JP2004151320A - 有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は重合トナーを用いてデジタル画像を形成する画像形成方法に用いられ、画像むらや周期性の画像欠陥の発生を防止し、高精細の電子写真画像を形成できる有機感光体を提供することであり、且つ該有機感光体を用いた鮮鋭性の良好な画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【解決手段】有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有することを特徴とする有機感光体。
【選択図】 なし
【解決手段】有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有することを特徴とする有機感光体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機やプリンターの分野において用いられる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成方法は近年のデジタル技術の進展により、デジタル方式の画像形成が主流と成ってきている。デジタル方式の画像形成方法は400dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)等の1画素の小さなドット画像を顕像化することを基本としており、これらの小さなドット画像を忠実に再現する高画質化技術が要求されている。
【0003】
小さなドット画像の静電潜像を形成する方法としては、有機感光体上にスポット径が小さい露光光源を用いて微細な静電潜像形成を行い、微細なドット画像を形成する技術が開発されている。例えば、スポット径が4000μm2以下の光源を用いて有機感光体上に高精細の静電潜像を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
一方、この高精細の静電潜像を忠実に顕像化させる高画質化技術の1つとして重合トナー等の粒度分布を均一にした小粒径トナーを用いた電子写真用現像剤、或いは画像形成方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、小粒径化したトナーを用いた場合、前記した高精細のドット画像の静電潜像が安定して形成されないと、画像むらが発生したり、文字チリが発生し、かえって鮮鋭性が劣化しやすいという問題が発生している。
【0005】
一方、前述したような小径スポット露光方式で、正確な静電潜像を形成するには、高感度の有機感光体(以後、有機感光体を単に感光体とも云う)が要求される。これまで開発された高感度の有機感光体としては、例えば、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θの27.2±0.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニン顔料(以後、単にY型顔料ともいう)を用いた有機感光体が実用化されている(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、該Y型顔料を用いた高感度の有機感光体に高精細のドット潜像を形成し、小粒径トナーを用いた現像剤でトナー像を形成すると、しばしば画像の一部で微細なドット画像が再現せず、帯状のむらが発生し、画質を著しく劣化させる。この帯状むらは画像形成を一時停止後にしばしば発生し、画像停止時に感光体が小粒径トナーと接触している部分に、感度の変化が感光体上に出現し、その感度むらが顕在化したためと思われる。重合トナーは粉砕法のトナーに比し、トナー表面の水分含有が高いため、有機感光体との付着力が増大し、クリーニング性や転写性を低下させたり、或いは有機感光体の湿度成分を増大させて、感度変化を生じさせたりする為と考えられる。
【0007】
一方、有機感光体として2,3−ブタンジオールとの付加体チタニルフタロシアニン顔料も用いた有機感光体が報告されている(特許文献3)。しかしながら、このような有機感光体と小粒径トナーを用いたドット画像の形成については、何ら公知の報告はなされていない。
【0008】
更に、高精細のドット画像の作製に際しては、有機感光体に起因する周期性の画像欠陥(黒ポチや白抜け等)が現像過程で増幅される傾向にあるので、このような周期性の画像欠陥をより少なくすることが求められている。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−272197号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2002−244336号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平5−273775号公報
【0012】
【非特許文献1】
電子写真学会誌,29(3),250(1990)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような従来技術の問題点を解決して、重合トナーを用いてデジタル画像を形成する画像形成方法に用いられ、画像むらや周期性の画像欠陥の発生を防止し、高精細の電子写真画像を形成できる有機感光体を提供することであり、且つ該有機感光体を用いた鮮鋭性の良好な画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について検討した結果、重合トナーを用いてデジタル画像を形成する画像形成方法に用いられる有機感光体に、しばしば発生しやすい画像むらや黒ポチ、白ヌケ等の画像欠陥の発生を効果的に防止するには、従来の中間層の技術に加えて、有機感光体の感度の温湿度依存性を改善し、電荷輸送層の膜質を高温高湿条件下でも、黒ポチや白ヌケの発生を抑える膜質にすることが必要であることを見いだし、本発明を完成した。即ち、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の構成を有する有機感光体では、電荷発生層に温湿度依存性が小さい電荷発生物質を用い、表面層を形成する電荷輸送層の膜物性を粘弾性構造とすることにより、本発明の目的を達成できた。
【0015】
更に、本発明の有機感光体と重合トナーを併用し、デジタル画像を形成する画像形成方法としては、粒度分布がシャープな重合トナーを用いることにより、従来発生しやすかった画像むら、黒ポチや白ヌケ等の画像欠陥の発生を防止でき、鮮鋭性に優れた高画質の電子写真画像を得ることができた。
【0016】
本発明の目的は、以下の構成を持つことにより達成される。
1.有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有することを特徴とする有機感光体。
【0017】
2.有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満であることを特徴とする有機感光体。
【0018】
3.前記ジオールが(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールであることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0019】
4.前記チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールとの付加体がCu−Kα特性X線の回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に回折ピークを示す結晶構造を有することを特徴とする前記3に記載の有機感光体。
【0020】
5.前記有機感光体の表面層に個数平均粒径10nm以上、100nm未満の微粒子を含有していることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0021】
6.感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有する有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【0022】
7.感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満である有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
8.前記ドット状の静電潜像は有機感光体にスポット面積が2000μm2以下の露光光で露光して形成されることを特徴とする前記6又は7に記載の画像形成方法。
【0024】
9.前記重合トナーの個数平均一次粒径で3〜8μmであることを特徴とする前記6〜8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0025】
10.前記6〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0026】
まず、本発明に関わる画像形成方法及び画像形成装置の説明をする。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【0027】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した本発明の感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0028】
感光体への一様帯電の後、像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0029】
本発明の画像形成方法においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、像露光をスポット面積が2000μm2以下の露光ビームを用いて行うことが好ましい。このような小径のビーム露光を行っても、本発明の有機感光体は、該スポット面積に対応した画像を忠実に形成することができる。より好ましいスポット面積は、100〜800μm2である。その結果800dpi(dpiとは2.54cm当たりのドット数)以上で、階調性が豊かな電子写真画像を達成することができる。
【0030】
前記露光ビームのスポット面積とは、該露光ビームを該ビームと垂直な面で切断したとき、該切断面に現れる光強度分布面で、光強度が最大ピーク強度の1/e2以上の領域に相当する面積を意味する。
【0031】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系、及びLEDや液晶シャッター等の固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2までの部分をスポット面積とする。
【0032】
本発明のドット状の静電潜像とは、上記のようにビームの露光光源を用い、断続的に静電潜像を形成することを意味し、ドットの形状は問わない。又、該ドットの静電潜像を形成するに際し、露光時間を変化させてドットの大きさを変化させてもよい。
【0033】
その静電潜像は次いで現像工程で現像器54を用いて現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0034】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は現像スリーブ541に直流バイアス電圧、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。
【0035】
本発明のドット画像の現像方式としては、主としてデシタル方式の画像形成に用いられる反転現像方式が好ましく用いられる。この反転現像方式とは感光体に潜像を形成するため、像露光は文字及び図形等の画像部を露光し、この露光部を現像でトナー画像として顕像化する現像方式を云う。
【0036】
次いで、記録紙Pが、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0037】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写器)58が圧接され、給紙された記録紙Pを挟着して転写される。
【0038】
次いで記録紙Pは転写ローラーとほぼ同時に圧接状態とされた分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後感光体ドラム50の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0039】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0040】
本発明の有機感光体に使用する電荷発生物質としてはチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体(以下、単にジオール付加体とも云う)を含有することを特徴とする。本発明中、チタニルフタロシアニン化合物とは、一般式(1)で示すフタロシアニン残基中心にチタニル(O=Ti)基を持つものである。
【0041】
【化1】
【0042】
一般式(1)中、X1〜X4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、あるいはアルコキシ基を表し、n,m,l,kは0〜4の整数を表す。
【0043】
本発明の2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオール(以下、単に隣接ジオールとも云う)とは、脂肪族炭化水素の隣り合う炭素原子に一つずつ水酸基があるもので、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリンなどを挙げることができる。好ましくは一般式(2)、(3)で示されるような2つの隣接する各炭素原子が不斉炭素で構成される光学活性を有するジオールを挙げることができる。
【0044】
【化2】
【0045】
(一般式(2)及び一般式(3)中、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
上記R3、R4、R5、R6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル基が好ましい。即ち、R3〜R6のアルキル基が比較的炭素数が少ないアルキル基である方がチタニルフタロシアニンとの付加体を形成しやすい。中でも、(2R,3R)−2,3ブタンジオール及び(2S,3S)−2,3ブタンジオールの少なくとも1つを用いたチタニルフタロシアニン付加体が最も好ましい。チタニルフタロシアニン付加体の構造は、例えば(2R,3R)−2,3ブタンジオールとの付加体で表すと、下記で示されるようなチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3ブタンジオールの脱水縮合により生成する付加体化合物と推定される。
【0046】
【化3】
【0047】
本発明のチタニルフタロシアニン付加体は上記隣接ジオールとチタニルフタロシアニンを各種溶媒中で室温あるいは加熱下に反応することで合成することができる。原料であるチタニルフタロシアニンはフタロニトリルと四塩化チタンから得る合成法、ジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得る合成法、フタロニトリルと尿素とアルコキシチタンから得る合成法等通常知られている何れの合成法も用いることが出来るが、特にはジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得られる塩素含有量の少ない高純度なチタニルフタロシアニンが好ましい。またチタニルフタロシアニンはアシッドペースト処理等の方法により無定形化してから隣接ジオールと反応させるものが好ましい。本発明のチタニルフタロシアニン付加体を得るには、隣接ジオールをチタニルフタロシアニンに対して0.5〜2.0モル当量を加え、反応させることが好ましく、必ずしもチタニルフタロシアニン化合物1.0モル当量に対して1.0モル当量以上の隣接ジオールを必要としない。これは本発明のチタニルフタロシアニン付加体が隣接ジオール付加チタニルフタロシアニンと隣接ジオール付加のないチタニルフタロシアニンとの混晶状態でも電荷発生物質として高感度で高性能な状態を保つことができるからと考えられる。
【0048】
チタニルフタロシアニンとジオールとの反応は、広範囲な温度条件下で行うことができ、反応温度は25〜300℃の範囲が好ましく、50〜150℃の範囲であることがより好ましい。
【0049】
反応溶剤としては各種有機溶媒中を使用することができ、例えば、トルエン、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、α−クロロナフタレン等の芳香族系有機溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、テトラヒドロフラン、ジメチルセロソルブ等のエーテル系有機溶剤、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系極性有機溶剤、トリクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤、ブタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール系有機溶剤等を挙げることができる。
【0050】
結晶形
また本発明のチタニルフタロシアニン付加体としては、Cu−Kα特性X線の回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に明確な回折ピーク(バックグランドと明確に区別できるピーク)を有する結晶構造を有することが好ましい。その他にも9.5°、24.7°、25.1°、26.5°等に明確なピークを有してもよい。ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に明確な回折ピークを有する結晶構造を有する本発明のチタニルフタロシアニン付加体は良好な感度特性と環境メモリによる画像むらや黒ポチ等の画像欠陥の少ない特性を併せて有する。
【0051】
又、本発明の有機感光体は、感光体の表面層が、表面から加重される一定加重の圧子(荷重20mN)に対し、一定の塑性変形(1%以上、3.5%未満)特性を有機感光体に持つことを特徴とする。
【0052】
本発明の有機感光体のクリープ率は1%以上、3.5%未満であるが、2.0%以上、3.2%以下がより好ましい。有機感光体の表面がこのようなクリープ率を有していると、感光体表面が常に均一な表面形状を維持しやすく、感光体から記録材へのトナーの転写率が、常に良好に維持されやすい。クリープ率が1%未満では感光体表面が脆くなり、キャリア付着やブレード等の擦過に対し、クラック傷が生じやすく、感光体表面のクラック傷は周期的な黒ポチや白ヌケ等の画像欠陥を発生しやすく、トナーの転写性も低下しやすい。一方、クリープ率が3.5%以上ではキャリア付着やブレード等の擦過に対し、周辺が盛り上がったクレータ状の傷が発生し、この傷がクリーニングブレードを損傷させ、その結果クリーニング不良を引き起こし、ドット再現性を低下させ、鮮鋭性が劣化しやすい。
【0053】
本発明の画像形成方法はこのような粘弾性特性を備えた表面層を備えた有機感光体を用いることにより、重合トナーを用いてデジタル画像を形成しても、周期性の画像欠陥の発生を防止すると同時にトナーの転写性を改善し、現像工程や転写工程でのトナー画像の乱れを防止して、階調性、鮮鋭性等に優れた電子写真画像を形成することができる。
【0054】
前記のような粘弾性特性を有する表面層は、高弾性のポリカーボネートをバインダー樹脂として用いると同時に、比較的高分子量の電荷輸送物質を用いて、バインダーの高弾性を維持した電荷輸送層を表面層とすることにより、実現する事が出来る。又、このような電荷輸送層は、電荷輸送層を2層以上とし、最上層の電荷輸送層を前記した構成にすることが好ましい。
【0055】
本発明に好ましく用いられる高弾性のポリカーボネートとしては、下記に示すようなポリカーボネートが挙げられる。
【0056】
【化4】
【0057】
上記において、Mvは粘度平均分子量を示す。
又、本発明に用いる電荷輸送物質としては、分子量が500〜1500が好ましく、更に600〜1000がより好ましい。本発明に好ましく用いられる電荷輸送物質としては下記のような化学構造を有する電荷輸送物質が挙げられる。
【0058】
【化5】
【0059】
上記中、Mwは分子量を示す。
前記した高分子量の電荷輸送物質とポリカーボネートの混合比は質量比で電荷輸送層1に対し、ポリカーボネート0.5〜3.0の比率が好ましく、更に0.8〜2.0の比率が好ましいが、この比率は電荷輸送物質或いはポリカーボネートの種類によって、或いはその他の添加剤の存在により変化し、絶対的なものではない。
【0060】
又、数平均一次粒径が10nm以上、100nm未満の疎水性無機粒子を混在させることがより好ましい。疎水性無機粒子のより好ましい数平均粒径は10nm以上、90nm以下、最も好ましくは10nm以上、50nm未満である。表面層に含有される無機粒子の数平均一次粒子径が10nm未満でも、100nm以上でも、前記粘弾性特性が得られにくく、上記のような改善効果が得られにくい。
【0061】
本発明に用いられる10nm以上、100nm未満の無機粒子としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができるが、これらの中でもコスト、粒径の調整や表面処理の容易さ等からシリカ、特に表面を疎水化した疎水性シリカが好ましい。
【0062】
本発明の無機粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出する。
【0063】
上記疎水性シリカの疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(メタノールウェッタビリティ)で示される疎水化度で50%以上のものが好ましい。疎水化度が50%未満であると前記吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすく、その結果、温湿度変化時に画像むらが発生しやすくなり、又ブレードを傷つけクリーニング不良も発生しやすくなる。より好ましい疎水化度は65%以上、最も好ましくは70%以上である。
【0064】
疎水化度を表すメタノールウェッタビリティとは、メタノールに対するシリカ微粉末の濡れ性を評価するものである。濡れ性の測定は以下の方法で行う。内容量250mlのビーカーに入れた蒸留水50mlに、測定対象のシリカ微粉末を0.2g添加して撹拌する。次にメタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからゆっくり撹拌した状態でシリカ微粉末の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ微粉末を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした時、下記式より疎水化度を算出する。
【0065】
疎水化度=a/(a+50)×100
上記疎水性シリカは、公知の湿式法もしくは乾式法で生成されたシリカ粉末を疎水化することにより得られる。特に乾式法(ケイ素化ハロゲン化合物の蒸気相酸化)により生成されたいわゆるヒュームドシリカと称されるものを疎水化剤で処理したものが、水分吸着サイトが少なく好ましい。これは従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0066】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において例えば、塩化アルミニウム又は、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0067】
シリカ粉末の疎水化処理は、シリカ微粉末を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した疎水化処理剤溶液を噴霧するか或いは気化した疎水化処理剤を接触させて付着させる乾式処理、又は、シリカ粉末を溶液中に分散させ、その中に疎水化処理剤を滴下して付着させる湿式処理等の従来公知の方法で行うことが出来る。
【0068】
疎水化処理剤としては、公知の化合物を用いることが出来、具体例を下記に挙げる。又、これらの化合物は組み合わせて使用しても良い。
【0069】
チタンカップリング剤としてはテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0070】
シランカップリング剤としてはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−ビニルベンジルアミノエチル−N−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン及びp−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0072】
これらの疎水化処理剤は、シリカ粉末に対して1〜40質量%添加して被覆することが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0073】
又、上記表面疎水化剤としてハイドロジェンポリシロキサン化合物を用いてもよい。該ハイドロジェンポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0074】
本発明では上記疎水化処理された疎水性シリカを有機感光体の表面層にバインダーと共に含有させるが表面層のシリカ粒子の割合はバインダーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、最も好ましくは2〜10質量%で使用されるのがよい。20質量%以上だと、環境メモリやトナーの転写性を低下させやすい。一方、1質量%未満だとクリーニング不良や、耐摩耗性の低下を起こしやすい。
【0075】
又、表面層となる電荷輸送層には、上記共重合ポリカーボネートのバインダー樹脂と疎水性無機粒子以外に、電荷輸送物質が含有される。該電荷輸送物質はバインダー樹脂に対して50〜150質量%が好ましい。又該電荷輸送層には酸化防止剤をバインダー樹脂に対して1〜10質量%存在させることが好ましい。
【0076】
以上のような構成を選択採用することにより、前記した表面層の膜物性と表面粗さを実現させることができ、このような表面層を有する有機感光体は残留トナークリーニング性を改善すると同時に、耐傷性、耐摩耗性を改善し、長期に亘り鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【0077】
以下、表面層以外の本発明に適用される有機感光体の構成について記載する。本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0078】
本発明の電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0079】
本発明の有機感光体の層構成は、基本的には導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の感光層から構成される。最も好ましい構成としては、感光層を電荷発生層と複数の電荷輸送層で構成し、最上層を電荷輸送物質を含有し、且つビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率が1%以上3.5%未満の特性を有する電荷輸送層の構成にすることである。
【0080】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0081】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0082】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0083】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0084】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた前記した中間層を設けることが好ましい。
【0085】
本発明の中間層には前記した吸水率が小さいバインダー樹脂中に酸化チタンを含有させることが好ましい。該酸化チタン粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液の酸化チタン粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中の酸化チタン粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲の酸化チタン粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0086】
本発明に用いられる酸化チタン粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状の酸化チタン粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0087】
本発明の酸化チタン粒子は表面処理されていることが好ましく、表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0088】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは酸化チタン粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0089】
この様に、酸化チタン粒子の様な酸化チタン粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理された酸化チタン粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等の酸化チタン粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0090】
上記反応性有機ケイ素化合物としては下記一般式(4)で表される化合物が挙げられるが、酸化チタン表面の水酸基等の反応性基と縮合反応をする化合物であれば、下記化合物に限定されない。
【0091】
一般式(4)
(R)n−Si−(X)4−n
(式中、Siはケイ素原子、Rは該ケイ素原子に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは加水分解性基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
一般式(4)で表される有機ケイ素化合物において、Rで示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基を挙げられる。また、Xの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。
【0092】
また、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物は、単独でも良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0093】
また、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物の具体的化合物で、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていても良い。同様に、nが2以下の場合、複数のXは同一でも異なっていても良い。又、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物を2種以上を用いるとき、R及びXはそれぞれの化合物間で同一でも良く、異なっていても良い。
【0094】
又、表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはポリシロキサン化合物が挙げられる。該ポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。
【0095】
特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0096】
感光層
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0097】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として前述のチタニルフタロシアニン付加体を使用するが、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用して用いることができる。
【0098】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0099】
電荷輸送層
電荷輸送層は複数の電荷輸送層の構成にし、最上層の電荷輸送層を表面層とした構成を採用することが好ましい。
【0100】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0101】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.30(eV)以下である。
【0102】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0103】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0104】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0105】
又、複数の電荷輸送層の膜厚の合計は10〜50μmが好ましい。膜厚が10μm未満だと帯電電位が不十分になりやすく、50μmを超えると、鮮鋭性が劣化しやすい。
【0106】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0107】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0108】
本発明の画像形成装置に係るトナーについて説明する。
一方、本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、重合トナーを用いることを特徴とする。重合トナーは水系溶媒中で製造される為、粉砕法のトナーに比し、トナー表面の水分含有が高くなり、有機感光体との付着力が増大し、クリーニング性や転写性を低下させたり、或いは有機感光体の湿度成分を増大させて、感度変化を生じさせ、画像むらや、黒ポチや白抜け等の周期性の画像欠陥を引き起こしていたが、前記した本発明の有機感光体と併用することにより、画像むらを発生させず、クリーニング性や転写性が良好で、且つ鮮鋭性に優れた電子写真画像を形成することができる。
【0109】
又、本発明者等は、本画像形成方法に用いる重合トナーとしては、水分含有率が大きく、付着力の大きくなる小粒径成分の存在量を低減すると同時に、全トナーでのトナー粒径の中央値である50%粒径に着目し、その粒径から乖離している小粒径成分を分析するにあたり、トナーの体積粒径の大きな粒径側から、個数粒径の大きな粒径側から、各々、累計した75%頻度の粒径に注目して、以下のような粒度分布を有する重合トナーが適していることを見いだした。
【0110】
即ち、前記ジオール付加体を用いた感光体上に、形成されたドット状の静電潜像を、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、前記個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下の粒度分布を有するトナーを用いて顕像化することにより、ドット再現性が良好で、画像むらや黒ポチや白抜け等の画像欠陥のない、鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0111】
尚、重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合、必要によりその後の化学的処理により形成されて得られるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と必要により、その後に行われる粒子同士の融着工程を経て得られるトナーを意味する。
【0112】
まず、本発明に係る重合トナーの体積粒径、個数粒径及び、前記体積粒径と前記個数粒径との比について説明する。
【0113】
本発明に記載の効果を得る観点から、本発明に係るトナーは、粒径分布として単分散であることが好ましく、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であることが必要であるが、好ましくは1.0〜1.13である。
【0114】
また、転写性や現像性の変動幅を抑制するためには、トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であることが必要であるが、好ましくは、1.1〜1.19である。さらに、全トナー中において、粒径が0.7×(Dp50)以下のトナーの個数が10個数%以下であることが必要であるが、好ましくは、5個数%〜9個数%である。
【0115】
本発明に係るトナーの50%体積粒径(Dv50)は2μm〜8μmが好ましく、更に、好ましくは3μm〜7μmである。また、本発明に係るトナーの50%個数粒径(Dp50)は、2μm〜7.5μmが好ましく、更に好ましくは、2.5μm〜7μmである。この範囲とすることにより、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0116】
ここで、大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)或いは累積75%個数粒径(Dp75)とは、粒径の大きな方からの頻度を累積し、全体積の和或いは個数の和に対して、それぞれが75%を示す粒径分布部位の体積粒径或いは個数粒径で表す。
【0117】
本発明において、50%体積粒径(Dv50)、50%個数粒径(Dp50)、累積75%体積粒径(Dv75)、累積75%個数粒径(Dp75)等は、コールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定することが出来る。
【0118】
本発明に係るトナーの構成成分、トナーの構成成分である結着樹脂の成分、その製造などについて説明する。
【0119】
本発明に係るトナーは着色剤、結着樹脂などを少なくとも含有するが、前記トナーは、粉砕・分級工程を経て製造してもよく、下記に示すような重合性単量体を重合して得た樹脂粒子を用いてトナーを作製する、いわゆる重合法で製造してもよい。重合法を用いてトナーを製造する場合には樹脂粒子を塩析/融着する工程を有する製造方法が特に好ましい。
【0120】
重合法に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を構成成分として用い、必要に応じて架橋剤を使用することができる。また、以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種類含有させることが好ましい。
【0121】
(1)ラジカル重合性単量体
ラジカル重合性単量体成分としては、特に限定されるものではなく従来公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0122】
具体的には、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。
【0123】
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0124】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0125】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0126】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0127】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0128】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0129】
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が挙げられる。
【0130】
(2)架橋剤
架橋剤としては、トナーの特性を改良するためにラジカル重合性架橋剤を添加しても良い。ラジカル重合性架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0131】
(3)酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体
酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン酸基を有する重合性単量体、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン系の重合性単量体が挙げられる。
【0132】
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル等が挙げられる。
【0133】
スルホン酸基を有する重合性単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル等が挙げられる。
【0134】
これらは、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩あるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩の構造であってもよい。
【0135】
塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、アミン系の化合物があげられ、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および上記4化合物の4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN−エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0136】
本発明に用いられるラジカル重合性単量体としては、酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体が単量体全体の0.1〜15質量%使用することが好ましく、ラジカル重合性架橋剤はその特性にもよるが、全ラジカル重合性単量体に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0137】
〔連鎖移動剤〕
分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが出来る。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、四臭化炭素およびスチレンダイマー等が使用される。
【0138】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。
【0139】
更に上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0140】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0141】
〔界面活性剤〕
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0142】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0143】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
【0144】
本発明において、これらは、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0145】
〔着色剤〕
着色剤としては無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。
【0146】
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0147】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0148】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0149】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0150】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0151】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0152】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、等が挙げられる。
【0153】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0154】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0155】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0156】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0157】
本発明に係るトナーは離型剤を併用してもよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックス等を離型剤として使用することが出来る。また、本発明においては、下記一般式(5)で示されるエステルワックスを好ましく用いることが出来る。
【0158】
一般式(5)
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数を表すが、好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。
【0159】
R1、R2は置換基を有しても良い炭化水素基を示す。
R1:炭素数=1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5
R2:炭素数=1〜40、好ましくは13〜29、更に好ましくは12〜25
以下に、本発明に係るエステル基を有する結晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0160】
【化6】
【0161】
【化7】
【0162】
これらエステルワックスは、樹脂粒子中に含有され、樹脂粒子を融着させて得られるトナーに良好な定着性(画像支持体に対する接着性)を付与する機能を有する。
【0163】
本発明に用いられる離型剤の添加量は、トナー全体に1質量%〜30質量%が好ましく、更に好ましくは2質量%〜20質量%であり、更に好ましくは3〜15質量%である。また、本発明のトナーは、上記の重合性単量体中に前記離型剤を溶解させたものを水中に分散し、重合させ、樹脂粒子中に離型剤として上記のようなエステル系化合物を内包させた粒子を形成させ、着色剤粒子ととも塩析/融着する工程を経て作製されたトナーが好ましい。
【0164】
本発明に係るトナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0165】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0166】
本発明に係るトナーに用いられる外添剤について説明する。
本発明に係るトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されないが、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0167】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0168】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0169】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0170】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0171】
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0172】
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5質量%が好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置が挙げられる。
【0173】
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
《製造工程》
本発明のトナーは、離型剤を溶解した上記記載のような重合性単量体または重合性単量体溶液を水系媒体中に分散し、ついで重合法により離型剤を内包した樹脂粒子を調整する工程、前記樹脂粒子分散液を用いて水系媒体中で樹脂粒子を融着させる工程、得られた粒子を水系媒体中より濾過し界面活性剤などを除去する洗浄工程、得られた粒子を乾燥させる工程、さらに乾燥させて得られた粒子に外添剤などを添加する外添剤添加工程などから構成される重合法で製造することが好ましい。ここで樹脂粒子としては着色された粒子であってもよい。また、非着色粒子を樹脂粒子として使用することもできる、この場合には、樹脂粒子の分散液に着色剤粒子分散液などを添加した後に水系媒体中で融着させることで着色粒子とすることができる。
【0174】
特に、融着の方法としては、重合工程によって生成された樹脂粒子を用いて塩析/融着する方法が好ましい。また、非着色の樹脂粒子を使用した場合には、樹脂粒子と着色剤粒子を水系媒体中で塩析/融着させることができる。
【0175】
また、着色剤や離型剤に限らず、トナーの構成要素である荷電制御剤等も本工程で粒子として添加することができる。
【0176】
なお、ここで水系媒体とは主成分として水からなるもので、水の含有量が50質量%以上であるものを示す。水以外のものとしては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどをあげることができる。好ましくは樹脂を溶解しない有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0177】
本発明での好ましい重合法としては、モノマー中に離型剤を溶解したモノマー溶液を臨界ミセル濃度以下の界面活性剤を溶解させた水系媒体中に機械的エネルギーによって油滴分散させた分散液に、水溶性重合開始剤を加え、ラジカル重合させる方法をあげることができる。この場合、モノマー中に油溶性の重合開始剤を加えて使用してもよい。
【0178】
この油滴分散を行うための分散機としては特に限定されるものでは無いが、例えばクレアミックス、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等をあげることができる。
【0179】
着色剤自体は表面改質して使用してもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散し、その中に表面改質剤を添加した後昇温し反応を行う。反応終了後、ろ過し同一の溶媒で洗浄ろ過を繰り返し乾燥させ表面改質剤で処理された顔料を得る。
【0180】
着色剤粒子は着色剤を水系媒体中に分散して調製される方法がある。この分散は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
【0181】
顔料分散時の分散機は特に限定されないが、好ましくはクレアミックス、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0182】
ここで使用される界面活性剤は、前述の界面活性剤を使用することができる。塩析/融着を行う工程は、樹脂粒子及び着色剤粒子とが存在している水中にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、ついで樹脂粒子のガラス転移点以上に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。
【0183】
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0184】
トナーの粒径分布を達成するための方法としては特に限定されないが、例えば分級などの手法による制御や会合時における温度や時間、さらには会合を終了させるための停止方法の制御などの手法を使用することができる。
【0185】
特に好ましい製造方法として、水中での会合時間、会合温度、停止速度などを制御する方法をあげることができる。すなわち、塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。この塩析剤を添加する温度は特に限定されない。
【0186】
本発明では、樹脂粒子の分散液をできるだけ速やかに昇温し、樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱する方法を使用することが好ましい。この昇温までの時間としては30分未満、好ましくは10分未満である。さらに、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、1℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、急速な塩析/融着の進行により粗大粒子の発生を抑制する観点で、15℃/分以下が好ましい。特に好ましい形態としては、塩析/融着をガラス転移温度以上になった時点でも継続して進行させる方法をあげることができる。この方法とすることで、粒子の成長とともに融着が効果的に進行させることができ、最終的なトナーとしての耐久性を向上することができる。
【0187】
さらに、会合時に2価の金属塩を使用して塩析/融着することで特に粒径を制御することが可能となる。この理由としては明確ではないが、2価の金属塩を使用することで塩析時の斥力が大きくなり、界面活性剤の分散能を効果的に抑制することが可能となり、結果として流刑分布を制御することが可能となったものと推定される。
【0188】
また、塩析/融着を停止するために1価の金属塩及び水を添加することが好ましい。このものを添加することにより、塩析を停止させることができ、結果として大粒径成分や小粒径成分の存在を抑制することが可能となる。
【0189】
樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れおよび温度分布を制御することで、さらには融着後の形状制御工程において加熱温度、攪拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布および形状を任意に変化させることができる。
【0190】
すなわち、樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる攪拌翼および攪拌槽を使用して、融着工程および形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、本発明の形状係数および均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集および融着が進行している粒子(会合あるいは凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては攪拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、攪拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。
【0191】
本発明のトナーを所定の形状に制御するためには、塩析と融着を同時進行させることが好ましい。凝集粒子を形成した後に加熱する方法ではその形状に分布を生じやすく、さらに微粒子の発生を抑制することができない。すなわち、凝集粒子を水系媒体中で攪拌しながら加熱するために凝集粒子の再分断が発生し、小粒径の成分が発生しやすいものと推定される。
【0192】
本発明に用いられる現像剤について説明する。
キャリアと混合して二成分現像剤として用いること場合にはキャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0193】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0194】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0195】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0196】
合成例1
チタニルフタロシアニン−アモルファス品の合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2gをオルトジクロルベンゼン200mlに分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4gを加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱する。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗、メタノール洗浄して、乾燥後、26.2g(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得る。ついで粗チタニルフタロシアニンを5℃以下で濃硫酸250ml中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5Lに注ぎ込む。析出した結晶を濾過し、充分に水洗してウエットペースト品225gを得る。ついでウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥してチタニルフタロシアニン−アモルファス品24.8g(収率86%)を得た。
【0197】
合成例2
チタニルフタロシアニン付加体CG−1の作製((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体)
トルエン200mlと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール1.8g(0.6モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いでエステル管を備えて加熱還流し、生成する水をトルエンとの共沸によって除去しながら3時間反応させる。放冷後、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−1)19.8gを得た。CG−1のX線回折スペクトルを図2に示す。
【0198】
合成例3
チタニルフタロシアニン付加体CG−2の作製((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体)
トルエン200mlと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール3.7g(1.2モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いでエステル管を備えて加熱還流し、生成する水をトルエンとの共沸によって除去しながら3時間反応させる。放冷後、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−2)20.7gを得た。CG−2のX線回折スペクトルを図3に示す。
【0199】
合成例4
チタニルフタロシアニン付加体CG−3の作製((2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体)
オルトジクロロベンゼン200mlと(2S,3S)−2,3−ブタンジオール2.1g(0.7モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いで6時間加熱還流させ反応を進行させる。放冷後、(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−3)20.0gを得た。CG−3のX線回折スペクトルを図4に示す。
【0200】
感光体1の作製
円筒状アルミニウム基体上に、下記の組成の中間層塗布液を浸漬塗布して、膜厚4.0μmの中間層を形成した。
【0201】
〈中間層塗布液〉
下記組成を循環式湿式分散機を用いて分散した。
【0202】
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10部
酸化チタン(数平均一次粒径35nm、一次表面処理;シリカ・アルミナ処理
、二次表面処理;メチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 30部
メタノール 100部
その上に下記の電荷発生層塗布液を、浸漬塗布して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0203】
〈電荷発生層塗布液〉
下記組成を混合しサンドグラインダーにて分散した。
【0204】
電荷発生物質:合成例2のCG−1 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
〈第一電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T−1) 200部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で乾燥膜厚15μmの第一電荷輸送層を形成した。
【0205】
〈第二電荷輸送層:表面層〉
電荷輸送物質(T−1) 20部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 30部
疎水性シリカ(平均一次粒径:40nm、ヘキシルメチルジシラザン、疎水化
度:76%) 3.0部
酸化防止剤(LS2626:三共社製) 0.6部
1,3−ジオキソラン 600部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 0.1部
を混合し、超音波を照射できる循環分散装置にて循環分散を行い、表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記第一電荷輸送層の上に円型量規制型塗布法により乾燥膜厚5μmになるように第二電荷輸送層を塗布し、110℃で70分間の乾燥を行い、感光体1を作製した。
【0206】
尚、上記電荷発生層を透明ペットベース上に塗布乾燥した試料を用いて、X線回折スペクトルを測定したデータを図5に示す。図5のX線回折スペクトルは電荷発生層のバインダー(ポリビニルブチラール樹脂)の影響を受け、図2のCG−1の顔料のX線回折スペクトルに比し、0.2°〜0.3°低角度側にシフトしている。
【0207】
感光体2〜7の作製
感光体1の作製において、電荷発生物質のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとの付加体CG−1、第二電荷輸送層の電荷輸送物質の種類と量、及びポリカーボネートを表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜7を作製した。
【0208】
感光体8の作製
感光体1の作製において、第一電荷輸送層の乾燥膜厚を20μmとし、第二電荷輸送層を除いた他は感光体1と同様にして感光体8を作製した。
【0209】
感光体9の作製
感光体1の作製において、電荷発生物質のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとの付加体CG−1を、下記に示す合成法で得たX線回折スペクトルで、27.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニン顔料(表1ではY−TiOPc)に変更した以外は同様にして感光体9を作製した。
【0210】
Y型チタニルフタロシアニン顔料の合成例
ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドからチタニルフタロシアニン粗品を作り、これを硫酸に溶かし水に注いで生じた沈殿を濾過し水で十分に洗って無定型チタニルフタロシアニン顔料含水ペーストを得る。この顔料含水ペースト(固形分換算約10g)をオルトジクロルベンゼン100mlと水100mlの混合液(水層は分離している)に分散し、70℃で6時間加熱後、メタノールに注いで生じた結晶を濾過し、乾燥してY型チタニルフタロシアニン顔料(Y−TiOPc:X線回折スペクトルは図6)を得た。
【0211】
【表1】
【0212】
表1に記載したクリープ率は下記のようにして測定した。
クリープ率の測定
使用機器:フィッシャースコープH100V(微小硬さ測定装置)(株)フィッシャー・インストルメンツ社製
使用圧子:ダイアモンド ビッカース圧子
負荷条件:4mN/secの速度で有機感光体の表面からビッカース圧子を押し込む
負荷時間:5sec
保持時間:5sec
除荷条件:負荷と同じ速度で負荷を除く
測定試料
アルミ平板上に前記した感光体と同様に中間層、電荷発生層、第一電荷輸送層、第二電荷輸送層を設け、同じ条件で乾燥させた試料をH100V機に固定し、試料に対して垂直にビッカース圧子を押し込み測定。
【0213】
測定は圧子負荷(5sec)、荷重保持(5sec:この間の変形量の割合がクリープ率)、除荷の手順で行う。
【0214】
クリープ率の求め方
CHU(クリープ率)={(h2−h1)/h1}×100(%)
h1:負荷荷重(20mN)に達した時(負荷開始から5秒後)の押し込み深さ
h2:保持(5sec)後の押し込み深さ
又、表1中の電荷輸送物質T−4及びポリカーボネートPC−4の化学構造を下記に示す(Mvは粘度平均分子量、Mwは分子量)。
【0215】
【化8】
【0216】
本発明に用いるトナー及び該トナーを用いた現像剤を作製した。
《現像剤》
《ラテックス1の製造》
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた5000mlのセパラブルフラスコに予めアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水(2760g)に溶解させた溶液を添加する。窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。一方で例示化合物19)72.0gをスチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなるモノマーに加え、80℃に加温し溶解させ、モノマー溶液を作製した。ここで循環経路を有する機械式分散機により上記の加熱溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を作製した。ついで、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し80℃にて3時間加熱、撹拌することでラテックス粒子を作製した。引き続いて更に重合開始剤(KPS)7.73gをイオン交換水240mlに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル14.0gの混合液を120分かけて滴下した。滴下終了後60分加熱撹拌させた後40℃まで冷却しラテックス粒子を得た。
【0217】
このラテックス粒子をラテックス1とする。
《着色粒子の製造》
(着色粒子1の製造)
n−ドデシル硫酸ナトリウム=9.2gをイオン交換水160mlに撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)20gを徐々に加え、ついで、クレアミックスを用いて分散した。大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、質量平均径で112nmであった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0218】
前述の「ラテックス1」1250gとイオン交換水2000ml及び「着色剤分散液1」を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を付けた5リットルの四つ口フラスコに入れ撹拌する。30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。ついで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72mlに溶解した水溶液を攪拌下、30℃にて5分間で添加した。その後、2分間放置した後に、昇温を開始し、液温度90℃まで5分で昇温する(昇温速度=12℃/分)。その状態で粒径をコールターカウンターTAIIにて測定し、体積平均粒径が4.3μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700mlに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させ、さらに継続して液温度85℃±2℃にて、8時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。その後、6℃/minの条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加し、pHを2.0に調整し、撹拌を停止した。生成した着色粒子を下記条件で濾過/洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。このものを「着色粒子1」とする。
【0219】
(着色粒子2、3、4及び5の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に変更した以外は同様にして、着色粒子2〜5を各々、製造した。
【0220】
(着色粒子6〜8の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に設定し、且つ、体積平均粒径が3.8μmになった時点で粒子成長を停止させて、各々、着色粒子6〜8を製造した。
【0221】
(着色粒子9〜11の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に設定し、且つ、体積平均粒径が5.5μmになった時点で粒子成長を停止させ、各々、着色粒子9〜11を製造した。
【0222】
着色粒子1〜11の製造条件を表2に示す。
【0223】
【表2】
【0224】
(着色粒子12の製造)
着色粒子1の製造において、個数平均粒径が7.3μmになった時点で粒子成長を停止させ、着色粒子12を製造した。
【0225】
(トナー粒子の製造)
得られた着色粒子1〜12に、各々、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を0.5質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナー1〜12を得た。
(トナー13製造例:粉砕法の例)
スチレン:ブチルアクリレート:ブチルメタクリレート:アクリル酸=75:18:5:2の質量比からなるスチレン−アクリル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し、微粉砕を行い、分級して個数平均粒径が6.3μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度=75/数平均一次粒子径=12nm)を1.2質量%添加しトナーを得た。これをトナー13とする。
【0226】
得られたトナー1〜13の各々の粒度分布特性を表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
(現像剤の製造)
上記トナーの各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の現像剤1〜13を各々、製造した。
【0229】
《評価》
上記感光体を図1の構造を基本的に有するコニカ製Sitios7040デジタル複写機(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器、反転現像手段を有する)に各感光体、現像剤(現像剤No.=トナーNo.)、露光スポット面積を表4のように組み合わせ、高温高湿(30℃80%RH)下で、画素率8%の文字及びハーフトーンの混在した画像を連続してA4紙2万枚プリントを行い評価した。評価項目、評価基準を下記に示す。又評価結果を表4に示す。
【0230】
評価項目と評価基準
「ドットの再現性」
画像を構成するドット再現性を100倍の拡大鏡を覗いて評価した。
【0231】
◎:画像ドットの大きさが露光スポット面積の±30%未満でそれぞれ独立に再現されている(良好)
○:画像ドットの大きさが露光スポット面積の30〜60%増加又は減少し、それぞれ独立に再現されている(実用性があるレベル)
×:画像ドットの大きさが露光スポット面積の60%を越えて増加又は減少し、部分的に画像ドットが消失したり、連結したりしている(実用上問題のレベル)
「周期性の画像欠陥」
感光体の周期と一致した画像欠陥(黒ポチや白ヌケ又は線状の画像欠陥として発生する)が発生する
評価基準は
◎:明瞭な周期性の画像欠陥の発生がほとんど見られない(黒ポチの場合は3個/A4以下、線状の場合は濃度差が0.02以内:良好)
○:明瞭な周期性の画像欠陥の発生が実用性の範囲内(黒ポチの場合は4〜10個/A4以下、線状の場合は濃度が0.03〜0.04:実用性があるレベル)
△:周期性の画像欠陥の発生があり、実用性の再検討を要する範囲(黒ポチの場合は11〜20個/A4以下、線状の場合は濃度が0.05〜0.06:実用性再検討要のレベル)
×:明瞭な周期性の画像欠陥の発生が多発(黒ポチの場合は21個/A4以上、線状の場合は濃度が0.07以上:実用上問題のレベル)
画像むら
画像むら:前記デジタル複写機を高温高湿下(HH:30℃、80%RH)に24hr放置後、低湿低温下(LL:10℃20RH%)に置き、30分後、コピーした。文字画像とハーフトーン画像のオリジナル画像をコピーし、発生した残像や黒帯状の画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.02未満(良好)
○:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.02〜0.0.04(実用上問題なし)
△:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.05〜0.0.06(実用性再検討要のレベル)
×:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.07以上(実用上問題あり)
トナーの転写性
トナー画像を前記デジタル複写機で作製し、クリーニングユニットから回収されたトナーは現像器に戻さず、袋に取り、前記高温高湿環境(HH)下で、2万枚のコピーを行い、下記により転写率を求め、評価した。
【0232】
転写率
下記式(6)により転写率(%)を求めた。
【0233】
式(6)転写率(%)={1−(回収トナーの質量/消費トナーの質量)}×100
◎:トナーの転写性が良好で、各色とも転写率が80%より大(良好)
○:トナーの転写性が良好で、各色とも転写率が65〜80%(実用性があるレベル)
△:トナーの転写率が55〜64%(実用性再検討要のレベル)
×:トナーの転写率が54%以下(実用上問題のレベル)
階調性の評価
上記評価条件を常温常湿(20℃、60%RH)環境に変更し、白画像から黒ベタ画像まで60の階調段差を持つオリジナル画像を複写し、階調性を評価した。評価は階調段差の画像を十分な昼光条件下で目視評価し、有意性のある階調段差の合計段差数で評価した。
【0234】
◎:階調性が41段差以上(良好)
○:階調性が21〜40段差(実用上問題なし)
△:階調性が11〜20段差(実用性の再検討要:階調性が重視されない画質では実用性あり)
×:階調性が10段差以下(実用上問題あり)
鮮鋭性の評価
画像の鮮鋭性は、線画像の解像性で評価した。下記の判断基準で評価した。
【0235】
◎:線画像の解像性が16本/mm以上を達成している(良好)
○:線画像の解像性が10〜15本/mmを達成している(実用上問題なし)
△:線画像の解像性が5〜9本/mm以下(高解像性の画像としては不適)
×:線画像の解像性が4本/mm以下(実用上問題有り)
評価結果を表4に示す。
【0236】
その他の評価条件
感光体の帯電条件:非画像部の電位は、電位センサで検知し、フィードバック制御できるようにし、その制御可能範囲は−500V〜−900Vである。
【0237】
像露光光:半導体レーザ(波長:780nm)
露光条件
露光部電位を−50V〜−150Vにする露光量に設定。
【0238】
露光ビーム:表4に記載のようにスポット面積を変化させた。
現像条件:現像剤は前記した現像剤1〜13を用いた。又、現像方式は反転現像で行った。
【0239】
【表4】
【0240】
表4より、重合トナーを用いた画像形成方法の組み合わせNo.1〜9で、チタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有する本発明の有機感光体1〜8は、本発明外のY型顔料を用いた有機感光体9に比し周期性の画像欠陥及び画像むらの評価が改善され、その結果鮮鋭性も改善されている。中でも、クリープ率が1%以上3.5%未満である有機感光体1〜4、7、8は改善効果が顕著である。
【0241】
又重合トナーの粒度分布を変化させた組み合わせ(組み合わせNo.1、7、12、16〜24)の比較では、本発明内の粒度分布{50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下}を有する重合トナーを用いた組み合わせNo.1、7、12、16、17、19、20、22、23は、粒度分布が本発明外の重合トナーを用いた組み合わせNo.15、18、21及び粉砕法のトナーを用いた組み合わせNo.24に比し、全ての評価項目に亘り改善効果が見られる。又、露光光のスポット面積の変化の組み合わせ(組み合わせNo.10〜14)では、露光光のスポット面積が2000μm2以下の露光光を用いて静電潜像を形成した組み合わせNo.10〜13が改善効果が大きいことが見られる。
【0242】
【発明の効果】
本発明の有機感光体及び該有機感光体を用いた画像形成方法を用いることにより、画像不良を伴わない高画質のデジタル画像を形成でき、良好な電子写真画像を提供することが出来る。又、該画像形成方法を用いた画像性能の良好な画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【図2】CG−1のX線回折スペクトルの図である。
【図3】CG−2のX線回折スペクトルの図である。
【図4】CG−3のX線回折スペクトルの図である。
【図5】感光体1の電荷発生層のX線回折スペクトルを示す図である。
【図6】Y型チタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルの図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
542 搬送量規制部材
543、544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機やプリンターの分野において用いられる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成方法は近年のデジタル技術の進展により、デジタル方式の画像形成が主流と成ってきている。デジタル方式の画像形成方法は400dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)等の1画素の小さなドット画像を顕像化することを基本としており、これらの小さなドット画像を忠実に再現する高画質化技術が要求されている。
【0003】
小さなドット画像の静電潜像を形成する方法としては、有機感光体上にスポット径が小さい露光光源を用いて微細な静電潜像形成を行い、微細なドット画像を形成する技術が開発されている。例えば、スポット径が4000μm2以下の光源を用いて有機感光体上に高精細の静電潜像を形成する方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
一方、この高精細の静電潜像を忠実に顕像化させる高画質化技術の1つとして重合トナー等の粒度分布を均一にした小粒径トナーを用いた電子写真用現像剤、或いは画像形成方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、小粒径化したトナーを用いた場合、前記した高精細のドット画像の静電潜像が安定して形成されないと、画像むらが発生したり、文字チリが発生し、かえって鮮鋭性が劣化しやすいという問題が発生している。
【0005】
一方、前述したような小径スポット露光方式で、正確な静電潜像を形成するには、高感度の有機感光体(以後、有機感光体を単に感光体とも云う)が要求される。これまで開発された高感度の有機感光体としては、例えば、粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θの27.2±0.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニン顔料(以後、単にY型顔料ともいう)を用いた有機感光体が実用化されている(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、該Y型顔料を用いた高感度の有機感光体に高精細のドット潜像を形成し、小粒径トナーを用いた現像剤でトナー像を形成すると、しばしば画像の一部で微細なドット画像が再現せず、帯状のむらが発生し、画質を著しく劣化させる。この帯状むらは画像形成を一時停止後にしばしば発生し、画像停止時に感光体が小粒径トナーと接触している部分に、感度の変化が感光体上に出現し、その感度むらが顕在化したためと思われる。重合トナーは粉砕法のトナーに比し、トナー表面の水分含有が高いため、有機感光体との付着力が増大し、クリーニング性や転写性を低下させたり、或いは有機感光体の湿度成分を増大させて、感度変化を生じさせたりする為と考えられる。
【0007】
一方、有機感光体として2,3−ブタンジオールとの付加体チタニルフタロシアニン顔料も用いた有機感光体が報告されている(特許文献3)。しかしながら、このような有機感光体と小粒径トナーを用いたドット画像の形成については、何ら公知の報告はなされていない。
【0008】
更に、高精細のドット画像の作製に際しては、有機感光体に起因する周期性の画像欠陥(黒ポチや白抜け等)が現像過程で増幅される傾向にあるので、このような周期性の画像欠陥をより少なくすることが求められている。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−272197号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2002−244336号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平5−273775号公報
【0012】
【非特許文献1】
電子写真学会誌,29(3),250(1990)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような従来技術の問題点を解決して、重合トナーを用いてデジタル画像を形成する画像形成方法に用いられ、画像むらや周期性の画像欠陥の発生を防止し、高精細の電子写真画像を形成できる有機感光体を提供することであり、且つ該有機感光体を用いた鮮鋭性の良好な画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について検討した結果、重合トナーを用いてデジタル画像を形成する画像形成方法に用いられる有機感光体に、しばしば発生しやすい画像むらや黒ポチ、白ヌケ等の画像欠陥の発生を効果的に防止するには、従来の中間層の技術に加えて、有機感光体の感度の温湿度依存性を改善し、電荷輸送層の膜質を高温高湿条件下でも、黒ポチや白ヌケの発生を抑える膜質にすることが必要であることを見いだし、本発明を完成した。即ち、導電性支持体上に電荷発生層、電荷輸送層の構成を有する有機感光体では、電荷発生層に温湿度依存性が小さい電荷発生物質を用い、表面層を形成する電荷輸送層の膜物性を粘弾性構造とすることにより、本発明の目的を達成できた。
【0015】
更に、本発明の有機感光体と重合トナーを併用し、デジタル画像を形成する画像形成方法としては、粒度分布がシャープな重合トナーを用いることにより、従来発生しやすかった画像むら、黒ポチや白ヌケ等の画像欠陥の発生を防止でき、鮮鋭性に優れた高画質の電子写真画像を得ることができた。
【0016】
本発明の目的は、以下の構成を持つことにより達成される。
1.有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有することを特徴とする有機感光体。
【0017】
2.有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満であることを特徴とする有機感光体。
【0018】
3.前記ジオールが(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールであることを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
【0019】
4.前記チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールとの付加体がCu−Kα特性X線の回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に回折ピークを示す結晶構造を有することを特徴とする前記3に記載の有機感光体。
【0020】
5.前記有機感光体の表面層に個数平均粒径10nm以上、100nm未満の微粒子を含有していることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体。
【0021】
6.感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有する有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【0022】
7.感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満である有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
【0023】
8.前記ドット状の静電潜像は有機感光体にスポット面積が2000μm2以下の露光光で露光して形成されることを特徴とする前記6又は7に記載の画像形成方法。
【0024】
9.前記重合トナーの個数平均一次粒径で3〜8μmであることを特徴とする前記6〜8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0025】
10.前記6〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【0026】
まず、本発明に関わる画像形成方法及び画像形成装置の説明をする。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【0027】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した本発明の感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0028】
感光体への一様帯電の後、像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0029】
本発明の画像形成方法においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、像露光をスポット面積が2000μm2以下の露光ビームを用いて行うことが好ましい。このような小径のビーム露光を行っても、本発明の有機感光体は、該スポット面積に対応した画像を忠実に形成することができる。より好ましいスポット面積は、100〜800μm2である。その結果800dpi(dpiとは2.54cm当たりのドット数)以上で、階調性が豊かな電子写真画像を達成することができる。
【0030】
前記露光ビームのスポット面積とは、該露光ビームを該ビームと垂直な面で切断したとき、該切断面に現れる光強度分布面で、光強度が最大ピーク強度の1/e2以上の領域に相当する面積を意味する。
【0031】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系、及びLEDや液晶シャッター等の固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2までの部分をスポット面積とする。
【0032】
本発明のドット状の静電潜像とは、上記のようにビームの露光光源を用い、断続的に静電潜像を形成することを意味し、ドットの形状は問わない。又、該ドットの静電潜像を形成するに際し、露光時間を変化させてドットの大きさを変化させてもよい。
【0033】
その静電潜像は次いで現像工程で現像器54を用いて現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0034】
現像剤は、例えばフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、スチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は現像スリーブ541に直流バイアス電圧、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。
【0035】
本発明のドット画像の現像方式としては、主としてデシタル方式の画像形成に用いられる反転現像方式が好ましく用いられる。この反転現像方式とは感光体に潜像を形成するため、像露光は文字及び図形等の画像部を露光し、この露光部を現像でトナー画像として顕像化する現像方式を云う。
【0036】
次いで、記録紙Pが、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0037】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写器)58が圧接され、給紙された記録紙Pを挟着して転写される。
【0038】
次いで記録紙Pは転写ローラーとほぼ同時に圧接状態とされた分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後感光体ドラム50の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0039】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0040】
本発明の有機感光体に使用する電荷発生物質としてはチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体(以下、単にジオール付加体とも云う)を含有することを特徴とする。本発明中、チタニルフタロシアニン化合物とは、一般式(1)で示すフタロシアニン残基中心にチタニル(O=Ti)基を持つものである。
【0041】
【化1】
【0042】
一般式(1)中、X1〜X4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、あるいはアルコキシ基を表し、n,m,l,kは0〜4の整数を表す。
【0043】
本発明の2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオール(以下、単に隣接ジオールとも云う)とは、脂肪族炭化水素の隣り合う炭素原子に一つずつ水酸基があるもので、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリンなどを挙げることができる。好ましくは一般式(2)、(3)で示されるような2つの隣接する各炭素原子が不斉炭素で構成される光学活性を有するジオールを挙げることができる。
【0044】
【化2】
【0045】
(一般式(2)及び一般式(3)中、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立にアルキル基を表す。)
上記R3、R4、R5、R6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル基が好ましい。即ち、R3〜R6のアルキル基が比較的炭素数が少ないアルキル基である方がチタニルフタロシアニンとの付加体を形成しやすい。中でも、(2R,3R)−2,3ブタンジオール及び(2S,3S)−2,3ブタンジオールの少なくとも1つを用いたチタニルフタロシアニン付加体が最も好ましい。チタニルフタロシアニン付加体の構造は、例えば(2R,3R)−2,3ブタンジオールとの付加体で表すと、下記で示されるようなチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3ブタンジオールの脱水縮合により生成する付加体化合物と推定される。
【0046】
【化3】
【0047】
本発明のチタニルフタロシアニン付加体は上記隣接ジオールとチタニルフタロシアニンを各種溶媒中で室温あるいは加熱下に反応することで合成することができる。原料であるチタニルフタロシアニンはフタロニトリルと四塩化チタンから得る合成法、ジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得る合成法、フタロニトリルと尿素とアルコキシチタンから得る合成法等通常知られている何れの合成法も用いることが出来るが、特にはジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得られる塩素含有量の少ない高純度なチタニルフタロシアニンが好ましい。またチタニルフタロシアニンはアシッドペースト処理等の方法により無定形化してから隣接ジオールと反応させるものが好ましい。本発明のチタニルフタロシアニン付加体を得るには、隣接ジオールをチタニルフタロシアニンに対して0.5〜2.0モル当量を加え、反応させることが好ましく、必ずしもチタニルフタロシアニン化合物1.0モル当量に対して1.0モル当量以上の隣接ジオールを必要としない。これは本発明のチタニルフタロシアニン付加体が隣接ジオール付加チタニルフタロシアニンと隣接ジオール付加のないチタニルフタロシアニンとの混晶状態でも電荷発生物質として高感度で高性能な状態を保つことができるからと考えられる。
【0048】
チタニルフタロシアニンとジオールとの反応は、広範囲な温度条件下で行うことができ、反応温度は25〜300℃の範囲が好ましく、50〜150℃の範囲であることがより好ましい。
【0049】
反応溶剤としては各種有機溶媒中を使用することができ、例えば、トルエン、ニトロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、α−クロロナフタレン等の芳香族系有機溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、テトラヒドロフラン、ジメチルセロソルブ等のエーテル系有機溶剤、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系極性有機溶剤、トリクロロエタン等のハロゲン系有機溶剤、ブタノール、オクタノール、ドデカノール等のアルコール系有機溶剤等を挙げることができる。
【0050】
結晶形
また本発明のチタニルフタロシアニン付加体としては、Cu−Kα特性X線の回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に明確な回折ピーク(バックグランドと明確に区別できるピーク)を有する結晶構造を有することが好ましい。その他にも9.5°、24.7°、25.1°、26.5°等に明確なピークを有してもよい。ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に明確な回折ピークを有する結晶構造を有する本発明のチタニルフタロシアニン付加体は良好な感度特性と環境メモリによる画像むらや黒ポチ等の画像欠陥の少ない特性を併せて有する。
【0051】
又、本発明の有機感光体は、感光体の表面層が、表面から加重される一定加重の圧子(荷重20mN)に対し、一定の塑性変形(1%以上、3.5%未満)特性を有機感光体に持つことを特徴とする。
【0052】
本発明の有機感光体のクリープ率は1%以上、3.5%未満であるが、2.0%以上、3.2%以下がより好ましい。有機感光体の表面がこのようなクリープ率を有していると、感光体表面が常に均一な表面形状を維持しやすく、感光体から記録材へのトナーの転写率が、常に良好に維持されやすい。クリープ率が1%未満では感光体表面が脆くなり、キャリア付着やブレード等の擦過に対し、クラック傷が生じやすく、感光体表面のクラック傷は周期的な黒ポチや白ヌケ等の画像欠陥を発生しやすく、トナーの転写性も低下しやすい。一方、クリープ率が3.5%以上ではキャリア付着やブレード等の擦過に対し、周辺が盛り上がったクレータ状の傷が発生し、この傷がクリーニングブレードを損傷させ、その結果クリーニング不良を引き起こし、ドット再現性を低下させ、鮮鋭性が劣化しやすい。
【0053】
本発明の画像形成方法はこのような粘弾性特性を備えた表面層を備えた有機感光体を用いることにより、重合トナーを用いてデジタル画像を形成しても、周期性の画像欠陥の発生を防止すると同時にトナーの転写性を改善し、現像工程や転写工程でのトナー画像の乱れを防止して、階調性、鮮鋭性等に優れた電子写真画像を形成することができる。
【0054】
前記のような粘弾性特性を有する表面層は、高弾性のポリカーボネートをバインダー樹脂として用いると同時に、比較的高分子量の電荷輸送物質を用いて、バインダーの高弾性を維持した電荷輸送層を表面層とすることにより、実現する事が出来る。又、このような電荷輸送層は、電荷輸送層を2層以上とし、最上層の電荷輸送層を前記した構成にすることが好ましい。
【0055】
本発明に好ましく用いられる高弾性のポリカーボネートとしては、下記に示すようなポリカーボネートが挙げられる。
【0056】
【化4】
【0057】
上記において、Mvは粘度平均分子量を示す。
又、本発明に用いる電荷輸送物質としては、分子量が500〜1500が好ましく、更に600〜1000がより好ましい。本発明に好ましく用いられる電荷輸送物質としては下記のような化学構造を有する電荷輸送物質が挙げられる。
【0058】
【化5】
【0059】
上記中、Mwは分子量を示す。
前記した高分子量の電荷輸送物質とポリカーボネートの混合比は質量比で電荷輸送層1に対し、ポリカーボネート0.5〜3.0の比率が好ましく、更に0.8〜2.0の比率が好ましいが、この比率は電荷輸送物質或いはポリカーボネートの種類によって、或いはその他の添加剤の存在により変化し、絶対的なものではない。
【0060】
又、数平均一次粒径が10nm以上、100nm未満の疎水性無機粒子を混在させることがより好ましい。疎水性無機粒子のより好ましい数平均粒径は10nm以上、90nm以下、最も好ましくは10nm以上、50nm未満である。表面層に含有される無機粒子の数平均一次粒子径が10nm未満でも、100nm以上でも、前記粘弾性特性が得られにくく、上記のような改善効果が得られにくい。
【0061】
本発明に用いられる10nm以上、100nm未満の無機粒子としては、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができるが、これらの中でもコスト、粒径の調整や表面処理の容易さ等からシリカ、特に表面を疎水化した疎水性シリカが好ましい。
【0062】
本発明の無機粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出する。
【0063】
上記疎水性シリカの疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(メタノールウェッタビリティ)で示される疎水化度で50%以上のものが好ましい。疎水化度が50%未満であると前記吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすく、その結果、温湿度変化時に画像むらが発生しやすくなり、又ブレードを傷つけクリーニング不良も発生しやすくなる。より好ましい疎水化度は65%以上、最も好ましくは70%以上である。
【0064】
疎水化度を表すメタノールウェッタビリティとは、メタノールに対するシリカ微粉末の濡れ性を評価するものである。濡れ性の測定は以下の方法で行う。内容量250mlのビーカーに入れた蒸留水50mlに、測定対象のシリカ微粉末を0.2g添加して撹拌する。次にメタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからゆっくり撹拌した状態でシリカ微粉末の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ微粉末を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした時、下記式より疎水化度を算出する。
【0065】
疎水化度=a/(a+50)×100
上記疎水性シリカは、公知の湿式法もしくは乾式法で生成されたシリカ粉末を疎水化することにより得られる。特に乾式法(ケイ素化ハロゲン化合物の蒸気相酸化)により生成されたいわゆるヒュームドシリカと称されるものを疎水化剤で処理したものが、水分吸着サイトが少なく好ましい。これは従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0066】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において例えば、塩化アルミニウム又は、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0067】
シリカ粉末の疎水化処理は、シリカ微粉末を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した疎水化処理剤溶液を噴霧するか或いは気化した疎水化処理剤を接触させて付着させる乾式処理、又は、シリカ粉末を溶液中に分散させ、その中に疎水化処理剤を滴下して付着させる湿式処理等の従来公知の方法で行うことが出来る。
【0068】
疎水化処理剤としては、公知の化合物を用いることが出来、具体例を下記に挙げる。又、これらの化合物は組み合わせて使用しても良い。
【0069】
チタンカップリング剤としてはテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0070】
シランカップリング剤としてはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−ビニルベンジルアミノエチル−N−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン及びp−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0072】
これらの疎水化処理剤は、シリカ粉末に対して1〜40質量%添加して被覆することが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0073】
又、上記表面疎水化剤としてハイドロジェンポリシロキサン化合物を用いてもよい。該ハイドロジェンポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0074】
本発明では上記疎水化処理された疎水性シリカを有機感光体の表面層にバインダーと共に含有させるが表面層のシリカ粒子の割合はバインダーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、最も好ましくは2〜10質量%で使用されるのがよい。20質量%以上だと、環境メモリやトナーの転写性を低下させやすい。一方、1質量%未満だとクリーニング不良や、耐摩耗性の低下を起こしやすい。
【0075】
又、表面層となる電荷輸送層には、上記共重合ポリカーボネートのバインダー樹脂と疎水性無機粒子以外に、電荷輸送物質が含有される。該電荷輸送物質はバインダー樹脂に対して50〜150質量%が好ましい。又該電荷輸送層には酸化防止剤をバインダー樹脂に対して1〜10質量%存在させることが好ましい。
【0076】
以上のような構成を選択採用することにより、前記した表面層の膜物性と表面粗さを実現させることができ、このような表面層を有する有機感光体は残留トナークリーニング性を改善すると同時に、耐傷性、耐摩耗性を改善し、長期に亘り鮮鋭性が良好な電子写真画像を提供することができる。
【0077】
以下、表面層以外の本発明に適用される有機感光体の構成について記載する。本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0078】
本発明の電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0079】
本発明の有機感光体の層構成は、基本的には導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層の感光層から構成される。最も好ましい構成としては、感光層を電荷発生層と複数の電荷輸送層で構成し、最上層を電荷輸送物質を含有し、且つビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率が1%以上3.5%未満の特性を有する電荷輸送層の構成にすることである。
【0080】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0081】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0082】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0083】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0084】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた前記した中間層を設けることが好ましい。
【0085】
本発明の中間層には前記した吸水率が小さいバインダー樹脂中に酸化チタンを含有させることが好ましい。該酸化チタン粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液の酸化チタン粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中の酸化チタン粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲の酸化チタン粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0086】
本発明に用いられる酸化チタン粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状の酸化チタン粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0087】
本発明の酸化チタン粒子は表面処理されていることが好ましく、表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0088】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは酸化チタン粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0089】
この様に、酸化チタン粒子の様な酸化チタン粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理された酸化チタン粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等の酸化チタン粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0090】
上記反応性有機ケイ素化合物としては下記一般式(4)で表される化合物が挙げられるが、酸化チタン表面の水酸基等の反応性基と縮合反応をする化合物であれば、下記化合物に限定されない。
【0091】
一般式(4)
(R)n−Si−(X)4−n
(式中、Siはケイ素原子、Rは該ケイ素原子に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは加水分解性基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
一般式(4)で表される有機ケイ素化合物において、Rで示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基を挙げられる。また、Xの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。
【0092】
また、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物は、単独でも良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0093】
また、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物の具体的化合物で、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていても良い。同様に、nが2以下の場合、複数のXは同一でも異なっていても良い。又、一般式(4)で表される有機ケイ素化合物を2種以上を用いるとき、R及びXはそれぞれの化合物間で同一でも良く、異なっていても良い。
【0094】
又、表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはポリシロキサン化合物が挙げられる。該ポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。
【0095】
特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0096】
感光層
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0097】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として前述のチタニルフタロシアニン付加体を使用するが、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用して用いることができる。
【0098】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0099】
電荷輸送層
電荷輸送層は複数の電荷輸送層の構成にし、最上層の電荷輸送層を表面層とした構成を採用することが好ましい。
【0100】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0101】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.30(eV)以下である。
【0102】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0103】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0104】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0105】
又、複数の電荷輸送層の膜厚の合計は10〜50μmが好ましい。膜厚が10μm未満だと帯電電位が不十分になりやすく、50μmを超えると、鮮鋭性が劣化しやすい。
【0106】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0107】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0108】
本発明の画像形成装置に係るトナーについて説明する。
一方、本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、重合トナーを用いることを特徴とする。重合トナーは水系溶媒中で製造される為、粉砕法のトナーに比し、トナー表面の水分含有が高くなり、有機感光体との付着力が増大し、クリーニング性や転写性を低下させたり、或いは有機感光体の湿度成分を増大させて、感度変化を生じさせ、画像むらや、黒ポチや白抜け等の周期性の画像欠陥を引き起こしていたが、前記した本発明の有機感光体と併用することにより、画像むらを発生させず、クリーニング性や転写性が良好で、且つ鮮鋭性に優れた電子写真画像を形成することができる。
【0109】
又、本発明者等は、本画像形成方法に用いる重合トナーとしては、水分含有率が大きく、付着力の大きくなる小粒径成分の存在量を低減すると同時に、全トナーでのトナー粒径の中央値である50%粒径に着目し、その粒径から乖離している小粒径成分を分析するにあたり、トナーの体積粒径の大きな粒径側から、個数粒径の大きな粒径側から、各々、累計した75%頻度の粒径に注目して、以下のような粒度分布を有する重合トナーが適していることを見いだした。
【0110】
即ち、前記ジオール付加体を用いた感光体上に、形成されたドット状の静電潜像を、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、前記個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であり、粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下の粒度分布を有するトナーを用いて顕像化することにより、ドット再現性が良好で、画像むらや黒ポチや白抜け等の画像欠陥のない、鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0111】
尚、重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合、必要によりその後の化学的処理により形成されて得られるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と必要により、その後に行われる粒子同士の融着工程を経て得られるトナーを意味する。
【0112】
まず、本発明に係る重合トナーの体積粒径、個数粒径及び、前記体積粒径と前記個数粒径との比について説明する。
【0113】
本発明に記載の効果を得る観点から、本発明に係るトナーは、粒径分布として単分散であることが好ましく、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15であることが必要であるが、好ましくは1.0〜1.13である。
【0114】
また、転写性や現像性の変動幅を抑制するためには、トナーの大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20であることが必要であるが、好ましくは、1.1〜1.19である。さらに、全トナー中において、粒径が0.7×(Dp50)以下のトナーの個数が10個数%以下であることが必要であるが、好ましくは、5個数%〜9個数%である。
【0115】
本発明に係るトナーの50%体積粒径(Dv50)は2μm〜8μmが好ましく、更に、好ましくは3μm〜7μmである。また、本発明に係るトナーの50%個数粒径(Dp50)は、2μm〜7.5μmが好ましく、更に好ましくは、2.5μm〜7μmである。この範囲とすることにより、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0116】
ここで、大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)或いは累積75%個数粒径(Dp75)とは、粒径の大きな方からの頻度を累積し、全体積の和或いは個数の和に対して、それぞれが75%を示す粒径分布部位の体積粒径或いは個数粒径で表す。
【0117】
本発明において、50%体積粒径(Dv50)、50%個数粒径(Dp50)、累積75%体積粒径(Dv75)、累積75%個数粒径(Dp75)等は、コールターカウンターTA−II型或いはコールターマルチサイザー(コールター社製)で測定することが出来る。
【0118】
本発明に係るトナーの構成成分、トナーの構成成分である結着樹脂の成分、その製造などについて説明する。
【0119】
本発明に係るトナーは着色剤、結着樹脂などを少なくとも含有するが、前記トナーは、粉砕・分級工程を経て製造してもよく、下記に示すような重合性単量体を重合して得た樹脂粒子を用いてトナーを作製する、いわゆる重合法で製造してもよい。重合法を用いてトナーを製造する場合には樹脂粒子を塩析/融着する工程を有する製造方法が特に好ましい。
【0120】
重合法に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を構成成分として用い、必要に応じて架橋剤を使用することができる。また、以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種類含有させることが好ましい。
【0121】
(1)ラジカル重合性単量体
ラジカル重合性単量体成分としては、特に限定されるものではなく従来公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0122】
具体的には、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等が挙げられる。
【0123】
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0124】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0125】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0126】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0127】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0128】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0129】
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が挙げられる。
【0130】
(2)架橋剤
架橋剤としては、トナーの特性を改良するためにラジカル重合性架橋剤を添加しても良い。ラジカル重合性架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0131】
(3)酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体
酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体、スルホン酸基を有する重合性単量体、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン系の重合性単量体が挙げられる。
【0132】
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル等が挙げられる。
【0133】
スルホン酸基を有する重合性単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル等が挙げられる。
【0134】
これらは、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩あるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩の構造であってもよい。
【0135】
塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、アミン系の化合物があげられ、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および上記4化合物の4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN−エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0136】
本発明に用いられるラジカル重合性単量体としては、酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体が単量体全体の0.1〜15質量%使用することが好ましく、ラジカル重合性架橋剤はその特性にもよるが、全ラジカル重合性単量体に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0137】
〔連鎖移動剤〕
分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが出来る。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、四臭化炭素およびスチレンダイマー等が使用される。
【0138】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。
【0139】
更に上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0140】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0141】
〔界面活性剤〕
前述のラジカル重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0142】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0143】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
【0144】
本発明において、これらは、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0145】
〔着色剤〕
着色剤としては無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。
【0146】
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0147】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0148】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0149】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0150】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0151】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0152】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、等が挙げられる。
【0153】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0154】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0155】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0156】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0157】
本発明に係るトナーは離型剤を併用してもよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックス等を離型剤として使用することが出来る。また、本発明においては、下記一般式(5)で示されるエステルワックスを好ましく用いることが出来る。
【0158】
一般式(5)
R1−(OCO−R2)n
式中、nは1〜4の整数を表すが、好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。
【0159】
R1、R2は置換基を有しても良い炭化水素基を示す。
R1:炭素数=1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5
R2:炭素数=1〜40、好ましくは13〜29、更に好ましくは12〜25
以下に、本発明に係るエステル基を有する結晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0160】
【化6】
【0161】
【化7】
【0162】
これらエステルワックスは、樹脂粒子中に含有され、樹脂粒子を融着させて得られるトナーに良好な定着性(画像支持体に対する接着性)を付与する機能を有する。
【0163】
本発明に用いられる離型剤の添加量は、トナー全体に1質量%〜30質量%が好ましく、更に好ましくは2質量%〜20質量%であり、更に好ましくは3〜15質量%である。また、本発明のトナーは、上記の重合性単量体中に前記離型剤を溶解させたものを水中に分散し、重合させ、樹脂粒子中に離型剤として上記のようなエステル系化合物を内包させた粒子を形成させ、着色剤粒子ととも塩析/融着する工程を経て作製されたトナーが好ましい。
【0164】
本発明に係るトナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0165】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0166】
本発明に係るトナーに用いられる外添剤について説明する。
本発明に係るトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されないが、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0167】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0168】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0169】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0170】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0171】
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0172】
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5質量%が好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置が挙げられる。
【0173】
本発明に係る静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
《製造工程》
本発明のトナーは、離型剤を溶解した上記記載のような重合性単量体または重合性単量体溶液を水系媒体中に分散し、ついで重合法により離型剤を内包した樹脂粒子を調整する工程、前記樹脂粒子分散液を用いて水系媒体中で樹脂粒子を融着させる工程、得られた粒子を水系媒体中より濾過し界面活性剤などを除去する洗浄工程、得られた粒子を乾燥させる工程、さらに乾燥させて得られた粒子に外添剤などを添加する外添剤添加工程などから構成される重合法で製造することが好ましい。ここで樹脂粒子としては着色された粒子であってもよい。また、非着色粒子を樹脂粒子として使用することもできる、この場合には、樹脂粒子の分散液に着色剤粒子分散液などを添加した後に水系媒体中で融着させることで着色粒子とすることができる。
【0174】
特に、融着の方法としては、重合工程によって生成された樹脂粒子を用いて塩析/融着する方法が好ましい。また、非着色の樹脂粒子を使用した場合には、樹脂粒子と着色剤粒子を水系媒体中で塩析/融着させることができる。
【0175】
また、着色剤や離型剤に限らず、トナーの構成要素である荷電制御剤等も本工程で粒子として添加することができる。
【0176】
なお、ここで水系媒体とは主成分として水からなるもので、水の含有量が50質量%以上であるものを示す。水以外のものとしては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどをあげることができる。好ましくは樹脂を溶解しない有機溶媒である、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0177】
本発明での好ましい重合法としては、モノマー中に離型剤を溶解したモノマー溶液を臨界ミセル濃度以下の界面活性剤を溶解させた水系媒体中に機械的エネルギーによって油滴分散させた分散液に、水溶性重合開始剤を加え、ラジカル重合させる方法をあげることができる。この場合、モノマー中に油溶性の重合開始剤を加えて使用してもよい。
【0178】
この油滴分散を行うための分散機としては特に限定されるものでは無いが、例えばクレアミックス、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等をあげることができる。
【0179】
着色剤自体は表面改質して使用してもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散し、その中に表面改質剤を添加した後昇温し反応を行う。反応終了後、ろ過し同一の溶媒で洗浄ろ過を繰り返し乾燥させ表面改質剤で処理された顔料を得る。
【0180】
着色剤粒子は着色剤を水系媒体中に分散して調製される方法がある。この分散は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。
【0181】
顔料分散時の分散機は特に限定されないが、好ましくはクレアミックス、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0182】
ここで使用される界面活性剤は、前述の界面活性剤を使用することができる。塩析/融着を行う工程は、樹脂粒子及び着色剤粒子とが存在している水中にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、ついで樹脂粒子のガラス転移点以上に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。
【0183】
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
【0184】
トナーの粒径分布を達成するための方法としては特に限定されないが、例えば分級などの手法による制御や会合時における温度や時間、さらには会合を終了させるための停止方法の制御などの手法を使用することができる。
【0185】
特に好ましい製造方法として、水中での会合時間、会合温度、停止速度などを制御する方法をあげることができる。すなわち、塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。この塩析剤を添加する温度は特に限定されない。
【0186】
本発明では、樹脂粒子の分散液をできるだけ速やかに昇温し、樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱する方法を使用することが好ましい。この昇温までの時間としては30分未満、好ましくは10分未満である。さらに、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、1℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、急速な塩析/融着の進行により粗大粒子の発生を抑制する観点で、15℃/分以下が好ましい。特に好ましい形態としては、塩析/融着をガラス転移温度以上になった時点でも継続して進行させる方法をあげることができる。この方法とすることで、粒子の成長とともに融着が効果的に進行させることができ、最終的なトナーとしての耐久性を向上することができる。
【0187】
さらに、会合時に2価の金属塩を使用して塩析/融着することで特に粒径を制御することが可能となる。この理由としては明確ではないが、2価の金属塩を使用することで塩析時の斥力が大きくなり、界面活性剤の分散能を効果的に抑制することが可能となり、結果として流刑分布を制御することが可能となったものと推定される。
【0188】
また、塩析/融着を停止するために1価の金属塩及び水を添加することが好ましい。このものを添加することにより、塩析を停止させることができ、結果として大粒径成分や小粒径成分の存在を抑制することが可能となる。
【0189】
樹脂粒子を水系媒体中で会合あるいは融着させる重合法トナーでは、融着段階での反応容器内の媒体の流れおよび温度分布を制御することで、さらには融着後の形状制御工程において加熱温度、攪拌回転数、時間を制御することで、トナー全体の形状分布および形状を任意に変化させることができる。
【0190】
すなわち、樹脂粒子を会合あるいは融着させる重合法トナーでは、反応装置内の流れを層流とし、内部の温度分布を均一化することができる攪拌翼および攪拌槽を使用して、融着工程および形状制御工程での温度、回転数、時間を制御することにより、本発明の形状係数および均一な形状分布を有するトナーを形成することができる。この理由は、層流を形成させた場で融着させると、凝集および融着が進行している粒子(会合あるいは凝集粒子)に強いストレスが加わらず、かつ流れが加速された層流においては攪拌槽内の温度分布が均一である結果、融着粒子の形状分布が均一になると推定される。さらに、その後の形状制御工程での加熱、攪拌により融着粒子は徐々に球形化し、トナー粒子の形状を任意に制御できる。
【0191】
本発明のトナーを所定の形状に制御するためには、塩析と融着を同時進行させることが好ましい。凝集粒子を形成した後に加熱する方法ではその形状に分布を生じやすく、さらに微粒子の発生を抑制することができない。すなわち、凝集粒子を水系媒体中で攪拌しながら加熱するために凝集粒子の再分断が発生し、小粒径の成分が発生しやすいものと推定される。
【0192】
本発明に用いられる現像剤について説明する。
キャリアと混合して二成分現像剤として用いること場合にはキャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0193】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0194】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0195】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0196】
合成例1
チタニルフタロシアニン−アモルファス品の合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2gをオルトジクロルベンゼン200mlに分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4gを加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱する。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗、メタノール洗浄して、乾燥後、26.2g(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得る。ついで粗チタニルフタロシアニンを5℃以下で濃硫酸250ml中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5Lに注ぎ込む。析出した結晶を濾過し、充分に水洗してウエットペースト品225gを得る。ついでウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥してチタニルフタロシアニン−アモルファス品24.8g(収率86%)を得た。
【0197】
合成例2
チタニルフタロシアニン付加体CG−1の作製((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体)
トルエン200mlと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール1.8g(0.6モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いでエステル管を備えて加熱還流し、生成する水をトルエンとの共沸によって除去しながら3時間反応させる。放冷後、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−1)19.8gを得た。CG−1のX線回折スペクトルを図2に示す。
【0198】
合成例3
チタニルフタロシアニン付加体CG−2の作製((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体)
トルエン200mlと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール3.7g(1.2モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いでエステル管を備えて加熱還流し、生成する水をトルエンとの共沸によって除去しながら3時間反応させる。放冷後、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−2)20.7gを得た。CG−2のX線回折スペクトルを図3に示す。
【0199】
合成例4
チタニルフタロシアニン付加体CG−3の作製((2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体)
オルトジクロロベンゼン200mlと(2S,3S)−2,3−ブタンジオール2.1g(0.7モル当量)を溶解し、これにチタニルフタロシアニン−アモルファス品19.6gを加える。次いで6時間加熱還流させ反応を進行させる。放冷後、(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥して目的とする付加体(CG−3)20.0gを得た。CG−3のX線回折スペクトルを図4に示す。
【0200】
感光体1の作製
円筒状アルミニウム基体上に、下記の組成の中間層塗布液を浸漬塗布して、膜厚4.0μmの中間層を形成した。
【0201】
〈中間層塗布液〉
下記組成を循環式湿式分散機を用いて分散した。
【0202】
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10部
酸化チタン(数平均一次粒径35nm、一次表面処理;シリカ・アルミナ処理
、二次表面処理;メチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 30部
メタノール 100部
その上に下記の電荷発生層塗布液を、浸漬塗布して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0203】
〈電荷発生層塗布液〉
下記組成を混合しサンドグラインダーにて分散した。
【0204】
電荷発生物質:合成例2のCG−1 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
〈第一電荷輸送層〉
電荷輸送物質(T−1) 200部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で乾燥膜厚15μmの第一電荷輸送層を形成した。
【0205】
〈第二電荷輸送層:表面層〉
電荷輸送物質(T−1) 20部
ポリカーボネート(PC−1:三菱ガス化学社製) 30部
疎水性シリカ(平均一次粒径:40nm、ヘキシルメチルジシラザン、疎水化
度:76%) 3.0部
酸化防止剤(LS2626:三共社製) 0.6部
1,3−ジオキソラン 600部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 0.1部
を混合し、超音波を照射できる循環分散装置にて循環分散を行い、表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記第一電荷輸送層の上に円型量規制型塗布法により乾燥膜厚5μmになるように第二電荷輸送層を塗布し、110℃で70分間の乾燥を行い、感光体1を作製した。
【0206】
尚、上記電荷発生層を透明ペットベース上に塗布乾燥した試料を用いて、X線回折スペクトルを測定したデータを図5に示す。図5のX線回折スペクトルは電荷発生層のバインダー(ポリビニルブチラール樹脂)の影響を受け、図2のCG−1の顔料のX線回折スペクトルに比し、0.2°〜0.3°低角度側にシフトしている。
【0207】
感光体2〜7の作製
感光体1の作製において、電荷発生物質のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとの付加体CG−1、第二電荷輸送層の電荷輸送物質の種類と量、及びポリカーボネートを表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜7を作製した。
【0208】
感光体8の作製
感光体1の作製において、第一電荷輸送層の乾燥膜厚を20μmとし、第二電荷輸送層を除いた他は感光体1と同様にして感光体8を作製した。
【0209】
感光体9の作製
感光体1の作製において、電荷発生物質のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールとの付加体CG−1を、下記に示す合成法で得たX線回折スペクトルで、27.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニン顔料(表1ではY−TiOPc)に変更した以外は同様にして感光体9を作製した。
【0210】
Y型チタニルフタロシアニン顔料の合成例
ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドからチタニルフタロシアニン粗品を作り、これを硫酸に溶かし水に注いで生じた沈殿を濾過し水で十分に洗って無定型チタニルフタロシアニン顔料含水ペーストを得る。この顔料含水ペースト(固形分換算約10g)をオルトジクロルベンゼン100mlと水100mlの混合液(水層は分離している)に分散し、70℃で6時間加熱後、メタノールに注いで生じた結晶を濾過し、乾燥してY型チタニルフタロシアニン顔料(Y−TiOPc:X線回折スペクトルは図6)を得た。
【0211】
【表1】
【0212】
表1に記載したクリープ率は下記のようにして測定した。
クリープ率の測定
使用機器:フィッシャースコープH100V(微小硬さ測定装置)(株)フィッシャー・インストルメンツ社製
使用圧子:ダイアモンド ビッカース圧子
負荷条件:4mN/secの速度で有機感光体の表面からビッカース圧子を押し込む
負荷時間:5sec
保持時間:5sec
除荷条件:負荷と同じ速度で負荷を除く
測定試料
アルミ平板上に前記した感光体と同様に中間層、電荷発生層、第一電荷輸送層、第二電荷輸送層を設け、同じ条件で乾燥させた試料をH100V機に固定し、試料に対して垂直にビッカース圧子を押し込み測定。
【0213】
測定は圧子負荷(5sec)、荷重保持(5sec:この間の変形量の割合がクリープ率)、除荷の手順で行う。
【0214】
クリープ率の求め方
CHU(クリープ率)={(h2−h1)/h1}×100(%)
h1:負荷荷重(20mN)に達した時(負荷開始から5秒後)の押し込み深さ
h2:保持(5sec)後の押し込み深さ
又、表1中の電荷輸送物質T−4及びポリカーボネートPC−4の化学構造を下記に示す(Mvは粘度平均分子量、Mwは分子量)。
【0215】
【化8】
【0216】
本発明に用いるトナー及び該トナーを用いた現像剤を作製した。
《現像剤》
《ラテックス1の製造》
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた5000mlのセパラブルフラスコに予めアニオン系活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)7.08gをイオン交換水(2760g)に溶解させた溶液を添加する。窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。一方で例示化合物19)72.0gをスチレン115.1g、n−ブチルアクリレート42.0g、メタクリル酸10.9gからなるモノマーに加え、80℃に加温し溶解させ、モノマー溶液を作製した。ここで循環経路を有する機械式分散機により上記の加熱溶液を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を作製した。ついで、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し80℃にて3時間加熱、撹拌することでラテックス粒子を作製した。引き続いて更に重合開始剤(KPS)7.73gをイオン交換水240mlに溶解させた溶液を添加し、15分後、80℃でスチレン383.6g、n−ブチルアクリレート140.0g、メタクリル酸36.4g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル14.0gの混合液を120分かけて滴下した。滴下終了後60分加熱撹拌させた後40℃まで冷却しラテックス粒子を得た。
【0217】
このラテックス粒子をラテックス1とする。
《着色粒子の製造》
(着色粒子1の製造)
n−ドデシル硫酸ナトリウム=9.2gをイオン交換水160mlに撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)20gを徐々に加え、ついで、クレアミックスを用いて分散した。大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、質量平均径で112nmであった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0218】
前述の「ラテックス1」1250gとイオン交換水2000ml及び「着色剤分散液1」を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を付けた5リットルの四つ口フラスコに入れ撹拌する。30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを10.0に調整した。ついで、塩化マグネシウム6水和物52.6gをイオン交換水72mlに溶解した水溶液を攪拌下、30℃にて5分間で添加した。その後、2分間放置した後に、昇温を開始し、液温度90℃まで5分で昇温する(昇温速度=12℃/分)。その状態で粒径をコールターカウンターTAIIにて測定し、体積平均粒径が4.3μmになった時点で塩化ナトリウム115gをイオン交換水700mlに溶解した水溶液を添加し粒子成長を停止させ、さらに継続して液温度85℃±2℃にて、8時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。その後、6℃/minの条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加し、pHを2.0に調整し、撹拌を停止した。生成した着色粒子を下記条件で濾過/洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。このものを「着色粒子1」とする。
【0219】
(着色粒子2、3、4及び5の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に変更した以外は同様にして、着色粒子2〜5を各々、製造した。
【0220】
(着色粒子6〜8の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に設定し、且つ、体積平均粒径が3.8μmになった時点で粒子成長を停止させて、各々、着色粒子6〜8を製造した。
【0221】
(着色粒子9〜11の製造)
着色粒子1の製造において、表2に記載の製造条件に設定し、且つ、体積平均粒径が5.5μmになった時点で粒子成長を停止させ、各々、着色粒子9〜11を製造した。
【0222】
着色粒子1〜11の製造条件を表2に示す。
【0223】
【表2】
【0224】
(着色粒子12の製造)
着色粒子1の製造において、個数平均粒径が7.3μmになった時点で粒子成長を停止させ、着色粒子12を製造した。
【0225】
(トナー粒子の製造)
得られた着色粒子1〜12に、各々、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)を0.5質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合してトナー1〜12を得た。
(トナー13製造例:粉砕法の例)
スチレン:ブチルアクリレート:ブチルメタクリレート:アクリル酸=75:18:5:2の質量比からなるスチレン−アクリル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し、微粉砕を行い、分級して個数平均粒径が6.3μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度=75/数平均一次粒子径=12nm)を1.2質量%添加しトナーを得た。これをトナー13とする。
【0226】
得られたトナー1〜13の各々の粒度分布特性を表3に示す。
【0227】
【表3】
【0228】
(現像剤の製造)
上記トナーの各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の現像剤1〜13を各々、製造した。
【0229】
《評価》
上記感光体を図1の構造を基本的に有するコニカ製Sitios7040デジタル複写機(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器、反転現像手段を有する)に各感光体、現像剤(現像剤No.=トナーNo.)、露光スポット面積を表4のように組み合わせ、高温高湿(30℃80%RH)下で、画素率8%の文字及びハーフトーンの混在した画像を連続してA4紙2万枚プリントを行い評価した。評価項目、評価基準を下記に示す。又評価結果を表4に示す。
【0230】
評価項目と評価基準
「ドットの再現性」
画像を構成するドット再現性を100倍の拡大鏡を覗いて評価した。
【0231】
◎:画像ドットの大きさが露光スポット面積の±30%未満でそれぞれ独立に再現されている(良好)
○:画像ドットの大きさが露光スポット面積の30〜60%増加又は減少し、それぞれ独立に再現されている(実用性があるレベル)
×:画像ドットの大きさが露光スポット面積の60%を越えて増加又は減少し、部分的に画像ドットが消失したり、連結したりしている(実用上問題のレベル)
「周期性の画像欠陥」
感光体の周期と一致した画像欠陥(黒ポチや白ヌケ又は線状の画像欠陥として発生する)が発生する
評価基準は
◎:明瞭な周期性の画像欠陥の発生がほとんど見られない(黒ポチの場合は3個/A4以下、線状の場合は濃度差が0.02以内:良好)
○:明瞭な周期性の画像欠陥の発生が実用性の範囲内(黒ポチの場合は4〜10個/A4以下、線状の場合は濃度が0.03〜0.04:実用性があるレベル)
△:周期性の画像欠陥の発生があり、実用性の再検討を要する範囲(黒ポチの場合は11〜20個/A4以下、線状の場合は濃度が0.05〜0.06:実用性再検討要のレベル)
×:明瞭な周期性の画像欠陥の発生が多発(黒ポチの場合は21個/A4以上、線状の場合は濃度が0.07以上:実用上問題のレベル)
画像むら
画像むら:前記デジタル複写機を高温高湿下(HH:30℃、80%RH)に24hr放置後、低湿低温下(LL:10℃20RH%)に置き、30分後、コピーした。文字画像とハーフトーン画像のオリジナル画像をコピーし、発生した残像や黒帯状の画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.02未満(良好)
○:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.02〜0.0.04(実用上問題なし)
△:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.05〜0.0.06(実用性再検討要のレベル)
×:残像や黒帯状の画像の濃度差ΔHDが0.07以上(実用上問題あり)
トナーの転写性
トナー画像を前記デジタル複写機で作製し、クリーニングユニットから回収されたトナーは現像器に戻さず、袋に取り、前記高温高湿環境(HH)下で、2万枚のコピーを行い、下記により転写率を求め、評価した。
【0232】
転写率
下記式(6)により転写率(%)を求めた。
【0233】
式(6)転写率(%)={1−(回収トナーの質量/消費トナーの質量)}×100
◎:トナーの転写性が良好で、各色とも転写率が80%より大(良好)
○:トナーの転写性が良好で、各色とも転写率が65〜80%(実用性があるレベル)
△:トナーの転写率が55〜64%(実用性再検討要のレベル)
×:トナーの転写率が54%以下(実用上問題のレベル)
階調性の評価
上記評価条件を常温常湿(20℃、60%RH)環境に変更し、白画像から黒ベタ画像まで60の階調段差を持つオリジナル画像を複写し、階調性を評価した。評価は階調段差の画像を十分な昼光条件下で目視評価し、有意性のある階調段差の合計段差数で評価した。
【0234】
◎:階調性が41段差以上(良好)
○:階調性が21〜40段差(実用上問題なし)
△:階調性が11〜20段差(実用性の再検討要:階調性が重視されない画質では実用性あり)
×:階調性が10段差以下(実用上問題あり)
鮮鋭性の評価
画像の鮮鋭性は、線画像の解像性で評価した。下記の判断基準で評価した。
【0235】
◎:線画像の解像性が16本/mm以上を達成している(良好)
○:線画像の解像性が10〜15本/mmを達成している(実用上問題なし)
△:線画像の解像性が5〜9本/mm以下(高解像性の画像としては不適)
×:線画像の解像性が4本/mm以下(実用上問題有り)
評価結果を表4に示す。
【0236】
その他の評価条件
感光体の帯電条件:非画像部の電位は、電位センサで検知し、フィードバック制御できるようにし、その制御可能範囲は−500V〜−900Vである。
【0237】
像露光光:半導体レーザ(波長:780nm)
露光条件
露光部電位を−50V〜−150Vにする露光量に設定。
【0238】
露光ビーム:表4に記載のようにスポット面積を変化させた。
現像条件:現像剤は前記した現像剤1〜13を用いた。又、現像方式は反転現像で行った。
【0239】
【表4】
【0240】
表4より、重合トナーを用いた画像形成方法の組み合わせNo.1〜9で、チタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有する本発明の有機感光体1〜8は、本発明外のY型顔料を用いた有機感光体9に比し周期性の画像欠陥及び画像むらの評価が改善され、その結果鮮鋭性も改善されている。中でも、クリープ率が1%以上3.5%未満である有機感光体1〜4、7、8は改善効果が顕著である。
【0241】
又重合トナーの粒度分布を変化させた組み合わせ(組み合わせNo.1、7、12、16〜24)の比較では、本発明内の粒度分布{50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下}を有する重合トナーを用いた組み合わせNo.1、7、12、16、17、19、20、22、23は、粒度分布が本発明外の重合トナーを用いた組み合わせNo.15、18、21及び粉砕法のトナーを用いた組み合わせNo.24に比し、全ての評価項目に亘り改善効果が見られる。又、露光光のスポット面積の変化の組み合わせ(組み合わせNo.10〜14)では、露光光のスポット面積が2000μm2以下の露光光を用いて静電潜像を形成した組み合わせNo.10〜13が改善効果が大きいことが見られる。
【0242】
【発明の効果】
本発明の有機感光体及び該有機感光体を用いた画像形成方法を用いることにより、画像不良を伴わない高画質のデジタル画像を形成でき、良好な電子写真画像を提供することが出来る。又、該画像形成方法を用いた画像性能の良好な画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面図である。
【図2】CG−1のX線回折スペクトルの図である。
【図3】CG−2のX線回折スペクトルの図である。
【図4】CG−3のX線回折スペクトルの図である。
【図5】感光体1の電荷発生層のX線回折スペクトルを示す図である。
【図6】Y型チタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルの図である。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
542 搬送量規制部材
543、544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
Claims (10)
- 有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有することを特徴とする有機感光体。
- 有機感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、重合トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法に用いられる有機感光体において、導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満であることを特徴とする有機感光体。
- 前記ジオールが(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
- 前記チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールとの付加体がCu−Kα特性X線の回折スペクトルで、ブラッグ角(2θ)の8.0〜8.8に回折ピークを示す結晶構造を有することを特徴とする請求項3に記載の有機感光体。
- 前記有機感光体の表面層に個数平均粒径10nm以上、100nm未満の微粒子を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光体。
- 感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有する有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
- 感光体上にドット状の静電潜像を形成し、該静電潜像を現像工程で、トナーを用いてデジタル画像に顕像化する画像形成方法において、該感光体が導電性基体上にチタニルフタロシアニンと2つの隣接する各炭素原子に水酸基を有するジオールとの付加体を含有する電荷発生層及び該電荷発生層上に電荷輸送層を有し、且つクリープ率(ビッカース圧子を荷重20mNで押し込んだ時のクリープ率)が1%以上3.5%未満である有機感光体であり、前記トナーが、少なくとも樹脂と着色剤とからなる着色粒子を含有し、50%体積粒径(Dv50)と50%個数粒径(Dp50)の比(Dv50/Dp50)が1.0〜1.15、体積粒径の大きい方からの累積75%体積粒径(Dv75)と、個数粒径の大きい方からの累積75%個数粒径(Dp75)の比(Dv75/Dp75)が1.0〜1.20、且つ粒径が0.7×(Dp50)以下の個数が10個数%以下である重合トナーであることを特徴とする画像形成方法。
- 前記ドット状の静電潜像は有機感光体にスポット面積が2000μm2以下の露光光で露光して形成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成方法。
- 前記重合トナーの個数平均一次粒径で3〜8μmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
- 請求項6〜9のいずれか1項に記載の画像形成方法を用いて電子写真画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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JP2002315841A JP2004151320A (ja) | 2002-10-30 | 2002-10-30 | 有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置 |
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JP2015169800A (ja) * | 2014-03-07 | 2015-09-28 | 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 | 電子写真感光体 |
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- 2002-10-30 JP JP2002315841A patent/JP2004151320A/ja active Pending
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