JP3971978B2 - 電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3相インバータ回路を備えた同期電動機のベクトル制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、電動機の速度制御にベクトル制御インバータが広範囲で用いられ、高精度、高効率の電動機制御を行うことができる。
【0003】
ベクトル制御を行うためには、電動機の各相に流れる電流を検出する必要があり、従来、検出手段として電流センサを用いるのが一般的であった。しかし電流センサは高価であるため、最近は電流センサを用いずに電動機電流を検出する方法が提案されている。例えば、(非特許文献)で示されているように、インバータ母線に配したシャント抵抗を利用し、電動機の各相電流を再現する方法がある。
【非特許文献】
平成14年電気学会全国大会、「インバータ母線電流センシングによるPMモータの正弦波駆動」第201頁(2002年3月26日発行)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この方法によれば、電流センサを用いずにシャント抵抗の電流を検出することによって電動機電流を再現し、ベクトル制御を行うことができる。ところが、シャント抵抗の電流は、インバータのPWM制御信号のオンオフに同期して通流、遮断するので、電流検出のタイミングが重要になる。更に、インバータの電源電圧が高い場合、或いは、インバータのPWM制御のチョッパ周波数が高い場合、電動機の種類の相違など様々な要因により、PWM制御信号のオン時間が短くなることによってシャント抵抗に流れる電流の通流時間が減少し、電流検出が困難になる場合が想定される。
【0005】
同期電動機を始動させるためには、回転子の磁極位置を始動しやすい位置に移動させる必要がある。このために、各相の固定子巻き線から予め決めた磁束が出力されるように各相にインバータから電圧をかける。このとき、瞬時に固定子巻き線に電流が流れるように電圧を印加すると、回転子はその位置に向かって回転始動するのであるが、オーバーシュートしてしまい予定の位置で停止するまで振動が発生するという問題がある。特に、空気調和機に用いられる圧縮機用の電動機として採用した場合、この正逆の振動は圧縮機にとって悪影響を及ぼす場合がある。
【0006】
また、同期電動機のベクトル制御は、d軸電流指令と、周波数指令と、実q軸電流とを入力してインバータの各素子のスイッチング信号を生成する。このスイッチング信号を生成する過程で電動機の誘起電圧定数を用いるが、この値は、電動機を設計する際の値を用いて予め計算によって求めたものを定数として用いている。しかし、実際の電動機は製造過程で多少の製品のばらつきがある。このばらつきによって誘起電圧定数も電動機によって異なる。このため、予め記憶した誘起電圧定数と、実際に制御している電動機の誘起電圧定数がずれてしまい実制御上電動機効率を低下させる要因となっていた。
【0007】
本発明の目的は、電動機電流の検出をインバータの直流側に設けられた電流検出用抵抗で行う電動機の制御装置において、回転子に永久磁石を搭載した直流ブラシレスモータの始動時における回転子の位置決め時に、振動の発生を抑制すると共に、位置決め時の電動機電流制御を電流検出用抵抗で電流検出されうるように行うことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、
直流を交流に変換し電動機を駆動するインバータと、このインバータの直流側に設けられた電流検出用抵抗と、この電流検出用抵抗によって検出された電流に基づいて前記電動機をベクトル制御により制御する手段とを備えた電動機の制御装置において、
前記電動機の運転開始時における回転子の位置決めを行う際、前記電流検出用抵抗によって検出された電流のうち前記電動機の1相の電流が指令値に追従するようにフィードバック制御する手段を備え、
前記1相の電流指令の位相を前記電流検出用抵抗によってこの相以外の相の電流検出が困難であると予め決められた範囲の位相であって、所定の1相に流れる電流が、所定の1相から他の2相に等分に分流する位相を含む範囲の位相とした電動機の制御装置によって達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による実施例を図1〜8を用いて説明する。図1は本発明によるベクトル制御インバータ装置の回路構成の実施形態を示す。図において、1は商用電源、2は整流ダイオード、3は平滑コンデンサ、4は3相インバータブリッジ回路、5は電流検出用抵抗、6は同期電動機、U+はU相上アームのスイッチング素子、U−はU相下アームのスイッチング素子、V+はV相上アームのスイッチング素子、V−はV相下アームのスイッチング素子、W+はW相上アームのスイッチング素子、W−はW相下アームのスイッチング素子、IuはU相電動機電流、IvはV相電動機電流、IwはW相電動機電流、Idcは直流電流である。
【0014】
この回路の動作について説明する。1の商用電源からの交流電力は、2の整流ダイオードと3の平滑コンデンサによって、直流電力に変換される。4のインバータブリッジ回路には直流電力が供給され、インバータブリッジ回路を構成する6個のスイッチング素子U+,U−,V+,V−,W+,W−のオンオフ動作によって、6の直流電動機に電動機電流Iu,Iv,Iwが流れ、5の電流検出用抵抗に電流Idcが流れる。5のシャント抵抗に流れる電流Idcを検出して、電動機各相の電流を再現し、ベクトル制御によって電動機を駆動する。
【0015】
次に、図2を用いて同期電動機の起動制御について説明する。T1,T2,T3は時刻、Taは停止時間、Tbは位置決め時間、Tcは同期運転時間、IuはU相電動機電流、IvはV相電動機電流、IwはW相電動機電流である。
【0016】
Taの期間は電動機が停止し、インバータに通電しない。時刻T1より、インバータのスイッチング素子U+,V−,W−に通電を開始し、回転子の位置決めを行う。このとき、電動機にはIuが流れ込み、Iv,Iwが流れ出す。IvとIwの大きさがIuの大きさの半分となるように、スイッチング素子U+,V−,W−のデューティを制御する。Tbの期間は位置決め処理を行い、時刻T2において位置決め処理を終了する。Tcの期間は同期運転を行い、時刻T2の位置決め終了と同時に同期運転を開始する。同期運転時はIu,Iv,Iwに正弦波電流を流して電動機を駆動させる。所定以上の起動トルクを得るために、位置決め及び同期運転は、電動機電流を所定の値に制御する必要がある。電動機電流は、インバータ母線に配置した5の電流検出用抵抗に流れる電流を検出し、電動機の各相の電流を再現して得る。位置決め時は1相の電流検出のみ可能であり、同期運転時は2相の電流検出が可能である。位置決め時はIvとIwを加えた電流がIuの電流と同等であって、この電流が5の電流検出用抵抗に流れるのでIuの検出のみ可能である。Iuはインバータのチョッパ動作によって、電流が通電と遮断を切り返す。したがって、Iuを検出する際は、インバータの通電時間が長いほど電流検出に有利である。通電時間は、インバータの各相から出力する正弦波電圧位相によって変化するが、Iuの通電時間を最大とするため、Iuの位相θIuをπ/2にして、IvとIwの大きさがIuの大きさの半分となるように、スイッチング素子U+,V−,W−のデューティを制御する。このようにTbの位置決め期間においては、Iuの位相θIuをπ/2に固定することにより、Iuの通電時間を最大にして、Iuの検出を容易にする。
【0017】
同期電動機を始動させるためには、回転子の磁極位置を始動しやすい位置に移動させる必要がある。このために、各相の固定子巻き線から予め決めた磁束が出力されるように各相にインバータから電圧をかける。このとき、瞬時に固定子巻き線に電流が流れるように電圧を印加すると、回転子はその位置に向かって回転始動するのであるが、オーバーシュートしてしまい予定の位置で停止するまで振動が発生するという問題がある。特に、空気調和機に用いられる圧縮機用の電動機として採用した場合、この正逆の振動は圧縮機にとって悪影響を及ぼす場合がある。
【0018】
そこで、上記説明したように、急激に電圧を印加するのではなくて、徐々に所定の電流となるように電圧を上昇させていくのが望ましい。位置決め運転は、いずれか1相の電流を制御すればよいことから、本実施例ではIuを制御対象としている。また、電流を制御するためには、実電流をフィードバックして管理する必要がある。しかし、後述するように、インバータの直流側に設けられた電流検出用抵抗による電動機電流の検出は、電流検出が困難な領域(検出電流が制御に利用できない領域)が存在する。もし、制御対象となる相の電流の位相を電流検出が困難な領域、若しくはその近傍にしてしまうと、確実に必要な電流が検出できるとは限らず電流検出されなければ、始動失敗に至る。
【0019】
この問題を解決するため、本実施例では、制御対象となる相の電流が確実に電流検出用抵抗によって検出されるように、制御対象となる相の電流指令の位相を他の相の電流検出が困難であると予め決められた位相範囲とした。すなわち、π/2を含む位相とした。
【0020】
一方、Tcの同期運転時はスイッチング素子U+,V−,W−のデューティが同期運転時の位相θIuに応じて順次変化するので、1相または2相の電動機電流が検出可能である。
【0021】
次に、図3を用いて位置決め制御について説明する。Iposは位置決め時の電動機電流の最大値、Iu*はU相電動機電流指令値、時刻T1,T2,Ta,Tb,Tc,Iu,Iv,Iwは図2と同一のものである。
【0022】
位置決め開始時刻T1における各相の電動機電流は0であり、位置決めが終了する時刻T2において、IuはIpos、IvとIwは−Ipos/2まで増加させて、回転子の位置決めが正確に行われるようにする。時刻T1からT2に至るまで、各相の電動機電流を増加させてゆくが、たとえば電動機電流Iuは指令値Iu*に一致するように制御する。また、図示したようにT1直後の時間領域Tb'は、5の電流検出用抵抗に電流Idcが流れる時間が短く電流検出が困難であるため、電流検出値Iuと電流指令値Iu*を一致させるフィードバック制御は行わない。ここで、図9を用いて5の電流検出用抵抗に流れる電流とマイコンによる電流検出について説明する。VuはU相電動機電圧、VvはV相電動機電圧、VwはW相電動機電圧である。各相の電動機電圧は正弦波であるが、マイコン内部では図9で示すように直線近似したVu,Vv,Vwを用いる。CNT1とCNT2は、各相のチョッパ信号を作成する際に用いる比較信号であり、上下アームの短絡を防止するデッドタイムTdeadを設ける必要があるため、カウント値にをデッドタイム分の差を設けたCNT1とCNT2を用いる。Vu,Vv,VwとCNT1,CNT2の大小を比較して、インバータのチョッパ信号U+、U−、V+、V−、W+、W−を得る。これらチョッパ信号に応じて直流電流Idcが流れ、この電流値をマイコンのAD変換器を用いて読み込む。直流電流Idcは、各相の電動機電流が重畳したものであり、チョッパ信号U+、U−、V+、V−、W+、W−の組み合わせにより、各相の電動機電流が交互に流れる。図において、W1の期間はIw、W2の期間はIv、W3の期間はIv、W4の期間はIwが流れる場合を例に示している。時間W1はU相とW相の電動機電圧の波高値の差に比例し、電動機電圧と電動機電流の波高値はおよそ比例する。従って、U相とW相の電流波高値が接近すれば時間W1が小さくなり電流検出が困難になる。波高値が一致すれば、W1の幅は0になり電流検出は不可能である。同様にW2,W3,W4についても対応する波高値が接近すれば幅が小さくなり電流検出が困難になる。このように、2相の電動機電流を用いてベクトル制御の演算を行うためには、Idc電流検出に必要な時間幅W1,W2,W3,W4を確保する必要があり、チョッパ信号U+、U−、V+、V−、W+、W−のデューティが小さく、電流検出ができない場合は、図3で説明した電流検出値Iuと電流指令値Iu*を一致させるフィードバック制御を行わない。
【0023】
次に、図4を用いてベクトル制御演算について説明する。10は電動機電圧方程式演算、11は2相→3相変換演算、12はスイッチング素子U+,U−等を駆動するドライバ、13は位相演算、14は3相→2相変換演算、15は相電流再現演算、16はAD変換器、17は2相→3相変換演算、Id*はd軸電流指令、f*は周波数指令、Vd*はd軸電圧指令、Vq*はq軸電圧指令、θは電圧位相、IuはU相電動機電流、IwはW相電動機電流、Iqはq軸電動機電流、Idはd軸電動機電流、Iu'はIuの前回値、Iw'はIwの前回値、Idcは5の電流検出用抵抗に流れる直流電流、VuはU相電動機電圧、VvはV相電動機電圧、VwはW相電動機電圧である。
【0024】
図4はベクトル制御演算として一般的な計算を示したものである。10の電動機電圧方程式演算では数1に示す計算式によって、Id*のd軸電流指令、f*の周波数指令、Iqのq軸電動機電流に基づいてVd*のd軸電圧指令、Vq*のq軸電圧指令を算出する。13の位相演算は、f*の周波数指令に比例させて電動機電圧位相を進め、電動機電圧位相の瞬時値を算出してθに格納する。11の2相→3相変換演算は電圧位相θを参照して、Vd*のd軸電圧指令、Vq*のq軸電圧指令より、VuのU相電動機電圧、VvのV相電動機電圧、VwのW相電動機電圧を算出する。15の相電流再現演算は、16のAD変換器によって5の電流検出用抵抗に流れる直流電流Idcを読込み、IuのU相電動機電流、IwのW相電動機電流を算出する。14の3相→2相変換演算は、IuのU相電動機電流、IwのW相電動機電流からIqのq軸電動機電流、Idのd軸電動機電流を算出する。17の2相→3相変換演算は電圧位相θを参照して、Iqのq軸電動機電流、Idのd軸電動機電流からIu'のIu前回値、Iw'のIw前回値を算出する。Iu'のIu前回値、Iw'のIw前回値は、15の相電流再現演算にて相電流が再現できなかった場合に、相電流の前回算出した値を今回の値として代用するために用いる。
【0025】
図5を用いて位置決め時における電流フィードバック制御を説明する。図5は図4の演算ブロック図に21の点線で示す部分を追加したものである。位置決め時は、IvとIwを加えた電流がIuの電流と同等であって、この電流が5の電流検出用抵抗に流れるのでIuをIdcとして検出する。検出したIdcは、15の相電流再現演算によって、Iu,Iwに変換され、更に14の3相→2相変換演算によってIqとIdに変換される。位置決め時は回転子が固定しているため、Iqの検出値は0であり、Idの検出値のみをフィードバック制御する(この場合は、Iu=Idとなる。従って、ベクトル制御系をそのまま利用しようとすると位置決めのためだけにIuを検出して演算処理に入力する回路が必要となるが、Iu=Idであるため、Idを用いることで何らの変更を加えることなく位置決めが可能となる)。18の加減算機は、d軸電流指令値Id*とd軸電流検出値Idの差分を算出し、19のd軸電流制御器に出力する。19のd軸電流制御器は、d軸電流指令値Id*とd軸電流検出値Idの差分が0となるようにd軸電圧指令値Vd*を補正するためのVd'を出力する。20の加減算機は、d軸電圧指令値Vd*とd軸電電圧補正値Vd'を加算し、補正後のd軸電圧指令値Vd**として出力する。この電流フィードバック制御により、d軸電流指令値Id*を電流指令値Iu*として制御し、電流検出値Iuと電流指令値Iu*を一致させる。
【0026】
次に、図6を用いて同期運転時における電流フィードバック制御を説明する。図6は図4の演算ブロック図に23の点線で示す部分を追加したものである。図5の制御と同様に、検出したIdcは、15の相電流再現演算によって、Iu,Iwに変換され、更に14の3相→2相変換演算によってIqとIdに変換される。同期運転時は、d軸電流指令Id*のみをフィードバック制御し、かつq軸電流指令値を0にして回転子を同期運転する。所定の回転数まで増速した後、q軸電流検出値をフィードバックする制御に切り替える。18の加減算機は、d軸電流指令値Id*とd軸電流検出値Idの差分を算出し、22の誘起電圧補正制御器に出力する。22の誘起電圧補正制御器は、d軸電流指令値Id*とd軸電流検出値Idの差分が0となるように誘起電圧定数Keを補正するための誘起電圧補正値Ke'を出力する。10電動機電圧方程式演算において、誘起電圧定数Keと誘起電圧補正値Ke'を加算して(数1)を用いて演算する。この電流フィードバック制御により、d軸電流指令値Id*を電流指令値Iu*として制御し、電流検出値Iuと電流指令値Iu*を一致させる。
【0027】
【数1】
上述したように、同期電動機のベクトル制御は、d軸電流指令と、周波数指令と、実q軸電流とを入力してインバータの各素子のスイッチング信号を生成する。このスイッチング信号を生成する過程で電動機の誘起電圧定数を用いるが、この値は、電動機を設計する際の値を用いて予め計算によって求めたものを定数として用いている。しかし、実際の電動機は製造過程で多少の製品のばらつきがある。このばらつきによって誘起電圧定数も電動機によって異なる。このため、予め記憶した誘起電圧定数と、実際に制御している電動機の誘起電圧定数がずれてしまい実制御上電動機効率を低下させる要因となっていた。この点を解決する実施例を次に説明する。
【0028】
図7を用いて位置決めから同期運転に処理を移行する手順を説明する。図中の記号は図4と同一のものである。位置決めが終了する時刻T2において、IuはIpos、IvとIwは−Ipos/2まで増加させて、回転子の位置決めを行う。このとき、IuはIpos、IvとIwは−Ipos/2として制御しているので、例えばU相の電動機電圧を生成する正弦波の位相はπ/2に相当し、V相及びW相の電動機電圧を生成する正弦波の位相は、U相の正弦波に対して±2π/3ずれている場合に相当する。位置決めから同期運転を開始する際は、正弦波位相の初期値をπ/2として、各相の電動機電圧を出力する。これにより、図7に示すように位置決めから同期運転の移行を、電動機電流の変動等を生じることなく円滑に行うことができる。
【0029】
次に、図7及び図8を用いて、同期運転における誘起電圧補正について説明する。図7は、マイコンに設定した誘起電圧定数Keが、実際の電動機の誘起電圧定数に同等の場合を示し、図8は、マイコンに設定した誘起電圧定数Keが、実際の電動機の誘起電圧定数より大きい場合を示す。図7において、同期運転Tcの間は、電動機の各相電流Iu,Iv,Iwの波高値は一定に制御されるが、図8では、マイコンに設定した誘起電圧定数Keが、実際の電動機の誘起電圧定数より大きいため、インバータから出力する各相電圧は、電動機の回転数が増すにつれて、実際の誘起電圧が増す以上に大きくなり、電動機の各相電流Iu,Iv,Iwの波高値は一定に制御されない。このような場合、同期運転中に電動機電流が大きくなって、過電流による故障等の問題が生じることが考えられる。そこで、電動機電流を検出して、波高値が一定に制御されるように、図6において説明した内容で誘起電圧定数Keを補正する。また、電動機の始動直後の回転数が低い場合、実際の誘起電圧が非常に小さいので、d軸電流指令値Id*とd軸電流検出値Idの差分が0となるようにマイコン内部の誘起電圧定数Keを補正すると過補償となることが考えられるので、所定の回転数に至った時点で誘起電圧定数Keの補正制御を開始する。このタイミングを図7のT4に示す。
【0030】
以上により、電流センサを用いずに電流検出用抵抗の電流を検出することによって電動機電流を再現し、同期電動機のベクトル制御を行う際に、良好に位置決めと同期運転を行うことができる。
【0031】
以上本実施例によれば、同期運転の開始時における回転子の位置決めを行う際は、インバータ母線に配した電流検出抵抗の両端電圧を参照してインバータ出力電流を検出することによって、電動機の1相の電流を再現し、該再現電流に基づいて回転子座標軸上で直交するd、q軸における電動機電流を算出し、かつ、座標軸上で直交するd、q軸における各電流指令値と周波数指令値とに基づいて前記3相インバータ回路から交流電力を出力しd軸電流の検出値が所定のd軸電流指令と一致するようにd軸電圧指令を補正して位置決めを行うので、電流センサを用いなくても同期電動機の位置決め制御を行うことができる。
【0032】
また、回転子の位置決めを行う際は、3相インバータ回路の所定の1相に流れる電流が、他の2相にそれぞれ半分として流れるように、所定の1相から他の2相に分流するように制御するので、電流検出用抵抗に流れる電流の通流時間を長することにより電流検出を容易にし、同期電動機の位置決め制御を行うことができる。
【0033】
また、回転子の位置決めを行う際は、3相インバータ回路の所定の1相に出力するPWM制御信号のデューティが所定の値より大きい場合のみ、所定の目標値と一致するように前記d軸電流指令を制御するので、精度の良い同期電動機の位置決め制御を行うことができる。
【0034】
また、同期運転の期間中において、d軸電流の検出値が所定のd軸電流指令と一致するように、同期電動機の電圧方程式の誘起電圧定数を補正するので、同期運転中の電動機電流を安定させて運転することができる。
【0035】
また、同期運転の期間中において、d軸電流の検出値が所定のd軸電流指令と一致するように、同期電動機の電圧方程式の誘起電圧定数を補正して同期運転を行う際は、同期運転中の電動機回転数が所定の回転数より大きい場合のみ、前記誘起電圧定数を補正するので、同期運転中の電動機電流を安定させて運転することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上本発明によれば、回転子に永久磁石を搭載した直流ブラシレスモータの始動時における回転子の位置決め時に、振動の発生を抑制すると共に、位置決め時の電動機電流制御を電流検出用抵抗で電流検出されうるように行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるインバータ装置の一実施例の回路ブロック図である。
【図2】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御を示す図である。
【図3】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御を示す図である。
【図4】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御ブロック図である。
【図5】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御ブロック図である。
【図6】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御ブロック図である。
【図7】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御原理を示す図である。
【図8】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御原理を示す図である。
【図9】本発明によるインバータ装置の一実施例の制御原理を示す図である。
【符号の説明】
1…商用電源、2…整流ダイオード、3…平滑コンデンサ、4…インバータブリッジ回路、5…電流検出用抵抗、6…同期電動機、U+…U相上アームのスイッチング素子、U−…U相下アームのスイッチング素子、V+…V相上アームのスイッチング素子、V−…V相下アームのスイッチング素子、W+…W相上アームのスイッチング素子、W−…W相下アームのスイッチング素子、Iu…U相電動機電流、Iv…V相電動機電流、Iw…W相電動機電流、Idc…直流電流、T1,T2,T3,T4…時刻、Ta…停止時間、Tb…位置決め時間、Tc…同期運転時間、θIu…電動機電流Iuの位相、Ipos…位置決め時の電動機電流の最大値、Iu*…U相電動機電流指令値、10…電動機電圧方程式演算、11…2相→3相変換演算、12…スイッチング素子U+,U−等を駆動するドライバ、13…位相演算、14…3相→2相変換演算、15…相電流再現演算、16…AD変換器、17…2相→3相変換演算、Id*…d軸電流指令、f*…周波数指令、Vd*…d軸電圧指令、Vq*…q軸電圧指令、θ…電圧位相、Iu…U相電動機電流、Iw…W相電動機電流、Iq…q軸電動機電流、Id…d軸電動機電流、Iu'…Iuの前回値、Iw'…Iwの前回値、Idc…5の電流検出用抵抗に流れる直流電流、Vu…U相電動機電圧、Vv…V相電動機電圧、Vw…W相電動機電圧、18,20…加減算器、19…d軸電流制御器、22…誘起電圧補正制御器、Iu*…U相電流指令値、Tb'…時間、Vu…U相電動機電圧、Vv…V相電動機電圧、Vw…W相電動機電圧、V+…インバータのV相上アームチョッパ信号、V+…インバータのV相下アームチョッパ信号、U+、U−、W+、W−…それぞれU相、W相の上下アームチョッパ信号。
Claims (5)
- 直流を交流に変換し電動機を駆動するインバータと、このインバータの直流側に設けられた電流検出用抵抗と、この電流検出用抵抗によって検出された電流に基づいて前記電動機をベクトル制御により制御する手段とを備えた電動機の制御装置において、
前記電動機の運転開始時における回転子の位置決めを行う際、前記電流検出用抵抗によって検出された電流のうち前記電動機の1相の電流が指令値に追従するようにフィードバック制御する手段を備え、
前記1相の電流指令の位相を前記電流検出用抵抗によってこの相以外の相の電流検出が困難であると予め決められた範囲の位相であって、所定の1相に流れる電流が、所定の1相から他の2相に等分に分流する位相を含む範囲の位相とした電動機の制御装置。 - 請求項1において、
前記電流検出用抵抗によって検出された電流のうち前記電動機の1相の電流が指令値に追従するように制御する手段は、前記インバータの所定の1相に出力するPWM信号のデューティが所定の値より大きい場合に前記指令値に追従するように制御して位置決めを行う電動機の制御装置。 - 請求項1において、
前記インバータと、d軸電流指令、周波数指令、実q軸電流とを入力し前記インバータの各素子のスイッチング信号を生成するベクトル制御手段とを備え、
同期運転時、前記d軸電流指令と実d軸電流とに基づいて前記ベクトル制御手段における誘起電圧定数を補正する手段とを備えた電動機の制御装置。 - 請求項3において、
前記誘起電圧定数を補正する手段は、同期運転中に、運転中の電動機回転数が所定の回転数より大きい場合に前記誘起電圧定数を補正する電動機の制御装置。 - 請求項3において、
前記誘起電圧定数を補正する手段は、同期運転中に、波高値が一定になるように前記誘起電圧定数を補正する電動機の制御装置。
Priority Applications (1)
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