JP2004150545A - ブーツ固定リング及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成により、連結部のリング周方向の強度が高く、安価で信頼性の高いブーツ固定リング及びその製造方法を提供する。
【解決手段】丸められた金属製の帯状部材の両端部が対向している状態で、両端部を摩擦攪拌接合により接合されている。この製造方法として、両端部が突合せられるように丸められた金属製の帯状部材の複数を前記突合せ部が一列上に並ぶように整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分の列に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】丸められた金属製の帯状部材の両端部が対向している状態で、両端部を摩擦攪拌接合により接合されている。この製造方法として、両端部が突合せられるように丸められた金属製の帯状部材の複数を前記突合せ部が一列上に並ぶように整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分の列に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムあるいは樹脂などからなる自動車の等速ジョイントブーツ等を相手部材に締付けて固定するのに用いる金属性のブーツ固定リング及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
互いに挿通される二つの管状部材を環状のバンド(又はリング)によって互いに固定することが数多く知られている。
例えば、自動車の等速ジョイントブーツ等を接続する相手部材に固定するために用いられる金属バンドには、バンドボディの一部にバンド径を縮径する方向に引き締め状態で係合可能な係止爪と係止穴を有しているバンドを用い、引き締め状態で係止爪と係止穴を係止させ接続相手部材に固定するものがある。このバンドを引き締める方法としては、引き締め用工具爪でブーツを圧縮するまで引き締めながら係止爪と係止穴を係止させて接続相手部材に固定する。又は、バンドボディの一部に引き締め耳部を有しているバンドを用い、その耳部を塑性変形することによりバンド径を縮径する方向に引き締めるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ブーツ外径より大きな金属製リングを用い、リングを外周方向から締付けツールにより加圧、塑性変形(バンド径を縮径)することでブーツを圧縮して接続相手部材に固定するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記後者のようなリングを製造する方法としては、以下のものが知られている。
(1)図9に示すように、リング外径以上の幅を有する金属性板材100をプレス加工によって、リング内径に相当する部分を抜き取った後、リング幅に相当する高さまで絞り加工を行い、形成されたリング101をカット(切り落し)する方法。
【0005】
(2)帯状部材の両端を丸めた状態で係合する鍵形などの係止部を形成し、その係止部を係止させた後カシメにより、又はレーザ溶接などにより両端部を接合させてリングを形成する方法(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
(3)帯状部材の両端末部を板厚の1/2の深さの凹部を設け、この凹部に複数のスタットを配置し、前記板厚の1/2の厚さを有し前記スタットが挿入する複数の孔部が形成された連結プレートを用い、スタットと孔部を係止させた後リベットカシメを行い、帯状部材と連結プレートを締結することによりリングを形成する方法(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
実開昭59−124266号公報(第1頁、第1−5図)。
【特許文献2】
特開2002−70813号公報(第2−4頁、第3−8図)。
【特許文献3】
特表2002−502013号公報(第6−11頁、第1−5図)。
【特許文献4】
特開平7−47438号公報(第2−4頁、第3−8図)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のリング及びその製造法を含む技術には、下記の問題点がある。
(1)のリング製造方法(図8)は、リング外径以上の幅を有する板材の絞り加工により形成されたリング部以外の板材が無駄になるため材料歩留まりが悪い。また、各種サイズ毎に絞り金型が必要となることも加えて、コスト的に不利である。
【0009】
(2)の特許文献3のリングは、係止機構を有する連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が、帯状部材の母材強度の50%近傍程度しかなく、締付け時に連結部が外れ易い弱点がある。被引締め部材を所定量圧縮するのに必要な連結部強度を得るためには、板厚又は幅を増やすことにより帯状部材の断面積を大きくする必要があり、重量及びコストの増大を招く。
また、リングの連結部とそれ以外の帯状部材の部分とで剛性が変わってしまう(すなわち前者が後者より剛性が小さい)ため、連結部とそれ以外の部分とで被引締め部材に対する緊迫力が変化し、安定した締結力が得られないという問題点がある。
【0010】
(3)の特許文献4のリングは、帯状部材の両端末部のスタット部及び連結プレートの加工費が嵩み、コスト高となる。
また、連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が、スタットのせん断強さによって決まり、このスタットのせん断強さは低いため連結部の強度が低い。このため、被引締め部材を所定量圧縮するのに必要な連結部強度を得るためには、帯状部材の断面積を大きくしたり、スタットを大きくしたりする必要があり、重量及びコストの増大を招くことになる。さらに、(2)の場合と同様に、リングの連結部とそれ以外の帯状部材の部分とで剛性が変わってしまうため、連結部とそれ以外の部分とで被引締め部材に対する緊迫力が変化し、安定した締結力が得られないという問題点がある。
【0011】
以上の通り、従来の(1)のリングは、リングの一部に連結部を有さず、リング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が高く、外周部からの圧縮による締付けにも信頼性が高いが、絞り加工やカットなどの加工コストが高いという問題点がある。また、従来の(2)のリングは、コスト的には比較的有利であるが、帯状部材の連結部の強度が低く、(3)のリングは、帯状部材の連結部の加工費が嵩む上、連結部の強度及び剛性が低く、いずれも安定した締結力が得られないという問題点がある。
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡易な構成により、連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が高く、安価で信頼性の高いブーツ固定リング及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するために、本発明のブーツ固定リングは、丸められた金属製の帯状部材の両端部が対向している状態で、両端部を摩擦攪拌接合によって接合されていることを特徴としている。
【0013】
また、前記帯状部材の両端部は、相互に突き合わされて対向していてもよく、あるいは、帯状部材の両端部が、相互に係合した状態で対向していてもよい。
【0014】
一方、本発明のブーツ固定リングの製造方法は、両端部が突合せられるように丸められた金属製の帯状部材の複数を前記突合せ部が一列上に並ぶように整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分の列に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴としている。
そして、前記帯状部材の両端部の間の隙間が発生しないように突合せられることが望ましい。
【0015】
また、本発明の他のブーツ固定リングの製造方法は、金属製の帯状部材の両端部に相互に係合可能な係合部を形成する係合部加工工程と、前記帯状部材を丸めるとともに両端部の係合部を相互に係合させてリング状とする丸め工程と、前記係合部が一列上に並ぶようにリング状の帯状部材の複数を整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記係合部の列に沿って移動させることにより、係合部を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴としている。
【0016】
本発明のさらに他のブーツ固定リングの製造方法は、横長の金属製の板材を丸めて両端部を突合せる丸め工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合してパイプ状とする接合工程と、前記パイプ状の板材を所定の幅毎に切断してリングを形成するカット工程とを有することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図、図2(a)は帯状部材などの板材を接合する摩擦攪拌接合の方法を概念的に示す斜視図、図2(b)は(a)の板材接合部の一部断面図である。
【0018】
この実施の形態のブーツ固定リング10は、所定のリング径の円周長さに切断された所定の板圧及び幅を有する金属製の帯状部材1を丸めてリング状に成形し、帯状部材1の両端部1a、1bが対向している状態で両端部1a、1bを後述する摩擦攪拌接合によって接合されたものである。
そして、ブーツ固定リング10は、接続相手部材に挿通されたブーツ等の被引締め部材の所定位置に挿入され、締付け治具により外側からリングの径が縮径する方向に加圧されて塑性変形する。このようにしてブーツ固定リング10は、所定の圧縮量が得られるまで被引締め部材を圧縮し、被引締め部材を接続相手部材に固定するために用いられる。
【0019】
帯状部材1の材質としては、通常、軽量で強度のあるAl合金が用いられるが、ステンレスあるいはその他の金属材料を用途に応じて選定することができる。また、帯状部材1の板厚、幅としては、例えば、板圧1〜2mm程度、幅数mm程度あるいは用途に応じて任意の寸法に設定される。
【0020】
この形態の帯状部材1の両端部1a、1bは、図1に示すように、帯状部材1の長手方向に対して直角に切断された平坦形状である。この両端部1a、1bを板厚の10%以下に突合せた状態で摩擦攪拌接合により接合される。
【0021】
摩擦攪拌接合は、既に公知の技術であるので(例えば、特許第2792233号公報)、ここでは詳細な説明は省略し簡単に説明する。
図2(a)、(b)に示すように、摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を回転させながら帯状部材1の両端部1a、1bの突合せ部分に側面から押込み挿入するとともに、突合せ部の列(接合ライン)に沿って移動させる。
回転プローブ20は、帯状部材1よりも硬い材料からなり、回転円筒体20aの先端部に細いピン20bが付いた段付き円柱形状であり、ピン20bが突合せ部分に挿入される。回転円筒体20aは、突合せ部分の表面部に接触しながらその先端部がわずかに食込まれ、ピン20bから回転円筒体20aの段付き部間で帯状部材1の突合せ部分の摩擦攪拌金属を押さえ込む。このようにして、回転プローブ20と帯状部材1との摩擦熱により帯状部材1の突合せ部分を軟化点以上かつ融点以下に発熱させ、さらに回転プローブ20の回転に引きずられるように突合せ部分の塑性流動が起こり、帯状部材1の両端部1a、1bが接合され、接合部2が形成される。
摩擦攪拌接合による接合部2は、帯状部材1などの板材の母材とほぼ同様の滑らかな形状、特に接合部の裏面(リングの内径面)に凹凸がなく平滑に形成され、かつ少なくとも母材に対し80%以上の強度及び剛性が確保される。
【0022】
次に、本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
図3はこの形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念、図4は接合工程終了後の接合状態を示す斜視図である。
【0023】
まず、図示しない所定の板厚及び幅の金属製帯状部材1が巻回された帯状部材コイルから帯状部材1を引出し順次所定のリング径の円周長さに切断する。そして図1に示すように、切断された帯状部材1の両端1a、1bを突合せ対向させた状態のリング径相当に丸めて固定し、両端1a、1b突合せ部が一列上に並ぶように整列させる(整列工程)。
ここで、対向した両端1a、1b間及び整列されたリング間の隙間が大きいと、摩擦攪拌による突合せ部分の塑性流動域に接合強度を得るために必要な材料体積が確保できないことから、前記隙間はいずれも板厚の10%以下の微小隙間であることが望ましい。
【0024】
そして、図3に示すように、最初に整列したリング10の両端1a、1b突合せ部の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、整列されたリング10の両端1a、1bの突合せ部分を連続的に摩擦攪拌接合して接合部2を形成する(接合工程)。
【0025】
前記接合工程で図4に示すように、整列された複数個のリング10間も回転プローブ20のピン20bから回転円筒体20a径相当範囲(図2の接合開先2b参照)で接合されることにより、隣接しているリング10は接合部2の部分で連結される。そこで、この接合部2の連結されたリング10が個々に分離されるように接合部2の連結部2aを切断する(分離工程)。
そして、切断された連結部2aのバリ取りを行いリング10が完成する。
【0026】
次に、本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
図5は本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの帯状部材を示す平面図、図6はこの形態の整列工程及び接合工程の概念示す斜視図、図7はこの形態によるブーツ固定リングの製造方法の全工程概念を示す斜視図である。
【0027】
本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングは、両端部が相互に係合可能な例えば鍵状などの係合部が形成されている点(相違点)を除き、前記一実施の形態と同様である。したがって、分かり易くするため同一符号を付して説明する。
【0028】
まず、図7(a)に示すように、所定の板厚及び幅の金属製帯状部材1が巻回された帯状部材コイル1cから帯状部材1を引出し順次所定のリング径の円周長さに相当する両端1a、1b部に相互に係合可能な鍵状などの係合部を形成し、そのリング径の円周長さに切断する(係合部加工工程)。この両端1a、1b係合部の円周方向(帯状部材1の長手方向)の長さは、摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20のピン20b径(例えば、6mm程度)より短く設定される。この理由については後述する。
【0029】
そして、図7(b)、(c)に示すように、切断された帯状部材1の一方の端部例えば1aの端末を順次一直線上に揃えるように位置合せを行い、帯状部材1をリング径相当に丸めるとともに両端1a、1bの係合部を相互に係合させてリング10を形成する(丸め工程)。
【0030】
その後、図6、7(d)に示すように、複数個のリング10を幅方向に隙間を詰めて(板厚の10%以下の微小隙間とし)連続的に両端1a、1b係合部が一列上に並ぶように整列させる(整列工程)。
【0031】
そして、図6、7(e)に示すように、最初に整列したリング10の両端1a、1b係合部の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、整列されたリング10の両端1a、1b係合部分を連続的に摩擦攪拌接合して接合部2を形成する(接合工程)。
ここで、図6に示すように、両端1a、1b係合部の円周方向の長さKは、回転プローブ20のピン20b径Dよりも小さく(K<D)、摩擦攪拌接合による接合部2の幅Wは、回転プローブ20回転円筒体20a径に略等しい。すなわち、両端1a、1b係合部は、回転プローブ20により完全に摩擦攪拌され接合部2内に攪拌吸収される。これが、上記のようにK<D<Wの関係に設定される所以である。したがって、両端1a、1bの係合部は、リング10を形成し易く(丸め工程を容易化)するための仮留めの機能を果たすために設けられたものである。
【0032】
これに対して、前記一実施の形態においては、帯状部材1の両端1a、1bが平坦に切断されているだけであるため両端1a、1bの係合部加工が省けるが、両端1a、1bを微小の隙間に突合せ保持するために別途保持(固定)する手段が必要である。
【0033】
前記接合工程で図6、7fに示すように、整列された複数個のリング10間も摩擦攪拌接合による接合部2(幅W)で接合されることにより、隣接しているリング10は接合部2の部分で連結される。そこで、この接合部2の連結されたリング10が個々に分離されるように接合部2の連結部2a(幅W)を切断する(分離工程)。
そして、切断された連結部2a(幅W)のバリ取りを行いリング10が完成する。
【0034】
さらに、本発明のその他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
【0035】
本発明のその他の実施の形態によるブーツ固定リングは、前記形態における帯状部材1の代わりに横長の金属製の板材を用い、これを丸めて円筒状パイプを形成した後、所定幅に切断して完成するものである。したがって、前記二つの形態における帯状部材を丸めて整列させる整列工程が省ける点も異なっているが、この形態のブーツ固定リングの製造方法は、ほぼ前記形態と同様であるので、ここでは図面を省略して説明する。
【0036】
まず、所定のリング径に相当する円周長さを有する横長の金属製の板材の両端部を突合せ又は係合させてリング径相当の長尺パイプ状に丸める(丸め工程)。両端部の形状は、前記二つの形態と同様に、平坦状又は相互に係合可能な鍵部などの係合部とすることもできる。
【0037】
そして、両端の突合せ部又は係合部の一方の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブを押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、両端突合せ部又は係合部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成しパイプ状とする(接合工程)。
【0038】
そして、公知の旋盤、プレス、メタルソーあるいはレーザなどの切断手段により、前記パイプ状の板材を所定の幅毎に切断してリングを形成する(カット工程)。
その後、リングの切断部のバリ取りを行いリングが完成する。
【0039】
この形態においては、前記二つの形態における帯状部材を丸めて整列させる整列工程が省けるが、パイプ状に形成した後のカット工程及びその切断部のバリ取り工程が必要である。
【0040】
しかし、以上のような構成の実施の形態によれば、いずれもリングの摩擦攪拌接合による接合部が、帯状部材又は板材の母材とほぼ同様の滑らかな形状及び少なくとも80%以上の強度及び剛性が確保されるため、ブーツ固定リングとしての高品質が確保される。
【0041】
図8(a)はブーツ固定リングにより等速ジョイントブーツを固定するための締付け冶具の概念を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。ブーツ固定リング10は、例えば等速ジョイント40の接続相手部材42に挿通されたブーツ41の所定位置に挿入され、締付け治具30の複数の分割された締付けツール31により外側からブーツ固定リング10の径が縮径する方向に加圧されて塑性変形する。締付けツール31は、例えば、下面のテーパ部31aに当接する締付けツール押え32のテーパ部32aを介してシリンダ33により押されることによりブーツ固定リング10を外側から圧縮する方向に移動(縮径)するように構成されている。このようにしてブーツ固定リング10は、所定の圧縮量が得られるまでブーツ41を圧縮し、ブーツ41を接続相手部材42に固定する。
【0042】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した本発明によれば、以下のような従来にない優れた効果を奏する。
(1)請求項1乃至7に係る発明によれば、ブーツ固定リングの接合部が母材強度の80%以上確保されるので、帯状部材の連結部を有する従来のもの(母材強度の50%程度)に比べて帯状部材(又は板材)の断面積を小さくすることができ、コスト的にも有利である。
また、接合部の内径面に凹凸がなく平滑であるため、被締付け部材を傷つけることがなく、さらに接合部分で剛性変化などもないことも加えて被締付け部材に対するブーツ固定リングの緊迫力が変化することがない。したがって、安定した締付け性能が確保される。
さらに、ブーツ固定リングの接合部は、摩擦攪拌により融点以下で接合する固相接合であるため、従来の溶接による溶融接合方法における特有の欠陥であるブローホールや溶接割れが見られず、安定した品質が得られる。特に複数個の締付けツール間にブーツ固定リングの接合部が配置された場合、締付けツール間の押付けタイミングの差による縮径方向の位置ずれによってブーツ固定リングにせん断力が加わっても、従来のブーツ固定リングの連結部のように接合部が外れたり、破損したりすることがない。
【0043】
(2)請求項1乃至6に係る発明によれば、接合部の連結部のみを分離するだけでよいので、従来からも行われているパイプ状からリングを切出す方法に比べて著しく製造コストを押えることができる。
【0044】
(3)特に、請求項6に係る発明によれば、帯状部材の両端末係合部間の隙間を著しく小さくすることで、リング径を画一的に安定させることができる。また、前記係合部が、丸め工程でリング状態を保持する仮留め機能を果たすことにより、別途リング固定手段を設けるなど接合工程に至るまでの取り扱いに注意を払う必要がない。さらに、両端末係合部の円周方向の長さを摩擦攪拌接合装置の回転プローブのピン径より小さくすることにより、係合部が回転プローブによる塑性流動領域に吸収されるため、接合後には係合部が完全に摩擦攪拌接合され係合部形状が消滅する。すなわち、ブーツ固定リングの製造工程上、帯状部材の両端末の位置決めあるいは精度を保持するために必要な係合部が、ブーツ固定リング完成品で欠陥となることはなく、母材強度の80%以上の高強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図である。
【図2】(a)は帯状部材などの板材を接合する摩擦攪拌接合の方法を概念的に示す斜視図、(b)は(a)の板材接合部の一部断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの接合工程終了後の接合状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの帯状部材を示す平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図である。
【図8】(a)はブーツ固定リングにより等速ジョイントブーツを固定するための締付け冶具の概念を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。
【図9】(a)は従来のブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す平面図、(b)は(a)のB−B線の断面図である。
【符号の説明】
1 帯状部材
1a、1b 端部
1c 帯状部材コイル
2 接合部
2a 連結部
10 ブーツ固定リング
20 回転プローブ
20a 回転円筒体
20b ピン
30 締付け冶具
31 締付けツール
32 締付けツール押え
33 シリンダ
40 等速ジョイント
41 ブーツ
42 被接続部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムあるいは樹脂などからなる自動車の等速ジョイントブーツ等を相手部材に締付けて固定するのに用いる金属性のブーツ固定リング及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
互いに挿通される二つの管状部材を環状のバンド(又はリング)によって互いに固定することが数多く知られている。
例えば、自動車の等速ジョイントブーツ等を接続する相手部材に固定するために用いられる金属バンドには、バンドボディの一部にバンド径を縮径する方向に引き締め状態で係合可能な係止爪と係止穴を有しているバンドを用い、引き締め状態で係止爪と係止穴を係止させ接続相手部材に固定するものがある。このバンドを引き締める方法としては、引き締め用工具爪でブーツを圧縮するまで引き締めながら係止爪と係止穴を係止させて接続相手部材に固定する。又は、バンドボディの一部に引き締め耳部を有しているバンドを用い、その耳部を塑性変形することによりバンド径を縮径する方向に引き締めるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ブーツ外径より大きな金属製リングを用い、リングを外周方向から締付けツールにより加圧、塑性変形(バンド径を縮径)することでブーツを圧縮して接続相手部材に固定するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記後者のようなリングを製造する方法としては、以下のものが知られている。
(1)図9に示すように、リング外径以上の幅を有する金属性板材100をプレス加工によって、リング内径に相当する部分を抜き取った後、リング幅に相当する高さまで絞り加工を行い、形成されたリング101をカット(切り落し)する方法。
【0005】
(2)帯状部材の両端を丸めた状態で係合する鍵形などの係止部を形成し、その係止部を係止させた後カシメにより、又はレーザ溶接などにより両端部を接合させてリングを形成する方法(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
(3)帯状部材の両端末部を板厚の1/2の深さの凹部を設け、この凹部に複数のスタットを配置し、前記板厚の1/2の厚さを有し前記スタットが挿入する複数の孔部が形成された連結プレートを用い、スタットと孔部を係止させた後リベットカシメを行い、帯状部材と連結プレートを締結することによりリングを形成する方法(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】
実開昭59−124266号公報(第1頁、第1−5図)。
【特許文献2】
特開2002−70813号公報(第2−4頁、第3−8図)。
【特許文献3】
特表2002−502013号公報(第6−11頁、第1−5図)。
【特許文献4】
特開平7−47438号公報(第2−4頁、第3−8図)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のリング及びその製造法を含む技術には、下記の問題点がある。
(1)のリング製造方法(図8)は、リング外径以上の幅を有する板材の絞り加工により形成されたリング部以外の板材が無駄になるため材料歩留まりが悪い。また、各種サイズ毎に絞り金型が必要となることも加えて、コスト的に不利である。
【0009】
(2)の特許文献3のリングは、係止機構を有する連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が、帯状部材の母材強度の50%近傍程度しかなく、締付け時に連結部が外れ易い弱点がある。被引締め部材を所定量圧縮するのに必要な連結部強度を得るためには、板厚又は幅を増やすことにより帯状部材の断面積を大きくする必要があり、重量及びコストの増大を招く。
また、リングの連結部とそれ以外の帯状部材の部分とで剛性が変わってしまう(すなわち前者が後者より剛性が小さい)ため、連結部とそれ以外の部分とで被引締め部材に対する緊迫力が変化し、安定した締結力が得られないという問題点がある。
【0010】
(3)の特許文献4のリングは、帯状部材の両端末部のスタット部及び連結プレートの加工費が嵩み、コスト高となる。
また、連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が、スタットのせん断強さによって決まり、このスタットのせん断強さは低いため連結部の強度が低い。このため、被引締め部材を所定量圧縮するのに必要な連結部強度を得るためには、帯状部材の断面積を大きくしたり、スタットを大きくしたりする必要があり、重量及びコストの増大を招くことになる。さらに、(2)の場合と同様に、リングの連結部とそれ以外の帯状部材の部分とで剛性が変わってしまうため、連結部とそれ以外の部分とで被引締め部材に対する緊迫力が変化し、安定した締結力が得られないという問題点がある。
【0011】
以上の通り、従来の(1)のリングは、リングの一部に連結部を有さず、リング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が高く、外周部からの圧縮による締付けにも信頼性が高いが、絞り加工やカットなどの加工コストが高いという問題点がある。また、従来の(2)のリングは、コスト的には比較的有利であるが、帯状部材の連結部の強度が低く、(3)のリングは、帯状部材の連結部の加工費が嵩む上、連結部の強度及び剛性が低く、いずれも安定した締結力が得られないという問題点がある。
本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡易な構成により、連結部のリング周方向(帯状部材の長手方向)の強度が高く、安価で信頼性の高いブーツ固定リング及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決するために、本発明のブーツ固定リングは、丸められた金属製の帯状部材の両端部が対向している状態で、両端部を摩擦攪拌接合によって接合されていることを特徴としている。
【0013】
また、前記帯状部材の両端部は、相互に突き合わされて対向していてもよく、あるいは、帯状部材の両端部が、相互に係合した状態で対向していてもよい。
【0014】
一方、本発明のブーツ固定リングの製造方法は、両端部が突合せられるように丸められた金属製の帯状部材の複数を前記突合せ部が一列上に並ぶように整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分の列に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴としている。
そして、前記帯状部材の両端部の間の隙間が発生しないように突合せられることが望ましい。
【0015】
また、本発明の他のブーツ固定リングの製造方法は、金属製の帯状部材の両端部に相互に係合可能な係合部を形成する係合部加工工程と、前記帯状部材を丸めるとともに両端部の係合部を相互に係合させてリング状とする丸め工程と、前記係合部が一列上に並ぶようにリング状の帯状部材の複数を整列させる整列工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記係合部の列に沿って移動させることにより、係合部を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴としている。
【0016】
本発明のさらに他のブーツ固定リングの製造方法は、横長の金属製の板材を丸めて両端部を突合せる丸め工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合してパイプ状とする接合工程と、前記パイプ状の板材を所定の幅毎に切断してリングを形成するカット工程とを有することを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図、図2(a)は帯状部材などの板材を接合する摩擦攪拌接合の方法を概念的に示す斜視図、図2(b)は(a)の板材接合部の一部断面図である。
【0018】
この実施の形態のブーツ固定リング10は、所定のリング径の円周長さに切断された所定の板圧及び幅を有する金属製の帯状部材1を丸めてリング状に成形し、帯状部材1の両端部1a、1bが対向している状態で両端部1a、1bを後述する摩擦攪拌接合によって接合されたものである。
そして、ブーツ固定リング10は、接続相手部材に挿通されたブーツ等の被引締め部材の所定位置に挿入され、締付け治具により外側からリングの径が縮径する方向に加圧されて塑性変形する。このようにしてブーツ固定リング10は、所定の圧縮量が得られるまで被引締め部材を圧縮し、被引締め部材を接続相手部材に固定するために用いられる。
【0019】
帯状部材1の材質としては、通常、軽量で強度のあるAl合金が用いられるが、ステンレスあるいはその他の金属材料を用途に応じて選定することができる。また、帯状部材1の板厚、幅としては、例えば、板圧1〜2mm程度、幅数mm程度あるいは用途に応じて任意の寸法に設定される。
【0020】
この形態の帯状部材1の両端部1a、1bは、図1に示すように、帯状部材1の長手方向に対して直角に切断された平坦形状である。この両端部1a、1bを板厚の10%以下に突合せた状態で摩擦攪拌接合により接合される。
【0021】
摩擦攪拌接合は、既に公知の技術であるので(例えば、特許第2792233号公報)、ここでは詳細な説明は省略し簡単に説明する。
図2(a)、(b)に示すように、摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を回転させながら帯状部材1の両端部1a、1bの突合せ部分に側面から押込み挿入するとともに、突合せ部の列(接合ライン)に沿って移動させる。
回転プローブ20は、帯状部材1よりも硬い材料からなり、回転円筒体20aの先端部に細いピン20bが付いた段付き円柱形状であり、ピン20bが突合せ部分に挿入される。回転円筒体20aは、突合せ部分の表面部に接触しながらその先端部がわずかに食込まれ、ピン20bから回転円筒体20aの段付き部間で帯状部材1の突合せ部分の摩擦攪拌金属を押さえ込む。このようにして、回転プローブ20と帯状部材1との摩擦熱により帯状部材1の突合せ部分を軟化点以上かつ融点以下に発熱させ、さらに回転プローブ20の回転に引きずられるように突合せ部分の塑性流動が起こり、帯状部材1の両端部1a、1bが接合され、接合部2が形成される。
摩擦攪拌接合による接合部2は、帯状部材1などの板材の母材とほぼ同様の滑らかな形状、特に接合部の裏面(リングの内径面)に凹凸がなく平滑に形成され、かつ少なくとも母材に対し80%以上の強度及び剛性が確保される。
【0022】
次に、本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
図3はこの形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念、図4は接合工程終了後の接合状態を示す斜視図である。
【0023】
まず、図示しない所定の板厚及び幅の金属製帯状部材1が巻回された帯状部材コイルから帯状部材1を引出し順次所定のリング径の円周長さに切断する。そして図1に示すように、切断された帯状部材1の両端1a、1bを突合せ対向させた状態のリング径相当に丸めて固定し、両端1a、1b突合せ部が一列上に並ぶように整列させる(整列工程)。
ここで、対向した両端1a、1b間及び整列されたリング間の隙間が大きいと、摩擦攪拌による突合せ部分の塑性流動域に接合強度を得るために必要な材料体積が確保できないことから、前記隙間はいずれも板厚の10%以下の微小隙間であることが望ましい。
【0024】
そして、図3に示すように、最初に整列したリング10の両端1a、1b突合せ部の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、整列されたリング10の両端1a、1bの突合せ部分を連続的に摩擦攪拌接合して接合部2を形成する(接合工程)。
【0025】
前記接合工程で図4に示すように、整列された複数個のリング10間も回転プローブ20のピン20bから回転円筒体20a径相当範囲(図2の接合開先2b参照)で接合されることにより、隣接しているリング10は接合部2の部分で連結される。そこで、この接合部2の連結されたリング10が個々に分離されるように接合部2の連結部2aを切断する(分離工程)。
そして、切断された連結部2aのバリ取りを行いリング10が完成する。
【0026】
次に、本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
図5は本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの帯状部材を示す平面図、図6はこの形態の整列工程及び接合工程の概念示す斜視図、図7はこの形態によるブーツ固定リングの製造方法の全工程概念を示す斜視図である。
【0027】
本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングは、両端部が相互に係合可能な例えば鍵状などの係合部が形成されている点(相違点)を除き、前記一実施の形態と同様である。したがって、分かり易くするため同一符号を付して説明する。
【0028】
まず、図7(a)に示すように、所定の板厚及び幅の金属製帯状部材1が巻回された帯状部材コイル1cから帯状部材1を引出し順次所定のリング径の円周長さに相当する両端1a、1b部に相互に係合可能な鍵状などの係合部を形成し、そのリング径の円周長さに切断する(係合部加工工程)。この両端1a、1b係合部の円周方向(帯状部材1の長手方向)の長さは、摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20のピン20b径(例えば、6mm程度)より短く設定される。この理由については後述する。
【0029】
そして、図7(b)、(c)に示すように、切断された帯状部材1の一方の端部例えば1aの端末を順次一直線上に揃えるように位置合せを行い、帯状部材1をリング径相当に丸めるとともに両端1a、1bの係合部を相互に係合させてリング10を形成する(丸め工程)。
【0030】
その後、図6、7(d)に示すように、複数個のリング10を幅方向に隙間を詰めて(板厚の10%以下の微小隙間とし)連続的に両端1a、1b係合部が一列上に並ぶように整列させる(整列工程)。
【0031】
そして、図6、7(e)に示すように、最初に整列したリング10の両端1a、1b係合部の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブ20を押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、整列されたリング10の両端1a、1b係合部分を連続的に摩擦攪拌接合して接合部2を形成する(接合工程)。
ここで、図6に示すように、両端1a、1b係合部の円周方向の長さKは、回転プローブ20のピン20b径Dよりも小さく(K<D)、摩擦攪拌接合による接合部2の幅Wは、回転プローブ20回転円筒体20a径に略等しい。すなわち、両端1a、1b係合部は、回転プローブ20により完全に摩擦攪拌され接合部2内に攪拌吸収される。これが、上記のようにK<D<Wの関係に設定される所以である。したがって、両端1a、1bの係合部は、リング10を形成し易く(丸め工程を容易化)するための仮留めの機能を果たすために設けられたものである。
【0032】
これに対して、前記一実施の形態においては、帯状部材1の両端1a、1bが平坦に切断されているだけであるため両端1a、1bの係合部加工が省けるが、両端1a、1bを微小の隙間に突合せ保持するために別途保持(固定)する手段が必要である。
【0033】
前記接合工程で図6、7fに示すように、整列された複数個のリング10間も摩擦攪拌接合による接合部2(幅W)で接合されることにより、隣接しているリング10は接合部2の部分で連結される。そこで、この接合部2の連結されたリング10が個々に分離されるように接合部2の連結部2a(幅W)を切断する(分離工程)。
そして、切断された連結部2a(幅W)のバリ取りを行いリング10が完成する。
【0034】
さらに、本発明のその他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法について説明する。
【0035】
本発明のその他の実施の形態によるブーツ固定リングは、前記形態における帯状部材1の代わりに横長の金属製の板材を用い、これを丸めて円筒状パイプを形成した後、所定幅に切断して完成するものである。したがって、前記二つの形態における帯状部材を丸めて整列させる整列工程が省ける点も異なっているが、この形態のブーツ固定リングの製造方法は、ほぼ前記形態と同様であるので、ここでは図面を省略して説明する。
【0036】
まず、所定のリング径に相当する円周長さを有する横長の金属製の板材の両端部を突合せ又は係合させてリング径相当の長尺パイプ状に丸める(丸め工程)。両端部の形状は、前記二つの形態と同様に、平坦状又は相互に係合可能な鍵部などの係合部とすることもできる。
【0037】
そして、両端の突合せ部又は係合部の一方の側面から摩擦攪拌接合装置の回転プローブを押付けて挿入するとともに接合ラインに沿って移動させ、両端突合せ部又は係合部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成しパイプ状とする(接合工程)。
【0038】
そして、公知の旋盤、プレス、メタルソーあるいはレーザなどの切断手段により、前記パイプ状の板材を所定の幅毎に切断してリングを形成する(カット工程)。
その後、リングの切断部のバリ取りを行いリングが完成する。
【0039】
この形態においては、前記二つの形態における帯状部材を丸めて整列させる整列工程が省けるが、パイプ状に形成した後のカット工程及びその切断部のバリ取り工程が必要である。
【0040】
しかし、以上のような構成の実施の形態によれば、いずれもリングの摩擦攪拌接合による接合部が、帯状部材又は板材の母材とほぼ同様の滑らかな形状及び少なくとも80%以上の強度及び剛性が確保されるため、ブーツ固定リングとしての高品質が確保される。
【0041】
図8(a)はブーツ固定リングにより等速ジョイントブーツを固定するための締付け冶具の概念を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。ブーツ固定リング10は、例えば等速ジョイント40の接続相手部材42に挿通されたブーツ41の所定位置に挿入され、締付け治具30の複数の分割された締付けツール31により外側からブーツ固定リング10の径が縮径する方向に加圧されて塑性変形する。締付けツール31は、例えば、下面のテーパ部31aに当接する締付けツール押え32のテーパ部32aを介してシリンダ33により押されることによりブーツ固定リング10を外側から圧縮する方向に移動(縮径)するように構成されている。このようにしてブーツ固定リング10は、所定の圧縮量が得られるまでブーツ41を圧縮し、ブーツ41を接続相手部材42に固定する。
【0042】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した本発明によれば、以下のような従来にない優れた効果を奏する。
(1)請求項1乃至7に係る発明によれば、ブーツ固定リングの接合部が母材強度の80%以上確保されるので、帯状部材の連結部を有する従来のもの(母材強度の50%程度)に比べて帯状部材(又は板材)の断面積を小さくすることができ、コスト的にも有利である。
また、接合部の内径面に凹凸がなく平滑であるため、被締付け部材を傷つけることがなく、さらに接合部分で剛性変化などもないことも加えて被締付け部材に対するブーツ固定リングの緊迫力が変化することがない。したがって、安定した締付け性能が確保される。
さらに、ブーツ固定リングの接合部は、摩擦攪拌により融点以下で接合する固相接合であるため、従来の溶接による溶融接合方法における特有の欠陥であるブローホールや溶接割れが見られず、安定した品質が得られる。特に複数個の締付けツール間にブーツ固定リングの接合部が配置された場合、締付けツール間の押付けタイミングの差による縮径方向の位置ずれによってブーツ固定リングにせん断力が加わっても、従来のブーツ固定リングの連結部のように接合部が外れたり、破損したりすることがない。
【0043】
(2)請求項1乃至6に係る発明によれば、接合部の連結部のみを分離するだけでよいので、従来からも行われているパイプ状からリングを切出す方法に比べて著しく製造コストを押えることができる。
【0044】
(3)特に、請求項6に係る発明によれば、帯状部材の両端末係合部間の隙間を著しく小さくすることで、リング径を画一的に安定させることができる。また、前記係合部が、丸め工程でリング状態を保持する仮留め機能を果たすことにより、別途リング固定手段を設けるなど接合工程に至るまでの取り扱いに注意を払う必要がない。さらに、両端末係合部の円周方向の長さを摩擦攪拌接合装置の回転プローブのピン径より小さくすることにより、係合部が回転プローブによる塑性流動領域に吸収されるため、接合後には係合部が完全に摩擦攪拌接合され係合部形状が消滅する。すなわち、ブーツ固定リングの製造工程上、帯状部材の両端末の位置決めあるいは精度を保持するために必要な係合部が、ブーツ固定リング完成品で欠陥となることはなく、母材強度の80%以上の高強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図である。
【図2】(a)は帯状部材などの板材を接合する摩擦攪拌接合の方法を概念的に示す斜視図、(b)は(a)の板材接合部の一部断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるブーツ固定リングの接合工程終了後の接合状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの帯状部材を示す平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの整列工程及び接合工程の概念を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態によるブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す斜視図である。
【図8】(a)はブーツ固定リングにより等速ジョイントブーツを固定するための締付け冶具の概念を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。
【図9】(a)は従来のブーツ固定リングの製造方法の工程概念を示す平面図、(b)は(a)のB−B線の断面図である。
【符号の説明】
1 帯状部材
1a、1b 端部
1c 帯状部材コイル
2 接合部
2a 連結部
10 ブーツ固定リング
20 回転プローブ
20a 回転円筒体
20b ピン
30 締付け冶具
31 締付けツール
32 締付けツール押え
33 シリンダ
40 等速ジョイント
41 ブーツ
42 被接続部材
Claims (7)
- 丸められた金属製の帯状部材の両端部が対向している状態で、両端部を摩擦攪拌接合によって接合されていることを特徴とするブーツ固定リング。
- 前記帯状部材の両端部が、相互に突合わされて対向していることを特徴とする請求項1記載のブーツ固定リング。
- 前記帯状部材の両端部が、相互に係合した状態で対向していることを特徴とする請求項1記載のブーツ固定リング。
- 両端部が突合せられるように丸められた金属製の帯状部材の複数を前記突合せ部が一列上に並ぶように整列させる整列工程と、
摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分の列に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、
前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴とするブーツ固定リングの製造方法。 - 前記帯状部材の両端部の間に微小隙間が形成されるように突合せられることを特徴とする請求項4記載のブーツ固定リングの製造方法。
- 金属製の帯状部材の両端部に相互に係合可能な係合部を形成する係合部加工工程と、
前記帯状部材を丸めるとともに両端部の係合部を相互に係合させてリング状とする丸め工程と、
前記係合部が一列上に並ぶようにリング状の帯状部材の複数を整列させる整列工程と、
摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記係合部の列に沿って移動させることにより、係合部を摩擦攪拌接合して接合部を形成する接合工程と、
前記接合部を切離してリング状の帯状部材を個々に分離する分離工程とを有することを特徴とするブーツ固定リングの製造方法。 - 横長の金属製の板材を丸めて両端部を突合せる丸め工程と、摩擦攪拌接合装置の回転プローブを前記突合せ部分に沿って移動させることにより、突合せ部分を摩擦攪拌接合してパイプ状とする接合工程と、
前記パイプ状の板材を所定の幅毎に切断してリングを形成するカット工程とを有することを特徴とするブーツ固定リングの製造方法。
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JP2007098447A (ja) * | 2005-10-06 | 2007-04-19 | Yamashita Rubber Co Ltd | 複数ワークの分離方法 |
-
2002
- 2002-10-30 JP JP2002316878A patent/JP2004150545A/ja active Pending
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