JP4303386B2 - 摩擦撹拌接合法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、筒状乃至円筒状の接合部材を接合する摩擦撹拌接合法に関し、この摩擦撹拌接合法は、例えば金属製中空パイプ材を継ぎ合わせる際に好適に適用される。
【0002】
【従来の技術】
2個の接合部材を接合一体化する摩擦撹拌接合は、固相接合の一種であるため、熱歪みによる変形や割れを生じ難いという利点を有し、近年、溶融溶接(例えばMIG、TIG、レーザ溶接)やロウ付けに代わる新しい接合手段として用いられてきている。
【0003】
図6(a)は、同形同寸の2個の円筒状の接合部材(51A)(51B)の端部同士を突き合わせた突合せ部(B)を摩擦撹拌接合により接合する場合を示している。
【0004】
同図において、(60)は摩擦撹拌接合用の接合工具である。この接合工具(60)は、径大の円柱状回転子(61)と、該回転子(61)の端面(61a)軸線上に突設された径小のピン状プローブ(62)とからなる接合ヘッド(63)を備えている。この接合工具(60)を用いて突合せ部(B)を接合する場合には、回転子(61)を回転させてプローブ(62)を回転させながらその先端を突合せ部(B)の表面に押し付けることにより、該プローブ(62)を突合せ部(B)に挿入するとともに、回転子(61)の端面(61a)を突合せ部(B)の表面に押し付ける。そして、この状態で突合せ部(B)が順次接合ヘッド(63)を通過するように接合部材(51A)(51B)をその軸線(z')を中心に回転させことにより、あるいは接合ヘッド(63)が突合せ部(B)を通過するように接合ヘッド(63)を突合せ部(B)に沿って接合部材(51A)(51B)の周方向に移動させることにより、突合せ部(B)がその全周に亘って接合され、もって両接合部材(51A)(51B)が一体化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この接合部材(51A)(51B)は円筒状のものであるから、プローブ(62)の先端を突合せ部(B)の表面に押し付けると、あるいは更に回転子(61)の端面(61a)を突合せ部(B)の表面に押し付けると、同図(b)に示すように、この接合ヘッド(63)の押付け圧を受けて接合部材(51A)(51B)が突合せ部(B)において略扁平状に変形してしまい、換言すれば接合部材(51A)(51B)の突合せ部(B)での断面形状が長円状になるように変形してしまい、このため突合せ部(B)を良好に接合することができず、また寸法精度の高い接合品を得ることができなかった。
【0006】
そこで、接合ヘッド(63)の押付け圧による接合部材(51A)(51B)の変形を阻止するために、図7に示すように、円柱状の中子(70)を接合部材(51A)(51B)の中空部内に突合せ部(B)を跨ぐ態様にして嵌入し、これにより突合せ部(B)をその裏面から支持補強することが提案されている。
【0007】
しかしながら、この提案方法では、中子(70)が接合部材(51A)(51B)の中空部内に残ってしまうので、得られる接合品の重量が重くなるという難点があった。あるいはまた中子(70)を取り除くための作業を要するので、作業能率が悪かった。
【0008】
また、接合ヘッド(63)の押付け圧による接合部材(51A)(51B)の変形を防止するために、図8に示すように、一方の円筒状の接合部材(51B)に代えて嵌合凸部(52a)を有する中実の接合部材(52)を用い、この接合部材(52)の嵌合凸部(52a)を他方の接合部材(51A)の端部開口部内に嵌合させ、これにより突合せ部(B)をその裏面から支持補強することが提案されている。
【0009】
しかしながら、この提案方法でも同様に、接合部材(52)として中実のものが用いられるから、接合品の重量が重くなるという難点があった。
【0010】
さらに、上記2つの提案方法ではいずれも、突合せ部(B)に形成された接合部に中子(70)や嵌合凸部(52a)等の裏面支持部が固着されるため、接合部に補強部材との界面からルート割れが発生する虞があり、このため接合操作を慎重に行わなければならず、接合作業能率が悪かった。
【0011】
この発明は、上記のような技術背景に基づいてなされたもので、その目的は、中子や嵌合凸部等の裏面支持部で接合予定部を支持補強しなくても、接合予定部を良好に接合することができ且つ接合作業能率の高い摩擦撹拌接合法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明(請求項1)は、円筒状の接合部材の周方向に延びた接合予定部を接合する摩擦撹拌接合法であって、接合部材を断面形状の変形阻止状態に拘束する拘束スリーブの中空部内に、接合部材を回転自在に挿入するとともに、接合工具の接合ヘッドを、拘束スリーブの周壁部の軸線方向中間部に設けられた接合ヘッド差込み孔を通じて接合予定部に挿入し、この状態で、接合予定部が順次接合ヘッドを通過するように接合部材を回転させることにより、あるいは接合ヘッドが接合予定部を通過するように接合ヘッド及び拘束スリーブを一体に回転させることにより、接合予定部を接合することを特徴としている。
【0013】
この摩擦撹拌接合法によれば、拘束スリーブの中空部内に、接合部材を挿入することにより、該接合部材が拘束スリーブによって断面形状が変形しないよう拘束されて、接合ヘッドの押付け圧による接合部材の断面形状の変形が阻止される。そして、接合部材を上記にように回転させ、あるいは接合ヘッド及び拘束スリーブを上記のように回転させることにより、接合予定部が接合される。この接合予定部の接合を行うに際して、上述したように、拘束スリーブによって接合ヘッドの押付け圧による接合部材の断面形状の変形が阻止されているので、接合予定部を良好に接合することができるし、寸法精度の高い接合品を得ることができるようになる。また、従来例で示したように中子や嵌合凸部等の裏面支持部を用いる必要がないから、接合品の重量増加が生じないし、接合作業能率が向上する。
【0014】
また、この発明(請求項2)は、筒状の接合部材の軸線方向と並行に延びた接合予定部を接合する摩擦撹拌接合法であって、接合部材を断面形状の変形阻止状態に拘束する拘束スリーブの中空部内に、接合部材をその軸線方向に移動自在に挿入するとともに、接合工具の接合ヘッドを、拘束スリーブの周壁部の軸線方向中間部に設けられた接合ヘッド差込み孔を通じて接合予定部に挿入し、この状態で、接合予定部が順次接合ヘッドを通過するように接合部材を移動させることにより、あるいは接合ヘッドが接合予定部を通過するように接合ヘッド及び拘束スリーブを一体に移動させることにより、接合予定部を接合することを特徴としている。
【0015】
この摩擦撹拌接合法も上記と同じ作用を奏する。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2は、この発明(請求項1)の第1実施形態を示している。
【0018】
図1(a)において、(1A)(1B)は、互いに同形同寸の2個の円筒状の接合部材である。各接合部材(1A)(1B)は、金属製のものであって、詳述すればアルミニウム又はその合金製のものである。各接合部材(1A)(1B)の突き合わされる端部は、その端面を含む平面が軸線(z)に対して直交するように形成されている。そして、一方の接合部材(1A)の端部と他方の接合部材(1B)の端部とが各接合部材の軸線(z)同士を一致させる態様にして突き合わされている。(B1)は接合部材(1A)(1B)の端部同士を突き合わせてなる突合せ部であり、この実施形態では、この突合せ部(B1)が、接合部材の周方向に延びた接合予定部に対応している。
【0019】
同図において、(10)は摩擦撹拌接合用の接合工具である。この接合工具(10)は、径大の円柱状回転子(11)と、該回転子(11)の端面(11a)軸線上に突設された径小のピン状プローブ(12)とからなる接合ヘッド(13)を備えている。前記プローブ(12)の周面には、軟化部撹拌用の凸部(図示せず)が設けられている。
【0020】
同図において、(20)は円筒状の拘束スリーブである。この拘束スリーブ(20)は、接合部材(1A)(1B)よりも高い剛性を有するものであって、軸線方向に貫通した断面円形状の中空部(21)を有している。この拘束スリーブ(20)の内径は、接合部材(1A)(1B)の外径と同寸に設定されるか、あるいは接合部材(1A)(1B)の外径よりも僅かに大寸に設定されており、これにより、この拘束スリーブ(20)は、その中空部(21)内に接合部材(1A)(1B)を略ぴったりと挿入し得るように構成されており、且つ中空部(21)内に接合部材(1A)(1B)が挿入された状態で、接合ヘッド(13)の押付け圧により生じる接合部材(1A)(1B)の断面形状の変形を阻止し得るように構成されている。さらに、この拘束スリーブ(20)は、その内径が上記のように設定されることにより、中空部(21)内に接合部材(1A)(1B)が挿入された状態で、該接合部材(1A)(1B)をその軸線(z)を中心に回転自在に保持し得るように構成され、且つ該接合部材(1A)(1A)をその軸線(z)方向に移動自在に保持し得るように構成されている。
【0021】
さらに、この拘束スリーブ(20)の周壁部の軸線方向(長さ方向)中間部には、複数個(同図では4個)の長円状の接合ヘッド差込み孔(22)が周方向に並んで貫通形成されている。各接合ヘッド差込み孔(22)の径は、接合ヘッド(13)の回転子(11)の端部の径よりも若干大寸に設定されている。
【0022】
次に、上記拘束スリーブ(20)を用いて突合せ部(B1)を接合する手順を説明する。
【0023】
まず、拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に接合部材(1A)(1B)を該拘束スリーブ(20)の端部開口部から挿入し、図1(a)及び(b)に示すように、突合せ部(B1)が接合ヘッド差込み孔(22)の位置に来るように該接合部材(1A)(1B)の端部同士を突き合わせる。あるいは、予め2個の接合部材(1A)(1B)の端部同士を突き合わせておいてから、接合部材(1A)(1B)が中空部(21)内に挿入されるように拘束スリーブ(20)を移動させても良い。
【0024】
拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に接合部材(1A)(1B)が挿入された状態において、拘束スリーブ(20)は突合せ部(B1)を跨く態様にして配置されており、さらに拘束スリーブ(20)の内周面が接合部材(1A)(1B)の外周面にその略全周に亘って当接している。こうして接合部材(1A)(1B)が拘束スリーブ(20)によって断面形状の変形阻止状態に拘束されている。また、接合部材(1A)(1B)の軸線(z)は、拘束スリーブ(20)の軸線と略一致している。さらに、この状態において、接合部材(1A)(1B)は、拘束スリーブ(20)によって、軸線(z)を中心に回転自在に保持されており、更に軸線(z)方向に移動自在に保持されている。
【0025】
次いで、接合工具(10)の回転子(11)を回転させてプローブ(12)を回転させながら、接合ヘッド(13)を接合ヘッド差込み孔(22)内に差し込んで、プローブ(12)の先端を突合せ部(B1)の表面に押し付ける。プローブ(12)の先端が突合せ部(B1)の表面に接触すると、該接触部は摩擦熱によって軟化するため、更にプローブ(12)を移動させて該プローブ(12)を突合せ部(B1)に挿入するとともに、回転子(11)の端面(11a)を突合せ部(B1)の表面に押し付ける。回転子(11)の端面(11a)を突合せ部(B1)の表面に押し付けることにより、摩擦熱により軟化した軟化部の飛散を防止し得て接合状態の良好な接合部(W)を形成することができるようになるし、表面に凹凸のない接合部(W)を形成することができるようになる。
【0026】
この接合ヘッド(13)の突合せ部(B1)への挿入の際に、接合ヘッド(13)の押付け圧を受けて接合部材(1A)(1B)が突合せ部(B1)で略扁平状に変形しようするが、上述したように、接合部材(1A)(1B)は、拘束スリーブ(20)によって断面形状が変形しないよう拘束されているので、接合ヘッド(13)の押付け圧を受けても接合部材(1A)(1B)は突合せ部(B1)で変形せず、その断面形状が円形に保持される。
【0027】
この状態で、図2(a)及び(b)に示すように、拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)の位置を固定しておいて、突合せ部(B1)が順次プローブ(12)を通過するように接合部材(1A)(1B)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内で該接合部材(1A)(1B)の軸線(z)を中心に回転(回転方向イ)させる。あるいは、接合部材(1A)(1B)を固定しておいて、プローブ(12)が突合せ部(B1)を通過するように拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)を接合部材(1A)(1B)の軸線(z)を中心に一体に回転させる。この第1実施形態では、説明の便宜上、接合操作は、前者の操作方法で行われている。なお、この発明では、両者の接合操作を組み合わせて接合操作を行っても良い。
【0028】
すると、プローブ(12)の回転により発生する摩擦熱により、あるいは更に回転子(11)の端面(11a)と突合せ部(B1)の表面との摺動に伴い発生する摩擦熱により、プローブ(12)との接触部又はその近傍が軟化し、且つ該軟化部がプローブ(12)の回転力を受けて撹拌されるとともに、該軟化撹拌部がプローブ(12)の通過溝を埋める態様で塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化される。この現象が接合部材(1A)(1B)の回転に伴って順次繰り返されていき、最終的に突合せ部(B1)がその全周に亘って接合(接合部W)され、もって両接合部材(1A)(1B)が一体化される。
【0029】
接合終了後、接合部材(1A)(1B)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内から引き抜いて取り出し、もって所望する突合せ接合品が得られる。
【0030】
この突合せ接合品は、接合部材(1A)(1B)の突合せ部(B1)での断面形状が円形に保持された状態で接合操作が行われたものなので、突合せ部(B1)が接合ヘッド(13)をスムーズに通過しており、このため接合部(W)の接合状態が良好になっているし、高い寸法精度を有している。
【0031】
また、接合部(W)には、突合せ部(B1)をその裏面から支持補強するための従来例で示した中子や嵌合凸部等の裏面支持部が固着されていないので、接合部(W)にルート割れが発生する虞がなく、このため接合操作を迅速に行うことができて接合作業能率が高くなっている。もとより、裏面支持部が固着されていないので、この突合せ接合品は重量増加が生じていない。
【0032】
図3及び図4は、この発明(請求項2)の第2実施形態を示している。以下、この第2実施形態を上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0033】
図3(a)において、(2)は円筒状の接合部材である。この接合部材(2)は、一定幅を有する平板材を丸めて幅方向の端部同士を突き合わせることにより円筒状に形成されたものである。端部同士の突合せ部(B2)は、接合部材(2)の軸線方向と並行に延びている。この第2実施形態では、この突合せ部(B2)が、接合部材の軸線方向と並行に延びた接合予定部に対応している。
【0034】
なお、拘束スリーブ(20)及び接合工具(10)は、上記第1実施形態のものと同一構成である。
【0035】
次に、拘束スリーブ(20)を用いて突合せ部(B2)を接合する手順を説明する。
【0036】
まず、円筒状の接合部材(2)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に該拘束スリーブ(20)の端部開口部から挿入する。
【0037】
拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に接合部材(2)が挿入された状態において、接合部材(2)は、その軸線(z)方向に移動自在に保持されており、更にその軸線(z)を中心に回転自在に保持されている。また、拘束スリーブ(20)の内周面が接合部材(2)の外周面にその略全周に亘って当接している。こうして接合部材(2)が拘束スリーブ(20)によって断面形状の変形阻止状態に拘束されている。
【0038】
次いで、接合工具(10)のプローブ(12)を、接合ヘッド差込み孔(22)を通して突合せ部(B2)に挿入するとともに、回転子(11)の端面(11a)を突合せ部(B2)の表面に押し付ける。この接合ヘッド(13)の押付け圧を受けても接合部材(2)は、拘束スリーブ(20)によって断面形状が変形しないよう拘束されているので、接合部材(2)が突合せ部(B2)において略扁平状に変形する不具合は生じず、その断面形状が円形に保持される。
【0039】
この状態で、図4(a)及び(b)に示すように、拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)の位置を固定しておいて、突合せ部(B2)が順次プローブ(12)を通過するように接合部材(2)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内で軸線方向に移動(移動方向ロ)させる。あるいは、プローブ(12)が突合せ部(B2)を通過するように拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)を接合部材(1A)(1B)の軸線(z)方向と並行に一体に移動させる。この第2実施形態では、説明の便宜上、接合操作は、前者の操作方法で行われている。なお、この発明では、両者の接合操作を組み合わせて接合操作を行っても良い。
【0040】
すると、プローブ(12)の回転により発生する摩擦熱により、あるいは更に回転子(11)の端面(11a)と突合せ部(B2)の表面との摺動に伴い発生する摩擦熱により、プローブ(12)との接触部又はその近傍が軟化し、且つ該軟化部がプローブ(12)の回転力を受けて撹拌されるとともに、該軟化撹拌部がプローブ(12)の通過溝を埋める態様で塑性流動した後、摩擦熱を急速に失って冷却固化される。この現象が接合部材(2)の移動に伴って順次繰り返されていき、最終的に突合せ部(B2)がその全長に亘って接合(接合部W)され、もって接合部材(2)が円筒状に形成される。
【0041】
接合終了後、接合部材(3)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内から引き抜いて取り出し、もって所望する接合品が得られる。
【0042】
この第2実施形態も上記第1実施形態と同様の利点を有する。
【0043】
図5は、この発明(請求項1)の第3実施形態を示している。以下、この第3実施形態を上記第1実施形態との相異点を中心に説明する。
【0044】
この第3実施形態では、一方の円筒状の接合部材(以下、第1接合部材という、3A)の端部を他方の円筒状の接合部材(以下、第2接合部材という、3B)の端部開口部内に嵌め込んで、第1接合部材(3A)の端部と第2接合部材(3B)の端部との重合せ部(L)を接合する場合について示している。したがって、この第3実施形態では、端部同士の重合せ部(L)が、接合部材(3A)(3B)の周方向に延びた接合予定部に対応している。
【0045】
一方、拘束スリーブ(20)は、次のように構成されている。
【0046】
拘束スリーブ(20)の左端部(20a)の内径は、第1接合部材(3A)の外径と同寸に設定されるか、あるいは第1接合部材(3A)の外径よりも僅かに大寸に設定されており、これにより、この拘束スリーブ(20)の左端部(20a)は、その中空部(21a)内に第1接合部材(3A)を略ぴったりと挿入し得るように構成されている。一方、拘束スリーブ(20)の右端部(20b)の内径は、第2接合部材(3B)の外径と同寸に設定されるか、あるいは第2接合部材(3B)の外径よりも僅かに大寸に設定されており、これにより、この拘束スリーブ(20)の右端部(20b)は、その中空部(21b)内に第2接合部材(3B)を略ぴったりと挿入し得るように構成されている。他の構成は、上記第1実施形態の拘束スリーブと同じである。
【0047】
次に、拘束スリーブ(20)を用いて重合せ部(L)を接合する手順を説明する。
【0048】
まず、第1接合部材(3A)を拘束スリーブ(20)の左端部(20a)の中空部(21a)内に該拘束スリーブ(20)の左端部開口部から挿入する。また、第2接合部材(3B)を拘束スリーブ(20)の右端部(20b)の中空部(21b)内に該拘束スリーブ(20)の右端部開口部から挿入する。そして、第1接合部材(3A)の端部を第2接合部材(3B)の端部開口部内に嵌め込んで重合せ部(L)を形成する。
【0049】
拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に接合部材(3A)(3B)が挿入された状態において、各接合部材(3A)(3B)は、その軸線(z)を中心に回転自在に保持されている。また、拘束スリーブ(20)の内周面が各接合部材(3A)(3B)の外周面にその略全周に亘って当接している。こうして各接合部材(3A)(3B)が拘束スリーブ(20)によって断面形状の変形阻止状態に拘束されている。
【0050】
次いで、接合工具(10)のプローブ(12)を、接合ヘッド差込み孔(22)を通して重合せ部(L)に挿入するとともに、回転子(11)の端面(11a)を重合せ部(L)の表面に押し付ける。この接合ヘッド(13)の押付け圧を受けても各接合部材(3A)(3B)は、拘束スリーブ(20)によって断面形状が変形しないよう拘束されているので、接合部材(3A)(3B)が重合せ部(L)において略扁平状に変形する不具合は生じず、その断面形状が円形に保持される。
【0051】
この状態で、拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)の位置を固定しておいて、重合せ部(L)が順次プローブ(12)を通過するように接合部材(3A)(3B)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内で該接合部材(3A)(3B)の軸線(z)を中心に回転させる。あるいは、接合部材(3A)(3B)を固定しておいて、プローブ(12)が重合せ部(L)を通過するように拘束スリーブ(20)及び接合ヘッド(13)を接合部材(3A)(3B)の軸線(z)を中心に一体に回転させる。この第3実施形態では、説明の便宜上、接合操作は、前者の操作方法で行われている。なお、この発明では、両者の接合操作を組み合わせて接合操作を行っても良い。
【0052】
こうすることにより、最終的に重合せ部(L)がその全周に亘って接合され、もって両接合部材(3A)(3B)が一体化される。
【0053】
接合終了後、接合部材(3A)(3B)を拘束スリーブ(20)の中空部(21)内から引き抜いて取り出し、もって所望する接合品が得られる。
【0054】
この第3実施形態も上記第1実施形態と同様の利点を有している。
【0055】
以上、この発明の3つの実施形態を説明したが、この発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、請求項2記載の発明においては、接合部材は、断面4角形、断面5角形、断面6角形等の角筒状のものであっても良い。
【0057】
【発明の効果】
上述の次第で、請求項1記載の発明によれば、拘束スリーブの中空部内に、接合部材を挿入することにより、接合部材が断面形状の変形阻止状態に拘束されるから、接合工具の接合ヘッドの押付け圧による接合部材の断面形状の変形を阻止することができる。そして、接合工具の接合ヘッドを、拘束スリーブの周壁部の軸線方向中間部に設けられた接合ヘッド差込み孔を通じて接合予定部に挿入し、この状態で、接合予定部が順次接合ヘッドを通過するように接合部材を回転させることにより、あるいは接合ヘッドが接合予定部を通過するように接合ヘッド及び拘束スリーブを一体に回転させることにより、接合予定部を接合することを特徴とするから、接合予定部を良好に接合することができるし、寸法精度の高い接合品を得ることができるようになる。また、中子や嵌合凸部等の裏面支持部を用いる必要がないので、重量増加が生じないという利点を有するし、接合作業能率が高いという利点を有する。
【0058】
請求項2記載の発明も上記効果を同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明(請求項1)の実施形態を示す図で、(a)はスリーブの中空部内に接合部材を挿入した状態を示す斜視図、(b)は(a)中のI−I線断面図である。
【図2】(a)は接合途中の状態を示す斜視図、(b)は(a)中のII−II線断面図である。
【図3】この発明(請求項2)のもう一つの実施形態を示す図で、(a)はスリーブの中空部内に接合部材を挿入した状態を示す斜視図、(b)は(a)中のIII−III線断面図である。
【図4】(a)は接合途中の状態を示す斜視図、(b)は(a)中のIV−IV線断面図である。
【図5】この発明(請求項1)の更にもう一つの実施形態を示す図で、接合途中の状態を示す縦断面図である。
【図6】従来の摩擦撹拌接合法の欠点を説明するための図で、(a)は接合工具の接合ヘッドを突合せ部に挿入する前の状態を示す斜視図、(b)は接合工具の接合ヘッドを突合せ部に挿入した後の状態を示す斜視図である。
【図7】従来の摩擦撹拌接合法を説明するための図で、接合部材の中空部内に中子を嵌入して突合せ部を支持補強した状態を示す斜視図である。
【図8】従来の摩擦撹拌接合法を説明するための図で、接合部材の端部開口部内に嵌合凸部を嵌合させて突合せ部を支持補強した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1A、1B;2;3A、3B…接合部材
10…接合工具
13…接合ヘッド
20…拘束スリーブ
21…中空部
22…接合ヘッド差込み孔
B1…突合せ部(周方向に延びた接合予定部)
B2…突合せ部(軸線方向と並行に延びた接合予定部)
L…重合せ部(周方向に延びた接合予定部)
W…接合部
Claims (2)
- 円筒状の接合部材(1A、1B;3A、3B)の周方向に延びた接合予定部(B1;L)を接合する摩擦撹拌接合法であって、
接合部材を断面形状の変形阻止状態に拘束する拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に、接合部材を回転自在に挿入するとともに、
接合工具(10)の接合ヘッド(13)を、拘束スリーブの周壁部の軸線方向中間部に設けられた接合ヘッド差込み孔(22)を通じて接合予定部に挿入し、
この状態で、接合予定部が順次接合ヘッドを通過するように接合部材を回転させることにより、あるいは接合ヘッドが接合予定部を通過するように接合ヘッド及び拘束スリーブを一体に回転させることにより、接合予定部を接合することを特徴とする摩擦撹拌接合法。 - 筒状の接合部材(2)の軸線方向と並行に延びた接合予定部(B2)を接合する摩擦撹拌接合法であって、
接合部材を断面形状の変形阻止状態に拘束する拘束スリーブ(20)の中空部(21)内に、接合部材をその軸線方向に移動自在に挿入するとともに、
接合工具(10)の接合ヘッド(13)を、拘束スリーブの周壁部の軸線方向中間部に設けられた接合ヘッド差込み孔(22)を通じて接合予定部に挿入し、
この状態で、接合予定部が順次接合ヘッドを通過するように接合部材を移動させることにより、あるいは接合ヘッドが接合予定部を通過するように接合ヘッド及び拘束スリーブを一体に移動させることにより、接合予定部を接合することを特徴とする摩擦撹拌接合法。
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