JP2006045249A - 消去性インキ組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 市販の消しゴムによって筆記描線は消去できないが、特定の消去具を用いることによって初めて消去することができる消去性インキ組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも、顔料と、増粘剤と、造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンと、水とを含有し、インキの表面張力が30〜45dyne/cmであり、硬度70°以上〜100°未満の消去具を用いて消去可能となることを特徴とする消去性インキ組成物。
アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンとして、少なくとも表面張力が28〜43dyne/cmの樹脂エマルジョンを少なくとも1種以上用いることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、市販の消しゴムによって筆記描線は消去できないが、特定の消去具を用いることによって初めて消去することができる消去性インキ組成物に関する。
従来より、市販の消しゴムにより筆記描線を消去することができる消しゴム消去性インキ組成物は、数多くのものが知られているが、近年、特に水を主溶剤とした消しゴム消去性インキ組成物が数多く開示されている。
例えば、スチレン−ブタジエン共重合体及び水に不溶な顔料を含む、ハイライター、その他の筆記具用に好適な、粘度が10cps〜30cpsからなる水性の消去可能なインキ組成物及びそれを使用するためのマーカー(例えば、特許文献1参照)や、0℃以下の造膜温度若しくは0℃以下のガラス転移温度を有する樹脂、顔料及び水を含有する消去性インキ組成物、並びに、0℃以下の造膜温度若しくは0℃以下のガラス転移温度を有する樹脂、粒子径1〜20μmの着色球状微粒子及び水を含有し、インキ粘度を5〜35mPa・sとしてなる消去性インキ(例えば、本願出願人による特許文献2及び3参照)、並びに、ガラス転移温度が0℃以下の造膜性樹脂粒子と、染料で着色された着色樹脂粒子と、造膜抑制剤と、水とを少なくとも含む筆記用消しゴム消去性水性インキ組成物(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
しかしながら、これらの各公報に開示される消去性インキ組成物、並びに、これまでに知られている今までの消去性インキ組成物は、市販の消しゴム、硬度70°以下の消しゴムによって消去することを前提としているため、紙面と筆記描線との固着性が十分でなく、指等による擦過により簡単に剥がれたりし、消しゴム消去性と耐擦過性のバランスに優れたものは得られていない点に課題がある。
また、従来の消去性インキ組成物は、同種のインキによる筆記描線の上を筆記した際、筆記描線の固着性や硬度が不十分であるため、描線がはがれてペン先に目詰まりし筆記不能に陥る等の課題があるものである。
特開平7−505174号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平4−56089号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平5−279614号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2003−55593号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、紙面と筆記描線との固着性を十分なものとし、指等による擦過によっても剥がれることなく、特定の消しゴムによってのみ容易に消去することができる消去性インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、従来の消去性インキについて鋭意検討した結果、次の知見を得た。すなわち、これまでの消去性インキ組成物は、硬度70°以下となる市販の消しゴムによって消去することを前提としているため、インキ組成は限られた範囲内で顔料の粒子径、非着色粒子の含有、造膜性の樹脂の選択等を好適に組合して開発されてきたものである。しかしながら、市販の消しゴムによって消去することを前提する以上、インキ組成をどのように変更しても紙面と筆記描線との固着性は十分でなく、指等による擦過により簡単に剥がれたりする課題は解決されないのが現状である。
そこで、本発明者らは、紙面と筆記描線との固着性は十分なものとするためには、インキ組成面から検討した結果、筆記描線の紙面上への非浸透における「ハジキ」と「消去性」とを最適なバランスとすること、具体的には、硬い塗膜の形成と、紙へのインキの浸透を抑制するインキ組成とすれば、上記課題が解決することを見い出したのである。この筆記描線は、市販の消しゴムでは消去できないが、特定の消去具を用いれば、紙面を削ることなく、簡単に筆記描線を消去することができ、従来の課題等を解決した今までにない消去性インキ組成物が得られることを見い出すことにより、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(7)に存する。
(1) 少なくとも、顔料と、増粘剤と、造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンと、水とを含有し、インキの表面張力が30〜45dyne/cmであり、硬度70°以上〜100°未満の消去具を用いて消去可能となることを特徴とする消去性インキ組成物。
(2) アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンは、少なくとも表面張力が28〜43dyne/cmの樹脂エマルジョンを少なくとも1種以上用いる上記(1)記載の消去性インキ組成物。
(3) アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンは、表面張力が28〜32dyne/cmの樹脂エマルジョン(a)と、表面張力が38〜43dyne/cmの樹脂エマルジョン(b)とを少なくとも2種以上含有してなる上記(1)又は(2)記載の消去性インキ組成物。
(4) 増粘剤が結晶セルロースであり、該結晶セルロースの含有量が、消去性インキ組成物全量に対して、0.1〜5重量%である上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の消しゴム消去性インキ組成物。
(5) インキの粘度が80mPa・s以下となる上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の消去性インキ組成物。
(6) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の消去性インキ組成物を充填してなることを特徴とするサインペン。
(7) 上記(6)に記載のサインペンには、硬度70°以上〜100°未満の消去具が具備してなることを特徴とするサインペン。
なお、本発明において規定する消しゴムの「硬度」は、ゴム硬度計GS−701(テクロック社製)によって測定した値である。
本発明によれば、紙面と筆記描線との固着性を十分なものとし、指等による擦過によっても剥がれることがなく、しかも、インキの経時安定性に優れると共に、硬度70°以上〜100°未満の消しゴムによってのみ容易に消去することができる消去性インキ組成物が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の消去性インキ組成物は、少なくとも、顔料と、増粘剤と、造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンと、水とを含有し、インキの表面張力が30〜45dyne/cmであり、硬度70°以上〜100°未満の消去具を用いて消去可能となることを特徴とするものである。
本発明に用いる顔料としては、市販の消しゴムを用いるのではなく、特定の消去具を用いて消去可能にすることから、従来より粒径の小さな顔料が使用でき、また、その顔料の形状は、板状、球状、鱗片状など特に限定されず、使用できる。
用いることができる顔料としては、例えば、シンロイヒカラー、keikoカラーなどの蛍光顔料、RyuDye−wカラーなどの有機顔料、酸化チタン、黒酸化鉄、ベンガラなどの無機顔料の少なくとも1種(各単独又はこれらの2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
具体的に用いることができる顔料としては、市販のSW−17(シンロイヒ社製、ピンク色樹脂粒子の水分散液、平均粒径1μm)、KNW−2117(日本蛍光社製、ピンク色樹脂粒子の水分散液、平均粒径0.5μm)、KNW−2117E(日本蛍光社製、ピンク色樹脂粒子の水分散液、平均粒径0.4μm)、PINK NF(大日本インキ化学工業社製、ピンク色樹脂粒子の水分散液、平均粒径0.5〜1μm)などが挙げられる。
顔料の平均粒子径は、0.2〜5μm、好ましくは、0.3〜2μmとなるものが望ましい。この顔料の平均粒子径が0.2μm未満では、紙の繊維へ入り込んでしまうため目的の消去性は満足できないものとなり、また、顔料の平均粒径が5μmを越えるものでは、紙の繊維へ入り込む量は少なく消去性は満足されるが、繊維芯、プラスチックペン、フェルトペン等のペン先で詰まりが発生、筆記不良を起こしてしまう恐れがあり、好ましくない。
これらの顔料(固形分)の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.5〜10重量%(以下、単に「%」という)、好ましくは、1〜8%、更に好ましくは、2〜5%の範囲で使用される。この顔料の含有量が0.5%未満であると、筆跡の濃度が不足してインキとしての実用性に欠け、一方、10%を越えると、分散安定性が低下すると共に、筆記後の消去性が低下することとなり、好ましくない。
本発明に用いる増粘剤としては、例えば、結晶セルロース、多糖類、アルカリ増粘タイプ、架橋タイプ、無機系の増粘剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。多糖類としては、例えば、キサンタンガム、レオザンガム等のガム系が挙げられ、無機系としては、スメクタイト等を挙げることができる。
好ましい増粘剤としては、本発明の特定の消去具による消去性と耐擦過性のバランス及び経時安定性を大幅に向上させる点、静置した際の顔料の沈降抑制効果が大きい点から、結晶セルロースの使用が望ましい。
用いることができる結晶セルロースは、セルロースを酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合物であり、従来の増粘多糖類等の水溶液と異なり、セルロース結晶体が水中で分散粒子となる特性を有するものである。
具体的に用いる結晶セルロースとしては、例えば、一次粒子の微細なセルロース結晶体の表面を水溶性高分子を用いてコーティング処理したコロイダルグルードからなるものが挙げられ、具体例としては、RC−591、RC−N81、RC−591NF、CL−611、ゼオラスクリーム〔以上、旭化成(株)製〕などが挙げられる。
本発明において、好ましく用いる結晶セルロースの特性を十分に発揮させるためには、より剪断力のかかる分散機を使用するか、若しくは分散タイプの結晶セルロースを用いることが更に好ましい。
分散機としては、例えば、ホモミキサー、ワーリングブレンダー、ホモジナイザー等が挙げられるが、分散工程により生成するコロイド粒子の割合が多くなり安定な分散液が得られることとなる。また、分散された結晶セルロースは、水中で網目構造を形成するため、色材である顔料をそのマトリックス中に捉えて顔料の沈降を更に抑える効果を十分に発揮できるものとなる。
これらの増粘剤の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜10%、好ましくは、0.2〜8%、更に好ましくは、0.3〜5%の範囲で使用される。
この増粘剤の含有量が0.1%未満であると、顔料の沈降抑制効果が不十分となり、一方、10%を越えると、インキ自体の粘性が高くなり過ぎ、インキの流出が阻害されることとなり、好ましくない。
本発明に用いる造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンとしては、造膜性を有するものであれば、特に限定されないが、紙面への浸透性、コートしてある紙面上での描線のはじきの点から、少なくとも表面張力が28〜43dyne/cmとなるアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンを少なくとも1種以上用いることが好ましい。
本発明において、造膜性の樹脂エマルジョンとして、アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンに限定した理由は、顔料との経時安定性と、膜強度と破壊強度のバランスによるものである。
更に好ましくは、更なるコート紙面上での描線のはじき、直液式筆記具に充填した際の空気置換の点から、表面張力が28〜32dyne/cmのアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョン(a)と、表面張力が38〜43dyne/cmのアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョン(b)とを少なくとも2種以上含有することが望ましい。
この配合比率(a):(b)は、重量比で0:10〜3:7であるものが好ましく、特に好ましくは、1:9〜2:8となるものが望ましい。
具体的に用いることができるアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンとしては、市販のNipol LX517A(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量40%、表面張力42dyne/cm)、Nipol 1571CL(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量38%、表面張力29dyne/cm)、Nipol LX551(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量45%、表面張力31dyne/cm)、Nipol 1571H(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量40%、表面張力28dyne/cm)、Nipol LX511(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量46%、表面張力30dyne/cm)、Nipol LX522(日本ゼオン社製、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分量45%、表面張力28dyne/cm)などが挙げられる。
これらのアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョン(固形分)の(合計)含有量は、インキ組成物全量に対して、10〜45%、好ましくは、15〜35%、更に好ましくは、20〜30%の範囲で使用される。
これらのアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンの含有量が10%未満であると、造膜性が劣り消去後に色材が紙面上に残留することとなり、一方、45%を越えると、インキの温度(高温、低温)に対する安定性が低下することとなり、好ましくない。
本発明で用いる水としては、例えば、精製水、イオン交換水、純水、海洋深層水、水道水などが挙げられ、その含有量は、配合の残部となる。この水の量は、使用するサインペン等の機構や所望する描線濃度を考慮した配合組成にすることが望ましい。
本発明の消去性インキ組成物は、上記各成分を含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、通常筆記具インキに使用される他の添加剤、例えば、尿素、界面活性剤、潤滑剤、防菌剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどを必要に応じて適宜含有せしめることができる。
本発明の消去性インキ組成物は、その表面張力を、30〜45dyne/cmにすることが必要であり、好ましくは、32〜38dyne/cmとするこが望ましい。
このインキ表面張力が30dyne/cm未満であると、インキが紙面に浸透して消去性が不十分となり、一方、インキの表面張力が45dyne/cmを超えると、紙面でのインキがはじいて綺麗な描線を形成できないこととなり、好ましくない。
なお、インキの表面張力の調整は、表面張力の異なる数種のアクロロニトリル・ブタジエン樹脂エマルジョンの選定と配合率を変えることにより行うことができる。
また、本発明の消去性インキ組成物は、筆記時のインキ追従性、顔料の沈降を抑える点から、インキの粘度を、好ましくは、80mPa・s以下、更に好ましくは、10〜40mPa・s、更に好ましくは、20〜40mPa・sとすることが望ましい。
インキの粘度が80mPa・sを超えると、インキの流出性が低下し、描線濃度が薄くなったり、かすれが発生したりし、好ましくない。
なお、本発明(後述する実施例を含む)において、インキの粘度は、ELD型粘度計を用いて25℃にて1rpmにより測定された値を意味する。また、インキの粘度の調整は、結晶セルロース等の添加量と水分の添加量により行うことができる。
本発明の消去性インキ組成物は、上記各成分を例えば、タンク中に撹拌しながら、順次投入し均一になるまで混合撹拌することにより製造することができる。
本発明の消去性インキ組成物は、紙面と筆記描線との固着性は十分なものとする点、筆記描線の紙面上への非浸透における「ハジキ」と「消去性」とを最適なバランスとする点、直液式筆記具を用いた際の空気置換を良好に行う点から、少なくとも、顔料と、増粘剤と、造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンと、水とを含有し、インキの表面張力を30〜45dyne/cmとするものである。
本発明では、上記特性となるインキ組成により形成される筆記描線は、従来の消去性インキ組成物とはその技術思想が相違するものであり、従来の硬度70°以下の市販の消しゴムでは消去できないが、本発明の効果を発揮せしめるために、硬度70°以上〜100°未満の消去具により初めて消去されるものである。なお、研磨剤を含有する砂消しゴムは、紙面の筆記描線及び紙面の表層の一部分を削りとるものであり、本発明の特定(硬度70°以上〜100°未満)の消去具には含まれないものである。
好ましくは、硬度70°以上〜100°未満の消去具、更に好ましくは、硬度80°以上〜100°未満であって、紙面を削りとることがなく(研磨剤を含有せず)、更に容易に消去せしめる点から、樹脂とエラストマーの混合物〔混合比率(重量比)、樹脂:エラストマー=1:1〜1:4〕からなる消去具、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリスチレンエラストマーの混合物〔混合比率1:3〕からなる消去具の使用が望ましい。
このように構成される本発明の消去性インキ組成物は、紙面と筆記描線との固着性を十分なものとし、指等による擦過によっても剥がれることがなく、しかも、インキの経時安定性に優れると共に、硬度70°以上〜100°未満の消しゴムによってのみ容易に消去することができるものとなる。
本発明の消去性インキ組成物は、上述の優れた効果を有するものであり、繊維芯又はプラスチック芯を有するマーキングペン、フェルトペンなどのサインペン、ボールペン、加圧ボールペン、ノック式ボールペンなどの筆記具用、インクジェット用のインキに好適に用いることができる。
図1〜図4は、本発明の消去性インキ組成物を充填してなるサインペンの各実施形態を示す図面である。
図1は、本発明の消去性インキ組成物をコレクター構造を備えた直液式サインペンに用いた実施形態である。
この実施形態のサインペンAは、本発明の消去性インキ組成物10を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部11に充填してなるものである。このインキタンク部11の前部には、インキタンク部11内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にインキタンク部11から押し出される消去性インキ10をペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜するインキ保溜体(コレクター部材)12が内蔵され、コレクター部材12の先端部には繊維芯からなるペン先13が設けられた構成となっている。
インキタンク部11からペン先13へのインキ導出は、コレクター部材12の中心孔に付設されたインキ流路12aを設けた中継芯14を介してインキタンク部11から消去性インキ10をペン先13に導出することにより行われる。
なお、図1中の15はホルダー部材であり、16はインキタンク部11の後部に固着される後部軸体であり、17はキャップである。また、中継芯14を介在させることなく、ペン先13の後部をインキタンク部11内に直接配置してインキの導出を行ってもよい。
図2は、本発明の消去性インキ組成物を中綿等のインキ吸蔵体に吸蔵させたタイプのサインペンである。
この実施形態のサインペンBは、本発明の消去性インキ組成物を中綿等に吸蔵させたインキ吸蔵体20を収容する軸体となるインキタンク部21に収容してなるものである。
このインキ吸蔵体20の前部には繊維芯からなるペン先22の後端部22aが当接されることにより、インキ吸蔵体20の消去性インキがペン先22へ供給される構成となっている。23は、先軸部材、24は軸本体21の後端部に固着された尾栓、25は、キャップである。
図3は、本発明の消去性インキ組成物をバルブ機構を有するサインペンに適用した実施形態である。
この実施形態のサインペンCは、本発明の消去性インキ組成物30を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部31に充填したものである。
このサインペンCでは、インクタンク部31内にバルブ機構部32を介在して繊維芯からなるペン先33へインキが供給される構成となっている。図3中の34は、ホルダー部材であり、35はバルブ機構部32とホルダー部材34間に介在し、ペン先33の後部を保持する保持部材であり、36はキャップであり、37は撹拌ボールである。また、本実施形態は、中継芯を介さないでインキをペン先へ供給するものであるが、中継芯を設け、インキタンク部31からバルブ機構部32、中継芯を介在して繊維芯からなるペン先33へインキを供給する構成にしてもよい。
図4は、本発明の消去性インキ組成物が充填され、後端部に筆記描線を消去するための消去具を具備したサインペンの実施形態である。
この実施形態のサインペンDは、本発明の消去性インキ組成物40を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部41に充填したものである。
このサインペンDでは、インキタンク部41内にバルブ機構42を介在して繊維芯からなるペン先43へインキ40が供給される構成となっている。図4中の44はホルダー部材であり、45はインキタンク部41の後部に固着される後部部材であり、46はスプリング47にて可動するインナーキャップであり、これによりキャップ48をした際に加圧されてバルブ42が開放されるのを防止することができる。図示符号49は、キャップ48の一方の端部の凹状内に嵌合された硬度70°以上〜100°未満(本実施形態では90°)の消去具である。
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
(実施例1)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 60重量%
〔Nipol LX517A(日本ゼオン社製)、固形分量40%、表面張力42dyne/cm〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
尿素 18重量%
水(精製水) 13.5重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
(実施例2)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 48重量%
〔Nipol LX517A(日本ゼオン社製)、固形分量40%、表面張力42dyne/cm〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 12.6重量%
〔Nipol 1571CL(日本ゼオン社製)、固形分量38%、表面張力29dyne/cm〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
尿素 10重量%
水(精製水) 20.9重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
(実施例3)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 48重量%
〔Nipol LX517A(日本ゼオン社製)、固形分量40%、表面張力42dyne/cm〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 12.6重量%
〔Nipol LX551(日本ゼオン社製)、固形分量45%、表面張力31dyne/cm〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
尿素 18重量%
水(精製水) 12.9重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
(比較例1)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 63重量%
〔Nipol 1577(日本ゼオン社製)、固形分量38%、表面張力45dyne/cm〕
尿素 18重量%
水(精製水) 11重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
(比較例2)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
アクリル系樹脂製青色球状粒子 10重量%
〔エポカラー FP 1050(日本触媒社製)〕
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の水分散液 40重量%
〔Nipol LX540(日本ゼオン社製)、固形分量45%〕
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1重量%
〔OP−10(日光ケミカルズ社製)
防菌剤〔プロキセルCRL(ICI社製)〕 0.5重量%
水 48.5重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
(比較例3)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 63重量%
〔Nipol 1577(日本ゼオン社製)、固形分量38%、表面張力45dyne/cm〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
界面活性剤:NIKKOL DDP−8〔ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸(日光ケミカルズ社製) 1重量%
尿素 18重量%
水(精製水) 9.5重量%
上記配合成分をタンク内で撹拌しながら順次添加し、均一になるまで混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた消去性インキ組成物について、表面張力計CBUP−Z(協和界面化学社製)により、25℃におけるインキ表面張力を測定し、また、ELD型粘度計(トキメック社製)を用いて、25℃における1rpmの粘度を測定した。
また、得られた各消去性インキ組成物について、下記各評価方法により消去性、耐擦過性、描線はじき性、経時安定性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
〔消去性の評価方法〕
得られた各消去性インキ組成物5mlを直液式サインペン〔ポスカ(PC−3M、三菱鉛筆社製)に充填した。得られた各ペンを用いて紙に文字、描線等を筆記し、5分間放置後、硬度90°の消去具〔ポリプロピレン樹脂(PP)とポリスチレンエラストマーの混合物〔混合比率1:3〕を用いて100g荷重条件下で消去し、筆記した描線、文字等などの消去性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:消去前の描線、文字等の識別ができず、消去性に非常に優れる。
○:消去前の描線、文字等の識別が大部分できず、消去性に優れる。
△:消去前の描線、文字等が非常に薄く残り、識別が可能。
×:消去前の描線、文字等が薄く残り、識別が可能。
〔耐擦過性の評価方法〕
上記で得た各ペンを用いて紙に文字、描線等を筆記し、5分間放置後、指で軽く擦って、下記評価基準により擦過性を評価した。
評価基準:
◎:文字等がちらばらず、文字等の識別が可能。
○:文字等が多少ちらばるが、文字等の識別が可能。
△:文字等の識別が大部分できず、文字等が指でも消えてしまう。
×:文字等の識別ができず、文字等が完全に消えてしまう。
〔描線はじき性の評価方法〕
コート紙〔三菱製紙社製、パールコート901g〕の白い面にインキを充填したペンで筆記し、その描線を目視で判定し、下記評価基準により描線はじき性を評価した。
評価基準:
◎:描線のはじきが無く、明瞭な筆記描線である。
○:描線のはじきが少なく(ピンホール数個程度)であり、描線の識別が十分可能である。
△:描線のはじきがやや多く(ピンホール10個〜10数個程度)であるか、描線の識別が可能である。
×:描線のはじきがひどく、文字の識別が困難である。
〔経時安定性の評価方法〕
得られた各インキを蓋付き透明容器(30ml)に収容して、50℃の恒温槽に保管して2週間放置後、静かに容器を取り出して、下記評価基準により経時安定性を評価した。
評価基準:
◎:沈降分離が見られず、初期と変化が見られない。
○:若干沈降分離が見られるが、初期とほとんど変化が見られない。
△:沈降分離により上澄が確認されるが、嵩高い沈降となっている。
×:沈降分離により完全に上澄が確認でき、完全に沈降している。
Figure 2006045249
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜3で得られた消去性インキ組成物は、紙上に筆記した描線等を確実に硬度70°以上の消しゴムによって消去することができ、耐擦過性、描線はじき性、経時安定性にも優れていることが判明した。
また、実施例1〜3で得られた消去性インキ組成物について、紙上に筆記した描線等を市販の消しゴム〔硬度70°、uni MARKSHEET、三菱鉛筆社製〕で上記消去性の評価と同様に消去を試みたが、消去できないことが判った。
これに対して、本発明の範囲外となる比較例1のインキ組成物は、使用するアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンの表面張力が45dyne/cmであり、インキの表面張力が45dyne/cmであり、であるので、描線はじきが発生し、また、増粘剤(結晶セルロース)が含有されていないので、経時安定性も悪いことが判った。また、比較例2は、従来の消しゴム消去性インキ(特開平5−279614号公報に記載の実施例2)であるので、耐擦過性が悪く、指で擦っても描線がはがれるものであった。更に、比較例3は界面活性剤で表面張力を29dyne/cmにさげたものであり、紙に浸透し易く、消去性が悪くなることが判った。
本発明の消去性インキ組成物をサインペンに用いた実施形態の一例を示す従断面図である。 本発明の消去性インキ組成物をサインペンに用いた実施形態の他例を示す従断面図である。 本発明の消去性インキ組成物をサインペンに用いた実施形態の他例を示す従断面図である。 本発明の消去性インキ組成物をサインペンに用いた実施形態の他例を示す従断面図である。
符号の説明
A 直液式タイプのサインペン
10 本発明の消去性インキ組成物
11 インキタンク部
13 ペン先

Claims (7)

  1. 少なくとも、顔料と、増粘剤と、造膜性のアクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンと、水とを含有し、インキの表面張力が30〜45dyne/cmであり、硬度70°以上〜100°未満の消去具を用いて消去可能となることを特徴とする消去性インキ組成物。
  2. アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンは、少なくとも表面張力が28〜43dyne/cmの樹脂エマルジョンを少なくとも1種以上用いる請求項1記載の消去性インキ組成物。
  3. アクリロニトリルブタジエン樹脂エマルジョンは、表面張力が28〜32dyne/cmの樹脂エマルジョン(a)と、表面張力が38〜43dyne/cmの樹脂エマルジョン(b)とを少なくとも2種以上含有してなる請求項1又は2記載の消去性インキ組成物。
  4. 増粘剤が結晶セルロースであり、該結晶セルロースの含有量が、消去性インキ組成物全量に対して、0.1〜10重量%である請求項1〜3の何れか一つに記載の消しゴム消去性インキ組成物。
  5. インキの粘度が80mPa・s以下となる請求項1〜4の何れか一つに記載の消去性インキ組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか一つに記載の消去性インキ組成物を充填してなることを特徴とするサインペン。
  7. 請求項6に記載のサインペンには、硬度70°以上〜100°未満の消去具が具備してなることを特徴とするサインペン。

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