(c)参照)は、1nsec以上であることが好ましい。
【0055】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による磁気メモリを図12(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の磁気メモリは、書き込みビット線BLに流す電流が異なる以外は、第1実施形態の磁気メモリと同じ構成となっている。図12(a)に本実施形態において、書き込みビット線BLおよび書き込みワード線WLに流す電流の波形図を示し、このとき発生する電流磁場による合成磁場を図12(b)に示す。ワード線WLに単パルス、ビット線BLには三角双極パルスを印加したものである。
【0056】
この図12(a)に示す電流パルスは、ワード線WLの電流とビット線BLの電流により生成される合成磁場が、その大きさと方向を連続的に変化するように制御された例を示している。特に、ワード線WLの電流とビット線BLの電流の立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t3のタイミングをほぼ同時に制御している。この場合に生成される磁場は、図12(b)に示されている。すなわち、初期磁場としてHext1で示される斜め方向で磁化容易軸と並行ではない磁場が印加され、ビット線BLの電流の変化とともに合成磁場は大きさを変えるとともに、角度も磁化容易軸に対し垂直方向に変化する。ビット線BLの電流がちょうど零になったところで、合成磁場は磁化容易軸に対し90度となる。このときの磁場が、図12(b)のHextで表されている。ビット線BLの電流が更に変化すると、合成磁場も大きさを変えながら角度を変えていき、図12(b)のHext2で示される磁場になる。
【0057】
図12(b)に示す第1磁場Hext1と第2磁場Hext2は、磁化容易軸に対して垂直方向を対称軸として対称の関係に設定することが可能である。また、対称に設定しなくともよい。
【0058】
また別の設定として、図12(a)で示したワード線WLの電流パルスとビット線BLの電流パルスの立下りのタイミングを同時にしなくても良い。
【0059】
また、図12(a)では三角波を示しているが、実際にはその頂点がある曲率をもつなだらかな曲線で表される、図13に示すような電流パルスであっても良い。さらに、大きな曲率を持ち、例えば三角関数で近似されるかまたは三角関数で正確に表される電流パルスであっても良い。また、ビット線BLの電流は、ピーク値を取った後、その値を一定の時間だけ保持するようなパターンであっても良い。
【0060】
本実施形態においては、図12(a)に示す電流パルスがビット線BLおよびワード線WLに印加されるので、図12(b)に示すように、まず、記憶層3aに第1角度θ1を有する第1磁場Hext1を作用させて、記憶層3aの磁化を第1磁場Hext1の方に回転させ、その後、第2角度θ2を有する第2磁場Hext2を作用させて記憶層3aの磁化を第2磁場Hext2の方向に回転させた後、第2磁場Hext2を零にするものである。ここで、第1実施形態と同様に、安定した磁化反転を行うために、第1角度θ1としては0度より大きく90度よりも小さい角度が選択され、第2角度θ2としては、90度よりも大きく180度よりも小さい角度が選択される。なお、第1実施形態と同様に、第1角度θ1としては、45度以上90度未満であることが好ましい。
【0061】
また、ビット線BLが負から正に直線的に遷移するので、第1磁場Hext1から第2磁場Hext2に変化するときに、ビット線BLに流れる電流による電流磁場が零になる磁化困難軸方向に向く磁場Hextが現れる。そして、第1磁場Hext1から第2磁場Hext2に変化するときには、ワード線WLに流れる電流は一定であるので、ワード線WLによる電流磁場は一定となる。このため、磁場Hext1、Hext2、Hextの磁化困難軸方向の成分は一定となり、図9に示すように、磁場Hext1、Hext2、Hextを示す矢印の先端は、破線で示す直線30に沿って動くことになる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、記憶層3aの磁化方向を基準にして0度より大きく90度未満の第1角度を有する第1磁場を作用させ、その後90度より大きく180度以下の第2角度を有する第2磁場を作用させることにより、磁気メモリを高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことができる。また、スイッチング磁場が小さいため、省電力化を達成することができる。
【0063】
なお、上記第1乃至第4実施形態においては、電流パルスパターンは説明を簡単にするために、ステップ数が1または2の場合のみを記述した。しかし、本発明ではそれに限ることなく、複数ステップを持つことが可能である。この場合には、例えば上記の三角関数パルスを複数ステップをもつ階段パルスの合成として表すことができ、本発明の磁気メモリに用いられるデジタル回路に好適である。
【0064】
なお、パルスの幅、高さと磁化反転の関係について、文献(Physical ReviewLetters,81(1998),pp.4512)では
【数2】
であらわされる関係式が成り立つことが示されている。ここで、τはスイッチング時間、Bpulse(τ)はパルスの発生磁場、Bcは磁気記憶層の保磁力に対応する磁束、Swはスイッチング係数である。消費電力の観点からは、パルス幅が短くなるに伴い消費電力が大きくなるため、パルス幅はできるだけ長いほうが好ましい。
【0065】
これらのことから、この関係式によりパルス幅が1nsecより小さくなると磁化反転に必要なパルス高さが急激に大きくなることが示されるので、パルス幅は 1nsec以上であることが好ましい。
【0066】
図4または図5に示す二重トンネル接合で、大きさが 0.4×1.2μm2のものについて、BLにパルス電流を繰り返し流して“0”と“1”を交互に書き込んだときの読み出しの出力電圧をオシログラフに表示したときの一例を図14に示す。この図14には2チャンネルの出力が示されており、第1チャネルはパルス幅5nsec、パルス立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t3が共に1nsec未満、パルス高さ2.5Vに対応した出力、第2チャンネルは、パルス幅5nsec、パルス立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t3が共に3nsec、パルス高さが2.5Vに対応した出力を示している。なお、パルス高さが2.5Vより高いと、1nsec未満でも読み出しは可能となるが、昇圧回路が複雑化することになる。
【0067】
この図14に示すように、パルスの幅と高さを一定にして、立ち上がり時間t1と立ち下がり時間t2に対する出力の依存性を調べてみると、図14の第1チャネルに示すようにビット線BLに書き込み電流を流しているにもかかわらず、立ち上がり時間t1および立下り時間t3が共に1nsec未満では読み出し出力信号に変化が見られない。すなわち、書き込みができていない。一方、立ち上がり時間t1および立下り時間t3を共に3nsecにした場合には、図14の第2チャネルに示すように、書き込み電流に対応して“0”と“1”の出力電圧変化が正しく見られる。
【0068】
一般に、正しく書き込みできるために要求される書き込み電流の立ち上がり・立下り時間は、書き込み電流パルス高さに依存する。しかし、例えば、1nsec以上であれば正しく書き込みができることが、図14に示されている。よって、書き込み電流パルスについて、立ち上がり時間と立ち下がり時間に実際上は制限があり、1nsec以上であることが好ましく、3nsec以上であることがより好ましい。なお、上限値としては、50nsec〜100nsecの範囲にあることが好ましい。
【0069】
なお、記憶層として、少なくとも二つの強磁性層を含み、それらの間に介在する非磁性層からなる多層膜において、上記の強磁性層の間に反強磁性結合を含むものを用いても良い。この場合、二つの強磁性層は、その磁気モーメントまたは厚さが異なっており、反強磁性的結合により磁化が逆方向を向いている。このため、実効的に互いに磁化が相殺し、記憶層全体としては、磁化容易軸方向に小さな磁化を持った強磁性体と同等と考えることができる。この記憶層のもつ磁化容易軸方向の小さな磁化の向きと逆向きに磁場を印加すると、各強磁性層の磁化は、反強磁性結合を保ったまま反転する。このため、磁力線が閉じていることから反磁場の影響が小さく、記憶層のスイッチング磁場は、各強磁性層の保磁力により決まるので、小さなスイッチング磁場で記憶層の磁化の反転が可能になる。
【0070】
なお、上記実施形態においては、外部磁場を2段階または連続的に変化させていたが、3段階以上の多段階のステップで変化させるように構成しても良い。この場合は、例えば、第1磁場として記憶層の磁化容易軸に対して30度の角度をなす磁場を印加し、続いて第2磁場を、上記磁化容易軸に対して70度、すなわち第1磁場に対して40度の角度となるように印加し、更に続けて、第3磁場を磁化容易軸から120度、すなわち第2磁場から50度の角度となるように印可する。このように多段階で磁場を印加すると、トルクは最大ではないが、実効的に大きな値を持ちかつ変化の角度が小さいために、磁化の変化が滑らかに起こるようになり、安定した磁化反転をすることができる。なお、上記第1乃至第3磁場の角度は、それぞれ同じ間隔をなしていても良いし、異なっていても良い。また、3段階に磁場を変化させることに限らず、4段階以上のステップで磁場を変化させても良い。この場合、第1磁場の角度は0度より大きく90度より小さい角度であり、最終段の磁場の角度は90度より大きく180度より小さい角度であれば良い。
【0071】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、磁気メモリを高集積化しても安定な磁化反転を引き起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による磁気メモリの磁化反転方法を説明する図。
【図2】第1実施形態による磁気メモリのメモリセルの構成を示す断面図。
【図3】第1実施形態による磁気メモリの構成を示すブロック図。
【図4】1重の強磁性トンネル接合を有する強磁性トンネル接合素子の一具体例の構成を示す断面図。
【図5】2重の強磁性トンネル接合を有する強磁性トンネル接合素子の他の具体例の構成を示す断面図。
【図6】記憶層を単磁区モデルで表したときの磁化ベクトルに作用するトルクの特性を示す図。
【図7】記憶層の磁化を反転する磁場の大きさのシミュレーション結果を示す図。
【図8】ダイオード付き単純クロスポイント型のメモリセルを備えた磁気メモリの構成を示すブッロク図。
【図9】本発明の第2実施形態による磁気メモリの磁化反転方法を説明する図。
【図10】本発明の第3実施形態による磁気メモリの磁化反転方法を説明する図。
【図11】書き込みビット線に印加される電流パルスの遷移時間を説明する図。
【図12】本発明の第4実施形態による磁気メモリの磁化反転方法を説明する図。
【図13】書き込みビット線に印加される電流パルスの他の例を示す図。
【図14】電流パルスの立ち上がり・立ち下がり時間と、磁気抵抗効果素子の出力電圧との関係を説明する図。
【図15】微小強磁性体の磁気的構造を説明する図。
【符号の説明】
2 メモリセル
3 磁気抵抗効果素子
3a 記憶層
3b 絶縁層
3c 基準層
4 引き出し電極
5 接続プラグ
6 選択トランジスタ
6a、6b ソース・ドレイン領域
21 ビット線駆動回路
23 ワード線駆動回路
25 センスアンプ
BL 書き込みビット線
BLR 読み出しビット線
WL 書き込みワード線
WLR 読み出しワード線
Hext1 第1磁場
Hext2 第2磁場
θ1 第1角度
θ2 第2角度
Claims (8)
- 外部磁場に応じて磁化の向きを変える記憶層を有する磁気抵抗効果素子を有しているメモリセルと、
磁場を発生し、前記磁気抵抗効果素子の磁化方向を反転させる場合に、前記記憶層の磁化方向を基準にして0度より大きく90度より小さい第1角度を有する第1磁場を前記記憶層に作用させ、さらに前記第1角度より大きい第2角度を有する第2磁場を前記記憶層に作用させる磁場発生機構と、
を備えたことを特徴とする磁気メモリ。 - 前記第1角度は45度以上90度未満であることを特徴とする請求項1記載の磁気メモリ。
- 前記第2角度は、90度より大きく180度より小さいことを特徴とする請求項1または2記載の磁気メモリ。
- 前記磁場発生機構から発生される前記第1および第2磁場は、前記磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向に配置された第1配線と前記磁気抵抗効果素子の磁化困難軸方向に配置された第2配線に流れる電流によって生じる電流磁場であり、前記第1および第2配線のうちの一方の配線に流れる電流が一定とされ、他方の配線に流れる電流の向きが変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに2記載の磁気メモリ。
- 前記磁場発生機構から発生される前記第1および第2磁場は、前記磁気抵抗効果素子の磁化容易軸方向に配置された第1配線と前記磁気抵抗効果素子の磁化困難軸方向に配置された第2配線に流れる電流によって生じる電流磁場であり、前記電流が零から負極性または正極性のうちの一方の極値に到達するまでの遷移時間、前記一方の極値から他方の極値に到達するまでの遷移時間、および前記他方の極値から零に到達するまでの遷移時間は、いずれも1nsec以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気メモリ。
- 前記磁気抵抗効果素子の前記記憶層は、非磁性層を介して第1および第2強磁性層が積層された構造を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気メモリ。
- 前記磁場発生機構から発生される磁場は連続した曲線に沿って変化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気メモリ。
- 前記磁気抵抗効果素子は、強磁性トンネル接合素子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気メモリ。
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