JP5356919B2 - 水性ボールペンインキ組成物及び水性ボールペン - Google Patents
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本発明の水性ボールペンインキ組成物は、着色剤として水溶性染料を選択し、かつ後述の窒化珪素粒子を成分として配合した以外は、通常のボールペン用水性インキと同様の成分で構成される。具体的には水などの溶媒中に、着色剤を必須成分として配合し、必要に応じて水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、pH調整剤などの成分を配合したものである。
窒化珪素粒子は、例えばアルミナなどに比べ比重が小さく(アルミナ3.98に対し、窒化珪素3.18)、インキ収納管中で沈降しにくく、水性インキ組成物に配合しても水性インキの性能劣化を防ぐことができる。本発明の水性ボールペンインキに含まれる窒化珪素粒子の大きさとしては、ボールペンに組み込んだ際の筆記用のボールの回転を阻害しない大きさであることが好ましく、具体的には、レーザー回折式粒度分布計(日機装(株)製マイクロトラックSPA粒度分布計)による平均粒子径(D50)で0.1〜2.0μmであることが好ましい。
水性ボールペンの着色剤としては、一般的に顔料若しくは水溶性の染料、或いはこれら両者の混合物が一般に用いられるが、本発明の水性ボールペンでは、特に水溶性染料を着色剤として用いる。下記実施例(実施例1、比較例4)から、窒化珪素粒子とともに着色剤として顔料を用いると、筆記跡の線トビが生じることが分かった。この要因の詳細は明らかでないが、窒化珪素の他に顔料が加わることで成分として水性インキ中に含まれる固体懸濁成分が過剰状態になったためではないかと推測される。本発明で用いられる着色剤は、水溶性染料であれば特段制限されず、具体的な水溶性染料としては、酸性染料、直接染料、塩基性染料などを挙げることができる。
水溶性有機溶剤は、水性インキおいてインキの乾燥や低温時の凍結を防止するために用いられる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエスエル類などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
増粘剤は、水性インキにおいて粘度を適当に調節するために配合される。そのような増粘剤として、多糖類ガム質が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。多糖類ガム質のなかでも、ラムザンガム、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、プルラン、ザンサンガム、グァーガム、ローカストビーンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。なおここにいう多糖類ガム質は、天然品のみならず、その加工品又は誘導体を含むものとする。また多糖類ガム質以外にも、ペクチンのようなコロイド性の多糖類、カゼインやゼラチン等のようなタンパク質や、ポリアクリル酸ナトリウム等のような合成水溶性樹脂も、増粘剤として用いることができる。
潤滑剤は、水性ボールペンの滑りを良くするために水性インキに配合される。好適に用いられる潤滑剤としては、商品名「フォスファノールPE−510」「フォスファノールML−220」「フォスファノールML−200」、「フォスファノールRL−310」(以上、東邦化学工業社製)、「ニッコールDDP−2」(日光ケミカルズ(株)製)、「プライサーフ」(第一工業製薬(株)製)などで入手可能なPOEアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル系化合物を挙げることができる。或いは潤滑剤としてオレイン酸ナトリウムなどを用いることもできる。また複数種類の潤滑剤を併用して配合することもできる。
pH調整剤は水性インキのpHの値を調整し、インキのゲル化を防止するために水性インキに配合される。具体的には塩基性へのpH調整剤として水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、AMP(アミノメチルプロパノール)、炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。
その他、水性インキには、必要に応じて防錆剤(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレートなど)、防腐防黴剤(例えば、ベンゾイソチアゾリン系防腐防黴剤、ペンタクロロフェノール系防腐防黴剤、クレゾール系防腐防黴剤など)、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、レベリング剤、凝集防止剤、擬塑性付与剤等の慣用の添加剤を添加することができる。また水溶性樹脂や樹脂エマルションなどの樹脂成分を添加することもできる。
水性インキの溶媒である水は、慣用的に用いられる水、例えばイオン交換水や蒸留水、超純水など不純物を含まないものが好ましいが特に限定されるものではない。
上記水性ボールペンインキ組成物を用いた水性ボールペンの構造は、一般的なボールペンと同様の構造であり、具体的には次のようなものである。水性ボールペンの先端(チップ)には、筆記用のボールがボール受座に回転自在に抱持されている。本発明の水性インキ組成物は、水性ボールペンのインキ収納管に充填されている。筆記時には水性ボールペンインキ組成物が前記インキ収納管から流出し、前記ボールの表面に付着し、ボールの回転によって紙等の被筆記面に転写されることにより、筆記が行われる。
ボールペンのチップで用いる筆記用のボールの材質は、一般的に硬度の高いものが使用される。具体的には、WC−Co系、WC−Cr3C2−Co系、WC−TiC−Co系等の炭化タングステンを主要成分とするタングステン系超硬合金や炭化ケイ素(SiC)、窒化チタン(TiN)、ジルコニア(ZrO2)等のセラミックなどを例示することができる。
ボールペンのチップで用いるボール受座に用いる材質は、前記ボールよりも硬度の低いものが用いられる。具体的には洋泊、真鍮、ステンレス等の金属材料の他、ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリレート等の樹脂材料を例示することができる。
本発明のボールペンに用いられる筆記用のボール及びボール受座に用いる材料の選択としては、前記ボールに用いられる材料の硬さ(H1)、窒化珪素の硬さ(H2)及び前記ボール受座材料の硬さ(H3)としたときに、次の式1で表す関係を満たす材料から選択されることが好ましい。
H1≧H2>H3 (式1)
以下実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例の様態のみに限定されるものではない。
ボール 炭化タングステン系の超硬合金 12
窒化珪素粒子「NP−200」 12
ボール受座 ステンレス鋼 7
(1.インキ粘度)
各実施例、比較例の水性ボールペンのインキ粘度を調べた。粘度測定器としては、ELD型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、測定条件は3°R14コーン,0.5rpm,20℃とした。
連続筆記試験機を用いて、荷重100g,筆記角度65°,筆記速度7cm/sec,ペン自転有りの条件で、下敷として塩化ビニール板を敷いた紀州製紙製上質紙を被筆記体として各実施例、比較例のボールペンで300m筆記した。筆記前後のボールペンチップのボール出寸法を顕微鏡で測定することにより、各実施例、比較例のボール沈み量を測定し、ボール受座の摩耗性を評価した。
各実施例、比較例のボールペンのペン先に、エチレン−酢酸ビニル樹脂のペン先保護材(ホットメルト)を被せ、チップを上にして立てた状態(正立保持)で、50℃で4週間静置した。その後、上記摩耗性評価の方法に従い、長期保存後のボール受座摩耗量を観察して、保存性の評価を行った。この操作にて測定されたボール受座摩耗量は、その絶対値によって保存性が評価されるとともに、上記摩耗性評価(初期特性)のボール受座摩耗量に対する、該保存性評価のボール受座摩耗量の増加割合(相対比較)によっても保存性が評価される。
紀州製紙製上質紙にオレイン酸を塗布し乾燥したものを被筆記体とした以外は、上記ボール受座摩耗評価と同じ条件で十丸筆記テスト(丸を10回筆記するテスト)を行い、筆跡の線トビを観察して、各実施例、比較例のボールペンの評価を行った。その評価基準は次のとおりである。
○:大部分の筆跡で線トビなし(線トビ数10丸中0〜3丸)
△:筆跡の一部に線トビが見られる(線トビ数10丸中4〜6丸)
×:筆跡の多くで線トビが見られる(線トビ数10丸中7〜10丸)
実施例1〜4はいずれも着色剤として水溶性染料を用い、かつ窒化珪素粒子を配合した水性インキ組成物を用いた水性ボールペンであって、水溶性染料の種類や、窒化珪素粒子の配合割合を変化させたものである。これら実施例1〜4の各水性ボールペンは、摩耗性の初期特性、保存性、筆記性のいずれも十分満足できる特性を示した。
Claims (6)
- 少なくとも着色剤としての水溶性染料、窒化珪素粒子及び水を含む水性ボールペンインキ組成物。
- 前記窒化珪素粒子のレーザー回折式粒度分布計による平均粒子径(D50)が、0.1〜2.0μmである請求項1記載の水性ボールペンインキ組成物。
- 前記窒化珪素粒子の含有量が、前記水性ボールペンインキ組成物全量に対し、0.01〜2.0重量%である請求項1または2記載の水性ボールペンインキ組成物。
- ボールと該ボールを回転自在に抱持するボール受座とがその先端に配設され、インキ収納管に、水性ボールペンインキ組成物が充填された水性ボールペンにおいて、
前記水性インキ組成物が請求項1〜3いずれかの項記載の水性インキ組成物であり、
前記ボールのボール径が0.4mm以下である
水性ボールペン。 - 前記水性ボールペンインキ組成物の粘度が、ELD型粘度計による3°R14コーン,0.5rpm,20℃における粘度が、2000〜5000mPa・sである請求項4記載の水性ボールペン。
- 前記ボールに用いられる材料と前記ボール受座に用いられる材料とが、前記ボールに用いられる材料の硬さをH1、窒化珪素の硬さをH2及び前記ボール受座材料の硬さをH3としたときに、次式(式1)の関係を満たす材料から選ばれた請求項4または5記載の水性ボールペン。
H1≧H2>H3 (式1)
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