JP2004147430A - 電動機のセンサレス駆動制御方法及び駆動制御システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電動機のステータの各相の巻線に2相通電によってパルス電圧を高周波で印加させて各相の巻線に流れる電流パターンを検出して、電動機のロータの磁極位置を判別するステップと、上記ステップで判別したロータの磁極位置から、該ロータを高トルクで回転駆動させるために必要な2相通電の駆動タイミングを特定して、特定した駆動タイミングで上記電動機のステータの各相の巻線に駆動電圧を低い周波数で印加するステップと、かくして、回転駆動された電動機のロータの回転速度を検出しながら、上記駆動電圧の周波数を徐々に上昇させ、検出した回転速度が所定値を越えたときには、上記ステータの各相の巻線に印加させる駆動電圧を正弦波に変換させて、上記電動機を所望の回転速度を充たすように回転制御している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサレスで電動機を駆動し制御する改良された制御方法と、その制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石同期電動機を精度良く、かつ高速応答を期して制御する場合、ロータの磁極位置と、速度を検出して制御することが一般的に行われている。 しかしながら、モータの設置される環境が高温であったり、液体が浸潤してきたり、大きな振動が常時印加される様な場合には、モータに速度センサーや位置センサーを取り付けることはその耐久性からいっても困難な場合がある。
【0003】
そこで、近時においては、ロータの磁極位置センサーや速度センサーを設けずに、モータのトルクや速度を制御する、いわゆるセンサレス制御が種々提案されている。
【0004】
このようなセンサレス制御では、低速域と高速域ではそれぞれ別なアルゴリズムを使用しているのが一般的であるが、起動を含む極低速域においては、制御に必要な因子となる電動機の印加電圧、誘起電圧が小さいために制御精度が低下し、電動機に大きな負荷が掛けられているときには、十分な起動トルクを得ることができず、起動が出来ないなどの問題を生じている。
【0005】
【特許文献】
特開平10−94298号公報
そこで、特許文献には、このような極低速域でも精度の高い制御を行って十分な起動トルクが得られるようにされた制御手法がベクトル制御方法として提案されているが、低速域と高速域とでは使用するアルゴリズムも異なる上に、アルゴリズムが複雑であり、そのため簡易なCPUでは対応できず、制御システムの製造コストを増大させる要因となっている。たとえば、ベクトル制御方法では、低速側と高速側で異なるアルゴリズムを採用して精度の高い制御が可能となるが、いずれもアルゴリズム演算が複雑であり、それを実施するために必要となるCPUは高速且つ精度の高い(例えば、現在民生品においてマイコンの主流である16ビットマイコンの倍の能力を有する32ビット以上のCPUが必要とされる場合がある)ものが必要とされるため、製品を製造する場合、コストを上昇させる要因となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情を考慮し、電動機の使用目的、使用環境を考慮した場合、低速域を必ずしも精度良く制御する必要がなく、むしろ大きい起動トルクをのみ得たい場合が多々あることから、現場の要請に応えるべく開発されたものであり、特許文献1に提案されたようなベクトル制御方法を使用せず、したがって、簡易なアルゴリズムを用いて、電動機の設計可能な最大トルクに近い起動トルクで起動ができるセンサレス制御方法と、この制御方法を用いたセンサレス制御システムを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案される。
【0008】
ここに、請求項1は、電動機をセンサレスで駆動し、回転制御する方法であって、電動機のステータ各相の巻線に2相通電によってパルス電圧を高周波で印加させて各相の巻線に流れる電流パターンを検出して、電動機のロータの磁極位置を判別するステップと、上記ステップで判別したロータの磁極位置を基点として該ロータを高トルクで回転駆動させるために必要な2相通電の駆動タイミングを特定して、特定した駆動タイミングで上記電動機のステータ各相の巻線に駆動電圧を低い周波数で印加するステップと、かくして、回転駆動された電動機のロータの回転速度と、ロータの磁極位置とをセンサレスで検出しながら、上記駆動電圧を徐々に上昇させて、検出した回転速度が所定値を越えたときには、上記ステータの各相の巻線に供給する駆動電流を正弦波に変形させて、上記電動機を所望の回転速度を充たすように回転制御することを特徴とする。電動機の起動及び、センサレスで検出されるロータの磁極位置と、ロータの回転速度は、従来公知の種々の方法が可能である。
【0009】
また、請求項2〜請求項5は、制御システムを提案している。
【0010】
ここに、請求項2は、複数の相巻線を巻装したステータと、永久磁石を有したロータとを組み合わせて構成された電動機と、上記ステータの各相巻線に2相通電によってパルス電圧を高周波で印加させたときに各相巻線に流れる電流パターンに基づいて、ロータの磁極位置を判別し、かつ、判別したロータの磁極位置に応じて、該ロータを高トルクで回転駆動させるために必要な2相通電の駆動タイミングを特定して、ロータの回転速度と磁極位置とを検出しながら所定の回転速度まで上昇させるために、駆動電圧を順次増大させる一連の起動シーケンスを実行させる起動/低速側制御回路と、
上記所定の速度まで回転速度の上昇した電動機に流れる駆動電流及び駆動電圧を直接あるいは間接的に検出し、あるいは検出したものに所定の演算を行い、所定のアルゴリズムを実行させることによって回転速度を推定し、かつロータの磁極位置をセンサレスで推定しながら、上記電動機のステータの相巻線に供給する駆動電流を正弦波に変形させて、上記ロータを速度指令信号に応じた回転速度で制御する高速側制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3では、起動/低速側制御回路は、上記電動機のステータの各相巻線に対して2相通電によるパルス電圧を高周波で印加させる高周波測定パルス発生回路と、上記パルス電圧を印加されたステータの各相巻線に流れる電流パターンを判別し、高い起動トルクを得るために、上記ステータ各相巻線に2相通電によって印加すべき駆動電圧の駆動タイミングを特定する起動シーケンス演算回路と、この起動シーケンス演算回路によって、特定された駆動タイミングに基づいて上記ステータの各相巻線に駆動電圧を供給するための起動時駆動電圧供給回路とを備えた構成にしている。
【0012】
更に、請求項4では、高速側制御回路は、電動機のステータ各相の巻線にデューティ比を可変させた駆動電圧パルスを供給するPWM制御回路と、このPWM制御回路によって供給される駆動電圧パルスの休止時間に起因する電流の不連続性を補償して、上記巻線部分に正弦波電流を供給するデッドタイム補償回路とを更に備えている電動機のセンサレス駆動制御システム。
【0013】
また、請求項5では、高速側制御回路は、上記電動機のステータの各相巻線に流れる電流と各相巻線の電圧を直接あるいは間接的に検出し、あるいは検出したものに演算を行って、ロータの磁極位置とロータ速度を推定し、更に所定のベクトル制御アルゴリズムを実行することで、速度制御及び電流制御を行い、これに基づいて上記電動機のステータ側の相巻線に印加すべき駆動電圧の駆動タイミングを特定する。
【実施の形態】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明のセンサレス駆動制御システムの基本構成図、図2は本発明のセンサレス制御方法を電動機の速度変化と対応して示す説明図である。
【0015】
Mは永久磁石同期電動機で代表される電動機、1は起動/低速側制御回路、2は高速側制御回路、3はステータの各相巻線に流れる電流を検出するため変流器などで構成された電流検出器、4はステータの各相巻線に駆動電流を制御するための電流制御回路、5は起動信号、速度指令信号を受けて、起動/低速側制御回路1、高速側制御回路2を切替え制御する速度制御器、6はセンサレス駆動演算部であり、電流検出器3で検出された電動機Mの各相巻線U,V,Wに供給される駆動電流及び電圧検出器8で検出されたDCバス電圧を所定のアルゴリズムで解析してロータの回転速度を推定する速度推定手段61と磁極位置検出手段62とを高速側の速度及び磁極位置の推定器とし、電動機Mの各相巻線U,V,Wに生じる逆起電力のゼロクロス点を検出して、所定のマスク処理、演算を行ってロータの磁極位置を検出する起動/低速側の磁極位置検出手段62とを備えている。
【0016】
なお、電流増幅器7は、図9に示したように、それぞれのアームに一組のトランジスタUp,Un、Vp,Vn、Wp,Wnを直列に接続し、それぞれの共通点から電動機MのU相,V相,W相に相電流を通じるようにした3相インバータを構成しており、電圧検出器8を備えている。
【0017】
以上に示した起動/低速側制御回路1、高速側制御回路2は、図2に示すように速度制御領域を分担している。
【0018】
すなわち、速度制御器5は、起動指令信号を受けると、起動/低速側制御回路1を作動し、後述する起動シーケンスに従って電動機Mを起動し、電動機Mが起動して高速側制御回路2が作動された後は、速度指令信号を受付けて、電動機Mを速度指令信号に応じた回転速度に可変制御する。なお、低速側の速度情報は速度推定手段61によって位置情報を時間で微分して求めている。
【0019】
高速側制御回路2は、速度推定手段61によって推定された回転速度と、磁極位置検出手段62によって検出されたロータの磁極位置とに基づいて、速度制御器5が受けた速度指令信号に応じた回転速度に制御する。すなわち、高速側制御回路2が作動すると、後述するようなPWM、PAM、ベクトル制御法などの制御が実行されて電動機Mを所望の回転速度に可変制御される。
【0020】
図2は、本発明方法によって実行される速度制御の切替タイミングと速度変化を示している。
【0021】
図において、B1は高速側制御回路2が分担する速度領域、B2は起動/低速側制御回路1が分担する速度領域を示しており、B2の速度域では制御回転速度を精度高く制御するが、B2の速度域では精緻な制御は必要とされず、最初の起動を優先している。制御の切替ポイントΔSは切替時におけるチャタリングをなくすために設けたヒステリシスを示しているが、チャタリングが補正された、あるいは存在しないような制御を実行する場合には、このようなヒステリシスが必要とされないことはいうまでもない。
【0022】
図3は、本発明で使用される三相同期電動機の一実施例を示している。
この電動機は、複数の相巻線を巻装したステータ6と、N,S極に着磁した永久磁石を有したロータ7とを組み合わせて構成されており、ホール素子などのセンサーは設けられていない。
【0023】
この図では、ステータ6は3つの相巻線U,V,Wを備え、その周囲に、S極とN極を交互に配置させたリング状のロータ7を設けた、いわゆるアウターロータ構造になっており、それぞれの相巻線U,V,Wに応じた給電線と中点配線を引き出している。このような永久磁石電動機はロータの内周にステータを配置したものであってもよい。より具体的には、円筒型永久磁石同期電動機の他、大出力で効率の高いリラクタンストルクを用いたIPM同期電動機が好適に採用される。
【0024】
図4は起動/低速側制御回路の基本構成を示している。
【0025】
この起動/低速側制御回路1は、電動機Mのロータ7が回転しない程度に高い周波数の2相通電パルス電圧をステータ6の各相巻線U,V,Wに出力する高周波測定パルス発生回路11と、この高周波測定パルス発生回路11から2相通電パルスを3つの相巻線U,V,Wに印加したとき、それぞれの相巻線U,V,Wと中点との間に流れる相電流の波形、レベル変化を検知して、ロータ7の磁極位置を判別した後、電動機のステータ6の相巻線U,V,Wに供給すべき2相通電パルスの駆動タイミングを特定する起動シーケンス演算回路12と、この起動シーケンス演算回路12によって電動機Mのステータ6の相巻線U,V,Wに対して駆動タイミングの特定された駆動電圧をステータ6の各相巻線U,V,Wに供給するための起動時駆動電圧供給回路13とを備えている。
【0026】
このような高周波測定パルス発生回路11と、起動時駆動電圧供給回路13は、高速側制御回路2で用いる3相インバータ回路を制御することによって実現できることはいうまでもない。
【0027】
図5は、高周波測定パルスとして、各相巻線U,V,Wに2相通電される電圧パターン(相順)を示しており、この測定パルスを高周波測定パルス発生回路11からU,V,Wの各相巻線に印加したとき、起動シーケンス演算回路12では、ステータ6の各相巻線U,V,Wと中点との間に流れる相電流波形、電流レベルの組み合わせパターンを解析することによって、ロータ7の磁極位置パターンを特定し、その結果に基づいて、電動機Mを最大の駆動トルクあるいはそれに準じた大きい駆動トルクで起動するためにステータ6の各相巻線U,V,Wに2相通電として印加すべき電圧パルスの駆動タイミングを特定し、起動時駆動電圧供給回路13を通じて、ステータ6の各相巻線U,V,Wに2相通電を行う構成になっている。
【0028】
この図5では、ロータの磁極位置が、例えば、図3に示すような位置関係にあるときに、ステータ6の各相巻線U,V,Wに供給される高周波測定パルスVu,Vv,Vwと、そのときに各相巻線U,V,Wと中点との間に流れる相電流波形Iu,Iv,Iwのパターン(以下では、「相電流パターン」という)、駆動回路の出力電流の総和(実質2相分の電流の和)Imax、Iminを示している。ロータ7の磁極位置に応じてステータ6の各相巻線U,V,Wに流れる電流波形と電流レベルは、正、負の方向で立ち上がりが急峻な大、立ち上がりが緩やかな小、ゼロが存在することが分かる。なお、図6は、図5に示した高周波測定パルスをステータの各相巻線に印加する場合の各相巻線の電圧レベル変化を示す例図である。
【0029】
なお、図7のステップ100〜110は、起動/低速側回転制御の基本動作を示している。
【0030】
図3に示した電動機では、ステータ6の各相巻線U,V,Wを2相通電させた場合、ステータ6に対して、磁気的にバランスするロータ7の磁極位置は6種類となる。ロータ7の磁極位置が同図と異なる場合には、同じ相順で高周波測定パルスを2相通電させても、そのときに各相巻線U,V,Wと中点との間で生じる相電流波形と電流レベルの組み合わせパターンは異なるので、このパターンを判別することによって、ロータ7の磁極位置を6種類のうちから識別し、判別することが出来る。
【0031】
起動シーケンス演算回路12は、2相通電によって高周波測定パルスを加えたときに、ロータ7の磁極位置の種別に応じて、各相巻線U,V,Wと中点との間に流れる相電流波形Iu,Iv,Iwと電流レベルの組み合わせパターンとの対応を記憶させた磁極位置判別テーブル(不図示)を備えている。
【0032】
したがって、起動シーケンス演算回路12では、高周波測定パルスをステータ6の各相巻線U,V,Wに通電したときに、前述した相電流パターンに基づいて、そのときのロータ7の磁極位置を判別し、更に、このようにして判別したロータ7の磁極位置を起点として、ステータ6とロータ7とが磁気的にバランスする次の駆動タイミングの位置までロータ7を回転させるために必要な駆動タイミングとなる相電流パターンを特定する。
【0033】
起動時駆動電圧供給回路13は、このようにして駆動タイミングの特定された駆動電圧をステータ6の各相巻線U,V,Wに印加して、ロータ7を回転起動する。
【0034】
このようにしてロータ7が起動すると、起動/低速側制御回路1は、センサレス駆動演算部6によって推定された回転速度と、検出されたロータ7の磁極位置に基づいて、ステータ6の各相巻線U,V,Wに加える駆動電圧を順次増大させることによって回転数を徐々に増大させて電動機Mのロータ7の回転を継続させ、予め設定した速度を超えると、切替スイッチ10が作動して、起動/低速側制御回路1による制御が切り離され、高速側制御回路2を作動して、PWM,PAMなどの手法を用いセンサレスで回転制御が行われる。
【0035】
ついで、高速側制御回路の基本構成と基本動作について説明する。
【0036】
図8はPWM制御を用いて2相通電制御する場合の基本構成を示している。
【0037】
高速側制御回路2は、2つのFETを直列に接続して1アームを構成した、3アームを並列に接続して、その一方に電源のプラス側を加え、他方にマイナス側を接続して成るスイッチング回路20と、PWM制御回路21とを備えた3相インバータを構成しており、スイッチング回路20の各アームを構成するFETは、速度制御器5が受けた速度指令信号に応じて、生成されたデューティ比の駆動パルスがPWM制御回路21を通じて送出されている。ここに、PWM制御回路21は、高速側制御回路2側に設けた電流制御部から電力制御信号を受けて駆動され、センサレス駆動演算回路22は、電流検出器3によって検出した電流情報、電圧検出器8によって検出した電圧情報に応じて、前述した駆動タイミング、相電流パターンを特定している。
【0038】
このインバータでは、3相の正弦波交流をPWMした波形により20のFETが駆動されて、ステータ6の各相の巻線U,V,Wに供給され、ロータ7が回転制御されている。電動機に流れる3相の相電流、及び相電圧を検出し、あるいは検出したものに所定の演算(例えばその値をモータの電流・電圧方程式に代入してロータの位置情報、速度を算出する)を行って、その演算結果を使用して速度制御器にて速度制御し、更にベクトル回転機を制御することにより電動機Mが所望の速度に制御される。
【0039】
このような高速側制御は、公知のPWM制御、PAM制御を用いて実行される。矩形の2相制御駆動パルスでインバータのトランジスタをオン、オフさせても良いが、発生する電磁雑音を抑制するためには、ステータ6の各相巻線U,V,Wに供給する駆動電流を正弦波として駆動することが望まれる。その時、特に高い精度が要求される場合には、ベクトル制御を用いて実行される。
【0040】
また、このような方法に限られず、電動機Mのステータ6の各相巻線U,V,Wに加わる電圧を測定し、誘起電圧の第三次高調波を検出してロータ7の磁極位置と、ロータ7の速度を推定する手法を用いてセンサレス制御してもよく、この方法によれば誘起電圧の第三次高調波の検出はハードウェアにて行うことができCPUは複雑な演算を行うことなく安価に実現できる。
【0041】
図10は、デッドタイム補償回路の基本動作を示している。
【0042】
高速側制御回路1において、インバータを用いたスイッチング制御によって、電動機Mのステータ6に駆動電圧を供給する場合、スイッチング回路20では、1つのアームに直列に接続した2つのトランジスタを交互にオン、オフさせているが、この場合、2つのトランジスタが同時にオンしてトランジスタを破壊させないように、短絡防止時間tdを設けている。ところで、このような短絡防止時間td(デッドタイム)は、PWM制御などにおいてデューティ比が大きい場合には、それほど影響はないが、ディーティ比が小さくなると、それにつれてステータ6の相巻線U,V,Wに流れる駆動電流も不連続になってしまい、騒音の原因また制御の外乱要素となっている(以上、図10(a),(b)参照)。
【0043】
そこで、図8で示したデッドタイム補償回路30を介在させることによって、図10(c)に示したように、不連続な波形を連続した波形に形成して、このような影響をなくしている。したがって、高速側制御回路1にこのようなデッドタイム補償回路30を介在させておけば、より騒音の軽減された駆動が可能となる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のセンサレス制御方法、システムに比べて次のような効果がある。
【0045】
電動機を停止状態から起動する際に、十分な駆動トルクを得ることが出来るので、電動機に高い負荷がかっていても、設計で許容する範囲のものであれば起動ミスがなく、瞬時に起動できる。
【0046】
また、起動後の高速側制御流域において、正弦波駆動電流で駆動すれば、騒音が少なく、デッドタイム補償を共用すれば、更に騒音少なく良好に電動機を運転することが出来る。
【0047】
制御に必要なアルゴリズムがベクトル制御などに比べて簡易なため、制御処理に必要なCPUを安価にでき、したがって、製造コストが低減できる。
【0048】
また、以上のような本発明は、次のような各種用途の電動機のセンサレス制御に使用する際に特に有益である。
1)コンプレッサを電動機で運転する場合
カーエアコンのコンプレッサの駆動部は、冷媒中に浸潤され、しかも冷媒は高温、高圧になるためにコンプレッサ内に電子部品を取り付けることができないため、従来、駆動源としてエンジンを使用している。
【0049】
しかしながら、カーエアコンの駆動装置として本発明を適用すれば、エンジンからコンプレッサの駆動源を得る必要がなく、かつ純粋に電子装置として構成されるインバータを駆動装置として構成できるため小型化で省スペース化が図れる。
【0050】
また、駆動装置を車内に設置できるため、配管を短く構成できエンジンルームを省スペース化、取り付け作業の高作業効率化、全体がコンパクトになる為低コスト化できる。更に、車内に搭載することは、使用環境がエンジンルームより改善され、装置の寿命も延びる。
【0051】
また、インバータを正弦波駆動にすることにより騒音は低減され、同時にデッドタイム補正を行えば電動機のリップルを小さくして更なる騒音を防止できる。2)サーボプレスのようなプレス装置の駆動用電動機
振動が非常に大きいため、速度センサー、位置センサーを使用する電動機は、速度センサー、位置センサーなどの信号線である細い配線が断線してしまうので、このような配線の必要のない本発明が好適である。
3)電気自動車の車輪駆動用モータのバックアップシステム
電気自動車においては車輪を駆動するモータの制御には、速度センサー、位置センサーを使用するが、センサーが故障した場合のバックアップシステムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電動機のセンサレス駆動制御システムの基本構成図
【図2】起動/低速側制御と高速側制御とで分担する速度制御領域を示す図
【図3】本発明で使用される電動機の一実施例の基本構造を示す図
【図4】起動/低速側制御回路の基本構成を示す図
【図5】本発明方法によって電動機を起動する場合の基本手順を示すフローチャート
【図6】高周波測定パルスを加えたときに、ステータの各相巻線に生じる電流波形、電流レベルの組み合わせパターンを示す図
【図7】高周波測定パルスを加えた場合のステータの各相巻線に生じる電圧パターンを示す図
【図8】PWM制御を用いた高速側制御回路の基本構成を示す図
【図9】電力増幅器の基本構成を示す図
【図10】インバータを用いた場合のデッドタイムを示す図であり、(a)はデッドタイムを示す図、(b)はデッドタイムのためにステータに供給される不連続電流波形を示す図、(c)はデッドタイム補償回路によって補償されたステータに供給される連続電流波形を示す図
【符号の説明】
M・・・電動機
6・・・ステータ
7・・・ロータ
1・・・起動/低速側制御回路
11・・・高周波測定パルス発生回路
12・・・起動シーケンス演算回路
13・・・起動時駆動電圧供給回路
2・・・高速側制御回路
3・・・電流検出器
4・・・電流制御回路
5・・・速度制御器
6・・・センサレス駆動演算部
61・・・速度推定手段
62・・・磁極位置検出手段
Claims (5)
- 電動機をセンサレスで駆動し、回転制御する方法であって、
電動機のステータ各相の巻線に2相通電によってパルス電圧を高周波で印加させて各相の巻線に流れる電流パターンを検出して、電動機のロータの磁極位置を判別するステップと、上記ステップで判別したロータの磁極位置から、該ロータを高トルクで回転駆動させるために必要な2相通電の駆動タイミングを特定して、特定した駆動タイミングで上記電動機のステータ各相の巻線に駆動電圧を低い周波数で印加するステップと、
かくして、回転駆動された電動機のロータの回転速度と、ロータの磁極位置とをセンサレスで検出しながら、上記駆動電圧を徐々に上昇させて、検出した回転速度が所定値を越えたときには、上記ステータの各相の巻線に供給する駆動電流を正弦波に変形させて、上記電動機を所望の回転速度を充たすように回転制御することを特徴とする電動機のセンサレス駆動制御方法。 - 複数の相巻線を巻装したステータと、永久磁石を有したロータとを組み合わせて構成された電動機と、
上記ステータの各相巻線に2相通電によってパルス電圧を高周波で印加させたときに各相巻線に流れる電流パターンに基づいて、ロータの磁極位置を判別し、かつ、判別したロータの磁極位置に応じて、該ロータを高トルクで回転駆動させるために必要な2相通電の駆動タイミングを特定して、上記ロータの回転速度と磁極位置とを検出しながら、上記駆動電圧を徐々に増大させて所定の回転速度まで上昇させる一連の起動シーケンスを実行させる起動/低速側制御回路と、
上記所定の速度まで回転速度の上昇した電動機に対して駆動電流及び駆動電圧を検出し、あるいは検出したものに所定の演算、アルゴリズムを実行させて回転速度を推定し、かつ、ロータの磁極位置を推定しながら、上記電動機のステータの相巻線に供給する駆動電流を正弦波に変形させ、それによって上記ロータを速度指令信号に応じた回転速度で制御する高速側制御回路とを備えたことを特徴とする電動機のセンサレス駆動制御システム。 - 請求項2において、
上記起動/低速側制御回路は、
上記電動機のステータの各相巻線に対して2相通電によるパルス電圧を高周波で印加させる高周波測定パルス発生回路と、
上記パルス電圧を印加されたステータの各相巻線に流れる電流パターンを判別し、高い起動トルクを得るために、上記ステータの各相巻線に2相通電によって印加すべき駆動電圧の駆動タイミングを特定する起動シーケンス演算回路と、
この起動シーケンス演算回路によって、特定された駆動タイミングに基づいて上記ステータの各相巻線に駆動電圧を供給するための起動時駆動電圧供給回路とを備えた構成にしている電動機のセンサレス駆動制御システム。 - 請求項2において、
上記高速側制御回路は、
上記電動機のステータ各相の巻線にデューティ比を可変させた駆動電圧パルスを供給するPWM制御回路と、
このPWM制御回路によって供給される駆動電圧パルスの休止時間に起因する電流の不連続性を補償して、上記巻線部分に正弦波電流を供給するデッドタイム補償回路とを更に備えている電動機のセンサレス駆動制御システム。 - 請求項4において、
上記高速側制御回路は、
上記電動機のステータ各相巻線に流れる電流と各相巻線の電圧を検出し、若しくは検出し、あるいは検出したものに所定の演算を行って、ロータの磁極位置とロータ速度を推定し、更に所定のベクトル制御アルゴリズムを実行することで、速度制御及び電流制御を行い、これに基づいて上記電動機のステータ側の相巻線に印加すべき駆動電圧の駆動タイミングを特定することを特徴とする電動機のセンサレス駆動制御システム。
Priority Applications (1)
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