JP2023147944A - 水性インキ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】水性インキ組成物中の個数平均一次粒子径35nm以上のカーボンブラックによるソケットの摩耗を低減でき、保存安定性に優れ、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性に優れた水性インキ組成物を提供すること。【解決手段】アルミナ粒子と、個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含み、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられる、水性インキ組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミナ粒子と、個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含み、Raが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられる、水性インキ組成物に関する。
手脂が付着した紙へ水性ボールペンを用いて筆記する際には、ペン先のチップボールが、手脂が付着した紙の上でスリップしやすいため、線トビやカスレが生じやすい。このため、チップボール表面の算術平均粗さRaが大きく粗いボールを用いた水性ボールペンとすることで、手脂が付着した紙への筆記性(手脂面筆記性)を改善することが行われている。しかし、表面の算術平均粗さRaが大きく粗いチップボールは、チップボールを抱持するソケットを構成するステンレス鋼等よりも硬く粗いことから、チップボール表面が鑢のように働くため、ソケットのリム部や内部の摩耗が促進され、ソケットの口内径削れ量が増えてしまう。このため、400mの筆記(JISの公文書用ボールペンの規定筆記距離)を行った場合、ソケットの口内径削れ量がボール直径より大きくなり、ボール飛びが発生しインキ漏れが起こる等のリスクが高まるおそれがあった。
このため、表面の算術平均粗さRaが大きく粗いチップボールを使用する際に、一次粒子径が小さいカーボンブラックを含む水性インキ組成物を用いると、チップボールを抱持するソケットの口内径削れ量を抑えることが知られている。これは、ボール表面の粗面に、カーボンブラックが入り込み、見かけ上のボール表面の算術平均粗さRaが小さくなるとともに、カーボンブラック自体の研磨効果が抑制されることによるものと推測される。しかしながら、一次粒子径が小さいカーボンブラックは、凝集や沈降が起こりやすく、安定性が良好な水性インキ組成物を構成することは困難であった。
一方、表面の算術平均粗さRaが大きく粗いチップボールを使用する際に、一次粒子径が大きいカーボンブラックを含む水性インキ組成物を用いることは、これまで知られていなかった。一次粒子径が大きいカーボンブラックを用いることで、水性インキ組成物の安定性を高められることが予測できる。しかし、本発明者によると、一次粒子径が大きいカーボンブラックによるソケット内部の摩耗が発生し、ソケットの口内径削れ量が増大するため、ボール飛びが発生しインキ漏れが起こる等のリスクが高まるおそれがあることがわかった。
これまで、手脂面筆記性の向上や、ソケット内部の摩耗防止のために、種々の技術が知られている。
特許文献1には、ボールホルダーの貫通孔内に、この貫通孔の先端開口部より一部を突出して回転自在に保持され、筆記面に対して接触してインキ転写部材となるボールを備えるボールペンにおいて、前記ボールの材質が超鋼材であると共に、少なくともこのボールの表面の算術平均粗さが7nm以上11nm以下で、且つ最大高低差が160nm以上250nm以下である、手脂を帯びた筆記面(手脂面)に対し線切れが発生しない水性ボールペンが記載されている。
特許文献2には、少なくともカーボンブラック及び/又は有機顔料と、水と、多糖類と、2-メチルペンタン-2,4-ジオールと、アルミナ粒子と、固形分酸価が1以上100未満であるスチレン-アクリル酸樹脂エマルションを含有するボールペン用水性インキ組成物が記載されている。
特許文献3には、少なくとも着色剤としての顔料と、アルミナと、少なくとも水を含有する液媒体とを含有し、アルミナの平均粒子径Aと顔料の平均粒子径Bとの比が、A/B≧1.0であるボールペン用インキを使用し、ボールペンのペン先として表面の算術平均粗さが5~25nmの筆記ボールを抱持したボールペンチップを使用したボールペンが記載されている。
特開2002-254877号公報 特開2020-203969号公報 特開2002ー206066号公報
特許文献1のボールペンは、チップボールとソケットとの潤滑性が悪く、書き味が悪いという問題があった。さらに、チップボールによるソケットの研削が大きく、長距離の筆記を行った際には、ソケットの口内径削れ量がボール直径より大きくなり、ボール飛びが発生するリスクが高くなるおそれがあった。
特許文献2のボールペン用水性インキ組成物は、チップボールの算術平均粗さRaについて何ら考慮されておらず、紙の手脂面への筆記に際しては、ペン先のボールがスリップしやすく、線トビやカスレが生じるおそれがある。
特許文献3の水性ボールペンは、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性について考慮されたものではない。また、アルミナがチップボール表面を研磨することから、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性に問題があると考えられる。さらに、個数平均一次粒子径35nm以上のカーボンブラックを用いること、カーボンブラックにより引き起こされるソケット内部の摩耗防止について考慮されたものではない。
本発明者は、個数平均一次粒子径が特定の範囲にあるカーボンブラックと、アルミナを特に選択して水性インキ組成物を構成し、これを算術平均粗さRaが特定の範囲にあるチップボールを有するボールペン用とすることで、カーボンブラックによるソケットの口内径削れを抑えることができ、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性が改善できるとの知見を得た。
本発明が解決しようとする課題は、水性インキ組成物中の個数平均一次粒子径35nm以上のカーボンブラックによるソケットの摩耗を低減でき、保存安定性に優れ、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性に優れた水性インキ組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記の水性インキ組成物により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には以下のとおりである。
[項1]アルミナ粒子と、
個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含み、
表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられる、
水性インキ組成物。
[項2]アルミナ粒子の体積平均一次粒子径が、0.1μm以上0.6μm以下である、項1に記載の水性インキ組成物。
[項3]アルミナ粒子の添加量が、水性インキ組成物全量に対して0.003質量%以上1.0質量%以下である、項1又は2に記載の水性インキ組成物。
本発明によれば、水性インキ組成物中の個数平均一次粒子径35nm以上のカーボンブラックによるソケットの摩耗を低減でき、保存安定性に優れ、手脂面筆記性及び手脂面筆記持続性に優れた水性ボールペンを提供できる水性インキ組成物が提供される。
本発明者は、水性インキ組成物中にアルミナ粒子が含まれることで、カーボンブラックとソケットの接触を抑制でき、さらに、ボールチップとソケットとの接触を抑制できるとともに、また、水性インキ組成物中に個数平均一次粒子径35nm以上のカーボンブラックが含まれることで、アルミナ粒子によるソケットの研磨が抑制されることにより、上記の効果が得られるのではないかと推測しているが、本発明はこの推測に拘束されるものではない。
本発明の水性インキ組成物は、アルミナ粒子と、個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含み、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられる、水性インキ組成物である。
<アルミナ粒子>
アルミナ粒子としては、水性インキ組成物、特に、水性インキ組成物に使用し得るものであれば、特に限定されない。未処理アルミナを用いることができ、また、未処理アルミナを表面処理剤で処理して得られる親水性アルミナ又は疎水性アルミナを用いることができる。
アルミナ粒子の形状は、特に限定されない。例えば、球状、板状、不定形、針状等、任意の形状のものを用いることができる。これらの中でも、球状(特に、真球状)のものが好ましい。
アルミナの純度は、特に限定されないが、高純度のものであることが好ましく、純度99.0%以上、好ましくは99.5%超、より好ましくは99.8%超のものが好ましい。
本発明者は、アルミナ粒子が固体潤滑剤として機能しているものと考えている。
アルミナ粒子の体積平均一次粒子径は、特に限定されない。例えば、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、例えば1.5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。
また、本発明においては、アルミナ粒子の体積平均一次粒子径をX(nm)、チップボール表面の算術平均粗さRaをY(nm)としたときに、X/Yが、例えば10以上、好ましくは20以上であり、例えば100以下、好ましくは80以下とすることができる。さらに、アルミナ粒子の体積平均一次粒子径をX(nm)、カーボンブラックの個数平均一次粒子径をZ(nm)としたときに、X/Zが、例えば1.1以上、好ましくは1.5以上であり、例えば30以下、好ましくは10以下とすることができる。アルミナ粒子の体積平均一次粒子径を上記のようなものとすることで、筆記性(手脂面及び非手脂面)、水性インキ組成物の安定性、ソケット口内径削れ量を良好なものとすることができる。
アルミナ粒子としては、例えば、住友化学社製の高純度アルミナシリーズ(AKP-53(体積平均一次粒子径0.17μm)、AKP-50(同0.20μm)、AKP-30(同0.30μm)、AKP-20(同0.46μm)、AKP-3000(同0.70μm)、AA-03(同0.44μm)、AA-04(同0.50μm)、AA-05(同0.53μm)、AA-07(同0.83μm))、アドマテックス社製のアドマファインシリーズ(AO-502(体積平均一次粒子径0.25μm)、AO-509(同0.75μm))、フジミインコーポレーテッド社製のWAシリーズ(#30000(体積平均一次粒子径0.35μm)、#20000(同0.45μm)、#10000(同0.60μm)、#8000(同1.2μm)、#6000(同2.0μm))等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
アルミナ粒子の含有量は、特に限定されない。水性インキ組成物全量を100質量%とした場合、例えば0.003質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。水性インキ組成物全量100質量%に対するアルミナ粒子の含有量が1.0質量%を超えると、ペン先でのつまりが発生するおそれがあり、水性インキ組成物が増粘するおそれがある。水性インキ組成物全量100質量%に対するアルミナ粒子の含有量が0.003質量%未満である場合、アルミナ粒子の添加効果が発揮されないおそれがあり、口内径削れ量が大きくなるおそれがある。
<カーボンブラック>
カーボンブラックは、個数平均一次粒子径が35nm以上のものであれば、特に限定されない。カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
カーボンブラックの個数平均一次粒子径は、35nm以上、好ましくは40nm以上であり、例えば100nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下である。
本発明において、カーボンブラックは、水性インキ組成物の筆跡に黒色の着色効果を付与し視認させ、耐水性のある筆跡を形成するために用いられる。
カーボンブラックとしては、例えば、三菱ケミカル社製の三菱カーボンブラックシリーズ(#5、#10、#20、#25、MA14、MA220、#3030B、#3050B)、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製のケッチェンブラックEC300J、DENKA社製のデンカブラック粒状品、DENKA BLACK Liシリーズ(Liー100、Li250、Li-400)、キャボット社製のモナークシリーズ及びリーガルシリーズ、Orion Engineered Carbons社製のプリンテックスシリーズ、NEROXシリーズ及びスペシャルブラックシリーズ等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、特に限定されない。水性インキ組成物全量を100質量%とした場合、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、例えば15.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以下である。水性インキ組成物全量100質量%に対するカーボンブラックの含有量が15.0質量%を超えると、ペン先でのつまりが発生するおそれがあり、水性インキ組成物が増粘するおそれがあり、筆記時のカスレ発生のおそれがあり、ソケットの口内径削れ量が多くなるおそれがある。水性インキ組成物全量100質量%に対するカーボンブラックの含有量が0.05質量%未満である場合、カーボンブラックの添加効果が発揮されないおそれがあり、水性インキ組成物の着色度が低下(色が薄くなる)するおそれがある。
<水>
本発明の水性インキ組成物は、構成成分を分散及び/又は溶解させるため、分散媒及び/又は溶剤として機能する水を含有する。水としては、例えば、水道水、工業用水、精製水、蒸留水、イオン交換水、限外ろ過水、純水等を使用することができる。好ましくは、イオン交換水及び蒸留水等が使用される。
水の含有量は特に限定されず、インキ組成物中の各成分の含有量、インキ組成物の粘度等に応じて適宜調整することができる。例えば、水性インキ組成物が水を含有する場合には、例えば20.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上であり、例えば90.0質量%以下、好ましくは85.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下である。水性インキ組成物全量100質量%に対する含有量が90.0質量%を超えると、十分な発色効果が得られない(色が薄い)ことがある。水性インキ組成物全量100質量%に対する含有量が20.0質量%未満であると、筆記時のカスレ発生や保存性低下のおそれがある。
<その他の添加剤>
本発明の水性インキ組成物は、必要に応じて、アルミナ粒子、個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラック及び水以外の成分(以下、「その他の添加剤」という場合がある。)を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、特に、水性ボールペン用インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、粘度調整剤(増粘剤)、湿潤剤、有機溶剤、着色剤(アルミナ粒子及び個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラック以外)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。さらに、防腐防黴剤(ベンゾイソチアゾリン系防腐防黴剤、ペンタクロロフェノール系防腐防黴剤、クレゾール系防腐防黴剤、プロピレングリコール系防腐防黴剤、ヨウ素系防腐防黴剤等の防腐防黴剤等)、防錆剤(ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等)、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物(水溶液)、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア(水)等)からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
その他、必要に応じて、分散剤、皮膜形成材、消泡剤、レベリング剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、非熱変色性顔料、非熱変色性染料、蛍光増白剤等を、適宜の量で用いることができる。
(粘度調整剤(増粘剤))
本発明の水性インキ組成物は、粘度の調整等のために粘度調整剤(増粘剤)を含んでいてもよい。粘度調整剤(増粘剤)としては、水性インキ組成物、特に、水性ボールペン用水性インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン(レオザン)、ダイユータンガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体等の多糖類及びその誘導体、セルロース系高分子、架橋性アクリル酸重合体、アルカリ増粘型アクリル系樹脂、ウレタン会合型増粘剤、N-ビニルアセトアミド系樹脂、無機質微粒子等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
水性インキ組成物中の粘度調整剤(増粘剤)の含有量は、水性インキ組成物が用途に応じた適当な粘度となるように適宜設定される。水性インキ組成物全量を100質量%とした場合、例えば0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下の範囲とすることができる。
(湿潤剤)
本発明の水性インキ組成物は、乾燥性等の調整のために湿潤剤を含んでいてもよい。湿潤剤としては、水性インキ組成物、特に、水性ボールペン用インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、糖類、尿素類、これらの誘導体等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
水性インキ組成物中の湿潤剤の含有量は、水性インキ組成物の乾燥性等が用途に応じた適当なものとなるように適宜設定される。水性インキ組成物全量を100質量%とした場合、例えば0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、例えば10.0質量%以下、好ましくは8.0質量%以下の範囲とすることができる。
(潤滑剤)
本発明の水性インキ組成物は、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールとチップボールを抱持するソケットの間の潤滑性を向上させるために、潤滑剤を含んでいてもよい。潤滑剤は、水性インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されない。本発明においては、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。このうち、HLB値が9.5以上、好ましくは9.7以上、より好ましくは9.8以上、さらに好ましくは10.0以上のものが特に好ましい。HLBの上限は特に限定されないが、例えば17.0以下、好ましくは15.0以下、より好ましくは14.0以下である。HLBが9.5未満であると、水性インキ組成物に対する溶解性が低いため、水性インキ組成物が不安定になる傾向がある。HLBは、川上法〔HLB=7+11.7log(MW/MO)、MW:親水部分の式量の総和、MO:親油部分の式量の総和〕により算出できる。また、実験等により求めたものでもよい。
HLBが9.5以上であるリン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物の1種以上が挙げられる。
Figure 2023147944000001
(式中:nは0~20の整数である。Rは炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数6以上のアルキルアリール基又は炭素数4以上の不飽和炭化水素基のいずれかである。RはM又は-(CHCHO)-Rである。Rは炭素数1以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数6以上のアルキルアリール基又は炭素数4以上の不飽和炭化水素基のいずれかである。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、有機アンモニウム基又は有機アミン基のいずれかである。Mが2つある場合はそれぞれ異なっていてもよい。)
このようなリン酸エステル系界面活性剤としては、市販のものを用いることができる。例えば、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、第一工業製薬社製のプライサーフシリーズ等及びそれらの塩から選ばれる1種以上を用いることができる。
例えば、リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズとして、RS-710(HLB=13.3)、RS-610(HLB=11.7)、RS-410(HLB=9.0)、RA-600(HLB=10.5)、ML-200(HLB=10.0)、ML-220(HLB=12.5)、ML-240(HLB=13.1)、PE-510(HLB=10.5)、SM-172(HLB=10.5)、ED-200(HLB=11.4)、GF-339(HLB=10.0);第一工業製薬社製のプライサーフシリーズでは、A219B(HLB=16.2)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
潤滑剤の含有量は特に限定されない。水性インキ組成物全量を100質量%とした場合、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、例えば8.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。水性インキ組成物全量100質量%に対する含有量が0.01質量%未満であると、潤滑性が低下し、摩擦が大きくなるためソケットの口内径削れ量が多くなるおそれがある。水性インキ組成物全量100質量%に対する含有量が8.0質量%を超えると、逆流止めと混ざりやすくなり、また、水性インキ組成物の経時安定性等の点で問題が生じるおそれがある。
リン酸エステル系界面活性剤の塩を含有する場合には、当該塩の割合が上記範囲内にあることが好ましく、あるいは当該塩とリン酸エステル系界面活性剤の両方等の2種以上のリン酸エステル系界面活性剤を含有する場合には、それらを合わせた質量の割合が上記範囲内にあることが好ましい。
本発明の水性インキ組成物に潤滑剤、例えば、リン酸エステル系界面活性剤、特にHLBが9.5以上であるリン酸エステル系界面活性剤が含まれることにより、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールとチップボールを抱持するソケットとの間の動摩擦係数/μkを小さくすることができる。具体的には、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールとソケットとの動摩擦係数/μkを0.267以下、好ましくは0.265以下、より好ましくは0.263以下とすることができる。動摩擦係数/μkをこのような範囲とすることで、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールによるソケットの摩耗を低減することが可能であり、筆記不良が起こりにくく、手脂面筆記性に優れたボールペンを得ることができる。
(有機溶剤)
本発明の水性インキ組成物は、有機溶剤、好ましくは水性有機溶剤を含有していてもよい。水性有機溶剤は、水への溶解性がよいものであれば、特に制限なく用いることができる。有機溶剤は、水性インキ組成物の粘度調整剤、乾燥防止剤又は湿潤剤としても用いることができる。
有機溶剤としては、特に限定されない。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエ-テル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
(分散剤)
本発明の水性インキ組成物は、含有する着色剤等の顔料の分散を安定化させることを目的として、分散剤を含有していてもよい。分散剤は、分散後の顔料を安定化させることにより顔料の沈殿を防止する作用を有し、同時にインキ組成物の塗膜を形成するためのビヒクル・結着剤としても機能する。分散剤としては、インキ組成物、特に、水性ボールペン用インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されず、市販のものを用いることができる。例えば、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(エマルジョン)、スチレン-マレイン酸系樹脂(エマルジョン)、スチレン-マレイン酸エステル系樹脂(エマルジョン)、(メタ)アクリル系樹脂(エマルジョン)、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂(エマルジョン)、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系化合物等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
水性インキ組成物中の分散剤の含有量は、水性インキ組成物中のカーボンブラック及びアルミナを含む顔料成分の分散性等が用途に応じた適当なものとなるように適宜設定される。インキ組成物全量に対して、例えば0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、例えば7.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下の範囲とすることができる。含有量が7.0質量%を超えると、分散剤が凝集剤として働き、顔料成分の凝集を引き起こすおそれがある。含有量が0.1質量%未満であると、顔料成分の分散が十分に行えず顔料成分の凝集を引き起こすおそれがある。顔料成分の凝集が起こると、インキ中で顔料成分の沈降が発生し、レフィルからのインキ流出性が悪化するおそれもある。
<着色剤>
本発明の水性インキ組成物は、美感を有し所望の色調の筆跡とするために、本発明の効果を阻害しない範囲で、着色剤(アルミナ粒子及び個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを除く)を含んでいてもよい。このような着色剤は、カスレ等がなく筆記性が良好であり、乾燥性、キャップオフ性、沈降安定性、保存安定性等が優れているものであれば、特に制限なく用いることができる。
着色剤は、水性インキ組成物、特に、水性ボールペン用インキ組成物に用いられるものであれば特に限定されない。任意の色調を呈する無機顔料、有機顔料、着色樹脂球、染料等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
無機顔料としては、例えば、平均一次粒子径35nm未満のカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、群青、紺青、アルミニウム粉やブロンズ粉等の金属粉、蛍光顔料、ガラスフレーク、パール顔料、光輝性顔料等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、キナクドリン系、アンスラキノン系、ジオキサン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、インドレノン系、アゾメチン系等の公知の着色顔料、蛍光顔料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
着色樹脂球としては、球状、不定形、中空、扁平状等の樹脂球を、任意の色調を呈する無機顔料、有機顔料又は染料の1種以上で着色したものである。着色樹脂球を形成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリメタクリレート、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂、ナイロン等が挙げられる。
染料としては、水溶性のものが好ましく、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料のいずれも使用できる。例えば、アントラキノン系、メチン系、カルボニウム系、金属錯塩系等の着色染料・蛍光染料からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明の水性インキ組成物が着色剤を含有する場合、所望の色調となるように適宜調整すればよい。着色剤を含有する場合、インキ組成物全量に対して、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.07質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、例えば15.0質量%以下、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下含有させることができる。着色剤の含有量が15.0質量%を超えると、固形分が増加してしまい、流動性、粘度、取扱性、沈降安定性、筆跡のカスレ、製造コスト等で悪影響が生じることがある。なお、着色剤の含有量は、これらの範囲に限定されず、使用する着色剤の種類に応じて、適宜選択してよい。本発明の水性インキ組成物が光輝剤を含有する場合、光輝剤の量は特に限定されないが、例えば、0.01質量%~20質量%であってよい。
<粘度>
本発明の水性インキ組成物の25℃における粘度は、筆記性、筆跡安定性(垂れ防止、カスレ防止、滲み防止、インキボテ防止、裏抜け防止、濃度安定・均一性等)、流出性、乾燥時書出し性、漏れ防止、逆流防止、顔料沈降防止、成分分離防止、製造コスト等の観点から適宜設定すればよく、例えば1~100,000mPa・s、好ましくは100~20,000mPa・s、より好ましくは1,000~10,000mPa・s(E型回転粘度計(例えば、東機産業社製、TVE型粘度計、3゜R14コーン、0.5rpm))の範囲とすることができる。水性インキ組成物の粘度が100mPa・s未満であると、筆記具先端からのインキの流出性(筆記時に水性インキ組成物が過剰に流出し的確に筆跡を形成できない)、沈降安定性等の点で問題となるおそれがある。水性インキ組成物の粘度が50,000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、筆記具先端からのインキの流出性(インキが流出しない)、インキの取扱性、沈降安定性、筆跡のカスレ、製造コスト等の点で問題となるおそれがある。
<pH値>
本発明の水性インキ組成物のpHは、特に限定されないが、6.0~10.0であることが好ましい。pH値が6.0未満の酸性側に近づくと、インキ組成物の経時安定性が劣化することがあり、インキ組成物が接触する金属部材の腐食がおこりやすくなる。pH値が10.0を超えて強アルカリ側に近づくと、インキ組成物の褪色や変色が起きやすい傾向があり、良好な筆跡が得られなくなるおそれがある。
インキ組成物の安定性、発色性、筆記性等を特に考慮すると、pH値は6.5~9.0であることが好ましい。pH値は、例えば、市販のpHメーターを用いて、20℃にて測定した値を用いることができる。
<水性インキ組成物の製造方法>
本発明の水性インキ組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の水性インキ組成物の作製方法いずれも用いることができる。
例えば、すべての成分を容器に投入し、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ヘンシェルミキサー、プラネタリ―ミキサー、ホモミキサー、ターボミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ニーダー、ディゾルバー等の装置により混合・撹拌して各成分構成を分散させることにより、水性インキ組成物を作製することができる。
例えば、水、カーボンブラック、アルミナ等のうちの一部の成分を容器に投入し、前記装置により混合・撹拌して分散させることにより分散液を製造した後に、その余の成分を投入し混合・撹拌して、インキを作製することができる。
水性インキ組成物の作製に際しては、濾過、遠心分離、脱泡等の操作を行い粗大粒子、気体、気泡を除いてもよい。水性インキ組成物の作製時に加熱、冷却、加圧、減圧、不活性ガス置換等の手段を単独で又は複数を並行して行うこともできる。さらに、水性インキ組成物作製後にエージング工程を行ってもよい。
<水性インキ組成物の用途>
本発明の水性インキ組成物は、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられるものである。具体的には、表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを回転自在に抱持したソケットが、先端部に直接又は接続部材を介して装着されて形成されてなるインキ収容筒に、本発明の水性インキ組成物を充填してレフィルを構成し、当該レフィルをボールペンの軸筒内に配設したボールペンに用いられる。
筆記時には水性インキ組成物が前記インキ収納管から流出し、前記チップボールの表面に付着し、チップボールの回転によって被筆記面に転写されることで、筆記が行われる。
ボールペン本体の構造、形状は特に限定されるものではなく、適宜のものとできる。
ボールペンとしては、ノック式、回転式、スライド式等の軸筒内にペン先を収容可能な出没式ボールペンであって、単色式、2色式、3色式、4色式等のもの、ボールペン以外の筆記具と組み合わせた多機能式とすることができる。また、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式ボールペンであってもよい。ボールペンの軸筒等の部材としては、公知の部材を用いることができる。
チップボールの表面の算術平均粗さRaは、JIS B 0601によるものである。本発明においては、5nm以上、好ましくは5.3nm、より好ましくは6nm以上であり、例えば25nm以下、好ましくは20nmである。チップボールの表面の算術平均粗さRaが5nm未満である場合には、筆跡にカスレや線とびが発生してしまう。本発明の水性インキ組成物を用いた場合には、チップボールの表面の算術平均粗さRaの上限を25nmとすると、筆跡にカスレや線とびが発生することなく、滑らかな筆感を得ることができるので好ましい。チップボールの表面の算術平均粗さRaを超えると、手脂の付着した筆記面においての筆記性については向上するものの、チップボールとソケットとの間の摩擦抵抗が大きくなり、筆感に問題が生じるおそれがある。
チップボールの材質は、特に限定されない。例えば、金属、超硬合金、セラミックスが挙げられ、例えば、ステンレス鋼、タングステン、タングステンカーバイド(WC)、炭化ケイ素(SiC)、窒化チタン(TiN)、ジルコニア(ZrO)、アルミナ(Al)等からなる群より選ばれる1種以上からなるものが好ましい。本発明においては、タングステンカーバイド系のチップボールが好ましく、具体的には、タングステンカーバイドや、タングステンカーバイドと、炭化ケイ素、窒化チタン、ジルコニア、アルミナ等からなる群より選ばれる1種以上からなるチップボール等が挙げられる。
チップボールのビッカース硬さ(HV)は、例えば700以上、好ましくは1000以上であり、例えば2000以下である。
チップボールの直径は、特に限定されない。例えば0.05mm~3.0mm、好ましくは0.1mm~1.5mm、より好ましくは0.1mm~1.0mmとすることができる。
チップボールを抱持するソケットを構成する材料は、耐摩耗性を有し加工可能なものであれば特に限定されない。金属(ステンレス鋼、黄銅や洋白等の銅合金等)、樹脂(ポリオキシメチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン、ポリフェニレンエーテル、ポリアクリレート等)が挙げられる。筆記時の耐摩耗性やインキの耐食性の面からステンレス鋼が好ましく、一般的にはオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430が用いられる。加工性とボールペンチップ先端部の変形等を抑制等の観点から、ビッカース硬さ(HV)を150以上300以下とすることが好ましい。また、環境への影響から、鉛を含まないものが好ましい。加工性等の点から、鉛の代替成分として、ビスマス(元素記号:Bi)を用いることが好ましい。
インキ収容筒を構成する材料は、特に限定されない。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂や、ニッケルクロム合金鋼(SUS304系ステンレス鋼)、クロム合金鋼(SUS430系ステンレス鋼)、オーステナイト系ステンレス鋼、快削ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム、洋白及びリン青銅合金等の金属が挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ニッケルクロム合金鋼(SUS304系ステンレス鋼)、クロム合金鋼(SUS430系ステンレス鋼)、オーステナイト系ステンレス鋼、真鍮、洋白が用いられる。
レフィルにおけるインキ流出量は、適宜調整することができる。これにより、筆跡のカスレを抑制でき良好な筆跡を得ることができる。
また、ボールペンチップ中のボールの縦軸方向の移動可能量(クリアランス)は、インキ流出量に応じて適宜調整でき、例えば、20μm~50μmとすることができる。
レフィルは、水性インキ組成物をインキ収容筒に収容し、その後端に逆流止めの基油からなるインキ追従体を備えたものである。インキ追従体の粘度は、例えば、1,000~10,000mPa・sである。
インキ追従体は、レフィルに収容することができ、インキ収容筒内に充填された水性インキ組成物と相溶性がなく、かつ、インキ組成物に対して比重が小さい物質であり、公知のものを特に制限なく使用できる。また、基油に増粘剤等を含有させたものであってもよい。
インキ追従体に用いる基油としては、水に不溶もしくは難溶の、例えば、ポリブテン、鉱油、シリコーンオイル等から選ばれる1種以上を用いることができる。
増粘剤としては、例えば、微粒子シリカ、リン酸エステルのカルシウム塩、熱可塑性エラストマー等から選ばれる1種以上を用いることができる。さらに、必要に応じて、例えば、増粘助剤(粘土増粘剤、金属石鹸など)、インキ追従体の追従性向上剤(界面活性剤など)、酸化防止剤等を含有させることができる。好ましくは、ポリブテン又は鉱油と金属石鹸の混合物、シリコーンオイルとシリカの混合物が挙げられる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は質量部を意味する。
[水性インキ組成物構成成分]
水性インキ組成物を構成する成分として以下のものを用意した。
・水:イオン交換水
・CB1:カーボンブラック(個数平均一次粒子径13nm、DBP吸油量77cm、pH6.5)
・CB2:カーボンブラック(個数平均一次粒子径15nm、DBP吸油量65cm、pH2.5)
・CB3:カーボンブラック(個数平均一次粒子径18nm、DBP吸油量55cm、pH8)
・CB4:カーボンブラック(個数平均一次粒子径25nm、DBP吸油量53cm、pH2.5)
・CB5:カーボンブラック(個数平均一次粒子径47nm、DBP吸油量69cm、pH8)
・CB6:カーボンブラック(個数平均一次粒子径51nm、DBP吸油量96cm、pH9)
・アルミナ1:高純度アルミナ(住友化学社製、体積平均一次粒子径0.42μm)
・アルミナ2:高純度合成球状アルミナ(アドマテックス社製、体積平均一次粒子径0.25μm)
・増粘剤:キサンタンガム(三晶社製)
・防腐剤:ベンゾイソチアゾリン系防腐剤(ロンザジャパン社製)
・防黴剤:有機ヨウ素系防黴剤(大阪ガスケミカル社製)
・湿潤剤1:グリセリン
・湿潤剤2:プロピレングリコール
・防錆剤:ベンゾトリアゾール
・pH調整剤:水酸化ナトリウム
・溶剤:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
・潤滑剤:リン酸エステル系界面活性剤(東邦化学工業社製、HLB=12.5)
[実施例1、2、比較例1~6]
上記の成分を表1に示す量(質量部)用い、下記の方法により水性インキ組成物を作製した。また、得られた水性インキ組成物を用い、下記の方法によりボールペンレフィルを作製した。
作製した水性インキ組成物を用いてインキ安定性評価を、作製したボールペンを用いて口内径削れ量及び手脂面筆記性評価を、それぞれ下記のように行った。
(水性インキ組成物の作製方法)
水及び顔料を含有する混合液をビーズミルにより分散し、顔料ベースを得た。
その後、溶媒、顔料ベース、潤滑剤等の成分を、撹拌機を用いて混合し、メッシュによりろ過し、脱泡を行って水性インキ組成物を作製した。
(ボールペンレフィル/ボールペンの作製方法)
チップ1(タングステンカーバイド系チップボール、ボール直径0.4mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)7.5nm、ステンレス鋼(SUS)系ソケット、ソケット口内径0.385mm)又はチップ2(タングステンカーバイド系チップボール、ボール直径0.4mm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)2.5nm、ステンレス鋼(SUS)系ソケット、ソケット口内径0.385mm)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管をそれぞれ複数本用意し、それぞれに得られた水性インキ組成物を一定量充填した後に、インキ逆流止め(ポリブテンをゲル化したもの)を充填して、ボールペンレフィルを作製した。次に、本体にボールペンレフィルを取り付け、キャップを装着した後、遠心分離機により管中の空気を除去し、それから尾栓を装着して、各水性インキ組成物を用いたボールペンを作製した。チップ1を用いたボールペン種をP1、チップ2を用いたボールペン種をP2とし、評価に際して使用したボールペン種を表1に併せて記載する。
[評価]
<インキ安定性>
作製した水性インキ組成物を、内径1.5cm、高さ25cmの容器に、高さ21cmになるように入れ、23±0.5℃、相対湿度50±5%で1週間静置した。その後、容器底から5mm以下の部分(下層部)にある水性インキ組成物と、表面から5mm以内の部分(上層部)にある水性インキ組成物をそれぞれ採取して粘度を図り、両者の粘度差に基づいて以下の基準で評価した。評価Cは不合格である。評価結果を表1に併せて示す。
A:上層部と下層部とで目視で差異はなく、上層部と下層部の粘度差が10%未満。
C:上層部と下層部とで目視上の差がある、上層部と下層部の粘度差が10%以上ある、又は配合時にゲル構想が壊れ粘度が高くならない。
<口内径削れ量>
作製したボールペンを用い、下記の筆記試験機及び筆記条件;
筆記試験機:WRITING TESTER MODEL TS-4C-10(SEIKI KOGYO LAB社製)
筆記条件:速度 7cm/sec 荷重 30g 筆記角度 65°
使用顕微鏡:測定顕微鏡 OLYMPUS STM7
で300m筆記し、300m筆記前後のソケット口内径の寸法差を、顕微鏡を用いて求めて口内径削れ量とし、以下の基準で評価した。Cは不合格である。寸法差及び評価結果を表1に併せて示す。
A:口内径削れ量が0.0100mm未満
C:口内径削れ量が0.0100mm以上
<手脂面筆記性>
オレイン酸10%含有アセトン溶液に、白紙便箋を両面それぞれ1秒間浸漬(接触)させた後に、30分間自然乾燥させて、人工手脂紙を作製した。
作製した人工手脂紙に、作成したボールペンを用いて、手書きで直径1.5cmの円を50個筆記し、円が完全に筆記できた割合を求め、以下の基準で評価した。Cは不合格である。評価結果を表1に併せて示す。
A:80%以上
B:20%以上80%未満
C:20%未満
Figure 2023147944000002
実施例1~3の結果から、表面の算術平均粗さRaが5nm以上であるチップボールを備える水性ボールペンに用いる水性インキ組成物として、アルミナ粒子と、個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含む水性インキ組成物を用いた場合には、インキ安定性評価、口内径削れ量、口内径削れ評価、手脂面筆記性評価がいずれも優れることがわかる。また、実施例1~3においては、手脂面筆記性において筆記した1個目の円(筆記開始時)と筆記した50個目の円(筆記最終時)について目視で確認したところ、いずれの記載した円に差異はなく、手脂面筆記持続性が優れていた。
一方、比較例1~7の結果から、
(i)表面の算術平均粗さRaが2.5nm以下であるチップボールを備える水性ボールペンに用いた場合(比較例1)には、手脂面筆記性評価が劣ること、
(ii)アルミナを含まない場合(比較例2、3)には、口内径削れ量が大きく、口内径削れ量評価が劣ること、
(iii)個数平均一次粒子径が35nm未満のカーボンブラックを用いた場合(比較例4~7)では、水性インキ組成物の安定性が劣ること、
がそれぞれわかる。

Claims (3)

  1. アルミナ粒子と、
    個数平均一次粒子径が35nm以上のカーボンブラックを含み、
    表面の算術平均粗さRaが5nm以上のチップボールを備えるボールペンに用いられる、
    水性インキ組成物。
  2. アルミナ粒子の体積平均一次粒子径が、0.1μm以上0.6μm以下である、請求項1に記載の水性インキ組成物。
  3. アルミナ粒子の添加量が、水性インキ組成物全量に対して0.003質量%以上1.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の水性インキ組成物。

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