JP2004144580A - 血液凝固検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、生理条件を反映しうる血液凝固の検査方法を提供することであり、さらに臨床症状を反映しうる抗リン脂質抗体症候群の検査を提供することである。
【解決手段】リン脂質含有物を固定化した固相を用いて、試料液とリン脂質含有物を固定化した固相との反応を流動或いは撹拌しながら血液凝固検査を行うことにより生理条件に近い凝固検査ができ、さらにこの方法は抗リン脂質抗体症候群の検査においても臨床症状と相関する検査方法として応用できる。
【選択図】図1
【解決手段】リン脂質含有物を固定化した固相を用いて、試料液とリン脂質含有物を固定化した固相との反応を流動或いは撹拌しながら血液凝固検査を行うことにより生理条件に近い凝固検査ができ、さらにこの方法は抗リン脂質抗体症候群の検査においても臨床症状と相関する検査方法として応用できる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は臨床検査の分野で用いられ、とりわけ血液凝固の検査方法として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
血液凝固検査は、被検血漿にヒトや動物の組織因子とカルシウムを添加して、凝固時間を測定するプロトロンビン時間測定、エラグ酸やシリカ等の接触因子活性化剤とリン脂質およびカルシウムを被検血漿に添加して凝固時間を測定する活性化部分トロンボプラスチン時間測定、さらには血小板活性化剤を用いて血小板の凝集を惹起させて血小板凝集能を検査する方法等が広く行われている。これらの検査は、すべて検体に、外部より高濃度あるいは強い作用を有する活性化剤を検体に添加することによって、液内反応により検査が行われている。
【0003】
一方、生体中では、血管内を流れる血液は通常では凝固することなく流れている。しかし血管壁に損傷が起こると、その部位で血小板の活性化、凝集がおこり血小板表面に露出してくるリン脂質(ホスファチジルセリン)上で凝固反応が起こり止血機構が進む。さらに損傷した血管表面においてもリン脂質(ホスファチジルセリン)の露出とともに組織因子が出現して、凝固反応が進む。このように凝固反応はある特定の部位でしかも血流により凝固因子が次々と動員されている状況下でその反応が進行している。生理条件下では、血流中において凝固を促進させる反応とそれを抑制する反応が絡み合った複雑な機序によって恒常性が保たれている。これら凝固因子とその抑制因子のバランスが崩れると、血管内で凝固が起こり血栓症や心筋梗塞、脳梗塞などを発症したり、又逆に出血症状が起こる。従って、上述のように凝固因子が次々と供給される血流中の局所で起こる凝固反応を反映した検査方法の開発が望まれている。
しかしながら血管内で起こる血液凝固機序を反映した有効な検査方法は開発されていない。
【0004】
動脈や静脈の血栓症や習慣性流産をきたす疾患として抗リン脂質症候群Antiphospholipid syndrome(APS)が知られている。
主な抗リン脂質抗体としては、カルジオリピン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンに対する抗体、さらにカルジオリピンに結合したβ2GPI上に新たに出現した抗原決定基に対して反応する抗体(抗β2GPI抗体)、プロトロンビン−リン脂質複合体に対する抗体、ループスアンチコアグラント等が知られている。特に若年者の血栓症や習慣性流産では抗リン脂質抗体は重要であり、陽性者では発症予防をはかる必要があることから、ループスアンチコアグラントや抗カルジオリピン抗体などの抗リン脂質抗体の検査は臨床的意義が高いと言われている。ループスアンチコアグラントは凝固検査では凝固時間の延長をもたらすが、臨床的には凝固亢進状態を示し、血栓症をきたす。この場合においては、検査結果と臨床症状が全く相反する事象となり、生体機能を反映する凝固検査の開発が望まれていた。
【0005】
公知の文献、J. Biol. Chem.(1995)
270,26883−26889によれば、ガラス毛細管内にリン脂質を固定化し、そこに活性型凝固第V因子と活性型凝固第X因子を接触させて、プロトロンビンのトロンビンへの転換速度を発色性合成基質を用いて測定している。1999年発行の公知文献、Blood、94巻、3421−3431頁によれば、ガラスの毛細管内にリン脂質を固定化してその内部に、プロトロンビン、活性型凝固第X因子等を流路中で反応させることにより生成してくるトロンビン量を測定している。しかしこれらは、血液凝固反応経路の一部をモデル化して実験しているに過ぎず、複雑な凝固機能検査を実施しているものではない。
【0006】
一方、試料液を動かしながら凝固時間を測定する方法は、すでに多くの方法が知られている。それらは凝固検査薬を添加して、金属球、金属の細い棒或いは磁性粒子等を動かしながら、その動きが止まった時点を凝固時間とするもの、或いはプラスチック製の細管の中を試料液を動かしながら動かなくなった時点を凝固時間とするもの等が知られている。しかしこれらはいずれも、凝固反応の終点、すなわち凝固時間を測定するための手段として試料液を相対的に動かしているだけであり、凝固機能を反映させるためのものではなかった。
【0007】
さらに特開平07−136197にはフローセルと水晶発振子を用いる抗血栓薬剤の検査方法が開示されているが、この場合も血液凝固機能の検査方法を開示しているものではない。
【0008】
【特許文献1】
特開平07−136197。
【非特許文献1】
J. Biol. Chem. (1995) 270巻、26883−26889頁
【非特許文献2】
Blood(1999)94巻、3421−3431頁。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生理条件を反映しうる血液凝固の検査方法を提供することであり、さらに臨床症状を反映しうる抗リン脂質抗体症候群の検査を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、血液凝固の機構を詳細に検討したところ、血管或いは血小板表面に露出したリン脂質上に結合した凝固因子群により凝固因子の一つであるプロトロンビンからトロンビンが生成し、生成したトロンビンが血液内のフィブリノゲンに作用しフィブリンに転換することにより凝固反応が起こっていることから、リン脂質含有物を固定化した固相を用いて血液凝固検査を行うことにより生理条件に近い凝固検査ができることを見出し本発明を完成させた。
【0011】
本発明は以下の構成からなる。
1、リン脂質含有物を固定化した固相を用いることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
2、血液凝固機能に関与する蛋白質をリン脂質含有物と併せて固定化した固相を用いる上記1に記載の方法。
3、上記1又は2に記載の固相又は測定試料の少なくとも一方を可動させる血液凝固の検査方法。
4、上記1〜3に記載の方法とリン脂質含有物が液状或いは溶液内に分散状態で保持されている血液凝固試薬を用いる検査方法を組み合わせることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
5、上記1〜4に記載の方法に用いる試薬又はキット。
6、上記1〜5に記載の方法又は試薬を用いて血液凝固機能の検査を行う検査用具又は装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、血液凝固の検査法に関するものであり、さらに抗リン脂質抗体の検査法にも応用される凝固検査に関するものである。
本発明で用いるリン脂質は、リン脂質を含む含有物であれば特に限定されるものではない。代表的な例として天然あるいは合成のリン脂質が用いられ、具体的にはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン等が用いられる。これらのリン脂質の脂肪酸側鎖は不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。また1本の脂肪酸側鎖を有するリゾ型のリン脂質でも良い。脂肪酸側鎖の鎖長は特に限定されないがC6からC24程度のものが多く用いられる。脂肪酸側鎖の一部の不飽和結合が酸化されていてもよい。また脂肪酸のみならずプラスマローゲン型のリン脂質も含まれる。天然型のリン脂質は、動物又は植物から抽出されたものを用いることができる。これらのリン脂質は単独または少なくとも2種類を適宜組み合わせて用いる場合もある。またリン脂質単独のみならず、たとえばアポ蛋白質等との組合せの含有物を用いることもある。その例として組織トロンボプラスチン或いは遺伝子組換えにより調製されたアポ組織因子をリン脂質に組入れた組織因子等も含まれる。
【0013】
本発明で用いるリン脂質含有物は固相に固定化して用いられることが本発明の特徴である。固相の材質は特に限定されないが、プラスチック、ガラス、金属、セラミック等が用いられる。固相へのリン脂質含有物の固定は物理吸着、化学結合法が採用される。このようなリン脂質の固相への固定は適当な溶媒に溶解した溶液を用いて固相に吸着或いは結合させるか或いは水溶媒に懸濁させた状態で吸着、結合させてもよい。さらにはリン脂質含有物中に結合対の一方を含ませておき、固相側にもう一方の結合対を保持しておいて固定化しても良い。このような例として、たとえばリン脂質含有物中にホスファチジルエタノールアミンを含ませておき、そのアミノ基にビオチンを結合させる。一方固相にアビジンまたはストレプトアビジンを結合させ、ビオチン結合リン脂質含有物と固相を結合させることができる。その他、リン脂質含有物中の官能基を介して公知の方法で固相表面の官能基との間で化学結合により固相にリン脂質を結合させることができる。
【0014】
固相の形状は凝固検査の方式により適宜選択される。たとえば、球状粒子あるいはボール表面にリン脂質含有物を固定化して、試験管等の容器に入れられた試料を検査する場合には、検査試料中に粒子あるいはボールを入れその固相を適宜動かしながら凝固時間を測定すればよい。試験管のような反応チューブにリン脂質を固定化して、試料液を撹拌、あるいは動かしながら凝固時間を測定することも可能である。また管や溝の壁にリン脂質含有物を固定化しておき、その中を試料を通過させながら凝固時間を測定することも可能である(図1)。
【0015】
リン脂質以外に必要な凝固検査試薬は適宜組み合わせて使用する。たとえば、通常の活性化部分トロンボプラスチン時間測定(APTT)に対応した検査の手法を以下に示す。従来のAPTTの測定は、エラグ酸やコロイドシリカのような接触因子活性化剤とリン脂質含有物分散液を含む検査薬と被検血漿を混和してインキュベーションし、接触因子群を活性化させておき、カルシウムを添加することにより凝固反応を開始させ、適当な方法で凝固反応の終点を測定しAPTTとしている。これに対応する本発明の検査方法は、予めエラグ酸やコロイドシリカのような接触因子活性化剤と被検血漿をインキュベートして接触因子群を活性化し、固相化したリン脂質含有物を添加することにより凝固反応を開始させ、固相或いは試料液を適当な速度で動かしながら凝固時間を測定する。このときカルシウムは固相と同時、或いは前後の適当な時点で添加すればよい。
【0016】
本発明を従来の凝固検査方法のプロトンビン時間(PT)測定に対応した形態で行う場合には、組織トロンボプラスチン、或いは組織因子を固定化した固相(組織因子固相)を調製し、前述のAPTTと同様に操作すればよい。すなわち、被検試料に組織因子固相を入れ、同時またはその前後にカルシウムを加えて凝固反応を起こさせ、固相を動かしながら凝固時間を測定すればよい。さらに凝固第V因子とフィブリノゲンを外部試薬から添加している複合因子測定試薬でも同様に、凝固第V因子とフィブリノゲンを含む試薬を被検試料に加えて、その後組織因子固相を加えて、固相を動かしながら測定すればよい。この場合もカルシウムは適当な時点で添加すればよい。
【0017】
本発明に用いられる被検試料は通常のクエン酸を抗凝固剤として用いたクエン酸加血漿が一般的に用いられる。血漿のほか全血も用いられる場合がある。さらに全血を例えば150×g、15分間遠心して得られる多血小板血漿(PRP)に前記の試薬及びリン脂質含有物固相を添加して凝固時間を測定することによっても本発明は実施できる。
【0018】
本発明を実施するための検査装置は、固相或いは試料液を可動させる機能を有していれば良く、特に限定されない。図1に示したような検査装置を収納でき、これらの検査装置に適した可動機構と凝固時間の検出機構を備えている検査機器が好適である。凝固時間の検出には公知の物理的な方法及び光学的な検出方法も適用される。
【0019】
本発明における、凝固時間の決定方法は特に限定されるものではない。従来の凝固検査では凝固点の決定は検査試料と検査試薬を混和した後、反応混合物全体の流動性が大きく変化してくる時点を凝固点として捉えていたが、本発明の方法では、必ずしも試料液全体が凝固する時間を測定する必要はない。固相表面又は試料液の一部にフィブリンの形成が確認された時点を凝固点とすることも可能である。さらに凝固点の確認を明確にするため、トロンビン活性測定用の発色性合成基質を混在させておいて、その発色度を指標にすることも可能である。この場合、同時に起こるフィブリン形成を阻害するために、デフィブラーゼを添加して測定することも可能である、
【0020】
本発明はAPTT及びPTのみならず固相表面のリン脂質を利用する凝固機能検査のすべてに適用される。各凝固因子の欠乏血漿と被検血漿を混合して凝固検査を行う凝固因子定量検査や凝固の調製因子であるプロテインCの検査にも適用される。プロテインCによる凝固反応の抑制は活性型凝固第V因子及び活性型凝固第VIII因子を阻害することによるが、この反応も溶液内のみで起こるのではなくリン脂質表面を利用して起こる反応である。したがって、本発明を用いることにより生理条件を反映したプロテインCを中心とする凝固機能検査が可能である。
固相表面に固定化したリン脂質含有物に併せて、トロンボモジュリン又はトロンボモジュリンとトロンビンの複合体を固定化する。そのように調製した固相を被検血漿に反応させるとリン脂質含有物上で血液凝固反応が進行するとともにトロンボモジュリン−トロンビン複合体により被検血漿中のプロテインCが活性化され活性化プロテインCとなる。活性化プロテインCはリン脂質含有物上でプロテインSと協調して活性型の凝固第V因子及び凝固第VIII因子を不活化する。したがってプロテインCの活性量を反映した被検血漿の凝固時間が得られる。またプロテインCの活性量は合成基質を用いて測定することも可能である。
【0021】
本発明の方法は、活性型プロテインCを用いる凝固制御因子機構の検査に応用される。予め蛇毒等で活性化させた活性型プロテインCを被検血漿に加え、被検血漿の凝固時間の長短を検査する。活性型プロテインCと公知の接触因子活性化剤を被検血漿に加えておきインキュベーションし、固定化リン脂質及びカルシウムを添加することにより凝固反応を起こさせ、その凝固時間を測定する。
活性型プロテインCが作用しない場合には凝固時間が正常の場合に比べて短縮する。従来のAPTTでは反応が過激であるため凝固時間の長短が明確でないが、本発明の方法では、より高感度に測定ができる。このような活性型プロテインCを用いた検査の対象として、凝固第V因子に変異のあるAPCレジスタンス並びに凝固第VIII因子及び凝固第V因子に対するインヒビター(抗体等)を検査することが可能である。
【0022】
例えば、凝固第V因子に対するインヒビターを有する血漿では、従来のPT、APTTの検査では、凝固時間の若干の延長を認める。このような血漿を本発明の方法により従来のPT及びAPTTに対応する検査を行うと、有意な凝固時間の延長を認める。そして次いで前述のごとく、活性化プロテインCを添加して本発明の方法を用いたプロテインC経路による凝固制御機構検査を行えば、明らかな凝固時間の短縮がみとめられる。従って凝固第V因子のプロテインC抵抗性が検査できる。
【0023】
本発明の方法は、凝固因子の定量方法に利用される。従来の凝固因子定量は、測定しようとする凝固因子を含まない因子欠乏血漿と5−10倍希釈した被検血漿を混和した試料のPT又はAPTTを測定することにより検査していたが、本発明では、因子欠乏と被検血漿を混和したもの試料としてリン脂質含有物固相を用いて凝固能を測定することにより因子定量が可能になる。
【0024】
本発明は、固相化されたリン脂質含有物を用いる血液凝固検査とリン脂質含有物が液状或いは溶液内に分散状態で保持されている血液凝固試薬を用いる検査方法とを組み合わせることにも及ぶ。抗リン脂質抗体陽性患者の中には従来のPTやAPTTの延長を観察する場合がある。このような場合はループスアンチコアグラントとして取り扱われている。ループスアンチコアグラントでは検査による凝固時間の延長を認めるのに対して、生体内では血栓を引き起こすことが知られている。このような検体では本発明の固相化されたリン脂質含有物を用いる血液凝固検査の結果と従来の溶液内での凝固検査の結果を組み合わせて検査することにより、臨床症状を反映した検査が可能である。
【0025】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】(リン脂質固定化ボールの調製)
ホスファチジルコリンヂオレイル(PC)、ホスファチジルエタノールアミンジオレイル(PE)及びホスファチジルセリンジオレイル(PS)の各1mg/mLクロロホルム溶液を調製し、PC/PE/PS=1/1/1の比率で組み合わせたリン脂質組成溶液の200μLをガラス製の小試験管に分注し窒素気流中で乾燥後、100μLの水と直径約2mmのガラス玉を加えてリン脂質を懸濁させリポソームを調製した。調製したリポソームはさらに15KHzで5分間超音波処理して、ユニラメラリポソーム(ULL)を調製した。調製したULLに20mMのHEPES緩衝液、pH7.5を加えて全量を10mLとした。調製したULL溶液に直径3.2mmのポリスチレンボールを浸漬させ、室温で一夜放置したのち、ボールを取り出し、20mMのHEPES緩衝液で洗浄し、リン脂質固定化ボールを調製した。
【0026】
【実施例2】(APTT活性化試薬の調製)
市販のエラグ酸0.025gを0.001M水酸化ナトリウム液1Lで溶解した。これに50μmol/Lになるように硫酸銅を混合し、さらに、この溶液にTrisを0.22g、HEPESを1.45g溶解させてエラグ酸溶液を調製し、APTT測定の活性化試薬とした。
【0027】
【実施例3】(APTTの測定)
クエン酸採血された血漿検体100μLを小試験管にとり、実施例2で調製したAPTT活性化試薬100μLを加え37℃で2分間インキュベーションした。その後実施例1で調製したリン脂質固定化ボール1個を加え、さらに25mM塩化カルシウム溶液100μLを加えて凝固反応を開始させた。その後試験管を毎分60サイクルのストロークで撹拌させながら、ボールが動かなくなる時間を凝固時間として測定した。
【0028】
【実施例4】(検体の測定)
通常のAPTT検査において正常域の凝固時間を示す検体3例、凝固時間の延長検体5例を用いて実施例3の方法で本発明によるAPTT測定を行った。その結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
以上の結果、正常域の凝固時間を示す検体ではいずれも凝固時間が通常の約28−32秒に対して45−50秒であった。通常のAPTTで凝固時間の延長が認められた5例のうち3例は本発明の方法においても67−82秒と延長していた。しかし、通常のAPTTで大きく延長していた2例の検体では、本発明の方法では正常域の下限の凝固時間が得られた。これら通常のAPTTで延長していた検体のうち、本発明の方法で正常域下限の凝固時間を示した2例はいずれも抗リン脂質抗体陽性検体であった。従って、本発明の方法では抗リン脂質抗体陽性検体では、正常検体よりもむしろ凝固時間が短縮傾向にあり、抗リン脂質抗体症候群の患者では、凝固亢進状態にあり血栓症を起こしやすい臨床症状を反映した検査結果が得られた。本発明は通常のAPTTの検査に代用できるだけでなく、抗リン脂質抗体陽性検体の検査にも有用であることがわかった。さらに本発明は従来の凝固検査方法と組み合わせた検査方法としても可能である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、生理条件を反映しうる血液凝固機能検査が可能であり、さらに抗リン脂質抗体陽性検体の検査において、凝固機能を反映した検査をすることができ、検査結果と臨床症状が直接結び付けられる検査が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】リン脂質含有物の固定化手段の例を示した図である。
【図2】リン脂質含有物の固定化手段の異なる例を示した図である。
【符号の説明】
1、 反応容器。
2、 検体液。
3、 リン脂質含有物固定化ボール。
4、 リン脂質含有物固定化固相の往復移動を表す。
5、 リン脂質含有物固定化固相の回転移動を表す。
6、 反応容器内表面にリン脂質含有物を固定化した反応容器。
7、 検体液の撹拌を表す。
8、 毛細管での本発明の実施例
9、 平板内に設けた溝状での本発明の実施例
10、 平板
11、 多孔性単体での本発明の実施例
12、 複数の毛管流路での本発明の実施例
【発明の属する技術分野】
本発明は臨床検査の分野で用いられ、とりわけ血液凝固の検査方法として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
血液凝固検査は、被検血漿にヒトや動物の組織因子とカルシウムを添加して、凝固時間を測定するプロトロンビン時間測定、エラグ酸やシリカ等の接触因子活性化剤とリン脂質およびカルシウムを被検血漿に添加して凝固時間を測定する活性化部分トロンボプラスチン時間測定、さらには血小板活性化剤を用いて血小板の凝集を惹起させて血小板凝集能を検査する方法等が広く行われている。これらの検査は、すべて検体に、外部より高濃度あるいは強い作用を有する活性化剤を検体に添加することによって、液内反応により検査が行われている。
【0003】
一方、生体中では、血管内を流れる血液は通常では凝固することなく流れている。しかし血管壁に損傷が起こると、その部位で血小板の活性化、凝集がおこり血小板表面に露出してくるリン脂質(ホスファチジルセリン)上で凝固反応が起こり止血機構が進む。さらに損傷した血管表面においてもリン脂質(ホスファチジルセリン)の露出とともに組織因子が出現して、凝固反応が進む。このように凝固反応はある特定の部位でしかも血流により凝固因子が次々と動員されている状況下でその反応が進行している。生理条件下では、血流中において凝固を促進させる反応とそれを抑制する反応が絡み合った複雑な機序によって恒常性が保たれている。これら凝固因子とその抑制因子のバランスが崩れると、血管内で凝固が起こり血栓症や心筋梗塞、脳梗塞などを発症したり、又逆に出血症状が起こる。従って、上述のように凝固因子が次々と供給される血流中の局所で起こる凝固反応を反映した検査方法の開発が望まれている。
しかしながら血管内で起こる血液凝固機序を反映した有効な検査方法は開発されていない。
【0004】
動脈や静脈の血栓症や習慣性流産をきたす疾患として抗リン脂質症候群Antiphospholipid syndrome(APS)が知られている。
主な抗リン脂質抗体としては、カルジオリピン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンに対する抗体、さらにカルジオリピンに結合したβ2GPI上に新たに出現した抗原決定基に対して反応する抗体(抗β2GPI抗体)、プロトロンビン−リン脂質複合体に対する抗体、ループスアンチコアグラント等が知られている。特に若年者の血栓症や習慣性流産では抗リン脂質抗体は重要であり、陽性者では発症予防をはかる必要があることから、ループスアンチコアグラントや抗カルジオリピン抗体などの抗リン脂質抗体の検査は臨床的意義が高いと言われている。ループスアンチコアグラントは凝固検査では凝固時間の延長をもたらすが、臨床的には凝固亢進状態を示し、血栓症をきたす。この場合においては、検査結果と臨床症状が全く相反する事象となり、生体機能を反映する凝固検査の開発が望まれていた。
【0005】
公知の文献、J. Biol. Chem.(1995)
270,26883−26889によれば、ガラス毛細管内にリン脂質を固定化し、そこに活性型凝固第V因子と活性型凝固第X因子を接触させて、プロトロンビンのトロンビンへの転換速度を発色性合成基質を用いて測定している。1999年発行の公知文献、Blood、94巻、3421−3431頁によれば、ガラスの毛細管内にリン脂質を固定化してその内部に、プロトロンビン、活性型凝固第X因子等を流路中で反応させることにより生成してくるトロンビン量を測定している。しかしこれらは、血液凝固反応経路の一部をモデル化して実験しているに過ぎず、複雑な凝固機能検査を実施しているものではない。
【0006】
一方、試料液を動かしながら凝固時間を測定する方法は、すでに多くの方法が知られている。それらは凝固検査薬を添加して、金属球、金属の細い棒或いは磁性粒子等を動かしながら、その動きが止まった時点を凝固時間とするもの、或いはプラスチック製の細管の中を試料液を動かしながら動かなくなった時点を凝固時間とするもの等が知られている。しかしこれらはいずれも、凝固反応の終点、すなわち凝固時間を測定するための手段として試料液を相対的に動かしているだけであり、凝固機能を反映させるためのものではなかった。
【0007】
さらに特開平07−136197にはフローセルと水晶発振子を用いる抗血栓薬剤の検査方法が開示されているが、この場合も血液凝固機能の検査方法を開示しているものではない。
【0008】
【特許文献1】
特開平07−136197。
【非特許文献1】
J. Biol. Chem. (1995) 270巻、26883−26889頁
【非特許文献2】
Blood(1999)94巻、3421−3431頁。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生理条件を反映しうる血液凝固の検査方法を提供することであり、さらに臨床症状を反映しうる抗リン脂質抗体症候群の検査を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、血液凝固の機構を詳細に検討したところ、血管或いは血小板表面に露出したリン脂質上に結合した凝固因子群により凝固因子の一つであるプロトロンビンからトロンビンが生成し、生成したトロンビンが血液内のフィブリノゲンに作用しフィブリンに転換することにより凝固反応が起こっていることから、リン脂質含有物を固定化した固相を用いて血液凝固検査を行うことにより生理条件に近い凝固検査ができることを見出し本発明を完成させた。
【0011】
本発明は以下の構成からなる。
1、リン脂質含有物を固定化した固相を用いることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
2、血液凝固機能に関与する蛋白質をリン脂質含有物と併せて固定化した固相を用いる上記1に記載の方法。
3、上記1又は2に記載の固相又は測定試料の少なくとも一方を可動させる血液凝固の検査方法。
4、上記1〜3に記載の方法とリン脂質含有物が液状或いは溶液内に分散状態で保持されている血液凝固試薬を用いる検査方法を組み合わせることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
5、上記1〜4に記載の方法に用いる試薬又はキット。
6、上記1〜5に記載の方法又は試薬を用いて血液凝固機能の検査を行う検査用具又は装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、血液凝固の検査法に関するものであり、さらに抗リン脂質抗体の検査法にも応用される凝固検査に関するものである。
本発明で用いるリン脂質は、リン脂質を含む含有物であれば特に限定されるものではない。代表的な例として天然あるいは合成のリン脂質が用いられ、具体的にはホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン等が用いられる。これらのリン脂質の脂肪酸側鎖は不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。また1本の脂肪酸側鎖を有するリゾ型のリン脂質でも良い。脂肪酸側鎖の鎖長は特に限定されないがC6からC24程度のものが多く用いられる。脂肪酸側鎖の一部の不飽和結合が酸化されていてもよい。また脂肪酸のみならずプラスマローゲン型のリン脂質も含まれる。天然型のリン脂質は、動物又は植物から抽出されたものを用いることができる。これらのリン脂質は単独または少なくとも2種類を適宜組み合わせて用いる場合もある。またリン脂質単独のみならず、たとえばアポ蛋白質等との組合せの含有物を用いることもある。その例として組織トロンボプラスチン或いは遺伝子組換えにより調製されたアポ組織因子をリン脂質に組入れた組織因子等も含まれる。
【0013】
本発明で用いるリン脂質含有物は固相に固定化して用いられることが本発明の特徴である。固相の材質は特に限定されないが、プラスチック、ガラス、金属、セラミック等が用いられる。固相へのリン脂質含有物の固定は物理吸着、化学結合法が採用される。このようなリン脂質の固相への固定は適当な溶媒に溶解した溶液を用いて固相に吸着或いは結合させるか或いは水溶媒に懸濁させた状態で吸着、結合させてもよい。さらにはリン脂質含有物中に結合対の一方を含ませておき、固相側にもう一方の結合対を保持しておいて固定化しても良い。このような例として、たとえばリン脂質含有物中にホスファチジルエタノールアミンを含ませておき、そのアミノ基にビオチンを結合させる。一方固相にアビジンまたはストレプトアビジンを結合させ、ビオチン結合リン脂質含有物と固相を結合させることができる。その他、リン脂質含有物中の官能基を介して公知の方法で固相表面の官能基との間で化学結合により固相にリン脂質を結合させることができる。
【0014】
固相の形状は凝固検査の方式により適宜選択される。たとえば、球状粒子あるいはボール表面にリン脂質含有物を固定化して、試験管等の容器に入れられた試料を検査する場合には、検査試料中に粒子あるいはボールを入れその固相を適宜動かしながら凝固時間を測定すればよい。試験管のような反応チューブにリン脂質を固定化して、試料液を撹拌、あるいは動かしながら凝固時間を測定することも可能である。また管や溝の壁にリン脂質含有物を固定化しておき、その中を試料を通過させながら凝固時間を測定することも可能である(図1)。
【0015】
リン脂質以外に必要な凝固検査試薬は適宜組み合わせて使用する。たとえば、通常の活性化部分トロンボプラスチン時間測定(APTT)に対応した検査の手法を以下に示す。従来のAPTTの測定は、エラグ酸やコロイドシリカのような接触因子活性化剤とリン脂質含有物分散液を含む検査薬と被検血漿を混和してインキュベーションし、接触因子群を活性化させておき、カルシウムを添加することにより凝固反応を開始させ、適当な方法で凝固反応の終点を測定しAPTTとしている。これに対応する本発明の検査方法は、予めエラグ酸やコロイドシリカのような接触因子活性化剤と被検血漿をインキュベートして接触因子群を活性化し、固相化したリン脂質含有物を添加することにより凝固反応を開始させ、固相或いは試料液を適当な速度で動かしながら凝固時間を測定する。このときカルシウムは固相と同時、或いは前後の適当な時点で添加すればよい。
【0016】
本発明を従来の凝固検査方法のプロトンビン時間(PT)測定に対応した形態で行う場合には、組織トロンボプラスチン、或いは組織因子を固定化した固相(組織因子固相)を調製し、前述のAPTTと同様に操作すればよい。すなわち、被検試料に組織因子固相を入れ、同時またはその前後にカルシウムを加えて凝固反応を起こさせ、固相を動かしながら凝固時間を測定すればよい。さらに凝固第V因子とフィブリノゲンを外部試薬から添加している複合因子測定試薬でも同様に、凝固第V因子とフィブリノゲンを含む試薬を被検試料に加えて、その後組織因子固相を加えて、固相を動かしながら測定すればよい。この場合もカルシウムは適当な時点で添加すればよい。
【0017】
本発明に用いられる被検試料は通常のクエン酸を抗凝固剤として用いたクエン酸加血漿が一般的に用いられる。血漿のほか全血も用いられる場合がある。さらに全血を例えば150×g、15分間遠心して得られる多血小板血漿(PRP)に前記の試薬及びリン脂質含有物固相を添加して凝固時間を測定することによっても本発明は実施できる。
【0018】
本発明を実施するための検査装置は、固相或いは試料液を可動させる機能を有していれば良く、特に限定されない。図1に示したような検査装置を収納でき、これらの検査装置に適した可動機構と凝固時間の検出機構を備えている検査機器が好適である。凝固時間の検出には公知の物理的な方法及び光学的な検出方法も適用される。
【0019】
本発明における、凝固時間の決定方法は特に限定されるものではない。従来の凝固検査では凝固点の決定は検査試料と検査試薬を混和した後、反応混合物全体の流動性が大きく変化してくる時点を凝固点として捉えていたが、本発明の方法では、必ずしも試料液全体が凝固する時間を測定する必要はない。固相表面又は試料液の一部にフィブリンの形成が確認された時点を凝固点とすることも可能である。さらに凝固点の確認を明確にするため、トロンビン活性測定用の発色性合成基質を混在させておいて、その発色度を指標にすることも可能である。この場合、同時に起こるフィブリン形成を阻害するために、デフィブラーゼを添加して測定することも可能である、
【0020】
本発明はAPTT及びPTのみならず固相表面のリン脂質を利用する凝固機能検査のすべてに適用される。各凝固因子の欠乏血漿と被検血漿を混合して凝固検査を行う凝固因子定量検査や凝固の調製因子であるプロテインCの検査にも適用される。プロテインCによる凝固反応の抑制は活性型凝固第V因子及び活性型凝固第VIII因子を阻害することによるが、この反応も溶液内のみで起こるのではなくリン脂質表面を利用して起こる反応である。したがって、本発明を用いることにより生理条件を反映したプロテインCを中心とする凝固機能検査が可能である。
固相表面に固定化したリン脂質含有物に併せて、トロンボモジュリン又はトロンボモジュリンとトロンビンの複合体を固定化する。そのように調製した固相を被検血漿に反応させるとリン脂質含有物上で血液凝固反応が進行するとともにトロンボモジュリン−トロンビン複合体により被検血漿中のプロテインCが活性化され活性化プロテインCとなる。活性化プロテインCはリン脂質含有物上でプロテインSと協調して活性型の凝固第V因子及び凝固第VIII因子を不活化する。したがってプロテインCの活性量を反映した被検血漿の凝固時間が得られる。またプロテインCの活性量は合成基質を用いて測定することも可能である。
【0021】
本発明の方法は、活性型プロテインCを用いる凝固制御因子機構の検査に応用される。予め蛇毒等で活性化させた活性型プロテインCを被検血漿に加え、被検血漿の凝固時間の長短を検査する。活性型プロテインCと公知の接触因子活性化剤を被検血漿に加えておきインキュベーションし、固定化リン脂質及びカルシウムを添加することにより凝固反応を起こさせ、その凝固時間を測定する。
活性型プロテインCが作用しない場合には凝固時間が正常の場合に比べて短縮する。従来のAPTTでは反応が過激であるため凝固時間の長短が明確でないが、本発明の方法では、より高感度に測定ができる。このような活性型プロテインCを用いた検査の対象として、凝固第V因子に変異のあるAPCレジスタンス並びに凝固第VIII因子及び凝固第V因子に対するインヒビター(抗体等)を検査することが可能である。
【0022】
例えば、凝固第V因子に対するインヒビターを有する血漿では、従来のPT、APTTの検査では、凝固時間の若干の延長を認める。このような血漿を本発明の方法により従来のPT及びAPTTに対応する検査を行うと、有意な凝固時間の延長を認める。そして次いで前述のごとく、活性化プロテインCを添加して本発明の方法を用いたプロテインC経路による凝固制御機構検査を行えば、明らかな凝固時間の短縮がみとめられる。従って凝固第V因子のプロテインC抵抗性が検査できる。
【0023】
本発明の方法は、凝固因子の定量方法に利用される。従来の凝固因子定量は、測定しようとする凝固因子を含まない因子欠乏血漿と5−10倍希釈した被検血漿を混和した試料のPT又はAPTTを測定することにより検査していたが、本発明では、因子欠乏と被検血漿を混和したもの試料としてリン脂質含有物固相を用いて凝固能を測定することにより因子定量が可能になる。
【0024】
本発明は、固相化されたリン脂質含有物を用いる血液凝固検査とリン脂質含有物が液状或いは溶液内に分散状態で保持されている血液凝固試薬を用いる検査方法とを組み合わせることにも及ぶ。抗リン脂質抗体陽性患者の中には従来のPTやAPTTの延長を観察する場合がある。このような場合はループスアンチコアグラントとして取り扱われている。ループスアンチコアグラントでは検査による凝固時間の延長を認めるのに対して、生体内では血栓を引き起こすことが知られている。このような検体では本発明の固相化されたリン脂質含有物を用いる血液凝固検査の結果と従来の溶液内での凝固検査の結果を組み合わせて検査することにより、臨床症状を反映した検査が可能である。
【0025】
【実施例】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】(リン脂質固定化ボールの調製)
ホスファチジルコリンヂオレイル(PC)、ホスファチジルエタノールアミンジオレイル(PE)及びホスファチジルセリンジオレイル(PS)の各1mg/mLクロロホルム溶液を調製し、PC/PE/PS=1/1/1の比率で組み合わせたリン脂質組成溶液の200μLをガラス製の小試験管に分注し窒素気流中で乾燥後、100μLの水と直径約2mmのガラス玉を加えてリン脂質を懸濁させリポソームを調製した。調製したリポソームはさらに15KHzで5分間超音波処理して、ユニラメラリポソーム(ULL)を調製した。調製したULLに20mMのHEPES緩衝液、pH7.5を加えて全量を10mLとした。調製したULL溶液に直径3.2mmのポリスチレンボールを浸漬させ、室温で一夜放置したのち、ボールを取り出し、20mMのHEPES緩衝液で洗浄し、リン脂質固定化ボールを調製した。
【0026】
【実施例2】(APTT活性化試薬の調製)
市販のエラグ酸0.025gを0.001M水酸化ナトリウム液1Lで溶解した。これに50μmol/Lになるように硫酸銅を混合し、さらに、この溶液にTrisを0.22g、HEPESを1.45g溶解させてエラグ酸溶液を調製し、APTT測定の活性化試薬とした。
【0027】
【実施例3】(APTTの測定)
クエン酸採血された血漿検体100μLを小試験管にとり、実施例2で調製したAPTT活性化試薬100μLを加え37℃で2分間インキュベーションした。その後実施例1で調製したリン脂質固定化ボール1個を加え、さらに25mM塩化カルシウム溶液100μLを加えて凝固反応を開始させた。その後試験管を毎分60サイクルのストロークで撹拌させながら、ボールが動かなくなる時間を凝固時間として測定した。
【0028】
【実施例4】(検体の測定)
通常のAPTT検査において正常域の凝固時間を示す検体3例、凝固時間の延長検体5例を用いて実施例3の方法で本発明によるAPTT測定を行った。その結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
以上の結果、正常域の凝固時間を示す検体ではいずれも凝固時間が通常の約28−32秒に対して45−50秒であった。通常のAPTTで凝固時間の延長が認められた5例のうち3例は本発明の方法においても67−82秒と延長していた。しかし、通常のAPTTで大きく延長していた2例の検体では、本発明の方法では正常域の下限の凝固時間が得られた。これら通常のAPTTで延長していた検体のうち、本発明の方法で正常域下限の凝固時間を示した2例はいずれも抗リン脂質抗体陽性検体であった。従って、本発明の方法では抗リン脂質抗体陽性検体では、正常検体よりもむしろ凝固時間が短縮傾向にあり、抗リン脂質抗体症候群の患者では、凝固亢進状態にあり血栓症を起こしやすい臨床症状を反映した検査結果が得られた。本発明は通常のAPTTの検査に代用できるだけでなく、抗リン脂質抗体陽性検体の検査にも有用であることがわかった。さらに本発明は従来の凝固検査方法と組み合わせた検査方法としても可能である。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、生理条件を反映しうる血液凝固機能検査が可能であり、さらに抗リン脂質抗体陽性検体の検査において、凝固機能を反映した検査をすることができ、検査結果と臨床症状が直接結び付けられる検査が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】リン脂質含有物の固定化手段の例を示した図である。
【図2】リン脂質含有物の固定化手段の異なる例を示した図である。
【符号の説明】
1、 反応容器。
2、 検体液。
3、 リン脂質含有物固定化ボール。
4、 リン脂質含有物固定化固相の往復移動を表す。
5、 リン脂質含有物固定化固相の回転移動を表す。
6、 反応容器内表面にリン脂質含有物を固定化した反応容器。
7、 検体液の撹拌を表す。
8、 毛細管での本発明の実施例
9、 平板内に設けた溝状での本発明の実施例
10、 平板
11、 多孔性単体での本発明の実施例
12、 複数の毛管流路での本発明の実施例
Claims (6)
- リン脂質含有物を固定化した固相を用いることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
- 血液凝固機能に関与する蛋白質をリン脂質含有物と併せて固定化した固相を用いる請求項1に記載の方法。
- 請求項1又は2に記載の固相又は測定試料の少なくとも一方を可動させる血液凝固の検査方法。
- 請求項1〜3に記載の方法とリン脂質含有物が液状或いは溶液内に分散状態で保持されている血液凝固試薬を用いる検査方法を組み合わせることを特徴とする血液凝固機能の検査方法。
- 請求項1〜4に記載の方法に用いる試薬又はキット。
- 請求項1〜5に記載の方法又は試薬を用いて血液凝固機能の検査を行う検査用具又は装置。
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JP2002308899A JP2004144580A (ja) | 2002-10-23 | 2002-10-23 | 血液凝固検査方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006095833A1 (ja) * | 2005-03-09 | 2006-09-14 | Kenji Kohno | 微小血栓の測定による血栓関連疾患の検査方法 |
JP2012046551A (ja) * | 2004-05-27 | 2012-03-08 | Baxter Internatl Inc | 硫酸化多糖を用いて出血性疾患を処置するための方法 |
JP2014041041A (ja) * | 2012-08-22 | 2014-03-06 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 血液凝固測定方法 |
JP2015004521A (ja) * | 2013-06-19 | 2015-01-08 | 日本電信電話株式会社 | 血液状態測定方法 |
-
2002
- 2002-10-23 JP JP2002308899A patent/JP2004144580A/ja active Pending
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