JP4422227B2 - 止血障害の検出方法 - Google Patents
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Description
本発明は血小板凝集、凝塊形成および/または凝塊溶解の結果として各物質は互いに離れて物質間の相互作用、特にエネルギー伝達を可能にし、または妨げるため、その相互作用の程度を測定することからなる止血障害の検出方法、およびそのための診断剤に関する。
【0002】
血流は臓器に栄養分を供給し、血管系を通って代謝産物を排泄する。したがって、それにも関わらず環境に対して密閉された開放血管系の維持はきわめて重要である。これは対立する系の血液凝固およびフィブリン溶解(平衡時は「止血」と呼ばれる)の相互作用により可能になる。極端な場合これらの系の障害は血栓症、すなわち故意でない血管系の閉塞、または出血性素質、すなわち出血において臨床的に証明される。これらの現象は臓器不全により死をもたらしうる。西洋では、これらは主要な死亡原因の1つである。したがって、重要な役割は後天性または遺伝性止血障害を検出する臨床診断と結びついている。
【0003】
止血過程は血管(収縮および拡張)、細胞(血管の内張りをなす内皮および/または血管内で浮遊している血小板)および体液性因子の相互作用に基づいている。一次および二次凝固の区別は本過程の生理学的連鎖に従ってなされる。一次凝固では細胞成分が支配し、この凝固は血小板凝集物(一次凝塊)の形成をもたらす。二次凝固では体液性因子が支配し、通常細胞成分により開始する。これらの体液性因子はそれらの機能に従って本質的に酵素、補因子および支持タンパク質に区別されるタンパク質である。凝固が活性化されると、活性または活性化した酵素はカスケード様反応系によりタンパク質分解的にプロ酵素をそれらの活性形態に変換する。この活性はそれら自体が大抵タンパク質分解的に活性化される補因子により高めることができる。最後の工程として、その前駆体形態では可溶性である支持タンパク質フィブリノーゲンは凝固酵素トロンビンによりその不溶性産物、すなわちフィブリンに変換される。フィブリン凝塊(二次凝塊)はフィブリンの凝集および酵素的架橋により形成される。一次および二次凝固は創傷の癒合を促進する。しかしながら、病的状態では血流は故意でなくブロックされ、これは臨床的に血栓症と呼ばれる。凝塊は同様の活性化酵素によりプロテアーゼプラスミンの活性化をもたらすフィブリン溶解系により溶解する。病的状態の過剰フィブリン溶解では、プラスミンはまだ凝塊となっていないフィブリノーゲンを非特異的に破壊し、完全な形の毛細血管系を壊して出血をもたらす。
【0004】
いわゆる古典的な方法、臨床化学的方法および免疫化学的方法に分類される診断法は止血障害を検出するための上記過程を調べるために使用される。
古典的な方法と呼ばれる診断法は凝塊形成の検出に基づいている。凝固および/またはフィブリン溶解の活性化カスケードをある時点で活性化し、凝塊が形成または溶解するまでの時間を測定する方法が支配的である。正常な試料と比較したこれらの凝固またはフィブリン溶解時間の変化は活性化された構成部分、すなわちフィブリン凝集物の形成または溶解までの反応カスケード部分において生じた病理学的変化と関連した結論を引き出すことができる。古典的な方法において、凝塊は通常機械的または光学的検出法により検出される。
【0005】
機械的検出法は凝固する試料の上昇した粘度またはフィブリン系の形成を利用する。例えば、球または動き回るノミを反応容器の底に入れ、容器に加えた血液試料中で凝固をひき起こす。球または動き回るノミまたは容器を回転させ、この運動に必要な力を測定する。溶液の粘度が血小板凝集または凝塊形成により上昇する場合、これは増加した抵抗として測定され、特定の値以降は凝固開始とみなされる。他の方法(SchnitgerおよびGrossの方法)では、フック形の電極を試料中に浸漬し、一定の間隔でそれから取り出す。これに伴って、試料中の電極への電流の供給はスイッチをつけたり、切ったりして行なわれる。フィブリン系が形成される場合、可動電極はからみ合って電流の流れが維持される。これは凝固開始とみなされる。逆に、フィブリン溶解が診断される場合、凝塊の溶解は相当する方法でフィブリンの粘度または溶解の減少により検出される。
古典的な方法において、機械的検出方法は凝塊形成の生理学的に重要な特性、すなわち創傷の機械的に安定な閉合を示すという利点を有する。他方、この方法はこれらの特殊な止血試験にだけ適した特殊な装置を要する。
【0006】
光学的検出法は凝塊が形成した溶液の濁り度の変化を測定する濁り試験を意味すると解される。フィブリン凝塊に関する濁り信号は当業者に知られている方法により、例えば粒子を加えて試料の光学濃度を増加することにより、あるいは/またはイオン、例えばマンガン、鉄またはカルシウムイオンのような金属イオンを加えてフィブリンの変性を強化することにより増幅することができる。古典的な方法において、光学的検出法は同様に光学的に測定することができる色素産生基質の変換を意味するとは解されない。これは酵素活性を検出するが、血小板の凝集または、天然の支持タンパク質フィブリノーゲンの変換を検出しないからである。
【0007】
EP 0 039 885は疎水性ラテックス粒子がフィブリンモノマー、すなわちまだ重合していないフィブリンを検出するのに使用されることを報告している。しかしながら、このような単純なラテックス粒子は、ラテックス粒子の凝集がフィブリン凝塊そのものがもたらす光散乱と区別できない光散乱の増加をひき起こすため凝塊を検出するのに適していない。
光学的検出法の利点は臨床化学分野で現在一般に使用されている自動分析装置で測定することができるという点である。しかしながら、光学的検出法は濁り度の測定に基づいているため、機械的検出法と対照して、例えば高脂血症試料の場合、試料の濁りは測定を妨害しうる。極端な場合、例えば全血の場合、光学濃度による光学的検出はまったく不可能である。これはこれらの光学的方法の重要な欠点である。
【0008】
上記の慣用の古典的診断法の他に、臨床化学的方法もまた止血診断において慣用的に使用される。これらの方法は独立の、あるいは酵素および/または中間体と組み合わせた(酵素的に結合した試験)特定の色素産生基質の変換を利用して個々の酵素の活性を測定する。これらの測定法は血小板凝集物またはフィブリン凝塊の形成とは無関係である。しかしながら、これらの方法の欠点は生理学的に関連した反応、すなわち血小板凝集物またはフィブリン凝塊の形成または溶解の障害、例えば異常フィブリノーゲン血症、あるいはビタミンK欠乏またはクマリンを用いた治療によるリン脂質表面を有する凝固酵素の制限された反応性が検出されないということである。
【0009】
免疫化学的方法は止血診断ではあまり一般的ではない。この場合、この方法は機能障害の診断であり、また多くはないが重要な検出対象の分析物の量の測定であるためである。にも関わらず、タンパク質分解作用によるカスケード反応の分解生成物の免疫化学的検出、またはプロテアーゼ/阻害剤複合体の検出は関連した系の現存する活性に関して結論を下すことができる。これらの結論は鑑別診断において有用である。現在、止血診断における免疫化学的方法の使用は主として調査研究に限られている。
【0010】
本発明は現在の自動分析装置を使用して古典的な機能的方法を行なうことができ、また試料の濁りにより生じる。光学的方法ではよくある干渉に関して抵抗性があるため全血中での測定も行なうことができる新規な検出方法を見い出すことを目的とする。
本発明によれば、本目的は請求項1〜27の何れかの項に記載の方法または診断剤;特に血小板凝集、凝塊形成および/または凝塊溶解の結果として各物質は互いに離れて物質間の相互作用、特にエネルギー転移を可能にし、または妨げるため、その相互作用の程度を測定することからなる止血障害の検出方法により達成される。
【0011】
「止血障害」なる用語は凝固系、フィブリン溶解系および補体系のすべての遺伝性または後天性障害、特にこれらの系に関与する因子および調節遺伝子、さらにこれらの因子および調節遺伝子の受容体の欠失または欠損を意味する。但し、これらの受容体が組織、組織部分および/または細胞の存在により試験で使用されるようになる限りにおいてである。
血小板凝集、凝塊形成および/または凝塊溶解の過程に関する結論は各物質の相互作用の程度を測定することにより、例えば転移したエネルギーの量を直接または間接的に測定することにより引き出すことができる。したがって、この方法が使用される場合、古典的な機械的方法(凝塊形成または溶解の生理学的過程の直接測定)および古典的な光学的止血診断法(慣用の自動分析装置を使用する測定)の利点を同時に考えられるそれらの欠点(例えば濁った試料の干渉に対する感度)なしで組み合わせることができる。したがって新規方法を使用してすべての試料、例えば止血診断で慣用的に使われる血小板の少ない血漿、血小板を多く含んだ血漿、または全血を測定することができる。
【0012】
全血は光学的方法において最大の干渉を示す。存在する赤血球のため、光学濃度が非常に高いので光学的に測定する現在入手できる装置での測定を行なうことができない。新規方法により測定されるような全血試料中の凝固反応の進行は実際に影響を受けない。このため、治療時にまたは家庭での診断で全血試料を測定するのに新規方法を使用することができる。全血の凝固において一次および二次凝固は相互作用するため、新規方法を使用して全過程を測定することができる。したがって、新規方法は体液性因子の測定および細胞成分の凝固または溶解活性の測定の両方において使用することができる。
【0013】
相当する臨床化学的および免疫化学的止血診断法もまた新規方法に適合させることができるため、新規方法によりただ1つの装置で止血診断全体を行なうことができる;例えば慣用の色素産生基質の代わりに、有効にエネルギーを転移することができ、例えば適当な酵素的に分解可能なペプチド鎖により結合した物質を使用することができる(例えばWO 97/28261を参照)。この場合、1種以上の物質を直接にまたは間接的に、例えば抗原/抗体またはアビジン/ビオチンのような結合系によりペプチド鎖と結合させ、酵素反応を各物質とペプチド鎖との結合の前後に、またはこの結合と同時に行うことができる。
【0014】
本明細書全体を通して、「物質」なる用語は空間的に近接している時例えば光増感剤および化学発光化合物(EP 0 515 194;Ullmanらの「臨床化学」,42,1518〜1526(1996年))、光増感剤および発蛍光団(WO 95/06877;BystrakらのAnal. Biochem. 225, 127〜134(1995年))、放射性沃素125および発蛍光団(S.UdenfriendらのProc. Natl. Acad. Sci. 82, 8672〜8676(1985年))、発蛍光団および発蛍光団(Mathis, G.の「臨床化学」,39,1953〜1959(1993年))、または発蛍光団およびケイ光消光剤(US 3,996,345)のようなエネルギー供与体およびエネルギー受容体の形態で物質間の相互作用に参加することができる生物学的物質および/または化学物質の一員を意味すると解される。
【0015】
物質間の相互作用は特にエネルギー転移、すなわち例えば光線または電子線による、あるいは反応性化学分子による物質間の直接的なエネルギー転移を意味すると解される。エネルギー転移は一方の物質から他方の物質へ行われるが、異なる物質のカスケードによりエネルギー転移を行うこともできる。
さらに、「物質間の相互作用」なる表現はまた、物質の活性が1種以上の異なる物質により阻害または増加される過程、例えば酵素活性の阻害または増加、あるいは影響を受けた物質が発する光の阻害、増加または変化(例えば波長移動、偏光)を包含する。
【0016】
「物質間の相互作用」なる表現はまた、酵素カスケードを意味すると解される(US 4,663,278を参照)。この場合、各物質は酵素であり、それらのうち少なくとも1つは他の酵素に基質を供給し、血小板凝集、凝塊形成および/または凝塊溶解の結果として、各酵素は結合した基質の変換反応速度が最大または最小になるように互いに離れる。このように、例えば次の変法を行うことができる;
(a) 酵素E1(=物質A)は酵素E2(=物質B)に基質“a"を供給し、その基質は酵素E2により測定可能な最終生成物または中間体“b"に変換される。酵素が溶液中に存在する場合、酵素E2に達する基質“a"の拡散路は比較的長く、結果として“b"への変換反応の速度は遅い。酵素E1およびE2が例えば凝塊形成または血小板凝集の結果として空間的に隣接している場合、“b"への変換反応の速度はより速くなる。
【0017】
(b) 酵素E1(=物質A)およびE3(=物質C)は最初から空間的に近接している;例えばこれらは共に同じ粒子に結合している。酵素E1は酵素E2(=物質B)に基質を供給し、また酵素E2は酵素E3に基質を供給する。本法は(a)と同様に進行し、凝塊形成または血小板凝集の結果として3種の物質はすべて空間的に近接する、あるいは凝塊溶解の結果として空間的に近接していた配置が崩壊する。
物質間の有効な相互作用はこれらの物質が空間的に隣接している、すなわち例えば数μmの距離範囲内、特に600nm未満、好ましくは400nm未満、とりわけ好ましくは200nm未満の距離範囲内である場合に起こる。
【0018】
新規方法の好ましい態様において、物質間の相互作用は例えば
・短命分子、例えば一重項酸素(EP 0 515 194;UllmanらのProc. Natl. Acad. Sci. 91, 5426〜5430(1994年);Ullmanらの「臨床化学」,42, 1518〜1526(1996年), WO 95/06877およびBystrakらのAnal. Biochem. 225, 127〜134(1995年)を参照)、
・短領域の放射線、例えば放射性β線(HartおよびGreenwaldの「分子免疫学」,16, 265〜267(1979年)並びにUdenfriendらのProc. Natl. Acad. Sci. 82, 8672〜8676(1985年)を参照)、および/または
・フェルスターのエネルギー転移(Mathis, G.の「臨床化学」,39, 1953〜1959(1993年); US 5,527,684)
によりエネルギー転移として行われる。
新規方法の他の好ましい態様において、物質の活性は他の物質により増加または阻害され、それにより測定可能な信号変化、例えば放射光の強度または偏光の変化、酵素活性の阻害または増加、および/またはケイ光性の変化が生じる。
【0019】
新規方法はまた、少なくとも1種の物質が非特異的に疎水性または静電的作用により、形成または溶解する凝血塊の成分と結合することができる態様を包含する。この結合は物質と形成または溶解する凝血塊の成分との相互作用により直接的に、あるいは物質に結合しており、天然に存在するまたは合成されるポリマー、タンパク質、特にフィブリノーゲンのフラグメント、糖、脂質またはペプチド、特にアミノ酸配列RGDを有するペプチド、特に好ましくは粒子のような結合媒介成分により形成または溶解する凝血塊と結合する物質を使用して間接的に行うことができる。
【0020】
新規方法の特に有利な態様は1種以上の物質が特定の相互作用により共有結合的におよび/または吸着的に懸濁性粒子と結合し、そして/またはこれらの粒子中に取り込まれ、またはそれら自体が懸濁性粒子もしくはその一部を構成することを特徴とする。「懸濁性粒子」なる用語は染料結晶、金属ゾル、シリカ粒子、磁気粒子、油滴、脂質粒子、デキストラン、タンパク質凝集物、特に好ましくはラテックス粒子のような粒子を意味すると解される。好ましくは、0.01〜10μmの直径、特に好ましくは0.05〜3μmの直径、とりわけ好ましくは0.05〜1μmの直径を有する粒子である。
【0021】
共有結合の場合、物質は化学結合により粒子、あるいは粒子を被覆するシェルまたは層に結合している。物質はまた、例えば抗体、レクチン、受容体、ビオチン/アビジンまたは相補的ヌクレオチド鎖が媒介する特定の相互作用により粒子または粒子被膜と結合することができる。一般に、吸着的結合は粒子または粒子被膜と物質との疎水性、親水性または静電的相互作用によるものである。粒子被膜によっても形成されうる1個以上の粒子のくぼみへの物質の取り込みもまた有効である。
【0022】
新規方法はまた、粒子の製造後に粒子表面が変性され、そして/または粒子が例えばタンパク質、炭水化物、親油性物質、バイオポリマー、有機ポリマー、またはその混合物からなる1種以上の共有結合的にまたは吸着的に結合した層またはシェルにより被覆され、それにより例えば懸濁液安定性、貯蔵安定性、形成安定性、あるいは紫外線、微生物または破壊的作用を有する他の薬剤に対する耐性に関する改善が達成される態様を包含する。変性および被覆はまた、反応容器の表面および試料成分、特にタンパク質(例えばアルブミンまたは抗体)または細胞成分(例えばリン脂質または核酸)の表面との非特異的結合を減少または妨止するのに役立つことができる。さらに、変性および被覆は粒子表面の疎水性または粒子の表面変化を増加または減少するのに役立つことができる。
【0023】
粒子表面をこのように変化させることにより、粒子と凝血塊成分の結合を改善し、この結合をより選択的にすることができる。物質が形成または溶解する過程の凝血塊の成分と特異的に結合することができるということが新規方法の機能を果たすための重要な前提条件である。使用される物質そのものがこの特性を有するか、または結合媒介成分が必要かどうかは粒子に結合した物質の例を使用して下記のように説明される結合試験により証明することができる:
結合媒介成分として使用するのに適した粒子は粒子と固定化フィブリン表面の結合を調べることにより選択することができる。このようなフィブリン表面は例えばMassonおよびAngles-CanoのBiochem. J. 256, 237〜244(1988年)に記載の方法により製造することができ、簡単には次の通りである;塩化ポリビニルレセプタクルを室温で2時間、0.1M重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)中におけるグルタルアルデヒドの2.5%(v/v)溶液により予備活性化し、次にフィブリノーゲン含有溶液(0.3μモル/L;1ミリモル/Lの塩化カルシウムを含有する0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中)を加える。例えば、γ線照射により予備活性化された商業的に入手できる小さなポリスチレン管または微小滴定プレートをタンパク質被膜に使用する場合、使用する試験レセプタクルを直接、フィブリノーゲン含有溶液と接触させることができる。数時間、通常は一晩(約18時間)のインキュベーション後、非結合フィブリノーゲンは洗剤を含有する洗浄緩衝液(例えばDade Behring Marburg GmbH Enzygnost Lineより入手)で洗浄することにより除去される。結合したフィブリノーゲンはトロンビン(50mMトリス−HCl中の1 NIH単位/ml;1mM CaCl2;pH7.4;例えば試験トロンビン試薬;Dade Behring Marburg GmbH製)を加えることによりフィブリンに変換され、その後トロンビンは例えば0.5M NaCl、8mM CaCl2および0.05%ツイーン20を含有する溶液を使用して洗浄することにより除去される。さらに、慣用の洗剤を含有する洗浄緩衝液を使用する洗浄工程後、フィブリン固相の遊離結合部位はウシ血清アルブミンの0.2%(w/v)溶液で1回洗浄することにより飽和する。調査対象の粒子、例えば化学発光化合物を含有するラテックス粒子(化学発光剤粒子)と組み合わせた光増感剤を含有するラテックス粒子(増感剤粒子)(「臨床化学」,42,1518〜1526(1996年)を参照)のフィブリン表面との結合は粒子を中性緩衝液(例えば50mMトリス−HCl;0.9% NaCl;0.05%ツイーン20;pH7.4)中の被覆された試験レセプタクルに加えることにより試験される。10分間のインキュベーション後(調査する物質に応じてこれよりも短いまたは長いインキュベーション時間もまた可能である)、フィブリンで被覆された試験レセプタクルを同じ緩衝液で1回以上洗浄し、そして洗浄した試験管に付着している増感剤粒子と化学発光剤粒子との間のエネルギー転移を例えば実施例1でより詳細に説明したように適当な測定装置で測定する。フィブリノーゲンとも結合するという望ましくない特性を有する粒子を除くため、高濃度のフィブリノーゲンの存在下でインキュベートすることができる。フィブリノーゲンと結合する粒子とフィブリンで被覆された表面の結合は5g/Lの濃度まで加えられるフィブリノーゲンにより著しく減少し、そのため測定される信号は極端に低下する。新規方法に適した他の結合媒介成分もまた、この方法と同様にして見い出すことができる。
【0024】
新規方法の特に好ましい態様は光増感剤、例えばアセトン、ベンゾフェノン、9−チオキサントン、エオシン、9,10−ジブロモアントラセン、クロロフィル、バックミンスターフラーレン、メチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、フタロシアニンおよび/またはそれらの誘導体、並びに化学発光化合物、例えばオレフィン、9−アルキリデンキサンタン、9−アルキリデン−N−アルキルアクリダン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾールおよび/またはルシゲニンが物質として使用され、そして光増感剤により発生する一重項酸素は化学発光化合物を活性化して発光させることができる方法である。新規方法において、一重項酸素と反応して、発光を伴って当業者に知られている試薬と反応することができる中間体を生成するルミノールおよびオキサレートエステルのような物質を使用することが好ましい。
【0025】
一般に、化学発光化合物は300nm以上の波長領域で発光する。血漿のケイ光は500nm領域で急速に低下し、550nm以上の領域を無視することができる。本発明によれば、より長い波長の場合、化学発光化合物を活性化した化学発光化合物により刺激され、より長い波長で発光することができる発蛍光団(fluorophore)と接触させることもできる。適当な発蛍光団の例はローダミン、臭化エチジウム、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホニル、3−(2−チエノイル)−1,1,1−トリフルオロアセトンとのユーロピウムキレート化合物〔Eu(TTA)3(TTA=3−(2−チエノイル)−1,1,1−トリフルオロアセトン)〕、または2,2′−ジピリジルとのルテニウムキレート化合物〔Ru(bpy)3 ++(bpy=2,2′−ジピリジル)〕である。
【0026】
新規方法の他の好ましい態様は光増感剤およびケイ光化合物が物質として使用され、そして光増感剤により発生する一重項酸素はケイ光化合物を活性化して発光させるか、または消光工程で発光を抑制することができる方法である。好ましくは、特に一重項酸素との反応の結果として光酸化、すなわち“光漂白”に付されるケイ光化合物、例えば1,3−ジフェニルイソベンゾフラン、または光活性前駆体として一重項酸素と反応して発蛍光団を生成するケイ光化合物、例えばオキセンウンベリフェリルエーテルまたはウンベリフェリルセレニドが使用される新規方法である。
さらに、新規方法に適した粒子、光増感剤および化学発光またはケイ光化合物の例については、特にEP 0 515 194,UllmanらのProc. Natl. Acad. Sci. 91, 5426〜5430(1994年) およびUllmanらの「臨床化学」,42, 1518〜1526(1996年), WO 95/06877を参照。
【0027】
新規方法は例えば:
*血漿凝固系因子、例えばフォン・ビルブラント因子、外来系因子(因子=F)、例えばFVII、FX、FII、FVまたはプロテインZ内在系因子、例えばEXII、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、FXI、FIXまたはFVIII、あるいは制御系因子、例えばアンチトロンビンIII、組織因子経路阻害物質、プロテインC、プロテインSまたはC1阻害物質の遺伝子的に決定された、そして/または後天性の欠失;
*フィブリン溶解系因子、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子、尿プラスミノーゲン活性化因子、プラスミノーゲン、α2−抗プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1、2および3、またはトロンビン−活性化可能なフィブリン溶解阻害物質の遺伝的に決定された、そして/または後天性の欠失;
*血小板の遺伝的欠損、例えばベルナール・スリエール(Bernard Soulier)症候群、グランツマン血小板無力症、歯状体欠損(dense body deficiency)、α−顆粒欠乏症またはトロンボキサン合成欠損;
*後天性の止血障害、例えば尿毒症、骨髄増殖性疾患、充実性腫瘍、貯蔵プール疾患または炎症、特に例えばプロテインC系、アンチトロンビンIIIおよび/またはプラスミノーゲン活性化因子、阻害剤1のタンパク質分解的にまたは酸化的に変性されたタンパク質をもたらす炎症のような疾患または疾患状態により起こるもの;
*止血系の1種以上の成分の活性において影響を与える治療剤、例えばヘパリン、クマリン誘導体、ヒルジン、接触相阻害剤、例えばウシトリプシン阻害剤またはC1エステラーゼ阻害剤、血小板受容体に対するアスピリンまたは抗体の投与により起こる後天性の止血障害;あるいは
*補体系の遺伝的および/または後天性欠損
を検出するのに使用することができる。
【0028】
新規方法はまた、フィブリン凝塊の形成に要する時間を測定するのに使用することができる。新規方法の1態様において凝塊形成は血漿中でまたは少なくともフィブリノーゲンおよび/または血小板を含有する培地で凝固を誘発する物質、
*例えばヘビ毒由来の酵素、トロンビンまたは他の活性プロテアーゼのような酵素を加えることにより;
*界面活性物質、例えばシリケートまたはフェノール誘導体により;
*活性化血小板または血小板を活性化する物質、例えばトロンビン、コラーゲン、アドレナリンまたはアデノシン二リン酸により;
*凝固を促進する物質、例えば緩衝物質、塩化カルシウムおよび/またはリン脂質を任意に添加することにより;あるいは
*これらの物質を1種以上加えることにより
誘発される。
【0029】
新規方法は活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンボプラスチン時間(PT)、プロテインC活性化時間(PCAT)、ラッセルマムシ毒液時間(RVVT)またはトロンビン時間を測定するために使用することができる。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は体液性凝固系の内因性経路障害を示す。トロンボプラスチン時間は体液性凝固系の外因性経路障害を示す(Colman RWらの「止血の概説」;Colman RW, Hirsh J, Marder V.J, Salzman EW編の「止血および血栓症」,J.B. Lippincott社,第3版,第3〜18頁(1994年)を参照)。 これらの障害を測定するための試験はフィブリノーゲンをフィブリン凝塊に変換するトロンビンの生成までの体液性凝固系の関連した分枝のすべての成分を必要とするスクリーニング試験である。
【0030】
新規方法の好ましい態様では、フィブリン溶解系因子を測定するために、測定対象の試料は例えば欠失がある血漿と混合することにより、または尿プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、α2−抗プラスミン、プラスミノーゲン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1および/またはXII因子、特にフィブリノーゲンのような精製因子を加えることにより凝塊形成に必要な因子で置換される。特に好ましい態様の新規方法では、自然溶解が誘発されるか、あるいはXIIa因子、tPA、uPAまたはストレプトキナーゼのような活性化剤を加えた後、またはプラスミンを加えた直後に溶解が誘発される。
【0031】
本発明の特に好ましい態様において、フィブリン凝塊の溶解が始まる時間は信号の増加により測定される:血漿を凝固させる。凝塊は例えばプラスミンを活性化する連鎖球菌由来の酵素であるストレプトキナーゼを加えることにより溶解させる。慣用の方法において、この溶解は測定した信号の連続的な減少として見られる。しかしながら、凝塊の溶解開始時間は光学的に測定する装置が使用される場合、信号の減少が徐々に起こるため確定するのが困難である。驚くべきことに新規方法では、溶解が始まると信号は急に、かつ非常に明らかに増加する。これは加えたストレプトキナーゼが試験成分を妨害するために起こるものではなく、ストレプトキナーゼが、測定期間の開始時からずっと存在するからである。
この驚くべき効果は溶解の開始時間を非常に正確に決定する新しい可能性をもたらす。これはフィブリン溶解系の診断、例えば個々の因子および全体の系を測定する、あるいはXIIa因子、uPAまたはtPAが媒介するフィブリン溶解を測定する可能性にまで及ぶ(Bachmann F.の「プラスミノーゲン−プラスミン酵素系」;Colman RW, Hirsh J, Marder VJ, Salzman EW編の「止血および血栓症」,J.B. Lippincott社, 第3版,第1592〜1622頁(1994年))。以前は、特に凝固時間を測定するように溶解時間を正確に測定できなかったため、これは達成されなかった。
【0032】
血小板の活性をそれらの凝集力により測定する方法、特に血小板の凝集がアデノシン二リン酸、コラーゲン、トロンビン、セロトニンまたはエピネフリンのような物質、イオノホア、補体、あるいはストレプトリシンにより誘発されうる方法もまた新規方法に包含される。
他の態様の新規方法を使用して特に血液または血漿の濃度、あるいは
*ヘパリン、tPA、アセチルサリチル酸、クマリン誘導体、ヒルジンおよびストレプターゼ、
*血漿因子濃縮物、例えばプロトロンビン複合体、VIII因子濃縮物またはvWF−含有因子濃縮物、
*血小板受容体に対する抗体、例えばGP IIb/IIIa複合体、GP Ib/V/X複合体、セロトニン受容体、アデノシン二リン酸受容体またはトロンビン受容体、
*接触相阻害剤、例えばウシトリプシン阻害剤またはC1エステラーゼ阻害剤、
*凝固系の阻害剤、例えば不活性化VIIa因子、組織トロンボプラスチンに対する抗体、組織因子経路阻害物質、アンチトロンビンIII、トロンボモジュリンまたは活性化プロテインC、および
*フィブリン凝集阻害物質
のような薬剤の効能を測定することができる。
【0033】
これらの方法はまた、例えばヘパリン、tPA、アセチルサリチル酸、クマリン誘導体、ヒルジン、接触相阻害剤、例えばウシトリプシン阻害剤またはC1エステラーゼ阻害剤、あるいは血小板受容体に対する抗体または血小板に関与するタンパク質、例えばヘパリン/血小板因子4複合体を治療的薬剤レベルでモニターするのに使用することができる。
本発明はまた、血小板凝集、凝塊形成および/または凝塊溶解の結果として互いに離れて物質間の相互作用、特にエネルギー転移を可能にし、または妨げ、その相互作用の程度を測定することができる1種以上の物質を含有する診断剤を包含する。この診断剤は後天性または遺伝性止血障害を検出するのに使用することができる。さらに、本発明は様々な態様の新規方法を実施するための診断剤を包含する。
【0034】
添付図面を参照して次の実施例により本発明を詳細に説明する。
図1は慣用の濁り測定法(1−a)および新規方法(1−b)における正常血漿(NP)および異常血漿(PP)のAPTT反応の経過を示す。それぞれのベースラインおよび凝塊形成ラインの交点を測定することによる凝固時間の確認を図示する。
図2は新規方法による全血試料のAPTTの測定(A)を示す。比較のために、塩化カルシウムを加えない試験(B)を行った。
図3はフィブリン凝塊を溶解するためにストレプトキナーゼを加えた時(A)の慣用の濁り測定法(3−a)および新規方法(3−b)における正常血漿のAPTT反応の経過を示す。比較のために、ストレプトキナーゼを加えない反応(B)の経過もまた示す。凝塊形成時間はそれぞれ矢印で示す。
【0035】
次の実施例により新規方法を詳細に説明する:
Ullmanらの「臨床化学」,42, 1518〜1526(1996年)に記載の方法に従って粒子−結合物質を使用して最も重要で基本的な止血診断試験を行った。これらの方法はスクリーニング試験、さらに単一因子試験として様々な形で使用されるが、結局いつも同じ基本原則、すなわち測定可能な凝塊が形成するまで、またはこの凝塊が再び溶解するまで経過する時間を測定するということに基づいている。
特に断りがなければ、Dade Behring Marburg GmbHから入手した試薬を止血試験で使用した。
【0036】
【実施例】
実施例1 増感剤および化学発光剤粒子の製造
増感剤および化学発光剤粒子の製造はEP 0 515 194, 「臨床化学」,42, 1518-1526(1996年)およびProc. Natl. Acad. Sci. 91, 5426-5430(1994年)において詳細に記載されている。粒子はデキストラン被膜を有し、例えば、結合ストレプトアビジンであってよい(Proc. Natl. Acad. Sci. 91, 5426-5430(1994年)を参照)。ある増感剤および化学発光剤粒子の製造を下記の実施例により説明する(さらに詳しくはEP 0 515 194、 実施例8を参照):
増感剤粒子の製造:
ベンジルアルコール中におけるクロロフィルの溶液(1.0ml;0.6mM)を105℃に加熱した8.0mlのベンジルアルコールに加えた。水中におけるラテックスビーズ(175nm、カルボキシル−修飾ラテックス、Bange Laboratories, Carmel, IN)の懸濁液(10%、1.0ml)をベンジルアルコール溶液に加えた。混合物を105℃で5分間撹拌し、室温まで冷却した。10mlのエタノールを加え、混合物を遠心分離した。ペレットを1:1の水/エタノール混合物(10ml)中で再懸濁し、もう1回遠心分離した。同じ工程を水で繰り返して、ペレットを生理的食塩水に取った。
【0037】
化学発光剤粒子(=受容体粒子)の製造:
20mlのカルボキシル−修飾ラテックス粒子懸濁液(水中の10%懸濁液)を20mlの2−エトキシエタノールと混合した。混合物を90℃に加熱した。2−エトキシエタノール中における10mMジオキセン、3−(2−チエノイル)−1,1,1−トリフルオロアセトン剤との20mMユーロピウムキレート(Kodak, CAS#14054-87-6)(EuTTA)および60mMトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)の溶液20mlを粒子懸濁液に加えた。混合物をさらに7分間、97℃に加熱した。それを室温まで冷却した後、40mlのエタノールを加え、混合物を遠心分離した。次に、ペレットを80%エタノール中で再懸濁し、遠心分離した。この洗浄工程を10%エタノールで繰り返した。最後に、粒子を生理的食塩水に取った。
【0038】
実施例2 慣用の方法(濁り測定)および新規方法における活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定
慣用の方法:正常血漿(対照血漿N:製造番号ORKE)および異常血漿(Pathoplasms II; 製造番号OTXK)のゾールをパスロムチンSL(製造番号OQGS)を使用して慣用の光学的に測定する自動凝固装置(Behring Coagulafion Timer; BCT)で同時に測定した。このために、50μlの試料を50μlのパスロムチンSLと混合し、37℃で2分間インキュベートした後、50μlの25mM塩化カルシウム(製造番号ORHO)溶液を加えることにより凝固を開始した。
【0039】
活性化部分トロンボプラスチン時間は製造業者の取扱説明書に従ってカオリン活性剤(製造番号OTXCおよびリン脂質(製造番号OTXB)から製造したパスロムチン作用液、並びに25ミリモル/Lの塩化カルシウム(製造番号ORHO)溶液を使用して新規方法で測定した。測定は光度計を使用して行った。測定単位を670nmダイオードレーザー(30mWの光源)および光子計数ユニット(Hamamatsu R4632光電子増倍管)に合わせた。550nm〜650nmの光をさらに測定できる短波長通過フィルターおよび長波長通過フィルターからなる組み合わせフィルターを光電子増倍管の前に置いた。全体のシステムを周囲の光から保護した。典型的な測定手順は光源を使用して照明する期間および測定物質が放出する光子がカウントされる第2段階からなる。この測定手順はその間に測定物質が観察される所望の時間に応じて必要な回数繰り返すことができる。照明時間は典型的に0.1〜3秒である。測定時間もまた同じ範囲内である。照明または測定のない段階は2つの測定手順の間に入れることができ、その段階は必要な測定点の数に応じて選択することができる。さらに粒子に結合した物質、すなわち:
・化学発光剤粒子=受容体粒子:2.5mg/ml、生理的食塩水中;
・増感剤粒子:2.5mg/ml、生理的食塩水中
を本発明に従って使用した。
【0040】
次の試料を測定した:
1プールの正常血漿(対照血漿P、製造番号OUPZ)、ビタミンK−依存性凝固酵素を吸収することにより調製される2−プールの異常血漿(pathoplasma 1, 製造番号ORXK;pathoplasma II, 製造番号OTXL)、すべての凝固因子を希釈することにより調製された1プールの異常血漿(対照血漿P;製造番号OUPZ)、さらに健康な献血者から採取した血清。
試薬を使用前に+37℃に加温した。試験を行うために、次の成分を混合した:
200μlの試料
100μlの受容体粒子
25μlの増感剤粒子
200μlのパスロムチン作用液。
次に、混合物を+37℃で2分間インキュベートし、
200μlの25mM塩化カルシウム溶液
を加えることにより凝固を開始した。
信号を所定の時間記録した。
【0041】
凝固時間はそれぞれ反応曲線のベースラインおよび最初の10秒について一次回帰を行うことにより新規方法で得られた曲線から確認した。これらの2つの線が交差する点を凝固時間とした(1−bを参照)。
結果:表1から、新規方法で測定された血漿凝固時間は古典的(機械的および光学的)方法を使用して製造業者により確認された所望値範囲内であることがわかる。血清に関して信号は得られなかった。凝固系の各部分の凝固酵素は血清中で活性であるが、フィブリン凝塊は除去されていた。このことは、新規方法ではそれは凝塊形成であり、信号の発生に寄与する添加試薬における凝固酵素のある特定の効果ではないことを示している。
【0042】
表1
商業的に入手できる様々な血漿についての古典的(機械的および光学的)方法を使用して製造業者により確認された所望値と比べた新規方法(CECA)で得られたAPTT凝固時間。値は秒である。
【表1】
【0043】
実施例3 慣用の方法(濁り測定)および新規方法におけるトロンボプラスチン時間(PT)の測定
PTは製造業者の取扱説明書に従ってトロンボレルS(製造番号OUHP)および実施例2で挙げた試料を使用し、古典的な光学的方法の場合は光学的に測定する凝固装置、そして新規方法の場合は光度計により測定した。
BCT(濁り測定)において、50μlの異常血漿Iまたは異常血漿IIをそれぞれ測定室にピペットで移し、100μlのトロンボレルSを加えることにより凝固を開始した。
光度計において、試験を行うために、次の成分を混合した:
200μlの試料
100μlの受容体粒子
25μlの増感剤粒子
400μlのトロンボレルSを加えることにより凝固を開始した。
信号を所定の時間記録した。濁りの増加は慣用の方法で測定し、化学発光の増加は新規方法で測定したが、反応の経過は実質的に同一であることがわかった。
新規方法による反応の経過を実施例2に記載のようにして分析した。慣用の方法で予想される、製造業者の情報による凝固時間と比べた結果を表2に示す。実施例2と同様に、よく一致した。実施例2で挙げた理由により、試料として血清を使うと測定信号の変化はなかった。
【0044】
表2
商業的に入手できる様々な血漿についての古典的(機械的および光学的)方法を使用して製造業者により確認された所望値と比べた新規方法(CECA)で得られたPT凝固時間。値は秒である。
【表2】
【0045】
実施例4 全血中凝固の測定
試料の光学濃度が高すぎるため、慣用の光学測定器では全血の凝固時間を測定することができない。新規方法において、全血試料についてのAPTTの反応曲線を次のようにして記録した:
試薬を使用前に+37℃に加温した。試験を行うために、次の成分を混合した:
100μlの試料(クエン酸塩添加血液)
50μlの受容体粒子
12.5μlの増感剤粒子
100μlのパスロムチン作用液。
次に、混合物を+37℃で2分間インキュベートし、100μlの25mM塩化カルシウム溶液または生理的食塩水を加えることにより凝固を開始した。
これらの信号を所定の時間記録した。
結果を図2に示す。塩化カルシウムを加えない(その結果凝固反応が起こらない)で得られた反応曲線(B)を比較のために示す。この実施例により凝塊の形成により起こるが、例えば非特異的な副反応により誘発されない凝固に関する典型的な反応曲線は全血が試料として使用される時もまた得られることがわかる。
さらに、全血試料に適用可能なため、新規方法は濁りによる試料干渉に関して慣用の方法より抵抗性があることがわかる。
【0046】
新規方法が試料または試薬に存在する非特異的な濁りによる干渉に対して感受性が低いという事実はすでに実施例2からわかっている。この実施例において、内因性凝固系の接触相活性剤としてカオリン(パスロムチン)が使用されるAPTTの測定は光度計で行った。カオリンは銀薄片状のクレー層鉱物である。これらの薄片は高度の光散乱をひき起こすため、光学測定器でこの試薬を使うことはできない。このため、光学測定器用として特別に開発された別の接触相活性剤であるパスロムチンSLを光学測定器で使用した。パスロムチンSLは非特異的光散乱がまだ許容される二酸化ケイ素の微細粒子からなる。
【0047】
実施例5 新規方法におけるフィブリン溶解活性の測定
フィブリン溶解活性を測定するために、正常血漿(対照血漿N、製造番号ORKE)および全血試料を新規方法により、実施例2および4に記載のようにしてAPTTにおいて凝固した。凝固が起こると同時に、形成した凝塊の溶解もまたストレプトキナーゼ含有溶液(100IU/mlの生理的食塩水;Hoechst. Marion Rousselから入手)を加えることにより誘発した。ストレプトキナーゼはプラスミノーゲンと一緒に活性複合体に加わる連鎖球菌酵素である。この複合体は試料のプラスミノーゲン酵素を活性化してプラスミンを生成し、それはフィブリノーゲンおよびフィブリン凝塊をタンパク質分解的に溶解する。慣用の光学的方法において、これは測定信号の低下を継続的にもたらす(3−a)を参照)。
試薬を使用前に+37℃に加温した。試験を行うために、次の成分を混合した:
100μlの試料(対照血漿N、ORKE)
50μlの受容体粒子
12.5μlの増感剤粒子
100μlのパスロムチン作用液。
次に、混合物を+37℃で2分間インキュベートし、7.2μlのストレプトキナーゼ溶液(100IU/mlの生理的食塩水)、100μlの25mM塩化カルシウム溶液を加えることにより凝固を開始した。
信号を所定の時間記録した(3−bを参照)。
【0048】
初期の凝塊形成の結果として、測定された信号は実施例2〜4に記載のように初めは増加する。比較のために、ストレプトキナーゼを加えない相当する曲線を3−bに示し、“B”と表した。しかしながら、ストレプトキナーゼが存在すると、測定信号は突然増加し、その増加は凝塊の溶解が始まると、全血試料中よりも血漿中の方がより顕著である。この信号は時間が経つにつれてゆっくり低下した。これは以前に明らかにされていない効果である。ストレプトキナーゼは最初から存在し、凝塊形成が始まるまで反応の経過に変化がないので、この突然の信号増加はストレプトキナーゼ溶液中の副反応によりひき起こされたものではない。
【0049】
この実施例は新規方法を全く新しく診断に適用できることを示している。全血中でも生じる凝塊の溶解による信号の非常に強力で急速な増加のため、新規方法により非常に感度よく溶解の時間を測定することができる。従来の方法(3−aを参照)において、それは信号の減少だけであり、それはまた本発明の場合にも起こるし、観察された;しかしながら、慣用の方法ではこの信号減少はゆっくり起こるので、以前は溶解の開始時間を正確に測定することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は慣用の濁り測定法(1−a)および新規方法(1−b)における正常血漿(NP)および異常血漿(PP)のAPTT反応の経過を示す。それぞれのベースラインおよび凝塊形成ラインの交点を測定することによる凝固時間の確認を図示する。
【図2】新規方法による全血試料のAPTTの測定(A)を示す。比較のために、塩化カルシウムを加えない試験(B)を行った。
【図3】フィブリン凝塊を溶解するためにストレプトキナーゼを加えた時(A)の慣用の濁り測定法(3−a)および新規方法(3−b)における正常血漿のAPTT反応の経過を示す。比較のために、ストレプトキナーゼを加えない反応(B)の経過もまた示す。凝塊形成時間はそれぞれ矢印で示す。
Claims (19)
- 試料中の凝塊形成または凝塊溶解の結果として、一重項酸素を発生することができる光増感剤と、化学発光化合物またはケイ光化合物が、非特異的に形成または溶解する凝血塊の成分と結合することにより、空間的に近接するか、或いは空間的な近接が崩れ、それによって、空間的に近接した場合、一重項酸素による前記化学発光化合物またはケイ光化合物の活性化を可能にするが、一方、空間的な近接が崩れた場合、前記活性化を妨げ、その結果得られる発光を測定することからなる、止血障害の検出方法。
- 光増感剤と、化学発光化合物またはケイ光化合物の活性は、他の物質により増加または阻害され、それにより発光の変化が生じる請求項1記載の方法。
- 光増感剤と、化学発光化合物またはケイ光化合物が特定の相互作用により共有結合的に、および/または吸着的に懸濁性粒子と結合し、そして/またはこれらの粒子中に取り込まれ、またはそれら自体が懸濁性粒子もしくはその一部を構成する請求項1または2記載の方法。
- 懸濁性粒子は、染料結晶、金属ゾル、シリカ粒子、磁気粒子、油滴、脂質粒子、デキストラン、タンパク質凝集体、またはラテックス粒子である請求項3記載の方法。
- 粒子の製造後に粒子表面が変性され、そして/または粒子がタンパク質、炭水化物、親油性物質、バイオポリマー、有機ポリマーまたはその混合物からなる1種以上の共有結合的にまたは吸着的に結合した層またはシェルにより被覆される請求項3または4記載の方法。
- アセトン、ベンゾフェノン、9−チオキサントン、エオシン、9,10−ジブロモアントラセン、クロロフィル、バックミンスターフラーレン、メチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、フタロシアニンおよび/またはそれらの誘導体が光増感剤として使用される請求項1〜5の何れかの項の記載の方法。
- オレフィン、9−アルキリデンキサンタン、9−アルキリデン−N−アルキルアクリダン、エノール、エーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾールおよび/またはルシゲニンが化学発光化合物として使用される請求項1〜6の何れかの項記載の方法。
- 一重項酸素との反応の結果として光酸化(光漂白)に付されるケイ光化合物、または光活性前駆体として一重項酸素と反応して発蛍光団を与えるケイ光化合物が使用される請求項1〜6の何れかの項記載の方法。
- 血液凝固系およびフィブリン溶解系因子の遺伝的に決定された、そして/または後天性の欠失;血小板の遺伝的欠損;病気による、または投与された治療剤による止血障害;並びに/あるいは補体系の遺伝的および/または後天性欠損を検出するために使用される請求項1〜8の何れかの項記載の方法。
- フィブリン凝塊を形成するのに必要な時間が測定される請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- 凝塊形成は血漿中で、または少なくともフィブリノーゲンおよび/または血小板を含有する培地で凝固を誘発する1種以上の物質を加えることにより誘発される請求項1〜10の何れかの項記載の方法。
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンボプラスチン時間(PT)、プロテインC活性化時間(PCAT)、ラッセルマムシ毒液時間(RVVT)またはトロンビン時間が測定される請求項1〜11の何れかの項記載の方法。
- フィブリン溶解系因子を測定するために、測定対象の試料は、凝塊形成に必要な因子で置換されうる請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- 自然溶解が誘発される、あるいはXIIa因子、tPA、uPAまたはストレプトキナーゼから選択される活性化剤を加えた後、またはプラスミンを加えた直後に溶解が誘発される請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- フィブリン凝塊の溶解が始まる時間は、信号の増加により測定される請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- 血小板の活性はそれらの凝集力により測定される請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- 血小板の凝集は、アデノシン二リン酸、コラーゲン、トロンビン、セロトニンまたはエピネフリンから選択される物質、イオノホア、補体、あるいはストレプトリシンにより誘発されうる請求項1〜9の何れかの項記載の方法。
- 薬剤の濃度または活性が測定される請求項1〜17の何れかの項記載の方法。
- 治療的薬剤レベルで監視するのに使用される請求項18記載の方法。
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