JP2004142323A - インキ追従体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ペン体仕様や、筆記流量、筆記速度によらず安定した追従性を有し、筆記途中でのインキ追従体不足で起因するインキの逆流や、ペン体に加えられた衝撃によってもインキ追従体が飛散せず、また、高温下でのペン体保管においてもインキ収容管からの流出が発生せず、且つ安定した筆記流量が得られるインキ追従体を提供することを目的とする。また、当然のこととして、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止すること(揮発防止性)、上向き筆記時にインキの漏出がないインキ追従体を提供する。
【解決手段】不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、弾性応答が優位の粘弾性を示すことを特徴とするインキ追従体。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筆記具用インキ収容管内の尾端部に具備するインキ追従体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、水性ボールペンのインキ粘度は、類似の形態をもつ油性ボールペンの粘度が3Pa・sec〜20Pa・secであるのに対して、50mPa・sec〜3Pa・secと低いため、ペンを上向き又は横向きに放置した場合には、インキが漏出してしまうものとなる。また、軽度な衝撃でもインキが飛散し、手や服を汚してしまう恐れがあるため、これを防止すべくインキ収容管内の尾端部にインキ追従体が具備されている。
【0003】
このインキ追従体としては、これまでに、粘度調整剤にシリカ、金属石鹸、粘土増粘剤などを配合し、増粘させたインキ追従体等が数多く知られている。
【0004】
しかしながら、これらの粘土調整剤を配合したインキ追従体は、粘性応答優位となるため、特にインキ消費量の多い、太字などの水性ボールペンなどで使用すると、筆記途中でインキ追従難による筆記描線カスレを誘発させたり、インキ消費時にインキ追従体の一部がインキ収容管内壁に付着残留し、結局筆記途中でインキ追従体不足に陥り、インキが逆流したり、また、インキ追従体不足の影響により筆記流量が不安定になるなどの課題がある。また、太字以外の仕様であっても、筆記速度を高めたりすると、同様の課題が生じることがある。
このような課題は、インキ消費速度よりもインキ追従体の追従速度が遅いことが起因していると考えられる。
また、これらを改善するために、粘度値を低めに設計されたインキ追従体については、ペン体に衝撃を加えた際に追従体及びインキが飛散したり、また、ペン体を高温下でペン先を上向きにして保存すると、インキ追従体がインキ収容管から流出してしまうなどの課題を生じさせてしまうものである。
【0005】
更に、常温液状炭化水素とスチレン系熱可塑性エラストマーを配合したインキキ追従体(文献上、逆流防止体と称されている)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特許第3016749号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【0007】
しかしながら、この特許文献1に記載されるインキ追従体(逆流防止体)では、用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは永久歪み量と熱変形量、及び経時的な弾性の変異が比較的高いため、インキ追従体としての経時安定性も乏しく、特に30〜50℃などの加温状況でペン体を放置した後に筆記すると、インキ追従体の粘弾性が変化するため、インキ消費量が極端に下がるなどの不具合が生じてしまうなどの課題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、ペン体仕様や、筆記流量、筆記速度によらず安定した追従性を有し、筆記途中でのインキ追従体不足で起因するインキの逆流や、ペン体に加えられた衝撃によってもインキ追従体が飛散せず、また、高温下でのペン体保管においてもインキ収容管からの流出が発生せず、且つ安定した筆記流量が得られるインキ追従体を提供することを目的とする。また、当然のこととして、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止すること(揮発防止性)、上向き筆記時にインキの漏出がないインキ追従体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題等について鋭意研究の結果、下記▲1▼〜▲3▼に詳述する研究成果が得られ、これに基づいて上記目的のインキ追従体を得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
▲1▼ すなわち、従来のインキ追従体では、インキの消費に伴うインキ追従体の追従不良が発生する原因としては、上述のとおり、インキ消費速度よりもインキ追従体の追従速度が遅いことが起因しているものと推察される。この追従速度は、インキ追従体の粘度に大きく依存しており、粘度値が高いインキ追従体ほど追従速度が遅く、インキ消費に伴う弊害が大きいものとなる。また、この対策として、粘度を低めに設計したインキ追従体については、ペン体に衝撃を加えた際に追従体及びインキが飛散したり、ペン体を高温下でペン先を上向きにして保存すると、インキ追従体がインキ収容管から流出してしまうなどの問題を生じさせてしまう。また、粘性優位に調整されたインキ追従体は、特にインキ消費量の多い(太字などの)水性ボールペンなどで使用すると、筆記途中でインキ追従難による筆記描線カスレを誘発させたり、インキ消費時にインキ追従体の一部がインキ収容管内壁に付着残留し、結局筆記途中でインキ追従体不足に陥り、インキが逆流したり、また、インキ追従体不足の影響により筆記流量が不安定になるなどの問題がある。そのため、追従性能と加衝撃時性能の両者をインキ追従体の物性により調整するのは非常に困難であった。
また、追従性、耐衝撃性など初期性能を満足させるインキ追従体が調整できても、この性能を持続させられなければ、消費者の使用状況により不具合が生じる場合がある。例えば、購入直後に使用して適正な流出が確保できても、ペン体をしばらく放置(例えば、夏期に1〜2ケ月間不使用)した後に再筆記すると、追従性が大きく低下し、筆記に支障をきたしてしまう。インキ追従体を調整する上で従来紹介されていた、シリカ、粘土増粘剤、金属石けん、スチレン系熱可塑性エラストマー増粘剤を使用すると、このような性能の変異が多数見受けられているのが現状である。
【0010】
▲2▼ また、インキ追従体は、その大体が不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤(基油)に粘弾性付与剤を配合し、増粘させた所謂グリース状を呈するものである。
一般的に、このグリース単体の品質としては、グリース表面に基油が析出するものでは使用する製品に悪影響を及ぼすことが多く、従来のグリース製品は、できるだけ油分離を抑える種々の試みがなされてきている。インキ追従体に関しても上記と同様で、油の析出が多いインキ追従体を水性ボールペンに用いると、インキ収容管内で分離した基油成分がインキ側へ移行し、結果として外観が低下し、商品価値を低下させる恐れがある。
更に、ペン先を上向きに放置した水性ボールペンにおいては、分離した基油成分がインキより軽いことが多いため、この基油成分がチップ内に溜まると筆記不良を起こすといった課題も生じるものである。
しかし、本発明者らは、実際種々のインキ追従体を調査・検討すると、弾性応答が優位の追従体に関しては、リフィール中で基油成分がインキ側へ移行しない程度に油分離しているものについては、ペン品質を向上させていることを見い出したのである。
このインキ追従体は、インキ消費に伴うインキ追従体の追従応答性が高く、流量が多い太字仕様にも適当であり、また、クリアドレン性が高いなどの特徴を有する。この理由としては、適度に分離した基油成分は、比較的粘度が低いため、インキ消費時(インキ追従体移動時)のインキ収容管内壁とインキ追従体の摩擦抵抗を下げる働きがあり、追従応答性が向上しているためと考えられる。
このインキ追従体が粘性優位であると、前述のとおり、インキの流出に伴うインキ追従体の追随に時間差が生じることとなる。そのため、比較的粘度値が高い粘性優位のインキ追従体を使用すると、通常時の2倍速以上の速書筆記においてカスレが発生してしまうこととなる。
また、追従の応答性を高めるために、インキ追従体を低粘度に調整したものは、描線のカスレは発生しないものの、ペン体に衝撃を加えた際、インキ追従体が飛散し易くなり、インキが収容管後端部から吹き出してしまうこととなる。更に、インキ消費時に収容管内壁にインキ追従体が付着残留し、次第にインキ追従体が減量し、最終的には、インキ追従体不足によるインキ逆流が発生してしまうこととなる。
【0011】
▲3▼ 一方、弾性優位のインキ追従体は、粘性優位のものと比べるとインキ収容管内の付着残留がないものの、粘弾性を、付与する増粘剤の種類や配合によっては充分な追従性能を発揮しない場合が多い。
しかしながら、弾性優位のインキ追従体で、僅かに基油成分が析出しているものは、インキ収容管−インキ追従体間の摩擦抵抗を下げるため、インキ追従体の配合によらず、より一層追従性能が高まるものとなる。特に、流量が多い比較的低粘度のインキや太字タイプの水性ボールペン、または太字仕様でなくても2倍速以上の筆記において、描線がカスレることがなく、追従応答性の効果が非常に高いことが確認されている。また、本来、弾性優位のインキ追従体の特徴であるインキの掻き取り性、耐落下衝撃性も兼ね備えているため、品質バランスの優れたインキ追従体を得ることができることとなる。
【0012】
従って、インキ追従体を弾性優位に調整することで、インキ消費量の多い(太字などの)仕様などでも、インキ追従難やインキ追従体の一部がインキ収容管内壁に付着残留することを軽減でき、筆記流量も安定することとなり、また、粘弾性付与剤に非スチレン系熱可塑性エラストマー、例えば、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどを使用することで、追従性などの経時的な変具は改善できることを知見することにより、本発明を完成するに至ったのである。
よって、本発明は、次の(1)〜(4)の各構成にすることにより、上記目的のインキ追従体が得られることなる。
(1) 不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、弾性応答が優位の粘弾性を示すことを特徴とするインキ追従体。
(2) 前記非スチレン系熱可塑性エラストマーが、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載のインキ追従体。
(3) 前記インキ追従体のJIS K 2220−5.7−1993に準拠した離油度試験(60℃、24h)の値が0.2%〜15%である上記(1)又は(2)記載のインキ追従体。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明のインキ追従体は、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、弾性応答が優位の粘弾性を示すことを特徴とするものである。
【0014】
本発明におけるインキ追従体は、上述のごとく、(a)不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有すること、かつ、(b)弾性応答が優位の粘弾性を示すことが必要であり、以下に上記(a)及び(b)の構成ごとに詳述する。
本発明のインキ追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インキ追従体の基油として用いるものであり、例えば、鉱物油、ポリブテン、流動パラフィンなどを用いることができる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
また、用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS−100、PW−32、PW−90、NR−68、AH−58(出光興産社製)などが挙げられる。
これら不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができ、その使用量は、インキ追従体の弾性応答が優位の粘弾性を示す量であれば良く、インキ追従体全量に対して、70〜99.8重量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、85〜99.5重量%、更に好ましくは、87〜99.5%とすることが望ましい。
【0015】
本発明で用いる上記不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーは、粘弾性付与剤として用いられるものであり、例えば、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上も混合物)が挙げられる。
これらの非スチレン系熱可塑性エラストマーは、従来のスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることによる課題、すなわち、インキ追従体としての経時安定性が乏しい点、特に30〜50℃などの加温状況でペン体を放置した後に筆記しても、インキ追従体の粘弾性が変化することによる、インキ消費量が極端に下がることなどの不具合等を解消するために用いるものである。
【0016】
本発明のインキ追従体に使用する塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)は、ハードセグメントにPVC、NBR等を使用し、ソフトセグメントにPVCを使用した熱可塑性エラストマー(TPE)であり、例えば、市販品のサンプレーン−EF50AB、同−FG50EA、同−FG60FA、同−FE70K、サンフロスト−KB85NA、同−KD60EA、同−KD90EA、スミフレックス−K530DA、同−K761B、同−N270A、同−N550C(アプコ株式会社製)、シンエツボスミール−SE−788、同−SE−793、同−SR−884、同−SR−885、同−SR−886、同−UE−701、同−UE−765、同−UE−775、同−UE−785、同−UE−700、同−UE−795(信越ポリマー株式会社製)、ゼオンエラスター−ES−6930、同−EP−6410(ゼオン化成株式会社製)、エラストダル−E8300、同−E8312、同−M9102、同−M9103(昭和化成工業株式会社製)、デンカLCS−Z−1050、同−Z−1060、同−Z−1070、同−Z−6050、同−Z−6060、同−Z−6070、同−Z−4070、同−Z−3070、同−Z−4570、同−Z−3570、同−Z−4570(電気化学工業株式会社製)などを用いることができる。
【0017】
本発明のインキ追従体に使用するオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、ハードセグメントにポリプロピレンンやポリエチレンなどのポリオレフィンを用い、ソフトセグメントにEPDMなどを使用したTPEであり、例えば、市販品のミラストマー−6030N、同−803N、同−9070N、同−M4800N、同−S500、同−H0500(三井化学株式会社製)、エンゲージ−8842、同−8130、同−8180、同−8150、同−8100、同−8200、同−8407、同−8452、同−8411、同−8003、同−8585、同−8401、同−8440、同−8480、同−8450、同−8402、同−8540、同−8445、同−8403(デュポン・ダウエラストマーズ社製)、サントプレーン−101−55、同−101−64、同−101−73、同−101−80、同−101−87、同−103−40、同−103−50、同−111−45、同−111−55、同−111−64、同−111−73、同−111−80、同−111−87(AESジャパン株式会社製)、サーモラン−2920、同−2940、同−3550、同−3650、同−3601、同−3801、同−3980、同−5850(三菱化学株式会社製)などを用いることができる。
【0018】
本発明のインキ追従体に使用するポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)は、ナイロンをハードセグメントとし、これにポリエステル又はポリオール(PTMG又はPPG)をソフトセグメントとしたブロックコポリマー等であり、例えば、市販品のUBE−PEA−1201、同−1200、同−1200J4、同−1200J2、同−1201S(宇部興産株式会社製)、グリロンELX−23NZ、同−2112、同−23、グリルアミドELY−2742、同−2702、同−20NZ、同−60、同−2475、同−2694(EMS CHEMICAL社製)、ダイアミドPAE−E40、同−E47、同−E62、同−L2121、同−L1901(テグサ・ヒュルス社製)、ノバミッドPAE−1307R、同−1407R、同−2207R、同−2407R(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)などを用いることができる。
【0019】
本発明のインキ追従体に使用するポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)は、ハードセグメントに高融点で高結晶の芳香族ポリエステル、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を、ソフトセグメントにはガラス転移温度が低い(例えば、−70℃以下の)非晶性ポリエーテル、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を使用したマルチブロックポリマーや、ソフトセグメントに脂肪族ポリエステルを使用したタイプ等のTPEであり、例えば、市販品のペルプレン−P−30B、同−P−40B、同−P−40H、同−P−55B、同−P−70B、同−p−90B、同−P−150B、同−P−280B、同−E−450B、同−P−150M、同−S−1001、同−S−2001、同−S−3001、同−S−6001、同−S−9001(東洋紡績株式会社製)、ハイトレル−G3548、同−4047、同−4767、同−5557、同−6347、同−7247、同−3048、同−2571、同−4777、同−6377、同−7277、同−474B、同−4275JB、同−5557M、同−7247M、同−4057(東レ・デュポン株式会社製)などを用いることができる。
【0020】
本発明のインキ追従体に使用するポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)は、分子内に部分架橋を有する不完全可塑タイプと、完全に線状の高分子体で完全熱可塑性タイプなどが挙げられ、ジイソシアネートと短鎖グリコールからなるポリマー鎖がハードセグメントとなり、ジイソシアネートとポリオールからなるポリマー鎖がソフトセグメントとなり、ジイソシアネート、長・短鎖ポリオールの種類、量によって多様なポリマーができ、カプロラクトン型、アジピン酸型、ポリテトラメチレングリコール型〔PTMG型(又はエーテル型)〕などを用いることができる。例えば、市販品のエステン−58133、同−58440、同−58277、同−58315、同−5715、同−58202、同−54600、同−54630(協和発酵工業株式会社製)、クラミロンU−1180、同−1190、同−1195、同−3180、同−3190、同−3195、同−6170、同−6180、同−6190、同−9180、同−9190、同−9195、同−2780、同−2790、同−2795、同−6780、同−6795(株式会社クラレ製)、レザミンP−1045、同−1078、同−1098、同−7045、同−7070、同−2045、同−2060、同−4060、同−4090、同−4200、同−4585、同−4590、同−8765、同−880、同−890(大日精化工業株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
これら粘弾性付与剤となる非スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種または2種以上を合わせて使用することができ、その使用量は、インキ追従体の弾性応答が優位の粘弾性を示す量であれば良く、インキ追従体全量に対して、0.2〜30%、好ましくは、0.5〜15%、更に好ましくは、0.5〜10%とすることが望ましい。
【0022】
本発明では、上記不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有した上で、(b)弾性応答が優位の粘弾性を示すことが必要である。通常、粘弾性の強さの指標としては、tanδを用いることができる。ここで、tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、この値が大きいこと(tanδ>1)は、流動性が高いこと(あるいは粘性優位)であり、小さいとこと(tanδ<1)は、固体状(あるいは粘性優位)であることを示す。
従って、本発明のインキ追従体では、弾性応答が優位の粘弾性を示すためには、tanδの値が1〜63rad/secの全周波数領域において、0.1〜2.0、好ましくは、0.3〜1.0、更に好ましくは、0.5〜1.0とすることが望ましい。また、各周波数で測定したtanδ値の平均値は、1.0以下とすることが好ましい。
本発明において、上記全ての周波数領域で、tanδの値が2.0を越えて上回ると、インキ消費に伴うインキ追従体のインキ収容管内での追従応答性が劣り、また、ペン体に衝撃を加えた際に、インキ追従体が飛散しやすくなる等の問題が発生してしまうこととなる。逆に、上記全ての周波数領域で、tanδの値が0.1未満であると、インキ追従体の弾性が強くなりすぎるため、インキ収容管への充填が困難となり、実用性がなくなることとなる。
また、各周波数で測定したtanδ値の平均値を1.0以下とすることにより、更に良好な弾性応答が優位の粘弾性を示すこととなる。
【0023】
本発明では、上記(a)不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、かつ、(b)弾性応答が優位の粘弾性を示すことにより、本発明の効果を発揮することができるが、更に好ましくは、この弾性優位のインキ追従体で、僅かに基油成分が析出している構成となるものが望ましい。
本発明において、更に、僅かに基油成分が析出しているインキ追従体とすることにより、インキ収容管−インキ追従体間の摩擦抵抗を更に下げるため、より一層追従性能が高まるものとなり、特に、流量が多い比較的低粘度のインキや太字タイプの水性ボールペン、または太字仕様でなくても2倍速以上の筆記において、描線が更にカスレることがなく、追従応答性の効果が非常に高くすることができものとなる。更に、本来、弾性優位のインキ追従体の特徴であるインキの掻き取り性、耐落下衝撃性も兼ね備えているため、品質バランスの更に優れたインキ追従体を得ることができることとなる。
【0024】
この基油成分の析出性は、離油度試験、具体的には、JIS K 2220−5.7−1993に準拠した離油度試験(60℃、24h)を行うことにより比較することができる。本発明において、僅かに基油成分が析出している構成とするためには、上記離油度試験の値を、好ましくは、0.2%〜15%の範囲、更に好ましくは、1.0〜10%とすることが望ましい。
なお、JIS K 2220−5.7−1993に規定される離油度試験方法は、JIS規格で定められた金属製の金網円錐ろ過器に測定試料を満たし、100℃の環境下で24h放置させ、金網円錐ろ過器から析出した油量を測定するものである。
【0025】
本発明におけるインキ追従体も全般的に油分離性(離油度)は、上記規定の方法を採用することが可能となるものであるが、下記理由により測定条件を一部変更したほうが好ましいものとなる。
すなわち、弾性を付与できる粘弾性調整剤の大半は、熱可塑性エラストマーなどのポリマーであり、これを用いてインキ追従体を調整すると、100℃前後で流動性を呈し、大幅に粘度低下が発現するものが多い。そのため、インキ追従体の離油度を100℃下で放置すると、ボールペンとしての性能が高いインキ追従体までも、前述のとおり大幅な低粘化が発現し、油成分以外の成分までもが金網円錐ろ過器外へ流出してしまうため、測定自体の信頼性が大きく低下してしまうこととなる。従って、実際のボールペン使用環境を考慮しても100℃でペン体を放置することはほとんどないため、油の析出性を100℃で測定することは現実的でないものとなる。
一方、離油度の測定条件を60℃−24hに設定すると、弾性優位のインキ追従体に関しては、油分離測定値とペン体性能に大きな相関が認められた。この温度条件で、特定範囲内の油分離性を発現するものに関しては、インキ掻き取り性、耐落下衝撃性が共に良好であることが確認された。ペン体の経時促進テストにおいても、50〜60℃保存下での評価が採用されることが多いため、経時的なペン性能を評価するという観点からも60℃の測定が好ましいものとなる。
従って、本発明の離油度試験は、JIS K 2220−5.7−1993に規定される離油度試験の100℃−24hを60℃−24hとして行うものである。
【0026】
本発明において、離油度試験(60℃、24h)における油分離度が0.2%未満となると、インキ収容管−インキ追従体間の摩擦抵抗がさほど低下しないため、ペン体での充分な追従性能が発現されないこととなる。また、油分離度が15.0%を越えると、弾性優位のインキ追従体であっても、基油成分がインキ収容管中のインキ側へ移行し、外観、筆記不良に生じることがあり、好ましくないものとなる。
【0027】
本発明において、上記不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有したものに、更に、その他の成分として、必要に応じて、増粘助剤(シリカ、粘土増粘剤、金属石鹸など)、界面活性剤、酸化防止剤などを含有することができる。ただし、増粘助剤、界面活性剤、酸化防止剤など中にはtanδの値を上げてしまうものもあり、これらを必要以上に含有すると増粘剤を所定量含有してもtanδ2.0を上回る可能性があるので、これらを含有する際には注意が必要である。
また、本発明のインキ追従体の製法は、必要に応じて、加熱撹拌、加熱混練し、粘弾付与剤を基油に溶解することができる。
また、製造されたインキ追従体を、更にロールミル、ニーダ−などの分散機で再混練したり、加熱することで、粘弾性をコントロ−ルすることも可能である。より具体的に説明すると、製造したインキ追従体のtanδ値が予想よりも低くなったばあいは、例えば、ロールミル、ニーダ−などの分散機で再混練し、増粘構造を崩すことでtanδ値をたかめることができ、逆にtanδ値が予想より高くなった場合は、例えば、増粘剤(ポリマー)のガラス転移点以上に再加熱することによりポリマーの増粘機構が向上し、増粘構造が強固になり、tanδを低めることができる。
【0028】
本発明のインキ追従体は、適度に基油成分を析出させることで、追従性などのペン性能を更に高めている。基油成分の析出の度合い(油分離度)をコントロールするには、以下の調整方法▲1▼〜▲6▼を採用することなどにより調整することができる。これらの調製方法▲1▼〜▲6▼は、各単独、または、適宜、2種以上組み合わせることも可能である。
油分離度を高めるためには、▲1▼基油をやや過剰に配合し、増粘剤の濃度を低めに調整する、▲2▼ポリマー系増粘剤を使用した場合は、できるるだけ低温での加熱撹拌を行う、▲3▼ロールミル、ニーダーなどの撹拌、混練の能力を落とし、増粘剤の分散を若干不均一化させる、▲4▼製造したインキ追従体を比較的高温(30〜60℃が好ましい)に数日間放置させる、などの各方法が挙げられる。
また、油分離度を低めるためには、▲5▼増粘剤の配合量を高め、増粘構造を強化させ、基油の保持力を高める、▲6▼ロールミル、ニーダーなどの撹拌、混練能力を上げ、増粘剤の分散を均一化する、などの各方法が挙げられる。
【0029】
本発明のインキ追従体は、水性ボールペン、油性ボールペン等の筆記具用インキ収容管内の尾端部に具備することにより、使用に供されるものとなる。
このように構成される本発明のインキ追従体では、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、弾性応答が優位の粘弾性を示すことにより、ペン体仕様や、筆記流量、筆記速度によらず安定した追従性を有し、筆記途中でのインキ追従体不足で起因するインキの逆流や、ペン体に加えられた衝撃によってもインキ追従体が飛散せず、また、高温下でのペン体保管においてもインキ収容管からの流出が発生せず、且つ安定した筆記流量が得られるインキ追従体を提供することを目的とする。また、当然のこととして、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止すること(揮発防止性)、上向き筆記時にインキの漏出がないものとなる。
【0030】
【実施例】
次に、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって何等限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜9及び比較例1〜6〕
各実施例及び比較例に用いた水性ボールペン用のインキ(インキ▲1▼〜▲3▼、全量各100重量%)は、次に示す配合組成のものを調製した。
〔インキ▲1▼の調製〕
染料:ウオーターブラックR455             7.0重量%
(オリエント化学工業社製)
染料:ウオーターイエロー6C               1.0重量%
(オリエント化学工業社製)
液体媒体:プロピレングリコール             20.0重量%
粘度調整剤:キサンタンガム〔KELZAN HP〕     0.2重量%
(三晶社製)
界面活性剤:オレイン酸カリウム              0.5重量%
防腐剤:ナトリウムオマジン                0.1重量%
防錆剤:ベンズトリアゾール                0.1重量%
イオン交換水:                      残 部
以上の配合物を撹拌後ろ過し、水性ボールペン用黒インキを得た。
【0032】
〔インキ▲2▼の調製〕
顔料:カーボンブラック〔プリンテックス25〕       7.0重量%
(テグサ社製)
分散剤:ポリビニルピロリドン〔PVP−K30〕      3.5重量%
(GAF社製)
液体媒体:グリセリン                  10.0重量%
粘度調整剤:架橋型ポリアクリル酸〔ハイビスワコー105〕 0.4重量%
(和光純薬工業社製)
界面活性剤:リシノール酸カリウム             0.5重量%
pH調整剤:トリエタノールアミン             1.0重量%
防腐剤:1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン       0.1重量%
防錆剤:ベンゾトリアゾール                0.1重量%
イノン交換水                       残 部
以上の配合物を撹拌後ろ過し、水性ボールペン用黒インキを得た。
【0033】
〔インキ▲3▼の調製〕
顔料:フタロシアニンブルー                1.5重量%
〔Chromofine Blue 4965,大日精化工業社製〕
顔料:酸化チタン                    20.0重量%
〔TITONE R−11P,堺化学工業社製〕
分散剤:スチレンマレイン酸樹脂アンモニウム塩       2.5重量%
液体媒体:エチレングリコール               5.0重量%
粘度調整剤:キサンタンガム〔KELZAN HP〕     0.2重量%
(三晶社製)
界面活性剤:カリセッケン                 0.5重量%
pH調整剤:アミノメチルプロパノール           0.3重量%
防腐剤:ナトリウムオマジン                0.1重量%
防錆剤:サポニン                     0.1重量%
イオン交換水:                      残 部
以上の配合物を撹拌後ろ過し、水性ボールペン用青インキを得た。
【0034】
各実施例及び比較例に用いたインキ追従体は、下記表1及び表2に示す組成、及び下記A〜Dの調整方法で調製した。
〔インキ追従体調整方法A〜D〕
(インキ追従体調整方法:A法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、150℃〜180℃でミキサーにて高速で約120分間撹拌し、室温まで冷却後、ロール処理を1回行い、インキ追従体を得た。
(インキ追従体調整方法:B法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、160℃〜170℃でミキサーにて高速で約180分間撹拌し、室温まで冷却後、ニーダ−で60分間混練を行い、インキ追従体を得た。
(インキ追従体調整方法:C法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、170℃〜190℃でミキサーにて低速で約120分間撹拌し、室温まで冷却し、インキ追従体を得た。
(インキ追従体調整方法:D法)
基油と増粘剤(及び添加剤)を調合し、常温でミキサーにて高速で約120分間撹拌し、その後ロール処理を1回行い、真空脱泡し、インキ追従体を得た。
【0035】
上記各方法で得たインキ追従体の油分離度及びtanδを下記方法により測定した。
次いで、この各特性のインキ追従体と、上記インキ▲1▼〜▲3▼を、下記表1及び表2に示す各内容で、ボール径1.0mmの水性ボールペン体の三菱鉛筆製インキ収容管(リフィールチューブ)インキ1.0g、追従体0.1gを夫々充填し、各ペン体について下記試験方法により、▲1▼速書筆記追従性の評価、▲2▼落下衝撃によるインキ追従体の飛散性の評価、▲3▼インキ消費時におけるインキ追従体のチュ−プへの付着性の評価、▲4▼筆記流量安定性の評価及び▲5▼インキ追従体の逆転及び逆流性▲6▼ペン体加温時経時品のインキ流出安定性の評価の各項目の評価試験を行った。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0036】
〔油分離度の測定方法(JIS K 2220−5.7−1993に準拠)〕
測定装置は、下記構成のものを用いた。
金網円錐濾過器:円錐部は、JIS Z 8801−1993に規定する呼び寸法250μmのニッケル金網、上部の外周に直径約0.8mmのニッケル線をろう付けし、同径のニッケル線吊り手をつけたもの。
ビーカー:JIS K 2039−1993に規定するもの。
ふた:厚さ約1mmの黄銅製で、そのほぼ中央の内面に、直径約1.5mmの黄銅製のかぎをロウ付けしたもの。
ガスケット:直径がふたの内径と同寸法、厚さ約1.5mmの合成ゴム製で、中央部に約20mmの孔をあけたもの。
測定環境:測定温度:60±0.5℃
放置時間:24h
測定方法:金網円錐ろ過器に試料約10gを満たし、蓋のかぎにつるした。これをビーカー中に納め、恒温槽中に規定時間入れた。ビーカーを恒温槽から取り出し、室温まで放冷後、円錐に付着している油をビーカーに移し、ビーカー中の分離油の質量を下記算出式により求めた。
離油度算出式:A=C/B×100
〔式中A:離油度(%)、B:試料の質量(g)、C:分離油の質量(g)〕
【0037】
〔tanδ値の測定方法〕
測定装置:ダイナミックスぺクトロメーターRDS−II
(レオメトリック・サイエンティフィツク社製)
測定条件(周波数依存性)
ジオメトリー:パラレルプレート50mmφ動的測定
SWEEP TYPE:FREQUENCY SWEEP
周波数範囲:0.06〜650rad/sec
測定間隔:5points/decade
ひずみ:100%
測定温度:25℃
雰囲気:窒素気流中
【0038】
〔▲1▼速書筆記追従性の評価方法〕
各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、フリーハンドで2倍速と通常速度でそれぞれ筆記し、各筆記描線を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
○:通常速度、2倍速の筆記とも全くカスレがなく、スムースに安定して筆記できる。
○´:2倍速筆記で僅かな線切れが起きる。通常速度での筆記は可能。
△:2倍速筆記で明らかな線切れが起きる。通常速度での筆記は可能。
×:通常に筆記してもインキが追従せず線切れが起こる。
【0039】
〔▲2▼落下衝撃によるインキ追従体の飛散性の評価方法〕
各ペン体をペン先を上向きにし、1.5m上空から厚さ2cmの杉板上へ1回落下させ、落下後のペン体を目視で観察し、インキ追従体のインキ収容管外への飛散の度合いを下記の評価基準で評価した。
評価基準:
○:インキ追従体の飛散がなく、インキとインキ追従体の界面も鮮明である。
△:インキ追従体の飛散はみられないが、インキとインキ追従体の界面がペン体落下前と比べてやや乱れている。
×:明らかにインキ追従体の飛散が認められ、インキがチューブ外へ逆流している。
【0040】
〔▲3▼インキ消費時におけるインキ追従体のチュ−プへの付着性の評価方法〕
各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、筆記試験機にて下記条件で終筆まで「らせん筆記」し、筆記後のリフィールチューブを目視で観察し、インキ追従体のインキ追従体のチューブ内壁への付着性を下記の評価基準で評価した。
評価基準:
○:インキ追従体のチューブ内壁への付着がほとんど認められない。
○´:インキ追従体のチューブ内壁への付着がわずかにみられる。
△:インキ追従体のチューブ内壁への付着が明らかに認められる。
×:インキ追従体がチューブ内壁へ全て付着してしまい、筆記途中でインキ追従体不足に陥った。
【0041】
〔▲4▼インキ流出安定性の評価方法〕
各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、筆記試験機にて下記条件で終筆まで「らせん筆記」し、100mごとの筆記流出の推移と描線状態を下記の評価基準で評価した。
筆記条件:筆記速度 4.5m/分、筆記角度 60°、筆記荷重 100g
評価基準:
○:流量が安定しており、終筆までカスレや濃度ムラが発生しない。
○´:流量が僅かにバラツいているが、終筆までカスレや濃度ムラは発生しない。
△:流量に多少乱れが生じ、わずかにカスレや濃度ムラがみられる。
×:流量に大きなバラツキがみられ、明らかなカスレや濃度ムラが認められる。
【0042】
〔▲5▼インキ追従体の逆転及び逆流性の評価方法〕
各ペン体を50℃、湿度65%の条件下でペン先(キャップ側)を上向きにして一ヶ月間放置し、取り出し後リフィールを目視で観察し、インキ追従体中の基油成分のインキ中への混入(逆転と称す)、及びリフィール外への油の漏れだしの有無を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:油のインキ中への逆転、あるいはリフィール外への漏れだしが認められない。
×:油のインキ中への逆転、あるいはリフィール外への漏れだしが認められる。
【0043】
〔▲6▼ペン体加温経時品のインキ流出安定性〕
各ペン体を50℃、湿度65%の条件でペン先(キャップ側)を横向きにして一ケ月間放置し、取り出し後、各ペン体をISO規格に準拠した筆記用紙に、筆記試験機にて下記条件で終筆まで「らせん筆記」し、100mごとの筆記流量
の推移と描線状態を初期状態(評価▲4▼)との比較で評価した。
評価基準:
○:インキの流出性、濃度ムラは、初期状態とほとんど変化
△:初期状態に比べて、インキの流出性、濃度ムラが少し認められ、少し筆記性能が低下している。
×:初期状態に比べて、インキの流出性、濃度ムラに大きな変化があり、明らかに筆記性能が低下している。
【0044】
【表1】
Figure 2004142323
【0045】
【表2】
Figure 2004142323
【0046】
上記表1及び表2中の*1〜*14は、下記のものを用いた。
*1:ポリブテン 30N(日本油脂社製)
*2:ダイアナプロセスオイルPW−380(出光興産社)
*3:サントプレーンEF50EA(アプコ社製)
*4:ミラストマー803N(三井化学社製)
*5:エンゲージ8842(デュポン・ダウエラストマー社製)
*6:UBE−PEA−1201S(宇部興産社製)
*7:ペルプレン−P−30B(東洋紡績社製)
*8:ペルプレン−P−280B(東洋紡績社製)
*9:クラミロンU−1195(クラレ社製)
*10:エフトップEF−801(三菱マテリアル社製)
*11:セプトン2063(クラレ社製)
*12:タフテックH1141(旭化成工業社製)
*13:AEROSIL−974D(日本アエロジル社製)
*14:Benton34(ウイルバーエリス社製)
【0047】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜9は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、速書筆記追従性に優れ、落下衝撃によるインキ追従体の飛散及びインキ消費時におけるインキ追従体のチュ−プへの付着もなく、インキ流出安定性に優れ、しかも、インキ追従体の逆転及び逆流もなく、更に、ペン体加温においても経時的にインキの流出が安定であり、全ての性能を満足できることが判明した。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、ペン体仕様や、筆記流量、筆記速度によらず安定した追従性を有し、筆記途中でのインキ追従体不足で起因するインキの逆流や、ペン体に加えられた衝撃によってもインキ追従体が飛散せず、また、高温下でのペン体保管においてもインキ収容管からの流出が発生せず、且つ安定した筆記流量が得られるインキ追従体を提供することを目的とする。また、当然のこととして、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止すること(揮発防止性)、上向き筆記時にインキの漏出がないインキ追従体が提供される。

Claims (3)

  1. 不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、該有機溶剤に可溶若しくは膨潤する非スチレン系熱可塑性エラストマーとを含有し、弾性応答が優位の粘弾性を示すことを特徴とするインキ追従体。
  2. 前記非スチレン系熱可塑性エラストマーが、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のインキ追従体。
  3. 前記インキ追従体のJIS K 2220−5.7−1993に準拠した離油度試験(60℃、24h)の値が0.2%〜15%である請求項1又は2記載のインキ追従体。
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